地方教育行政部会(第15回) 議事録

1.日時

平成16年11月22日(月曜日) 14時~16時

2.場所

グランドアーク半蔵門 「富士(東)」(4階)

3.議題

  1. 地方分権時代における教育委員会の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 鳥居部会長(会長)、浅見委員、田村委員、渡久山委員、山本委員、横山委員
臨時委員
 吾妻委員、池端委員、稲田委員、大澤委員、門川委員、佐藤委員、千代委員、津田委員、土屋委員、藤田委員、森脇委員、八代委員

文部科学省

 結城文部科学審議官、田中生涯学習政策局長、銭谷初等中等教育局長、板東大臣官房審議官、月岡生涯学習総括官、樋口初等中等教育局担当審議官、久保政策課長、山田生涯学習企画官、前川初等中等教育企画課長、角田初等中等教育企画課課長補佐、その他関係官

5.議事録

○ 鳥居部会長
 それでは、定刻でございますので、まだ、御到着でない委員もおられますが、ただいまから中央教育審議会教育制度分科会地方教育行政部会、第15回目になりますが、開催をさせていただきます。皆様、御多忙のところを御参集賜りまして、誠にありがとうございます。
 早速、今日の議題でございますが、今までに3回にわたりまして主な意見のまとめ(案)という形で御審議をいただいてまいりました。今日は、これまでにいただきました御意見をもとにいたしまして、地方教育行政部会における部会まとめ(案)というものを用意いたしました。これを御審議いただきたいと思います。
 今後の地方教育行政部会の進め方、予定といたしましては、年内をめどに、この部会としての意見を取りまとめたいと考えております。それで、この部会の意見を取りまとめました上で、親部会に当たります教育制度分科会に報告をいたしまして、その段階で中間報告(案)に発展させたいというふうに考えております。したがって、今日御審議いただく資料が「中間報告(案)」ではなくて「部会まとめ(案)」となっておりますのは、そういう意味合いが一つございます。
 それからもう一つの事情がございまして、実は文部科学大臣から最初にいただいた「地方分権時代における教育委員会の在り方について」という諮問をいただいているわけですが、この諮問事項のうち、学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確立ということを審議するように依頼を受けているわけですけれども、その一部につきまして、この地方教育行政部会とは別に初等中等教育分科会の方で御審議をいただいているものがございます。その初等中等教育分科会の方の審議が、これも進んでおりまして、終わってまいりますと、その部分につきまして、今日御審議いただくこの部会の教育委員会に関する御審議の部分に、初等中等教育分科会の方の意見を合わせたものを一体として中間報告案にするつもりでおりますので、今日の資料は「部会まとめ(案)」というふうな名称で呼んでおります。御了承いただきたいと思います。
 それではまず、「部会まとめ(案)」の原案を初等中等教育企画課の角田課長補佐から御説明をお願いいたします。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 それでは、資料1に沿いまして御説明申し上げます。
 まず、2枚開いていただきまして1ページ目のところでございます。この「部会まとめ(案)」につきましては、これまで御審議をいただいておりました主な意見のまとめの柱立て、内容に基づきまして、これまでの主な意見についての御議論でございますとか、あるいはこれまでの部会の御議論も踏まえまして肉づけをさせていただいたものでございます。
 1ページ、総論、「1 地方教育行政の在り方」についてということでございますが、まず、「(1)地方教育行政を取り巻く社会状況の変化」といたしまして、教育に対する国民のニーズの多様化、政府全体で推進させている地方分権、規制改革、さらには市町村合併が急速に進展していることを挙げさせていただいております。
 次に「(2)新しい地方教育行政の在り方」といたしまして、「1全国的な教育水準の確保と市町村や学校の自由度の拡大」、「2」といたしまして「説明責任の徹底」、次のページでございますが、「3」として「地域住民や保護者の参画の拡大」、この三つの柱で説明をしております。この内容につきましては、これまでの主な意見のまとめと、ほぼ同内容にさせていただいております。

〔樋口初等中等教育局担当審議官出席〕

 次に3ページ目でございます。各論、「2 教育委員会の在り方」について、これ以降、記述をさせていただいております。
 まず、「〔1〕教育委員会制度の現状と課題」でございます。「(1)」のところにつきましては、教育委員会の制度の沿革につきまして、これまで部会で御説明させていただいたことも含めまして記述をさせていただいております。
 次に、4ページでございますが、「(2)教育委員会制度の今日における意義・役割」について述べております。
 まず、「1教育に求められる要件」といたしまして三つ柱を立てて説明しております。「ア」といたしまして「政治的中立性の確保」、「イ」として「継続性、安定性の確保」、「ウ」といたしまして「地域住民の意向の反映」ということでございます。この内容につきましても、「主な意見のまとめ」に沿いまして、ほぼ同じ記述をさせていただいております。
 これを受けまして「2教育行政に求められるもの」ということで、「ア」として「首長からの独立性」、「イ」として「合議制」、「ウ」として「一般住民による意思決定(レイマンコントロール)」について説明をいたしております。これも「主な意見のまとめ」とほぼ同じ記述でございます。
 6ページ目でございますが、「3教育委員会制度の必要性」についてでございます。ここにございますように、教育委員会制度につきまして、「教育機関の管理運営における首長からの独立性、合議制、レイマンコントロールの実現の要請に応えるものとして今日においても意義のあるものであり、今後も地方自治体の執行機関として教育委員会は必要であると考える」と記述させていただいております。
 「○」の二つ目でございますが、いわゆる任意設置の議論でございます。「現在、教育委員会は、全ての都道府県及び市町村に設置されている。この点については、教育委員会が引き続き全ての自治体で置くことが必要であるとの意見が多くある一方で、地方自治体の組織編制における自由度を拡大する観点から、教育委員会を置かないことを認めても良いのではないかとの意見もあった」。こういった二つの意見を並列して書かせていただいております。結論といたしまして、引き続き検討していくことが必要ということで、一定の方向づけは、この段階では行っておりません。
 次に、「(3)教育委員会に対して指摘されている問題点とその要因」でございますが、「1」、「2」ということで「指摘されている問題点」と「問題点の要因として考えられるもの」を記述させていただいております。これにつきましては「主な意見のまとめ」と、ほぼ同じ記述ぶりにさせていただいております。
 次に8ページ目でございますが、「〔2〕教育委員会の組織及び運営の改善」についての記述でございます。
 「(1)教育委員会の組織等の弾力化」のところでございますが、「○」の三つ目で、「教育委員会制度について、教育機関の管理運営における首長からの独立性、合議制、レイマンコントロールといった基本的な事項は国が定めた上で、その他の事項についてできる限り弾力化し、自治体がそれぞれの実情に応じて教育委員会の組織や運営について決定できるようにすることを検討する必要がある」と記述させていただいております。
 次に「(2)教育委員の選任の改善」でございますが、「教育委員の選任にあたっては、従来の慣行にとらわれず、地域住民の代表として、教育行政に深い関心と熱意を有する人材の登用に努める必要がある」。
 さらに、「○」の二つ目でございますが、「委員の候補者の公募や、住民の推薦のほか、選考の過程を地域住民に公開するなどの方法を取り入れている地方自治体もあるところである。これらの実施状況を参考にしながら、選任方法を工夫していくことが望まれる」と記述させていただいております。
 次に「(3)教育委員会議の運営の改善、公開」でございます。「開催回数を増やすとともに、夜間開催など開催時間を工夫し、委員による議論の機会を最大限確保すること、また、十分な審議ができるよう案件の内容を事前に教育委員に説明するとともに、事務局の説明の資料を簡潔で分かりやすいようにするものとすることが望まれる」と記述させていただいております。
 また、次の9ページ目でございますが、「会議の公開の徹底することが望まれる」また「会議開催予定を積極的に広報するとともに、開催時間や開催場所についてできるだけ傍聴しやすいよう配慮すること」と記述させていただいております。
 次に「(4)地域住民の意向や所管機関の状況等の積極的な把握」といたしまして、「住民公聴会の開催や移動教育委員会議の開催など、意向把握のための工夫を行うこと」また「学校等教育機関の訪問等により、所管する機関等の状況を把握したり、警察など教育関係以外の機関・団体、PTA、経済団体、大学等と意見交換することも望まれる」。
 さらに「○」の二つ目といたしまして、「市町村の教育委員を対象とした研究協議会を開催したり、市町村教育委員会によって構成される団体を支援することにより、情報交換・研究協議の場の確保に努めることが望まれる」と書かせていただいております。
 次に10ページ、「〔3〕教育長、教育委員会事務局の在り方の見直し」でございます。「(1)教育委員会の使命の明確化」の「○」の二つ目でございますが、後段で、「日々の教育事務の執行は専門的な行政官である教育長及び事務局に委ねつつ、教育委員会と教育長及び事務局が適当な緊張関係を保ちながら教育事務を執行する体制を実現することが必要である」と記載しております。
 次に「(2)教育委員会と教育長の関係の明確化」のところでございますが、「○」の二つ目、「現行制度のもとでは、教育長は教育委員を兼ね、教育委員会の会議に出席し議事に参加している。こういった仕組みは、教育長について、教育委員として任命される際に議会同意が必要となり教育長の選任がより慎重になること、教育委員として任期が付されることで安定的な事務執行が可能となること、特別職の身分を有することにより適材確保が期待されることなどの利点がある」。
 「○」の三つ目、「一方、事務を執行する教育長が教育委員会の議事に参加することから、教育委員会と教育長の関係が不明確となっている。教育長の選任は教育委員の選任の過程で実質的に首長が行っているといった問題があり、教育委員会の意思決定から教育長を分離するとともに、教育長の選任に首長が関与することを明確にすべきとの指摘があったところである」。
 「○」の四つ目、これらを踏まえまして、「現行制度の利点が損なわれないよう配慮しつつ、教育長の位置づけや選任方法の在り方について、教育委員会と教育長との関係を明確化する観点から検討していくことが必要である」と記載しております。
 次に、「(3)教育委員会の自己評価」についてでございます。「○」の二つ目でございますが、「教育委員会が、教育長以下の業務の状況について評価を行うとともに、教育委員自身も、委員としての活動について評価されるようにしていくことが必要である」と記述しております。
 「(4)教育委員会事務局の体制強化」についてでございますが、特に指導主事につきまして重要である。「今後、市町村において指導主事の配置を充実することが望まれる」と記載しております。
 また、「○」の四つ目のところでございますが、「事務局職員の人事全般についても、教育委員会の独自性に配慮し、教育行政に精通した人材を育成するととも、首長部局との人事交流を行い、首長部局において財政、人事、市町村指導などを経験した人材をバランス良く配置することが望まれる」と記載しております。
 次に、「(5)市町村教育委員会の事務処理の広域化」につきまして、現在、あまり十分に活用されてはいないという認識のもとで、12ページのところでございますが、「事務処理の広域化に積極的に取り組むことが望まれる」と記載させていただいております。
 次に13ページでございます。「〔4〕首長、議会と教育委員会との関係の改善」について、「(1)首長と教育委員会の関係を見直す際の視点」といたしましての記述でございます。一番最後の「○」のところでございますが、「教育委員会は、地方自治体の中で独立・完結して教育事務を担っているのではなく、首長と役割を分担しながら、必要な事務を行っていると言える。こうした地方自治体内における教育委員会の位置づけを前提として、首長と教育委員会の関係を見直すに当たっては、教育に関する事務の中で首長から独立して執行する必要があるものは何であるかを明確にすることが必要である」と記載しております。
 次に「(2)首長と教育委員会の権限分担の弾力化」につきまして記載しております。 「1学校教育、社会教育」につきましては、引き続き教育委員会の事務として存置すべきであると整理させていただいております。
 14ページでございますが、「2文化財保護」につきましてでございます。「○」の二つ目でございますが、「文化財保護行政については、引き続き教育委員会の担当することを基本としつつ、文化財を積極的に活用した地域づくりを進めるなど一定の必要性がある場合には、文化財保護と開発行為との調整の仕組みを整えた上で、地方自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにすることを検討すべきである」と記載しております。
 また「3生涯学習、文化、スポーツ」についてでございます。「○」の三つ目のところでございますが、「生涯学習、文化、スポーツに関わる行政分野については、基本的には教育委員会の担当とすることのメリットが大きいものと考えられるが、地方自治体の実情や行政分野の性格に鑑み、地方自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにすることを検討すべきである」と記載しております。
 15ページ、「4幼児教育」についてでございますが、「○」の二つ目にございますように、「幼児教育については、公立・私立の幼稚園、保育所等を通じ、義務教育との接続も視野に入れた総合的・体系的な施策を展開する上で、市町村教育委員会が積極的な役割を果たしていくことを検討すべきである」と記載しております。
 次に「5私立学校」でございますが、「私学としての自主性を尊重しつつ、公立学校との交流連携など教育委員会の関わりについて見当することが必要である」と記載しております。
 次に「(3)首長と教育委員会との連携」についてでございますが、これにつきましては「○」の二つ目、「教育委員と首長との協議会を定期的に開催し、十分意思疎通を図ることが望まれる。また、首長が学校を訪問したり、教育委員と定期的に協議したり、小中学校の校長の研修会に参加して直接議論する機会を設けることも重要である」。
 「○」の三つ目、「このほか、教育に関する審議会の設置や、地方自治法上市町村が策定することとされている基本構想の活用なども、首長と教育委員会の連携を深める上で有効な方策である」と記述しております。
 次に、「(4)教育財政における教育委員会と首長との関係」についてでございます。1枚めくっていただきまして16ページの最初の「○」のところでございますが、「教育委員会が独自の判断で特色ある行政を行うためには、予算に関する権限が必要であるとの意見がある。しかし、歳入と歳出を一体的に扱い、自治体全体として調和のとれた財政運営を行う必要がある以上、歳出のみについて教育委員会が独立した権限を持つことは実際には困難と考えられる。
 二つ目の「○」として、「今後、教育関係予算の編成・執行にあたって、首長部局が教育委員会に対して総枠を示し、その枠内では教育委員会の判断に委ねるなど、首長部局が教育委員会の独自性を尊重するとともに、現行の意見聴取制度を活用するなど十分な協議を行い、共通理解を持って進めることが望まれる」と記載しております。
 また、「(5)教育委員会と地方議会との関係」についてでございますが、一つ目の「○」として、「教育委員会は、議会を通じ、住民に対する説明責任を積極的に果たしていくことが望まれる」
 二つ目の「○」として、「議会は、教育委員の選任について同意するにあたっては、教育委員にふさわしい人材か否かを十分吟味し慎重に行うことが望まれる」と記載しております。
 次に17ページ、「〔5〕都道府県と市町村との関係の改善」についてでございます。 「(1)国、都道府県、市町村のそれぞれの役割と関係」につきまして、「○」の三つ目でございますが、「今後、さらに国から地方へ、都道府県から市町村への権限の委譲を進め、地方自治体が権限と責任を持って地域の実情に応じた教育を実現できるようにしていくことが必要である」。
 「○」の四つ目、「また、国の方針が、都道府県、市町村、学校と進むに従って強く受けとめられ、教育が画一的となる傾向があるとの指摘がある。国は地方の、都道府県は市町村の自主性を最大限尊重するとともに、市町村も主体的に教育行政に取り組むことが必要である。また、政令指定都市については、原則として都道府県と同等の権限と責任を与える必要がある」と記載しております。
 次に、「(2)市町村への教職員人事権の委譲」でございますが、1枚めくっていただきまして、18ページの一つ目の「○」でございます。「教職員の人事権については、できるだけ市町村に委譲する方向で見直しを検討すべきである。一方、採用や懲戒処分も含めた人事関係事務を現在の市町村の事務体制で処理することができるかどうか、また、県内全域での人材確保や広域人事の意義に留意すべきである。当面の方策として、中核市や一定規模以上の市町村に教職員人事権を委譲する方向で検討する必要がある」。
 次の「○」でございますが、「また、同一市町村内における人事異動については、基本的に市町村が主体的に行えるよう工夫を講じることや、教職員の一部について市町村が独自に採用できるようにすることなどの措置を検討する必要がある」と記載しております。 次に「(3)都道府県教育委員会の在り方」についてでございます。
 「1都道府県の役割」についてでございますが、「○」の二つ目にございますように、「小中学校の設置は市町村の事務であり、その教育内容については、市町村が責任を負っているが、市町村の規模等は様々であることから、県域全体における教育水準の維持向上を図るため、都道府県が、市町村教育委員会の自主性を尊重しつつ、規模等の差により市町村間の格差が生じないよう支援を行う必要がある」。
 また「○」の四つ目でございますが、「一方、市町村がより主体性を持って学校の運営の責任を負う体制が整うに従い、都道府県の行う指導・助言・援助の役割を限定する方向で見直すこととなると考えられる。最終的には都道府県教育委員会の役割として学校評価や児童生徒の学習到達度評価のセンター機能に重点を移していくことが考えられる」と記載しております。
 次に、「2教育事務所の在り方」につきましては、1枚めくっていただきまして、19ページでございますが、「小規模市町村に対する支援や、域内における情報交換、教育研究団体の育成など、市町村相互又は市町村を越えた教育活動への支援に重点を置く方向で見直すことが必要となると考えられる」と記載しております。
 次に20ページでございます。「〔6〕学校と教育委員会との関係の改善」でございます。
 「(1)学校と教育委員会の関係の在り方」といたしまして、「教育委員会は、域内における教育の基本方針を定め、それに沿って各学校の自主的な教育活動を支援していくこと、また各学校間や学校地域間の連携の橋渡し役となることが必要である」と記載しております。
 次に、「(2)学校への権限委譲、裁量の拡大」のところにつきましては、「○」の一つ目のところで、「今後、学校間の異動の担保や人事関係事務を学校が処理する際の負担、現在の職員の資質向上の重要性に留意しつつ、教職員の配置に対する校長の権限をさらに拡大していくことが望まれる。さらに、校長が教職員の能力や業績を適切に評価し、その結果を処遇に反映させていくことが望まれる」と記載しております。
 また、教育委員会の学校に対する承認事項につきましても、今後さらに見直しを進め、教育内容等に関する学校の裁量を拡大していくことが望まれる。
 さらに、「○」の三つ目でございますが、「予算面における学校裁量の拡大をさらに進めることが望まれる」。
 「○」の四つ目といたしまして、こういった裁量拡大に伴いまして、「教職員の配置の見直しや学校組織の強化など条件整備が必要である」と記載しております。
 「(3)学校評価の改善」についてでございますが、1枚めくっていただきまして21ページのところでございますが、上から3行目「今後、自己評価の実施とその公表を義務化することや、外部評価の実施について見当する必要がある」。
 「○」の一つ目、「なお、学校評価については、多面的な評価を行うようにすることが重要である。特に学校選択が行われる場合、一面的な学校評価の結果によって学校が単純に比較され序列化することのないよう留意する必要がある」と記載しております。
 次に「(4)学校に対する教育委員会の支援」についてでございますが、「○」の一つ目、「研究授業や校内研修などに対する派遣や定期的な学校訪問の実施など、指導主事による学校指導をより積極的に行うとともに、現職の教員の活用など指導主事による指導以外の方法により、学校における授業改善を支援していくことが望まれる」と記載しております。
 このほか、「○」の二つ目で、「教育研究団体の育成や、カリキュラムや教材を開発するための場の提供など、教員が自主的に授業改善を行えるような支援を行うことも望まれる」
 「○」の三つ目、「また、学校事故や生徒指導上の問題が発生した際」の対応。
 「○」の四つ目、「校長会や教頭会を通じて学校現場の意見の吸い上げ」等を記載しております。
 次に、22ページ、「〔7〕保護者・地域住民と教育委員会・学校との関係の改善」についてでございます。
 「(1)保護者・地域住民の参画」につきまして、「1保護者・地域住民の意向の反映」でございますが、学校評議員制度の設置が全国的に進んでいくこと、また学校運営協議会制度につきましても今後積極的に活用されることが望まれるとしております。
 また、学校教育以外の分野におきましても、公民館運営審議会や図書館協議会などの制度の積極的な活用が望まれるとしております。
 また、教育委員会の政策立案の過程において、保護者や地域住民の代表、教育関係の活動を行う団体の代表や有識者等によって構成される審議会や研究会を、必要に応じて設置することも有効な方策であると記載しております。
 「2保護者・地域住民等の学校への協力」についてでございますが、「○」の二つ目、「保護者・地域住民は、地域で学校を育てていくという観点に立ち、学校の教育活動に積極的に協力していくことが必要である」。
 「○」の三つ目、「また、学校は、地域の企業や大学などの協力を得ていくことも重要である」と記載しております。
 「3」といたしまして「PTA活動の充実」について記載しております。1枚めくっていただきまして、23ページのところでございますが、一番上の「○」で、「学校は、PTAを通じ保護者に対して学校の教育方針を説明し、保護者の十分な理解を得るようにするようにし、一方PTAは、保護者全体の意見を踏まえながら学校に協力していくことが望まれる。また、PTAに学校評価への協力や参画を促すことも重要である」と記載しております。
 また、「○」の三つ目で、「PTAが学校に協力する際には、学校の求めに応ずるだけではなく、例えば、有志の親の会の結成や学校支援ボランティアの組織化など、保護者や地域住民の自発性を重視した取組を進めることが望まれる」と記載しております。
 「(2)保護者・地域住民への情報発信と要望への対応」といたしまして、「1積極的な情報発信」といたしまして、「教育の日」の制定や「教育週間」の設定など、教育に関する地域住民への情報発信を行うことが望ましいとしております。
 また「2保護者・地域住民の要望への対応」でございますが、行政相談窓口を明示すること以外に、「ホームページの掲示板や電子メール、FAXなどにより、住民が直接教育委員会に意見を述べることができるようにすることが望まれる」としております。
 最後、24ページでございますが、「〔8〕教育委員会の在り方に関する継続的な検討」といたしまして、「○」の一つ目、「教育委員会の在り方については、今後の運用状況を踏まえた学校運営協議会制度の改善や人事・予算等に関する権限の校長への委譲を進め、学校で決定、処理することが可能な日常的な事項については、学校で自己完結させ、教育委員会の機能を、より専門的な見地から各学校の教育計画や域内の教育施策の企画立案、評価・支援に転換していくことが、将来的な課題として考えられる」。
 「○」の二つ目として、「今後、市町村合併の進展など教育委員会を取り巻く状況の変化、学校運営協議会制度の運用状況、さらには、教育委員会改革の進捗状況をみながら、教育委員会の在り方について引き続き検討を進めていくことが必要である」としております。
 以上が資料1の説明でございます。
 次に、参考資料といたしましてお配りを申し上げております「学校の自主性・自律性の確立について」簡単に御説明させていただきます。
 一番上の色刷りの資料を御覧いただきながら、お聞きをいただければと思いますが、この「学校の自主性・自立性の確立」につきましては、この部会におきまして、以前の部会で学校評価の実施状況、地域住民の参画の状況につきまして御説明をさせていただいたところでございますが、平成15年度の状況あるいは平成16年4月現在の評議員の状況につきまして、先般、調査結果を公表いたしましたので、その結果の概要だけ御説明をさせていただきます。
 まず、「学校裁量の拡大」。先ほども御説明いたしました承認事項を届出、報告にするというものでございますが、教育課程編成あるいは副教材の使用につきましては5割から約7割ということで学校裁量の拡大が進んでいる。さらには、校長裁量経費の導入団体が平成12年度から比べまして2倍以上になっているという状況がございます。
 また、「学校評価の実施」につきましては、現在、国公立学校の中で94.6パーセントの学校が実施している。さらには外部評価も6割を超える学校が実施をしております。またその一方で、結果の公表につきましては、自己評価で約4割、外部評価で約8割ということで、公表が、特に自己評価におきましては進んでいないという課題がございます。
 次に、「地域住民の参画」につきましては、学校評議員制度が、平成16年7月現在で7割を超える学校におきまして設置されているという状況でございます。また、学校運営協議会制度は今年の9月に法律が施行されたところでございますが、既にこの16年7月現在で70校以上が導入を検討しているといった状況が見られるところでございます。
 次のページ以降は、今申し上げましたところの詳しい説明になっております。説明は割愛させていただきます。
 最後に、袋の中に入れておりません資料といたしまして、森田先生の意見表明ということで資料をお配りさせていただいております。今日は森田先生は御欠席でございますが、書面で意見をいただいておりまして、これにつきましても御参照いただきながら御議論をいただければと考えております。
 以上でございます。

○ 鳥居部会長
 森田先生の意見表明は読んでおいていただくということでよろしいのでしょうか。何か大事なことを言っているようであれば -言っているつもりなんでしょうけれども、事務局で一言解説をお願いします。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 それでは、ちょっとかいつまんで、ポイントと思われるところだけ御説明をさせていただきます。
 1ページ目の「1」の「地方教育行政を取り巻く社会状況の変化について」でございますが、「ミニマムの基準の設定は国が行うとしても、その具体的な実現は可能な限り地方の自主性に委ねられるべき」と。
 一番最後の「3」のところでございますが、「教育の質を維持しつつ、全体としての効率化を進めるためには、制度を弾力化し、地方の裁量の余地を拡大することによって、これからのあるべき制度の多様な可能性を追求することが必要である」。
 「2」の「教育委員会制度の必要性について」、「1」のところでございますが、「教育水準の確保においてこれまで教育委員会制度が果たしてきた意義は否定しがたいとしても、一定水準の確保が可能な限り、教育行政の仕組みについては、地方自治体の選択を出来るだけ柔軟に認めるべきである」。
 次に2ページ、1行目ですけれども、「現行の教育委員会制度が唯一の選択肢であるとはいいがたい」。6行目あたり、「とくに小規模自治体の現状を見るかぎり、運用による改善には限界がある」ということで、最後の行でございますが、「すべての自治体に教育委員会制度の設置を義務付ける必要性も合理性もないと考える」。このような意見を出されております。
 「注」の部分でございますが、これは具体的な表現ぶりの意見でございます。最後の3行でございますけれども、「できれば置かない場合に満たすべき最低限の条件を明確にする方向で表現されることを希望します」といった意見をいただいています。
 次に、「3」の「教育委員会の組織および運営の改革」でございますが、「1」の一番最後の行でございますけれども、「教育行政に理解のある首長の創意工夫を教育政策に反映させる仕組みは、積極的に導入されるべきである」
 「3」でございますが、「教育行政組織に完全な中立性、自主性をもたせるためには、アメリカの学校区のように、委員を公選とし課税権を付与した自立的な団体であることが望ましい」「一定の条件を満たす限り、希望する自治体がそのような制度を創設することを排除する理由はないと思われる。とくに教育委員の公選制については、選択肢として認めるべきである」という意見でございます。
 次に、「4」の「教育委員会と教育長」のところでございますが、3ページの「3」でございますけれども、「教育委員会と教育長との関係」については、「教育委員会を設置する場合には、教育長は、教育委員とすべきでなく、教育行政の実施の責任者として、教育委員会が任免権を有する職とすべきである」としております。
 最後の「5.首長、議会と教育委員会との関係の改善」でございますが、「2首長と教育委員会との権限分担については、教育委員会の必置規制の緩和が必要と考える立場からは、当然に積極的な弾力化を進めるべきであると考える」。
 「3教育財政」について、「教育委員会が歳出に関して独自の権限をもつことは、財政民主主義の観点から、制度的に困難である」としています。
 事務局のほうから見たポイントは以上のようなところだと考えております。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 今、資料を説明していただきましたけれども、この資料の中で、これから -それよりも前に、全体の見通しは最初に申し上げましたけれども、12月末を目途に当部会でのまとめをしていただきたいというふうに考えております。資料2という一枚紙がお配りしてありますけれども、それにありますように、このまとめ(案)をもう一回御審議いただくつもりで、12月6日、皆様に御参集をお願いしてあります。そして予備日として12月14日を予定しております。できれば12月6日で仕上げられればというふうに考えているわけです。そんなわけで、今日はかなり大事なタイミングだと思います。
 そこで、今説明をしていただきました資料1「部会まとめ(案)」でございますが、この中にはいろいろな問題がまだ残っていると思います。特に本質的な議論をここでしっかりやっておかなければいけないということも、皆様のお考えの中におありではないかと思います。そういうことについては今日ぜひ御審議をいただきたいと思います。
 それから、このまとめ(案)の中には、問題によっては一部両論併記的な書き方になっているところがございます。この両論併記的なものを両論併記的な書き方のまま、親部会のほうに送るのか、それとも、このあたりで意見を集約できるのかということも、今日ぜひ御審議をいただきたいと思います。
 それから、基本的な表現の修正等もございましたら、ぜひお願いしたいと思います。たまたま、今、義務教育費国庫負担の問題が問題になっていて、我々その渦中にいるわけですけれども、その議論を実際にやってみて、義務教育の在り方についてお互いにもっと現実的な理解を深めないと、空回りの議論になっているというふうに思われるところが多々ございます。例えば今、色刷りの紙で説明してもらいました「学校裁量の拡大」も、実際に裁量制が今年度から導入されているわけですが、その成果が上がっているというわけですけれども、抽象的な表現としては非常によくわかるのですが、例えば校長裁量経費というものが2倍以上導入されるようになったと言っていますけれども、具体的に1校当たり幾らぐらいなのか。それからまた、そのお金はどこから来て、どう流れているのかといったようなことを具体的に理解していかないと、国庫負担の問題も空回りの議論になりますし、我々の教育委員会制度のデザインも抽象的な空回りに終わる可能性がございます。
 そんなことで、もし御審議の過程で、もう少し具体的なデータ等について必要を感じられましたら、事務局にどうぞ注文をつけていただきたいと思います。
 そんなことを前置きとして申し上げまして、この取りまとめ(案)を最初からお目通しいただいて、問題点を御指摘いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 いずれ、中間答申的なものにまとめていくとなりますと、そこではもうちょっと文章として仕上げていかなければなりませんが、そのことを予想しますと、1ページの上のほうはもう少し、例えば教育を受ける側から言えば「確かな学力」、教育をする側から言えば「信頼される教育」といったようなものが必要だということをうたい上げる場所が必要なのではないかというふうに思いますけれども、そんなことも、もし御意見がございましたらどうぞお願いしたいと思います。

○ 門川委員
 多様な意見をよくおまとめいただいたなと思っております。  21ページなんですけれども、内容的にはこのとおりでいいんですけれども、少しちょっと気になりますのは、「(4)」の「学校に対する教育委員会の支援」ということです。この文章の中に「指導」ということが一切ないんですね。教育委員会の役割はあくまでも学校への支援であると。教育活動でも、「支援」か「指導」かという論議をここで蒸し返すつもりはないんですけれども、やはり、より専門性の高いところで、学校に対して、指導する必要がある。もちろんできるだけ自主性を持たせて、地域とともに子どもの教育に責任を持っていく、学校長の権限、裁量を拡大していくことは大事なんですけれども、教育委員会の役割というのは「支援、支援、支援」だけでいいのか。やはり指導するときには指導し切らなければならないことも、公の教育としてはありますので、「指導」という言葉が一切抜けていることが気になりますので、御検討をいただければありがたいと思います。
 それから、22ページのところは非常によくまとめていただいたと思うのですけれども、参考資料のほうの、イメージ図でまとめていただいて、これは非常にわかるのですけれども、左下の学校、教育委員会、保護者・地域住民等の関係の図なんですけれども、22ページの文章のほうではきちんと書かれているのですけれども、例えば「学校」から「保護者・地域住民」への矢印のときに、「説明・情報提供」と書いてあるのですけれども、それにプラスして「協力要請」。学校が地域住民・保護者に対してきちんと地域で、家庭で、こういうことはしてくださいということを教育の専門機関として、教育者として、きちんと言うべきことを言っていくということが必要です。説明責任だけではないので、協力要請とかいうことを入れていったらいいのではないかな。
 同時に、保護者・地域住民も学校運営への参画、これがどうも権限とかいうことばかりが議論になりますので、学校運営協議会の設置等を躊躇されているところもあるのですけれども、同時に「学校運営への協力」とか「地域活動を通じて学校教育への協力」とかいうことを図解でも入れていったらいいんじゃないかな。文書の中ではその趣旨が書かれています。やはり今まで公あるいは学校も含めまして住民の意見、保護者の意見を聞くことにばかりに力を注いできた。しかし、やはり親が、地域が、これだけのことをやってもらわなければ子どもの教育はよくならない、地域はよくならない、学校もよくならないということをはっきりと言っていかなければ、これからだめだと思いますので、その2点、申し上げたいと思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。今、22ページのほうにも触れられたのですが、22ページの文章の中でも、今おっしゃった「協力」というのはもうちょっとうたい込んでもいいですね。はっきりと入れたほうが。

○ 門川委員
 そうですね。自信をもって、専門家たる教育関係機関、関係者が、親、地域に言わなければだめだということを思いますので。

○ 鳥居部会長
 渡久山委員、どうぞ。

○ 渡久山委員
 いろいろあるんですけれども、1ページ目ですが、地方教育行政を取り巻く社会的状況というと、社会的と言ってもいいのですけれども、今はやはり地方での教育財政の確立の問題が非常に大事なことで、それぞれの首長が、親が願うのはそれだと思うので、地方における教育財政確立をどうしていくか。あるいは財源確保をどうするかというのが一つあるのではないかと思います。
 それから、次の「(2)」の「1」に全国的な教育水準の確保というものがございますが、それと同時に教育の機会均等の確保、この二つは同時に入れておいたほうがいいのではいだろうかというように思いますので、よろしくお願いします。

○ 鳥居部会長
 取りあえず、そこまででいいですか。はい、ではあとまたよろしくお願いします。
 田村委員、どうぞ。

○ 田村委員
 大変よくまとめられてきたと思っておりますが、今、財政の問題が出てきましたが、財政について教育サイドは権限がないということはもうこれはいろいろな形でやむを得ないと思うのですけれども、しかし、教育基本法で議論されている、将来に向かっての企画、計画、振興計画のようなものを提言して、それを採用するかしないかは首長なり選挙で決めてくるのでしょうけれども、教育委員会としてはそういうことを一切言わないで、言われたとおりの財政の範囲内で教育をしていくというようなことでいくと、今のような議論、つまり国の関与をできるだけ少なくして地方に任せるということだと、どこにも歯どめがなくなってしまうという危険があるんですね。ですから、今の三位一体の流れがどういう方向に行くかわかりませんけれども、もし国の関与をなくすのであれば、地方に任せるなら、そういう振興基本計画を出すことを義務づけるとか。そうなると、教育委員会は絶対になくては困るわけですね。
 それからもう一つ、その点について、これまで書いていいかどうかわからないのですけれども、森田先生がいらっしゃらないところなんで、読んで意見を言うのは、反論をいただけませんのではばかれるのですけれども、基調の議論は、少子高齢化だからあまり子どもにお金をかけるなという、そういう制度設計をしろということが触れられているんですね。私などはむしろ、少子高齢化だからこそ子どもにいっぱい金をかけなさい。そうでないと、絶対に少子高齢化の現状は変化しませんよと。これをどこかで言わないといけないのではないか。少子高齢化の社会というのは御存じのようにプレストン効果というものが出てきて、投票をよくする高齢者に対する政策が手厚くなって、意見の出ない子どもたちの政策がどんどん薄くなっていくという、こういう傾向があるわけですね。それが今回の三位一体の中には、よく見てとれるのです。文部科学省あるいは厚生労働省の、子どもに関わる施策は全部カットなんですね。老人のものは全部残されているわけです。いろいろ事情はあるのでしょうけれども、結果だけ見ていると明らかに子どもの政策は国はやらない、やらないでいいんだという、こういうような形で、将来どうするんだという指摘がないままに、この状況を認めてしまうのは非常に危険だと思います。
 ですから、地方分権をする、教育委員会もやめるというのであれば、それにかわる何かの仕組みをつくって、ちゃんと将来についての教育の振興基本計画みたいなものを提示して、財政上できなければ何年計画でやるというようなことを首長がやるとか、そういうような仕組みを提言しておかないと、とめどもなくだめになっちゃうという危険があるような気がしてしようがないのです。それができないかということが、ここに書けるかどうかわかりませんけれども、それはどうなんだろうかということが一つございます。
 それから、今の教育改革の根っこというのは1980年代に起きているわけですね。つまり、一つは生涯学習であり、一つは女性の社会参画ということがあるわけです。これは臨時教育審議会の提案であり、また男女雇用平等法がつくられたということがあって、今や、学校の分野のところで家庭教育まで分担しなければいけないという状況があるわけです。これは悪口を言っているわけではないですよ。そういう社会の変化というのは、そういう切り口を考えるべきだ。そうなると、そこまでやるということが学校の役割だということを提言する必要がある。しかも、それは生涯教育であれば、オギャーと生まれて死ぬまで学習していくというのですから、成人教育とかいわゆる、ここでは教育委員会から外してもいいということを書いてあるのですけれども、これは私はちょっと方向違いではないかというふうに思っております。全部面倒を見るところがある必要がある。それは教育委員会でなければ、どこかがやらなければいけないのではないか。そうすると、日本の社会の教育分野はどこが責任を持つのか。教育委員会がなくなるとなると、ではどこなのか。お金の問題も将来計画の問題もどこでやるのか。そういうことを言及しておかないと、ただ単に教育委員会を置けという意見と、なくせという意見が並列して書かれているだけでもって記述を終えてしまうと、非常に気になるわけであります。私の意見は、残したほうがいい、残さないと大変なことになるという意見なんですけれども。その程度で。

○ 鳥居部会長
 今、渡久山委員と田村委員との、お二人のお話の中に出てきたところから言うと、1ページの「(1)」は、「社会状況の変化」という言葉では必ずしも表現し切れない、いろいろな問題を含んでいますので、そのことも含んだタイトルに変えながら、地方教育財政の確立という問題と、今御指摘のあった少子化、高齢化を反映して、国の政策の方向が極端に変わっていくことの危険といったような問題をどこかで言及するとすれば、ここしかありませんから、そのあたりを工夫させていただきたいと思います。

○ 藤田委員
 私も、今の田村委員、渡久山委員の御意見に全く賛成で、ぜひ一番最初に入れていただきたいと思いますが、それと関連して、13ページの「首長と教育委員会の関係を見直す際の視点」の最初の「○」の3行目から、「首長は教育委員の任命や財政措置を通じて間接的に責任を負っている。このような仕組みとされている理由は、教育についての政治的中立性の確保が強く求められ」というふうになっているのですが、ここに「安定性」「継続性」も入れておいたほうがいいのではないかと思うのですね。今、特に地方に権限が移れば移るほど、そして非常にプラスの政策を首長の方がアイデアを出されたりなさっている場合も多々ありますが、しかし、安定性がなくなったり、継続性が変わってしまうということが非常に大きな問題になってくると思いますので、もともとそういう趣旨も含まれていたと思いますので、ぜひ入れていただければと思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 では山本委員、どうぞ。

○ 山本委員
 1ページから2ページのところなんですけれども、「新しい地方教育行政の在り方」で、「1」「2」と来て、「3」が2ページにございます。「地域住民や保護者の参画の拡大」のところなんですが、これにかかわるところを、ほかの以下のページでずっと拾っていきますと、ここが非常に弱くて、極端なことを言うと、ちょっとよくわからないところもございます。ですから、ここのところの補強を図る必要があるのではないかということでございます。
 一つは、2ページのところでは、「地域住民の意向を十分に把握し、それを反映して行われる必要がある」と。その次のところでは、参加することで「学校教育の改善充実や地域全体の教育力の向上を図っていくことが必要である」という、そこのところの「地域の教育力」なんですけれども、「○」の上のところで、こういうことをやるためには根底に地域の教育力が向上していなければうまくいかないわけで、地域の教育力の向上を図るということをやはり考えて、教育委員会がそこに関わるということを言ってもいいのではないか。それに伴って最後のほうのところで、住民とのかかわりのところですね、そこのところにその関係のことを入れていってもいいのではないかということが一つございます。 極めて具体的な話で言いますと、地域住民の感情としましては、教育関係のことに貢献するのは当然なんですけれども、よく出てくる意見として、利用されるだけではないかというような話もございます。ですから、自分たち全体が高まるということを教育委員会が支えていくんだというようなことを言ってもいいのではないかというのが1点ございます。この辺を通して見ていただく必要があろうかと思います。
 2点目は、11ページでございます。「教育委員会の自己評価」ですけれども、このところで自己評価を行っていく必要があるということが言われていて、それは結構だと思います。先ほど来、話がございましたのですけれども、こちらの報告書の方でいきますと、20ページのところ、学校評価なんですけども、一番最後の行ですれども、自己評価の結果の公表が4割にとどまると。後からいただいた資料のイメージ図みたいなほうでいけば、外部評価では8割が公表されているのですけれども、大体、外部評価は公表されます。その外部評価の場合には多分自己評価をある程度見ながらということになると思うのですけれども、自己評価の公表というのを、この11ページのところで言っておいた方がいいのではないかということが2点目でございます。
 なぜかといいますと、最近の情勢はどうなるか、これからわかりませんけれども、万が一の場合には、もしここのところで教育委員会が自己評価を公表しておいてくだされば、全国の自己評価を集めれば、今の状況がどうなっているかということは直ちに分析できるということになると思うんですね。それが必要になる可能性もありますので、ここのところはそういうことを入れておいてもいいのではないかということでございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 浅見委員、どうぞ。

○ 浅見委員
 今の自己評価のところに関係するんですが、ここに「教育委員自身も委員としての活動について評価されるようにしてしくこと」とありますが、これは外部評価にするんでしょうか。いずれにしても、外部からの評価も受けるような仕組みをつくるべきだと私は思っております。
 それと、これは確認ですけれども、6ページの「教育委員会制度の必要性」のところで最後に、「引き続き検討していくことが必要である」というのは、この会でさらに検討していくという意味でよろしいのでしょうか。

○ 鳥居部会長
 今の引き続きは、少なくともあと一回ないし二回は、この部会が行われますから、そこで引き続き検討するのは当然ですけれども、そこで結論をそのまま出さないで、さらにその先にまで持ち越す可能性はあると思います。

○ 浅見委員
 14ページも同じように「検討」という言葉が入っていますが、「ここは地方自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにすることを検討すべきである」とありますが、この主体はどこが検討するということなんでしょうか。一番最後のところにも同じ文言が出てきますが。

○ 鳥居部会長
 この辺はあまりはっきり……、ちょっと説明してくださいますか。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 ここにつきましては、どういった制度なり運用なりというところでございますので、これは文部科学省としてどう受け取るかということでございますので、部会でということで想定して「検討」という言葉を使っております。ちょっと紛らわしい表現で恐縮でございますが。

○ 浅見委員
 そうすると、この会から文部科学省に検討せよというような意味でとらえたらいいのですか。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 そういうつもりで書かせていただいております。

○ 浅見委員
 わかりました。

○ 鳥居部会長
 それでは横山委員、お待たせしました。

○ 横山委員
 全体的に見て、私ども日々教育委員会の実務を行っていながら、感じている問題点はかなり書かれておりますし、指摘をされている。全体的に私は非常に評価をいたしております。
 そこで、2点伺いたいのですが、10ページの、前回もいろいろ議論になりましたが、「教育委員会と教育長の関係の明確化」、この文章がよくわからない。実はこの段階で、前回も議論がありましたが、教育長というのは議会同意で教育委員に選任をされ、その段階では特別職であるにもかかわらず、教育委員会で教育長に指名された途端に一般職になってしまう。ここのところは非常に不明確で、なおかつ問題が起こる場所なんです。したがって、そういう問題があるということ。もともと昭和31年ですか、その当時は、文部省は教育委員長を特別職としようとしたわけですよね。それがもろもろ、いろいろな事情の中で、特別職とはできなくていろいろな方途をとってきた。今回、問題を指摘し、なおかつ将来方向を見据えるならば、教育長が教育委員との関係で教育委員の身分を持つかどうかという別の議論はありますが、教育長を特別職として法令上明確にすると。方向性はですね。ただ、この段階では問題点だけはとにかく明確に指摘していただきたい。
 それから、18ページ、市町村への教職員人事権の移譲ですが、これは基本的には私は流れとしては賛成ですが、上から二つ目の「○」ですが、最後に「教職員の一部について市町村が独自に採用できるようにすることなどの措置」というのは、これは県費負担教職員のことを言っているのか、あるいは今教育改革特区で言っている市町村の個別採用のことをおっしゃっているのか、ここの点はちょっとお聞きしたいのです。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 これは意見として委員の中から出ていただいたものを載せております。私どもとしては、今、教育長が最後におっしゃった特区制度を全国化することで対応できるのではないかというふうに考えております。

○ 横山委員
 そうすると、県費負担教職員というより独自財源で採用する教職員のことですね。だとすると、それもわかるようにぜひお願いしたい。

○ 鳥居部会長
 ごめんないさい、今のは何ページですか。

○ 横山委員
 18ページです。教育改革特区のあれですよね。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 改めて御説明いたしますと、18ページの「○」の二つ目につきましては内容が二つございまして、同一町村内における人事異動の話と、あとは独自に採用できるというこの二つがございます。
 繰り返しでございますが、二つ目の、市町村が独自に採用できるという部分につきましては、今特区の方で行っております市町村単費の採用につきまして、この書きぶりについては実際に対応できるのではないかというふうに考えているということでございます。

○ 鳥居部会長
 2番目の問題はよろしいでしょうか。1番目の問題は、10ページから11ページにかけての表現は、長々と、10ページの後半全部を使って書いているけれども、経緯が書いてあるだけで、当部会としては何を提案しているかというと、10ページの一番最後の1行から11ページの2行にかけて提案というか、結局、検討を提案しているだけであって、教育長の在り方についてディフィニットに、こうすべきであるということは結局言い切れていないということが今の現状なんですね。これは前からお話ししていますように、政府のほかの中にも指針があるみたいで、例えば総務省とか法制局とか、ほかのところの意見を調整しながら進んでいるみたいなんですよ。恐らくそういうことがあって書き切れていないのだと思いますけれども、次回ぐらいまでにもう少し煮詰められればというふうに思っています。
 それでは、お待たせしました。土屋委員、どうぞ。

○ 土屋委員
 大きく分けて三つほどの意見を申し上げてみたいのですが、第1に、1ページに関係するお話なんですが、この委員会に与えられた課題は、教育そのものについての目標や教育課程の論議ではなかったために、こういうことになるんだろうと思いますけれども、しかし教育委員会改革などは何のためにやるのかという、「何のために」というところからいくと、1ページ目について少しどうかなと思う気がいたします。
 まず、ここで言っていることでよくわからないのは、「住民のニーズに対応した多様な公教育」と。読んでしまえばすごくいいんですけれども、「住民のニーズに対応した多様な」というのは -公教育というのはそんなに多様なんでしょうか。例えば、ある住民が、英語はやらなくていいよと言ったら、英語は教えないのかどうかということもあると思う。
 「多様な」という表現は、今風で非常に合っているのですけれども、多様なということで義務教育というのはいいのかどうか。ナショナルスタンダードということも書いてあるのですけれども、それとの関係はどうなんだということについて少し整理をしないと、いろいろな議論が出てくるのかなという気がいたします。
 そもそも、私は前の意見発表のときにも申し上げたわけでありますが、今、国民が感じている教育に対する問題点といったようなものは、学力低下にならないかとか、あるいは落ちこぼれが、いわゆる不登校児が多過ぎないかとか、あるいは、ある程度若者になっても目標が設定できないで、「ニート」でしたかね、最近の言葉で言うと、そういう若者がたくさん出ていることに対して、これは実は教育に根本的由来があるのではないかとか、あるいはひどく残虐な行為を行ったり、そういう様々な現象があります。
 それから、前に、この会でも津田委員からお話が出ました、国を愛する気持ちとか、そういうことの欠如といったようなこと、こういう国民が本質的に教育について持っている考え方について、そこのところをどういうふうにこたえるかということなくして、教育委員会の制度だけいじってもしようがないのではないかという気がいたします。ですから、ここのところをどういうふうに書き込むかというのは非常に難しいところだろうと思いますし、恐らく、中教審の他の委員会とも関係することだろうと思いますけれども、ここはもう少し書いていただいた方がいいという気がいたします。
 その点に関して私の意見を申し上げますれば、前にも意見発表のときに申し上げましたが、今は私たちが -私たちというのは、私は62歳ですが、62歳の世代が育ったときは、全体に日本国は貧しかったですから、教育の目標というのは「貧しさからの脱却」「いい生活をしよう」「家族や一族は幸せになろう」という、誰からも強制されなくても暗黙の目標があったにもかかわらず、今の若い人たちは生まれながらにして、エアコンのきいた中、黙っていて三度の御飯、そういうことに由来して、結局、生きる目標とか国家の行くべき道とかいったようなことを考えることの機会がないまま大きくなって、どうしていいかわからないから、ニートになったり、そういうことなんじゃないかという気がいたします。
 私は前にこの会で、目標設定を、教育観を、貧しさを前提にした教育ではなくて、豊かな社会であるということを前提にして、この豊かな社会はどういう仕組みによって成り立っていくのかとか、その中でそれぞれどういう役割を果たしていかなければいけないのかとか、そういう教育の根底みたいなものを変える必要があるのではないかということを申し上げたのですが、あまり、「そうだ」というような強力な賛成は得られなかったのですけれども、しかし、そういうことについて、私の言ったことではなくて、そういう現状の、例えば不登校にしろ、ニートにしろ、あるいは我々からすれば全く無礼なことだとか、電車に乗れば座り込む、へたり込む子ども、目の前でお化粧している子ども、こういうことを含めて、その根っこにあるものに少しここで触れることはできないのかという気がいたします。
 それから、大きな2点目で申し上げたいのは、学校などに権限をおろしていくということについては、それはそれなりに意味があると思いますし、武蔵野市でもいろいろ工夫をいたしております。そして学校運営協議会のように保護者が参画してくるということも一つの可能性としての道だろうと思います。しかし実態はどうなんでしょうか。武蔵野市には18の小中学校がありますが、その中で校長先生は比較的すばらしい方がいると思うけれども、経営力という点からいくと強弱があります。個人の経営力だけではなくて、東京26市のある市などは、まだ昔のなごりが残っていて、例えば校長が学年活動に対して何か指導をしようとすると、「校長先生、これは学年活動ですから私たちに任せてください」と言って、遠足なども十分相談されていないというような学校もあります。こういう公の場で、その市の名前を言うのははばかれますから、あれですけれども、もし必要なら、この市だ、この市だと言いますけれども。横山教育長などは御存じかもわかりませんけれども、現に、俗に言う、かつての人民管理のようなところがないわけではない。私はあると思います。
 こういうことに目をつぶって、幾らきれいごとを言っても本質的なことは解決できない。だから、校長先生の経営力みたいなものを強化するような方向はどうするのかということを言わないと、なかなかではないかなという気がいたします。権限を与える方向は賛成ですが、そこはどういうふうにするのか。
 それから、大きな3点目として申し上げたいのは、13ページのことなんですが、13ページには、「首長と教育委員会の関係を見直す際の視点」ということで、ずっと書いてあるのですけれども、首長は口を出すなと言っているのか、口を出せと言っているのか、どっちなんでしょうか。全国市長会の論議の中で、全国の市長が集まると、かなり論議があります。かなり論議のあるうちの声の大きい論議は、もっと首長に裁量権を与えよと。教育委員会などは廃止して首長が直轄すべしというような、これはかなり特殊な人ですけれども、こういうことを言う方もいます。こういうふうな方向に行くのか。

〔吾妻委員退席〕

 それに対してもう一方で、いや、首長にそんなに権限など集中しなくていいという意見もあります。その場合にはむしろナショナルスタンダード。北海道においても東京においても九州においても、義務教育で教えるべき内容というのはほとんど似ているのではないか。多様性とか首長の裁量とか言うけれども、その部分というのはごく一部であって、基本的にはナショナルスタンダードにいくべきではないかというのが大体、全国市長会であまり意見を -こういう方は意見を言わないのですけれども、じっと黙っている人の意見のかなり部分はそういう意見であります。
 しかし、森田先生が言うように、意欲のある首長がいろいろ影響力を行使することについては、私も首長の一人として、それはそれでいいと思うのですけれども、その場合に、ナショナルスタンダードとの関係をどうするのか。ここのところは、この文章だと、ナショナルスタンダードを強化すると書いてあるのですが、13ページはどう読み取ればいいんですか。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 13ページの「(1)」のところでございますが、ここにつきましては、とりわけ「(2)」の弾力化のところを少し意識をしておりまして、その前の段階の説明といたしまして、現状においても教育行政は首長と教育委員会と分担しながらやっていると。教育委員会だけでやっているのではないということを説明しているのと同時に、教育委員会の事務につきまして独立した行政委員会として設けているわけですから、独立して行わなければいけない事務というのはどういうものかということを明確にするということを、この括弧につなげるために申し上げたところです。

○ 土屋委員
 そうすると、各論につなげるための問題の整理と、こういう理解でよろしいですか。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 ええ、そういうことで書かせていただいております。

○ 鳥居部会長
 今の件に関連してですか。

○ 藤田委員
 はい。

○ 鳥居部会長
 では関連してでありましたら、どうぞお願いします。

○ 藤田委員
 今、土屋委員が提起された問題は非常に重要な問題で、特に1ページの「住民のニーズに対応した多様な公教育」という書き方は、ぜひ改めていただきたいと思います。住民のニーズや関心が多様化しているのは事実だと思いますけれども、それにこたえる教育というか、あるいはこたえる教育の充実ということで、こたえて教育を充実するというようなことでいいのだと思うのですが、公教育自体というか、特に小中学校の基礎的な教育が中核的な部分で多様性を持つということは基本的にあり得ないと考えていますし、これは意見の分かれるところだと思いますけれども、具体的な学校の運営とか、具体的なプログラムをどういうふうにやっていくかという部分ではいろいろな多様性があると思うのですが、中核的な部分は公教育としては、やはりナショナルスタンダードというか、基本的には核となっているものは同じだというふうに思いますので、そこで選択の余地とか、いろいろタイプがあって当然だというふうな書き方ではないほうが、私はいいというふうに考えています。
 それと、首長が口を出すべきか、出すべきでないのかという、これも非常に難しい問題で、私は首長さんもいろいろな形でそれぞれのアイデアや考え方があると思いますから、教育委員会に発言をし、あるいは様々な形で教育委員会に、それこそ諮問といいますか、こういうことを検討するということを言えるわけですし、そこに自分なりのアイデアを伝えることもできるわけですから。しかし、全部自分が強権的にやっていくというようなスタイルでは、やはり困るというふうに私は個人的には思っています。
 それと、ちょっと長くなって恐縮ですが、先ほどの意見とも関係して、21ページの、これは学校の評価についてなんですが、「外部評価の実施について見当する必要がある」。その次の「○」、最後の「○」の、「なお、学校評価については、多面的な評価を行うようにすることが重要である。特に学校選択が行われる場合、一面的な学校評価の結果によって学校が単純に比較され序列化することのないように留意する必要がある」という、ここの部分は現に進んでいることですし、各自治体、教育委員会の判断でできることになっておりますから。そして先ほどの資料のところでも、外部評価は6割超で実施されており、その8割が公表ということになっていますから、それはそれで文部科学省なり、あるいは基本的な国の政策だと言えばそうなんですが、私はこういう審議会は、現在の政策を含めてクリティカルに検討していいことだと思っておりますので、これはもう既にイギリス等を初めとして、こういう領域で先に突っ走った国においては反動が来ておりまして、御存じのように、イギリスでも、イングランドはまだやっていますけれども、ウエールズやスコットランドは共通学力テストを11歳ぐらいまで中止するということを決めました。
 そういったようなことで、外部評価ということが学力等を含めて評価ということになってきますと、いろいろな弊害が早晩出てくると思いますから、私はここにあえて外部評価ということを書く必要はないのではないかと思います。固執はしませんが、ただ、私は、そういう意見があったということをぜひ議事録にとどめておきたいと思って発言させていただきました。
 と同時に、多様な評価をしたら序列化されないかというと、多様な評価をすればするほど細かくなって、そして結果的には序列化が進んでいく、あるいはまた教育現場の自立性や創意工夫をコントロール、統制して、規制していくということが出てくるということも、これもイギリスを初めとしてあちこちで起こっていることです。
 それからもう一つ、どこかに、評価の結果を教職員の処遇に反映するということが書かれていたと思いますけれども、これも東京都を初めとして既に進んでおりますが、もう既にビジネスの世界でさえ、成果主義は破綻するということは言われ始めておりますし、経営学の世界ではもう30年前から、それは実証済みだとされてきたことだと私は理解しておりますが、そういった大きな流れ-日本の現在の改革の流れは評価や成果主義という方向にどんどん流れていますが、それを教育が本当に追随してやっていくこと、広めていくことが好ましいのかどうかということは、私は再度考えておく必要があると思いますし、そういう意味でも、この教育委員会の報告に際して、そういうことにかかわって、どこまでこれを書き込むかということで、もう既に進んでいるのだから、あえて書かなくてもいいのではないかというふうに私は考えています。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 今、お二方から御意見がありましたけれども、1番目の問題は、1ページの真ん中辺の表現なんですが、これは中教審が五つの分科会、そしてその中にたくさんの部会で、今たくさんの問題を抱えている、それらのところに共通している「教育というのは何をすることか」という表現から言えば、人格の形成であるとか、人生観の確立であるとか、社会規範を身につけさせるとか、そういったことがむしろスタンダードな教育の目標としてうたわれているわけですから、そちらと平仄を合わせた表現のほうが、少なくとも先に来ると。その上で、では多様なニーズというものをどう扱うかという形で、もう一回考え直すということで再検討させていただきたいと思います。
 それから、今、藤田委員のおっしゃった最後の問題については、さらに皆さんで御議論をいただきたいと思いますけれども、要するに教育の質の保証、そのための方策としての評価というその仕組みの考え方について、根本的に警戒的に見るべきだというお考えだと思いますけれども。

○ 藤田委員
 先ほど一番最初に門川委員のほうから「指導」ということを、21ページに、あるいは参考資料の図にも書き込んだほうがいいということを言われましたが、私も「指導」ということは、一部入っていると思うのですが、書いたほうがいいと思うんですね。
 基本的に、今のお大きな改革の流れで、そして私は好ましいと思い、かつ進めるべきだと思うのは、「指導・支援」と「参加・協力」ということで、すべてこれ当事者が自分たちの責任において教育をよくするために指導し、支援し、あるいは参加し、協力していくということが基本になっていると思うんですね。ですから、仮に評価をもし書き込むとしても、学校の改善に資するために適切な評価の在り方を工夫すると。何も外部評価と書く必要はないんで、いろいろなやり方で外部評価というふうなやり方で、私は当事者評価と言っていますが、地域の人たちや保護者も含めて、その学校を良くすることに責任を持つ人たちが評価をし、情報を共有すると。不特定多数の世間一般に公表する必要は何もないんで、その校区の学校関係者、当事者に対して公表というか、共有することが大切だというふうに思っています。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 先ほど来、だいぶたくさん手が挙っていますが、こちらから見た順番でお願いします。千代委員、稲田委員、大澤委員。では千代委員からどうぞ。

○ 千代委員
 私は行政の規模の大きさから、このまとめ方を考えてみたいと思っております。
 1ページに、「全国的な教育水準の確保」というようなことから、先ほども御指摘のありました機会均等の確保というものを、はっきりと打ち出したほうがいいというような御意見がありました。合併が推進されますと地方分権が全部進むというような、ちょっと錯覚があるんですね。合併を進めましても小規模の市町村は相当残っております。ここで小規模の教育行政に対してどうするかという問題が、それぞれほんのわずかの行数で答えられておりますけれども、5万人以下の市町村というのはかなり残るんですね。これを十把一からげに支援をしていくというような表現では、あまりにも雑であろうと思います。
 特に今、一番基本になりますのは、大規模な市や、町も大規模なものはありますけれども、そういうところにおける教育についてはかなり先進的に進められているところが多うございますから、それをまとめるのは割合容易だろうと思っているのですが、小規模の市町村においては、それをまとめるだけの能力が欠落しているところもあるし、また、それでも、あえてやっていこうという意欲に満ちて、具体的に非常にすぐれた行政をやっているところがございます。そういうところを十把一からげに小規模市町村としてここで取り上げることは、ちょっといかがかなというのが私の考えでございます。
 文部科学省の方では、小規模市町村というのはどのような範疇でお考えになっているのか、まずそれから聞かせていただきたいのですが。これはそういうふうに書かれますと、非常に危険な要素を含んでおりまして、それはすべて支援するといようなことになるんでしょうか。

○ 鳥居部会長
 まず最初の問題なんですけれども、1ページの一番上から三つ目の「○」の表現ですが、「市町村合併が急速に進展している」でおしまいにしないで、市町村合併が進展している一方で、おっしゃるように、小規模市町村もまだ多数残っているということをまずはっきり書いておいたほうがいいというのはよくわかるのですが、「支援」とおっしゃっているのはどこに書いてありますか。

○ 千代委員
 12ページとか19ページに「支援」というのがはっきり出てまいります。12ページの「○」のところで、「多く残ることが予想される。これらの市町村に対して都道府県が積極的に支援していくとともに」というのが文言としてございます。
 19ページを見ていただきますと、「小規模市町村に対する支援や」というようなことで、「支援」というふうに出てまいりますけれども、小規模市町村というのはかなりたくさんの市町村が残るということは、もう文部科学省では御承知のことだろうと思うのですが、そのあたりの認識はどのようにお考えでございましょうか。

〔結城文部科学審議官退席〕

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 今の御質問にお答えいたします。小規模市町村についての問題ということでは、この部会でも相当これまで御議論があったかと思いますが、確かにどのぐらいの人口でということは具体的には、この場でも出なかったと記憶しております。
 私ども、この人口以下というのはなかなか言いにくいところがございますけれども、一つには、一番最初のこの部会におきまして教育委員会の現状ということで御説明させていただいた資料、これはお手元のハードファイルの資料の19番目のところでございます。これの7ページのところを御覧いただければと思うのですが、教育委員会の事務体制の、このハードファイルの資料19の7ページのところでございますけれども、人口8,000人未満のところが全体の36.7パーセント。さらに3万人以下になりますと、もう70パーセントを超えるということでございますので、少なくとも8,000人未満のところは小規模だという認識で、これまでも部会で進んできたのではないかなというふうに考えております。

○ 千代委員
 私たちは、3万人未満とか5万人未満は小規模市町村と。というのは、市町村の中の単位としては、町村は一応5万人以下というのが基準になっておりますから、そういう町村についての対応というふうに考えて、私はここを読んでいたのですけれどもね。
 そういう、本当に8,000以下というような小規模のものを、これは指していると、こういうことでございますか。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 私どもといたしましては、特に数字を切って記述しておりませんので、そこは私どもがイメージしておりましたのは、少なくとも8,000人未満のものは入るのだろう。ただ、今お示しした資料でございますと、指導主事の配置率などは3万人以下のところでは、ほかの、それ以上の率でかなりがくんと減るというようなところもございますので、3万人以下というところも、物によっては対象になるのではないかなというふうに考えております。
 とりわけ、ここのうち、御指摘のあった19ページの、教育事務所が支援する場合の小規模のとらえ方でございますけれども、これはどうしても指導主事がいない市町村に対して支援するということが中心になってこようかと思いますので、この辺では3万人というのが一つのメルクマールになるのかなというふうに考えております。

○ 千代委員
 今、総務省が考えております、もし合併を行わないで今後の運営が非常に難しいところという区分は8,000人ではなしに、3万人以下を一応の指摘、もしくは1万人以下をというふうな、そういう二つの考え方を持っているようですけれどもね。
 いずれにしても、教育事務所で指導主事がいないということになりますと、埼玉県あたりは非常に人口が多うございますから、3万人、5万人以下の各町村について教育事務所が今は面倒を見ているというのが非常に多いわけなんで、この小規模というように十把一からげにされるのではなしに、どうなんでしょうかね、一つの小規模自治体というものの考え方をもう少しまとめた項目をつくっていただけると、小規模自治体にとっての指標、目安になるのではないかと思うのですが、いかがでございますかね。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。それはもう一回検討させていただきますが、これは皆さんでぜひ御審議をいただきたいのですけれども、何人かは別として、小規模であるがゆえに教育委員会制度が単独では十分機能しないというような場合について、ここに書いてあるような方策でよろしいかどうかということですね。もし何か御意見があったら、千代委員、いかがですか。

○ 千代委員
 広域的にやっていくというのは方法論としては非常にいい方法だろうとは思いますが、それがそぐわないような市町村もあるわけでして、そういうときにどうするかという問題も出てくるのではないかと思います。
 ここに御出席のほとんどの方々の市町村は、かなり大きな規模の市町村ですから、そういうことにはあまり斟酌はなさらないのですけれども、全国の市町村を対象にする場合は、小規模の市町村も十分に配慮に入れておいていただかないと、ちょっと言葉はまずいですけども、片落ちになるのではないかと思っておりますので、ぜひともそういう点の配慮をしていただきたい。

○ 鳥居部会長
 要するに小規模な村や町の子どもたちが同じような教育を受けられて、その教育が安定的で継続性があるという保障をするための仕組みとしてどうしたらいいかということですよね。

○ 千代委員
 そういうことですね。やはり機会均等の確保という面から。

○ 鳥居部会長
 ここに書いてあるので言うと、都道府県が積極的に支援する、あるいは広域化をするというようなことなんですけれども、それではまずいですか。

○ 千代委員
 積極的に支援するというやり方が、実際には小規模の市町村では内容をなかなか把握しにくい、そういうところがあるだろうと思うのですよ。

○ 鳥居部会長
 なるほど。そうすると、もうちょっとデテールにわたると。
 どうぞ、佐藤委員。

○ 佐藤委員
 今の御議論に対して。岩手県という一つの例示の中でお話し申し上げますと、やはり、千代委員の御心配なさる点が、私どもの県あるいは類似の県で結構あるわけですけれども、課題としては残るのではないか。
 といいますのは、学校選択にしましても、あるいは予算の配分にしましても、学校の主体性あるいは自律性といったようなものをフォローするための制度の改めというものが、意外と規模の小さい、今、七、八千と申しましたが、本県の場合には4万、5万の市のシフトを敷いている自治体でも、やはり大きな問題になっていることでありまして、何か一つの国全体が都市化の傾向にあることに対する対応は御議論の対象になっていますけれども、そういう波に乗っていない地方の、規模の小さい自治体に対するフォローといったようなものが、なかなか俎上に上ってこないという嫌いは私も感じておる次第であります。 例えば、社教主事にしましても、指導主事にしましても、独自のそういうスタッフを予算上できない。教育事務所がフォローする。教育事務所にはそれなりの主事の定数はありますけれども、それは市町村それぞれの指導行政に対する十分な戦力ではありません。したがいまして、以前に、団体さんの中で、たしか指導主事が来てくれないというふうな御意見をその場所で申し上げた方がいらっしゃいましたが、来てくれないのではなくて、そういう人数の確保が非常に困難な自治体があるということ一つを考えてみますと、規模の小さい自治体に対する手厚いフォローの仕組みといったようなものは必要かと思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、稲田委員、どうぞ。

○ 稲田委員
 私も、合併と市町村の教育行政の問題について発言させていただこうというふうに思っていたわけです。ちょうどうまいぐあいに話が出ましたけれども、私自身、地方で、いわゆる合併協議会の委員とかそういったものをやらさせていただいて、実際、市町村合併の進んでいる中に入り込んで調整役みたいなことをやっているわけですけれども、そこで一番気になりますのは、小規模とか中規模とか、そういう問題とまた別の、いわゆるこの市町村合併によって、特に教育の市町村格差が、より広がってくるのではないかという危惧を最近強く持っております。これはいわゆる、選ばれた新首長が教育に関してどんなマニフェストをつくって、どういう考え方で、いわゆる新しい首長として乗り込んでくるのかということと、教育長とか教育委員のどんな人材登用の仕方をするのか、これにかかっていると思うのですけれども、実際、合併協議会とかいろいろやっていまして、もうどろどろしたものを見ていますと、はっきり言えば、首長も助役も収入役も教育長も、それから議員の大半も失職するわけですね。
 失職して新しい大きな市ができた場合に、いわゆる失職した人たちの救済機関に新しい機関がなる可能性がなきにしもあらずと。例えば地域審議会というものをつくる。そうすると、地域審議会には失職した元町長がそこの中に入ってみるとか、あるいは、やめた町長を教育委員に登用するとか、そういうことが私は出てきそうな感じがしてならないわけです。「俺は教育委員でもよか」と言っている人もおるんですね(笑声)。
 だから、こういうことになってきますと、いわゆる規模の問題ではないわけですよ。だから、12ページの、小規模のところに支援するというふうなことよりもむしろ、県あたりが、ある程度指導力を持った支援をやって、そこのところで、せっかくいい人材を登用して、少数精鋭で自治体の行政能力の向上を図らなければいけないものが、教育までどうかしてしまうということになりかねない。それはやはりどうかしなければいけないと。だから、12ページの内容を小規模に限るのではなくて、全体的な教育力の向上のために教育委員会等々が支援をし、指導するというふうな、ちょっと突っ込んだ、幅を広げたものにする必要があるのではないか、そういうふうに思っております。

○ 鳥居部会長
 今のお三方のお話を伺っていますと、要するにこういうことですね。12ページの最初の「○」の3行、4行ですか、そこには二つのことをはっきり書き分けなければいけないと。市町村合併が済むと、一方では市町村合併で広域化されて、行政はリダンダントというか、今まで行政官であった人たちがそうではなくなっていくわけですから、そういう人たちの問題の後処理のために教育の仕組みを応用されたのでは困ると。
 そうではなくて、むしろそういう場合には教育の目的にかなった教育行政の地方分権と集中化が、なお一層進められなければいけないということを一つ書くことと、市町村合併が進む中で、残されていく小規模の市町村が抱える問題についてどうしたらいいかというのを書くのと、両方別々に書いておかなければいけないということですね。

○ 稲田委員
 そういうことですね。

○ 鳥居部会長
 わかりました。
 先ほど来、挙手がありますのは池端委員と大澤委員なんですけれども、それから次に行きたいと思います。

○ 池端委員
 PTAの件でありましたり、保護者、地域のことでいろいろとまとめていただいております。ありがとうございます。
 ただ、これ本当に、私たちふだん感じている、またよく聞いたりすることなのですけれども、保護者とかPTAの会員というのは、今、教育というものに対しまして漠然とした不信感とか不安感を持っております。これは何かなというと、大きくよく言われますのが、俗に言う学力問題で、円周率が3.14になったり3になったり、また3.14になったり。どっち向いて行ったらええのやろというようなことも実際に言われてはおります。
 それと、教育委員会が見えないという部分でよく聞くところなんですが、先ほど土屋委員のほうもおっしゃっておられましたけれども、教育というものに関して望まれる社会人像、どういう子どもたちを、どう育てていくのか、どういう人間をつくっていくのかという、そういうような教育目標というものが見えないというのが実感です。ですから、教育委員会自身が具体的な、おらが町では、こういう子どもをというような形の方向であったり方針であったりというのが見えないことに関して、我々保護者、地域というのは、どないなっているんやろ、どうしたらええのやろというようなことで、学校や教育委員会に関してすごく不安であったり不信感を持ってしまうというのを今よく聞く話でございます。
 先ほど、「指導」という言葉をいろいろおっしゃっていただいたわけですけれども、我々も、どーんとついてこいと。勉強はもう学校に任しておいてくれ、しっかりと教えます。家のことは家でしっかりやってくださいと明言していただくと、「あっ、ここまで言うてくれてはるんやから、こっちも頑張ろか」という気になるのですけれども、いや、そんなん、テスト前になったら、「先生はこんなんに答えられへんから塾の先生に聞いて」という先生が結構おられるというのも現実です。「これはちょっと、学校では教えられへんから、塾に行ったら教えてくれるやろ」というふうに、簡単にそういうふうにするのではなく、教育というものに対するプライドとか、俺がもう引き受けるんやからついてこいというような姿勢を見せていただきたい。それに対して、「ついていこうやないか」と。これはいろいろな面でも言えるかと思うのですけれども、そのあたりを私たち一般の住民に対しまして、どーんとついていらっしゃいといような形で胸をたたいていただけると、なおありがたいかなと。そういうあたりを明確にお示しいただけるように、何らかの形でお願いができたらなと思っております。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、大澤委員、お待たせしました。

○ 大澤委員
 今、学校はもっと胸を張って、家庭にお願いすべきことはしっかりと言うという、大変心強いお言葉をいただきました。同じような思いがしております。1ページに「住民のニーズ」とか「国民のニーズ」と書いてありますが、「ニーズ」て何だろうと思うんですね。学校にいますといろいろな要望が入ってきます。百八十度違う要望が入ってくるんです。その中でどう教育を組み立てて、本校はこうですと言って説得して切り捨て、こちらをとるかという、その中で私たちは、どれをニーズととらえるかということは日々苦労しているんですね。「ニーズ」という言葉は大変あいまいな言葉のように思えて仕方がないんです。一方的に要求を出せばいいのか、何々してほしい、何々してくれないということだけ言えばいいのかということを大変強く思うわけです。
 ひとしきり前に、「幼児教育の地域のニーズに応じた」という言葉が出ましたね。あのときに保護者が願っていたニーズは、給食を出してほしい、送り迎えは車でやってほしい、延長保育をしてほしい、これが保護者のニーズだったわけです。で、本当に幼児の育ちはそれでよくなったんですか。親元を離れて長時間ほっとかれて、欲求不満、愛情が不足の子がたくさん出たのではないかというのを私は今思っているんですね。ですから、この「ニーズ」というのは極めてくせ者だなという思いがしております。
 ですから、もっと、どういう子どもに育てるのかとか、こういう学校にしたいとかいうことを、家庭、地域、学校がちゃんと共有するという、そのことを根底に据えないと、学校も透明性が足りないとか開放性が足りないとか効率化が進んでいないとか、批判を受けているところがありますから、改善しなければいけないところはたくさんあると思います。そういう努力はしていかなくてはいけませんけれども、学校週5日制が始まったとき、子どもは学校、家庭、地域社会の全体を通じて成長、発達するという一文がしっかりあったわけなんです。それが、何か、どこかに飛んでしまいまして、学校は何をやっているんだ、子どもの規範意識はどうなっているんだ、学力はどうなっているんだ、体もちょっとおかしくなっているのではないか、食教育のことをもうちょっとやらなければいけないのではないかということで、どんどん学校に押し寄せてきているわけです。
 実際に、学校の現場からいいますと、年間200日しか授業日数がないわけです。その教育時間の中で、あれもこれもというのが今の学校の実情です。学校が果たすこと、家庭、地域社会がきちんとやるべきことといったようなことをもう少し強調していただいて、学校へ保護者が参画するとか意向の反映ということは、それはもう必要なことですからいいですよ。もう一方で、家庭が果たすべきこととか。ですから自己評価とか外部評価とかとやりますけれども、それもあわせて私は保護者の家庭教育評価をしたいというくらいの思いでいるんですね。要するに、そのことを通して自分の家庭は何をちゃんとすべきだったかということにも気づいてもらえるような学校評価の仕組みを私はつくっていきたいなというのが、本校の私の思いです。
 全体を通しまして、学校はもっと頑張れ、何をしているんだということは受けとめますけれども、もう少し大きなけたで子どもの教育、育ちをどうしていくか、成長発達をどうしていくか。国民のニーズというのは知・徳・体のバランスのとれた人間の育成だというふうに思うのです。それが、バランスを欠いたり偏ったりというところで行為が進んでいくということについて、いささか疑問を持ったり危惧を抱いたりするところです。
 1ページ目で、細かいところで済みません。「全国的な教育水準の確保と市町村や学校の自由度の拡大」の中の二つ目の「○」に、「市町村や学校が特色を出し、競って」という言葉があります。この言葉ちょっとひっかかるんですね。私は健全な競争原理はいいと思います。だけど、ここで出てくると、よその学校と違うことをする、ほかの市町村と違うことをするということに、何か今しのぎを削っていまして、私はそれよりもむしろ、学校が果たすべきこと、当たり前のことを地道に丁寧にやっていくということをしっかりやっていくときではないかという思いがとてもしているんです。
 いろいろな制度が変わって、そういう意味では各学校それぞれ頑張って、その改革に追いついていかなければいけないということで努力していますけれども、ぽんぽんと進んだ教育改革について、今この改革したことは果たしてどうだったんだろうというような、ちょっともう一回評価をするときが来ておりまして、そういう意味では、これはちょっと、子どもにとってよくなかったのではないかなというような改革だって見られるわけです。ですから、慎重に事を運ぶ、地道に事を運ぶといったようなところも大いに価値があることではないかというふうに思いますので、そういったニュアンスも書き込んでいただけたらと思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 先ほど来、挙手がありますが、渡久山委員、津田委員、それから森脇委員ですけれども、順番にお願いします。

○ 渡久山委員
 先ほど問題になりました11ページから12ページの小規模市町村。確かに今、具体的に行政を担っている皆さんから御覧になったら、規模というのがどれくらいかという関心が非常に、人口規模ということがあると思いますけれども、私はここでは小規模市町村への教育的な支援だとか分権の問題をどうするかということに関心があるように思います。
 私はここで人事権、予算権、教育行政の裁量権をどの程度、県から -国から県もありますけれども、県から市町村へあるいは広域人事等を含めてどうあるべきかというところで、ここの議論があるのではないかというような気がいたしますね。そういう意味では、広域人事の問題、あるいは小規模市町村の問題の場合も、単独市町村だけではなくて中核都市も含めて一定程度の広域の事務組合みたいなものがあって、それが人事権や予算権、ある程度の行政の裁量権みたいなものを県から移譲するということがあってもいいのではないかというようなことが一つ考えられます。
 またもう一つ、これは意見ですから、これで書き込まれていませんけれども、県と市町村とが一緒になった事務組合。例えば中・高一貫の教育行政をしていく場合、高校は県立だと。中学校は市町村立ということであれば、どうしていくのかという場合に、これがよりスムーズにいくには、県と市町村との共同した事務組合というのがあってもいいのではないかというような気がいたします。そういう意味で、ここでは教育行政の観点というものが踏まえられていいのではないかという気がいたします。
 それから、先ほど土屋委員の言われた13ページのことについてなんですが、ここでは一つは、藤田委員が言われた、教育の中立性だけではなくて安定性、継続性を入れるべきだと思うのですね。今私たちの中で非常に議論になっているのは、教育の地方分権という分権問題ですね。そうすると、少なくとも国から市町村ではなくて各自治体、いわゆる地方への分権という場合ですね、これの受け皿になるのは県を含めて市町村ですね。そうすると、どうしてもここの首長が一定程度責任を負うということがあると思うんですね。分権していきますから。そうすると、では教育行政に関して地方の首長が責任を負うという場合、どういうことなのかというと、ここでは私たちがいつも考えているのは、国もそうなんですけれども、教育権という場合に教育の分権と言われる場合は、一般行政と教育行政とは明確に区別されなくてはいけないというようなところで、首長の持っている仕事というのは、分権として起こってくるトータルとしての教育権の中の、教育条件の整備を一番最も大事にすべきではないだろうか。
 なぜかというと、教育内容については一定のナショナルスタンダードがありますし、あるいは教育の機会均等があります。子どもたちの学習する権利というものを保障していくという場合、教育委員会を中心にしてその権限が行使されるだろう。しかしそれがうまくいくには、何といっても校舎を含めた教育条件整備というものが非常に大事になってくるだろう。そういう意味で、県が今の教育予算を含めて義務教育費国庫負担の半分を負担しているというような論理もそこで成り立つのではないだろうかという気がいたします。
 ですから、そこでは教育の中立性といった場合に、一般行政、首長の皆さんは、土屋市長の場合はずっと続いていますから、ですけれども(笑声)、4年で交代していくというのが、まず通常であるとすれば、やはり首長がどの程度教育行政あるいは内容にまで触れていくかというのは非常に困難な部分もあると思うのですね。ですからそこで中立性や安定性や継続性というものを保障していくためには、一定程度、一般行政から教育行政が独立しているということが非常に大事ではないかというように思うのです。
 ですから、これは国における状況と地方自治体における状況とは、そういう面では似たところがあるのではないかというような気がいたします。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 津田委員、どうぞ。

○ 津田委員
 今日は文部科学省の方もたくさんいらっしゃいますが、今、日本にとって一番必要な教育は、小・中・高教育で人間として良い市民であり、かつ先ほど土屋さんが言われた仁・義・礼・知・信を備えていながら、個人としても生きる力を身に付けてやるということが非常に大切ではないかと思います。すべてをそれにかけるべきだと思うんです。だから、そういう教育をする為に教育委員会がどういう使命を果たすかという観点で、教育委員会制度を見直すべきではないかと思うのですね。
 教育委員会は政治的中立ということをモットーにしてつくられたものである。今の世の中に中立ということがあるのかどうか疑問ですね。例えば先ほどの仁・義・礼・知・忠・信・孝・悌というようなことを身に付けさせようというと、きっと「右だ」と言われるだろうと思うのです。あれは右翼だと。歴史的認識にしてもそうです。教育委員会でやっている限り、右でも左でもないものを中立というのだからということだけで、はっきり結論がなかなか出せない。はっきり物を言うと、たちまち抵抗を受けるわけです。
 私の実例でいくと、大阪府の教育委員会のときに、小学校の学級崩壊で先生が胸ぐらをつかんで外へ出したということで、体罰ではないかと処罰問題が起こってくる。その日の夜、テレビを見ていると、京都の伏見工業で、あの山口先生が、八坂の信吾と言われるド不良をラグビーの選手に仕上げている。京都で一番悪いといわれた生徒を奈良で公立高校の先生に育てている。これこそまさに生きる力を与えてやったわけですよ。そのためには山口先生は自分も涙を出しながら殴ったという事実がある。恐らく今の教育委員会なら、山口先生は少なくとも減俸2カ月ぐらいの処分になると思うのですね。
 教育委員会というのが本当に日本のために役に立つ子どもをつくるためにあるんだということになれば、教育委員会自らが、例えば山口先生の努力を認めて暴力を責められたときにカバーしてあげることができないとだめなんですよね。
 今、日本国じゅうの教育を見て、横山委員にごまをするわけではないのだけど、東京が革新的なことをやっていらっしゃる。やはり教育というのは、教育長の力で随分変わると思うんですよ。プロですから。レーマンだから中立だというのはおかしいんですよ。素人だといっても何も中立とは限らない。素人でも右も左もおるわけですからね。
 そういうふうに考えれば、教育委員会を残すとすれば、どういう使命があるかというと、教育長なりの信念に基づく方針によって、あるいは傷つく子どもたちがいたり、先生がいたりした場合に、教育委員会で、そのことが妥当かどうか、救済措置も含めて審議をするというふうな形でやれば、永続性というのも守られるのではないか。
 だから、教育長というのは教育委員会からはっきり分離しないと、そういった意味での形ができません。今一番日本の教育で必要なのは首長や教育長のリーダーシップなんですね。合議、合議でやっていると結局、訳がわからなくなる。中途半端なところでとまってしまうから、日本全体の教育が迷走していく。皆のニーズに合わせるのはカルチャーセンターでいいんです。むしろ教育は今、学校教育、特に高等学校以下の教育をどのようにしてよくするかということに焦点を絞ってやればいいと思うんですよ。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、森脇委員、どうぞ。

〔田村委員退席〕

○ 森脇委員
 少し話を戻してしまうようで恐縮なんですけれども、先ほど学校評価の問題が出ていたと思うのですけれども、私の基本的な考え方としては、権限移譲が進めば進むほど、一つの学校で評価力を上げるというか、評価をするということは、基本的に大事なことだというふうに考えています。教育の世界であっても、今までここがあいまいであったというふうに思われるのです。
 ただ、これは後でまたちょっと触れたいと思うのですが、なかなかこれ、手ごわいんですね。数量化できるものというのは、それは評価しやすいと思うんです。ですから、どうしてもそっちの方へ傾斜するというか、流れてしまいやすいのですが、それでは本当の評価をしたことにはならないという、そういうこともあります。
 それから学校教育というのは、当たり前のことですけれども、長期的な視点がまずベースにないと、どういう人材を、21世紀を担うどういう人間を教育していくかというベースがないと、短期的なものばかりやっても本当の評価には結びつかないということになろうかと思うんですね。ですから、なかなか評価力を上げるということは難しいことなんですが、それに挑むことというのはとても大事なことだというふうに私は考えております。 しかしながら、教育界は義務教育の世界だけではないと思うのですが、そういう評価文化が育っていないというふうにとらえられると思うのです。そこを無理に、自己評価だ、外部評価だというのを制度化してしまうと大変難しい問題が逆に吹き出してしまうような気がいたします。
 しかし今、もう既にやられているわけですし、着手されている自己評価をまずきちんとできるようにするという、ここに -あまり先走ったり、あれもこれもというよりは、そこにきちんと焦点を当てて、やり抜いていくという、それが非常に重要なことであって、しかし仮にの話ですが、もし自分が一つの学校の学校長として任されたときを考えましたときに、なかなか一人の力では難しいと思うんです。したがって、何を言いたいかというと、教育委員会の支援というものを、学校のマネジメントや評価をするというときのいろいろなやり方につきましても、ぜひ支援をもらいたいというふうに思うのですね。だから、そういう存在というのは不可欠のように思います。
 そういう意味で、二十何ページだったでしょうか、もし何か付け加えるような余地があるのならば、21ページの「学校に対する教育委員会の支援」というところに、そうしたものが少し書き込めれば具体性が出てくるのではないかというふうに思います。
 あともう一点なんですが、これはちょっと細かいことを言って本質から若干ずれるかもしれませんが、自己評価を高めるためには、どうしても外部の視点というものを、人がやれというわけではなく、もし自分が学校長であればですが、それを積極的に求めないと、自分の自己評価力は上がらないというふうに思うんです。そうしたときに、今、自分が中学校にいたとしましたら、小学校から、あるいはその次に連結する高等学校、これも外部だと思いますが、日本で必要なのではなかろうかというふうに思われるのですが、いかがでしょうか。大学であれば高等学校、逆にまた高等学校であれば大学の視点という、そういう外部評価を組み込んでいくということが、つまり小・中・高、もちろん大までつながっていいと思うのですが、そうした視点を入れた評価ということが有効性を高めることになるのではなかろうかというふうに、ちょっと感想を持ちました。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 今、最後におっしゃった点はとても大事なことだとは思うのですが、教育委員会制度の改革案の中のどこに入れるのか、とても難しいと思うのですけれども、ちょっと検討させていただきたいと思います。
 それでは、時間をちょっと超えましたので、このあたりで今日の御審議を終わりにさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、これは事務局のほうでまた紹介してもらいますが、あと2回予定しておりますが、実質はあと1回で部会まとめ(案)をまとめたいと思っておりますので、本日いただきました御意見を踏まえまして、皆様の御意見を反映した形で、次の部会まとめ(案)の改良版をつくって次回に臨みたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 次回以降の予定について事務局からお願いいたします。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 今後の日程につきましては、資料2のとおりでございます。次回は12月6日月曜日14時から16時まで開催する予定でございます。場所は追って御連絡させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 また、本日議題になりました部会まとめ(案)につきまして、ぜひ御意見がございます場合には事務局のほうに郵送なりファックスなりの方法で御意見をいただければと考えております。本日は机上のほうに連絡先も書いてございます。初等中等教育各課、教育委員会係の連絡先が書いてございますので、こちらのほうに御意見をいただければ、それも反映した形で次回の部会に資料をお出ししたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○ 鳥居部会長
 大変御熱心な御審議をありがとうございました。
 それでは閉会といたします。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課