教育制度分科会(第25回) 議事録

1.日時

平成25年6月13日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 委員からの意見発表
  2. その他

4.議事録

【小川分科会長】  定刻になりましたので、ただいまから中教審教育制度分科会、第25回目を開催したいと思います。本日はお忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 会議を始める前に、今回、初めて御出席の委員の方がいらっしゃいますので、事務局の方から御紹介をお願いしたいと思います。

【堀野企画官】  それでは、前回、御欠席されまして、本日、御出席いただいております委員を紹介させていただきます。株式会社ウィル・シード代表取締役社長、船橋委員でございます。

【船橋委員】  よろしくお願いします。

【堀野企画官】  以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 今日も義家政務官には御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
 では、今日の議事に入りたいと思います。
 今日は、前回の会議に引き続いて、首長、教育委員長といった行政現場の方々の中から何人かの委員の方に、諮問事項の第1「教育委員会制度の在り方」について、団体の意見ということではなくて、委員個人のお立場から意見発表をしていただきたいと思います。
 なお、前回の会議で帯野委員から頂いた質問事項については、意見発表の後、事務局の方から回答というか、説明をお願いしたいと思いますので、事務局の方、よろしくお願いいたします。
 今日は順番として、橋本委員、今田委員、そして最後、貝ノ瀨委員から、教育委員会制度の在り方について意見発表していただきたいと思います。最初に3人の意見発表を頂いた後に、残り1時間程度でまとめて質疑応答、意見交換をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、橋本委員、最初に意見発表よろしくお願いいたします。

【橋本委員】  ありがとうございます。それでは、お手元に「教育委員会制度の在り方に関する意見」ということで私のペーパーがありますので、御覧いただけたらと思います。
 今、茨城県の教育委員会がどういうふうな活動をしているかということでございますけれども、大体1人当たり40日間活動しております。定例会は毎月1回でございまして、その中身を言いますと、任免関係がやはり圧倒的に多い状況にございます。そのほか、括弧3にございますように、教育委員協議会という形で、教育委員だけではなくて、教育次長その他が入った会議をやる。あるいはまた教育委員会事務局との意見交換会という形で、定例の12回の教育委員会会議が終わった後、事務局執行部との意見交換などもやっている状況にございます。
 そして、2ページの方でございますけれども、変わっているのは丸6でございまして、教員応援団研修会への出席というのがございます。これは教育委員のOBさん方が、かつてやはりうちの教育委員会も何となく眠っていたものですから、教育委員の人選に当たりまして、かなり活発な人ばかり選びましたら、OBさん方が、もっと茨城県の教育をよくするために自分たちも何かやろうじゃないかということで教員応援団というものを作ってくれておりまして、その方たちがお金を集めて、新任校長・教頭、教務主任などに対しての研修会をやっています。ここに書いてございますように、五木寛之さんとか上甲さんなどのそうそうたるメンバーを講師としてお迎えしてやっているところでございます。今回の第二次提言の中に「学び続ける教育長」という言葉がございましたけれども、私どもに言わせれば、何も教育長だけじゃない。首長もそうでありますし、文部科学省もそうでありますし、みんなが学び続けなければいけないので、ああいうことを書くと、いかにも教育長が余り頑張ってなかったと取られてしまうのではないかと思います。
 それから、私と教育委員、学校長との意見交換でございますけれども、これもまた来週、教育委員全員と私とで、ある程度の時間、意見の交換を行って、その後、懇親会をやる予定にしております。現在のところ、何も問題なく、極めて順調に今の制度は機能しているところでございますが、ただ今回の提言の中に、首長と教育委員長の連携を一層強化するということがございました。今の制度のままでどう強化できるかというと、なかなかそれは難しい。制度で担保するというのは極めて難しいと思っております。制度で担保というよりは、運用面でどうやれるか。日頃から、平常、どういうお付き合いといいますか、知事と教育委員との関係があるかということが大いに関係してくるのではなかろうかと思っております。
 それから、3ページ目でございますけれども、3ページ目に入るのと併せて、お手元にお配りしてあります、参考資料というのが後ろの方に付いております。その参考資料を是非御覧いただきたいと思います。一つ目は、地方制度調査会の17年の答申でありまして、例えば上から10行目ぐらいのところに、「しかしながら、準司法的機能を有する機関を別にすれば、戦後60年を経て、社会経済情勢が大きく変化している中で、制度創設時と同様の必要性がすべての機関について存続しているとはいえない状況にある。」「住民から直接選出された長が責任を持つことが求められているにもかかわらずこの要請を満たすことができない行政分野が生じている状況を改善」しなくてはいけないといったことが書いてございますし、また教育委員会の在り方につきましては、下から七、八行目に「国においては教育行政に関し行政委員会制度をとっていないが、これらの要請が地方における教育行政に特有のものであるとは考えられず、また、地域住民の意向の反映はむしろ公選の長の方がより適切になしうると考えられる」といったことが書いてございます。
 それから、次のページは分権改革推進委員会からの第3次勧告でございまして、21年10月、鳩山首相になってからでありますけれども、この委員さん方は全部自民党政権の時代に選ばれている人たちでございます。この中でやはり10行目ぐらい、「教育の政治的中立の要請が言われながら、国の教育行政には行政委員会制度は採用されてこなかったのに対して、地方自治体の教育行政に対してのみ行政委員会制度の採用を強制している制度的不均衡について、納得のいく説明はなされてこなかった」。あるいは次の次のパラグラフ、「教育委員会及びその事務局は、長から半ば独立した執行機関として、地域住民の意思を反映することよりも、文部科学省、都道府県教育委員会、市区町村教育委員会という縦系列の指導助言に重きを置いた運営がなされがちであるとの批判も根強い。委員及び事務局職員の多くを学校教職員又はそのOBで占めることによって閉鎖的な世界を形成している、との批判もある」。「自治体政策の企画立案と実施にあたっての横の総合調整の問題もある」。あるいはその二、三行目に「直接公選の長の方がより適切に達成し得ると考えられる」ということもございます。それから、最後のパラグラフですけれども、「地方自治体が、地域にあった教育を自由に展開することが、地方分権改革の観点からも求められている。その際、教育委員会がこれまで通り主体となるのか、それとも長が主体となるのかについて、地方自治体の自由度を高めることにより、各地方自治体が創意工夫し地域にあった地方教育行政体制の構築を図るべきである」といったような答申がなされておるところでございます。
 3ページ目の現行教育委員会制度の問題点ということにつきましても、同じようなこと、皆さん方も既によく知っていることを書いてあるだけでございまして、教育委員会と教育長の権限と責任が不明確である。どちらが偉いのかと俗な言葉でよく聞かれるけど、どちらと答えるのはなかなか難しいとか、いろいろな問題がございますし、それから、三つ目のポツですけれども、教育長は教育委員の中から互選することとなっているが、教育長になってもらおうとする人以外の委員というのは、教育長になれるような人は実は任命しておりません。保護者の代表とかそういう人でありますから、互選で選ぶというのも特定の人しか選びようがない。その人が何かで欠けてしまったときには、ほかの教育委員の中から補充できるといった状況には全くございません。あるいはまた、教育長は自分も教育委員でございますので、教育長としては一般職でありますけれども、両方兼ねていて、一方では指導監督する側になる、片一方では指導監督を受ける側であるという二重人格みたいなものがございます。
 また、下から二番目のポツですけれども、継続性、安定性が言われる余り、今の教育委員会で問題なのは、やはり時代の変化への適応力。これは継続性、安定性ということばかり強調されていますけれども、私は変化への適応力がないのが一番大きな問題ではないかと思っております。また、突発的事態への対応力、これはいじめなどでございますけれども、いじめなどでも対応するのに本当にあたふたしてしまっている。そして、先ほどの時代の変化への適応力ということで言えば、例えば国際化がこれだけ進んでいる。どんどん地域に外国人が入ってきている。その子供たちがどこへ行くか。行くところがなくなっている。諸外国のように、そういうことについてはもっと自由に対応できるようなシステムにしていけばいいのではないかと思っております。
 それから、一番下は、教育行政についてのみ行政委員会制度を採用しているということでございまして、ほかのところ、例えば国家公安委員会は、国も地方も公安委員会があります。それから、労働委員会でもありますし、人事院も人事委員会、会計検査院も監査委員という形になっておりますけれども、教育委員会だけは、これはどういうわけか国にはなくて都道府県にだけあるということでございます。
 次に、教育長の在り方ということでございますけれども、教育長を教育行政の責任者とすることについては賛成であります。これまで権限や責任ということについて非常勤の教育委員長が担ってきたということは、実際上、架空の話でございまして、実質的には全部教育長がやってきている。それを常勤の教育長がきちんとした責任者になるということですっきりさせるという意味では、大変結構なことではないかと思っております。
 ただ、その中で、「教育長を教育行政の責任者とする」とありますけれども、これがどういう意味なのかということについて、いろいろ各県の知事などからも意見があるところでございます。
 4ページを御覧いただきたいと思いますけれども、教育長の在り方の「結論等」とありますけれども、二つ目のポツ、「執行機関は、選挙で選ばれた人間あるいは合議制による行政委員会が担うべきであり、教育長が独任制の執行機関になることは、民主主義的な統制が弱くなり、地方自治制度としてふさわしいのか疑問」ということを書いているところでございます。現在、教育委員会は、教育委員会だから教育事務について単独で事務を執行する権限を持っているわけでありますけれども、委員会制度じゃなくなって、独任制の教育長というものができたときに、そこに全面的に教育行政というものを任せていいのかどうかということが大きな課題になってくるのではなかろうかと思っております。そして、いろいろ地方行政も多分野にわたります。その中で何で教育だけを、特に独立したような形の責任体制の下に置かなければいけないのかということが一番課題ではないかと思っております。ほかの人から見れば、保健福祉の行政の方がよっぽど大事かもしれませんし、いろいろ立場によって重要さというのは変わってくると思いますので、そしてまた時代によっても変わると思いますので、教育行政だけなぜ分離するのかということについては私どもは非常に疑問に思うところでございますし、戻りまして、丸2の2ポツに書いてありますように、国の方では文部科学省は総理大臣の下に幾つもある省庁の一つ、ほかの省庁と全く何らの区別もありませんし、文部科学大臣も、前から申し上げていますように、One of ministers、大臣の中の1人でございます。
 それから、教育行政は地方行政にとりまして、例えばうちの県で申し上げますと、25%の予算を占めており、極めて重要な分野でありまして、そこに地域住民の意向というものをより的確に反映するためにも、住民から直接選出された首長が責任を持つべきではないかと思っております。例えば教育委員会で小学校の統廃合をどうするか、できるかといったら、多分私はこれは無理だと思います。あるいはまた中等教育学校をどうするか、これも無理だと思いますし、あるいは特別支援学校をどうするか、こういったことについても、例えば教育委員会でどこに配置するかから始まって、なかなかできないのではないかと思っております。そういった点からも、より広範な目で、地域行政を担っている首長部局との関係というものをはっきりとさせていく必要があるのではないかと思っております。
 そしてもう一方では、地方行政では近年、総合行政の必要性が高まっていると言われております。例えばいじめ一つとってみましても、警察との関係、あるいはまた児童相談所との関係、様々なほかの行政分野との関係が重要になってくるわけでございますけれども、教育だけでは解決できない、そういったものをトータルに総合的に解決していくということについては、首長の下でまとめていくのが一番適当なのではないかと思っております。いじめについて言いますと、大津市で例えば首長が途中で和解したいと言いました。ところが、教育長は訴訟は続けるべきという話をされております。こういったことについては、今度どういう形で教育長を教育行政の責任者とするということを考えておられるのか分かりませんけれども、考え方次第では大変な、同じ自治体の中で執行部が二つの分かれた意見を出してしまうことになってまいりますし、また訴訟になりますと誰が相手になるのかというと、これは首長の方でありまして、教育委員会は全く相手になってまいりません。そういったことも考えると、教育長を首長から独立したという形ではなくて、後ほど申し上げますけれども、もう少し別な形の方がいいのではないかと思っております。
 それから、次の教育の政治的中立性、継続性、安定性についてということでございます。政治的中立性というのは盛んに言われますけれども、どういったことを政治的中立性ということで意味しているのか、これが非常に曖昧であるということは各県の知事からも強い意見として出てきております。例えば今回の教育再生に関わる動き、これは総理の強い政治的リーダーシップの下で行われているわけでありますし、文部科学大臣も総理が自分の意にかなった人物を内閣の一員として選んでいるところでございまして、こういったことは、ある意味、極めて政治的行為であると言えると思いますけれども、国では、行政委員会といった形は取られていないわけであります。また、地方教育行政の大部分は、御承知のように文部科学省の指導要領は大変細かいものでございます。あるいはまた標準法もございます。そういった中で実施されており、そう簡単に政治的中立性を犯すといったようなことができるのかどうか、これは特定政党の宣伝でもするといったら別ですけれども、そういうことはまず常識的にも考えられないわけでございます。文部科学省が国の政治の結果を受けて、あるいは中央集権的な形で教育を行っている。これが中立なのかどうかということになれば、これが中立であるということであれば、地方の行政における中立性というものももっと幅があっていいのではないかと思いますし、ましてや地方の場合には議会のチェックということがございます。議会でそういうことが行われようとしていれば必ずチェックがかかる、そういったことについても留意しておく必要があるのではないかと思っております。
 それから、継続性、安定性ということを盛んに言われるわけでありますけれども、その下の方に書いてございます。文部科学大臣は毎年替わっています。毎年替わっていて継続性、安定性があるのかということなんです。そういう意味で言えば、行政で安定していくのであって、トップがどうということではないんだろうと思います。それから、教育長は法により、政治活動の制限も受けているところでございます。
 それからもう一つ、実は是正の要求、改善の指示というのが出ておりますけれども、今回、国の教育再生実行会議の中で、地方公共団体の教育行政が法令の規定に違反したり、子供の生命、身体や教育を受ける権利が侵害されたりする場合には、最終的には国が是正、改善の指示等を行えるようにすることにより、その責任をしっかりと果たせるようにするという項目がございます。これについての意見でありますけれども、教育委員会というものはそもそも、文部科学省、都道府県、市区町村という縦系列の指導体制が極めて強いものでございまして、例えば教育委員会の事務局の連中は、文部科学省の言うことは聞きますけれども、教育委員の言うことは余り聞かないような状況でありますので、そういったことも含めて、これ以上、中央集権的な体制にする必要はないのではないかということでございます。
 それから、先ほどの資料の中に、一番最後のページに「教育委員会制度等に関する意見」ということで、知事会あるいは市長会、町村会、それぞれの議長会という形でまとめた意見がございます。この中に、真ん中の方に「行政権の執行は住民の直接選挙により選ばれた首長が」ということで書いてございますし、それから、その後の方、「また」のところでございますけれども、「現行法では」云々と書いてきて、「自治事務に対する国の関与は限定的であるべきという地方自治法の立法原則が定められていることを踏まえ、地方分権の観点から、地方の教育行政に対する国の関与の在り方について、改めて議論するべきである」という項目がございます。
 私どもとして、ここにも書いてございますように、文科省の力が強過ぎるということと、もう一つは、国等による違法確認訴訟制度が創設されております。これは3月に創設されたばかりでありますけれども、地方が言うことを聞かなければ裁判に持っていける。これについては、仮に今回の勧告のような形で若干権限が強くなったとしても、結局、言うことを聞かない時は訴訟をしなくてはいけないわけでございますので、そういった点で実質的な効果はないのではないかと考えられます。それから、国全体として地方分権を推進しようとしているときに、国の関与を強めるということは全く時代に逆行しているのではないかと考えております。
 そのほか、四番目に「結論等」と書いてございますけれども、教育行政は住民の選挙により選ばれた首長が住民の負託を受けて行うべきであり、首長を教育行政の責任者とすると共に、教育長を首長が任免する事務執行の責任者、教育委員会を首長又は教育長のアドバイザリーボードとすることが適当ではないかと私は考えているところでございます。
 それから、議会の同意でございますけれども、教育長の任命に係る議会の同意について、私は地方行政の一分野の長として教育長を捉えればいいんだと思っておりますので、そういった点からすると、議会の同意というものをかけるのはどうかということなども考えているところでございますが、現実的に首長が交代したときに教育長が辞める、そのときに議会の関係もあってスムーズな任命ができないでいる。あるいはまた、都道府県の教育長については、平成11年度以前には議会の同意を要しなかったし、それで全く支障はございませんでした。あるいは、教育長が欠員になったときに議会の同意が必要ということになると、一々議会を開かなくてはいけないということで、どうしても教育長の空いている期間なども長くなってしまう。そういったこともありますけれども、首長と議会との関係ということですから、これは極めて微妙なので、後ほどゆっくり議論してもらえばいいんだろうと思っております。
 それから、先ほど申し上げましたように、議会のチェックということに関して言えば、これは地方の特色でございまして、国は議院内閣制、内閣と政党、与党が一体でありますけれども、都道府県は二元代表制、かなりきついチェックが入ってくるわけでございますので、先ほど来心配されているような中立性、継続性、安定性などについては、それほど心配する必要はないのではないかと思っております。
 以上です。ちょっと長くなりました。失礼します。

【小川分科会長】  ありがとうございました。質問等々は後で一括して受けたいと思います。
 じゃあ、続けて今田委員、よろしくお願いします。

【今田委員】  それでは、横浜市の教育委員の今田でございます。私の方から、教育委員としての10年間の、ある意味で実体験を踏まえたお話をさせていただきたいと思います。つたない経験、議論の参考にしていただければと思います。私は平成15年に総務局長を最後に横浜市を退職して、それ以降、教育委員というお仕事を頂いております。
 資料の1ページの下の方を先にちょっと説明させていただきます。今の教育委員に対する一般的な見方というのは、しっかり機能していない、責任を果たしていないのではないか、この辺のところが今回もまた、今回この委員会ができて、いろいろ議論していただくことになっているんでしょうが、首長の認識、議会側の認識、事務局の意識、教育委員自身の気持ち、これはこの10年間で私は横浜の経験でも随分変わってきたかなと思っております。首長の認識も、かつては、今のお話の中にもありましたが、充て職的な、名誉職的な、そして委員も1年交代。私は教育委員長を8年務めさせていただいておると。それから、議会側の認識も、あまり教育委員に対する厳しい見方というのはなかったのかも分かりません。私も今回3月で再任を受けましたけれども、その際にはかなり厳しい反対討論もございました。そういう意味で、議会もかなり認識してきた。事務局も、かつては敬遠して遠ざけるという感覚でしたけれども、この辺は少し変わってきたのかな。教育委員になりました初めてのときに、メンバーの1人が、「ここは議論する場じゃないですからね」というようなことを言う委員の方がおられまして私も驚いたわけですけれども、そういう意味では、過去と現在ではかなり変わってきたのかな。
 しかし、こういう状況の中で、かなり課題が複雑化していますから、果たしてレイマンコントロールというような、そういう格好で簡単に引き受け得るのかどうか。本当に強い使命感があれば、ちょっときざですけれども、本当に果たして引き受けられるかどうかと思ったりもいたしております。
 横浜市の基本データでございますが、学校数が510ということでございます。児童生徒が27万ということですから、保護者を含めると約50万近い人たちがある。そして、18区ありますから、それぞれの地域特性もあるということでございます。教育委員は、男性が2人、女性が4人ということでございます。平均年齢62歳。市長も女性でございます。開催頻度等ということで、月2回、これは第2・第4の金曜日、この表のとおりでございます。ほぼ毎回、傍聴者がございます。傍聴席は20席用意してございますけれども、十数名、特に教科書採択のときは700名近い、これはだから傍聴席に入りません。だから、それは別に傍聴席を用意いたしました。緊張感が確保されているというメリットもあろうかと思いますけれども、そういう状況でございます。
 月1回、意見交換会。ここで、ある意味でかなり突っ込んだ話が、いろいろなことがされている状況でございます。
 そのほかにそれぞれ、全員で行くスクールミーティングという学校訪問、あるいは自主的な学校訪問等もございます。
 就任しましたときに、私が教育委員で行きましたときに、机も椅子もない。ソファーと、委員長だけは机と椅子があったわけで、これじゃだめだなと思っていたんですけど、本当に深い議論はなく、そういう意味で、すぐに机と椅子を用意してくださいと。少なくとも俺の机と椅子だけでいいよと。事務局はその辺のところが、教育委員に対する認識というものがなかなか足らなかったんですが、今日はお見えでございませんけれども、文科省から当時、伯井さんが教育長でお見えになって、教育委員の重みというか、法律上の位置付けというものをきっちり説明してもらって、その関係で、私一人というわけにまいりません。もちろん全員の机と椅子が用意されて、そこでかなり議論が深まるようになってきたと思っています。現在では、いろいろな学校訪問、情報収集と、ある意味で提案をいろいろやっているところでございます。
 今の気持ちは、かなりいろいろな意味で頑張ってきたつもりですけれども、制度の持つ限界、一方で同時にまた、最終的にはこれはやっぱり人なのかなという気もいたしております。そんな状況でございます。
 今日は教育委員会制度のメリットとデメリットということについて、私なりの見解を申し上げたい。これは立場によっていろいろと異なろうと思います。2ページでございます。私自身の具体的経験から感じることということで、メリットというのは、非常勤で、ある種の身分保障があるということは、今日は橋本知事がおいででございますけれども、首長さんとも物事によっては一定の距離が保てるのかな。そういう意味でいくと、教育委員の立場でより主体的、客観的、少しオーバーに言うと大局的に判断ができるのかな。
 これは事例として、その世界でいろいろ御関心が高い中学の歴史・公民教科書採択、このときには教育委員でそれなりの勉強会、読み比べ、全体での勉強、自主的な勉強、そういうものを踏まえて関係法令等に照らして真剣な検討を重ねて、教育委員の権限と責任に基づいて判断いたしました。記名投票、多数決で決めました。これは教育長とは異なる意見でございましたので、そういう意味では、そこである意味で首長からの独立性を示し得たのかなと思っています。
 今もお話がありましたけれども、民意の代表である首長の意向が反映されにくいうんぬんというお話があります。確かに、本当の意味での政治的中立性というようなことは、この今の制度の中では本当は少しやはり限界があるのかなと。ただ、反映されにくいという意味でいくと、教育委員や教育長の人選を通じて、首長さんがその意向を反映できる仕組みというものは担保されているんじゃないかと思っております。
 それから、今の制度のメリットの二つ目、教育委員長が責任者であること。これは都市の置かれている状況等にもいろいろよるんですけれども、私は事務局の判断に対する二重のチェック機能の役割というものが一つあるのかなと。時には、事務局の誤った判断に対し、適切な変更の指示が可能ということで、多少身内の恥をさらすようなんですが、23年10月に通知表の誤記載防止のために保護者に事前の確認を求めるということがあって、かなり新聞紙上をにぎわせたことがございました。これは学校現場など、そういう事例の発生を踏まえて、事務局はプロジェクトチームを立ち上げて、いっそのこと通知表を評価も含めて保護者に確認しようということをやったようですけれども、これは情けない話、我々教育委員の方も新聞報道を通じて初めて知ったようなことで、これは大変なことだということで、委員長として緊急に教育委員を招集して協議、早急に方針の変更を決定させまして、一方で議会にもお詫びをした。校長会もそれぞれ招集してもらって、校長先生にもお詫びをしたというようなことがございました。学校現場の混乱、保護者の誤解、信頼回復に努めたつもりですけれども、このことは少し極端な事例ではあるんですが、委員長が責任者であるからできた対応かなと。判断の是非、その後の対応等、教育長が責任者であれば、随分と手続を要することになってしまったのではないかと思っております。
 それから、もう一つ目は、合議制の執行機関であること。このことは、教育委員がその経験、専門性を生かした広範な角度から議論を展開できます。そのことを事務局の幹部職員も聞きながら自分たちの反省やヒントにしていく。そういう中で刺激を受け、本気度を高め、新たな意欲と施策の展開につながっていくんじゃないかと思っています。横浜の場合も500校を超える学校があります。27万人の児童生徒がいる。そういう成長過程にある児童生徒を抱える学校現場でございますから、いつも事件、事故が絶えない。極端に言いますと、日常のことを処理するだけで一日が終わってしまうという日もあるわけで、そういう日々の連続ではなかなか、教育長も含め、現状を見つめ直す余裕というものが正直感じられない。教育長をトップとする事務局では、日常業務の実態から教育委員相互間でのような、原点に返っての本質的な活発な議論の展開は、なかなか期し難いのではないかと思っております。
 「デメリット」と書きました。教育委員長の立場の組織上の実質的な曖昧さ。事務局職員は、法律上の規定はありますけれども、それよりもやはり日常顔合わせする教育長が大事、それは当然のことでしょう。教育長の教育委員に対するスタンスに大きく影響を受ける。人間の心理だろうと思います。情報の伝達のスピード、質、量、そういうものに変化が来る。そういうのが必然的にどうしても、我々教育委員にもモチベーションの低下につながってくる場合があります。そういう意味で、教育委員長の勤務条件の在り方を工夫するというのも一つ大切なことではないのか。法律上、非常勤という位置付けで、そのメリットは一方であるんですが、責任者という立場を考えるときに、ほかの委員よりも一段重い重責を担うということで、勤務上も強い制約を課してもいいのではないかと思います。最低でも週2回は事務局に顔を出す、そのようなことを就任時の条件にする。これが制度上確立すれば、職員の教育委員に対する意識改革にもつながる。信頼関係が高まって、教育委員会としてより有効に機能するのではないかと思います。
 私も、これは議会答弁で求められて、どれだけ1年間に24年度間に出ていたかということでいきますと、94回という数字でありました。かなり一生懸命出ているつもりでも、いろいろな事例、事件があるわけでございます。そういう意味で、これを制度上きっちり確立する。これは多少自主的に出ている分があるわけで、これをそういうふうに委員会の事務局の人たちにも認識してもらうことが大事かと思っています。
 それから、非常勤の教育委員長が責任者であることの解釈。これはなかなかどういうふうに解釈するのか、過日の私事ですが、再任の議会でも、最高の責任者は教育委員長であるということで、かなり、そこまで私に問うのかというふうな問い掛けもございました。全ての責任が委員長にあることを意味するのではなく、おのずと事柄により教育長が責任者となる場合もあるのではないか。多少違和感を感じているんですけれども、教育委員会制度として現行の責任制度の持つ意味を冷静に考える必要があるのではないかと、これは私が勝手にこういうふうに解釈しているんですけれども、これはそうじゃないんだよという御意見がまたあれば、お聞かせいただきたいと思います。
 それから次に、再生実行会議の提言を踏まえて、今後の制度の在り方を検討する際に留意すべき事項。やはり一つはスペシャリストとしての教育長の育成、これが大事だな。何といったって、教育行政の一番の実力者は教育長だろうと思います。これは教育のプロの中では常識だろうと思います。その人選、育成の重要性が、今までどこまで真剣に議論されてきたのか。横浜の場合も、私の長い経験の中でも、一般行政職員の人事異動と同じような多少扱いがあったのではないかと思います。やはり教育現場というのは専門性が高く、ある意味で組織風土の異なる誇り高い世界、そのリーダーたる教育長というのは相当の見識、情熱、覚悟、経験年数なんかが求められるのではないか。今日は門川京都市長はおいでになりませんけれども、京都市さんは専門性に深く着目した人事を長くやっておいでになる。そういうことが可能なのかどうか分かりませんが、私は採用時から教育行政職として採用する、あるいは将来の教育長候補というような者を育成する、そういう育成の仕方というか、やり方もあるのではないかと思っております。いずれにしても両方の世界が分かり、特に教育という機能の重要さ、影響力の大きさ、奥深さ、そういうのを理解して謙虚に自信を持ってかじ取りをやっていける方が必要であろうと思います。
 現実には、その人選はなかなか難しいことでありますけれども、第二次提言でも言うとおり、議会の同意事項として、自治体内に人選の重要性を喚起することは、その資質、能力をチェックしていただくことは極めて大切なことであろうと思います。その際、処遇の改善についても検討すべきじゃないかと思います。教育長も、文科省から頂いたデータを見ますと、都道府県では大体在職が2.1年、市町村で3.6年。私も10年の中で、教育長が3年の方が2人、あと2人は2年ということでした。2年と3年ではなかなか教育長の大変な業務を、おのがじしの経綸でやり終えるというのはなかなか難しいのではないかと思っております。
 次に、自分の方のところの例でございますが、500校を超える学校現場ということでいきますと、今まで教育委員会と学校現場が、いわば車の両輪のような形で、連携、協力の下に教育行政を進めてきたというのが実態でございます。平成22年から四つの方面別事務所を設けまして、そこにある一定の権限を移して、より学校現場に近いところで行政支援、市の支援をしていこうということに乗り出したわけでございますけど、やっと4年目ですので、まだまだ不十分な部分があります。いずれにしても、小中それぞれに大きな校長会があるわけで、その校長会も教育行政の一翼を担うという強い自負がある。それはそれで結構なんですが、やはり教育界独特の誇り高いもの、ある意味で閉鎖的な、時にはやや反教育委員会的な傾向も否定し難いというのが実態でございます。教育委員会の中で教育職として偉くなるのか、校長会で偉くなるのか、両方があるという見方もあります。
 最後のページでございますが、教育委員会内部での権限と責任の明確化が今回いろいろ言われていますけれども、私はそのことだけでは必ずしも教育改革の効果は上がらないのではないか。学校現場の抱える様々な課題、職場環境の改善、処遇の改善、こういうものに一体になって努力していく必要がある。そこに一体感、連帯感というものが出てくるのではないかと思います。いずれにしても、優秀な若者が教師を志すような教育現場にしていくことが喫緊の課題であろうと思います。
 教育長を責任者とするか否かという話、これは先ほど私が委員会制度のメリットの中で少し触れさせていただきましたけれども、当該自治体の教育委員会が所管する規模の大きさとか、あるいは歴史とか、あるいはその成熟度、そういうものを考慮した上で自治体の選択制というのもあるのではないか。これは提言のなお書きの中に、現行の委員会制度を基本的に維持していくことが望ましいうんぬんと、そういう言葉もありましたので、これは少し自治体の独自性みたいなものも、じゃあ、それを首長が替わってすぐ替えちゃうのかどうかというのも、これもまたいろいろ議論のあるところなんですが、そういう部分では少し選択制というような考え方もあるのではないかと思います。
 教育委員会を諮問機関にしていくことは、やはり教育長が権限も権威も両方とも握ってしまうということで、少し大きな危険性をはらんでいるのではないか。もっともその慎重さが、スピード感に欠け、教育現場の無責任体制を生んでいるんだという見方もあるようですけれども、これだけいろいろな価値観の多様な時代、少し丁寧にやっていくことが必要ではないかと思います。いずれにしても、教育長という仕事は大きな仕事ですので、私が先輩から聞いた中で、教育長室には魔物がすんでいる。それは何年か経つと、横浜の場合も教育長室だけは国旗と市旗と両方が立て掛けてある。やはりある種の、そこでの誇り高いものを担保するということなんでしょう。年数が経つと、何となく勘違いしてしまうというふうなこともあるようでございます。
 そのほかに、「その他」ということで、委員会を廃止して首長と教育長の連携による教育行政を目指すという意見もあるようですが、これは少し教育の本質的な機能というか、その影響力の大きさ、それに現在の制度が現場の意見も取り入れた委員会制度、大方の委員会は学校関係者OBが教育委員ということでメンバーに入っておられると思います。そういうことを考えるとき、少し踏み込み過ぎではないのか。例がいいかどうか分かりませんが、衆議院選挙で中選挙区から小選挙区に変えた、それが本当に全部正しかったのかどうか。その辺、そういう意味で、勢いだけではなかなかいかない、慎重さが必要ではないかと思います。
 勝手なことをいろいろ申し上げました。終わらせていただきます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。では最後、貝ノ瀨委員、お願いします。

【貝ノ瀨委員】  三鷹市教育委員会の貝ノ瀨でございます。ペーパーを用意してありますので、御覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。
 まず現行の制度、これは釈迦に説法ですが、政治的に中立であるという必要性から、首長から独立した行政委員会、これも合議制の執行機関として今現在、設置されているわけでございます。そこで継続性、安定性の確保、それから、地域住民の意向が反映された組織ということです。これは、後ほどまた申し上げますけれども、大変重要なことではないかと考えております。
 まず、三鷹市の現状を先に申し上げます。他と特別に変わっているわけではございませんで、教育委員会は5人の教育委員で組織されておりまして、内訳、職業で言いますと、医者、それから弁護士、そして保護者の代表、これはコミュニティ・スクールの代表も兼ねております。また、市内の大学の学長さんがいらっしゃいましたが、途中でお辞めになったということもありまして、その時私も教育長を退任しましたので、私がその後任ということで教育委員、そして教育長と5人です。その中で教育長が選ばれ、私が教育委員長ということになっております。
 教育委員会の活動ですけれども、これもほかとそれほど変わりません。月1回程度の定例会、それから臨時に開くことがございますけれども、年間十五、六回の定例会を持っております。そして、教育委員の活動ですが、それぞれ御自分の専門を持っていらっしゃいますので、ここら辺については、御自分の仕事が最優先されていますので、その範囲内での取り組みということは言わざるを得ないのが現状でございます。
 課題については、2の方に飛んでいただきまして、三鷹市の対応の様子ですけれども、教育委員長と教育長との関係でございます。これはたまたま教育長をした人間が教育委員長をしているということもあって、これはあまり一般的ではないので一般化できない話ですけれども、教育委員長が全体のマネジメントをやって、実行等は教育長をトップとして事務局がやっているということであります。できるだけ「顔の見える教育委員会」というものを目指しているわけでありますが、教育長、教育委員長と継続しているわけで、見え過ぎちゃってちょっとというふうなところもございますけど、市民から見ると、教育委員長と教育長の違いというのは、これははっきり分からないようなところがあります。要するに、分からなくても、ちゃんと教育をとにかくやってくれればいいんだとおっしゃる方が多いのが現状です。
 それから、首長と教育委員会との関係でございますけれども、これは教育委員さんとの懇談も適時持ちまして意思疎通も図っておりますが、何よりも教育長が週1回必ず市長と副市長とで首脳部会議というものを持って、お互いに報告、連絡、相談をしているということでございます。そういう意味では首長部局との意思疎通は円滑にされているという状況がございます。
 地域住民の意向の反映でございますけれども、これは本市の場合は全ての学校がコミュニティ・スクールでございますので、地域の方、保護者の方の代表が学校の運営に関わっているというこの仕組みの中で活動しているということです。その方々が、学校運営に参画している。そういう積み重ねの中で教育が行われておりますので、そういう意味では、学校を通じても、それから教育委員さんを通じても、市民の意向、住民の意向が教育に非常に反映されやすい。市民の意向というのは、例えばコミュニティ・スクールだから、学校の関係者と見られがちですけれども、コミュニティ・スクールの学校運営協議会の委員さんというのは、生涯学習関係での活動をしている方も含んで、市民の代表ということで担ってもらっているわけです。したがって学校関係者だけが学校運営に関わっているということではないわけです。
 それから、会議でございますが、これはやはりそうちょくちょく集まれないということもありますので、メール等も活用しての情報共有を図っているということでございます。ただ、教育は生き物ですから、いろいろなことが日々起きますので、それに対しては機動性を持って、状況によっては教育長が先に判断して手を打ち、その後、教育委員さんに報告するという形で了解を得ているということがままございます。
 そこで、中心的な課題でございます。真ん中の方の大きな課題でございますけれども、まず一つは、地方の教育行政の責任の所在が曖昧であること。これは前回からも御指摘がされているところでありますけれども、教育委員は非常勤であって、教育長の常勤職のプロという者との関係を考えたときに、やはり教育委員会が教育長を指揮・監督するには限界があります。これは単に公式論ではございませんで、私も教育長をやり教育委員長をやっても、正にこれは日々実感するところでありまして、10月に教育長を退任したわけですけれども、その後、校長会でも時々話をする機会があります。教育長のときに何らかのスピーチをしても、大体校長さんたちは、メモを本当にしているかどうか分かりませんよ。へのへのもへじか何か書いているか分かりませんが、それでも一応鉛筆を持って聞いたふりをしてるんですが、教育委員長になりましたら、ほとんどみんな手を下に置いてメモなんかしやしない。歴然とした格差があるわけで、同じ人間が継続してやっているんですけれども、教育長というのはプロ中のプロと見られる。これは当然です。だって、24時間、教育のことを考えているんですから。でも、教育委員は違う仕事を持って、その合間に教育のことを考えていただくということになるわけですので、これはやむを得ないことでありますが、そういう意味では非常に限界があるのです。
 私の場合は、市長が配慮して教育長室の隣に教育委員室も作ってくれて、ほぼ毎日来てもいいよということになっているんですけれども、しかし、それでもやはり情報量、それから決裁の量が全然違いますので、これはもうかないません。
 そんなわけで、これは全国、責任の所在が曖昧になるというのは、これは必然的なことだろうと思います。ただ、そうはいっても、その中で事務局も教育委員さんも、それから教育長もできるだけスムーズにいくようにということで努力してきているということは実態でございます。ですから、大部分の自治体は曲がりなりにも一応スムーズにいっているという状況があると思います。
 それからもう一つは、予算執行が首長の権限、教職員の人事は都道府県、そして、その町の職員の人事も首長ということで、特に小中学校の設置者、運営者である市区町村とそれから都道府県との関係、教育委員会との関係、これは簡単に言えばねじれがあるという現状です。これは例えばですが、人事のことについて申し上げると分かりやすいんですが、校長の人事にしても、副校長、教頭でもそうですが、教育委員会が都道府県の教育委員会に内申を上げるわけですが、その内申というのは、この方が校長にふさわしいのでしてほしいと言うんだけれども、その内申というのは、内申じゃなくて、初めから都道府県教育委員会からカードが渡されていて、そして、それを内申するという形です。区市町村の教育委員会は全く知らない人を、内々にカードを受けて、それを一定の協議をしたということにして、一定の情報は多少ありますけれども、その中で内申という形で上げていくということになります。ですから、そういうねじれがあるわけで、抜本的に考えていかなければならないと思います。
 それからもう一つは、地域住民の意向の反映の仕組みでございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、教育委員会が形骸化しやすいということと関係しますが、地域住民の意向の反映という意味では、どうしても月一、二回の会議では難しいだろうということです。これは歴然としていることでありまして、この辺の抜本的な改革が必要であるということでございます。
 それから、2枚目ですが、改革案ですが、全国どこでも責任ある教育行政を築くということでございまして、これは選択を前提にしている話ではございません。どこでも責任ある教育行政を築くというのが望ましいと思います。
 まず、教育行政の責任体制を明確にするために、首長が議会の同意を得て任命する教育長が、首長から一定程度独立して事務を行う。ですから、これは先ほど来、知事さんもおっしゃっていたように、純粋な独任制ということになりますと、これは選挙で選ばなきゃまずいだろうと思います。したがって、独任制の教育長ではなくて、議会の同意を得ながら、同時に例えば教育委員会が審議機関的なものになったとしても、幾つかの内容についてはチェック機能、監査機能を持たせ、教育長が独任制のような形で存在し得るということにならないようにする必要はあると思います。しかしながら、首長から一定の距離を持って、政治的中立性というものは担保した方がよろしいと思います。
 それから、政治的中立性、安定性を確保するために、教育長は首長のラインとしないということです。これは直接、議会を抜きにして、教育長を任命するというのは、首長、教育長のライン化のまさに国民の皆さんが危惧している独走態勢、独善的になるのではないかという心配に応えるためにも、二元代表制である議会の同意を得る必要があります。その議会の同意も、今までのように、人事案件だから議論はなしにしましょうなんていうことじゃなくて、むしろ先の国会の日銀の総裁を選んだように、教育長に対して議員さんが質疑応答して、人格、識見をきちんとチェックするというようなことがあっての承認ということが必要ではないかと思います。
 その上で、先ほど来出ていますように、「学び続ける教育長」であってほしい。これは教育長に限りませんけれども、資質をしっかりと担保し、また能力もブラッシュアップしていくような、そういう機会を作っていくということは必要であろうと思います。これは国が関与した方がよろしいんじゃないかと思います。プログラムとかカリキュラムは一つあればいいわけですから、やろうと思えば簡単にできると思いますので、これは実施した方がいいと思います。
 また、教育委員ですけれども、新しい教育委員というのは、教育長が任意に委員を選ぶということではなくて、私は首長が議会の同意を得て選んだ方がよろしいのではないかと思います。諮問機関的な存在にはなりますけれども、しかし、仕事の内容については教育委員さんの同意を得たり、それからチェックするという内容をきちんと決めて仕事をしてもらう。しかし、だからといって、合議制の執行機関ということにはならないということでございます。特に私は、教育委員の人選については、地教行法にありますようなコミュニティ・スクールとか学校支援地域本部等のそういう面で活躍している方々、こういう方々がやはり中心的に担っていくべきではないかと思います。市民、住民の意向というのは、首長さんはもちろん選挙で反映しているわけですが、議会の方々もやはり住民の意向を反映している。同時に教育委員さんも、学校運営という中でトレーニングされているような方々を優先的に選んでいくことによって、地域の民意が反映された教育委員さんが確保されていくということになるのではないかと思います。
 ただ問題は、コミュニティ・スクールはまだ全国で1,570校ぐらいですので、義務教育学校の全体の5%ぐらいという現状です。95%はまだコミュニティ・スクールじゃありませんので、コミュニティ・スクールができているところはそういうふうな方を選ぶにしても、ほかの地域は地域活動に熱心な方にできるだけなっていただくということと同時に、積極的にコミュニティ・スクールや学校支援地域本部を設置していくということが各自治体で重要になってくるのではないかと思います。
 もう一つ大事なことは、区市町村に人事権と責任を持たせるということで御提案申し上げております。よく言われる、「私の自治体では人が集まらない。いい教員が集まらないので、人事はむしろ県教委や都教委でやってもらった方がいいんだ」とおっしゃるところがあります。しかし、そういうところは自治体ごとに人事組合のようなグループを作って、そこで人事の採用とか調整とか交流とか、そういうことをやっていくということをすればよろしいんじゃないかと思います。大阪の方では5つぐらいの自治体が今、実験的にそういうことをやっているようでありますけれども、そういうことを実際に試験的にやりながら見極めていくということもあってもいいのではないかと思っております。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 では、これから討論に入っていきたいんですけれども、その前に、前回の会議で帯野委員から二点の質問がありました。一つは確認ですけれども、教育長は、御承知のとおり、ほかの行政委員会の事務局長とは違った位置付けがされていますし、実際、地教行法上でもそういう規定がございます。そういう位置づけをしている理由はなぜかというのが一点と、もう一つは、教育長と教育委員の兼任というのはどんな理由からか。その際に、平成10年の中教審答申、「今後の地方教育行政の在り方について」ですか、その答申では教育長の専任化という提言を出したにもかかわらず、翌年の地教行法の一部改正では、提言とは逆に都道府県も教育長と教育委員の兼任化ということがなされたけれども、その経緯と理由は何であったのかという、その二点について御質問があったかと思います。これは、今後、教育委員会の制度設計に関わる重要なポイントでもありましたので、事務局の方から、今日回答していただくことになっておりました。時間もありませんので、簡潔に御説明いただければと思います。

【堀野企画官】  それでは、まず今の話の二点目から順番に説明いたします。資料1-1を御覧ください。資料1-1に図がありますけれども、上の図が平成10年の中教審答申の改正案です。下の図がその後、具体的に法律になったときの考え方です。
 上の中教審答申の考え方でありますけれども、左側に文部大臣がいて、右に都道府県、市町村と並んでおりますが、まず、当時、都道府県の教育長については、文部大臣の承認を得て、都道府県教育委員会が任命する仕組みとなっておりました。市町村の教育長については、都道府県教育委員会の承認を得て、市町村教育委員会が任命する、こういう仕組みになっておりました。
 これにつきまして、地方分権という議論の中で、地方公共団体の人事について国や都道府県が外部から関与することを改めましょうという観点から、この任命承認制度を廃止することが適当という考え方が出たわけです。
 その際に、地方公共団体の内部で教育長に適材を確保するための方策ということで、議会同意ということが出てまいりました。当時、副知事、助役などが議会同意を得ていたということですとか、市町村の教育長については教育委員として議会同意を得ていたということを参考にいたしまして、議会の同意を得て知事が任命するというふうに都道府県の教育長を位置付けようというのが中教審の考え方。これと合わせまして、市町村の教育長について、教育委員と兼任となっていたのをやめて、教育長専任にしようということで統一しようというのが中教審の考え方でした。
 その後、法案を策定するという過程の中で、政府内で協議する中で、二つの理由で、教育長を専任にして議会同意というのはやめようということになっております。一つの理由は、議会同意を得る職というのは、首長さんの補助機関である副知事、助役、出納長等の他、行政委員会委員ということでしたので、中教審答申の考え方では、議会同意の職である教育委員会の教育委員の先生、その下の補助機関である教育長についても議会同意という仕組みは前例のないことであって、他の制度への影響が大きいのではないかということ。それからもう一点は、議会同意となった場合に、これは一般職の公務員ではなく特別職となりますけれども、そうすると、教育委員と教育長と両方別々に特別職を選ぶということになると、特別職の数が増える。これは地方行政改革の観点から適当ではないのではないかということがございまして、では、教育長を議会同意を得る職とするのであれば、従来の市町村と同様に、教育委員を兼任することとすれば、委員として議会同意を得るのだからということで、都道府県も市町村も共に教育委員を兼任することによって議会同意のある職としようということになったものでございます。
 それでは、なぜ市町村の教育長というのは従来から教育委員と兼任であったのかという点ですけれども、資料1-2を御覧ください。複雑な表ですけれども、真ん中に時期が書いてありまして、「昭和23年教育委員会法」というのが一番上にあります。資料1-2、横の表でございます。この教育委員会法が、選挙で教育委員を選んでいた最初の法律です。その下の方に「昭和31年地方教育行政法」とありますが、これが現在の法律であります。
 右側が市町村、左側が都道府県ですけれども、右の市町村の「勤務形態」「兼職」という欄の真ん中辺を見ていただきますと、昭和31年の時点で「必ず委員と兼ねる」となっております。昭和31年の現行法のときに市町村教育長は教育委員を兼ねるとなったわけですけれども、これにつきましては、昭和23年の教育委員会法以来、そもそも市町村に教育委員会全て必要なのかとずっと国会などでも議論されておりました。市町村数というのは、今は合併を繰り返して1,700幾つになっていますけれども、当時は1万近くの市町村があって、そんなに細かい行政単位にして効率的なのか、あるいはそれで資質の高い方が本当に得られるのかという議論がずっとあったわけでございます。昭和31年に新しい法律を作るときに、やはり市町村で教育長と教育委員と別々に適材を得るというのも困難であろうということもございまして、教育委員の1人を教育長とするという形に落ち着いたものでございます。以上が一点目でございます。
 二点目につきましては、資料2を御覧いただきたいと思います。「行政委員会制度の概要」とありますけれども、御案内のとおり、教育委員会というのは各種行政委員会の一つでございます。地方公共団体の地方自治というのは執行機関と議決機関に分けられておりまして、議会が議決機関、執行機関は首長及び行政委員会という構成になっております。1と2のところにそれぞれありますけれども、1の下の括弧のところを御覧いただきますと、政治的中立性の確保という観点からは教育委員会、公安委員会、選挙管理委員会、公平、公正な行政という観点からは人事委員会・公平委員会、監査委員等々の制度がございます。3番のところにありますとおり、行政委員会というのは数人の構成員から成る合議制の機関である。委員の構成について配慮がなされ、委員は任期があって身分保障がなされている。権限行使については首長から独立して自らの判断で事務を執行する等々の制度となっております。
 そして、帯野委員からの御質問については、人事委員会、労働委員会、監査委員、こういった委員会については事務局の長としての事務局長が置かれている。教育委員会については、事務局長ではなく教育長が置かれているということですけれども、教育委員会以外の他の多くの行政委員会につきましては、特定の案件について調査する、勧告する、裁定する、人事委員会であれば人事委員会勧告をする、労働委員会であれば労働問題の調停をするといった、一時的な管理を行うということが委員会設置の目的であって、委員会会議の場における判断というのが主たる業務であるということに対しまして、教育委員会につきましては、委員会の場において教育方針を決定するということだけではなくて、日々行われている学校教育活動について常時管理執行を行うという業務が大きな固まりとしてございます。こういった日常的な業務の事務処理に当たるために常勤の専門家が必要であろうということで、会議体の事務局長という位置付けではなく、教育長という常勤の職を置いているということでございます。
 併せまして、資料2、1ページめくっていただきますと、「国の行政委員会」ということが書いてございます。国の行政につきましては、議院内閣制の下で、内閣が責任を持って行うということが基本ですが、行政委員会が一部設置されております。国家公安委員会のように、個人の人権に対する直接的な関与、そういった性質から特別に政治的中立性が強く必要とされるもの。あるいは人事院や公正取引委員会のように、準立法的又は準司法的権限を有するということで、特に慎重、公平な事務処理が必要とされるもの。こういったものについては国でも行政委員会が置かれているわけでございます。
 教育行政につきましては、国と地方の役割という面から言いますと、国は学校教育法等の制度の枠組みとか学習指導要領といった全国的な基準を定める、あるいは教員給与等の財政的支援を行うということを役割としておりまして、学校の設置者として児童生徒に直接教育を行ったり、教職員人事を行うといった立場にはないということで、内閣から独立した委員会を設けず、文部科学大臣が教育行政を行っているところでございます。
 また、国と地方の統治機構の違いという観点からすれば、国は議院内閣制を取っておりまして、御案内のように国会が内閣総理大臣を指名して、総理大臣が国務大臣を任命しております。内閣は国会に対して連帯責任を負う、また衆議院における内閣不信任案の決議といった規定が憲法に定められておりまして、内閣の存立に国会のコントロールが及ぶというのが議院内閣制の仕組みでございます。
 一方で、地方自治の制度においては二元代表制ということで、首長は、議会の議員とは別に、住民による直接選挙で選出されるということで、議会との関係では極めて強力な執行権限を持っているということから、首長一人の判断によって教育内容等が大きく左右されることがないよう、教育委員会制度が設けられてきたという経緯でございます。
 以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。質問等々があるかもしれませんけれども、時間がありませんので、後の意見交換の場で出していただければと思います。
 もう一点、すみません、事務局からの説明が続いて申し訳ないんですけれども、資料3に、前回報告したように、本分科会の論点を整理したものがあります。これはあくまで暫定的なもので、本分科会の議論の深まりと共に、この論点はいろいろ変更、加筆、修正するというようなことを前回お話ししましたけれども、前回の議論を踏まえて何点か論点に加筆しておりますので、それも簡潔に事務局から説明いただきたいと思います。

【堀野企画官】  資料3を御覧ください。下線を引いた部分を追加しております。
 一点目は教育委員会の役割という部分ですけれども、執行機関ということで、全ての執行についてということではなくて、大きな方針ということに絞るべきではないかという考え方についての議論。
 それから、二つ目がレイマンコントロール重視ということでいくのか、高い専門性を持つ委員というのも入った方がいいのかという議論。
 三点目に、人口規模によっても教育委員会の在り方は違うのではないかと御意見がありましたので、この3点を追記しております。
 以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 すみません、報告、そして事務局からの説明で少し時間を取ってしまいました。残り45分ぐらいしかありませんけれども、議論を進めていきたいと思います。最初に私の方から指名させていただきたいんですけれども、今日のテーマに関わって、やはり市長である森委員からまず口火を切っていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。

【森委員】  基本的に橋本委員の御意見に賛同している立場でございます。ただ、補足する意味で申し上げたいのは、ここでの議論は少し抽象論に陥っている気がいたします。教育委員会の仕事とは一体何なんだろうかという原点から入るべきだと思います。政治的中立性ということがよく言われるんですが、私は自分で市長をやっていて、教育委員会とよく打ち合わせしますが、政治的中立性が要求される仕事はほとんどないです、はっきり申し上げて。これは私は貝ノ瀨さんにも質問したいんだけれども、政治的中立性が要求される教育委員会の仕事というのは一体何でしょうか。そこから入るべきだと思います。ですから、私は機会があれば、長岡市の教育委員会の仕事を全部、今書き出させていますから、例えば具体的に言いますと、特別支援学級の予算措置は政治的中立性が必要ですか。体験学習でどこか企業訪問するとか、そういったことをするのは政治的中立性が必要ですか。耐震改修する予算を付けるのに政治的中立性が必要ですか。そういう見方を是非していただきたい。それを見ていきますと、私はきちんとした回答が出ると思っています。ですから、何か教育委員会の仕事がよく分からないままに観念論で、あるいは政治的な意味合いで、政治的中立性が損なわれるのは困るという議論だけはやめてもらいたい。それだけ、まず申し上げます。
 それからもう一つ、橋本委員の中で、今、私が申し上げたことは絶対やってもらいたいんです。具体的にどういう仕事があるかというのを書き出した上で、みんなに見てもらえばいいですよ。その中で、市長が関与してはいけない部分があると思います。教科書の選定とか、教科の内容。しかも、議論が非常に微視的な議論になっているんですが、教育長のスキルの問題は大事です。教育に関する専門知識はすごく大事です。ところが、教育はそれだけでできません、はっきり申し上げて。今、市長の立場からすれば、介護とか福祉とか環境問題とか、あるいは産業問題とか、あらゆる行政分野と教育は関係しています。教育の専門的知識だけで教育をやるのは非常に危ういと私は思います。ですから、大きな視点で基本方針を定める仕事と、それを受けて手段として執行する立場というのは違うということを申し上げたい。それが明らかになるような制度設計を是非お願いしたいということです。
 総合的なことで申し上げますと、例えば分かりやすい事例を言いますと、保育園とか子育て支援、教育と密接に関係しているわけです。だから、教育に関するスキルだけ上げていっても、どうしようもないんです。長岡市は、子育てという部門を教育委員会に付けました。一体的にやるようにしました。これは非常に珍しいことだと思うんですが、長岡市はそういう教育長です。そうなってまいりますと、今の案のように非常に、教育委員会の歯止めもなくなるわ、市長の関与もなくなった1人の役人にすぎない人が強力な権限を持って、しかも大局的な観点じゃなくて教育の専門知識だけをもって教育をやるのは私は危険だと思います。大局的な基本方針とか、教育の在り方とか、教育の目的を語る役割の人間は、教育委員会であってもいいし、首長であってもいいと思います。これは選挙の洗礼を受けるときにきちんと方針を出しますから、そのことと、その方針を実行する手段を持つのとは違います。それをしっかりと区分していただきたいというのが私の意見です。特に目的と手段のところはすごく大事なことだと思います。
 私の意見は、1人の単なる役人がすごい権限を持つというのは大変危険なことで、少なくとも教育委員会を残すか、選挙の洗礼を受ける首長の、政治的に中立性が要るところは口出しちゃいけないと規定して結構ですから、やはり何かきちんとした方針は議会や市民に明らかにした上で、その基本方針にきちんと忠実に仕事をしているかどうかということで初めて罷免ができると申し上げたいと思います。
 以上でございます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。

【橋本委員】  ちょっとだけいいですか。

【小川分科会長】  はい。じゃあ、橋本委員。

【橋本委員】  実は先ほどの事務局からの説明なんですけれども、例えば行政委員会制度というものを中央ではやらなかったと。それは国は直接携わらないけど、地方は直接携わるからだという説明があったんですけれども、国は大学教育という一番肝心な教育に携わっているんです。これについて政治的中立性というのはどうなっているのか、そういうことを全然説明しないで、小学校、中学校は、市町村と都道府県は直に教育に携わっているから委員会で政治的中立性を確保するんだ。国の方は大学教育という極めて大事な部分に関与しているのに行政委員会を置かなくていいのかということについての答えに全然なっていない。
 それからもう一つは、強い執行権を二元代表制だから持っているという話がありましたけど、これは我々も全部解職請求というのがあるわけでして、何も国の方とまるっきり違うというより、国より逆に厳しい状況にあるわけですので、その辺についてはちゃんと理解していただけたらと思っていますので、事務局の説明に僕は全然合点がいきません。

【小川分科会長】  ありがとうございました。今の点を含めて議論していきたいと思います。
 では、生重委員、あとは貝ノ瀨委員、村上委員という順で、まず最初、進めさせていただきます。どうぞ。

【生重委員】  御発表いただいた先生方、ありがとうございました。
 私もこの分科会の制度だけ語られるようなものは全然市民感覚には即していなくて、今の制度自体だって多分、学校に子供を通わせている保護者ですらよくは分かっていないわけですよね。それを一度たなざらしにして分かるようにしましょうよと、もっと市民参画できる形、分かって支持する形にしましょうよということなのかと私は思っていたんです。何よりも、この議論の中に学校教育しか出てこないって、それは何なんだろうと。大人や年寄りはどうなるんだと。一緒にしちゃいけない。御高齢者から様々な年齢層の方たちがいる中で地域というのは成立されていて、そういう中で、社会教育というジャンルこそが本当は行政に添うていくべきもので、そこに人づくりやまちづくりというところの観点がある。今現在、学校教育法と社会教育法ということで教育委員会内部で二つきちっとやってきたのが、社会教育委員会自体も衰退の一途をたどり、何をやっているのか、全然提言もできないようなところもたくさん増えてきている。その中で行政の首長たちが、それぞれ子供課とか子育て推進課とか、様々な形で、もっとトータルでゼロ歳から以降の全部を語るみたいな、そういう行政の所管課を出してきている。それはそれですごく大切なことだと実は私は思っていて、ただ、ここで一点、実は明石分科会長の下で、私どもが社会教育のワーキンググループを作って、これからの社会教育行政のありようとか、社会教育主事の今後果たさなければいけない役割。本来、社会教育主事という専門職があって、町の中の人のやる気を引き出していく、モチベーションを上げていく、自分たちがどうやっていろいろなことに参画しながら市民としての自立とか責任みたいなことを考えていくのかみたいなことを議論している。それをリードしていくためには今後の社会教育主事という職種はどうなるべきであろうかという議論がなされているわけで、こちらの分科会の方で話し合っていることもとても重要だよねという話に実はなっていまして、その中で、ネットワーク行政というふうに生涯学習分科会の方では常々言ってきているんですが、ネットワーク行政こそが、じゃあ、首長部局で一般行政がやっていることと教育委員会がやっていることがどうのこうのでは、市民側の立場からしたら、本当はそんな勝手に2本に分けて議論しないでほしい。もっと本当はネットワーク型で、我々が住みやすい町、そして参画しやすい町になっていかなくちゃいけないんだと、そういうことを例えば社会教育主事が専門職でもっとスキルを上げていったならば、首長部局に作られる今後のまちづくりの配置のところに教育委員会的要素もあるという、その、どういうふうにいろいろな物事が進んでいくかということと、それから、学校教育における様々諸々は、森委員がおっしゃったように、今後もっと細かく出していって、本当に国家的中立とか政治的中立とか、どこがそれを語るべきものなのかというのは、みんなが見てみるべきだと私も思いますし、生き生きしたまちづくり、地域の再生のためには、みんなそれぞれが責任を持っていかなくちゃいけないわけだから、もちろん教育委員会制度、ベースには、背景には、いじめの問題をどこが責任を取るのかとか、誰が一番悪かったのか、私はつくづくいろいろなところを見ていて、教員は国も向いていませんし、都道府県、市区町村行政も向いてやしません。自分の学校の現場のことで手いっぱいです。一般行政職員は、別に教育委員会が全体、国、文科省を見ているとも感じません。自分たちの今それぞれが個性を出すために、アクションプランとか、21世紀のビジョンを示してとか、様々な施策提言を各地方においてやられていて、教育の10年を描くとかということをそれぞれの地域独自にやっていて、それに向けて努力しようという教育委員会職員の姿はたくさん見てきていますが、何かにつけて、別に文部科学省だけを見ているということを私自身は感じたことはあまりないんです。
 じゃあ、それぞれが良くなっていくためにはどうするのか。今、学校教育行政側、学校教育法側でどこが中立を保てないのかというのプラス、もう一つはやはり社会教育を活性化していく。まちづくり、人づくりということが教育の枠を飛び出すのか、それとももう少し教育委員会の中できちんと専門職を育てていくのかというところも併せて議論していただけるとありがたいと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございました。貝ノ瀨委員、どうぞ。

【貝ノ瀨委員】  森委員から出た、政治的中立性はなぜ必要かと。それは一般論じゃなくて、具体的に政治的な中立性について問われることがないような状況というのは、むしろ望ましいのかもしれない。穏やかに進んで生活しているという意味ではいいのかもしれませんが、しかし現実に、例えば端的に、委員もおっしゃってましたけど、教科書採択です。これでまさに議論が分かれている地域があるわけで、どこの教科書を採択するかということについて非常に神経使うわけですね。当然のことながら、首長は首長でもちろんお考えはお持ちだと思います。教育委員は教育委員で持っているはずですし、市民は市民で個々にあるでしょう。けれども、今の仕組みとしては、教育委員会制度の中で、静ひつな環境の中でこの採択事務を行うと法律上なっているわけですので、そういうことでしっかり勉強しながら御自分たちで主体的にやっているわけです。しかし自治体によっては、私も教育長を長くやっていて、いろいろな仲間から聞きますけど、やはり首長からいろいろなささやきがあるわけです。実際のところ、首長が替わった途端、その教育長が前と違った考えを表明したり、私から見れば、どういう考えを持っているのかなんて疑問を持ったりもしましたけれども。また、国旗・国歌の問題です。私も教育委員会の幹部としてあちこち、東京都内ですけれども、勤務したときがあります。議会の答弁のときなども、結局のところ、教育委員会としては学習指導要領がよりどころなわけですね。最高裁の判例でも固められているわけです。しかし、ある自治体の首長は、私の方に振り向いて「ほどほどで言ってくれよ」とか、あくまでも学習指導要領で答弁しましたが、しかし、そういったことというのは実際問題あるのです。誰でも、立場を考え、そしてきょうじを持って対応しているというのが現状だろうと思いますが、そういうことを保障するという意味で、政治的中立性というものは一定程度担保した方がいいのではないかと思っているわけです。

【森委員】  一言だけ。

【小川分科会長】  じゃあ、一言。

【森委員】  私の意見は、政治的中立性が必要なものはあるという意見です。あるけれども、どれだけあるんだという意見です。教科書採択とか教科の内容に口出しちゃいけないのは当然のことだから、それは禁止してもらって結構です。だけど、そのために社会教育だの生涯学習だの保育だのに口出しちゃいけないというばかな話はないでしょう。それが一つ。
 それからもう一つ、それだけ政治的中立性の要るものを、選挙でも何でも選ばれない、教育委員会の監視も受けない、単なる役人が決めていいのかということです。そういう議論をしていただきたいというのが私の意見です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。、村上委員、どうぞ。

【村上委員】  手短に二点申し上げます。
 一つは、政治的中立性について今議論になっているんですけれども、森委員がおっしゃられた、政治的中立性が求められている仕事を挙げる、見てみる、仕事を棚卸しするみたいにするというのは一つのアイデアだとは思うんですけれども、政治的中立性というのは目に見えるものではなくて、潜在的なリスクというものもあって、例えば大阪の桜宮高校の事件なんかは、あれは、あんなことは通常のルーティンでは想定できないわけです。市長から高校の学科を廃止するという話が突然出てくるというのは、仕事を棚卸しするだけでは見えないものでありまして、そういうのも含めて考える必要はあるのかと思いました。
 それと、国は政治的中立性が担保されていなくて地方だけ必要なのはどうしてかというお話も、よくそういう議論は耳にするんですけれども、国がやっていないから地方もやらなくていいかというと、これは議論としては逆の可能性もあって、国の方がもうちょっと政治的中立性が必要なシステムというのが、政権交代も常道になってきつつあるので、むしろそっちの方が求められているんじゃないかという考え方ももしかしたらあり得るのかもしれません。継続性、安定性は支障がないとおっしゃられてはいたんですけど、例えばゆとり教育なんかは、仮に国が行政委員会だったら、もうちょっと違った政策過程があったのではないかという気もしますので、国と地方が違うから地方が国に合わせるというよりは、むしろもう少し国のシステムの方が政治的中立性とか安定性とか継続性を考えるべきというような見方もあり得るんじゃないかという気がしました。
 あとは、国は分担管理で、首相は直接の権限を事務的にはあまり持っていなくて、主任の大臣が事務を分担しているのに対して、自治体は首長がかなり権限を持っていて、その権限を分散させるという意味で行政委員会制度があるという意味合いもありますので、国は分担管理で自治体は首長に権限を比較的集めているというような違いもやはり考慮する必要があるのではないかと思いました。
 もう一点がもう少し制度的なお話でして、私も独任制よりはやはり合議制執行機関の方が、中立性、安定性、継続性を担保するというのであればベターなシステムだろうと考えております。これは選挙で選ばれたか選ばれないかに関わらず、合議制だと少しずつ人が替わるので変化はゆっくりになるのと、ぶれが小さくなりやすいというところは独任制に比べてあると思いますので、合議制執行機関がベターではないかと。今の教育委員会というのは、非常勤の教育委員が細かい日常の行政執行まで面倒見ないといけない建前になっているというのがちょっとネックなのかなという気がしておりまして、例えば監督とか管理とか大きな部分は合議制の委員が見て、細かい日常の業務の執行権限なんかはかなり事務局とかあるいは執行の責任者に委任するというような形にして、合議体の教育委員会は監督とか管理の方にウエイトを置くと。その上で合議制の執行機関を保つというような選択肢はあり得るんじゃないかと思いました。公安委員会のようなイメージに近くて、公安委員会は全員非常勤なんですけれども、そのうちの例えば1人は常勤の責任者、教育長で決定について責任を持つと。今までの議論だと、教育長は執行の責任者というようなイメージが議論の中で強いかなと思ったんですけれども、例えば責任者としての教育長と執行責任者として事務局長を別の人間にするという考え方もあり得ると思うんです。教育長は全体の教育行政の責任を見る。執行は執行で一般職の事務局長を別に置くというような考え方もあり得ると思います。
 それから、最後になりますが、教育長の任免・罷免についても、もし合議制の教育委員会のようなものを残すということであれば、教育委員会が教育長の任免・罷免に関わるというのは今まで議論には出ていなくて、首長と議会が関わるというような議論だったと思うのですが、例えば合議体の教育委員会が教育長の任免・罷免に関わるというような制度設計もあり得るのではないかと思いましたので、そういった公安委員会的なイメージで、常勤の人が責任を持つというような制度イメージもあるのではないかと考えました。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。竹原委員。ほかにいかがでしょうか。じゃあ、竹原委員、そして船橋委員、辻委員、高橋委員、そういう順番でお願いします。

【竹原委員】  議論が進みまして、システムのこと、制度のことになると、市民である私たちにとってついていけない部分があり、確認させていただきたいと思います。地方教育行政の在り方を検討する原点は、今の教育現場では足りないもの、変えた方がいいものがあるからということで、子供のために、学校教育だけではなく、日本の教育行政がどう動いた方がいいかということの議論だと思っております。この10年ぐらい、開かれた学校づくりが言われ、学校は学校の中だけでは完結できず、地域に開いていかなければもう成り立たないということは分かってきました。学校や地域が変わるとともに、今課題とされているのが教育委員会であり教育委員会事務局なのだととらえています。
 多くの保護者・地域の人は「教育委員会」という言葉は「教育委員会事務局」と混同しているかと思います。さらに現場の先生にとっては教育委員会事務局がこう言ってきた、こういう調査が来たなど、教育委員会や事務局が、バックアップする存在というより、むしろ新しい仕事や新しいルールなりをオーダーしてくる存在のように見えることが多く感じられます。教育現場のために教育委員会が機能するためにはどうあればいいのかという議論をここで改めてしていきたいと思います。
 これは60年の教育委員会制度の抜本的な見直しだと最初の回にどなたかがおっしゃってくださいましたけれども、とても期待しています。これからは市民もサービスを提供される側としてだけではなく、子供や孫がいなくても地域の大人として共に担い手となれるようにするとともに、教育委員会と教育委員会事務局の役割を、もう一回新たな気持ちで考えていければと思っています。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 船橋委員、どうぞ。

【船橋委員】  あらかじめ、初めて参加させていただいて、かつ私はこの中では若くて、かつ民間で、企業の人材育成、グローバル教育などをやっている者がこのメンバーに入ったという立場から、とんちんかんなことを言うかもしれませんけれども、初回ということで御了承いただきたいんですが、そもそも今どういう子供、人材を育てていきたいのかという中で、企業は本当にグローバル競争の中で、競争が重要という意味じゃなく、グローバル化、複雑な世の中の中で、変化対応ができて、多様な人材が欲しい。今、中等高等教育の留学生が減っていて、なるべく若者を早く海外に出そうとかいう中で、私もヤンググローバルリーダーという世界経済フォーラムに参加するメンバーで、いろいろな世界の人を見たり学校を見てきています。直近で驚いたのは、北京に行ったら、河合塾みたいな、東進ハイスクールみたいな予備校、ハーバードとかに送れるような学校が20階建てのビルができていて上場企業をやっていたり、とにかく世界の教育がすごく変わっているんです。たしかどなたかも、とにかく今、変化対応、対応するスピードが大事だという中で、私から見ると、日本の学校はほぼどこも一緒だし、こんなにがちがちな指導要領がある国はないので、かなり首長がいろいろなことをやったとしても、そんなに学校ごとに変わらないんじゃないかというのが感覚です。すみません、現場も知らずに。と同時に、森市長がおっしゃったように、中立性、安定性、継続性はもちろん大事なんだけど、部分だけ、例えば橋本知事の意見と逆かもしれません。私は高等教育、大学は、もう大人なんだから、重要だけれども、本人たちが自分の意思で決めていいんじゃないか。逆に小中学校はものすごく大事だから、かなり牽制しなくちゃいけないとか、場所によって違ってもいいかなとか、森市長がおっしゃったように、教科書はだめだけど、ここはいいとか、何かそういうもうちょっと弾力的なものもあっていいかなと思っています。
 ですので結論から言うと、そういう意味で、そもそもどこに向かって、僕は多様な学校、多様な人材、変化対応、スピード、日本で極論どこ行ったって、そんなに変わらない。世界から見ると、全く日本人は同じに見えていますし、もうちょっと多様な人が育っていかないと、日本が対応できなくなる。何かが起きたときに対応できない人材ばかりそろっちゃうので、僕はすごく危険だと思っていますので、もうちょっと多様なことが起こる状態に持っていくとするならば、今そんなに細かいところを気にしなくてもいいんじゃないかと。わざと逆のことを言っている面もなくはないんですけれども、かつ現場のことをよく知らないながら言って申し訳ないんですが、意見として、どこに向かっているんだろうかというところは、いま一度、もしゼロに戻してしまったら大変申し訳ないんですが、感覚論だけ。多分、私の世代以下は、そういう感覚の人が多いと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございました。

【橋本委員】  国立と私立は違う。国立は政治的中立性。

【船橋委員】  国立は政治的中立性、私立とは違う、はい。

【橋本委員】  国立は政治的中立性を守っていただいてやったら。

【船橋委員】  そうです、はい。私は高校で進めるべきだと個人的には思っているんですけれども。

【小川分科会長】  分かりました。
 では、辻委員、お願いします。

【辻委員】  私も行政を専門に研究していますが、教育問題は非常に奥が深いということを実感しております。日々、私も大学において教育教育を実践していますが、非常にテクニカルな話に走って、木を見て森を見ないようなことがあったりして、議論の根本をちゃんと見据えるというのが一番重要だと自戒しております。
 そういう意味では、戦後民主主義の大きな発展は、行政機関に対してちゃんとした民主的コントロールを、その民主的コントロールが大前提にあった点にあると思っています。教育委員会の場合は、民主的コントロールの部分を、長とは独立した機関と考えながら、合議制という形で担保してこれまでやってきました。これまで特に教育委員会に従事してきた方からすると、これで本当に制度改革しなければだめなのか、疑問のある方もおられると思います。まだ運用レベルの改革で何とかなるのではないか。こうした議論は、あり得るので、私はこれから議論していったらいいと思います。
 また、通常のほかの政策部局と同様に、教育長を補助機関なり執行機関として考えていくと、長に属するという形で執行機関としての民主性を担保していくことになりますので、こういう体制も十分考えられると思います。これがどうしたら実効的になるのか、これも私は具体的に考えていくべきだと思います。
 しかし、これは先ほど問題提起もありましたが、長の権限にも属さないで、合議制も採らない、そういうふうに教育長を位置付けるのは、基本的に問題があると思います。役人はやりやすいのかもしれませんが、民主主義の大前提に反するので、私は基本的にあり得ない話だと思います。合議制の教育委員会にするのか、長に属する補助機関として考えて、教育委員会は附属機関と考えるのか。その二つの極の中で、どうしたら政治的に望ましい関与ができて、朝令暮改のように変わる政治には振り回されずに、しかし根幹では政治のリーダーシップの下でちゃんと民主的意思が反映できるような制度ができるのか、議論していくべきではないかと思いました。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】  今回の制度改革は本当に必要かどうかということを検討をするに当たって、検証が必要だと思います。私が教育委員に就任した後、地方分権推進の中で平成13年の地教行法の改正があり、その後、教育基本法も改正されて、そして教育振興基本計画を各都道府県とか市町村で立てて、そして報告書を作って評価をするという作業が経緯としてありました。そういう中で、教育委員は、ただ単に座っているだけではなくて、合議制の中でもかなり意見を活発に言うようになったし、そして私たちの経験では、地域の教育の現実が厳しくなればなるほど、それに対して教育委員が何をすればいいかとかいうことを考えるようになりました。ですから、森市長さんもおっしゃったように、教育委員会の役割、そして実際にどういうことをしているかということをしっかり検証していただかないといけないと思います。抽象的な話だけで、役に立ってないとか、形骸化していると決めつけるだけでなく、また、制度を変えればいいのか、それとも地域の教育をよくするために首長さんとどう協力したら、どういうふうにしたらいいのかという、もう少し前向きな議論にしていただければと思います。検証と、そしてそれをいいものに変えていくための方法を考えていただければと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございました。あと10分ぐらいありますので、あと何名か。比留間委員。ほかにいかがですか。白石委員。では、比留間委員からお願いします。

【比留間委員】  二点だけちょっと触れたいと思いますけれども、教育長の役割ということで、教育再生実行会議のあの絵を見ると、独任制の執行機関というふうに見えますけれども、私もこれは多分好ましくないだろうと思っています。先ほど辻委員から、役人はやりやすいかもしれないがという御発言がありましたけど、私は役人の経験者として、あの形はやっぱりあり得ないだろうなと、これは経験のところからもきていますけれども、考えています。というのが一点目。
 それから、政治的中立性の問題について、余り大きな問題になるということは、それほど多くないだろうと思っています。要は、この制度が抑制的に働いているといいますか、最後のセーフティーネットとして機能しているというか、この制度があるから、長と行政委員会である教育委員会との関係が、ある程度抑制的に関係が成り立っていると捉えることもできるのではないか。その意義というのは、あまり問題にならないから、だから必要ないんだとは多分ならないだろうと考えているということを申し上げておきたいと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 白石委員、よろしくお願いします。

【白石委員】  私も最初のときに現状と課題を発表させてもらったんですけど、私は町長になって13年になりますが、当初は本来の町政が中心でございまして、余り教育委員会の活動には、口出ししないというのは変ですけれども、教育委員を中心にやっていました。少しずついろいろな情報が分かってくるにつれて、教育委員会制度というのは私は非常に必要だと思うんですけれども、肝心の教育委員の活動がなかなか教育現場に反映されない。それは教育委員と話をする中でいろいろ聞いていたんですけれども、まだそこまで私自身が町長の立場で入っていくことはできなかったんです。
 少しずつ改革を進めていく中で、はっきりしない部分があるんです。これは最初に言いましたけれども、例えば教育委員長と教育長というのは、住民から見て、要するにどういう位置付けなんだと。そういったところをしっかり位置付けて、役割をきちんとすると。同時に、さっき森市長がおっしゃいましたけれども、恐らく今回のこういう制度の基は、学校教育が多分中心だろうと思うんです。これは前にも言いましたけど、社会教育をないがしろにしていいということではないんですよ。社会教育というのは、割合町長が日常的に参加しやすいんです。ところが、学校に入っていくとなると、これはいろいろな意味で、抵抗といいますか、市民の見方が変わってきますので、そういう意味で、今の制度の中でここの部分をもっとちゃんとしてほしいというところが、地方で行政を担当する町長の立場から言えば、一番気になっているところなんです。そのことが、例えば学校現場と教育委員の間で何となくいま一つしっくりいっていないとか、あるいは意見がそれぞれきちんと交わされていないとか、そういうところに影響しているんだと思いますので、そういった面で、今の制度の中で、ここはこういうふうに位置付けようじゃないかと具体的にやってもらえれば、私は大きな前進になると思います。
 それと同時に、学校現場でいろいろ、これまで十何年間聞いた話の中では、小さい市町村からすると、県教委の考え方が非常に後ろにあるんです。その後ろに、おっしゃるように文部科学省の方針とか、あるいは国の方針等あるわけです。決して方針があるからいけないんじゃないんです。それをいかにも押し付けるように現場が受け取っているんです。そこが一番危険なんです。だから、もっと現場が自由にやれるように県や国は指導すべきであって、逆に縛っていると現場が感じているところはもう少し考えていかなければならないと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 あと5分ぐらいありますけれども。貝ノ瀨委員。ほかにどうですか。貝ノ瀨委員からどうぞ。

【貝ノ瀨委員】  教育長が独任制の執行機関のように見えるというお話もありましたけれども、どうしてそういうふうに見えるかなとも思いました。教育長は、要するに首長が議会の同意を得て、首長が任命するんです。それは今までと変わりがないわけで、その任命も、議会にもっと仔細に検討してもらうということの中で任命していくということであって、首長と並び立つような教育長をそこに存在させようというような意図になっていないと思います。実際問題、首長さんは、市長さんなり知事さんなりは、自分で並び立つような人を選んでいるわけじゃなくて、自分が教育行政を広い意味で進めていくような方を選んで、議会の同意を得て任命していくということでありましょう。また、今でも罷免要項がありますけれども、罷免ということも明確に可能になっているわけであります。ですから、今までは曲がりなりにも合議制の執行機関があり、教育委員会があって、そこで一定程度、形骸化されていたとしても、そこでチェックされていたということはあった。そこを考えても、やはり一定程度、教育委員会というような、そういう合議制はまたあったとしても、今までのように、どちらが責任を持って仕事ができるかというふうなところが非常に曖昧になっていたというところに、教育長にそこを一元的に責任を持ってもらって、そして仕事をしてもらうと。しかし、教育委員会を全くなくしてしまうわけではありません。教育長は、議会の承認を得た特別職という形になるわけですので、それは単なる役人じゃありませんので、これは議会でも当然チェックされるし、また教育委員さんが、私がさっき申し上げたような方たちで、また民意を反映させて、再度またチェックと、そういう機能も持たせることはこれから可能なわけですので、そういう意味では独任制の執行機関という形にはならないだろうと思います。

【小川分科会長】  最後になりますか。帯野委員、よろしくお願いします。

【帯野委員】  いろいろ意見もあるんですが、最後ですので一言だけ。今日事務局の方から、なぜ教育長が教育委員を兼任するようになったかという説明を受けて、よく分かったような、余計分からなくなったような。例えば法的な解釈では教育長は今でも一般職であるのに、これを見ると、委員として特別職であると。このあたりの解釈を11年からどういうふうに文科省は整理してこられたのかということも分かりませんし、それからまた、罷免権が委員会になかったということであれば、首長にないということだけでなく、執行の責任を持つ長としての責任をどのようにして位置付けていたのかというところもよく分からないのですが、そこのところばかり言うと審議が進みませんのでこのくらいにしておきます。ただ一つ言えることは、やはり場当たり的に変えると制度は必ずゆがんでくるということであると思います。そういう意味で、この答申を出すときには、できるだけシンプルに、より複雑なものにしないということを希望しますし、その点で、今日御発言の中にあった、委員会の中に教育長を置いて、また別に事務局長を置くというような、これ以上複雑なものにはしない方がいいと思います。それから、独任制の執行機関ですか、独任制というのもかなり乱暴だと思いますので、やはり森委員のおっしゃったように原点から考える。これは10年の答申ですか。この原点に返って、もう一度、教育現場がどうすれば良くなるのかという視点で我々としては考える必要があるのではないかと思いました。

【小川分科会長】  ありがとうございました。森委員。

【森委員】  ちょっと言い訳じみたことを申し上げますけれども、基本的に大きな機動性を持たせるとか、大きな流れに別に反対しているわけではないんです。そうではなくて、首長の役割をもっと前向きに積極的に考えたらどうか。例えば教科書選定とか、さっきの橋本さんのような、教育の内容そのものに口を出すんじゃなくて、教育の基本方針とか振興計画のようなものはきっちりと首長が市民に問うて、選挙の洗礼を受けて、しかも議会に提出して、例えば長岡の教育はこういう方針だとはっきりすることはすごく大事なことだという意味です。それが政治的中立かどうかは市民が判断することだと私は思うし、今のままだと、政治的中立性の判断を誰がするんだろうかと。基本方針も明らかにされていないで、誰が判断するんだろうと私は思います。それが一つ。
 それともう一つは、制度設計上、首長が口を出しちゃいけないところ、出していいところをはっきりさせるべきじゃないか、そういう意見でございます。別に全否定しているわけではないという言い訳でございます。

【橋本委員】  一言だけいいですか。

【小川分科会長】  はい、どうぞ、一言だけ。

【橋本委員】  すぐ終わります。今日のテーマの中でレイマンコントロールという言葉が書いてあったんですけど、今日のメンバーを見ていますと、17人中13人はほとんど、教育長とか、あるいは首長とか学者とか、教育のプロなんです。ですから、レイマンとして、今、生重さんとか竹原さんとか、いろいろな方々がおっしゃられましたけど、そういう一般の人から見て分かりやすい仕組みにしないと、我々が分かりやすい仕組みにしたってだめなので、一般の人がぱっと見たら、こういう関係で、こういうふうになっているのかということが分かる仕組みというものを一番重要視すべきじゃないかと思います。

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 前回に引き続いて、今回もいろいろな観点から掘り下げた意見交換ができたように思います。次回は、前回と今回の議論を踏まえて、新しい論点も出てきていますので、少し整理した上で、次回には、論点を幾つか絞って、またより深い意見交換ができればと思っています。
 前回と今回の議論を伺って、基本的には教育長を教育行政の責任者にするということは、実態がそうであるという、ある意味では実態を追認するような考え方ということで、大方の委員の方は、そういう方向性についてはいいのではないかとお考えかと受け止めています。ただ、それをどういう具体的な制度設計として描いていくかということについては、大きく分けると、今日の議論からすると三つぐらい制度設計の選択肢みたいなのがあるように思います。つまり、教育長、教育委員との関係、首長との関係等々、第一は、教育長を独任制の執行機関とするような考え方と、第二は合議制の執行機関をベースにして今のような問題を制度設計するという考え方、そして第三は首長のラインでそういう関係を整理し直してみると、おおよそそういう三つぐらいの方向性が出たような感じがします。また、それぞれの選択肢にはそれぞれにまた検討すべ今日課題もあるかと思いますので、そうした諸点については、次回以降、一つ一つ論点に即しながら深めていっていただければと思っています。
 では、今日の会議はこれで終わりたいと思いますけれども、次回以降のスケジュール等が決まっていれば、よろしくお願いいたします。

【堀野企画官】  次回につきましては、7月1日月曜日の10時から12時、場所は学士会館の210号室での開催を予定しております。その後の日程については、また事務局より連絡させていただきます。

【小川分科会長】  ありがとうございました。次回は7月1日月曜日、10時から12時、場所は神田の学士会館ですね。

【堀野企画官】  はい。

【小川分科会長】  神田の学士会館ということですので、よろしくお願いいたします。詳しい会議案内については、また追って事務局の方から連絡がいくそうですので、よろしくお願いします。
 以上で、今日の分科会は終わりたいと思います。ありがとうございました。

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