教育制度分科会(第28回) 議事録

1.日時

平成25年7月23日(火曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 地方教育行政の在り方について
  2. その他

4.議事録

【小川分科会長】  それでは定刻になりましたので、ただいまから中教審の第28回目の教育制度分科会を開催したいと思います。
 本日はお忙しい中、御参加いただきましてまことにありがとうございます。
 会議が始まる前に、本分科会に初めて出席される委員がおられます。私から御紹介いたします。学校法人奈良学園理事、学校法人聖ウルスラ学院理事長の梶田委員でございます。

【梶田委員】  梶田でございます。よろしくお願いいたします。

【小川分科会長】  あと、文部科学省の人事異動について事務局から御紹介いただきたいのですが、いらっしゃっていますか。

【堀野企画官】  遅れておりますので、後ほど。

【小川分科会長】  そうですか。それではお見えになってからご紹介をお願いいたします。本日の会議にも義家政務官に御出席いただいております。義家政務官にはまた最後に一言御意見を賜れればと思います。よろしくお願いいたします。
 本日の資料について、事務局から確認をお願いいたします。

【堀野企画官】  配付資料について確認させていただきます。議事次第にございますように、配付資料として資料1から資料7と参考資料がございますが、資料1の後に、本日追加となりました県費負担教職員の人事権の移譲について、平成21年1月の中核市教育長会という文書がございます。
 不足等がございましたら、事務局までお申し付けください。

【小川分科会長】  資料はよろしいでしょうか。資料1から7、そして、今日追加の中核市教育長会からの報告書です。よろしいでしょうか。もし不足がございましたら、事務局にお申し付けいただければと思います。
 それでは、今日の議題に入っていきたいと思います。前回に引き続いて、今日も諮問事項2、国、都道府県、市町村の役割分担等と、諮問事項3、学校と教育行政、保護者・地域住民との関係を議論していきたいと思います。今日は二つの主要テーマを前半と後半それぞれ1時間ずつ分けて議論していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 前回、前半の議論に多くの時間を割いてしまいまして、後半のコミュニティースクール等のテーマについてほとんど実質的な議論ができませんでしたので、今日は前半1時間、後半1時間ということで、時間の確保はきっちりしたいと思います。会議運営の協力をお願いできればと思います。
 それでは、今日の前半について、そして後半について、次のような流れで進めていきたいと思っています。諮問事項2のうち、県費負担教職員の人事権、給与負担の在り方については中核市の教育長会、全国町村教育長会、大阪府の教育委員会事務局、そして大阪府豊能地区教職員人事協議会からのヒアリングを行った後、公教育における国の最終的な責任の果たし方についても議論していただければと思います。
 そして後半の1時間は、諮問事項2のうち教育現場の士気を高める方策、第三者評価の在り方について。そして、諮問事項3の学校と教育行政、保護者・地域住民との関係について議論していきたいと思います。
 後半は事務局からの説明と、京都市の取組を中心に門川委員から御説明を頂いた後、議論していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは早速、前半の議論に入っていきたいと思いますが、はじめにヒアリングということで、先ほど御紹介した4名の方から続けて説明を頂いた後に、40分前後、質疑応答を含めて議論させていただければと思います。今日の御報告は4人ということで、ヒアリングの件数も少し多いので、恐縮ですけれども5分程度ぐらいで御報告いただければと思います。では最初に、中核市教育長会より、郡山市教育委員会の木村教育長から御説明いただきます。

【木村会長】  小川会長、よろしいでしょうか。説明は5分なのですが、プラス2分ぐらい震災関係、福島県は今、正念場を迎えていますが、放射能対策、その辺を、説明させていただきます。
 中核市教育長会の会長として意見を述べさせていただきます。福島県の山あいのまちの逆側に青年会議所のポスターが張ってありました。その標語に「金太郎あめはもうたくさん、おらほのまちはおらほの力で」と記されておりました。
 中核市教育長会におきましては、平成19年10月に県費負担教職員の人事権移譲に向けたプロジェクトを立ち上げ、調査研究を積極的に進めました。熱心な議論を経た後、平成21年2月には移譲に向けた提言を取りまとめ、文部科学省関係各局に提言書を提出したところであります。後日、御参照いただければと思います。
 お手元の資料1をお開きください。資料の右側のページになります。カラー刷りのものでございます。右側の部分を御覧ください。権限の移譲先につきましては、より住民に身近な市区町村が権限と責任を一体化して、教職員の人材育成・確保を行うべきであり、人事権の移譲先は当面、既に研修権が移譲され、人材育成の基盤ができている中核市を含む一定の行政規模を持つ受入れが可能な市区町村としています。
 その後、検討が進みまして、現在では小規模な市町村へ配慮したブロック単位の人事交流の仕組み構築をプロジェクト会議で検討しているところでございます。
 メリットとしては、青色の部分、一貫した人材育成システムの構築により、地域に根差した優秀な人材育成と、赤色の部分、地域の実状に応じた教育環境の充実による主体的な教育行政の展開としております。
 次に、児童生徒・保護者・住民に対するメリットとして、直接接する住民や保護者からの意見をよく聞き、顔と仕事ぶりの見える教育行政を展開できるなど、主なものを三つ、資料の下から2段のところに掲げております。本当に住民や保護者、私にも週に1回ぐらいは手紙や電話が届きます。先週のお手紙を紹介させてください。「教育長様、このたびは突然の失礼を申し訳なく思いながら手紙にしました。私は日和田町に住んでいる者です。日和田小学校の校長先生、女性のことです。日和田小学校に赴任して以来、毎日のことです。登校してくる子供たちを元気な挨拶と優しい笑顔で迎えをしています。毎日ですから、本当にすばらしいと感心しています。強い風の日も、大雪の日でも、あの凜とした立ち姿を見ますと目頭が熱くなります。毎日こつこつと継続することの大切さを、この年になって改めて学ばせていただきました。私ももう働くのを辞めようと悩んだこともありましたが、校長先生を見ていると、いや、まだ頑張らなくちゃ。エネルギーと日々生きる希望さえ頂いているところです。これからもお体に気をつけてほしいと陰ながら見守っています。これもひとえに教育長様の御指導と御努力のことと心から感謝申し上げます。1万円ではありますが、日和田小学校へと思います。」と、大切に折り畳んだ1万円札が入っておりました。早速、夢文庫のコーナーを日和田小学校に設けさせていただきました。このように、地域の声が常に入ってきますし、校長先生、教頭先生の名前と顔が全部一致しております。
 資料の一番下には、人事権移譲のために、広域における人事調整の仕組みの構築による安定した人材確保を図ることとしており、その仕組みについては資料の最後のページ、Q&Aの2番目にございます。「都道府県と市町村が共同で人事交流等に関する協議会を設置し、人事交流等に関する方針を定める」、そのようにしております。
 また、給与負担につきましては、同じくQ&Aの3番にあるとおり、本来は人事権者と給与負担者を一致すべきでありますが、義務教育水準の維持確保の観点から、教職員の給与や事務移管によって生じる関係経費など、財源等を確実に保障すべきであり、そのためには税制改革など抜本的な見直しが必要であることから、慎重に検討することとしております。
 やはり人づくりは教育、国づくりは教育からスタートいたします。義務教育費の10倍国庫負担が理想でございます。
 提言内容の資料説明は以上となりますが、この提言の後に、社会情勢の変化による教育に関するニーズの一層の多様化、いじめ・不登校問題の対応、そして震災被災地での児童生徒の心のケアなど、喫緊の課題が山積している状況を踏まえ、中核市教育委員会としては法改正による基礎自治体への県費負担教職員の人事権等の権限移譲の早期実現を要望するものでございます。
 なお、移譲に当たっては、移譲期間を明確にするとともに、移譲に向けた事務処理などに要する経費等の確実な財源措置についても要望いたします。また、給与負担については資料で説明のとおり、適切な財源確保を前提に今後移譲を検討していくことが望ましいと考えます。私たちの意見、要望を少しでも参考にしていただき、子供たちや先生方のために、よりよい答申がなされることを願っております。
 最後になりますが、震災の被災県の中核市として一言付け加えさせていただきますと、人事権の必要性を切実に感じるのは、被災した児童生徒の心のケア及び放射線教育の充実のための教員配置であります。人事権移譲から少し離れますが、郡山市も被害を受けた建物の解体撤去が進み、空き地が目立つようになりました。しかし、震災後の様々な困難を乗り越えてきた子供たちの心の中には絶対に空き地を作ってはならないと考えております。震災直後、小学3年生だった児童の詩を紹介して、中核市教育長会からの意見を終了といたします。朗読させていただきます。
 富田小学校3年、影山来君の作品、「大切で大事」。
 「僕の大切なもの。ゲーム、漫画、おもちゃ、金魚。3月11日の地震でいっぱい壊れた。いっぱい捨てた。いっぱい悲しいことがあった。僕の金魚も死んじゃった。でも、家族も、親戚も、友達も、みんな生きている。命が一番大切。頑張ることが大切。地震は嫌だけど、僕に気づかせてくれた」。
 もう一つ、「強さ」。小原田小学校3年、濱津息吹さんの作品。
 「強いってことは負けないってことじゃない。強いってことは泣かないってことじゃない。強いってことは負けても諦めないこと。強いってことは泣いてもまた笑えること」。
 以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございます。
 では続けて、全国町村教育長会より、神奈川県愛川町の熊坂教育長から御説明いただきます。

【熊坂会長】  全国町村教育長会の会長をしております神奈川県愛川町の熊坂でございます。
 全国町村教育長会におきましても、これまでも理事会等でいろいろ議論をしてまいりました。その中で挙がったことを基に率直に町村の立場でお話をさせていただきたいと思います。具体的には資料2を御覧いただきたいと思います。かいつまんでのお話になりますが、一つは町村の現状を少しお話させていただきたい。それを踏まえた場合に、人事権が市町村に移譲があった場合には、危惧されるものにはこんなことがあるだろうということを踏まえて全体の会の意見ということでお話をさせていただきます。
 はじめに町村の状況でございますが、そこに表がありますように、3年前でしょうか、教育委員会の実態はどうだろうという調査をいたしました。その当時は937ありまして、回答が872でございますが、全体のうちで半数を超える教育委員会が人口1万人未満であると。これは非常に重たい私たちの会にとっての事実でございます。そして、事務局員の数が平均で13.5人。1万人未満が9.4人でございます。いろいろ人事事務を行う上で、こういう実態があるということ。それから、教育行政の要になります学校教育の指導に当たる指導主事が未設置のところが、その数字で485とありますが、55%ぐらいの町村では未設置でございます。そういう重い実態が教育委員会にございます。
 教員の数との関係で見ますと、学校数がどうだろうかというのも表にいたしておきました。町村内で1校だけというところがそこにある数字の、これは%でございます。特に中学は半数に近い市町村がやはり学校が1校であると。この場合、人事権が動いてきますと、1度採用した教員は、極端なことを話しますと、一生その学校ということも起こり得る。このようなことがございます。
 その他、町村の実状としては、(3)の三つ目の丸ポチです、どうしても財政規模が小さく、いろいろなことをやるには大変な状態があるということでございます。
 2ページ目で、もう一つは、その反面、小規模なるが故に、学校・地域・行政が非常に近い関係にあり、人事権移譲で言われています特色ある教育活動は人事権の移譲とは関係なく行われているのではないか、このように実態として捉えてございます。
 それを踏まえまして、人事権が移譲になりましたときの問題点等を幾つか挙げておきましたが、1番目は人事事務を行う場合、担うことがこの教育委員会の体制では一つでは完全に無理だという実態を考えてございます。
 また、財政的にも、国の負担は3分の1ございますけれども、3分の2を担うというのはとても大変であると。こんな状況を危惧しております。
 それから次に、現状で見まして教職員の意向がどうしても都市部へ向く傾向にあると。そういう中で、都市部を中心とした形ができてくると格差が生じてくるのではないか、そのような心配をいたします。
 小規模なために新規採用の余地が非常に少なくございます。何年も新採用が採れないということも出てきます。そのようなことでバランスのとれた採用ができませんし、硬直化するということも起こるのではないかと。
 また、管理職の人事におきましても、1町村内一つの学校しかないということは、校長あるいは教頭の異動は非常に難しいわけでございまして、かなり広域でないとこういうところの人事も硬直化してしまう。このようなことも考えられるのではないかという危惧をしております。
 そして6番目でございますが、学校教育の、先ほどお話ししました指導主事が半分以上の町村で未設置ということは、教職員の資質向上のための研修を開催するにしても、市町村独自ではなかなか難しいのが現状でございます。現在は県とタイアップしてやっておりますので何とかなっておりますが、これがだんだん市町村独自ということになると、非常に格差が生じる。ひいては、これは教員の資質の問題にもつながるということを危惧しております。
 そのようなことで、最後の全国町村教育長会の意見のまとめでございますが、これは話し合った中でまとまって出てきたものを私なりにまとめたものでございます。現行制度においても、全県を一つとして、あるいは県内の複数の市町村を一つの単位として県が要となり、市町村の意向を踏まえての円滑な人事の運用はなされているという現状が、多くの都道府県からの話としてあります。そして、2で危惧したようなことは、人事権移譲が行われるとあり、様々な教育格差が懸念されていること。こういうようなことから、全国町村教育長会としては、現行制度の下で都道府県ごとに市町村と協働のもと、工夫改善をすることが最善であると、そのような意見でまとまってございます。
 なお、最後に書いておきましたが、この5月30日の全国町村教育長会の総会においても、国に対する最重点要望の一つとしてこのことが全会一致で確認をされてございます。
 全国町村教育長会の意見として申し上げました。参考にしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 では続けて、3番目の報告ということで、大阪府教育委員会事務局教職員人事課の城課長補佐に御説明をお願いいたします。

【城課長補佐】  城と申します。よろしくお願いします。
 私から、大阪府が実施いたしました豊能地区という地域への人事権の移譲ということで、その実施についての経緯等を説明させていただきたいと思います。大阪府においては、平成21年3月に大阪府の地方分権改革ビジョンを策定させていただきまして、教育以外のことも含め、大阪府の施策全般の権限移譲についての議論をさせていただく中で、教育委員会、特に義務教育の学校現場についても、先ほどの中核市の教育長様の御意見と一緒で、地域の民意反映、それから権限がきちんと役割分担ができているかどうかというようなことを含めて、本来、地域の実状に即した身近なところで行政をするというのが教育の一つということで、基礎自治体である市町村様に権限をおろせないかということを主体で考えさせていただきました。大阪府はそれに併せてコーディネート役を担って、広域行政へシフトしていくという趣旨で、権限移譲についての考え方を整理したところでございます。
 このような中、平成22年4月に大阪府の前知事と副大臣とのお話の場を設けていただきまして、その中で国の法律の改正以前に、任命権に関しては法の趣旨・目的が損なわれない範囲であったら、府の判断で市町村に移譲していただいてもかまわないという御意見を頂きまして、豊能地区へ人事権の移譲を行わせていただきました。その中で併せて言われたのは、府費負担教職員という給与の負担については別次元だということで、ここにも書いていますが、その時点での負担を市町村に動かすことはできないという解釈でございました。
 こういう経緯を踏まえさせていただきまして、大阪府知事から、府下市町村、全市町村に親書を出させていただいて、人事権の移譲についてのお考えを聞かせていただきました。その中で、この後で説明していただきます豊中市をはじめとする箕面市等の市町村が集まった豊能地区という地域の方で前向きに御検討いただきまして、権限の移譲がなされたというのが事実です。
 その記述については、次の3ページを見ていただきますと、権限移譲の経緯を載せております。詳細についてはここに記述のとおりで、時間の関係上、飛ばせていただきます。
 それから、この権限移譲に関して、府として権限移譲するときの基本的な考え方を整理させていただいておりまして、それは次の4ページを見ていただきますと、府としての権限移譲をするときの一つの基本としては、一定の人口規模が必要だと考えております。4ページの下の表を見ていただきますと、豊能地区という豊中市、池田市、箕面市、豊能町、能勢町の3市2町で65万人、これと他府県の政令指定都市の人口に相当する地域ということで、大阪府としては60~70万人の規模があるところについて権限を移譲することによって、一定規模を確保できて、人事の円滑な活動もできるのではないかという判断のもと、やらせていただいております。
 最後のページに、大阪府下の、大阪府は7つの地区で地区と呼んでおりますが、その地区の規模についても申しておりまして、一つの地区が約60~70万人ということで、地区ごとにまとめて動いているという現状がございます。御参考にしてください。
 それでは次に、具体的に権限移譲する中で課題と対応策について次の5ページを見ていただき、権限移譲について大きく課題が三つぐらいあるのかなと考えております。
 一つはやはり採用の問題でございます。
 もう一つは、人事の硬直化を招かないための人事交流が必要ではないかと。一つの市だけで人事をするのではなくて、地域での交流を行うことによって人事の硬直化を避けるということと、あと先ほどの教育長さんにもありました、研修というのがございます。これについても1地区だけでやるのではなく、大阪府下全域で共同開催等をやることによって、人事に対する対応を行いまして、豊能地区をバックアップさせていただくというやり方でやっております。
 次のページには、実際に移譲した人事業務の主なものを載せております。また見ていただけたらと思います。
 それから最後に一言、大阪府からの要望ですけれども、今回の人事異動を全国に先駆けて大阪府の豊能地区へ人事権移譲させていただいたのですが、その中で教育水準を守るということが前提にあるのですけれども、どうしても先ほどの教育長さん、給与負担と教職員の服務監督権が二重になっています。大阪府には給与負担権限がありますが服務監督権は市町村にあることになりますので、どうしても二重行政というところが大きく課題になります。給与負担は教職員の教育力向上を図るための共通性ということで必要だというのは十分分かっておりますが、現在、中核市の方でも閣議決定の中で給与負担については権限移譲できないかという議論がされていると聞いておりますので、できましたら特例制度として、豊能地区への権限移譲に併せて給与負担も御検討いただければと、そういう制度を作っていただけたらと考えておりまして、最後に一言申し添えさせていただきます。
 ありがとうございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 では最後に、大阪府豊能地区の教職員人事協議会、吉田事務局長から報告をお願いいたします。

【吉田事務局長】  大阪府豊能地区からの報告をいたします。私、吉田の方から、お手元の資料4に沿って報告いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
 さて、大阪府豊能地区と申しますのは、お手元の資料4の表紙の下の方に書いてございますが、大阪府の北部に位置する豊中市、池田市、箕面市、豊能町及び能勢町の五つの自治体、3市2町からなる地区でございます。その位置につきましては、表紙の裏側を御参照ください。地図を載せてございますが、大阪府では政令指定都市であります大阪府堺市を除くエリアを7つの行政ブロックに分けており、豊能地区はそのブロックの一つでございます。御覧のとおり、大阪府の北側に隣接し、西は兵庫県、北は京都府に隣接する地区でございます。
 次に3ページを御覧ください。豊能地区を構成する3市2町それぞれの概況は御覧の表のとおりでございます。なお、人口規模で見ますと、中核市であります豊中市が39万人余り。その一方で豊能町、能勢町がそれぞれ約2万人ないし1万人と、地区内でも人口規模の大変異なる状況がございます。これらの市町に平成24年、昨年4月1日をもって教職員の人事権が移譲されたところでございますが、次に4ページ、裏側をお開きください。表に、権限移譲の前後の比較をまとめております。黄色っぽく塗られておりますところが移譲された事務を示しており、教職員の採用選考、いわゆる採用試験でございますが、採用事務、人事異動、管理職選考、休職休業、懲戒分限、法定研修及び法定外研修、こういった事務が大阪府から各市町に移譲されております。
 また、このうち濃く塗っておりますところ、つまり採用選考、そして人事異動のうち市町をまたぐ広域異動、そして管理職選考、法定研修につきましては、大阪府との約束により3市2町が共同で処理をいたしております。
 なお、色のついていない部分、教職員の服務監督は従前から市町教育委員会の役割であり、また、給与の支給は人事権移譲後、従前どおり大阪府が行っております。
 さて、先ほど申しました採用選考など3市2町が共同で処理する事務の仕組みを、次の5ページに示しております。3市2町それぞれの議会での議決を頂き、地方自治法に基づく法定協議会として大阪府豊能地区教職員人事協議会という組織を設置し、事務処理を行っているところでございます。
 裏側、6ページを御覧ください。参考までに、大阪府豊能地区教職員人事協議会の組織図でございます。3市2町の5人の教育委員長から選出された会長と、5人の教育長が委員として基本的な事項を決定し、その決定に基づき、事務局職員11人おりますが、この事務局が事務を遂行しております。
 次に7ページを御覧ください。改めまして、当地区におけます権限移譲の特徴を少しまとめてございます。
 一つ目として、政令指定都市を除き、市町村への初の権限移譲であること。
 二つ目として、事務処理の特例として都道府県条例に基づき実施されたものであること。
 三つ目として、移譲事務の管理執行にかかる財源が大阪府の移譲事務交付金であること。
 四つ目として、事務の一部を複数の市町村で共同処理することを前提していること。以上、4点が見られます。
 裏側、8ページを御覧ください。権限移譲の効果でございます。権限移譲後、約1年でございますので、子供たちへの影響とかがこの変化としてはなかなか現れにくいところではございますが、まず一つ目として、昨年度、大阪府と合同で実施いたしました採用試験では、合格者に希望をお聞きして、その希望を参考に採用を行いましたところ、本年4月1日の新規採用教職員のほとんどが豊能地区での勤務を志す高いモチベーションを持った方々となったことがございます。
 また、二つ目として、市町への帰属意識の涵養(かんよう)につながる機会、例えば辞令交付ですとか研修ですとか管理職選考の場合ですとか、こうした機会が大変増えましたこと。
 三つ目として、地域に根差した特色ある研修や3市2町間の交流が深まりましたこと。
 四つ目として、権限移譲を機に市教育委員会、町教育委員会職員の責任感や自立意識が高まったことなどが挙げられると思います。
 最後の9ページを御覧ください。今後の課題でございます。
 一つ目として、豊能地区が大阪府と分かれて単独で教員採用選考を実施する際の受験生の確保、また、3市2町間での合格者の配分方法の確立が課題でございます。
 二つ目として、将来の過欠員や人材育成を見据えた3市2町間の人事交流の仕組みづくり。
 三つ目として、移譲事務の管理執行に要する財源の確保。
 四つ目として、人事権と密接に関連する定数、学級編制、給与等に関するさらなる権限の拡充に向けた検討などが挙げられます。
 今後ともこれらの課題に3市2町教育委員会が互いに協力し合いながら向き合っていきますことにより、この権限移譲を各市町の教育の充実に生かせるよう、取組を進めてまいります。
 以上、豊能地区からの御報告でございます。ありがとうございました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。各報告者には5分とお願いしたのですけれども、残り20分ほどしか残っていませんが、これから議論していきたいと思います。ただ、大阪府の人事権移譲の試みは全国でも初ということでいろいろ御質問も多いと思いますので、そういう質問も含めて20分ほど意見交換をしたいと思います。
 どなたからでも、どうぞお願いいたします。いかがでしょうか。

【梶田委員】  私、地元ですので、箕面市の教育委員を8年やりましたし、委員長もやりました。ただし、20年前です。もう20年以上前から豊能地区あるいは他の地区も、大阪府は大体北部はそうですけれども、例えば箕面市で就職したら定年まで箕面市なのです。ただ、皆さんで議論していただくときに、教育委員会制度は一つですけれど地域によって機能の仕方がすごく違うのです。例えば今申し上げたように、箕面市ではずっと、豊中市だったら豊中市でずっと定年までいくわけです。箕面市だったら箕面市でいくわけです。ここで建前は教頭、校長を選ぶのも府教委になっていますけれども、内申どおりに来るのです。我々はそれを8年間やってきたわけですから。ということはどういうことかというと、例えば箕面市で教頭さんになる、校長さんになる、あるいは豊中市で、池田市でというのは、そこの先生の年齢構成と関係しますから、いつも問題ないのですけれども、5歳ぐらい違うとか、あそこは早くなれるとか、そういうのがあって、私がやっていたときはどうやって管理職になるか、ほんの若干ですけれど、人事を交流させるかが大きな課題でした。研修も、箕面市だったら大きな研修センターを持っていてやっている。それから、もう一つだけ言いますと、この北部のところは非常に市民意識が高いところで、学力水準も高い。これは全国学力学習状況調査の結果を出してもらいますと、大阪府内は地区ですごい格差があります。
 こういうようなことがあって、はっきり言いますと、これは非常にやりやすいところであった。それから、今までの実態がそういうことで動いていた。これを私はここでやれるからどこでもやれるんだという感じで受け取ってもらってはいけないなと。例えば、どこでも教育事務所があるでしょう。大阪府の場合、教育事務所は随分前からないのです。もちろん本庁の方でやっているわけですから、それに該当する事務はやっておられますけれど。
 というようなことで、是非、こういうことが出てきている、これは一つのケースとしては非常に面白いということ、私もむしろ賛成する方向なのですけれども、この教育委員会制度を変えていくときに、例えば採用はどういうことであるかとか、人事異動をどうするかとか、研修をどうというのは、非常に慎重に、各地の状況を踏まえてやっていただかないと非常に無理なことが、私、先ほどのの市町村教育長協議会のお話を伺っていて、非常にそのことを思いました。慎重に考えていただきたい。
 例えばですけれども、同じ十何万人の町で指導主事をどのくらい持っているかということを1度出して御覧になると、例えば箕面市だったら指導主事を十何人持っているのです。ですから、これは研修のあれもできるのでいい。13万5,000人で十何人持っているわけです。ところが、私の知っている例で言いますと、10万人も持っていても指導主事はほんの数人というところも随分あります。今の採用、それから人事異動あるいは研修等々にしても、そういう体制づくりと極めて緊密に絡まっております。体制づくりということは先ほどから出ていますけれども、財政的な支援の問題、ただ単に教員の給与をどうするかだけではない問題もございますので、ちょっとだけ補足的に申し上げました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 他にどうでしょうか。
 今、梶田委員のお話を聞いて、私も前から質問したかったのですけれども、全国的には従来から狭いエリアで人事異動をされている県とか地域がありますよね。例えば関東であれば神奈川県なんかも、今、梶田委員が説明されたような知識はあるのですけれども、そういう事情であればこそお伺いしたいのは、人事移譲に当たっての課題と対応策で、今回の協議会の構成自治体内で、政令市に近い人口規模を持っているところと、1万人、2万人という小さい町もあるわけですよね。そういう財政力とかいろいろな行政能力の違いに応じて、今後の対応策として小規模な自治体に配慮したセーフティネットの構築とか、豊能地区の五つの市町間の人事交流のいろいろな工夫をしていかなければならないところを述べられていますよね。実際、その辺のところはどういう工夫ないしは今後どういう取組を考えているのかという点について、これは大阪府に聞いたらいいのか協議会に聞いたらいいのかよく分かりませんけれども、できれば追加の御説明をお願いできればと思います。

【城課長補佐】  大阪府として考えていますのは、1市町村ごとに対応するということは今想定をしておりません。できれば、先ほど述べました60万人から70万人、ちょうど豊能地区が六十何万人で、今でも実施地区単位なので、その地区単位での権限移譲が妥当なのかなと。地区を越えた隣の市と合体をして、また同じ規模ですることも今後あるかも分かりませんが、一定規模があって移譲されるものだと認識しております。

【小川分科会長】  協議会内において市町間の格差とか行財政能力の違いがあるのですけれども、それを踏まえて、小規模自治体へのセーフティーネットの構築とか支援はどういうふうに協議会として今後考えていこうとしているのかという質問です。

【吉田事務局長】  一つは採用試験ですとか管理職選考等々の諸事務、特に共同で処理する事務については協議会をもって事務を執行しておりますが、その人員構成あるいは費用負担について言えば、これは基本的に人口割りという形で過度な負担が町にいかないようにということは前提としております。
 具体の取組として問題になってきますのは、採用選考を大阪府さんと分かれて単独でやったときに、また更に市町の希望をお聞きしたときに、町を希望される方が一体どれぐらいいらっしゃるのかというところが問題になっています。そこは必ずしも町、市ということではなくて、豊能地区一帯の中で採用、そしてその後の人事交流という仕組みを整えていこうと申しております。特に能勢町さんなんかでいいますと、将来、1小学校、1中学校ということで近々移っていかれますので、先ほどお話がありましたように人事異動が全くできなくなります。したがいまして、広域単位での人事異動の仕組みを3市2町の中で整えて、計画的に動かしていくということで、今その具体の設計をこしらえているところでございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 他にいかがでしょうか。
 生重委員、そして早川委員、どうぞよろしくお願いします。

【生重委員】  記憶違いだったらごめんなさい。たしか能勢町に中高一貫校とか新しい試みが今一杯生まれていますよね。大阪府の中でも。本当に大阪府のチベットと呼ばれていると先生自らが笑っていらしたのですけれども、高校と一体化して、高校の人事は府のものではないですか。中高一貫で、これは私の個人的な意見なのですが、地元の小さければ小さいほど小中高の教育の連携とか連続性を持たせていくことのこれからの重要性というところで、おっしゃっているところの狭い範疇でも地域に根差した、腰の据わった教育が描けるということにおいて、ここには小中しか載っていないのですが、そういう特別な中高一貫校みたいなところの扱いとはまた、私もこの仕組みはすごく合理的ですし、なおかつ負担が軽くなる形で今後の目指すべき姿だなと思うのですが、教育の特色をもっと際立てていくために新しい試みが行われているというところと、その辺はどの辺で合致させていっているのかを知りたいなと思いました。

【小川分科会長】  吉田事務局長、よろしいですか。

【吉田事務局長】  お答えになるかどうか分かりませんが、人事権と教育政策を独自で一定連関する部分があろうかと思いますが、もちろん、例えばおっしゃいましたように、能勢町さんの場合、小中高一貫教育を人事権移譲前から取り組んでいらっしゃると。確かに人事権移譲されたことによって中と高で任命権者が違ってしまうというような弊害が出たことは事実でございます。ただ、そこの部分は、従前からの小中高一貫教育を継続させるという観点で大阪府教委さんといろいろ取り決め、協定をなさって、その継承を図っていらっしゃるということはございます。
 また、一般論になりますが、人事権との絡みで申しますと、こういう教育政策を打ち出していくためにこういう人材が欲しいとか、こういう職を配置したいということができるようになるという意味で、市町それぞれが同じやり方をするのではなくて、人事権をそれぞれが持っているところを活用するというお話はあろうかと思います。
 この4月1日で申しますと、例えば箕面市さんの場合は、副校長は大阪府内では小中学校ではなかったのですけれども、独自に副校長を市費という形ではありますけれども設定をされたり、あるいは豊中市におきましては、これも小中学校、大阪府内ではなかったのですが、大規模校や大きく課題がある学校に対して教頭を複数配置するという形で、人事権を早速活用した形で課題対応取組を進めているところでございます。
 以上でございます。

【小川分科会長】  よろしいですね。
 早川委員、どうぞ。

【早川委員】  二点質問させていただいた後、意見を言わせていただきたいと思いますけれども、豊能地区の任命権者はそれぞれの市町が任命権者になっていて、辞令書にそう書いてあるということですね。共済組合とか公務災害関係はそれぞれの市町がやっていらっしゃるのか、大阪府教育委員会がおやりになるか、どちらなのですか。

【城課長補佐】  共済は府です。

【早川委員】  府がやっているわけですか。それは移譲されようとは思っていらっしゃらない。

【城課長補佐】  給与負担法の一環ということで、給与については権限を委任しておりませんので、人事権だけ。

【早川委員】  分かりました。今、豊能地区や中核市の教育長会や町村教育長会のお話を伺って、それぞれが自分の地域の教育の質をどう向上するかとお考えになっていらっしゃるのはよく分かりました。
 いずれにしても、どう広域人事異動をすることができるかということがどうも鍵なように思うのです。それに対してはやっぱり、例えば中核市が権限移譲したら周りの町村は恐らく非常に不利な立場にならざるを得ない、そのことを主張されているんだと思いますし、豊能地区にしても、ある一定規模が必要であるという前提であるということは、広域人事異動が確保できることが条件だということだと思うのです。義務教育は特に地域に根差すということと、それから同時に、どこに行っても同じ機会均等の教育が保証されるという両面が相並列して初めて成り立つことであるので、そこのあたりをきちんと考えていかないといけない問題だと思うわけです。
 ということを考えますと、梶田委員から御指摘があったように、やっぱり各教育委員会、都道府県によって人事異動のやり方が随分違うと思うのです。そういうことを踏まえた上で、格差が生じないために広域人事異動の在り方のルールづくりと、そのことが非常に低いハードルでできる事務手続上の検討が必要ではないかと私は思います。

【木村会長】  関連して。

【小川分科会長】  木村会長。他にございますか。白石委員。それでは、木村委員。

【木村会長】  中核市の教育の機会均等が大前提でございます。豊能地区は非常に参考になっておりまして、中核市教育長会といたしましては中核市への単独移譲を求めているのではないのです。中核市や一定規模の市が核となってブロック単位での移譲が理想だと考えているわけでありまして、例えばブロック単位で移譲されますと、研修センターを持っている郡山市に周辺の研修が、普通ですと福島市まで行くと1泊2日の研修で、しかし、午後、授業が終わってからの研修もできる。指導主事もお互いに配置、交流ができる。そういうブロック単位で持っている力をどんどん加減していこうという思いがございます。
 あと、もう一点、ブロック人事権があると、これは都道府県によって実態は違うと思いますが、福島県の場合、南会津は年間積雪量が20メートルの豪雪地帯です。転入希望者はゼロです。転出だけは多いですけれども。私はそこの事務所長をやっておりましたから、血のにじむような思いをしました。ですから、そこにブロック人事権があると、そこにはふるさと雪国に一生を捧(ささ)げたいという情熱のある青年がたくさんいるのです。ただし、それが県の採用試験の高い倍率の中に入りますと、やはり採用ができない。しかし、ブロック人事の中での特別枠があれば、ふるさとに生涯を捧(ささ)げたい、そういう教師が採用になる。やはり中学校までの義務教育は、身近な地域を愛する、そういう情熱のある教師が必要です。そういう意味では、町村の教育委員会と相対するものでは全くございません。みんな悩んでいるのは、南会津の町村はそういう教師がいないということに悩んでいます。地元には希望している者がいるのです。それが採用制度が変わればどんどん採用されます。
 以上でございます。御理解いただければと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございます。
 白石委員、どうぞ。

【白石委員】  お尋ねしたいのですが、権限移譲による効果の部分が4項目ありまして、その下に課題がまた4項目ありましたよね。これは課題ですから、当然解決していけばいい話です。だけど、問題点とか困った点とか、そういった部分はあるのかというのが一つと、それから、この権限移譲のところで、権限移譲前のそのほとんどが「府教育委員会」になっていますよね。権限移譲後が「各市町」。この「各市町」というのは、教育委員会ではなく「各市町」ですか。というのは、服務監督は「各市町教育委員会」になっていますよね。ということは、それ以外は市町部局ということですか。
 それと、その下に、豊能地区の教職員人事協議会がありますね。この人事協議会は、3市2町のどういうメンバーで作っているか、そこのところを教えていただきたい。

【小川分科会長】  吉田事務局長、よろしいですか。

【吉田事務局長】  何点かございましたが、まず、この表の各市町へ移譲という表現でございますけれども、権限移譲前が府教育委員会となっておりますので、後ろも正しくは各市町教育委員会へ移譲と言った方がよかったかと思います。あくまでも教育委員会でございます。
 それから、困った点とおっしゃいました。かなりの部分は3市2町の知恵と努力で解決、いい方へ向かっていくと思っています。ただ、大きなものは、こう言っては恐縮ではございますが、やはり事務をたくさん受けておりますので人手とお金はたくさんかかっておりますので、その部分がなかなか、もちろん見合いは見つけていくわけですけれども、意外に労力はかかっている、お金もかかっているというのが実状でございます。
 それから、豊能地区教職員人事協議会の構成でございますが、これはそれぞれの市町教育委員会の事務局職員でございます。私は実は豊中市教育委員会の職員でございますけれども、11人の職員はいずれかの市町の教育委員会の事務局職員として私どもの事務所に来て勤務をしております。
 以上でよろしいでしょうか。

【白石委員】  ありがとうございました。

【小川分科会長】  比留間委員、どうぞ。

【比留間委員】  すみません、この豊能地区の頂いた資料の9ページで、今後の課題ということで、人事権と密接に関連する定数とか学級編制、給与負担、おっしゃるとおりだと思うのですけれども、その前提にその上にある財源の問題があって、こういう例えばブロックで人口規模が違う、あるいは財政力も違うところが一緒になって、将来的に例えばこういうのが移譲されてきたときに、財源が移譲される、あるいは定数の権限が移譲される、学級編制も移譲されるとなったときに、いろいろ政策面で、例えば今問題になっているような義務教育で少人数学級をどうするかといったようなすり合わせみたいなものはどういう形でやっていくイメージをお持ちになっていらっしゃるのですか。

【根来総括主査】  大阪府の根来といいます。教育施策につきましては、今のところ、もう豊能地区の各3市2町さんにつきましても大阪府と同じことをしていただいていますので、少人数学級につきましても大阪府は3年生以上は習熟度別授業をさせていただいていますので、同じ形でやっていただいているところなので、教育施策については一部、人事権移譲後も同じ形でさせていただいているという状況です。

【比留間委員】  今お伺いしたのは、将来的にこの権限が拡充されていくことを望んでいらっしゃるとするならば、それが拡充された後の段階でそういう政策のすり合わせを、要するにブロックの団体の中でどういう形でやっていかれる、これはかなり重たい、結局財政負担を伴う問題になってきて、それにどういうイメージを持っていらっしゃるかというのを、もしお持ちになっていたらお聞かせいただけないかなということなのですが。

【小川分科会長】  事務局長、どうですか。

【吉田事務局長】  御指摘のとおりで、検討の中にはそういうことも含んでいるわけでございますけれども、少なくとも今私どもが事務を共同しております法定協議会という仕組みでは持たないだろうとは思っています。それぞれの教育施策を担保する部分と、ベースの財源を確保して事務を配分する仕組みと、その辺をうまく合わせていかないと成立しないだろうというところまでは思っていますが、その先の具体的なイメージも含めて今後の検討かなと思っております。
 すみません、答えにならないかもしれません。

【比留間委員】  いえいえ、とんでもありません。

【小川分科会長】  比留間委員、よろしいですよね。

【比留間委員】  結構です。

【小川分科会長】  もしもなければ、ちょうど3時になりましたので、引き続きまた次回も諮問事項3は総括的な議論をする予定ですので、御意見がある場合にはまた次回述べていただければと思います。
 よろしいでしょうか。では、前半についてはこれくらいにさせていただければと思います。
 本日御説明いただきました4名の方、本当にありがとうございました。
 この後、後半の議論に入っていきたいのですが、その前に局長、審議官がお見えになっていますので、文部科学省から人事異動の御紹介を頂ければと思います。

【堀野企画官】  人事異動により新たに着任した職員を紹介いたします。
 初等中等教育局長の前川でございます。

【前川初等中等教育局長】  前川です。よろしくお願いします。

【堀野企画官】  大臣官房審議官初等中等教育局担当の義本でございます。

【義本審議官】  義本でございます。よろしくお願いいたします。

【堀野企画官】  以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、次の議題に入っていきたいと思います。後半の審議は、先ほどお話ししたように、諮問事項2の中でまだ残されていたテーマでしたけれども、教育現場の士気を高める方策、第三者評価の在り方について、そして諮問事項3の学校と教育行政、保護者・地域住民との関係について議論をしていきたいと思います。
 最初に事務局から、教育現場の士気を高める方策、そして第三者評価の在り方についてを資料5、資料6に即して説明いただきたいと思います。その後、門川委員から京都市を中心とした取組について報告を頂く予定です。
 では、事務局からお願いします。

【日向企画官】  失礼します。資料5を御覧ください。「教師の士気を高めるにふさわしい処遇の改善・人事管理の在り方について」ということで、1ページをおめくりいただければと思います。まず、教員給与についてでございますが、行政職、いわゆる事務職員についてでございますけれども、これは職務の困難性に応じて級が細分化されているのに対し、教育職の俸給表につきましては同一の職が一つの級に固定される単線型と言われております。そこにそれぞれの職の標準職務について触れさせていただきました。
 次に2ページを御覧いただければと思います。2ページが教員についての給料と諸手当の一覧でございます。行政職と共通のものもございますが、色をつけているところが教員特有の手当でございます。例えば上から3番目に教職調整額がございますが、これは教員には時間外勤務手当が支給されておりませんので、そのかわりのものでございます。それからその他、中ほど下の方に教育業務連絡指導手当、これはいわゆる主任手当と言われているものでございます。このようなものが教員の給料諸手当となってございます。
 次に3ページを御覧いただければと思います。「総額裁量制について」ということでございます。これは義務教育学校の教職員の給料の3分の1は国が負担することになってございますが、この算定方法について平成16年度から全面的に改められておりまして、中ほどを御覧いただければと思いますが、これまでは、以前は給料諸手当の費目ごとに国の水準を超える額は国庫負担の対象外となっておりましたが、改革後は費目ごとの国庫負担限度額がなくなりましたので、総額の中で各都道府県において自由に使うことが可能となったわけでございます。それによりまして、例えば給与水準を引き下げた分を教職員の増員に活用するなどの柔軟な取組が可能になっているわけでございます。
 次に4ページを御覧いただければと思います。これまでの教員給与の見直しの経緯でございます。例えば中ほどのマル2を御覧いただければと思いますが、部活動手当など教員特殊業務手当の倍増や、副校長、主幹教諭、指導教諭の処遇で、プラスの増額をすると同時に給料の調整額の縮減などの取組を行っております。平成23年度以降は新たな給与の見直しは行っていない状況でございます。
 5ページでございます。5ページは、教育再生実行会議第二次提言、それから教育振興基本計画におきまして、メリハリある教員給与体系の確立等について一定の記述がなされているところでございます。
 次に6ページを御覧いただければと思います。6ページは、平成24年4月に施行されました改正学校教育法によりまして、「新たな職」として副校長、主幹教諭、指導教諭を置くことが可能となりました。2番目にそれぞれの職務内容と設置数について挙げさせていただいております。
 推移といたしましては3番目に挙げさせていただいておりますが、主幹教諭についてはかなり多くの都道府県について設置が進んでいる状況でございます。参考までに一番下に、現在の学校の組織運営のイメージを付けさせていただきました。
 次に7ページを御覧ください。7ページは教員評価についてでございます。現在、教員評価につきましては、能力評価と業績評価による実施になってございます。併せて自己評価と第三者評価を組み合わせることになってございます。成果と課題といたしまして、例えば成果といたしましては評価が透明化・双方化された、また、面談前の授業観察を通じた校長と教員の意思疎通が図られたこと。課題といたしましては、評価者の質の向上や評価方法の見直しによる評価の改善、また、評価結果を人事や給与等の処遇へ反映していくことが課題となっておりまして、現在、都道府県・政令指定都市中、御覧のような数字で人材育成、昇任、昇級、勤勉手当等への反映がなされているところでございます。
 次に8ページを御覧いただければと思います。8ページは優秀教員表彰についてでございます。文部科学大臣の優秀教員表彰につきましては平成18年度から実施をされておりまして、昨年度828名の先生方を表彰させていただいているところでございます。また、各都道府県におきましても優秀教員表彰の実施をしているところでございまして、平成22年度現在でございますが、66教育委員会中58教育委員会で実施をしているところでございます。
 次に9ページでございます。9ページは「指導が不適切な教員の認定及び措置等について」でございます。現在、全ての都道府県・指定都市教育委員会において、指導が不適切な教員の人事管理に関するシステムが整備されているところでございます。数字についてはそこに挙げさせていただいているとおりでございます。
 また、指導に課題のある教員に対する取組につきましても、現在33都道府県・政令指定都市教育委員会におきまして、こういった指導に課題のある教員に対する研修を実施しているところでございます。
 最後に10ページでございますが、現在文部科学省におきましては、義家大臣政務官を中心に省内で検討チームを設置しておりまして、検討項目はマル3に掲げさせていただいておりますが、教職員等指導体制の在り方、教職員の人事管理等の在り方など多岐にわたっているところでございますが、今回のこの資料の関係で言えば、(2)に論点を挙げさせていただいております。こういった検討を平成26年度概算要求に向けて、現在省内において検討を進めているところでございます。
 資料5の説明は以上でございます。

【岸本参事官】  続きまして、資料6の説明をさせていただきます。おめくりいただきまして、見えにくいですが右下にページが打ってございますので、そちらに従って御説明いたします。
 まず1ページ目でございますけれども、教育委員会の点検・評価についてということで、これは冒頭にございますが、いわゆる地教行法の改正によりまして導入されたものでございまして、教育委員会は毎年管理及び執行の状況について点検評価を行う。その結果について報告書を作成し、議会の提出と公表の義務を掲げております。中ほどにそのグラフがございますけれども、議会報告の方法ということで、単に書面を提出するだけでなく、およそ半数のところで本会議、委員会説明若しくは審議が行われている状況、また、公表につきましても、特に都道府県・政令指定都市におきましては100%をホームページで出しているという状況がございます。
 また、ちょっと戻りまして恐縮でございますが、先ほどの地教行法の規定によりますと、第27条第2項で、教育に関し学識経験を有する者の知見を活用してこれを行うということになっておりますので、実際に下の(3)にございますが、大学教授等の専門家の方、また各種、国民一般の方、広く様々な方の知見を活用して、この点検・評価を客観的に行うという取組がなされているところでございます。
 続きまして2ページでございます。こちらは学校評価の関係でございます。学校評価につきましても、特に学校の裁量が拡大し、現場の権限が拡大していくといった中で、その活動をきちんと成果を検証しまして、必要な支援・改善を行うことは大事であるということ、そしてまたそのような学校の状況につきまして、保護者や地域住民等に対して適切に説明責任を果たすことが大事だという観点で、これは学校教育法の改正でございますけれども、平成19年に改正を行いまして、まず第42条にありますとおり、文部科学大臣の定めるところにより、学校運営の状況について評価を行うということ。また、第43条にございますが、学校運営の状況に関して情報を積極的に提供するという義務がかけられたところでございます。
 具体の制度はその下、2に評価制度の概要ということでございますけれども、この法律の制定以前から既に学校評価の取組は一部において行われておりましたが、それは学校の教職員当事者による自己評価とともに、教職員ではない当事者以外の者による外部評価という形で行われることによりまして、単に自己評価だけではなくて、そこに客観性、妥当性を持たせるという外部の目を入れる工夫が行われていたところでございます。
 先般、平成19年の学校教育法の改正で学校評価が入ったときに、この外部評価につきまして、これがおおむね保護者や地域住民といったような単純に外部と言える方ではない方によって行われているという実態がございましたので、従来の外部評価という言い方ではなくて、これを学校関係者評価ということで、自己評価と外部評価である学校関係者評価を組み合わせるという形での導入が行われたところでございます。
 そこの図の下にございますけれども、まず義務として行う自己評価とともに、これは努力義務としての学校関係者評価が位置づけられますとともに、併せて評価のしっ放しで終わらないように、これを設置者に報告する義務を課したという形になっております。
 次の3ページ目をおめくりいただければと思います。これによりまして、いわゆる努力義務としての学校関係者評価も既にほぼ100%近い公立学校で実施をされておりますが、一番下の2本グラフがあるうちの下側を見ていただければと思いますけれども、学校関係者評価の結果について、これは設置者に報告する義務がございますが、それによって設置者等による支援や条件整備に効果があったとお答えいただいている学校の数がおよそ7割に達しているという形で、PDCAサイクルが一定の機能を果たしていることが推測されるところでございます。
 ページが少し飛んでまいります。5ページでございます。このような形で自己評価と外部評価としての学校関係者評価と、更に設置者への報告の義務をかけたわけでございますけれども、同時に、例えば専門的な観点からの評価をどうするのかとか、あるいは全く学校と関係のない第三者による評価を実施すべきではないかという意見も大変強くございました。これにつきまして、平成19年の法令改正におきましては、第三者評価につきましては法令上の規定で置かない形といたしましたが、その後、検討を進めまして、平成22年の段階で、これは文部科学省が参考として示しております学校評価ガイドラインの中で、この第三者評価の在り方について一つの例を示したところでございます。それがその下の点線で囲んでおりますうち、二つの丸のところの(ア)、(イ)、(ウ)の三つでございますけれども、一つは専門性を評価すべきではないかという形に対しまして、学校関係者評価の中に専門家を加える形で専門性を高めるという方法。(イ)の場合には、これは違う学校同士で違う学校を評価するという形で専門性あるいは第三者性を担保するという方法。また、(ウ)にありますように、これは全く外部に専門家による評価チームを作成して行う方法と。これは飽くまで例示でございますけれども、この三つの例示をしているところでございます。
 この実施状況はその下にございますとおり、実際に行われているところは5.1%になっておりまして、そのうちの6割が先ほどの(ア)、すなわち学校関係者評価の中に専門性を持たせるという方法で行われております。
 ページが少し飛んでまいります。7ページでございます。これは情報提供の状況でございますけれども、これも上側のグラフで、少し見にくいのですが二つ目のところに、学校のホームページを作成して提供しているというところがおよそ8割ということで、かなり広く提供手段が整備されている状況でございます。
 下側に情報提供を行った内容というのがございますが、例えば一番下から五つ目のところに学力に関する調査の結果、あるいは三つ目のところに、運動・体力の調査結果、また、一番下に学校予算など経理の状況についてもということで、少しずついろいろな情報が公開されてきている状況にございます。
 実際、その次の8ページを御覧いただきますと、横浜市の例が一番上にございますけれども、横浜市は学校予算につきましてかなり大きな裁量を学校に持たせる形で行っておりますので、その多額な学校予算の編成や決算状況についてホームページで広く公開を行うという取組がなされているところでございます。
 最後になりますが、9ページでございます。ごく簡単に御説明させていただきますが、第三者評価に関連しまして、これは特に諸外国の状況を鑑みるということで、とりわけイギリスの教育水準局、通称Ofstedと呼ばれておりますが、その取組はしばしば紹介されているところでございます。イギリスにつきましては、御承知のように学校理事会という制度が導入されまして、人事・予算に関する権限は基本的に各学校が持っているということがございますので、その質を担保するという観点から、こういった形で国が直接に各学校を訪問してその評価を行うという制度が導入されているところでございます。
 Ofstedは教育長の外局という形で設置されておりますけれども、そこだけでおよそ2,000人の職員を持っている非常に大きな機関でございます。400人程度であったかと思いますが、各学校を訪問する視察官が置かれて、およそ5年サイクルで全ての学校及び保育所等を評価して回るという形で行われております。ただ、この制度自体は数年おきに見直しが行われておりまして、かなり厳格な形で運用されているときもあれば、現在の形でいくとかなり緩やかになってきて、短い期間で、報告もかなり短いものになって行われているというところもございます。
 ただ、権限といたしまして、これは4段階で評価をするわけでございますけれども、その中の最も下であるグレード4「不適切」と認定されたところにつきましては、その後、一定の改善措置を行った結果、進まないときに並行措置がとられることもあるという意味で、少し強い権限を結果的に持っているというのがございます。
 以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 次に門川委員、よろしくお願いします。

【門川委員】  ありがとうございます。このような機会を頂きまして感謝でございます。
 私は今市長をしていますけれど、教育行政に三十数年携わってきました。京都はこれまでから長くいろいろな課題が山積しているわけですけれども、保護者や地域と一緒に、また熱意ある教職員と一緒に取り組んできたことについて、御参考になるかと思いますので、少しの時間を頂いて発表させていただきます。
 資料のタイトルに「京都市における徹底した現場主義、学校裁量の拡大と『学び』と『育ち』そして『地域』をつなぐ学校運営協議会制度について」とありますとおり、京都市でこれまで取り組んできたことについてお話ししたいと思っています。とりわけ教育行政、学校運営は50年、100年の展望をしっかりと持ちながら、変えていくものは変える、同時に守るべきことは守ることが大事だと思います。
 まず、学校現場の裁量拡大と教育委員会の高い専門性の確保が大切であるという点についてです。京都市では学校に任せられることは学校に任せる、同時に教育委員会が高い専門性を持って学校現場に対する指導性を発揮します。自治と統括の緊張関係とレジュメにも記載しておりますとおり、調和といった言葉は使いません。可能な限り学校に任せる一方で、それをより超えた専門性でもって、学校現場を指導していく、こうしたことが大事だと思います。
 それで、まず学校裁量をどのように拡大してきたかということですけれども、(1)のマル1を読みますが、人事における校長裁量の拡大ということで、教員版フリーエージェント「FA」制度を作る。従来、学校の先生は辞令1枚で動かさなければならない、校長先生は“あてがいぶち”だという印象を持たれるケースがございました。しかし、「私はこういう学校教育をしたい」、あるいは校長先生が「こういう先生が欲しい」、こういう意思を尊重するため、こうした取組をしています。
 それから、教員公募制でございますけれども、学校運営協議会を設置した学校について平成16年から実施しています。例えばある学校で定年で辞める教員、転任する教員が5人いるとすると、こういう5人の先生が欲しいということを校長がホームページで公開します。それを見て、他校の教員が現任校の校長の承認を得て応募する。そして応募した教員が募集校の校長とコミュニティーの代表、学校運営協議会の代表と面接する、あるいは書類選考をする。「どうして〇〇小学校に来たいのですか」、「こういう理由でここの学校にどうしても赴任したい」ということを地域の代表、PTAの代表と校長先生と当事者とが議論する。そして、面接や書類審査の結果、是非ともこの先生に来てほしいということが決まれば、校長は教育委員会に内申する。そして教育委員会は可能な限りそれは尊重する。そうすると「我々が迎えた先生だ」、「自分が行きたいから行った。覚悟を決めて行ってきた」というようにプラスの効果が生まれます。先ほど、人事権をどんなふうに移譲していくかという議論がありましたけれども、やはり当事者意識を持つことが非常に大事だなと思います。
 それから、副教頭先生については、平成15年から導入しました。学校を運営する管理職が校長、教頭だけでは大変だということで、校長の要請によって独自に副教頭を配置する仕組みです。ただし、教務主任から副教頭になると主任手当が出ないため給料は下がるのですが、こうしたいろいろな問題があるのですけれども、こういうことも権限移譲によって各市町村で独自にできていったらいいなと思います。
 今、新たにやっていますのは、小中一貫教育の充実のために、中学校ブロック内の校長による人事案の提出です。この先生には小学校から中学校に行ってもらおう、先に中学校に行った先生をもう一遍、今度は小学校に戻ってもらって、小学校から子供と一緒に中学校に上がっていく、こんなことを中学校ブロックの校長案により提案してもらおうということをやっております。
 いかに学校長に権限を持たせて、当事者意識を持たせて、地域を巻き込んで取り組んでいくかということが重要です。
 その次に、長期休業期間の弾力化についてです。学校週5日制になりましたけれども、そんな中で授業時間を確保しようという取り組みです。これは校長の権限によりまして、少なくとも年間205日以上の授業を確保すると。政令指定都市は平均で今195日から197日ぐらいですか。10日ぐらい授業を多く確保しています。例えば小学校の学校給食。京都市は年間197回やっています。全国の平均より10回ぐらい多いということは、授業日数が多い、あるいは昼からの授業をやっているということです。小学校1年生の入学式の翌々日から給食をやります。正直、担任の教員だけでは大変な場合もありますが、6年生が応援に来るといった対応をとっています。
 そうした取り組みにより授業日数は平日で十分な日数を確保できているのですけれども、平成21年からは全小中学校で学校運営協議会の協力のもとで取り組む土曜学習をおおむね月1回やっております。
 その次のページなのですけれども、校長の予算の権限も強化しようということで、予算の枠にとらわれない合算執行をやっております。例えば節電の取組であるとか、あるいは教育活動の一環として教職員や児童生徒の手で学校のトイレを掃除するなどした場合に、本来トイレ清掃費に充てる予算を図書費に使ってよろしい、光熱水費を削減した分でコンピューターを買ってもよろしいということをやっております。
 さらに、学校予算キャリー制度ということで、予算の単年度主義を打破して、残った予算を翌年度に回すということができるような制度を作りました。
 それからその次ですが、教育委員会の専門性の確保による徹底した指導という点です。教育行政のプロを育てる。長期にわたって教育委員会事務局に勤務することで、行政職の職員が教育内容・学校運営も理解し、学校現場に精通しながら、教育職の先生と一緒に学校現場を指導、仕切っていくということであります。
 私はよく「教育委員会力」という言葉を使うのですが、教育委員会力というのは高い識見、多様な経験を持たれた教育委員と事務局スタッフの総和であろうかと思います。そういう意味で、教育委員会力を高めるために、専門、プロを育てていくことが大事だと思っています。
 同時に、教員出身の教育職と行政職の融合も重要です。教員籍の職員を教育委員会に143名配置しており、校長格の教員だけでも43人になります。京都市の学校数は全校種合わせて270校ぐらいですので、校長は半分以上が教育委員会勤務を経験していることになってきます。教育委員会も経験し、学校長も経験するということで取り組んでおります。
 また、指導力不足教員等の対策チームを設置して、早期に点検し、改革、再生プログラムを作って、それでも駄目な人は辞めてもらうということにも取り組んでいます。
 それから、教育課題に挑戦するプロジェクトについて、企画段階から保護者、市民の方に参加いただきながら、20を超える市民参加のプロジェクトを作ってきました。例えば、道徳教育振興市民会議は、河合隼雄先生に座長になっていただいて、「やっていいことと悪いこと、みんなで考えてみませんか」と2万数千人のアンケートをとって、しなやかな道徳を実践しよう、あるいは道徳の親子学習をしようとしてきた。「みやこ子供土曜塾」については、まち全体を子供の学びと育ちの場にということで、お寺、神社、民間企業、博物館等々と連携し、年間4,200講座、19万人が土曜日、日曜日にいろいろな学びに参加できる、そうしたことをやっております。
 3ページにいかせていただきます。京都市方式の学校運営協議会制度についてでございます。地域の子供は地域で育てる。京都は明治2年に「竈金」によって独自の、日本で最初の地域制の小学校ができました。「竈金」、かまどのあるところはみんなお金を出そう、あるいはかまどの数ごとに出し合ったとも伝えられています。五つかまどのあるところは5口、一つのところは1口ということで、当時は文部省もない時代ですから、みんな自分でお金を出す。自分たちで負担能力に応じてお金を出す。そして、知恵も出す。汗もかく。こういうことで学校運営が行われました。つまり、コミュニティスクールは京都の学校の原点であると思っています。ただしこれは京都だけの話ではございません。明治5年に学校制度ができたときに、明治5年の1年間で全国に1万数千校の小学校ができた。お上の力だけでできたのではないと思います。その当時、みんな地域の人が明治維新という危機の中で、親・地域が参画して学校運営をやられたんだと思います。
 その心を再び取り戻そうということで、キーワードは当事者意識。そして、学校としては説明責任、公開、参画、評価、改善ということを大切にしてやっております。いろいろな学校の情報を公開し、保護者・地域住民と情報を共有する、そのことが課題意識の共有あるいは危機感の共有につながると。更に行動の共有に高めて、評価も共有し、改善も共有していこうという取組であります。
 そして、この評価ですけれども、学校の教育活動、教師の教育活動をまな板の上に乗せて、ここがいい、悪いと言っているだけではよくならない。評価者自身も自らを振り返り、共に高め合う評価。学校が家庭、地域を高める、家庭、地域が学校を高める、こうした仕組みづくりが大切です。足りないところを批判し合う関係から、足りないところを足し合い、高め合う関係にしていかなければなりません。例えば、京都市では全ての学校で子供による授業評価をやっています。そのときに、子供が自らを振り返りながら評価するということで、評価シートには「予習・復習をやっていますか」、「先生の話をしっかり聞いていますか」、「分からないところは質問していますか」といった設問を設けると同時に「先生の説明は分かりやすいですか」、「学校が楽しいですか」と質問する。親に評価をしていただく際にも同様に「参観日に行かれていますか」、「学校便りを読まれていますか」、「子供が学校に楽しんで行っていますか」といった設問も設ける。
 相手を評価し、そして批判するのではなしに、まず自分を振り返り、そして双方が高め合おう。教育活動というのは双方向的な関係だと思います。一方的なサービスの提供ではありません。そういうことを大事にしながらお互いに伸びしろに気づく、こういう評価に持っていきたいということであります。
 学校運営協議会もそういう考え方でやっています。そのために、まず、徹底した「開かれた学校づくり」をしてきました。「参観」から「参画」へ、がキーワードです。まずは学校のことを知ってくださいということで、今から15年前に全ての学校でホームページを開設しました。あるいは「学校だより」を発行する、あるいは自由参観を実施する、等です。今までいわゆる参観日というものがありましたが、あれは特定の時間だけを公開する参観時間であった。そこで、月曜日のおはようの時間から金曜日の終わりの時間まで、ずっと来てください、いつでも来てください、こういうことを始めました。1週間ずっと授業を公開するということで、教師は非常に疲れた。私の知り合いの先生もふらふらになったそうです。でも、2回、3回やったら普通になった。加えて、2回、3回やっていると、参観に来た方、おじちゃん、おばちゃん、お父ちゃん、お母ちゃんが「先生、大変やな、わしらが何か手伝えることはあるやろうか」と言い出された。これは「参観」から「参画」です。当事者意識です。ほんまもんの開かれた学校づくりに徹底して取り組んでまいりました。
 そして、先ほど申しましたように、学校評価システムというのは私はよくないと思うのです。子供の学び、育ち、全体を評価するシステムが必要です。家庭で、地域で、子供がどういう状態にあるのか、それを学校、家庭、地域が共に評価し合う。そして自己評価もし、相手の評価もし、関係の評価もし、共に高まっていくような評価を目指しております。
 そうした取組の結果、現在では3万人を超えるボランティアの方々に、様々な教育活動に参加していただいています。例えば子供の安全安心ボランティアだけでも2万人、あるいは100を超える大学と連携協定に基づきまして学生ボランティアが2,000人、このようなことになってきています。
 4ページ目ですけれども、京都市の学校運営協議会ですが、法の趣旨を更に発展させようということで、一つは校長の権限あるいは責任の明確化に取り組んで参りました。校長のリーダーシップによる学校運営をより評価しようということです。京都は非常にいろいろな地域があります。限界集落もあります。あるいは政治的な対立で非常に困っているという地域もあります。学校運営協議会を設置する当初、そうしたところで、今以上に親の顔色を見て学校運営をしなければならないのか。地域の有力者の顔色を見なければいけないのか。こういう抵抗が校長先生方に非常に強くございました。地域からも心配の声がありました。そこで、校長のリーダーシップをしっかりと保証することに留意しました。コミュニティスクールは校長が申請し、教育委員会が指定する。そして、校長の推薦で教育委員会が委員を任命する。こういうことにしています。その上に、なおかつ学校運営に著しい支障を学校運営協議会が与えた、マイナスになっている場合は、第三者機関を設置し、第三者機関に諮った上で教育長が学校運営協議会の解散を命ずることができるという担保もしました。しかし、これは一切機能しませんでした。有り難いことです。心配は杞憂(きゆう)でした。しかし、こういうことを担保しながら、勇気ある校長がどんどん学校運営協議会を設置してくれました。学校運営協議会及び学校評価に関する検証委員会という組織を作りまして、学校運営協議会の活動の客観性・信頼性を担保するために、専門的な観点から検証と評価を行っております。
 それから、その次に、学校教育活動への参画・支援を進めるために、学校運営協議会の中に企画推進委員会を設置しています。どうも学校運営協議会といったら学校の予算を審議する、人事について意見を言う、このように思われるのですけれども、私は学校の応援団になったと言い切っております。例えば、一つの学校には140人の企画推進委員がいます。私も学校運営協議会を見に行きましたら、こういう体育館のようなところで全体会は20分でぱしっと終わった。あとその140人が10ほどのブロックに分かれて、例えば安全を確保する部会、あるいは学習支援の部会、国際交流を進める部会など、地域に応じていろいろな部会を作って、その部会ごとにいろいろな活動をする。正直に言いまして、地域にいろいろな有力者がいらっしゃいます。その人をその部会ごとにトップにするのです。そうすると、切磋琢磨(せっさたくま)して向上していく。一つにまとめたら主張がぶつかり前に進めない可能性がありますので、こういう工夫をしている。これはある学校の校長先生が発案した方式で、すばらしい現場の知恵だなと思いました。
 それから、先ほど申しました学校評価。双方向で高め合う学校評価をやっていく。親が変わらなければ子供は変わらない。地域が変わらなければ子供は変わらない。同時に、親・地域を変えられる学校でなければ、あるいは子供を変える学校でなければ、親・地域の信頼を得られない。この双方向でやっていく必要があると思います。学校批判だけしている組織では、学校教育にマイナスになると思います。
 それから、教員公募制。先ほど申し上げました。
 今後の展望ですけれども、中学校区を単位とした小中、小小の連携、そして地域・保護者の連携を強化するために、更にこの制度を生かしていきたいと思っています。
 一点、課題があります。事務的な作業が多いです。評価のための評価にならないか。これをいかに学校の先生が、簡素な事務手続により進めていくかということであります。もう一つ、学校運営協議会の設置拡大であります。京都市では、各校の実情・課題を一つ一つ乗り越えながら学校運営協議会を設置しておりますので、一斉に設置する方式はとっておりません。現在、小学校で85%、中学校は5割、総合支援学校・特別支援学校は100%ということですけれども、早急に、2年以内に小学校は全校に持っていきたいと思っています。それ以外に、学校評議員制度とか評価システムもございますが、学校運営協議会と同様に、中身を確認しながら高めていきたい。
 ただ、一点だけ、インセンティブが必要だなと思います。例えば認定NPO法人のように、学校運営協議会に対する寄附により税額控除できる、学校運営協議会に、私学に寄附するのと同じように寄附を集められるとか、あるいは教員表彰制度を文部科学省に強化していただいていますけれども、学校運営協議会の関係者の表彰制度を大幅に拡充してもらうとか、いろいろなことをやってほしいなと思います。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。残り20分ほどありますので、今、事務局と門川委員からの報告から、諮問事項2の教師の質を高めるにふさわしい処遇の改善、人事管理の在り方、教育行政や学校教育に係る評価の仕組み、そして諮問事項3の学校と教育行政、保護者・地域住民との関係等々について、皆さんから御質問を含めて御自由に御発言いただければと思います。
 生重委員、そして梶田委員ということでお願いします。

【生重委員】  大分前から京都は何度もお邪魔しているので、京都のことはよく知っているのですが、本当に京都は京都らしく地域の意欲を高めていく、御意見を見せていただいていても、本当にその辺りが上手に回っているなと。陰なる御苦労とは存じ上げているのですが、それ以外でも、やっぱり前向きに行こうというところが京都の伝統文化というか地域性とか個性を生かしてやっていらっしゃる。
 私は地元が杉並区でございまして、杉並区は昨年までに学校支援地域本部を全校必ず置くことといたしました。平成27年度には全校がコミュニティスクールになります。もう半分以上がなっているのですが、コミュニティスクールの方が若干ボランティア制度的にはもらっているのですが、評価のところの統計とか事務とか、そういうことも全て学校運営委員会の評価部というところがございまして、そこが請け負っております。教員に事務がたくさんいくということは、それだけ子供と向き合う時間が減ることになるということで、学校を地域から支えていく支援本部で放課後もまかない、それから授業に対する外部との連携もまかない、朝の子供たちのスポーツ若しくは朝学習、そういうことも先生たちが授業準備をなさる時間を十分確保できるようなところを担保しつつ、地域住民ができるところで教員と協同しながら、教員の方針の基にやっていくという。これは京都のやり方、杉並区のやり方、いろいろなやり方があると思うのですが、前回、こちらを私は欠席したのですけれども、資料のコミュニティスクールと学校支援地域本部の資料にもこの効果が出ているかと思うのです。
 各地の研修に随分お邪魔しておりますが、新潟市は「新潟市は変わったか」と銘打ってまで教育フォーラムを開けるぐらい、自らを変わったかと市民に問いかけられるぐらいの意識が上がっていくという意味においては、私はこの施策を教育委員会制度が、先ほどの形でかなり、なるほど、人事が固まらないためにはこういう方法があるんだなとか、事務的な手続の軽減化とはこういうことなのだというのを実感したのですが、それよりも、それもすごく大事で、今後の教育委員会制度の中で、住民の参画なのです。その参画という意味において、これからますます重要性を増していくのはこのコミュニティスクールと学校支援地域本部の在り方で、門川市長がおっしゃったように、人任せにしない、批判をしない、自らが課題を感じたら取り組む、できることをやるという意識を住民の中に作って、子供たちの教育は社会総がかりであるということを、文部科学省はもっと分かりやすい言葉で伝えていかなくてはいけない。
 私、先日、過疎地の高校の先生たちの相談に乗るというちょっと変わった会に、ですからさっきの質問の大阪の先生の話も相談に乗っていて、スリーアウトでチェンジではなくて、スリーアウトで廃校になるのだという切迫した状況を伺ったり、いろいろな地域の苦しみみたいなことを吐露できる場づくりをしていて、銀座でそういう話合いをするみたいな会をやっているのですが、そこに参画していろいろな話を聞いてきた。地域の個性を生かして、住民がまず自ら立ち上がって、学校教員が真の教育を施せるような環境づくりをしていくということが、教育委員会制度が良いように変わっていくための最大の基盤であり、ベースを作っていく大切なことだということだけは間違いなく、揺るぎなく、私は思っておりまして、自分が13年にわたってこれをやってきているというのもありますが、そこのところをまず最大限働きかけながら、これは予算の軽減にもなる。
 先ほど御提案があったように、実は私の町では、うちはホタルを呼び戻す環境をテーマにする学校だと言ったら、学校支援地域本部が別組織として500円でホタルをテーマにした絵を描いたクリアファイルを販売して、地域住民から基金を募る。区の教育行政からのお金を当てにしないで、学校内の環境教育に必要な、資するものを用意するとか、子供たちのためのテラスを作ろうとか、それ学校ごとの学校支援地域本部がすごく工夫しながらやっている。コミュニティスクールはそういう経営をつまびらかにされているところで了解をし、協力をするという形で、だから評価の部分と、この夏休みには先生、地域、PTA、一般保護者も交えながら、コミュニティスクールでワールドカフェを毎年開催しておりまして、中学校バージョン、小学校バージョン、今年は3校合同CSというのも昨年始まったのを継続していこうということで、地域の個性を出して、中小小という形でコミュニティスクール同士もつながりながらやっていかなくてはいけない。そのためには、ファンドレイズの問題もきちんと捉えて、自分たちが自分たちの地域で学校を残していくためには、都市部であろうと若干寂しいエリアであろうと、何とかしていこうと地域住民自体が思っていかないと駄目なんだと。そこが教育委員会制度が今日に変わっていったときの最大の武器と言ったら変な表現ですけれども、魅力を引き出していく大事な要になっていくのではないかなと思います。
 すみません、意見で。

【小川分科会長】  ありがとうございました。残り15分ぐらいですけれども、では梶田委員。

【梶田委員】  私、今日、京都市の教育委員会の取組について、門川先生からこういうふうにまとまったお話を伺う機会があって非常によかったなと思っております。
 これは私、ずっと見てきたのですが、私は京都の二つの大学にもう十何年おりましたし、今でもいろいろな意味で京都と関わっておりますので、大体、教育委員会でも政治家でも語らせれば上手に語ります。言葉は非常に上手。ところが、京都の場合は事実として、すごい教育の改善を誇っております。今お話になったのですけれども、私は見ていて、あそこは教育に関するいろいろな運動も盛んなところで、やはり公立の学校がある時期市民の、こう言っては何ですけれども、信頼を失っていた時期があると、これは大阪も同じことですけれども、したがって京都も大阪もそうですが、私学が非常に発達しております。ところが、今や非常に公立の信頼が大きく回復して、上手にみんな語りますけれども大阪がもうひとつなものですから、大阪の優秀な子供たちが京都に流れていっているという。実は私は大阪府の教育振興基本計画のまとめ役をさせられまして、そのときに府教委はいろいろな資料を出してくださいましたけれども、京都は事実として変わってきている。
 語られなかったことをちょっとだけ申しますと、非常に教育委員会の当事者意識がある。これが大きいと思うのです。ですから、ちまちました教育制度よりも、やはりそれぞれの市が、教育長さんであるとか、何とか部長であるとか、課長であるとか、どこまで責任を持ってやるかということが非常に大きいのではないかと私は思います。例えば、本当に問題のある先生に辞めてもらっているのは、御承知のように、横浜もそうですけれども、京都は多いでしょう。一番早く条例を作って形を作ったのは大阪ですけれども、ほとんど辞めてもらっていませんというようなことがあります。
 長くなってきました。二つ言いますと、よそはなかなかやっていないことで、一つはこれだという課題を持った学校の校長をなかなか変えない。これはほとんど機械的に3年とか4年で変えていますでしょう。例えば市立堀川高校、荒瀬校長。もう長く、10年ぐらいやったのではないですか。あるいは今出ました御所南の村上校長も10年ぐらいやったのではないですか。それから、私の友人が一つの中学校、どことは言いません、とても大変なところをやらされて、これも11年やりました。最初の一、二年は授業にならない。荒れた学校で、全然授業にならない。ところが、最後の二、三年は親もみんな一生懸命支援しますけれども、すごくいい授業をやって、最後の二、三年は本当にすばらしい中学校になりました。モデル的な中学校に。ただし、校長さんだけ腹を立てていました。とうとうここで最後までいかされたと。だけど、そういう思い切った、適材適所とはおかしいですけど、機械的でなくて人の張りつけの、これは私はよそでなかなかできないなと思っています。
 長くなるけれど、もう一つだけ。おっしゃらなかったことで、私が関心ありますけれども、門川先生が教育長のときに便きょう会を作られて、何かというと、仲間の何人かと一緒に学校に入り込んで、トイレ掃除をするのです。教育長が来られて、何人かと一緒に素手でトイレ掃除をしてごらんなさい。あそこの学校の先生、もちろん校長以下ですけれども、それはしゃんとします。例えば、これも私は一つの当事者意識だと思っています。そういう口先で言うのは簡単ですけれども、教育の世界ではきれいな言葉が本当に花盛りだけれども、事実として、例えば人事で、あるいは事実として教育長やら主要な人たちの動きで、やはり変えてこられたのではないかと、私は外側から見て、関心して、今でも本当に思っておりますので、プラスアルファを言わせていただきました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 では、あと村上委員、そして細谷委員にお願いします。

【村上委員】  二点申し上げます。一点目は京都の事例を御紹介いただいた中で、以前も申し上げたのですが、やはり特徴として教育行政のプロがいらっしゃると、育成を明示的にやっているというところは、今回の制度の話を考える上でも非常に重要なところだと思っていまして、教育委員会制度の話だと、どうしても市長と教育長と教育委員の関係というところに焦点は当たるわけですが、一方でやはり事務局の話も重要なわけでして、しかし、今までそこのところはまだ時間的に十分議論が詰められていないように思います。そのときに、やはり教育委員会というか、教育行政の批判の一つとして教職員集団が閉鎖的であるとか、そういった教育業界は閉鎖的であるみたいな批判が、本当かどうかよく分かりませんがあるわけですが、これは一つには教育委員会制度があること自体よりは、第一線で働いている現場の職員がすごく大量にいると。100万人いるというような、教師という仕事の特徴が制度とは別にあるのかもしれませんが、そういうところで、一つは教員が行政に入るということはあるわけですけれども、行政職が積極的に教育に入っていくというような仕組みも、事務局の中で検討されてしかるべきなのではないかと。これは門川委員のレジュメの中にもありますが、教育委員会制度としての問題でもあるのですが、一方で国と県と市町村の関係で、こういった一定の規模がない教育委員会でどういうふうに教育行政のプロを育成していくのかというのが非常に重要な視点だと思います。
 もう一つ、つけ加えると、京都のような大きな人口規模を持った自治体でも実際にはなかなかできていないわけでして、そういった都道府県や政令市のような、京都市クラスの大きな自治体でなぜ今できていないのか、どういうふうにすればできるのかという、そちらの視点も必要だと思いますので、やはり教育委員会制度の在り方、それから国、県、市町村の関係を考えるときに、教育行政のプロ、これは教員で行政のことを分かっている人ではなくて、行政職で教育のことをよく分かっている人をどういうふうに育成していくのかという視点が非常に大事であると、ここは強調しておきたいと思います。
 二点目は簡単な話で、教員のインセンティブの話で、この分科会で十分扱えるか分からないのですが、教員の給与体系を考えるときに、給与のメリハリと言ったときに、一つは職階で、校長、教頭、教諭で差をつけるということと、もう一つは評価によってインセンティブをつけるということがあるのですが、もう少し職務手当というか、純粋に、例えば部活動であるとか、今もちょっと増額の話がありますけれども、そういった純粋な職務に応じた手当の在り方というものももう少しウエートを置いて考える必要があるのではないかと。例えば、やっぱり先生方の間では中3がしんどいとか、担任を持つと仕事が増えるとか、そういう実感があると思いますので、例えば一つの案としては、思い切って担任に手当をつけてしまうとか、そういった職務に応じた手当をもう少し評価とは別にウエートを置くという考え方もあり得るのではないかと思いました。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 細谷委員。

【細谷委員】  失礼いたします。私は、教育現場の士気を高める方策について、お話ししたいと思います。
 これまでの資料等を見ても、教員の処遇改善についてもやはり給与面、今、村上委員がおっしゃっていた手当の部分、こういうのが大変前向きに国の方も検討していただいていますので、いいかなと思います。それから、教員表彰も昔から国あるいは各都道府県、自治体でもやっていると思いますが、実は私、今からもう10年近く前、東京の江戸川区で教育委員会におりまして、そこで指導課長をやっていたときに、頑張っている先生方をどういうふうに励まして、そして評価してあげようかということで、とにかく、今回のこれもそうですけれども、やはり区の教育委員会ですので、そんなに大それたことができない、じゃあということでやったのは、教員の表彰とセットで、表彰された教員が翌年から初任者研修、それから2年目、3年目教員研修の専属講師に充てるのです。なぜそういうことをやったかというと、いろいろ話をしている中で、評価してくれるのは確かに、そういったお金をもらうのも有り難い、表彰されるのは有り難いけれども、実はもっとうれしいのは、若い先生と接触しながら、若い先生を育てる、そういうことをやるのが実は先生方はすごく喜びを感じているのです。それでそういうような制度を作りました。
 この教員表彰も江戸川区の場合、非常に厳密にやりまして、当該校の校長先生の推薦、それから教科ごとの教育団体、研究会があるのですけれども、そこの会長さんの推薦、プラス、指導主事がその学校のその教員の授業を3会ぐらい見て、そして評価をしてくるといったデータを集めて、表彰に値するという形で表彰するのです。そして、その方々が翌年初任者研修、あるいは2年目、3年目研修の幾つかの班に分かれて、江戸川区は教員の数が多いですので、班に分かれて、そこについてもらって、1年間ずっと彼らの研究授業あるいは指導案づくりのお手伝い、指導・助言するというふうにやりましたところ、非常に先生方、何が一番うれしかったかというと、それが一番うれしかったと。現に、その先生方というのは、初任者から3年間続ければですけれども、今でも交流をしている、あるいは相談や何かをやっている、そういう関係になると。ある意味では師弟関係みたいな形になるのですけれども、こういったことも教員の士気を高める一つのやり方かなということで、情報提供ということで聞いていただければと思いました。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。ちょっと時間がオーバーになるかもしれませんけれども、手短に、そちらから。竹原委員からこちらの及川委員まで、お願いします。

【竹原委員】  学校運営協議会と学校支援地域本部の両方に関わっており、門川市長のお話を興味深く聞かせていただきました。歴史的にまちづくりをしている中で人づくりをしっかりされてきたこと、竈金の話は何度もお聞きして感動しています。そしてどの地域にも、昔からおらが学校という様々な活動があり、先日「懐かしい学校を改めてつくる」という言葉を聞いて、コミュニティスクールはそれを作っていく過程だと思いました。
 そこで一つお聞きしたいのは、コミュニティスクール、地域とともにある学校を作るときに、職員室の中での合意や地域での認識をどのように広げられていらっしゃるのか、そのポイントをお聞きしたいと思います。

【門川委員】  正直言いまして、なかなか大変なことでした。例えば、地域で歴代のPTA会長をまとめている有力な人物がいる。一方で自治会をまとめている有力な人がいる。その2人の意見の対立を調整するのに校長は大変な苦労が必要であった。こういう学校もあるのです。部会を設けることにより徹底的に会議の人数を減らしたのです。その有力な2人が自分たちで「わしらは別の部会に入ろうな」と言われた。こういうようにひとつひとつ壁を越えていった。
 あるいは、「校長先生、どうして君が代を斉唱するのですか」と毎年何遍も同じ意見を言うPTA会長がおられた。校長はそれに一生懸命答えなければならない状況になってしまった。そのときは、普通のお母さんが「会長、いつもあんたはその話ばかしや。もうやめて。子供の教育の話をしよう」と一言言われた。それ以来、君が代の話題は一切しゃべらなくなった。
 こういうように一つ一つ乗り越えていく中で京都市の学校運営協議会はできてきたので、一斉に全校をコミュニティスクールにしますということはできないし、するのはよくない。ひとつひとつ積み重ねる。そのときにやっぱり挑戦心のある校長先生の先行事例、それがあったからこそ職員室が変わってきたと思っています。
 また、すぐれた地域の方、PTAの方々に頑張っていただいて、いい結果を出していただいたおかげで、それをうまく広げてここまで来たかなと思います。やはり現場力を感じます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 船橋委員。

【船橋委員】  教師の士気を高めるにふさわしい処遇の件で、先ほど村上委員から話があった金銭的なところは非常に大事だと思うのですけれども、それ以外のところで、私も15年ぐらい会社を経営したり、企業の100社ぐらいの人事のコンサルティングをしている中で、どの会社も苦労しているポイントなのですが、参考になるのではないかというようなのを、時間がないので三つぐらいと思っています。
 1個は、私の会社の社員もそうなのですけれど、とにかく、無駄という言い方は変なのですけれど、業務量を減らしてもらうというのは大事で、無駄な会議とか報告とかですね。学校でいうと多分、これは無駄と言っては失礼かもしれないですけれども、アンケートがやたら多いとか、入試に際して全部手書きで生徒に何か出さなくてはいけない。これは文科省の話かもしれないですけれども、電子化を進めるとかそういうのもあるかもしれないのですが、一つ、参考でいうと、今、東北であるNPOがとても学校でうけられているのが、被災地で先生が大変だったので、いろいろなサポートをしてあげたと。それは授業のサポートは嫌がるのですけれども、身の回りのサポートは非常に喜ばれて、これが被災地以外にも展開しそうだとなっているのです。つまり、これはどこの学校でもどこの地域でも問題だというぐらい、先生方は業務量にあふれているということなのですけれども、ここをどう効率化するかというのは1個、非常に大きなインセンティブなのではないかと思います。二つ目が、僕はちょっと分からないのですけれども、先生も学校の、例えば自分のノウハウを学校に提供するとか、他の先生に展開するとか、いろいろな貢献の仕方があると思うのですけれども、そういう評価のポイントをもうちょっと多様に持ってあげることも、会社でもそうなのです、売上げだけ上げているのではなくて、何か自分ができたことを他の人に教えてマニュアル化することに評価するとか、それは多分学校評価にもつながって連動していくとなおさらいいと思うのですけれども、そういう違う評価の仕方。
 三つ目が、多分子供から喜ばれるとか、親から評価されるというのは非常にうれしいことなのではないかと思う中で、先ほど市長がおっしゃっていましたが、学校を開放することで親が学校の先生の大変さを知った、これは非常にいいことだと思うのですが、例えば文科省が表彰していますけれども、僕は各学校を年に1回、必ず表彰するみたいなことを文化として広めればいいのではないかと思うのです。子供たちが選ぶ、例えば10パターンの先生、元気な先生もいれば、話を聞いてくれる先生もいれば、いろいろな賞を子供が選ぶ、あるいは校長が10パターン表彰してあげるみたいな。それをとにかく親に提示するというか。やっぱり子供から喜ばれているというのと、親からの尊敬、信頼を獲得できないと、先生は苦しいと思うので、そこを何かサポートしてあげる仕組みみたいなのがあると、結果的に教員の士気が高まることになるので、お金もすごく大事な部分なのですけれども、それ以外のところに、多分民間は相当、企業は工夫してやっているわけなのですけれども、あまり、例えば行政とか学校で見たことがないのですが、そこら辺はすごく学ぶところが多く、使える部分があるのではないかと思いました。
 時間がないので、参考までに。

【小川分科会長】  ありがとうございます。
 辻委員、お願いします。

【辻委員】  私も手短に申し上げます。資料5にあった教員の給与に関してです。今日の説明にもありましたが、1ページで見ると行政職は10級制です。これに対して教育職は一応括弧つきで5級制ですが、しかし、実際上は、教員生活の主たる期間を2級で過ごすという状況になっていて、いわゆる通し号俸状態になっています。今日の能力と実績に基づくという公務員の任用原則を考えますと、級をもう少し細かく分けて、その中で成績率に基づいて勤勉手当を支給し、査定昇給を実施することが重要だと思います。ここのところがベースになければ、やっぱり実力に基づいて自ら磨いて頑張っていくという姿勢はなかなか生まれてこないと思います。
 しかし、久しく教育職はこの体制で来ています。昔は行政職も自治体によっては事実上、通し号俸になっているという団体もあったりしましたが、今はかなり改善されました。しっかり給料表を見直して、それに基づいて人事評価を的確に運用するということを実現すべきだと思います。
 ところで、先ほど手当について言及がありました。一律の任用を補正するような形で各種手当を支給してきたという歴史がありました。しかし、今は、公務員全体で手当は基本的に削減対象になってきています。私はこの手当を増やして、それで差をつけていくという給与支給の考え方には基です。差をつけやすい給料表を構成して、しっかり本給のところで差をつけて、的確に運用するべきだと思います。
 もう一点、これは後日でいいのですが、お尋ねしたいことがあります。京都市さんの方から非常に興味深い話をお伺いしました。なるべく現場に近いところで予算を柔軟に運用していくことがよいというのは、学校もそうですし、政令指定都市でいうと区役所の地域づくりなんかも同じだと思います。しかし、これについては古典的な課題として、議会との関係があります。それから特に教育委員会の場合は、予算権が首長にとって直接行使できる貴重な権限となっているという事情もあります。京都市の場合は極めて教育に理解の深い市長さんがやられているので執行部とはうまくいっていると思うのですが、議会との関係を含めてうまくやっていくために、全体として予算額に制限をかけているとか、どこからどこまで運用にまかせているのかとか、その辺のところをお聞かせいただけたらと思いました。
 以上です。

【小川分科会長】  最後になりますけど、及川委員。

【及川委員】  教師の士気を高める処遇の改善・人事管理の在り方のことについて一言、いつも思っていることです。教員評価についてなのですが、基本的には教員評価というのは能力開発型というような評価の仕組みであるわけですが、当然のこととはいえ、個人の評価だと思うのです。つまり、個人が評価される仕組み。それは当然そういう能力開発型という積極的な意味合いを持っている仕組みであることは分かるのですけれども、かつて、教員の仕事というのは、民間でもそうであったかもしれないのですが、とりわけ教員の仕事というのは、いわゆる協働意識というのはすごく大事な要素だと思うのです。共に働くという協働意識というのが非常に重要なのではないかと私は教育の場合には特に考えています。
 結局、個人の評価というのが、かつてあった教員の仕事で一番大事な協働意識みたいなところを実はスポイルしてしまっているような側面がありはしないかという、非常にそういう感じがするのです。つまり、個人の評価を受けることは大事なことですし、士気を高めるという要素にはなるところがあると思うのですけれども、学年であるとか、それから分掌であるとか、チームの中で目標を持って、それで取り組んでいるというのは現実にあるわけですから、そういう取組が一方で評価される仕組み、つまり、こういうふうにチームとしての取組を評価されているんだということが仕組みの中にあれば、担保されていれば、きっと個人の士気は高まると同時にチームとしての士気が高まるのではないかと思います。鍋ぶたの組織からそうでない組織を作ったわけですけれども、そこで言われたのは組織的な取組ということが大事だということであり、そのための仕組みだと思うのですが、その協働意識の部分をどうやってはぐくんでいくかという仕組みがないと、なかなか組織的な対応、特にいじめであるとか、そういったようなことについては対応できないんではないかと思っています。
 私は一次評価者になるわけですけれども、なるべく教員評価の場合に、その教員がこの学年に所属をしていて、この学年はどういう目標を持って、どういうことをやって、どういう成果を出したかというところを評価の観点に入れているつもりです。そういう評価の観点を面談の際、教員には説明したりするようにしています。繰り返しになって申し訳ないのですが、教員評価の中に、教員がチームとして所属している、チームの仕事を評価するという仕組み、観点を取り入れられないものかと思っております。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 まだ御意見のおありになる方、いらっしゃると思いますけれども、今日は10分過ぎてしまいましたので、次回、諮問事項2、諮問事項3の総括的な議論を行いたいと思いますので、そのとき、また御意見をいただければと思います。
 あと、今日、義家政務官から最後一言お言葉をというか、御意見を頂く予定だったのですけれども、ちょうど政務三役の会議が同時間帯にあったようで、長く中座をしましたので、今日は御発言はないということですので、御了解ください。
 では、次回は8月7日水曜日、午前10時から12時の開催になります。場所等は未定ですので、場所等が決まりましたら事務局から追って御連絡が行くかと思いますので、よろしくお願いします。
 事務局から何か御連絡はございますか。

【堀野企画官】  次回、今、分科会長からの御説明があったとおりに加えまして、文化、スポーツ、社会教育、そういったものを引き続き教育委員会で所管をすべきかどうかといったようなことも、他の分科会でも議論されていることがございますので、そうしたことも含めて御議論いただければと思っております。

【小川分科会長】  ありがとうございました。次回は、今言ったように、諮問事項2、諮問事項3に加えて、文化、スポーツ、社会教育の所管等々、教育委員制度の在り方に関わる問題に関わって、そうしたテーマについても議論したいということです。よろしくお願いします。
 では、これで今日の分科会を閉会したいと思います。ありがとうございました。

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初等中等教育局初等中等教育企画課

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