教育制度分科会(第13回) 議事録

1.日時

平成16年5月27日(木曜日) 10時30分~12時

2.場所

東京會舘 「シルバールーム」

3.議題

  1. 「大学入学資格検定の在り方について(中間報告(案))」について
  2. その他

4.出席者

委員

 鳥居分科会長、木村副分科会長、茂木副会長、浅見委員、梶田委員、國分委員、田村委員、渡久山委員、中村委員、丹羽委員、山本委員、石川委員

文部科学省

 矢野文部科学審議官、藤田生涯学習政策局審議官、布村生涯学習政策局政策課長、芝田生涯学習推進課長(その他関係官)

5.議事録

午前10時30分 開会

○ 鳥居分科会長
 それでは、定刻でございますので、ただいまから中央教育審議会の第13回教育制度分科会を開催させていただきます。
 皆様、お忙しいところを御参集賜りましてありがとうございます。
 教育制度分科会は、現在大学入学資格検定と教育委員会制度について審議をしておりまして、今日で全体を通しますと13回目になります。
 今日は、大学入学資格検定の問題について御審議をいただくことになっております。この問題につきましては、教育制度分科会の下に大学入学資格検定部会というものを設けまして、これまでに7回審議をしていただきました。このたび中間報告(案)がまとまりましたので、これをこの分科会に上げていただくことになりました。本日は、そんなわけで、大学入学資格検定部会の中間報告(案)について分科会として御審議をいただくわけです。
 この公開の問題ですが、会議の公開に関する規則に照らしますと、報告案を審議するときには非公開が原則になっておりますが、報告案の審議は、できるだけ国民の皆様に広く議論していただくという趣旨から、できるものは公開にするとしてきております。本日の大学入学資格検定部会中間報告(案)も同様の趣旨で公開としてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございます。
 それでは、御了承を得られましたので、公開とさせていただきます。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 まず、繰り返しになりますけれども、中間報告(案)につきまして、大学入学資格検定部会の部会長をお務めくださいました田村先生から御説明をお願いいたしまして、その後、事務局から御説明をお願いするというふうにしたいと思います。
 田村先生、よろしくお願いいたします。

○ 田村委員(大学入学資格検定部会長)
 それでは、大学入学資格検定部会において取りまとめました「大学入学資格検定の在り方について(中間報告(案))」につきまして御説明をさせていただきます。
 資料はお手元にあるとおりでございますが、差し当たり、中間報告の案文につけてございますが、報告のポイントという色刷りのものを御覧になりながら説明をお聞きいただければと思います。後ほど詳しい内容は芝田課長にお願いしますので、私からはごく簡単に、ポイントについての御説明ということで役を果たしたいと思います。
 まず、大学入学資格につきましては、昨年の9月の制度改正によって、国際化とか、いろいろな状況によって制度改正をするということで弾力化されております。現在、既に大学の個別審査により、高等学校卒業と同等以上の学力があると認められる者には大学入学資格を付与するということが可能になっているわけです。これは、大検が後期中等教育にかわる唯一の高等教育への道であったのが終わったという大きな時代の変化を意味しているわけです。
 このような状況を踏まえまして、昨年10月7日に文部科学大臣から中央教育審議会に対して、大学入学資格検定について、高等学校卒業程度の学力を認定する試験として性格をより明確にする、あるいは各種職業資格における取り扱い ―我が国の場合は、ほとんどの職業資格が高等学校卒業というのを前提にしておりますので、その取り扱いなどにおいてより広く活用されるようにするために方策を出してほしいという諮問がなされたところでございます。
 その後、中央教育審議会総会から当教育制度分科会へと審議が付託されまして、分科会のもとに設けられました大学入学資格検定部会において昨年11月から、「大学入学資格検定の在り方」につきまして、委員からの専門的な見地に基づく意見発表、委員間の自由討議、大検合格者からのヒアリングなど計7回に及ぶ審議、1回はちょっと人数が足りなくなりまして懇談会になってしまったのですが、しかし、かえって懇談会のほうが自由でいろいろな意見が出て楽しかったのですが、それを実施いたしました。本日は、先般5月11日の第7回大学入学資格検定部会において中間報告(案)として取りまとめたものを当分科会に提出することとしたものでございます。
 では、資料1の「大学入学資格検定の在り方について(中間報告【案】)のポイント」という色刷りのものを御覧いただければと思います。このポイントについて、概略御説明をさせていただこうと思います。
 初めに、大検というのは大学入学資格検定の略称でございますが、大検の在り方についての審議を進めるに当たりまして、昭和26年度に発足した大検を取り巻いている状況というのは、26年以降、今日に至るまでに大変な変化がありました。それを分析いたしまして、新試験へ転換する際の現状認識、課題について議論いたしまして、今日ではいわゆる生涯学習という考え方が定着しておりますので、そういう状態を前提として、中間報告では4点に取りまとめて案をまとめております。
 その後、上記の現状認識のもとで、大検を新試験へ転換するに当たっての基本的な考え方について検討を行いました。新試験については、さらに受験対象者を広げるとともに、大学等への進学、それから就職、いずれにも活用できるような高等学校卒業程度の学力、ここのところが大事なのですが、高等学校卒業程度の学力を認定する試験としての性格を明確にして、様々な機会を利用した学習の成果がより一層適切に評価されるようにする必要があると考えまして、三つの基本的な考え方をまとめました。
 一つ目が、大学入学資格付与の機能を維持する。
 二つ目が、より広く活用される試験にする。
 三つ目が、就職等において、その際も活用されるように社会的通用性を高める。
 この三つの条件を考えた上で、新試験の内容を検討いたしました。これらの基本的な考え方を踏まえまして新試験の内容を議論したわけでございます。
 結果は次の2点にございます。
 まず、新試験の受験科目等につきましては、従来型の大検の学力水準は維持しつつ、高校中退者等がより受験しやすい試験とするため、実技系教科である家庭科にかえまして、新学習指導要領で必履修とされた英語を必受験科目とすることにいたしました。これは議論がいろいろ分かれたのですが、最後はこのような形でまとまったわけでございます。そして、選択教科を削減するということを提言しております。したがいまして、全体としては1教科減ということになります。
 次に、受験対象者につきましては、現行の大検では定時制や通信制高校の在学者には受験資格を認めておりますが、全日制高校の在籍者には受験資格を認めていません。したがって、もし全日制高校の在籍者が大検を受けようとしますと、全日制高校を中退しないといけないということが起きております。しかし、近年、多部制や単位制の定時制高校 ―多部制というのは、定時制というと夜だけというふうにお考えになるのですけれども、朝からやる定時制が今は定着しているわけです。朝、昼、晩と3部でやっているようなところもありますが、この多部制あるいは単位制の定時制高校が設置されるということがありまして、全日制高校の在籍生徒と就学形態の区分が不明確になってきているというようなこともあって、全日制の高校の在学生にも今回の新しい試験は受験資格を与える、拡大するということといたしました。これについてはいろいろな御意見がございましたけれども、社会の流れの中では当然そういう方向だろうということが最終的なまとめになりました。
 なお、新試験の合格科目の単位認定を全日制高校でも行う。つまり、大検でパスすれば、それは全日制高校の卒業する場合の単位として認めていいではないか。つまり、やりとりができるようにする。できるだけバリアを少なくして、学ぶ者が積極的に活用するという方向性を出したわけでございます。そのようなことを文章の中に入れております。
 以上のほか、新試験の合格者が高等学校の卒業と同等に扱われるように、自治体や企業等へ積極的な働きかけを行う、あるいは、業務の外部委託の推進について提言をしております。業務の外部委託につきましては、少しいろいろなことがありましたので、そういう議論がされたということを報告に入れております。
 今回の審議経過においては、新試験による高等学校卒業資格の付与の可否、大学入試に係る試験の在り方の改善の必要性、高等学校在学者全員を対象とする学力認定試験の必要性など幅広い視点からの御意見が委員の中から出されまして、大変傾聴すべき意見が多かったのでございますが、今回の諮問に対する答えとしてはちょっと幅広くなり過ぎるというようなことがございまして、今回は将来の問題提起という形で記載をしてございます。
 中でも、新試験によって高等学校卒業資格を付与するかどうかということについては熱心な議論がありまして、多くの時間を割きました。しかし、最終的に、二つ理由がありまして高等学校卒業の資格の付与は行わないということになりました。
 一つの理由は、新試験の対象教科を単位換算しますと、高校の卒業要件でございます74単位の半分程度にしかならないということがまず一つございました。
 2番目に、既に現在でも社会においては、大検合格者が高卒と同等に扱われている事例が多くなってきている。さらに言えば、普通の高校を出るよりよほど勉強した人だというふうに見られているのが実態でございますので、高卒資格付与と同等の効果が既に得られているという判断で、今回は高卒資格の付与というところまでは行わないことといたしました。諸外国の例を見ますといろいろな対応があるのですけれども、やはり全く同じ扱いにしているところはございません。いろいろな条件をつけているということがございますので、我が国においてもそういう対応がいいのではないかということが結論でございました。
 以上が中間報告のポイントの説明でございます。
 中間報告の最後のところに、部会としてのメッセージを込めて次のような文章を載せてございます。今回の中間報告では、従来の大学入学資格検定の役割を維持しつつ、高等学校中退者等が新試験を利用しやすいものとするとともに、学校や職業への接続をより円滑にするための方策について提言を行った。生涯学習社会の構築を目指し、新試験を、生涯学習社会における様々な学習成果を適切に評価する制度として十全に機能するよう提言に沿って具体的措置を講ずることをお願いしたいわけであります。
 なお、高等学校卒業資格の付与につきましては、慎重な議論の上、結論としては、現時点では付与するということは適切でないと判断いたしましたが、社会的な通用性を高める努力を続けていただくことによって、高等学校卒業資格付与と同様の効果を確保できるということを期待しているところでございます。新試験が社会全体において高く評価されるとともに、多くの人々に活用されるものとなるよう関係者の取組をお願いしたいわけでございます。これは報告書の最後に書いてございます。大体10万人ぐらいの生徒が利用して、年に2万人ぐらい合格して、この資格を利用しているというのが現状なのですけれども、それが維持、さらに発展していくというのが一番いいというのが委員全員の意見でございました。
 それでは、本文につきまして芝田課長さんから御説明をいただきまして、その後、御意見をいただければと思いますので、よろしくお願いします。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 それでは、芝田課長から、主として資料3につきまして御説明をお願いします。

○ 芝田生涯学習推進課長
 今、田村先生から御説明がございましたので、ポイントのみ御紹介申し上げたいと思います。
 資料3の2ページ目を御覧いただきたいと思いますが、冒頭の現状認識の部分でございます。先ほどございましたように4点ございまして、「受験者層の変化」ということで、第2段落にございますように、もともと勤労青少年を念頭に置いた制度でございますが、今や高校中途退学者が受験者の6割程度を占めるようになっております。
 それから、「大学入学資格の弾力化」については先ほど御説明があったとおりでございます。
 3点目が、「大検の社会における活用」につきまして、だんだんと理解が広がって、高等学校卒業と同じように取り扱われておりますが、国あるいは民間の資格についてはほぼ高卒と同じように扱われておりまして、残っておりますのは、一部自治体あるいは企業等であると考えております。
 それから、3ページ目を御覧いただきますと、「高等学校の生徒の多様化と高等学校教育の弾力化」ということで、2行目にございますように、高校中退者の中退理由も、学校不適応とか、進路変更というのが6割程度を占めるようになっておりまして、多様化する高校生に高等学校教育のほうが柔軟に対応するというのも必要になっているのではないかということで、この新試験がこういった方面でも利用できるようになるといいという気持ちがここに入っております。
 4ページ目が、今回の見直しの基本的な考え方でございます。
 まず、冒頭のところで、生涯学習社会の実現を我が国として目指しているということを書いてございまして、第2段落の中ほどから、新試験については、さらに受験対象者を広げるとともに、進学、就職、いずれにも活用できるようなものとして、学習の成果がより一層適切に評価されるようにする必要があるという基本的な考え方のもとに、先ほどもございましたような3点、個別審査は当該大学だけに入学資格の付与が適用されるものですけれども、一律にどの大学でも大学入学資格を付与できるという現行の機能は維持すべきであるということ。
 それから、より広く活用されるような試験にしようということで、年間9~10万人の高校中退者がいるわけですけれども、現在、実際にそのうちこの試験を受けているのは2割以下、15年度でいきますと1万6,000人程度でございます。こうした方々が再チャレンジの道としてこの試験をより活用できるようにしてほしいという意味で、セーフティネットとして使われるようにしたいということ。
 もう1点は、全日制の高等学校にも受験対象を広げることによって高等学校教育の一層の弾力化にもつながることを期待するということであります。
 最後に、「3」で、より広く社会的な通用性を高めることが必要であるということで、最後の2行のところにございますように、名称も「高等学校卒業程度認定試験」というふうに改めまして、名前から社会的通用性を高めるためにこういうふうに変えてはどうかということでございます。
 5ページ目を御覧いただきますと、その基本的な考え方に基づきまして、新試験の内容についてでございます。ここは先ほど田村先生からお話のあったとおりでございます。
 「(1)」の下から二つ目の「○」にございますように、新試験の構成が書いてございます。
 それから、「(2)」の問題の水準につきましても、大検自体がかなり社会的にも評価を得るようになってきておりますので、その水準等については現行のものを維持すればよいのではないかということが、最初の「○」のところに書いてございます。
 「(3)受験科目の免除」でございます。これは現行大検においても実施しておりますが、高等学校で実際に単位を修得した者については、大検の受験を免除しております。それから、英検みたいな知識や技能に関する審査に合格した者についても、一定の級以上の者ですけれども、受験科目に相当するものを免除するという制度をやっております。これも引き続きやるべきだということであります。
 それから、受験対象者につきましては、これは3番目の「○」を御覧いただきますと、全日制高等学校においても、生徒の能力・適性・興味・関心等の多様化の実態を踏まえ、生徒に目標を与えて意欲を喚起したり、学校生活にうまく適応できない生徒の学習成果を評価したりする際の一方策として新試験を活用するべきであるということと、それから、「2」の一番最後の「○」でございますが、学校長の判断で受験科目に対応する新試験の合格科目について、学校のほうで単位認定できる制度を全日制高等学校にも拡大して、生徒の多様な学習成果が評価されるような機会を提供するべきであるというふうにしてございます。
 「3」の「年齢制限について」でございますが、現行大検は、下のほうは16歳以上で受験できるということでございます。それから、上のほうは、たとえ17歳で全科目に合格したとしても、18歳になるまではそれが発効しないという仕組みになっております。ここについてもいろいろ御議論がございましたけれども、下から2行目にありますように、これは学校教育制度全体の中で議論されるべき課題だろう、大検だけで特別にというわけにはいかないだろうということになっております。
 7ページ目に、「社会的認知度を高めるための方策」ということでございます。自治体や企業等に働きかけようということ。それから、3番目の「○」にございますように、やはり高等学校在学者及び高校中退者に対して都道府県の教育委員会から積極的に情報提供などをしてもらう必要があるということ。それから、図書館などの情報発信機能を活用したりするということも検討してはどうかということでございます。国のほうでもそういった取組を支援していこうということが書いてございます。
 「5」の「業務の外部委託」につきましては、大学入試センターといったような機関にできるだけ業務を委託してはどうかということでございます。
 8ページ目からが、田村先生からも御紹介いただきましたように、いろいろな将来にわたっての問題提起も含めまして、盛んに多くの時間を割いて御議論いただいたことが記してございます。
 まず最初は、「この新試験で高等学校卒業資格の付与まで行ってはどうか」、「いやいや、そこまでは行き過ぎだ」という御議論がございました。その両論を御紹介してございます。8ページの「1」、「2」というのが、賛否両方の立場から重立った意見を記してございます。高等学校は、学力だけではなくて、知・徳・体のバランスのとれた人間形成をするところだとか、先ほどもございましたような、74単位の最低要件に対して新試験は半分程度の単位数しかないではないかといったような意見、そういった立場から、高等学校卒業資格の付与ということまではできないのではないかという意見、あるいは「2」にございますように、日本では、学校に戻る制度としてはこの大検もあったわけですけれども、実際に就職というところへの接続というような配慮がなされていない、こういった面での手当てが必要だから、この試験だけでも高等学校の卒業資格そのものも付与できるようにしてはどうかと、賛否両論ございました。
 その結果については、先ほど御紹介のあったとおり、9ページの上のほうに「1」、「2」ということで、今回の議論としては、高等学校卒業資格の付与までは行うべきではない。しかしながら、実際に社会的通用性をさらに増していけば、高等学校卒業資格取得と同様の効果が得られるであろうといったような結論になっております。
 そのほか、非常に重要な問題提起が二つほどございました。9ページの下から二つ目の「○」でございます。読ませていただきます。「この関連で、新試験により、生涯学習社会における学習の評価の仕組みは一段と充実するが、さらに一歩進んで、国民の誰もが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習の機会を選択して、高等学校レベルの学力の取得を目的として学ぶことができるよう、単位累積制度などの新システムの必要性も検討するべきであるとの意見があった。」。
 それから、もう一つの「○」でございます。「さらに、我が国においては、大学入試に係る試験が複数あることから、新試験と大学入試センター試験との関係を含め、今後の大学入試の在り方を検討するべきであるとの意見があった。また、全ての高等学校在学生を対象に学習成果を図る学力認定試験を実施し、その成果を高等学校の卒業要件や大学入学の基礎資格とするなどして高校生にしっかりした学力を身に付けさせる方向を目指すべきであるとの意見もあった。」というふうに記してございます。
 その後が、先ほど御紹介いただいた結びの文章でございます。
 以上です。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 芝田さん、アメリカの例を少しお願いします。

○ 芝田生涯学習推進課長
 今回、一部の委員の方から、アメリカでは試験だけで高等学校卒業資格そのものを付与しているという御紹介がございましたので、専門家の方に実際に行っていただきまして、いろいろインタビューしてきていただきました。その結果を大づかみに申しますと、General Educational Development(GED)という試験が行われておりまして、それに合格すると、これは自主的に各州が州法で高等学校のディプロマを付与するという制度になっております。しかしながら、その実態をよく聞いてみますと、やはりアメリカでは独特のハイスクールカルチャーというのを大変重視しますので、それを経験していないということで、やはりディプロマとしてはセカンドクラスというふうにみなされているという、いろいろなところで御意見がございました。
 それに関連してもう一言敷衍いたしますと、日本では、高等学校の卒業と申しますのは、校長が全課程の修了を認定するということが卒業ということになるわけですけれども、アメリカではその部分が学位と同様のディプロマという制度が確立しているわけです。そういった意味で、制度上も日本で高等学校卒業資格を実際の高等学校に行かない人に付与するというのはちょっと難しい面があるという感触を持っております。
 以上でございます。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 今の御説明にありましたようなことも含めて、「高等学校卒業」という資格と「高等学校卒業程度を認定する」というもう一つの資格とができるということになるのだということを御理解いただきたいと思います。
 それでは、田村先生と芝田課長から説明してくださいました中間報告(案)につきまして、資料1、2、それから資料3、いずれにつきましても結構でございますが、御意見をいただきたいと思います。今日の御意見をいただいた上で、もし中間報告(案)、つまり資料3が本体ですけれども、これを分科会として御承認いただければ、これは中間報告ですので、パブリックコメントにかけまして、パブリックコメントの後、もう一度部会に戻して部会で御検討いただき、ここへまたもう1回持ってきていただいて、この分科会で御審議をいただいて、最終的には総会にも御審議をいただく。中間報告(案)の段階でも総会に出すのですか。

○ 芝田生涯学習推進課長
 はい。

○ 鳥居分科会長
 この中間報告(案)も、今日の御意見を受けて、総会にお出しいたします。そのことも含めまして御意見をいただければと思います。
 それから、今日は石川委員が、他の分科会分属でいらっしゃるのですけれども、オブザーバーとして御出席ですが、中教審はいろいろな分科会で他の分科会分属の方がオブザーバーとして御出席なさるというのをよくやっていますので、いつものとおり、御自由に、普通に御意見を御遠慮なくお出しいただければ幸いでございます。
 どうぞお願いいたします。

○ 國分委員
 現在の大検を、教育を含め様々な環境が変わってきたということで、この幾つかの提言にあるような改善にまとめるということは大変結構なことだし、おまとめいただいた田村部会長を初め部会の皆さん方には敬意を表したいと思います。
 一つ伺いたいのは、部会長からも御報告があり、事務当局から説明がありました、まさに高等学校卒業を認めるのか、それに相当するものなのか、これは当初、諮問があって、全体でフリートーキングをしたときから議論が分かれていた点ですね。8ページの「部会で議論された課題等」というところでいろいろな意見が示されておりますし、学力だけで判断するのか、学力以外のものもあるのかという点が一つの分かれ道になるのだろうと思いますが、私も、どういう方向がいいのかというのは、正直言ってよくわからないところが実はあるのですけれども。
 ただ、大変苦心の作で、高等学校卒業というのは、現在では踏み切れないというのが10ページの終わりのほうに書いてありますね。しかし、一方で、名称は高等学校卒業程度認定試験というふうにするということで、大変苦心の作ではあろうと思うのですが、それでは具体的に何が同じで、何が違うのかというのがちょっとわかりにくいところがあるように思うのです。対案があるわけではないのですけれども、その辺どんなふうに御議論があったのか。
 この問題はポイントのところだと思いますので、世の中にさらしていろいろな意見をまた出していただいて、さらに詰める必要があるだろうということだけは言えると思うのですが、現時点では、どういうふうに違って、どこが同じだったのか、その辺もし御披露いただければと思いますが。

○ 芝田生涯学習推進課長
 その前に一つだけ、補足といたしまして、実は、制度的には現状で大検のほかに中学校卒業程度認定試験というものがございます。中学校卒業程度認定試験と大検は、法令上は全く同じ位置づけでございますが、今まで名前が違っていたという状況でございます。そういう意味で、名前を今回、高等学校卒業程度認定試験ということで同様に合わせたということでございますが、その真意は、もっと社会的に通用するようにということで、そういう名称の変更も考えたということでございます。
 また、田村先生からあるかもしれませんが、実際にどこが変わったかということにつきましては、一つには、社会的通用性を増すための一つの方策として、全日制高等学校にも受験対象を広げることによって、より多くの者が受ける、そしてそれを活用されるということで、社会的認知度、通用性が高まるのではないかというのが1点ございます。
 もう一つは、一部ではございますけれども、試験の内容を見直したことによって、より社会的にもちゃんと高等学校卒業程度の学力を確認できるというふうに認知していただけるのではないかというようなことがございます。そういった点が改善点というふうに考えております。
 もし何か補足することがありましたら。

○ 鳥居分科会長
 田村先生、お願いいたします。

○ 田村委員(大学入学資格検定部会長)
 今の御説明で意を尽くしていると思うのですけれども、ちょっと一幕を申し上げますと、委員の中に、御自身の経験から、全く同じに扱ったほうがいいというお考えを持っている方がおられました。それはいろいろな御自身の体験で、そのケースで考えると同じでいいじゃないかという、こういう御判断なのです。私どもの委員の中にはいろいろなお考えの方がいっぱいいらっしゃったのですけれども、そういう意見もあって、率直に言って、今までそういうようなことを議論するというような風潮まで社会が変わっていなかったのですけれども、今回は、そろそろそういうことが意見として強力に出てくるような社会的な変化が起きてきているのだなというのは実態として感じました。
 ただし、やはり制度としてあるこの仕組みを、ここを切り口として新しいものをつくって、高校卒業と同じ扱いにしてしまうというと、日本の教育の仕組みの全体に影響が出ますので、大検ということだけで全体に影響を及ぼすようなことまで結論を出すのはどうなのだろうかということで、結果としてはこの程度におさめたということなのです。実際もう世の中では、普通の高校卒よりも大検を取った人のほうがしっかり勉強していて、しっかり力を持っているというのは認識として普及していますし、かなりやらないと受からないということも実態としてあるようでございますので、この程度ということでまずこの段階ではやってみたらどうだろうかというのが結論だったのです。

○ 鳥居分科会長
 どうぞ、中村委員。

○ 中村委員
 今の田村先生の御説明で位置づけはよくわかりました。もう一つ気になりますのは、現状にも、基本的な考え方にも、書いてあることですが、「就職等においても活用されるよう社会的通用性を高めること」というところがあります。これが大事だと思うのです。ところが、先ほどの御説明で、これがうまくいっていないところの例として自治体が挙がりました。これはとても気になります。ここでは、常に処遇において同等に取り扱われるよう各方面の理解を求めることと書いてありますが、自治体のような公的なところにはもっと強力に言えるような言い方はないだろうか、決め方はないだろうかと思うのです。「同等に扱うようにする」というふうなところまで言ってもいいのではないかと思うのですが、いかがでしょう。

○ 鳥居分科会長
 大変重要な御意見で。
 どうぞ、この扱いについて。

○ 芝田生涯学習推進課長
 実は、資料の中に参考資料ということで、「アクションプランの実施について」という1枚紙が入っております。まさしく中村先生がおっしゃっていただいたことを我々もしっかりやらなくてはいけないと思っております。
 これは既に一部実施中でございますが、今回、より社会的通用性を増すために一連のアクションをやっていこうということで策定いたしました。これは平成10年の調査でございますけれども、3,200余の自治体にアンケート調査をしましたら、大半は年齢要件だけで、高卒というのを採用等について要件にしていないというところが大半なのですが、100の自治体が、大検の合格者を高卒とは認めていませんと答えています。それから、約700の自治体が、まだ決めていませんと、こういうふうに答えています。その余は年齢要件等になっております。
 何をやるのかといいますと、まず「実施内容」の「総務省との連携」というところで、これは総務省のほうにお話をいたしまして、総務省からも自治体に指導していただくとともに、現在、全自治体を対象にもう一度アンケート調査をしています。当方で、今、中教審でのこういう動きがございます、その中でそちらの自治体はどうされますかというアンケート調査をしております。また、その結果を踏まえて、改めて個別にも当たっていきたいと思っております。
 それから、厚生労働省との連携につきましては、これは実際にハローワークで求人票を書かれる際に、もし高卒要件がある場合には、ちゃんとこの新試験の合格者もいいですよということを書いてほしいということを申し入れてありまして、地方の安定局のほうにこれも厚生労働省から御指導いただいております。
 それから、石川先生もいらっしゃいますけれども、経済団体のほうにもお願いをしてございます。
 それから、教育委員会にも、今回の提言を踏まえて、周知徹底を図っていただくようにお願いをしてまいりたいと思っております。

○ 中村委員
 それはよくわかりました。とても熱心に大事なことをして下さっていることはよくわかるのですが、文言の中にももう少し強く書いてもいいのではないかと思いましたので、申し上げたのです。

○ 鳥居分科会長
 中間報告の文言の中で。
 どうぞ。

○ 山本委員
 今の件ですが、大検の回数を2回に増やすというようなときに、石川委員も御参加くださったのですけれども、議論しまして、調査もやったのです。そのときの感触からしますと、前は大学入学試験のための検定なのですね。そうすると、自治体というのは、役所ですから、ちゃんと文言どおり見ていまして、これは大学入学試験のためのものだということで、高等学校卒業程度というふうにはあまり受け取らないようなところがあって、まだ決めていないという先ほどの話が結構あったと思うのです。
 もう一つは、高等学校を終わらないで、大検だけですぐ就職するという人はあまりいないのです。20代、30代で大検を受けて、どこかに就職というのは結構見るのですけれども、みんな大学に行くためというようなことでやっていますから、事例が少ないということもあって、決めていないというようなことがかなりあった。今度、名称が変わると事態は変わってくるので、先ほどのようなアクションプランをやっていけば、かなり違いが出てくるかなというふうには思います。それが1点です。
 それから、先ほどの國分委員のお話なのですけれども、まさに苦肉の策でもないのですが、いろいろ苦心したというところで、それは田村部会長のお話のとおりなのですけれども、最初に芝田課長が説明してくださいましたように、もし高等学校卒業程度のディプロマがあれば問題ないのですが、それがないものですから。大学のほうは学士がありまして、木村副会長のところの大学評価・学位授与機構で単位を累積して学士の称号を出す。それと同じようなことができれば問題ないのですけれども、それが日本はないものですから、それで先ほどのような、卒業とは言えないというところで、こういう形のものではいかがかという案だと私は受け取っております。

○ 鳥居分科会長
 今、一連の御意見をいただきましたが、ちょっと整理してみますと、問題はこういうことなのではないかと思います。
 最初にいただいた諮問では、これは去年の10月の諮問ですが、ゆっくり読んでみますと、高等学校卒業程度の学力を認定する試験としての性格をより明確にすることや、各種職業資格における取り扱いなどにおいて広く活用されるようにするための方策について検討するようにという諮問をいただいているわけです。大事なポイントは二つありまして、「高等学校卒業程度の学力を認定する」となっているわけですね。もう一つは、今御意見がありました、「各種職業資格における取り扱い」なのですね。
 ところで、今度の中間報告はどうなっているかといいますと、4ページの下から2行目に名称提案がありまして、「高等学校卒業程度認定試験」という一応の提案になっているわけです。高等学校卒業程度の学力を認定するという、その「学力」という字は面倒くさいから省いてあるというのか、長過ぎるから省いてあるというのか、取ってあるわけですね。それをどうするかという問題が一つあります。
 それは、実は中村委員の御意見にありました、諮問の後半部分をどう働きかけるのか。7ページの一番上に書いてあるわけです。7ページは、「自治体や企業等へ積極的に働きかけることで」云々と書いてあって、3行目に「このため、自治体や企業等の職員の採用、処遇に関する規則等において、新試験の合格を」、ここからが問題なのですけれども、「高等学校卒業と同等」と、4ページと言葉が違っているのですよね。ここのところを整合性を持たせて、かつ、自信を持ってこうという最終的な名前を7ページと4ページに同時に書けないかという問題があって。
 それに加えて、今の7ページの4行目のところから終わりにかけてですけれども、「積極的な呼びかけを行う」というのは、中村委員の説によれば、もう少し積極的に呼びかけるというか、強く働きかけるというか、例えば……

○ 中村委員
 「位置づけてもらうよう」というところは、例えば「位置づけるよう」とか。例えば非常に簡単なことですけれども。

○ 鳥居分科会長
 そうですね。そういうことをおっしゃっているのだと思いますので。
 分科会長の私と田村先生、部会長とで後引き取って、お引き受けしてもいいのですが、一つだけ参考のために皆さんの御意見を伺っておきたいのは、4ページの下から2行目の名称、あるいは7ページの上から4行目の名称。この名称に諮問をもらったときのニュアンスをどう入れるかについて、もうこれでいいと。私は4ページの下から2行目でいいように思っているのですが、さらにプラスアルファのニュアンス、学力というニュアンスをつけるかですよね。
 ちょっとそのことを考えていただくために厄介な話をしますけれども、これが実行されたとしますね。私たちは、今、公立の高等学校を中心に事態を想像しているのですね。ところが、首都圏を中心に私立の通信制の高等学校が、急増しているのですよ。またこれが、こんなに行くのかと思うぐらい入学者が増えているのです。そこでは、卒業と同等程度なんてものではなくて、ちゃんと卒業証書が出てしまうわけですね。しかも、卒業証書を出すのには、通信制ですから、スクーリングが必要になる。スクーリングはどうしているのかと思っていろいろ調べてみると、いろいろな、「えっ?」と思うような学校が通信教育で高等学校をやっていて、そのスクーリングは外注しているのです。それをサポート校という名前で呼んでいるらしいのですけれども、そのサポート校というのはどこがやっているかというと、かつての予備校なのです。その予備校が受け皿になってサポート校契約を結んで、それを一体とすると卒業できてしまうのですよ。
 そうすると、この「同等程度」というのを相当重いものにしておいてあげないと、むしろそっちのほうが楽に卒業できてしまう。しかも、高等学校卒業の、芝田課長の言葉でいえばディプロマが出てしまうということになっている。
 これは関西ではどうなっているかよくわからないのですが、それはちょっと梶田先生。

○ 梶田委員
 実は私もそのことで発言したいと思っていたのですけれども、私は今、大阪府の私学審議会の会長をやっていまして、大阪府の私学課の方々からよくいろいろと実情を聞いていますが、今、大阪でもサポート校が問題になっております。予備校を使うのだったらまだいいのですよが、小さな塾みたいなところもありまして、今、少し私学課が実態調査をして、本当にスクーリングの実が上がっているかどうかをチェックしなければいけないということを伺っています。そういうサテライトを幾つも持っているわけですね。
 実を言うと、私、この問題を議論するのに、ここに教育課程課の高校担当の方もぜひ出席してほしいと思っているのです。「中間まとめ」までは、高校を中退した人に高卒の資格を認めるという、いわば制度的バイパスの論議をしてきたわけです。高校という制度に乗りにくい人にどうやって高校卒業程度の資格の認定をするかという話です。
 しかし、将来的には、高校卒業程度の学力として具体的に何を考えておくか、ということを合わせて考えなくてはならない。今、高校といっても極めてバラエティーがありまして、今の通信制もそうですけれども、定時制の中にも、とても高校の学力とは言えないような実態があるわけですね。前にちょっと御紹介しましたけれども、いわゆる夜間中学を出てこられたおじちゃん、おばちゃんが半分ぐらいという定時制高校もありまして、もちろんそのこと自体は悪くはないのですが、でも、そこで教えるには高校の教科書が使えないわけです。高校の教科書をつかったら誰もわからない。そういう定時制高校も現にあるわけです。これは大阪の実情ですけれども。
 こういう学校では、時間数だけは一応授業をやります。ただし、出席はとりません。特に夜の1時間目はほとんどガラガラというのが実情なわけですよね。そういう場合も含めて、今、実際には、高卒の資格を取るというのが当たり前になっています。ですから、正規の、制度の中の高校教育にも実は穴がいっぱいあいているわけですね。資格という形式の問題と学力という実質の問題。そういうことも同時に絡めて考えなければいけないのではないかと思っております。
 このこととの関連で、1983年に「A Nation at Risk」が出た後、アメリカで80年代あるいは90年代初頭に非常にはやりましたミニマム・コンピテンシー・テスティングのようなことも考えてみるべきではないか。高等学校の単位をそろえたとしても学力が最低基準に達していないなら高卒のディプロマを出してはいけないという動きが広がったわけです。これは全部の州でやったのではないのですけれども、多くの州でやったのは、単位をそろえるということと同時に、州当局あるいは州が委託したところが、高校程度の学力認定試験をやって、これに合格しないと、単位をそろえても高卒のディプロマにはならない。
 私も何回か調査に行ったことがあるのですけれども、単位をそろえていたら、校長さんの名前で高校の修了証書は出る、でもディプロマではないと。後期中等教育の、ある水準を維持するためには、将来的にはこのことも考えなければいけないのではないか。でなければ、高等学校という制度そのものが空洞化してくるのですね。世の中の人たちは、公立でも私立でも一部の受験有名校のことばかりを頭に置きますから、「いやあ、すごいことやっているね」ということになりますけれども、実は97~98%まで高校に行く中では、私たちが思っているのとはかなり違う後期中等教育の中身があるということも認識しておかなくてはならない。
 これは今回非常に制度的に前進したのは、全日制の高校生も受け入れるということになりました。これを一歩進めて、全日制の高校生も受け入れるのではなくて、受けるのが望ましいということにならないか。定時制の高校生も通信制の高校生もそうですけれども。こうした試験によって高卒程度の資格だけではなく学力が認定されることが、単なるバイパスではなく、積極的な意味でやはりあってもいいのではないか、という気がしております。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 要するに、5,500ある高等学校のうち1,300ぐらいが私立で、5,500マイナス1,300だから、大体4,000近くの公立の高等学校の在校生の中のまたどのぐらいの部分をこれは対象に考えているのかというと、そんなに多くない。私立の1,300校の中の、今もちょっと御紹介した通信制なんていうのはほんのわずかですから、あまり針小棒大に考えてはいけないのだけれども、あることはあるのですよね、問題として。

○ 梶田委員
 ただ、公立の高校の中でもかなり大変なところはいっぱいあるのですよ。私学もそうです。それで私は、教育課程課の高校担当の方もここに出席していただいて、一緒にこの中間まとめから最終まとめにする議論に参加していただいたほうがいいのではないかと思うのです。公立、私立ということではなくて、場合によったら全日制、定時制、通信制ということでもなくて、はっきり言うと、実際にはかなりレベルを下げて、下げて、下げてやらないとやれない高等学校というのも少なくないということを考えなくてはいけないと思うのです。

○ 鳥居分科会長
 それでは、田村先生。

○ 田村委員(大学入学資格検定部会長)
 今のお話で、いろいろな議論の中で出てきたことを思い出すわけですけれども、つまりサポート校というのが問題なのは、ほとんどが株式会社とか個人でやっているのです。膨大な月謝を取って、非常に社会的に問題を起こし出しているという実態があります。つまり、高校を卒業できないという、ある意味での弱い点を持っているのを利用してお金をもうけるという問題点があるわけです。そういうものを考えると、とにかくみんな高校卒が取れるようにできるだけしたほうがいいのだという、こういう考え方が当然出てくるわけですね。
 ところが、今、梶田先生がおっしゃったような問題がありますし、既に大検を取った人にとっては、何でも取れるという仕組みにすることに対する非常に強い反発があるわけですね。それは関係者の方がいらっしゃるから、非常に意見として出てくるわけです。ですから、それならどんどん取らせたほうがいいんじゃないかとそう簡単にもいかない。いろいろなお考えの方の取りまとめでまとめざるを得ないという難しさがあって、こういう形になったわけです。
 ただ、将来必ず問題になるなということは、今、中村先生、梶田先生、それから会長もおっしゃっていましたけれども、そういう問題があることは確かなのです。ただ、ここでは解決の方向としては出せなかったということなのです。

○ 鳥居分科会長
 渡久山委員、どうぞ。

○ 渡久山委員
 名前については、私も部会に属しておりまして、いろいろ議論したのですが、やはり「学力」を入れるか入れないかというのはいろいろな面であるのですね。例えば、入れたときに、先ほど田村部会長からありましたように、現行の高等学校での場合は74単位ですね。そうすると、これで30数単位ですから、「学力」といったら、厳密に言うと、現場感覚から見れば、必ずしもそれではいかないだろうという感じもするのですね。
 もう一つは、これが出てきた背景は、やはり生涯学習社会の中に高等学校卒業程度の資格試験の基礎要求が非常にあるものだから、そういうことを考えてくると、やはり高校卒業程度の学力なり、あるいは何とかの資格なり、次の資格試験を受けるための基礎要件という形を付与していくということは、もっと積極的であってもいいのではないかという感じがするのです。ですから、名前はこういう感じで直してみたらどうか。先ほど課長からありましたように、中学校卒業程度試験というのもありますから、名前はそれでなじむと思うのです。
 それはそういう形でやるのですけれども、もう一つ、ただ、今、PRの機会が非常に少ないということは前から言われているのですね。これは1回だったのが2回になって、それはよかったと思うのですけれども。ただ、これは技術的な問題ですけれども、願書の期間が2週間とか何週間とか、そういうこともありますから、その辺などは改善されるのは改善していくべきだということです。
 ただ、今度は全日制の生徒も受けられますから、ひょっとすると全日制の高等学校でも、こういう試験がありますというポスターだって貼れるわけですよね。貼ったときに、先ほどから出ているように、これを受けるために、逆に積極的中退者が出るのではないかというようなものも問題点として出てくるのですね。それは、可能性はあると思うのです。全く否定されるものではない。
 ただ、今出ているのは、梶田先生のほうからございましたように、後期中等教育の中で大きく分かれているのは、高校卒業の資格だけ取りたいという者と、今度はやはり実力がなければ、その後、資格試験なり、あるいは大学試験なりを受けて合格することができないという、ある意味ではそういうふうに二つに分かれているような気がするのです。特に大学でもいろいろチョイスして、いい大学に入ろうと思ったら、それこそ勉強しないといけないという、だんだん後期中等教育の対象者が二つに分かれてきているような気がするのです。
 そうすると、今の通信制などの場合は本当にサポート校で、極端な言い方をすれば、サポート校でつくってくれたレポートを出せば単位が取れる。そうすると、自分は、ただ自分の名前がパスしただけだという、極端な言い方でですよ、そういうことも起こり得るのですよね。だから、それを考えると、この試験の場合は、どうしてもペーパーテストを含めて認定試験をしますから、ここの試験のほうが、ある面では難しいし、逆にこれに受かれば実力があるというような背景も出てくると思うのです。そういう意味では、積極的にこの試験が持っている意味というのが出てくると思います。
 ただ、先ほどから出ていますように、後期中等教育の在り方そのものは、やはりもっと真剣に考えていかなければいけないという課題はずっと残ってくる。逆に、これがあって高等学校への刺激になるかもしれないのです。ただ、東京みたいにチャレンジ校とか、エンカレッジ・スクールとか、あるいは受験校とか、非常に大々的にいろいろな高等学校をつくって、必要だったら金も人も出すという感じでやっているところなら、まだ高等学校あるいは中等教育が充実してくる可能性があるわけです。例えば、ある高等学校では、中学でつまずいている学力問題等もまたそこで学習できるような体制もとっているのですね。そういうことを考えていきますと、やはり後期中等教育の在り方というのは、真剣にいろいろな形で問わなければならなくなってくるという気がいたします。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 どうぞ、山本委員。

○ 山本委員
 4ページの下から2行目の名称の問題は、今、一連の梶田委員や渡久山委員や田村部会長のお話のとおりなのですけれども、ただ、パブリックコメントにかけていきますと、高等学校関係者からかなりこれについては、「学力」という言葉を入れるべきだという声が出てくる可能性があると思います。というのは、部会でかなり強硬に高等学校関係者がこれを言っています。高等学校卒業と違うのだということを、「学力」を入れることではっきりしてくれという声があったのです。
 そのときは申し上げなかったのですけれども、あまりそれを詰めていきますと、先ほどの梶田委員ではないですけれども、高等学校もいろいろですね。それでは、今度、大検にかわるこの高等学校卒業程度試験を全部の高校生に受けさせてみろ、そうしたらどれだけが受かるのか。かなりこれはレベル高いのです。そうすると、困ってしまう高校がかなり出てくる。制度分科会の最初のころに出ましたように、通学していたって、かばんの中には教科書も何も入っていないで、空っぽのかばんを持って行き帰りしている高校生がどれだけいるかという話が出ていましたよね。そういうこともありますから、そういう点でいきますと、あまり「学力」というのを入れて、そこをギリギリ追い詰めないほうがいいのではないか。
 これはやはり、今、日本の国の場合には、生涯学習社会の構築というのを漸進的アプローチで徐々に徐々にやってきているわけですね。そういう生涯学習社会の学習成果の評価体系のところは、学校のいろいろな問題も含めて根本的な議論をしていない段階だと思うのです。その中でこれだけ拙速で早くそういうふうに持っていってしまうというのはいかがなものかという気もしますので、今回はこのところでとどめておいてもいいのではないかと思います。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 どうでしょうか、そのほかに。
 どうぞ、國分委員。

○ 國分委員
 関連して、名前自体ではないのですけれども、これは認定試験となっておりますので、誰かが認定するわけですね。これはいろいろな科目を取って合格しました、最終的には文部科学大臣が認定する。認定書か何か出るのですか。

○ 芝田生涯学習推進課長
 認定証明書が出ます。

○ 國分委員
 こんなことを聞きましたのは、今ちょっと制度は変わっているかもしれませんが、前に博物館というのがありましたね。あれは都道府県に対する登録なのですね。一定の要件があると登録して、登録博物館。ところが、要件に合致しないものは、個別に文部大臣が相当施設として指定するのですね。ところが、そっちのほうが値打ちが出てきたのですね。博物館の中に文部大臣指定博物館となっているわけで、一般のところは何もそんなのは書けないのですね。だから、社会的な認知度というか評価というか、認めてもらうというには、その辺を何かうまく使えるのかなという気が……。これは名称自体ではないのですけれども。ただ、あまり行き過ぎると、何だかそっちのほうが値打ちがありそうだというようなことになってもいけないのですが、その辺もちょっと工夫する必要があるかなと思います。

〔梶田委員退席〕

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 今、大体一番大事なところについては御意見をいただいたと思いますが、その他の点で何か御意見がございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。
 中村委員、どうぞ。

○ 中村委員
 ここで言うべきことではないかもしれませんが、今の「学力」という言葉にちょっとひっかかるというか、もうほとんど高等学校に全入のような時代ですよね。確かに生涯学習、みんなが学力が高まることは大事なのですけれども、私はやはり、ここでテストをする国語、地理、歴史、公民、数学、理科、英語の学力だけが人間の能力ではないと思うのです。この認定試験はこれで結構なのですけれども、今のいろいろな学校があるねというお話を伺っていると、これだけで学校というものを考えていくこと自体考え直さなければいけないのではないか。
 実は、私は今、職業高校がとても好きで、農業高校を応援しています。文科省でも、スペシャリストをめざせという職業高校を活性化する制度をつくってやっていまして、それを一所懸命応援しているのです。そういう活動の中で生徒の動きを見ていますと、ここで言っている学力とは違う能力があるということをとても強く感じるのです。そういうものを評価していくシステムを並行してつくっていかないと、この制度もうまくいかないのではないかと思いまして。このことは今皆様の御議論で結構なのですが、梶田先生のお話などを伺っていて、中教審全体としてはそういうところまで考えなければいけないのではないかなという感想を持ちました。

○ 鳥居分科会長
 今おっしゃったことは、実は小学校、中学校、高校、大学、みんな言えることですよね。どうしたらいいのかよくわからないのですが、まさに農業高等学校等でクラーク先生の役割を誰が果たすかということですよね。そういうようなことをもうちょっと審議する場が、そもそもどういう形か、包括諮問の形でもらってやれるといいと思いますけれどもね。今出ている初等中等教育に関する包括諮問は、解釈の仕方によっては、今おっしゃった問題を含んでいるとは思うのですが、高等学校のこの問題については、確かにどこからもそういう球を投げられていないものですから扱っていませんが、とても大事な問題ですね。
 石川委員、どうぞ。

○ 石川委員(オブザーバー)
 名称というのはひとり歩きしていきますので、非常に怖いと思うのですが、私が分科会のほうでいろいろと話をしている中で、既存の、現在ある高等学校を存在否定するような表現はやめてくれと。ということは、先ほど会長もおっしゃったように、先生との交わりとか、友達との交わりとか、そういうキャンパスライフというものがあるわけですね。社会性とか、人間性がそこで培われてくる。そういうものを全く無視して、卒業程度の認定試験とやってしまうことでいいのか。というのは、一般の世間様にはわかりにくいのではないか。これだと、高等学校へ行かなくたっていいじゃない、試験を受ければおしまいじゃないというようなことになるのですね。だから、あくまでもキャンパスライフは大事ですよ、高等学校は行ってくださいと。けれども、それではどうしてもやはり高校中退とか、家庭の事情、その他いろいろあってどうしても卒業できなかった、そういう人のセーフティネットなのだというのが一つの大前提であるわけですね。ですから、そこら辺の表現について、的確な表現でしてほしいというのが私のお願いなのです。
 そのための議論というので、実際はそれで何日間も費やしたわけでありますけれども、卒業程度の認定試験、卒業程度の学力認定試験ということで、程度というとプラスとマイナスがありまして、これより低い、あるいは高いというのは、高等学校によっては、いや、こっちの試験を受けたほうがはるかに学力は上だよということもあるでしょうし、だから、中村先生がおっしゃったように、やはり学校というのは、そこで人間性とかそういうものを磨く場でもあるわけですね。そういうものを無視して認定してしまうというのはどうかなというような気が一つします。
 2番目に、企業の側から言いますと、高校中退で就職した人たちは、ほとんど最低賃金に近い水準の給与で働いているわけです。それが現実でありまして、今度は、このような認定試験といいますか、学力を認定することができれば、高卒と同水準の給与水準に少しは近寄ってくるのではないだろうか、あるいは現行より労働条件が少しはよくなるのではないかと思います。ただし、高卒程度の学力の水準があるから企業側で採用するかどうかというのは別問題です。ただ、そういうようなことがあるのではないか。そうすると、企業の側も採用する際に、もっとわかりやすいような表現で出しておいてもらわないと、これは学力試験だということはわかるわけです、企業のほうは。恐らく、どこどこ高等学校卒業とは書いていませんから。そうすると、相当これはオーソライズされたものにしておきたいと私は思います。
 二つほどのことを考えております。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 今の御意見は、主としてこの中間報告(案)の2ページの書き方についての御意見だと思いますので、今の御意見は承っておいて、ここは後ほどまた修文の段階で田村先生と御相談したいと思います。例えば2ページの上から第2パラグラフ、「近年」というパラグラフの下から2行目、「大検の受験者の6割程度を高校中退者が占めるようになるなど、創設当時と比べ」云々というようなところですね。今、石川委員がおっしゃった意味がよくわかるような文章にできそうな気もいたしますし、2ページの一番下の2行も、このままだと、大検を高等学校卒業と同等に扱ってくれないのは、今の大検制度のもとでもそもそも扱わないほうが悪いのだというように読めてしまうわけですね。そうではなくて、大検制度を高等学校卒業認定と同等の学力というふうに置きかえることによって、評価できるものが新たに発生するはずで、それを評価してくださいという書き方に変えればいいわけで、そんなところをやはり直さないといけないかもしれませんので、御意見を……。
 どうぞ。

○ 石川委員(オブザーバー)
 言いたいことは、結局は学力テストなのですね。だから、単純に言えば、「学力」と入れるべきだというのが結論なのです。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございます。
 丹羽先生、何かございましたらどうぞ。

○丹羽委員 私も4ページの「適切な名称」という中に、やはり今までの御意見を聞いておりましても、私自身も「学力認定試験」という、「学力」というのを入れるべきだとずっと思っております。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 これを入れるか入れないかについてはだいぶ御議論があった経緯を……。先ほども二派に分かれてしまっていて、なかなか難しいのですが。

○ 田村委員(大学入学資格検定部会長)
 はっきりそれぞれの御意見があるのですよね。それで、「程度」ということになったわけですね。

○ 鳥居分科会長
 どうぞ。

○ 山本委員
 本当にこれは切りがないのですけれども、議論していきますと、例えばこの6科目なり何なりで、これが学力かとか、こんなので学力をはかっていると言えるのかとか、とにかくどんどん出てくると思うのですね。それから、先ほどの中村委員のようなお話もあるわけで、これを議論していきますと、突き詰めていけば、今、「新しい学力」と言っていますけれども、それを超えて、我が国の目指す社会というので、教育・学習面から言えば、生涯学習社会を目指すということは大体コンセンサスが得られていると思うのです。その中での評価体系をどうするのかという問題に最後はいくことになり、そこまでいかないと決着つかないと思うのです。そのあたりのところを議論するという機運が高まってきているのであれば、そのあたりを議論していただく。今、生涯学習分科会のほうではそういう声が出てきています。
 経緯だけ申し上げますと、平成元年に臨教審が終わって中教審が再開されたときにその問題が出ていまして、新しい評価体系を、生涯学習社会を構築していく中で考えようということだったのでですが、まだやはり時期が早いだろうというので、調査研究するというので来まして、平成7~8年から10年ぐらいのところでもまた再び出たのですけれども、それも答申だけ出てそのまま終わっているといういきさつがございます。ですから、例えば仕組みをつくるとか、そういうような案はいろいろつくってあります。ですから、この時期でやはり本格的にそれを議論して、新しい仕組みなり何なりを創設していくべきだというような機運になったのであれば、その辺を議論していただきたいと思います。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 どうぞ。

○ 國分委員
 この審議はどうしても、大検自体をどうするか、あるいは大検の合格者の取り扱いをどうするかというところに議論が行きがちですし、それは最終的な目的ではあるのですけれども、やはりその前提として、先ほど会長がちょっとおっしゃいましたように、やはり高等学校教育というものが大事なのだ、できれば高等学校に入って、きちんと卒業してほしいのだ、ただ、何らかの事情で高等学校に行けなかった、あるいは途中中退せざるを得なかったという人をほっておいていいのかということで、こういうことがあるのだというところが、ちょっと総論的というか、理念的というか、先ほど石川委員がちょっとおっしゃったこととも関連するのですけれども、そこのところが欠けているように私は思うものです。これが何かいいような、それだけで行ってしまうような感じになっている。そうではないので、やはり学校教育全体の中での位置づけということをその冒頭部分に書いておかないと、妙な議論になりはしないかなと。部会でどういう議論がその辺あったかわかりませんけれども、御意見を伺っていて、そういう気がするわけです。

○ 鳥居分科会長
 芝田課長、今、國分委員がおっしゃったことは2ページに書いてあるという説明というか、反論が事務局からたぶん出てくると思うのだけれども、もうちょっと書き込んだほうがいいという御意見だと思うのです。

○ 芝田生涯学習推進課長
 おっしゃるとおりだと思いますので、少し……。

○ 鳥居分科会長
 田村先生、どうぞ。

○ 田村委員(大学入学資格検定部会長)
 今の國分委員の御指摘は非常に重要なポイントなのですけれども、アメリカは中退者が非常に多いのですね。ドロップアウトが日本よりはるかに多い。ですから、ハイスクールカルチャーを大事にするという、こういうようなことをあえて主張して、そのかわり救う制度を大々的につくっているという背景があります。日本の場合はもともとそんなに多くないのですね。アメリカと比較すると非常に少ないのです。
 ですから、我々が御指摘いただいて、そうだと思ったのは、大体みんな高校行っているから、そんなに中退しているという人は多くない、そういった社会の中で、あえて指摘することもないかなというのは確かにちょっとありました。でも、確かに変わってきていますから、高校は大事なので、やはり今のような状態でずっとやってほしいということはどこかで指摘しておいたほうがいいのかもしれません。
 アメリカの場合は明らかにすごい量の中退者が出ますよね。たしか4割ぐらい出るのではないでしょうか。日本は2~3%ですから、比較にならないのですね。ですから、そういう意味で言うと、書き方に御指摘のような落ちがあったかもしれません。もともとそんなに中退していないという前提で、そういう社会になっていると思っていたものですから。だけれども、それは変わってきているのかもしれませんね、確かに。

○ 鳥居分科会長
 どうぞ、渡久山委員。

○ 渡久山委員
 今のお話のように、現場感覚で言うと、例えば、全日制を中心にして考えると、教員が、高等学校をやめて大検で行きなさいというような指導というのはほとんど現場ではないと思うのですよ。逆に、今のように、クラブ活動を含めて高等学校のいろいろな生活は非常に充実しているし、あるいはまたそのほうに子どもたちの期待というか、生きがいというのも多いと思います。
 ただしかし、それにしてもまだ10万の中退者がいるということは、やはり今の高等学校教育に原因があるわけですよね、やめたくなる原因が。この一番大きな一つは、私は学力問題だと見ているのです。小学校からずっと引きずってくる学力問題。それをどう解決していくかということは、単なる高等学校だけの問題ではなくて、やはり小学校、中学校と、段階的な形で学力保障をどうしていくかという問題は大きいのだろうと思うのです。
 しかし、日本の場合、今、田村先生からございましたように、多くの場合、やはりハイスクール・ライフをエンジョイするということがマジョリティーではないですかね。ですから、そういう面では、それほどこれが中退を呼ぶということにはならないと思うのです。
 ただ、先ほども申し上げましたように、そういうこともありますので、やはり今の高等学校は真剣に子どもたちのニーズにこたえて、変えるべきものは変えていかなくてはいけないだろう、努力することが必要だろうと思います。
 それから、先ほど「学力」を入れるという話があったのですけれども、これは現場からも「入れろ」という意見もありますが、現場からも反対もあるのです。高等学校の学力ということになれば、70何単位というようなものを現場の人間は見ますから、そうすると、「学力」を入れると、ああ、そんなものかとなるのですよね。だから、それは違うような気もするのです。
 それから、大学入学資格検定試験だったものですから、この子どもが何かというと、大学を受けるための資格を持っている、そのための認定をされているということですから、高等学校卒業とは関係なかったわけですよね、バイパスでも。その場合のバイパスは何かというと、大学に入るためのバイパスということで、目的が非常に狭くて、はっきりしていた。
 しかし、それが実態としては、先ほどからも説明があったように、各種資格試験の高等学校レベルの資格試験の基礎にもなっている、そういう使い方もされている。あるいはまた、自治体なり企業なりで高校卒業程度という感じでまたこれが生きている。そうであれば、大学入試検定というような形で目的化するというか、あるいは狭めるよりは、やはり広くやったほうが意味が出てくるのではないかという気がするのです。

○ 鳥居分科会長
 ありがとうございました。
 どうぞ、木村先生。

○ 木村副分科会長
 私、全体的な議論に参加していないのですが、ここのところの日本の教育改革の流れをずっと見ていると、やはりとめどなくアメリカ型へ移行していると思うのです。いろいろなことがすべて、何でもありという形ですね。そういうことから、先ほど梶田先生から御紹介がありましたような通信制高校というか、サポート校の問題も出ていることを私も知っていますけれども、ただ、ここのところの高等学校の中退率を見ていると、どんどん減ってきているのですよね。一時は3%を超えていたのが、去年あたりは2.5か2.4か、そういうふうに非常に減ってきているということです。
 私は、ちょっと石川さん御心配になりましたけれども、世の中が、高等学校の正規教育を受けないで、こういう制度できた人も全く同等に扱うということはあり得ないのではないかと思うのです。アメリカだって、大学が3,760あるのですけれども、そのうちの500ぐらいは、はっきり言ってお金で学位が買える、いわゆるディグリー・ミルとか、ディプロマ・ミルというふうなことなのですけれども、少なくともアメリカ人は、それがそうだということを知っているわけですよね。ですから、そういうところから学位を取った人を世の中が重宝するということはないわけですから、私は、それほど心配することはないのではないか。ただ、今、移行過程ですから、さっき國分委員がおっしゃったようなことはこのレポートにつけておく必要はあるのかなと思いますけれども、最終的にはそれほど心配することはないのではないかと個人的には考えております。

○ 鳥居分科会長
 あとは皆様の御意見をどう修文という形でするかですが、例えば知・徳・体のバランスのとれた教育というのがいかに大事か、学校生活がいかに大事かというようなことは最初にアピールしなければいけないのですが、この中間報告では8ページのその他意見のところに出てきてしまっているのですよね。本当は、一番大事なのはそれなのだけれども、諸般の事情これこれあり、この制度も必要だというふうに書かなければいけないのかもしれませんので、このあたりの修文を田村先生と私にお任せいただいて、総会に上げて、その後、パブリックコメントに付するということにしたいと思います。どうもありがとうございました。
 はい、どうぞ。

○ 木村副分科会長
 先ほど中村委員が御発言になったことで、私も非常に気にしていることは、7ページの、先ほど「高等学校卒業と同等」と位置づけてもらうよう、自治体とか企業等の職員の採用、処遇に積極的に呼びかけるというところがありましたね。これは、実は工学部でも大変な問題が起きまして、例の平成3年の大綱化以来、工学部のカリキュラムもドラスチックに変わってしまったのです。そうすると、例えば、今まで4年制の大学を出れば1級電気主任技士かな、ああいうものを自動的に受けられるのが、中身が変わったことによって、それを官庁のほうが認めないと言い出したのですよね。それで工学部長会がえらく慌てて、手分けして各官庁を半年にわたってしつこいぐらいに回って、やっと認めてくれたところもありますし、だめだということで結局だめになったところもあるのですが、これは相当慎重に粘り強くやらないとなかなかうまくいかないと思いますね。これは非常に大事だと思います。だから、「位置づけてもらう」のではなくて、「位置づける」ということ。

○ 鳥居分科会長
 全国知事会とか、市町村会からパブリックコメントが出てきて、おれたちは反対だなんて出てきたら大変なことで、逆に、先に説得して、ぜひ御協力をというのをやらないとだめですね。
 ありがとうございました。それでは、先ほどまとめましたような形で進めさせていただくことにいたします。
 最後に、今後の日程を事務局からお願いいたします。

○ 山田生涯学習企画官
 今後の日程につきましては、先ほど出ておりますとおり、当分科会におきます大検関係の審議でございますけれども、この後、総会で中間報告(案)として御審議をいただきまして、取りまとめをしていただくこととしております。その上で、パブリックコメントを実施いたしまして、国民の皆様、関係団体等の御意見を幅広くちょうだいし、そこでちょうだいした御意見を踏まえまして、大学入学資格検定部会におきまして答申案の審議を行っていただき、その上で分科会を開催させていただくという段取りで考えております。その辺の日程につきましては、また調整いたしました上で、追って連絡させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

○ 鳥居分科会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、閉会といたします。ありがとうございました。

午前11時58分 閉会

お問合せ先

生涯学習政策局政策課