教育制度分科会(第35回) 議事録

1.日時

平成25年10月29日(火曜日)15時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 第二講堂 (旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 今後の地方教育行政の在り方について(関係団体からのヒアリング1)
  2. その他

4.議事録

【小川分科会長】  ただいまから第35回中教審教育制度分科会を開催したいと思います。本日もお忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 それでは、まず事務局から資料の確認をお願いいたします。

【堀野企画官】  資料の確認をさせていただきます。議事次第にございますとおり、資料1がヒアリング日程、資料2から6が関係団体からの提出資料でございます。なお、机上に置かせていただいているファイルの一番上に審議経過報告の確定版を配付しておりますので、適宜御参照ください。以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。資料はよろしいでしょうか。
 それでは、今日の議事に入りたいと思います。去る10月11日、本分科会の中間的な議論の整理として審議経過報告を取りまとめ、15日の中教審の総会で私の方から報告をいたしました。中教審総会における主な意見としては、A案、B案、それぞれ課題があるのではないか。また、両者の中間的な制度設計が考えられないのかとか、また、社会教育や文化財保護に関する事業の在り方の整理が必要ではないかなど、幾つかの御意見がありました。中教審総会における意見についてはこの審議の参考にしたいということで、文書で整理した上で後日の審議でお示しをしたいと考えております。
 それでは、今日と次回の会議では事前にお知らせしましたとおり、この審議経過報告について関係団体からのヒアリングを行います。本日と次回のヒアリングの日程は資料1のとおりです。資料1に本日と次回のヒアリング団体の一覧を掲載しておきましたので、御参照ください。各団体との時間調整の結果、次回の会議の方が長くなっておりますけれども、この順番と時間配分で進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本日の会議では、五つの団体からの意見発表をお願いいたします。資料1にあるとおり、全国都道府県教育委員会連合会、全国町村教育長会、公益社団法人日本PTA全国協議会、公益社団法人全国公立文化施設協会、そして全国史跡整備市町村協議会の五つの団体から意見発表をお願いいたします。進め方としては、まず五つの団体から続けて意見を発表していただいた後に、まとめて意見発表の内容について質疑応答をさせていただければと思います。
 なお、時間の制約もありますので、1団体当たり、発表時間は8分以内でお願いいたします。次回の会議も含めて各団体に平等に発表の時間を配分できるよう、時間厳守でよろしくお願いいたします。そのため、今日の運営として残り1分で事務局の方からメモを入れさせていただいて、時間を過ぎた時点で私の方からまとめてほしいという声を掛けさせていただきますので、その点を御了解いただければと思います。
 では、早速団体ヒアリングに入っていきたいと思います。最初に、全国都道府県教育委員会連合会の黒田事務局長からお願いいたします。

【黒田事務局長】  全国都道府県教育委員会連合会事務局長の黒田でございます。日頃から大変お世話になっております。また、本日このように意見を発表する機会を頂戴しまして誠にありがとうございます。恐れ入ります、着席しまして説明させていただきます。
 お手元の資料2となっているA4の表裏の資料でございます。私ども全国都道府県教育委員会連合会は、都道府県教育委員会の委員長の協議会と教育長の協議会の連合体でございます。その両協議会から、10月11日に取りまとめられました審議経過報告につきまして意見を表明させていただくものでございます。また、意見書の作成に際しましては、先月、教育委員会制度の在り方、それから国の関与につきまして、全ての都道府県教育委員会に対して調査を実施いたしました。そして、調査の回答に際しては、合議体である教育委員会として回答していただきたいということでお願いしたものでございます。その結果に基づきまして、取りまとめをしたというものでございます。
 次の2ページ目の作りでございますけれども、事項をかなり絞り込んでございまして、三つの項目で構成してございます。一つ目は、教育委員会制度の在り方、二つ目は、国の関与、三つ目にまとめとしてございます。
 それでは、意見書の内容でございます。資料2の「記」書き以降、こちらの方を御覧ください。まず1の教育委員会制度の在り方についてでございます。1段落目でございますが、調査の結果、審議経過報告に示されましたA案、これは教育長を首長の補助機関とするとともに、教育委員会を首長の附属機関とする案でございますが、このA案を支持する回答が約1割。それからB案、これは教育長を引き続き教育委員会の補助機関とするとともに、教育委員会を性格を改めた執行機関とする案でございますが、このB案を支持する回答が約6割でございました。加えまして、現行制度を維持すべきという意見などを含めますと、執行機関としての教育委員会を維持するべきという意見は7割に達しております。というのが全体的な状況でございます。また、回答のあった全ての教育委員会が、地方教育行政の政治的中立性、継続性・安定性は引き続き確保されるべきであるという意見でございます。
 二つ下の段落でございます。一方で、現行の教育委員会制度は、責任の所在が不明確である、あるいは曖昧であるといった批判がございまして、そうした批判を真摯に受け止め、現行制度を見直す必要があるというふうに考えてございます。
 一番下の行の「以上を踏まえると」から次の段落にかけまして、A案につきましては、政治的中立性をどのように確保するのかという観点から、一定の事項に教育委員会の合意を必要とするなどの制度が法制的に可能なのか明らかではない、教育長の首長からの独立性をどのように担保するかも不明であるというところがございます。
 他方、B案につきましても、権限と責任の明確化という観点から、新しい教育委員会と教育長の事務分担が明らかではない。現行制度を大きく改革する案ではございますが、具体的にどのように変わるのかを示していないのではないか、こういった点がございます。
 このように、A案、B案ともに不明な点が多いものの、先ほどもお話し申し上げました約6割がB案を支持し、回答のあった全ての教育委員会が政治的中立性等の確保を求めているという、都道府県教育委員会の全体の動向を踏まえまして、特に政治的中立性がどのように担保されるのか、責任と権限をどのように明確化するのかといったことを最終答申の取りまとめに当たりまして、具体的にお示しいただきたいと考えてございます。また、その際には、都道府県教育委員会をはじめとした現場の意見を参考にしていただきたいという意見でございます。
 中段の2の国の関与でございます。こちらも全ての都道府県教育委員会に対しまして調査を行ったわけでございますが、回答のあった全ての教育委員会が現行制度のままでよいというふうに回答してございまして、地方分権に逆行する、これ以上国の関与を強める必要はないではないかというような意見が示されてございます。したがいまして、回答のあった全ての教育委員会が国の関与を強めるべきではないという意見でございます。
 3のまとめにつきましては、見直しに当たりましての留意点を示すものでございます。様々な見直しの視点がある中で最も重視されるべき点というのは、何よりも教育の充実であるとしてございまして、最終的な結論を出すに当たりましては、見直しにより教育の内容や質が損なわれることがないように留意をしていただきますよう、お願いをするものでございます。
 説明は以上でございます。ありがとうございました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。時間、御協力いただきましてありがとうございます。
 それでは、続けて全国町村教育長会の熊坂会長、お願いいたします。

【熊坂会長】  全国町村教育長会の会長の熊坂でございます。今日はこのような場を与えていただきまして、ありがとうございます。座らせていただきたいと思います。
 私たち町村教育長会は10月18日に全国の理事会を開催し、この問題について意見集約を図ったところでございます。数字的に申しますと、先ほどお話があったように、A案というのはまず賛成の意見が出てきません。そういうようなことを踏まえて、まずは実態がどうも我々の捉えと違うということで、町村教育委員会の実態等のお話をさせていただきます。御存じのように全国の町村教育長会、約と書いてあるんですが、これは合同のもの等もありますのでちょっと細かい数字が出ておりませんが、約930ございます。そのうち人口規模で見ますと、ほぼ全部が5万人未満である、こういう状況がございます。括弧にございますように、市においても5万人未満というのは240ぐらいあるということで、そうしますと、全国の町村のうちで70%に近いものがこの規模にある。ですから、私たちが考えている状況と同じものだというふうに私は捉えております。
 特に町村でいいますと、そのうちの930のうち1万人未満のところが47%になります。それから、少し広げて2万人未満で見ますと75%というふうに、大変小規模のところが多いというのが現状でございます。したがいまして、事務局の職員の数が平均13人、大きなところでは、一つの課でもこれ以上のところを持っているところがたくさんあるわけですけれども、町村の場合はこういう状況でございます。そして、指導主事の配置率も50%を切っておりまして、44%、こういうような数字的な実態でございます。
 こういうことの中で課題となっていること、ここでは特に学校教育の関係で見ていきますと、今お話ししましたように指導主事が少ないということで、学校教育を担当する専門職が少ないので、学校の指導支援が十分でないところが多く、人がいないときは教育長自らその任に当たっていると、こういう状況もございます。そして、職員13人の中で広範囲の仕事をしているために、いざ緊急事態が起こったときに、なかなかそれに対応できるような状況ではないと。ですから、教育長も場合によっては具体的な事務や作業等を行います。普通ですと、大きなところでは、学校等への通知文は教育長が書くということはまずありません。ただ、町村の場合は、それを教育長が担って書いて出す、そういう実態もございます。こういうようなことがある。そして、教育長の中には、学校教育や教育行政の経験のない人もいるという中で、自分の局の人数も少ないということを考えていくと、教育長自身の質の向上というのも大きな課題であるということを思っております。もう一つは、これは御多分に漏れず財政規模が小さいので、施策を展開するときにはなかなか難しさがございます。こんなようなことを踏まえて、今課題として一番考えているのは、まずは教育委員会の事務局の充実、これが急務です。制度云々(うんぬん)よりも、こちらの方を私たちは重視していかないと、学校経営は潰れてしまうという心配をしております。
 更に教育委員や教育長、あるいは首長と学校、地域との距離の問題があるわけですけれども、5万人未満ですと人の顔が分かるという特徴がございます。資料にも書いておきましたが、いろいろなことが行われている様子がかなりよく分かります。そして、全ての学校の入学式や卒業式、運動会などの行事に首長や教育委員も出席をしております。したがいまして、入学式や卒業式がどうのこうのという論議があるわけですけれども、実態が分かっていますから、そんな論議は少しも起こらずにきちっとできるという状況がございます。さらには、教育委員が全部の学校の授業参観をしているという実態もございます。また、首長や教育委員の懇談もかなり行われておりまして、首長は全ての教育委員の名前、顔等を知っていると、顔を合わせてしゃべっているという状況もございます。教育長と首長の関係でございますが、私なども時には週に3回ぐらい会っていろいろなことの協議をしているというのが実態でございます。また、地域の人たちと、あるいは教員、保護者と話合いをする意見の場等を教育委員の発議で実施されているところもたくさんあると。このように地域と密着して行われているのが、町村の教育だというふうに自負しております。
 時間も余りありませんので、これ以降、これを踏まえての中間まとめに対する何点かのポイントに絞って意見を申し上げたいと思います。まず、ここを指摘するのはどうかと思いましたが、再生実行会議で指摘されている課題認識は町村の教育長会が考えている課題認識とは相当ずれがあると思っております。具体的には、教育委員は学校などの様子を把握していることから、協議における発言も的確なものが多く、また授業評価などもしっかり行われているということで、形骸化しているというには当たらないと思っております。
 また、危機管理能力の不足というのは、先ほど申しましたように事務局が大変弱体化していることがあります。教育委員は非常勤ですので、日常起こる問題に対応するのは教育長以下事務局職員ということを考えると、このようなことでございます。
 したがいまして、あともう少しで時間になりましたので端的に申しますと、A案、B案のうちで、後でお読みいただきたいんですが、B案の方を私たち町村教育長会から支持いたします。A案ですと、下手をすると教育委員会の存在がなくなってしまうと、そういう危機感を持ってございます。
 もう一つは、指導主事のことでございますが、指導主事の全ての配置ですね。したがいまして、今法的にはできる規定になってございますが、これを必置規定にしてもらえないかどうか。また、そのための財政援助もできたらお願いしたいと、そんなことがございます。教育長の研修も是非高めていかなければいけない、こんなことも思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 では、続いて、日本PTA全国協議会の佐藤専務理事、お願いいたします。

【佐藤専務理事】  失礼いたします。公益社団法人日本PTA全国協議会、佐藤でございます。よろしくお願いいたします。本日はこのような意見の場を設けていただきまして、まことにありがとうございます。この後は着座にて意見発表させていただきます。
 私ども協議会は、全国47都道府県、プラス政令市14のPTAが構成している団体でございまして、全部で61ございます。会員数が900万人ということで、大きな所帯の中で子供たちのための活動ということで日々行っております。本会は、これまで子供たちの心身ともに健全な成長を図るため、家庭・学校・地域社会との密接な連携を基盤に、学校活動の支援のための活動を展開してまいりました。少子高齢化が進行し人口減少も予測される時代状況の中で、明日の社会を支える役割を担う子供たちが生き抜く力を身に付け、健やかに成長し、社会で活躍できる人材となるよう育っていくことは、保護者共通の切なる願いであることを改めて訴えたいと思います。
 まず、一つ目の教育委員会制度の在り方でございますけれども、公立の小・中学校に子供を通わせる保護者の立場といたしましては、児童や生徒の確実な学力向上といじめのない学校づくりを実現するため、教育行政に保護者・地域住民の意向を直接反映でき、子供の育成に関わる部局ともより連携しやすい改革を早急に進めていただきたいと思っております。
 また、教育委員会においても、保護者や地域社会の多様な意見を酌み取っていただくために、審議経過報告にもございますように、教育に深い関心と熱意を有する者や、学校支援地域本部等の経験者が教育委員として選任されることは大変有効であると考えております。
 二つ目の教育行政における国、都道府県、市町村の役割分担と各々の関係の在り方についてでございます。以前と比べましても、学校が果たすべき役割は非常に多様化しており、教職員が多忙化している状況が見られます。学校現場では、子供たちのために教職員が身を粉にして献身的な取組をしておりますけれども、教職員が全力を挙げて打ち込むことができるような学校づくりや学級づくりが実現できる仕組みの構築をお願いいたします。また、審議経過報告にもありますように、頑張っている教職員に対して、教育現場の士気を高める方策を是非進めていただきたいと思っております。
 三つ目の学校と教育行政、保護者・地域住民との関係の在り方についてでございます。急速な社会環境の変化により、学校に関する問題も顕在化し、以前のように学校内だけで解決できる問題も少なくなっていると実感しております。要因としては様々あると思いますが、家庭教育力の低下であったり、地域コミュニティーの希薄化、教員の多忙化などが挙げられるのではなかろうかと思われます。そのような中、小・中学校等における学校支援地域本部は、PTAをはじめ地域住民が学校支援ボランティアなどに参加するつなぎの役割を果たしており、家庭・学校・地域社会の連携を進めつつ、子供の成長や教員の負担軽減、学校経営の改善など様々な問題解決に役立っており、非常に重要な取組であると感じています。今後ますます大きな期待が寄せられています。
 ここで本会が毎年実施しております「教育に関する保護者の意識調査」というのがあるのですが、そこの中から関連するデータを何点か挙げたいと思います。まず、学校支援地域本部の認知度では、60.5%の保護者が知っていると回答しています。また、学校支援地域本部の効果を聞いたところ、学校や地域との交流を増えた(38.8%)、学校が身近に感じるようになった(32.8%)、学校や地域のことについて、家庭内での会話が増えた(16.5%)との回答が出ております。また、子供がどのように変化したかを聞いた設問では、地域の人にも挨拶をするようになった(50.1%)、それから少数意見ではございましたが、学力が向上したという回答もありました。さらに、今後実施すべきとの設問でも、実施すべきと答えた保護者が59.3%と、非常に高い回答を示しています。これらの結果から、学校支援地域本部事業の意義や成果を評価している保護者が多いことが分かり、潜在的に参加を待っている人も多いことが分かりました。今後はどのように顕在化させるか、様々な創意工夫が必要であると考えられます。一方、コミュニティ・スクールの認知度は12.4%と、残念ながら低い数字となっております。周知にはさらなる創意工夫が必要であると考えられます。
 子供たちは、学校における教育やPTA活動、学校支援地域本部などの社会教育によって実に貴重な経験をしてきており、人格形成の上でも有意義なものと考えています。それには、学校支援地域本部、放課後子ども教室やコミュニティ・スクールなど、学校と地域社会が連携・協力する関係を作るよう、今後更に推進していくとが必要であり、子供の健やかな成長という視点に立って、その支援の充実が図れることが大切であると考えています。
 一方で、これらの事業の導入に当たりましては、基本的なことではありますが、開かれた学校と言いながらも、閉鎖的な学校が多いことも事実であり、校長や教職員の理解が不可欠です。このため、保護者が事業の意義を十分理解でき、学校に信頼を寄せることができるような仕組みや手だてを講じていただきたいと思います。
 今後、私どもPTAといたしましても、子供たちの健やかな成長を図るため、積極的に連携・協力を行ってまいりたいと思っております。以上です。ありがとうございました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。続けて、全国公立文化施設協会の松本専務理事・事務局長、お願いします。

【松本専務理事・事務局長】  公益社団法人全国公立文化施設協会の専務理事をしております松本でございます。本日は、このような中で意見表明の機会を頂いたことに感謝を申し上げます。ここで表明する意見につきましては、組織として調整する時間がございませんでしたので、個人的な見解になるかと思いますが、御了解いただければと思います。座らせて御説明させていただきます。
 皆様には余りなじみがおありではないかと思いますが、当協会は約50年前に発足した任意団体を母体といたしまして、平成7年に社団法人となり、今年の4月公益法人に移行した全国の劇場、音楽堂、いわゆる公共ホールを会員とする組織でございます。全国に約2,200、いわゆる劇場、音楽堂等がございますが、そのうち約1,300の施設を会員としております。全国の劇場、音楽堂等は市民の集会施設、貸館事業を中心に行う多目的ホール、演劇や音楽など、特定の分野に特化した専門施設、あるいは大きく創造発信事業を展開する劇場など、多種多様な形態が存在しております。名称も公会堂、文化会館、文化センター、県民・市民ホール、あるいは劇場、音楽堂など、様々でございます。バブル期に多くの施設が建設され、いわゆる箱物行政ということで批判された時期もございました。施設は立派だけれども、中身がないというような議論もあったところでございます。
 課題といたしましては、事業を展開する財源の不足、あるいは施設の運営や自主事業を展開する専門人材の不足など、特に指定管理者制度が導入されて以降、深刻となっております。しかし、全国津々浦々に所在するホールは、その地域や住民にとって拠点施設であることは確かであり、もっと地域の活性化のために生かしていくという視点が重要ではないかと思っております。地域から日本を元気にしていくためにも、こうした施設が本気になって地域の文化振興等の活性化のために努力していくべきと考えております。
 約2,200施設の中で教育委員会が所管する施設は全体の約半分、50%近くで1,100施設がございます。そのうち700強の施設が直営、400弱が指定管理者制度を導入してございます。教育委員会が所管する場合と首長部局が所管する場合あり、それぞれの設立の経緯等々ございます。しかし教育委員会と首長部局どちらが所管するにしても、教育の現場で文化芸術というものを子供たちにいかに触れさせ、鑑賞させていくのかということが重要だと思っております。
 昨年6月に劇場、音楽堂等の活性化に関する法律が制定され、今年3月には法律に基づく指針が定められました。図書館には図書館法、博物館には博物館法があるように、長らく劇場・音楽堂等を規定する根拠法がありませんでしたが、法律が制定されたことによって新たなステージを迎えているのではないかと思っております。法律では、劇場、音楽堂等の役割として、文化芸術の振興と地域社会の活性化、法律の文面でいいますと共生社会のきずなづくりということ、大きく言ってその二つが盛り込まれております。これらの法律を踏まえ教育委員会所管の施設も、より広い視野で事業展開が求められているのではないかと考えてございます。
 それから、文化芸術、教育の現状と課題ということで若干申し上げますと、教育現場においては子供たちが文化芸術に触れる機会が以前と比べ、総体的に減少しているのではないかという問題意識を持っております。いわゆるゆとり教育、総合学習の時間が削減されたということもあろうかと思います。また、文化芸術を教える専門人材も減少してございますが、背景として専門教員の非正規化が進んでいる状況もあると聞いてございます。本来、文化芸術は子供たちの成長にとって、大きな糧となる力を秘めているにもかかわらず、それらが教育の場において十分生かされにくい環境があるのではないかというふうに考えております。文化芸術には感動を通じて人を大きく成長させる力がございます。文化芸術は決して万能薬とまでは申し上げられませんが、有効なツールとしてもっと積極的に活用すべきではないかと考えております。
 劇場法では劇場、音楽堂等のミッションとして文化芸術の鑑賞機会の創造、発信、鑑賞機会提供とともに地域の共生社会の機能づくりということが示されております。また、そのことを実現するための方策として、専門人材の育成と地域の学校や芸術家、芸術団体の連携の重要性がうたわれております。それらを踏まえ、劇場、音楽堂等がもっと学校と連携して子供たちに多様な文化芸術に触れ、感動する機会を提供していくことが求められているのではないかと考えております。そのための専門人材の育成と活用も含め、教育行政と文化行政が連携して取り組んでいくことが重要です。教育委員の仕組みを検討することも重要でございますが、文化芸術教育の重要性に対する認識と、それを実現する具体的な方策の検討を是非望みたいと思っております。
 結論と申しましては、次の3点を強調したいと思います。教育の場でもっと文化芸術の効用を活用するべきであるということ。そのための専門人材を地域で確保、育成していくことが重要であるということ。教育現場と劇場、音楽堂とがより密接な連携協力を推進していくことが重要であるということ。当協会といたしましても、このことを具体的に実現に向けて努力してまいりたいと思います。文化行政は様々な視点や側面があり、そのうちの何を重視するかによって所管や事業内容が異なってまいります。自治体が文化芸術施策を効果的に推進していくためには、所管がどちらであろうとも緊密な連携・協力の下で劇場の趣旨を踏まえつつ、教育の分野においても文化芸術の力を生かし、地域住民を巻き込んだ展開が必要であると考えております。
 ありがとうございました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、最後になりますけれども、全国史跡整備市町村協議会の井上会長、よろしくお願いいたします。

【井上会長】  皆様、こんにちは。御紹介いただきました全国史跡整備市町村協議会、通称全史協と言っておりますけれども、ここで会長を仰せつかっております太宰府市長の井上でございます。よろしくお願い申し上げます。本日は、このような場で意見発表の機会を頂きましたことを心からお礼を申し上げます。着座にて説明をさせていただきます。
 本日は、この会議で検討されております地方教育行政の在り方について、文化財保護の観点から意見を述べさせていただきたいと思います。全史協といたしまして、地方教育行政の在り方について見解をまとめておるわけではございませんので、会長個人としての意見となりますことを、まずもってお断りを申し上げたいと思います。それでは、意見に入ります前に、私の発言の背景にあります太宰府市の状況と全史協とはどのような団体かということを簡単に御説明させていただきます。
 資料はお手元の資料6のとおりでございます。まず、太宰府市でございますけれども、太宰府市は福岡市の南東約16キロメートルにありまして、人口は7万1,000人ほどでございます。約1,300年前に、当時の太宰府には九州全体を治める太宰府政庁という大きな役所が置かれておりまして、約500年間の長い間その役割を果たしてきたところでございます。今もその歴史をしのばせます太宰府政庁跡、水城跡でありますとか、あるいは観世音寺、太宰府天満宮等、市内に数多くの史跡でありますとか名所が存在いたしまして、年間760万人の観光客に来ていただいております。史跡と観光のまち、また、市内には四つの高等学校、あるいは7つの短大、大学がございまして、約1万人の学生、生徒でにぎわう文教のまちでもございます。市の将来像でございます総合計画でも、歴史と緑豊かな文化のまちを目指します7つの政策目標の一つに、歴史を生かし文化を守り育てるまちづくりとして取り組んでいるところでございます。
 2番目の全史協についてでございます。全史協は、史跡でありますとか、名勝等の文化財の整備を進め、文化財の保存と活用を目的といたします市町村の集まりでございまして、昭和41年に発足いたしております。現在、537市町村が加盟をしていただいております。私は昨年の10月から会長職を務めております。今年は、今年の初めに沖縄で大きな規模の会合を開催いたしました。加盟市町村の首長が集まって、情報共有でありますとか、意見交換のほかに、開催地の文化財を視察いたしております。毎年このような会合を地方で開催しながら、文化財の価値を損なうことなく、その他の特有の保存、あるいは整備活用に向けた取組の事例等の紹介を互いにしながら、参加者それぞれのまちに持ち帰り、そして、まちづくりの参考にしてもらうようにしているところでございます。
 それでは、本題に入らせていただきます。今回、この会議で行われております地方教育行政の在り方の検討では、審議経過報告にもございますように、教育委員会制度の在り方でありますとか、教育行政における国、都道府県、市町村の役割分担、学校と教育委員会、保護者、地域住民との関係の在り方、この三つの大きな論点がございますけれども、この場では、私は文化財の保護と活用の観点から御意見を述べさせていただきます。
 文化財についての記載でございますが、教育委員会制度の在り方について、1番目の(5)の首長と教育行政部局との事務分担の在り方についての中にございました、16ページの最初の丸の部分でございます。私は、ここに書かれております文化財保護の事務に求められておりますこと、三つございますけれども、政治的中立性の確保、継続性、安定性の確保、開発行為との均衡を図ること、この三つにつきましては絶対的に欠かせない原則であるというふうに思っております。また、そのとおりだと考えております。だからこそ、引き続き文化財保護の事務には、これを確保できる仕組みとすることが必要であると思っております。
 なぜなら、首長選挙のたびにころころ変わる猫の目文化行政であってはならないというふうに思っております。教育は国家百年の大計と言われますように、文化財行政も長期的視点が不可欠であると思っております。首長が教育及び文化財についてしっかりとした識見を持って選挙で公約し、発言し、責任を持つことは当然であると思います。そのことは政治的中立性とは次元が違うと思っております。問題は、首長がイデオロギーに偏ったり、あるいは権力的、恣意的にごり押しをすることが問題であろうと思っております。もちろん、現行の教育委員のままでよいとは思っておりません。改善改革は必要でございます。太宰府市に限らず、まちづくりに文化財を活用している自治体はたくさんございます。ただ、基本的には制度改革でなくても、運用次第で問題点を十分解決、あるいは克服できると私は思っております。
 太宰府市では、毎週月曜日に市長、教育長、副市長の三者で情報交換を行っております。6人の教育委員の皆さんとも定期的に協議の機会を持っておりまして、情報を共有しております。このようなことにつきましては、多くの自治体で行われていることだろうと思いますけれども、私はとても大切なことであると思っております。その上で、同様に文化財を扱うには高い専門性が必要であると思っております。継続性、あるいは安定性の観点からも、私は教育委員会に任せるのが適切であると考えております。遺跡の調査でありますとか整備には、私の経験からも10年単位の時間がかかります。太宰府の発掘調査は本格化いたしまして、40年を超えているわけでございます。もちろん、ここまで長くかかるのは多くないと思いますけれども、長期にわたり、継続的に着実に進めていくことが必要な分野でございます。私は教育委員会に改めて任せた方がいいと、餅は餅屋であるというふうに思っております。
 それから、学校教育にもっと文化財を生かすことが大事だと思います。先ほど太宰府市の紹介の際に、太宰府市の総合計画に紹介いたしました、これを進めるために市の教育目標に郷土の歴史、あるいは文化を愛し、尊重する心豊かな市民の育成と、市民文化の創造を掲げております。学校教育との連携が必要だと思います。学校の授業で使えるような、太宰府市におきましては副読本を作成したり、太宰府の長い歴史を通史で子供たちに分かりやすく解説する「丸ごと太宰府歴史展」の開催でありますとか、太宰府をテーマとした検定を実施いたしております。そうすることによりまして、児童生徒のフィールドワークを支援しているところでございます。
 こうしたことを踏まえますと、この会議で示されておりますA案とB案を見てみますと、A案は専門性、安定性、継続性をきちっと確保できる仕組みにすることが必要だと思います。B案は専門性、安定性、継続性の観点から大丈夫ですが、首長部局の情報の共有や連携を高めることが必要だと思っております。
 最後に、地方教育行政における文化財保護行政の在り方につきましては、私も委員を務めていますが、文化審議会文化財分科会企画調査会において検討いたしております。この結果の推移をどうか参考にしていただきまして、私どももまとめを行ってまいりますので、どうかその資料を参考にしていただきたいと思っております。以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。今五つの団体から意見発表をいたしました。それでは、質疑応答の時間に入らせていただきます。ただいまの意見発表に関して御質問等がありましたら、どなたからでも結構です。御自由に御発言いただければと思います。いかがでしょうか。橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】  A案、B案ということでいろいろ議論されていますが、A案といっても、これは我々、大所高所から教育行政について首長が責任を持つべきではないかと言っているわけですし、細かいところまで何かと首長が一々口を挟もうと言っているわけではないということを、まず前提に議論をしていただかなければいけないんだろうと思っております。
 それから、現実的には、先ほど来お話がございますように、我々、教育長とは年中連携をとっているわけでございまして、日頃きちんと我々の意見というものは教育の方でも考えてもらっております。ただ、最終的な責任といったときに、例えば教員給与、極めて重要な部分ですけれども、これは給与交渉というのは実は首長が最終的にはやってまいります。訴訟もそうであります。それから、先ほど熊坂教育長さんからお話がありましたけれども、今過疎化がどんどん進んでいます。そういうときに統合ということを教育長レベルでやれるのかどうかといったことなどを、私は大変疑問に思っているところであります。私どもの県では、実は、全ての県立高校の1年生に道徳の授業を導入しています。これも教育委員会に何度も我々が提案して、その中で5・6年、文部科学省の指定校にもなった中で導入していったところでありますけれども、そういったことを黙っていて教育委員会から発想が出てくるかというと、まずこれは出てまいりません。
 あるいは、先ほど来、文化行政についても継続、長期的視点が大事だというお話もございましたけれども、それは福祉行政だってそうなわけでありまして、医療費の無料化をやっていて、次の人がやめてしまったら、これは非常に困るわけであります。同じようなことは全ての行政に共通のものではないかなと思っております。ただ、最近のでいいますと、文化関係で、大型文化施設、大規模文化施設を造るのに対して1点だけ反対して、選挙に勝ってしまうというような例が出てきております。それで負けると、幾ら教育委員会が頑張って中立的にやるといっても、それを争点にして選挙で勝ってきた場合に継続できるだろうかといったようなこともございます。そういった点で、私どもとしては、大所高所から最終的な責任は首長がいいのではないかと。ただ、途中の細かい話は何もしようとは思っておりません。
 それから、いろいろ具体的な話については、今までも教育委員会と首長の関係はうまくいっているところがほとんどだと思います。ただ、そういう中で、大津市の例を見ましても、いじめ問題、果たして教育長のままで解決できただろうか。市長が出ていってやっと解決できた。教育委員長でも解決できなかったと思います。これは典型的な身内意識、なれ合いがあるわけでございまして、そういったことも含めていろいろ改善していくのにどちらがいいかというと、今回のいろいろないじめ問題から発した問題点を解決するには、私はA案がいいのではないかと思っております。
 今の統合などの問題について、教育長さん方、教育委員長さん方、自分たちで決定していけるという人はどれだけおられるかということを、私は疑問に思っております。

【小川分科会長】  今質問ということで。

【橋本委員】  是非教えてください。教育長の熊坂さん、よろしくお願いします。

【熊坂会長】  学校の統合の問題でございますが、これは設置者は自治体でございます。したがって、当然首長さんに責任があると、私はそう思っておりますので、教育委員会が一つだけでやるのではなく、首長と相談をして決める、こういうふうに考えております。
 もう一つは、先ほど大津の事件のお話がありましたが、これは私たちから見ても、学校、教育委員会、首長部局、どういう連携をしているんだろうと。制度の問題ではなくて、そこが何もできていない。大津には悪いんですけれども、そういうことがあの報告書から読み取れるわけです。ですから、私がさっきお話をしませんでしたが、この制度の問題と同時に、大事なこととして、日常の首長と教育委員会(教育長)とも書いてあるんですが、その連携、連絡調整が十分行われているかどうか。制度の問題と同等か、あるいはそれ以上に重要と私たちは考えています。ここがしっかりしていれば、あのような形の解決の前に、もっといい形での解決ができたのではないか。
 したがいまして、この辺のところを各自治体も本当に首長と教育委員会部局、こういうものの連携がうまくいっているのか、そういうチェックというものをしていかなければいけないと思います。以上でございます。

【小川分科会長】  ほかにいかがでしょうか。では、森委員、そして村上委員。

【森委員】  少し具体的に伺いたいんですが、教育委員会さんと教育長会さん、政治的中立性が要求される具体的な業務は何でしょうか。いっぱい業務がございますね、それが一つです。
 それから、二つ目が、今いみじくもおっしゃったように、学校の設置は市町村ですね。それから、もう一つ、教育振興基本計画、これも市町村ですね。教育委員会ではないです。平成18年の改正ですから、教育基本法の改正ですから、一番新しい改正ですね。教育振興基本計画がなぜ教育委員会ではなくて、教育振興というのはものすごく大事な、根本的なことですけれども、それがなぜ市町村なのか。公共団体、市町村というか知事も含めてですね。そういうことを考えたときに、結局予算の権限が、これは市長部局ですから、市長が責任を持って議会に説明して、議会の議決を得ますね。ですから、お金が絡んだのは全部市町村長が責任を取ることになります。そういうことからいくと、責任と権限がやっぱり一致していなければおかしいのではないかと、私は思うんです。市町村長もときどき逃げに使いますよ、これは教育委員会だから私には責任がないとか。教育長の方も、これはお金が絡むから私は責任を取れない、そこが問題になっているのではないかと思うんです。その辺の責任と権限を私は一致すべきだという意見ですけれども、それはどう思うか。
 だから、一つは政治的中立性とか安定性とおっしゃっている、具体的な業務がいっぱいありますね。いっぱいある仕事の中で、私は限られた分野だと思っているんだけど、それが何か。
 それから、もう一つは、責任と権限をきちんと一致させるべきだと思いますけれども、それがおっしゃっている、太宰府の市長さんがおっしゃっている協議ということなのではないかと思いますけれども、そこはどうでしょうか。

【小川分科会長】  熊坂会長でよいですか。

【森委員】  教育委員会連合会さんと教育長会さんに、その責任と権限のことを是非伺いたい。それから、太宰府の市長さんにも責任と権限の一致を。だから、任せるという意味をね。太宰府の市長さんが任せると言っているの、僕も賛成なんだけれども、最終責任は自分がとらなきゃいけないという立場で私は任せていますから、そこの部分を。
 それから、政治的中立性に関していえば、これは教育委員会連合会さんと教育長会さんですね。この二つ、具体的に教えてください、何が必要か。

【小川分科会長】  じゃ、熊坂会長、そして、よろしくお願いします。

【熊坂会長】  じゃ、私の方から。一つは、政治的中立性のお話がありましたが、教育というものは本来レイマンコントロールでなければいけないと、私はそういう信念を持っております。首長さんは、4年で交代があります。同じような考えの方が続くんでしたら継続性が図れるわけですけれども、今おっしゃったように、全く違う考えをお持ちの方が出てきたときに教育の継続性というのは大変難しいと、そういうふうに思って。

【森委員】  ですから、私が質問したのは、具体的にどんな仕事について政治的中立性が必要とおっしゃっているかということです。教科書選定とか、いろいろありますね。

【熊坂会長】  そうですね。

【森委員】  だから、それは私は非常に限られた部分じゃないかと思っているものだから、政治的中立性が必要な具体的な、そもそも論の一般論ではなくて、具体的には何があるかということを聞いているんです。

【熊坂会長】  ですから、そこのところは私も幾つかに限る必要があると思います。

【森委員】  分かりました。それで結構です。

【熊坂会長】  ただ、首長から独立の方がいいと思っていますので。

【森委員】  いや、それが何かを議論することが大事じゃないかというのが私の意見なんですが、どうですか。

【熊坂会長】  ですから、私の方もそこのところをしっかり論議して、ここに書いたと思いますが、後でお読みいただければ分かると思いますが、教育長は、選任は今度の場合のB案は首長さんですね。ただ、附属機関の関係でいくと教育委員会のコントロールになる、そういうことがございます。それはそれでいいわけですから。

【森委員】  具体的な仕事の話をしたら、いろいろなことが出てくる。

【熊坂会長】  そこのところは是非論議いただいて、どういうものを合議体の教育委員会の権限として残すか、これをしっかり決めていただきたい。

【森委員】  それで結構です。実はそれを具体的におっしゃらないから、それは何かをお聞きしたいんです。

【熊坂会長】  分かりました。私の見解と違うところもあるかと思いますが。

【森委員】  だから、まだお答えいただいていないです。具体的にどの仕事が政治的中立性が要るのかという質問です、私の質問は。

【熊坂会長】  じゃ、そのくらいで。

【森委員】  そのくらいじゃなくて。

【熊坂会長】  論議をしていただきたいということで。

【小川分科会長】  分かりました。では、2番の権限と責任の一致という点に関していかがでしょうか。じゃ、黒田事務局長の方にお願いいたします。

【黒田事務局長】  政治的中立性の具体的な事項は何かという問いかと思っていますが、私どもの意見書をまとめるに当たって、各都道府県教育委員会にアンケートを実施しているわけですが、残念ながらこの項目につきまして具体的に何がということを聞いていませんので、そういった具体的な事例は、今は持ち合わせていないということでございます。

【森委員】  じゃ、結構です。

【小川分科会長】  井上会長、何かございますか。

【森委員】  すみません、私も任せるのは大賛成なんですよ。だけれども…。

【井上会長】  文化財行政、あるいは教育行政も一緒でございますけれども、今私は専門性であるとか、継続性から考えますと、私も最終責任は首長にあると思っています。それを逃げるつもりはございません。その上で専門性、市長部局の中で開発行為が行われたとき、これは恣意的であるとか、あるいは利権的な形であるとか、場合によってはそういった形がクローズアップされてくるわけです。それで本来の文化財が破壊されるということについては、これは、とてもじゃない、取り返しがつかないようなことになると。だから、首長によってころころ変わるような猫の目行政のような形では駄目ではないかと。私も市長という職責を持ってやっておりますけれども、この文化財の大切さ、国の財産、宝であるという観点に立ちますと、これは専門性に委ね、一つのワンクッションを置くような形が望ましいという思いでございます。
 もちろん、私は教育行政の中で首長、教育長が任命したりするいろいろな考え方がございます。任命行為、これもいいだろうと。しかしながら、部下としてではなくて、あるいは教育行政の責任者として位置付けて、首長からの独立性を法的に保障していくことが大事ではないかと思っております。以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。では、村上委員、どうぞ。

【村上委員】  今日は委員同士で議論するところではないので、質問で終わらせていただきます。
 太宰府市長の井上さんにお尋ねしたいんですが、A案の中で専門性、安定性、継続性を確保できる仕組みにすることが必要というふうにお書きになっております。私も、やはり文化財行政はこういった要素が必要であって、その点でB案であればそれほど現状から問題が生じることはないと思うのですが、やはりA案の場合に、これは文化財に限らず、専門性、安定性、継続性の確保というのは非常に危惧されるわけです。例えば具体的に何か、市長御自身で個人的にこういうアイデアがあるとか、具体的な仕組みみたいなもので何か案とかアイデアをお持ちであれば教えていただきたい。
 これは教育行政全体としてそういう仕組みでもいいですし、文化財保護に限って、A案ベースになった場合に、こういう仕組みであれば専門性、安定性、継続性が確保できるのか。あるいは、やっぱりA案だと、なかなか仕組み的に、具体的に今なかなか難しいというふうにお考えなのか、そのあたりをお聞かせいただけますでしょうか。

【井上会長】  A案の教育長、首長の補助機関、あるいは教育委員会は首長の附属機関となりますと、独立性にも欠けるようになってくると思いますし、安定性等々の観点から、A案、B案、私はもちろんB案で考えておりますけれども、今の教育委員会制度そのものは一つも問題はない。運用の中で解決できるんだという基本的な考え方を持っておりますので、このA案等については以上のような考え方でございます。

【村上委員】  はい、ありがとうございます。

【小川分科会長】  委員の方から御質問があれば、どなたからでもどうぞ。いかがでしょうか。では、帯野委員、どうぞ。

【帯野委員】  簡単な質問なのですが、教育委員会連合会さんに組織についてお伺いしたいのですが、これは教育長協議会と教育委員長協議会が連合していると理解いたしますけれども、そもそも教育長と教育委員長というのは与えられた役割が違うと思うのですが、それが連合しているということで、どんなふうにすみ分けをしておられるのか。あるいは、その立場の違いから何か葛藤といったものが二つの組織の間にあるのか、ないのか。あるとすれば、どういう葛藤があるのかというところをちょっとお伺いいたしたいのですが。

【小川分科会長】  よろしくお願いします。

【黒田事務局長】  御案内のとおり、教育委員長と教育長と二つのものが一緒になって、連合会として活動しているのでございますが、事実上は二つの協議会が並行して活動をして、それをまとめて連合会として言っているということでございます。ただ、例えば総会も一緒にやりますし、例えば委員会制度の見直しですとか、そういった共通する事項があるときには、お互いに議論をしながらまとめていくという形でやっています。教育長も教育委員の一人でもありますし、事務局の事務局長という二つの面がありますので、連携して事業をやっていくという形で実施をしてございます。

【小川分科会長】  もう一つの質問ですが、その間で葛藤みたいなものを含めて。

【黒田事務局長】  そういったものはございません。

【帯野委員】  ありがとうございました。

【小川分科会長】  帯野委員、よろしいですか。

【帯野委員】  はい。

【小川分科会長】  もう一人か二人。では、白石委員、どうぞ。

【白石委員】  全国町村教育長会の資料3の2ページに、「このような状況を踏まえての全国町村教育長会の意見」として幾つか挙げられています。この中で、例えば「危機管理能力の不足は、教育長を筆頭とする教育委員会事務局の課題であり、制度の問題とは違う」とあります。また、「学校現場で起きる様々な具体的な問題(いじめ、不登校、暴力行為、体罰、事故など)に関する責任は事務統括者である教育長の責任であると自覚して対処している」とありますが、これは、具体的にはどのような意見が出たんですか。

【小川分科会長】  熊坂会長、お願いいたします。

【熊坂会長】  危機管理の場合には、緊急性が必要でございます。そういうことを考えていると、合議体の教育委員会でものを決めるというのはなかなか時間が掛かるわけで、即応性がないわけでございます。ただ、教育長には事務委任されている内容がたくさんございます。こういう場合の問題行動だとか事故については、この事務委任されている内容と私たちは捉えておりますので、それを指して教育長の責任と自覚して対処をしていると、そういう表現をいたしてございます。それが一つでございます。
 そして、危機管理能力の不足。これも同じようなことで、合議体の教育委員会で危機管理、当然合議体で決めるときには、これはこうしなさいというのを決めるわけですが、通常起こる内容は事務委任されている内容がほとんどでございます。そういうことを考えていくと、これは制度の問題というよりも、むしろ教育委員会事務局がしっかりそういう部署があって、危機が発生したときにはすぐ対処ができる、こういう状況があればいいわけです。ただ、先ほど町村の実情をお話ししましたように、非常に職員数が少なく、一人が多くの仕事を抱えていますので、そういう部局がないわけでございます。そんなことを指してここへ書いたわけでございます。
 これが30万、40万の市の教育委員会ですと、当然専門性がかなり確保されてあるわけですので動いていいわけですけれども、ときには動かないこともあったというのが事例としては御存じかと思っております。以上でございます。

【小川分科会長】  白石委員、よろしいですか。

【白石委員】  私も町長ですので、実態的にはこのお話はよく分かるんです。ただ、今の制度の中で教育長というのは、町長がこの人は教育長だよといって議会の議決をもらうんですけれども、教育長を選ぶのは形として教育委員の互選になっているんですね。

【熊坂会長】  はい。

【白石委員】  つまり、そういう面で指揮命令系統を発揮していないわけです。教育長を教育委員が互選で選ぶのであれば、教育長を選んだ教育委員会が責任があるわけです。そこはやっぱり非常に曖昧だから、首長に最終責任を持たせ、首長が教育長を選ぶというA案の方が私はすっきりすると思います。

【熊坂会長】  首長を選ぶことに関しては、私は意見を申し上げていないかと思いますが、そこの部分については、そういう選び方はあると思っています。ただ、合議制の教育委員会の部分が諮問とか何かになっていくと、ここの部分の継続性とか、中立性とか、安定性とか、こういう部分は将来的にこういうことしかやらないなら、権限がないなら要らないじゃないか。そこも先ほど書いてあるかと思いますが、そういう危惧を持っているわけです。
 ですから、合議体の教育委員会で権限を持つこと、これは先ほど御質問があって、私も何がどう決めるかというところはまだはっきり持っているわけではありませんが、それをはっきりさせていただいて、教育長が権限として持てる、こういうものをはっきり明確に切る。こういうことがあれば、制度が分かりにくいということはなくなっていくのではないかと。一本化の首長の形で来ると、やはり教育の部分のところの権限が全部そちらへ行ってしまうと、首長が替わったときに不安定性が十分残ると思います。

【白石委員】  今回の改革は、教育委員会制度の責任の明確化について考えろということなんですね。今の形というのは、責任の明確さがないんです。曖昧なんですよ。首長が選んでいると皆さんは思っているんだけれども、形が違うでしょう。教育委員を選んで教育委員が互選で教育委員長とか教育長を選んでいるわけですよ。ですから、責任が非常に不明確なんです。それだったら、首長は教育長を任命すると、あるいは教育委員もきちんと任命するという形にした方が、責任が明確になるんです。
 ただ、現場のいろいろなことの責任は当然首長が任命した教育長にやらせるわけです。そして、大きな教育行政の問題となれば、これは当然教育委員さんにいろいろな意見を伺って、それに基づいて教育行政をやっていこうということですから。私は政治的中立云々(うんぬん)ということは、この部分においては余り関係ないと思いますよ。細かい一つ一つの授業内容であるとか、そんなことに関与することは今までもやっていませんし、それはできません。
 責任の在りかはどこかといったときに、やっぱり首長がしっかり責任を持ち、その下で、教育長、あるいは教育委員が責任を果たしていく、という流れを分かりやすくするためにはA案の方がいいだろうと思うんです。

【小川分科会長】  すみません、もうここだけのやりとりはこれでやめたいと思います。ありがとうございました。
 時間になりましたので、5団体からの意見表明とその質疑応答についてはこれで終わらせていただきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。
 各団体の説明者の方々は退出されます。委員の方は残っていただいて、今日の意見表明を伺った上での感想や意見交換に、少し時間をとりたいと思いますので、よろしくお願いします。委員の方、少しお待ちいただければと思います。

                                (説明者退席)

【小川分科会長】  それほど時間はとれないですけれども、せっかくの機会ですので、今5団体から意見表明がありましたので、その感想を含めて御意見があれば、若干の委員から御意見を伺いたいと思います。
 では、森委員。お願いします。森委員、橋本委員、そして明石委員ということでお願いします。

【森委員】  具体的な仕事で議論しないと、本当に机上の空論になるんですよ。さっき私が言ったのは、例えば学校の改築、10億、20億かかる決断、耐震改修、少人数学級の推進、特別支援教育の充実、いろいろあります。給食の問題、こういったものは全部予算が絡むから、全部最終的には市長が決めている。だから、政治的中立性といったときに、一体どの仕事を言っているのか、耐震改修とか、学校の新築・改築に政治的中立性なんて関係ないじゃないですか。具体的な仕事で議論をするように、事務局、きっちりしていただけませんか。それが一つ。
 それから、もう一つは、首長に言われると何かいろいろ嫌だからみたいな議論が横行していますけれども、そうではなくて、首長が関係したらどんな新しい仕事ができるかと。今全国に首長が一生懸命やっている教育の、長岡市は「熱中!感動!夢づくり」というんですけれども、68の事業に4億円近くかけていますよ。そういういい事業をやるためにはどうしたらいいかというような、前向きな議論をすべきなんですよ。それを、政治的中立性とか継続性とか、そういう下向きの議論、教育をよくするにはどうしたらいいかという議論をしませんか。それだけお願いいたします。

【小川分科会長】  橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】  それはそうなんですけれども、どうもこの場で聞いていると、教育委員、教育長というのは聖人君子、間違いがなくて、中立で、そして継続、安定という感じにとれてしようがないんです。教育長でも4年たてば替わるわけでありますから、その教育長がどういう意見を持っているかによって当然変わってくる。首長も替わるかもしれないけれども、教育長も替わる。先ほど申し上げた文化施設云々(うんぬん)なんていうのは、民意としてできている以上、これは継続できないのは明らかになっていくわけです。それから、継続して失敗している例も、例えば大津市の教育長、継続したから失敗した。あるいは、首長が替わった段階で替わっていれば、あんな事態にならないかもしれなかった。前からやってきている、自分がいろいろやってきた中で起きた事件なので、一生懸命身内意識が働いた。
 いろいろなことがあるわけですので、首長の方もそうかもしれないけれども、教育長の方だっていろいろな点でどういう人がなるかは分からないということも前提に考えた方がいいと思います。合議体だから大丈夫だと言っていますけれども、実際問題としては教育長の指導権というのは非常に強いわけですので、そういったことも前提に議論していかなくてはいけないのではないかなと感想を持ちました。以上です。

 

【小川分科会長】  ありがとうございました。では、明石委員、どうぞ。

【明石委員】  ちょっと私、視点を変えまして、町村教育長会長の熊坂さんが貴重なデータを出してくれましたね。2万人未満が75%とか、5万人未満の市でも240あるとか。一方では、文化財も専門性が要る、教育委員会の指導主事も用意しなければいけないとなります。多分この20年後、30年後、小さな市町村に力点を置くと財政的に持たなくなるだろうと思います。そういう意味での広域行政という視点をどこかに入れていって議論しないいけないのではないでしょうか。理念は分かるんですけれども、2万人以下が75%といったら、ものすごく財政的な負担がかかってきます。一方では、指導主事を必置させなければいけないとなりますと、土台これは無理な話になります。
 そういう意味では、今回の教育委員会の問題も絡めて、広域行政という形での視点を入れて議論していかないと、非常に財政的に無駄が生じるなということを思いました。

【小川分科会長】  ほかにどうでしょうか。では、今田委員、貝ノ瀨委員、そして梶田委員、お願いします。それで早川委員。

【今田委員】  政治的中立性云々(うんぬん)の話で具体的にどういうものがあるかということで、私の拙(つたな)い経験でいえば、これはまた視点が少し小さ過ぎるといって森委員にお叱りを受けるかも分かりませんけれども、例えばいろいろなイベントがあるときに、ある意味で思想的な裏付けを持った団体に対する後援依頼というようなものが、横浜の場合でもかなりあります。そういう場合には、かなりそこにある意味で丁寧にといいますか、バランスよく考えるという場面で、具体的な事例として政治的中立性を求められる事例があると。小さい部分かも分かりません。
 前回も私は申し上げましたが、教科書採択などの場合には、現実にはかなり政治的中立性が守られていないという、そういう厳しい状況はあるとは思っていますけれども、分かりやすい事例でいえば、いろいろな意味での思想的な背景を持ったものに対する後援依頼なんかに慎重さが求められるときに、そういう事例があるかなと思います。

【小川分科会長】  貝ノ瀨委員、どうぞ。

【貝ノ瀨委員】  進行といいますか、あと何回かきっとこのヒアリングは続くんだろうと思いますけれども、こちらにお見えになった方はこの会議は初めてお見えになるわけで、議論に参加しているわけではないのでね。ですから、お聞きしているわけで、お聞きするということでお呼びしているわけで、一定の敬意を表してお聞きしましょう。議論を吹っかけるみたいではなくて。お帰りになった後、私たちが今やっているように、議論を深めるというように、そうした方がいいのではないかと思いますね。出てきた方たちに失礼な感じがします。少し配慮していく必要があるのではないかと思いますね。
 こちらの委員の中ではずっと継続して議論しているんですから、前後関係も分かっているのでいいでしょうけれども、初めて来て8分ぐらいしゃべって、それでいろいろと言うのは、なかなか気の毒な感じがしますので、その辺、配慮する必要があるのではないかと思いますね。

【小川分科会長】  ありがとうございました。次回以降、少し留意したいと思います。
 梶田委員、どうぞ。

【梶田委員】  一つだけあれですが、首長さんがみんな立派だとか、教育長さんや教育委員がみんな立派だとか、そういう前提で話してはいかんと思うんです。現実には、私、99%すばらしいと思うんです。だから、首長さんが全部指揮しても大丈夫だろうと思っています、現実には。ただ、この問題、制度をいじるということは、やっぱりまずいことが、例えば首長さんが人気とりで、ポピュリズムで選挙で勝ってしまって、そういうときにどうするかという歯止めを制度的にどう作るかなんです、基本は。
 もう一つは、すぐ大津の問題が出ますけれども、先ほど出ているように、13万のまちで私は教育委員をしてきた。あそこの大津のあれは非常に人の問題だと思った、あるいは運用の問題だと思っております。それを金科玉条に持ち出して、何が問題かというと、教育委員さんに情報は全然いっていないでしょう。教育委員さんには、全部、問題が起こったらやらなければ。私がやった箕面市はそうでした、全部。何が起こっても、すぐ臨時の会議をやって、夜でも引っ張り出されてずっと議論したわけです。
 もう一つは、私がやったときは、市長、助役と、教育委員との協議で最低月1回はかなり時間を取ってやりました、これは。そういうことがなくて、ああいう問題が起こってからやっていたら駄目なんです。ですから、運用の問題ということをどうするかということも同時に考えて、運用でやれないところを制度でやるんです。だから、順番を間違えてはいけないと思います。
 もう一つだけ申し上げておきます。首長さんが予算権を持っているんです。今やっているのは、それを前提でやっているわけでしょう。今の教育委員もそうだし、この議論も。どういうことかといいますと、教育の条件整備はいつまでも首長さんの仕事なんです。でも、内容に関わるところ、先ほど後援の話もありました、あるいは採択の問題。私は大阪でずっとやってきましたから分かりますけれども、例えば大阪府で長い間、指導要録、どこの学校もつけていなかったんです。つまり評価は選別、差別の道具という政治的なモットーで、皆さん、おやりになっていたわけです。私どもの箕面市の教育委員会はそれを初めて明るみに出して、箕面市が初めて指導要録をきちっと記入するということを始めたわけです。同時に、評価ということがイデオロギー的な選別、差別でないということをやったわけです。
 いろいろと時期によって教育だけではなくて、地方行政、あるいは地方教育行政にいろいろとゆがみがあった時期があったわけなんです。今の首長さんは本当に聖人君子かもしれないけれども、そうでない方々がイデオロギー的になってやったときにどういう歯止めをするかということを、十分にここで考えておかないと。もう一度言いますが、お金で施設をどう造るか、これは今までもやってこられたし、これからもやったらいいんですよ。今問題になっているのは中身の問題です。教育の条件整備の話と、教育そのものの中身に関わる話と、やっぱり分けて考えなければいけない。だから、条件整備を我々が権限を持っているんだから、中身も全部というのは、私はそれは暴論だろうと思います。

【小川分科会長】  じゃ、ちょっとお待ちください。早川委員、そして櫻井委員ということでお願いします。

【早川委員】  現在の地方教育行政の現場でも、当然首長の考え方は重いわけでして、私も日々首長のアイデアを実現できるように仕事をしています。その意味では、教育委員会も福祉部と同じように首長の考えを受けて動いているわけです。しかし、このことだけは、それは違うでしょうと言わなければいけない覚悟というのは教育委員会にありまして、その覚悟を制度的に保障するというものはどうしても必要だと思うんです。それがなくなれば、職務命令下で動くということになってしまいますので。
 私の市長も恐らくこのことは教育委員会が決めるべきことで、市長が口を出すべきことではないというわきまえをお持ちだということも思うわけですけれども、ここにいらっしゃる首長さんも皆さんそうだと思います。そのわきまえこそが大事で、それがなくなると、節操なく介入する危険性というのは起こり得るわけです。
  先ほど教育の中立性というのは具体的に何なのかという論議がありましたけれども、私はもちろん具体的なものは幾つかあるとは思いますが、中立性とか独立性、そのことがそこに存在するのではなくて、むしろそれは相対的なものであって、重大な事態が起きたときに対して、それは教育の中立性というのが出てくる論議であるというふうに思うわけです。
 だから、政治的中立性が論議される教育の場というのはかなり重大な局面になるので、その局面に対しては教育委員会制度というのは機能すべきであると思っています。

【小川分科会長】  櫻井委員、どうぞ。

【櫻井委員】  ちょっと広げた視点でお話を申し上げてみたいと思うんですけれども。よく政治的中立性とか、責任性ということをここで議論されていますけれども、そもそも教育というのは何のためにするのかということを考えないといけないと思うんです。私、横浜の方の教科書といいますか、教材を一時期ちょっと調べたことがあるんです。というのは、私、1回横浜で講演をいたしまして、慰安婦のことを言ったら、そこから大変なバッシングを受けたんです。私が当時申し上げたことは、今になってみると全部本当だったということが分かっているんです。でも、当時私はものすごいバッシングを受けて、そこでどういう教育が行われているかなというのを、何ゆえに私はこんなにバッシングを受けるのかということもありまして調べてみましたら、それはそれはひどい内容でした。
 いわゆるこれは果たして日本における教育なんだろうかと思うようなひどい内容がありました。その資料、今でも私の教育問題のファイルの中にありますので、興味のある方には御提供できるだろうと思うんですけれども。教育というのは、やっぱりその国、その国で、立派という言い方もちょっと語弊があるかもしれませんけれども、立派でまともな日本人をつくることだろうと思うんです。ですから、基本にそこに日本の歴史とか文化ということが出てくるんだろうと思うんです。
 しかし、そういうことを教えようとすると、前に義家さんがここでちょっとお話になりました。日本についてのいいことを教えようとすると、それは大変に悪いことだと教育現場で言われるということがありました。だから、政治的中立性というのは一体何なのかということを、よほど注意して使わないと、それは変なふうに利用されかねないだろうと思います。今私たちがここにいるのは、教育委員会制度を論ずるためにいるのであって、なぜ論じなければいけないかといえば、やっぱり戦後の六十数年間の積み重ねの中で、我が国の教育は本当におかしくなったと。
 学力だけではなくて、いわゆる価値観というか、そういったものもとてもおかしくなったと、これは恐らく万人が認めることだろうと思うんです。じゃ、どうしておかしくなったのか。それは制度が先なのか、運用が先なのかという問題になりましょうけれども、制度という意味で見ると、本当に先ほど白石さんがとてもいいことをおっしゃってくれたと思うんですが、責任が全然明確でない。やっぱり責任をきちんとどこの筋に集めていくのか。最終的に誰がこのことについて基本的に責任を持って決めていって、もしそれが間違っていたらお辞めになるとか、批判を受けるということ、若しくは反省していただくというようなことを制度の上で盛り込まない限り、これは私は運用が先だといっても、なかなか難しいのではないかなと思います。
 ここでの議論で8分間というのは、本当に私もお気の毒だと思います。せっかくやって来て、8分というのは、ただアリバイ的に聞いてあげるというような印象をどうしても持ちますが、ただ、8分でも、私はここで彼らに質問をして、議論をしたのはいいことだと思うんです。どういうことをおっしゃるのかなと思って聞いていて、正直、私、今日とてもびっくりいたしました。まだこういうことを言う方がいるんだなと思いましたので、様々な方が様々な角度から御質問なさったのはとてもよかったというのが私の感想です。以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。
 では、時間がオーバーしましたけれども、今日の団体ヒアリングをこれで終わりたいと思います。
 それで、次回ですけれども、11月11日、月曜日です。時間は9時半から12時15分まで。場所は、文科省ビルの3階の特別会議室を予定しているということです。次回は12団体からのヒアリングということですので、通常の会議よりも多少長くなっておりますので、その点は御了解いただければと思います。また次回の案内については、事務局の方から詳しい御案内が行くかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、今日の分科会はこれで終わります。ありがとうございました。

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