地方教育行政部会(第14回) 議事録

1.日時

平成16年10月18日(月曜日) 14時~16時

2.場所

グランドアーク半蔵門 「華」(3階)

3.議題

  1. 地方分権時代における教育委員会の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 鳥居会長兼部会長、國分副部会長、茂木副会長、浅見委員、田村委員、渡久山委員、山本委員、横山委員
臨時委員
 吾妻委員、池端委員、稲田委員、小川委員、片山委員、佐藤委員、千代委員、森田委員、八代委員

文部科学省

 結城文部科学審議官、田中生涯学習政策局長、銭谷初等中等教育局長、月岡生涯学習総括官、樋口初等中等教育局担当審議官、前川初等中等教育企画課長、角田初等中等教育企画課課長補佐、その他関係官

5.議事録

○ 鳥居部会長
 それでは、定刻をちょっと過ぎましたので、まだ御到着でない委員もおられますけれども、本日の会議を始めさせていただきたいと思います。今日は第14回目になりますが、地方教育行政部会でございます。よろしくお願いいたします。
 今日の審議の主たる内容についてあらかじめお話を申し上げたいと思いますが、前回と前々回の部会で「意見のまとめ(案)」をもとにいたしまして御審議をいただきました。今日も、前回までの御審議を踏まえて修正を加えた「意見のまとめ(案)」を用意してございます。これをもとにいたしまして「意見のまとめ(案)」を御審議いただきたいと思っております。前回は「3」章までを中心に御審議をいただいたと考えておりますが、今日は「4」章から最後までの部分について御審議をいただきたいと思っています。特に、首長と教育委員会の権限分担の関係、従来、権限分担の弾力化なんて呼んでまいりましたが、どことどこははっきり分けておいたほうがいいか、どこは移したほうがいいか、どれについては権限分担を弾力化しておいたほうがいいかといったようなことを御審議いただくことになると思います。もう一つは、市町村への教職員人事権の委譲をどう考えたらよろしいかということでございます。こういったことを中心に御審議をいただきたいと考えております。
 それから、後ほど資料1を事務局が説明してくださると思いますが、その中に、前回の審議を踏まえて若干文案を改めたところがございます。それはアンダーラインをしてございますので、後ほど説明してもらうと思いますが、そのアンダーラインの中でも、特に、例の、教育長は教育委員であって、かつ教育長であるという現在のやり方に対して、この前、國分委員からのお話がありましたように、平成10年の中教審の答申では、教育長は教育委員会が選ぶ、そして議会の承認を得る、しかし教育委員ではないという独立した存在であるということだったのですが、実際には、実態としてはそうならなかった。つまり、中教審答申どおりにはならなかったのが現在の状況でございまして、そのことについて今後どう考えていったらいいのかということを、今日の資料1では、後ほど7ページで御説明をいたしますので、お聞き取りをいただきたいと思います。
 それでは、まず、初等中等教育企画課の角田課長補佐から資料の説明をお願いしたいと思います。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 それでは、失礼いたします。資料1につきまして、まず修正点を御説明させていただきたいと思います。
 ページ数で言いますと3ページ目でございます。各論の「教育委員会制度の現状と課題」の中で、教育委員会制度の必要性について触れている、3ページの一番下の段のところでございます。この点につきましては、従来、任意設置という言葉を使わせていただいておりましたが、御指摘も踏まえまして、下線部のような修正を加えさせていただいております。「現在、教育委員会は、全ての都道府県及び市町村に置かれているが、今後、地方自治体の組織編制における自由度を拡大する観点から、都道府県教育委員会と市町村教育委員会の持つ権限の相違や、自治体の規模、学校運営協議会制度の導入状況等を踏まえつつ、教育の政治的中立性等を担保するためにどのような代替措置が可能なのかも含め、教育委員会を置かないことを認めるかどうかについて検討していくことが必要ではないか」、こういった表現の修正を行っております。
 次の修正点でございますが、資料の7ページ目でございます。教育長と教育委員会の関係というところの章でございますけれども、まず「(1)」の「教育委員会の使命の明確化」というところでございます。これまで「事務局」ということで表記しておりましたが、「教育長及び事務局の事務執行状況を監視・評価することであることを明確にすることが必要ではないか」といった表現の修正をいたしております。
 その次の「(2)」の「教育委員会と教育委員長の関係の明確化」というところでございますが、ここにつきましては、御議論いただきました状況を反映いたしまして全面的に書きかえを行っております。読み上げさせていただきますと、「現行制度では、教育長は教育委員の中から教育委員会が任命することとされている。この制度のもと、教育長は教育委員を兼ね、教育委員会の会議に出席し議事に参加している。このような仕組みは、教育長について、教育委員として任命される際に議会同意が必要となり教育長の選任がより慎重になること、教育委員として任期が付されることで安定的な事務執行が可能となること、特別職の身分を有することにより適材確保が期待されることなどの利点があるが、その反面、事務を執行する教育長が教育委員会の議事に参加するため、教育委員会と教育長の関係が不明確となるという問題点があるとの指摘もある。また、教育長の選任は、教育委員の選任の過程で実質的には首長が行っている状況もある。このため、教育長の執行機能と教育委員会の意思決定機能を分け、それぞれの関係を明確にすることが必要ではないか。この場合、教育長の選任について、首長の権限を明確にすることが必要ではないか」、このように修正をさせていただいております。
 あわせまして、御議論をいただきました「(3)」の「教育委員会の自己評価」のところでございますが、評価の主体といたしまして、教育委員会が地域住民や議会、首長に対する説明責任を徹底するとともに、教育委員会自体の活性化を図るために、目標を設定し、実施結果について評価をしていくということが必要ではないか。このため、教育委員会が教育長以下の業務の状況について評価を行うとともに、教育委員自身も、委員としての活動について評価されるようにしていくことが必要ではないか、このような修正をいたしております。
 以上が、この「意見のまとめ」につきまして、前回の部会から比較いたしました修正の箇所でございます。
 引き続きまして、本日お配りしております資料の2と3につきまして簡単に御説明申し上げます。先ほど会長のほうからございました、主な論点になるのではないかということの一つといたしまして、教育委員会と首長との権限分担につきまして、以前この部会でも資料をお示しし御説明しておりますが、さらに、本日の議事に資するために簡単な資料を御用意させていただきました。現状についての説明でございます。
 まず、市町村における教育委員会と首長についてのそれぞれの権限でございますが、教育委員会につきましては、まず学校教育に関する事務、市町村立学校といたしまして、主に小学校、中学校、幼稚園、大きな市でございますと高校を設置しているところもございますが、主に小・中、幼稚園を設置管理している。それに伴います学級編制、教育課程、教科書採択等の事務を行っているわけでございます。
 二つ目といたしまして、社会教育に関する事務といたしまして、公民館、図書館、博物館などの設置管理、事業の実施を行っております。
 また、文化に関する事務ということで、文化財の保存・活用、文化施設の設置・管理、事業の実施を行っている。
 さらに、スポーツに関する事務といたしまして、スポーツ施設の設置、管理、事業の実施をしております。
 一方、首長といたしましては、これは大きな市に限られるわけでございますが、大学を設置・管理するという事務、これを学校教育に関する事務として行っている市町村もございます。また、財務に関する事務といたしまして、教育財産の取得・処分に関する事務、契約、予算についての事務を行っているところでございます。
 続きまして、都道府県でございますが、学校教育に関する事務といたしましては、県立学校、主に高等学校、あるいは盲・聾・養護学校など特殊教育諸学校について事務を行っているところでございます。また、市町村の行う学校の設置・管理に関しまして、高等学校、幼稚園などの設置・廃止の認可でございますとか、あるいは県費負担教職員制度によりまして費用を負担するほか、その人事・研修、あるいは幼稚園教諭の研修、さらには教科書採択地区の設定を行っています。
 また、社会教育につきましては、公民館以外の図書館、博物館などについて設置・管理あるいは事業の実施を行っているところでございます。
 文化・スポーツにつきましては市町村と同様でございます。
 このほか、教育に関する法人に関する事務ということで、右の首長が所管いたします学校法人あるいは宗教法人以外の法人につきましての事務を担当しております。
 一方、首長でございますけれども、学校教育に関する事務といたしましては、大学の設置・管理、県立大学ということになると思いますが、この事務を行っております。また、私立学校を所管しているということで、私立小・中・高等学校あるいは私立幼稚園の設置・廃止の認可を行っております。
 また、財務については市町村と同様でございます。
 さらに、教育に関する法人に関する事務といたしまして、学校法人あるいは宗教法人の所轄を行っているというところでございます。
 この教育委員会と首長との権限分担につきましては、今、机上に御用意しておりますハードファイルの資料の28のところに、以前御説明させていただいた資料が入っておりますので、後ほどあわせて御覧いただければと考えております。
 次に、資料3について御説明申し上げます。もう一つの大きな論点でございます、公立小・中学校の教職員人事における都道府県と市町村との関係について整理をした資料でございます。一番左が一般の市町村、真ん中が政令市、一番右が中核市の場合の都道府県と市町村との関係ということで整理をいたしております。
 御案内のように、都道府県につきまして、公立小・中学校の教職員につきましては県費負担教職員制度がございまして、都道府県といたしまして給与負担をするほか、任命行為といたしまして、採用、異動あるいは分限・懲戒処分を行っているということでございます。また、このほか、勤務評定の計画の策定、あるいは勤務条件に関する条例の制定、任命・分限・懲戒に関する条例の制定等を行っております。また、研修といたしまして、初任者に対する研修でございますとか、あるいは教職に入りまして10年経験をした者に対する研修ということを都道府県として実施しております。また、研修計画全体の樹立をしているところでございます。
 一方で、一般の市町村のところでございますが、人事につきまして都道府県に対し意見具申を行う。また、服務監督、勤務評定の実施、あるいは研修の実施をしております。非常勤講師につきましては、これは県費負担教職員になっている非常勤講師を除くわけでございますが、任命、給与負担を市町村独自で行っているという状況がございます。
 以上が一般の市町村の場合でございますが、政令指定都市につきましては、このうち任命と採用、異動、分限・懲戒処分、さらには研修の実施ということで、初任者あるいは10年経験者研修などの事務が都道府県から委譲をされているという状況でございます。
 また、中核市につきましては、このうちの研修の実施につきまして、都道府県から委譲がなされているという状況でございます。
 次の2ページ目でございますが、これは参考でございますけれども、最近の県費負担教職員の人事権に関する提言といたしまして、義務教育の改革案ということで8月に出されましたものの中にも触れているということ、さらには、この9月に、「これからの教育を語る懇談会」におきまして第一次まとめが取りまとめられましたが、その中でも、「(3)教員人事や学級編制など市町村・校長の権限の強化」ということで、「一定規模以上の市(当面、中核市程度)には教員の人事権や学級編制権を移譲する」、このようなことが指摘をされているところでございます。
 これにつきましては、先ほどと同じように、机上のハードファイルの資料の33番のところに、関連する資料、以前お配りしたものを整理しておりますので、あわせて御覧いただければと考えております。
 事務局からの資料説明は以上でございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 資料1に戻りますが、資料1、いろいろと御審議をいただかなければならないことがございまして、冒頭にもお話ししましたように、今日の資料2と資料3にかかわることがとても大事なことなので、今日はたぶんそこに審議が集中すると思いますが、前回、ほとんどの時間を教育長と教育委員会委員としての教育長の身分との関係についていろいろな御意見を交わしていただいたわけでございます。そのことについては、今、資料説明にありましたように、資料1の7ページに大きな書き直し、修正が行われていますので、前回の議論で議論をしていただいたところを、こんな形で「意見のまとめ(案)」としてよろしいかどうかについて、少し時間をとって御意見をあらかじめ伺っておきたいと思います。いかがでございましょうか。
 実は、事務局と私も、これの修文についてはいろいろと頭をひねったのです。結局、頭の中にきちっと置いておかなければいけないのは、平成10年に制度改正をする前に、その下敷きになる中教審答申があった。その中教審答申に基づいてそのままやっていれば、今の制度とは少し違うものになっていたはずなのに、こうなっちゃった。こうなっちゃったというのは、教育委員の1人として教育長を位置づける。なぜそうなったかというと、ここから先は公的文書に書きにくいことなので書いていないのですけれども、要するに、教育長に特別職の身分を与えるかどうかについて、当時の中教審答申の本意は、教育委員会とは独立した存在である教育長、教育委員会が選んで議会の承認を得て就任していただく教育長に特別職の身分を与えることを前提として議論していたのです。ところが、それならば、特別職の身分を1人、すべての市町村で増やすことになるのでという他の省からの反対が強くあって実現しなかったということがあって、妥協案として、それでは、教育長は教育委員を兼ねれば、教育委員は特別職ですから、特別職たる教育長が誕生するということになって、こうなったという経緯があるわけですね。
 したがって、今回そこのところのやりとりは、今後実際に新しい制度をつくっていく上で、どのようになるかが読めませんので、読めませんというのは、昔で言えば自治省、今で言えば総務省はどんな反応をするかがなかなか難しくて読めないところですので、この中教審としてはそのことを書かないで、むしろこのような書き方で教育委員会と教育長とを切り離す考え方があるということをうたってはどうかという書き方で一応書いてみたわけです。
 そのことを踏まえて、もし御意見がいただければ幸いでございます。何かございましたら、どうぞお願いいたします。
 どうぞ、横山委員。

○ 横山委員
 先般もこの部分は相当突っ込んだ議論をして、事務局サイドから事の経緯を聞いて初めてわかったのです。実は私自身、教育長に身を置きまして、何でこんなおかしな制度になっているのかというのがわからなかったのですよ。いみじくも今、鳥居会長が、特別職たる教育長と言いますが、教育長は一般職なのです。例えば教育委員としては、それは確かに特別職ですが、教育長に選任された途端に一般職になってしまうのです。まず法理論的にこんなばかな話はあるのかというのが一つですね。
 この間から各委員の先生方の議論を聞いておりますと、確かに執行機関たる教育長が議決権を持つというのは、確かに組織論的におかしいだろう。仮にこれを分けるとすると、かといってその教育長を議会同意から外したら、これまた教育長が全く権限のない一般人事異動の中でやられていくだろう。とすると、教育長を議会同意の職としてやはり位置づける必要がある。とすると、これは当然特別職でなければならないわけですね、ポスト的には。それが増えたからといって、それを総務省が何で判断するのか私はわかりませんが、増えたからといって、教育長は要らないという論にはならないわけですよ。この辺は一回やはり整理していただけませんと、これは全国の市町村も含めた教育長の立場というのは非常に今不安定。不安定というのではなくて、不可解なのですね。今後、教育行政を教育委員会という組織でやっていく以上は、ここはやはりはっきりさせたほうがよろしいかと思います。この文章でも非常にわかりにくいのですよ。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 ほかによろしゅうございましょうか。
 どうぞ、森田委員。

○ 森田委員
 ただいまのところと関連いたしまして、私も文章で御苦労されたなというのは随分感じたところでございますけれども、特にここのところの意味がいま一つ私自身理解できませんでしたのがこの一番最後のところでして、「この場合、教育長の選任について、首長の権限を明確にすることが必要ではないか」というのは、どういう形で明確にするということをお考えになっていらっしゃるのか。これによりまして、今のお話ともかかわってきますけれども、かなり重要な違いが出てくるのではないかなと感じたのですけれども、ここのところを少し御説明をいただければというのが発言の趣旨でございます。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 お答えさせていただきます。前回の御議論の中でも、教育長の選任につきましては一体誰が責任を持って行うのかということにつきまして御議論があったわけでございます。その中で、現在の状況でございますが、教育委員としては首長が選ぶわけでございますけれども、制度的には教育委員会の中で教育委員が互選によって教育長を選ぶという仕組みになっているわけでございますが、そこの教育長、実際には教育委員として選ぶ段階で、首長が実質的に選んでいるではないか、そこが非常にわかりにくい、はっきりすべきではないかと、こういった御審議ではなかったかと考えております。
 それを踏まえまして、具体的にこの条項をこう変えるというところまではちょっとまだイメージしながら文章化したわけではございませんけれども、教育長の選任につきまして、実質、現在、首長が選んでいるという状況につきまして明確にするということが必要ではないか、こういうことで文章化させていただいた、こういう経緯でございます。

○ 鳥居部会長
 角田さん、これは文章の文脈から言うと、「このため」という最後の3行ですが、「このため、教育長の執行機能と教育委員会の意思決定機能を分け、それぞれの関係を明確にすることが必要ではないか」、そういうふうにした場合というのがこの場合ですよね。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 そういうことでございます。

○ 鳥居部会長
 そういうふうにした場合には、教育長の選任について首長の権限を明確にするというのは、もう首長が選ぶという意味だというふうに読んでよろしいかということではないでしょうかね、森田先生のは。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 そういうことでございます。

○ 森田委員
 そういう考え方もあろうかと思いますけれども、ただ、その場合に、普通、組織論で、特に人事の仕組みの場合には、当然のことながら、指揮監督権と任命権というものが乖離した場合に、問題が生じやすいわけですね。この場合も事実上教育委員会の指揮監督を受けながら、任命が首長さんということになりますと、果たしてその人が教育委員会の指揮監督にきちんと服するかどうかとか、そういうことも含めまして、制度としてはやや不自然な気がしないでもないのですけれども、その辺について、あえてそういう形が望ましいというお考えなのかどうか、あるいは、この辺につきましても、もう少し何らかの議論が必要ではないかなと思います。

○ 鳥居部会長
 何らかの議論がさらに必要であることになると私も思います。実は、角田さんと私とだいぶ議論したのです。こういうことかなと思ったけれども、今日は書けていないというのを申し上げますと、要するに、教育長を選ぶのは教育委員会だ、そしてそれを議会が承認する、そして、特別職としては首長が任命する、しかし、だめなときの罷免の権限なのか、あるいは罷免を提案する権限なのかはやはり教育委員会に残るというようなことではないかなという話をしてみたり、その辺のところはむしろもうしばらくこの中教審で御審議いただいて、落ちつくところを見定めたい、こんなふうに考えていたのですが、そこまで今日は書けなかったというのが実態であります。

○ 森田委員
 わかりました。いずれにいたしましても、明確にされるべき権限というものが何かということは大変重要だということだけ言わせていただきます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 どうぞ。

○ 稲田委員
 実は、教育長の扱いといいますか地位といいますか、そういったものが首長の考え方でかなり変わってくるといういい実例が、実は佐賀市にあるわけです。この前もここで発言しましたけれども、佐賀市の教育長は、品川の小学校の現職校長を持ってきた、いわゆる来ていただいたわけですけれども、市長の考え方としては、佐賀市全体のまちづくりの土台となるような義務教育をやってほしいと。いわゆる市全体の視点で教育を見つめ直したいというような考え方ですね。そういうふうで55歳の現職校長に来ていただいたわけですけれども、そのためにわざわざ給与を改定しまして、これを議会にかけて、助役以上の給与を与えたわけです。
 これは、やはり一つは、今まで佐賀市の教育長が、義務制の小学校、中学校の校長先生を終わられた方を充てていたものですから、やはり給与がそう高くなかった。現在もらっていらっしゃる給与と差が出てきたために、それを補償するというか、そういう意味もあったのでしょうけれども、いわゆる助役以上の、今まで前例のない扱いで教育長に来てもらっているわけです。だから、そういうふうになってきますと、それぞれの首長の教育長人事あるいは教育に対する考え方の違いといいますか、そういったものが出てきますので、やはりかなり柔軟性を持った扱いといったようなものが今後出てくるのかな、そういうふうに思っています。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 どうぞ。

○ 茂木副会長
 質問か意見かちょっとわからないようなことを申し上げますが、執行機関と意思決定機関というのは明確に分ける必要が理論的にはあるのですけれども、しかし、企業の場合には、それがちょっとはっきりわかっていないのですね、それはいいか悪いかは別にして。取締役会というのは意思決定機関でありますが、社長は入っているのですね、取締役会の中に。執行機関の長である社長ないし会長が取締役会の中に入っているわけです。アメリカなんかの場合には、ほとんどが社外取締役ですから、1人か2人ですね、執行機関の会長や社長が取締役会の中に入っているというということなのでありますが、日本の場合には、社外取締役は少ないですから、ですから執行機関としてはたくさん取締役会の中に入ってしまっているわけですね。意思決定は、取締役として意思決定に参加する。執行は別の立場で、執行役員の立場で執行するという形になっているわけなのですが、そこら辺が、執行と意思決定をやる人を完全に分離しますと、かえって仕事が進みにくいというのが企業の場合に言えることなのです。しかし、教育の場合にどうなのか、私はよくわかりませんが、本当に執行機関と意思決定機関を完全に分離するという、理論的にはそれは正しいと思うのですけれども、それが本当に必要なのかどうか、ちょっと伺いたいと思うのが一つです。

〔銭谷初等中等教育局長出席〕

 それから、教育長の任免の話ですが、私は、教育委員会を持つかどうかというのは、その県とか市によって決められるわけですね。この提言ですとそうなっておりますが。ですから、もし教育委員会がなければ、当然、首長が教育長に教育長的な人を選ぶということになると思うのですが、教育委員会があった場合、私は、教育長を首長が選ぶというのはちょっとおかしいのではないか。首長が推薦することはできるのですね、首長はもちろん推薦するわけですけれども、しかし、それを決めるのはやはり教育委員会ではないか。それから、首長が首にする場合も、首長はこの人をやめさせるべきだという意見を言うことは当然できるわけですけれども、しかし、それを決めるのは教育委員会ではないか。そのほうがすっきりするのではないかという感じを持ちますけれどもね。ということは、教育委員会がないことも選択できるわけですから、ですから、教育委員会があれば、そういう形のほうがいいのではないかと思いますが、一つ質問と一つ意見です。

○ 鳥居部会長
 前半の御質問のほうは、私が交通整理のためにちょっと申し上げますが、今度の商法改正で委員会等設置会社に移行した会社の中で、社長を取締役会から外している企業というのがあるのです。要するに、社長は執行役社長なのです。それから取締役社長という会社もあって、今、そこのところは両立てになっています。

○ 茂木副会長
 しかし、社長が取締役を兼ねていない会社はほとんどないですよ。

○ 鳥居部会長
 東芝はそうなのです。岡村さんは取締役ではない。執行役社長なのです。

○ 茂木副会長
 取締役会には出ないのですか。

○ 鳥居部会長
 取締役会では、取締役会の向こう側に執行役がずらっと並んで、取締役の言うことを聞く。

○ 茂木副会長
 それは珍しいですね。

○ 鳥居部会長
 そういう会社も出始めていますので、大いに参考になると思うのです。
 今のお話ですと、教育委員会が意思決定を行うときに、まさに東芝の例がいい例ですけれども、取締役会は相当のディテールにわたることについては、執行役が議長になっている経営決定会議に任せることを決めるのです。同じことで、教育委員会が、大事なことについては教育長以下の教育部局に任せるということを決めることがあるのではないでしょうか。そうすることによって、意思決定機能を果たしながら、ディテールにわたっては相当のフリーハンドを与えて、教育長に思う存分活躍していただくということが考えられるのではないかなと思います。

○ 茂木副会長
 それは可能ですね。

○ 鳥居部会長
 後半については、おっしゃるとおりだと思いますので、先ほども私ちょっと申しましたけれども、そういう考え方があり得ると思います。
 どうぞ、片山委員。

○ 片山委員
 今、首長としてその人選にかかわっている者として、ちょっと感想を言わせていただきますと、今の仕組みはすごく変なのですね。変だというのは、私は議会に提案するのは、教育委員のうちの1人を提案するのですけれども、しかし、もうあらかじめこの人は教育長だよということは内々決まっているわけですね。内々というか、実質決まっているわけです。ですから、ある意味で八百長をやっているようなところがあるのですね。建前は、委員の1人を選任します、全員の委員で互選で決めてください、こういうことになるのですけれども、実際はそうはならないですね。もうちゃんと決まっていますから。だから、こういう八百長状態というのはやはり解消しなければいけないと思うのです。 ではどうするかということなのですが、やり方は二つあって、長が特別職として教育長を選ぶというやり方もあると思います。それから、教育委員が委員でない教育長を選ぶ、それで議会の同意を得るというやり方もあると思うのです。一長一短あるのですが、今の教育委員の選任が、もともと長が任命していますから、それが任命された人がまた任命するというのは、非常にデモクラシーから遠くなる可能性があります。だから、原理的には、私は、デモクラシーの原点に立てば、長が任命するほうがいいだろうと思います。ただし、さっき森田さんが言われたように、長が任命した人が教育委員会の指揮監督を受けるというのはどうなのですかという問題もやはり確かにあると思うのですね。例えば、長が、教育委員会の同意を得て議会に選任同意を求めるとか、あらかじめ教育委員会の意見を聞いて、そこで教育委員会の承認を得た上で長が議会に対して選任の承認を得るというようなことだったらその辺が解消できるのかなという気がするのです。
 それから、さっき会長さんが言われた、活字にできない経緯というのは、私も伺っていて思わず笑ってしまったのですけれども、特別職が地方団体に一つ増えたからといって、何がその妨げになるのかよくわかりませんけれども、やはり地方教育行政の在り方から見て、委員でない特別職としての教育長という存在があっても一向に構わないと私は思いますし、今の状態よりはむしろそのほうがすっきりしていいだろうと思うのです。何で特別職でなければいけないかというかというのは、これはいろいろあるのですけれども、私は、教育長は特別職であったほうがいいと思います。それは、やはり地方教育行政を実質取り仕切る役ですし、それから任期というのはあったほうがいいと思うのです。いつかえられるかわからないというような存在よりは、4年なら4年あなたの責任でちゃんとやってくださいよ、それはちゃんと後で評価されますよといったほうが、たぶんモチベーションが高くなると思うのです。ですから、ほかにもありますけれども、教育長は特別職であったほうがいいと思いますけれども、今のような状態はちょっと八百長ぎみで、長としては非常にやりづらいところがあります。

○ 鳥居部会長
 では、千代委員、それから渡久山委員の順にお願いいたします。

○ 千代委員
 今、片山委員から、自治体のほうの問題点を出されました。私も、この間、文部科学省のほうから、教育委員会の教育長の問題について、特別職を多くしたくないというようなことで逆転されたと聞いて驚いたわけでございますけれども、現実の問題として、特別職としてのほとんど待遇を与えているようなのが現在の市町村の教育長の在り方でありますし、それなりの報酬を与えております。したがって、この報酬の問題について特に大変大きな数字を加算しなければならないということは、今後もあまりないのではないかと思っております。
 問題は、教育委員の中の教育長として私ども首長が指名します場合に、本来的には教育長になってもらいたいという方を暗黙のうちに指名しているわけで、それは議会で承認されるわけです。そうすると、教育委員会をその方が中心になって動かしていくということになるわけですが、もう一方で、教育委員長という役職もありまして、これとの関連も出てくるわけです。だから、今度これを、独立した執行機能を持っている役割として分離する場合は、教育委員の1人が欠けるわけでございますね。だから、5人のところは4人になりますから、教育委員長を入れて、さらにもう1人増やすということが、やはり4人というのはやりにくいだろうと思いますので、もう少し増やさなければいけない、そういう組織の問題も出てくるだろう。大きな自治体では6人までいいというような問題もありますけれども、一般的にどうか、こういうこともあります。
 ただ、私どものように人口3万の市町村になりますと、教育委員会の人材をどこまで充実させるかということにおいては、非常に問題が市町村によっては出てくるのではないか、こういうところがあります。ここの後段において、教育委員会の設置の可否については云々ということがうたわれておりますので、それで活用していけばいいのかもしれませんけれども、個々の市町村の教育委員会の組織の在り方というのをやはりもう少し検討しなければならないだろう、こう思っております。
 それと同時に、この「○」が二つついております3行のほうの、「この場合、教育長の選任について、首長の権限を明確にすることが必要ではないか」という文言では、また適当な、格好の判断をされて、この審議会の意向が上部では十分反映されないのではないかという大変なおそれを私は持っております。また同じことが繰り返されるのではないかというような心配も私は持っている次第です。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、渡久山委員、どうぞ。

○ 渡久山委員
 私は、基本的には、やはり教育長と教育委員を分離すべきだと思うのです。今、片山委員からも、横山委員からも、非常に教育長あいまいなんですね。あるいは、片山委員は何か八百長だと言われるように。一般的に見ますと、誰が教育長になるのかということが非常に現場でも関心があるのですね。しかし、その人が教育委員であるということの必要性というのはまたあまりないと思うのですね。それよりは、やはり原則に戻って、教育委員は教育委員としてやはりきちっとレイマンコントロールの立場に立つ、教育長は教育長としてそれなりの教育行政に責任を持つという、やはり明確に分けて物事を考えたほうがいいと思うのです。ですから、ここの書き方では少し本当にわかりにくいので、今、会長さんも言われたけれども、そういう努力はいいのだけれども、その努力の必要があるかないかということも本当に真剣に考えなくてはいけないと思うのです。これが一つです。
 もう一つは、最初に教育委員会法ができたときですね、戦後、その後また1951年、1956年から1958年に変わりましたですね。そのときに非常に、逆に教育の地方分権、あるいはまた教育の一般行政からの独立性、それが形式的にはだんだん失われていった時代だと思うのです。ですから、今、地方分権と言われる場合、やはり教育行政も地方分権化していくということを考えたときに、やはりこれは大胆に、地方における教育行政の分権はどうなるのかということをやはり見るべきだと思うのです。
 それから、首長との、一般行政との独立性ですね、これはやはりきちっと整理しておいたほうがいいと思うのですね。ただ、その中には、私は、一番今教育委員に権限がないのは、財政権だと思うのです。結局、財政的な独立性をほとんど持っていないものですから、非常に従属的になる。ですから、あるところの教育委員会は、全国的に決められた、ある体育の大会なのですけれども、決めても結局、知事が、うちは金がないからやりませんといって、教育委員会が決めてもやらせない、やれないということも実際起こってきたのです、過去に。だから、今後も起こる可能性があるのですね。
 ですから、そうなってくると、やはり財政権をどの程度教育委員に持たせるかということも一つの分権の問題として考えたほうがいいのではないか。背景としてですね。と思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 吾妻委員、どうぞ。

○ 吾妻委員
 教育長が教育委員であり、事務局、執行機関のトップであるというあいまいさを、今幾つか御意見をいただきましたし、この間の議論から、それから先ほどの鳥居会長からの経過の説明で、大体そういうふうかなとは思っているわけですが、そのあいまいさというのは、逆に言うと、執行機関のトップとして事務局職員を指導、叱咤激励しながら事務を執行していく、その上で、教育委員として意思決定機関に教育長が入っていくという、その、教育委員であり教育長であるというあいまいさが、逆に言うと、両方に教育長として責任を持って入っていくという、両方の絶妙なバランスの中で教育長は仕事をしていると私は思っております。
 ですから、御意見、分離したほうがいいという方が多いようですけれども、この文言の中に、教育委員会制度そのものも、任意性という言葉を今回使わないということになったわけですけれども、置くか置かないかという表現になっているわけですから、教育長が教育委員を兼ねるかどうかというものも、断定的にここで分離するということではなくて、そういうふうにするかしないかの選択の余地を各市町村に、あるいは都道府県に持たせるということも含めて表記できないかということを一つ思います。

〔結城文部科学審議官退席〕

 もう一つは、教育長がたとえ暗黙のうちに首長の意思を受けて教育委員会の中で教育長に選任されるにしても、教育委員会で正式に教育長に選任された以上は、やはり教育長であると同時に、教育委員というものを背中に背負って、首長部局の職員とのいろいろな関係、あるいは首長と直接ぎりぎりの折衝をするようなときに、教育委員というものを背負っておかないと、今ちょっと御意見が出ました財政面も含めて立場が弱くなりはしないかなという不安を抱いているということも発言させていただきます。

○ 鳥居部会長
 今、吾妻さんのおっしゃった、教育委員会の中で教育長も一緒に参加して議論するという、絶妙のという表現がありましたけれども、まさにその絶妙の関係というのは、教育長が仮に独立した特別職として存在していて、教育委員会が審議を行うときに、その教育委員会に出席する仕方で十分実現できるのではないかという気がしますけれども、いかがでしょうか。

○ 吾妻委員
 正直言いまして、私も現職の教育長でして、そういう場面を想定して出席したことがこれまでございませんでしたので、どういう状況になるのかなと思いますが、教育委員会といっても、毎回このことに関して以外でも話題になっているように、何十万、何百万都市の教育委員会から、本当に非常に人口の少ない町、村の教育委員会もあるわけでして、そういう中での教育長の存在というのはやはりかなり高いものがあるのではないかなというようなことも、私どもの町村教育長会の話し合いの中でもいろいろ話を伺っていますし、微妙な違いがあるかなと思っておりますけれども。

○ 鳥居部会長
 わかりました。
 この問題、前回もこれに集中して、ほとんど全部の時間を使い尽くしたのですけれども、おしまいまで行ってしまう可能性がありますので、このあたりで1回ちょっと切らせていただいて、次の議題に移りますが、この今日の7ページの扱いについては、とりあえずこの表現にまでは来たということで、さらにそれを一歩進めて、今日何人かの方から御意見があった、割り切り方に踏み込むかどうかということについて少し検討させていただきたいと思います。

〔樋口初等中等教育局担当審議官退席〕

〔銭谷初等中等教育局長退席〕

 それでは、次の9ページ以降、全体を見渡してみていかがでしょうかというのが本来の議事の進め方だと思うのですが、全部眺めてみても話が散漫になるばかりでございますので、資料2にあります「教育委員会と首長との権限分担について」、この問題と、それから資料3にあります「公立小中学校の教職員人事における都道府県と市町村との関係」、特に一般の市町村と中核市、さらには政令指定都市との違いをどんなふうに考えていくかという問題について御審議をいただきたいと思います。
 それで、「首長と教育委員会の権限分担の弾力化」というふうに呼んでいますが、これは資料1の9ページ、ここのところをどんなふうにこれからまとめていくかということでございます。資料2を御覧になりながら、この9ページのまとめ方について御意見をいただきたい。資料1の9ページと資料2の両方を御覧いただきながらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 今日は藤田先生がお休みでございますけれども、藤田先生から、今日は書面で意見を申し述べたいということで、先ほどお預かりしたものが届きましたので、お配りさせていただきます。

○ 鳥居部会長
 角田さん、この今配られた藤田先生の意見の中で、今私が御審議いただきたいと御提案した、市長と教育委員会の権限分担のところはどの辺になりますか。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 これにつきましては、最初に「1」から「4」まで、「記」の前のところでございますけれども、この「2」のところでございます。具体的には、以前、藤田委員から御意見をいただいたときに配られましたレジュメが後ろにくっついてございますけれども、このレジュメの「(5)」番目、この資料でございますと2枚目の一番下の段でございますけれども、「都道府県と市町村・学校との権限関係の再編~何をどこまで市町村・学校に委譲するか?」、ここが該当すると考えてございます。

○ 鳥居部会長
 教育におけるコーポレートガバナンスの基本単位を政令指定都市、それから中核市、特別市のレベルまでおろすか、それ以外は事務の共同処理方式を検討するかというのが一つですね。それから、人事権、「広域人事のメリットは大きい」、「広域人事を前提に、市町村・学校の裁量権・イニシアチブをどう拡大・促進するか」ということを言っておられますね。それから、先ほど渡久山委員からもお話がありました、次の紙にいきますと、「予算権をどうするか」という問いかけが出ています。それから、「4」で「学校・校長の裁量権・イニシアチブをどう拡大・促進するか」と。だから、藤田先生の目配りは、資料1の9ページよりちょっと広い範囲で問題提起をしておられる。意見は具体的にイエス、ノーとか、A、Bというふうにはおっしゃっていないところがありますけれども、非常に参考になるペーパーをいただいたと思います。
 うんと細かい話から入ってしまって恐縮ですけれども、例えば、市町村及び都道府県の教育委員会が、文化財の保護ということについては、全面的に今は所掌事項になっているわけですけれども、これを首長部局もやるべきだという積極的な御意見はおありになりますか。
 どうぞ、片山委員。

○ 片山委員
 これは、私は実際一生懸命やっているのですけれども、「(1)」のところに書いておられますけれども、首長部局の行う開発行為との均衡で、教育委員会にあったほうがチェックがきくだろうというのは、理念的にはそうだと思うのです。ただ、現実は、従来のよく見られた教育委員会ですと、あまりパワーがありませんから、首長のほうの意向が圧倒的に強く通ってしまうのですね。首長は、文化財は自分の仕事ではないと思っていますから、ふだん開発系の話ばかり聞いていて、保護のほうは自分ではない、こう思うと開発のほうがずっと通ってしまう。むしろ今のほうがあまりチェックはきいていないのではないかという気がするのです。私なんかでしたら、むしろ文化財保護も自分の所掌であったら、そこでバランスをとって、どっちを優先させるかということを真剣に考えると思うものですから、必ずしも分けていたから対抗的関係になるとは限らないと思うのです。
 現実に、やはり文化財行政は、県によって違いますけれども、どこの県でも、実は教育委員会の中でも弱い存在なのですね。教育委員会は圧倒的に教員中心で構成されていますから、だから教育委員会自身が教員中心のシフトになっていますから、ですから、図書館とか文化財とか社会教育とか、そういうものは教育委員会の中でも外野席にいるわけですね。ですから、私なんかもむしろ教育委員会の文化財行政にハッパをかけて、その充実をアドバイスして、予算も積極的につけたという感じなのです。ですから、この辺は非常に悩ましいところで、理念的にはこうなのですけれども、実態はそうでもないなという気がするのですけれどもね。
 ですから、首長によりますけれども、私の場合だったら、自分の手元にあったほうが、文化財保護とか文化行政ですね、そういうものはもっとうまくできるのではないかなという気がするのです。しかし今は実は教育委員会も非常にうまく歯車が回ってくれるようになりましたから、教育委員会にあって私は全然支障も異論もないのですけれども、一般的には首長にあったほうがいいというケースもあるのではないかなという気がします。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございます。
 佐藤委員、どうぞ。

○ 佐藤委員
 文化財行政について、実は私、県の社団法人の文化財愛護協会の会長になっているものですから、学校教育とのバランスといいますか関係で、最近、文化財保護の思想・普及というのが学校教育の中に非常に多く取り入れられるようになりました。ここ2~3年来非常に色濃くカリキュラムの中に入ってきております。そういったことは、勢い郷土愛とか、あるいはふるさとに対する子どもらの意識を色濃く教育していくといったようなことのために非常に強調されてきております。そういう点では、文化行政、この有形無形の文化財についての行政部門は教育委員会のほうが、私は学校教育との絡み、あるいは社会教育との絡みからいいまして適切ではなかろうかと思っております。

○ 鳥居部会長
 どうぞ、八代委員。

○ 八代委員
 今の御意見と正反対のことを申し上げさせていただきたいと思いますが、基本的に私は、地域行政というのは選挙で選ばれた自治体の長が責任を持つべきことで、ただ、それが非常にうまくいかないと考えられる場合、例えば教育の政治的中立性みたいなことで初めて他の独立した組織がその分野に限って責任を持つという考え方になっているのではないかと思われます。文化とかスポーツというのは、確かに学校教育と密接な関係にもありますが、同時にやはり地域の住民、特に教育と関係ない住民についても、地域開発あるいは地域の市民の意識というか、幅広い観点からやはり議論されるもので、学校だけの問題というふうにするのはやはり行き過ぎではないだろうかと思いますので、やはりそこは首長の責任ということが大事ではないかと思います。
 特に今、地域の伝統というようなものが失われつつあるときに、それをやはり住民自身の手で守ろうという動きも同時に強まっているわけで、やはりそこは、教育委員会の仕事というのは本来の教育に専念するというか、それ自身も本当は規制を外していただきたいと思っているわけなのですけれども、少なくとも文化、スポーツというのはやはり首長の責任のほうにシフトするほうが、より幅広い観点から行政ができるのではないかと思っております。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 どうぞ、千代委員。

○ 千代委員
 今の御意見にほとんど同じなのですが、生涯学習という考え方が広がってまいりました。生涯教育から生涯学習に移ったわけでして、これは学齢の段階だけの教育ではありません。そういうことになりますと、教育部局だけでの生涯学習というのは成り立たないのが現実でありまして、私は埼玉県の生涯学習市町村協議会の会長をやっているのですが、今非常にそのあたりでは足並みがそろわないのが、この生涯学習であります。しかし、小・中学校、高校の教育だけに限られている立場での発想では、今は非常に難しい段階に来ているのではないか。公民館にしても図書館にしても、それから文化財の保護にしても、教育部局だけに任せていたのでは、幅広い生涯学習等についてはちょっと難しいということで、かなりの市町村が、生涯学習については市町村の部局に置こうという考えが出てきております。まだ教育部局にあることは確かなのですけれども、このあたりがもう少しはっきりと出されたほうがいいだろう。私自身は、生涯学習を含めて文化財までも、教育部局もひっくるめるわけですけれども、首長部局が持っていたほうがより円満に、また予算的にも対応できるのではないかと思っております。それから、先ほどお話が出ましたように、学習という意味でも、もっと幅広い啓蒙、啓発ができるように私は思っております。

○ 鳥居部会長
 文化財の保護の対象が、この前ここにヒアリングで来ていただいた、多賀城の城址の話なんかがありましたけれども、ああいう場合にはあまり問題は感じないのですけれども、例えば仏像、要するに奈良とか京都というのは、ほとんど文化財の保護の対象になるのは仏教文化あるいは神道文化に関するものが中心で、また、長崎に行けば今度はカソリックの文化に関するものが中心になるというふうに、どうしても宗教的な色彩を持ってくる。そのとき、学校の先生が宗教教育との関係で板挟みになるというようなことはあるのでしょうかね。どんな感じなのでしょうね、現実の実態は。難しそうですね。
 渡久山さん、お願いします。

○ 渡久山委員
 それは自分の信仰によると思うのですよね。例えば奈良でも、文化財として見ている場合と、信仰の対象として仏像を見ている場合とではやはり違うと思うのです。一般の教諭の一般的な認識としては、文化財は文化財という形で見ているようですね。ですから、仏教徒が仏像を見る場合と、仏教徒でない人が仏像を見る場合とでは全然違ってくるものですから。学校の場合は ―学校というよりは、日本人の場合は無宗教が非常に多いですよね。そうすると、仏像はほとんど文化財として見られているのではないでしょうか。

○ 鳥居部会長
 余計なことを申しますが、文化庁で出している宗教統計がありますね。あれを見ると、日本人の中で仏教徒人口というのは約9,000万人なのです。神道を信仰している人の人口というのは8,000万人ぐらいいるのです。足すと1億2,000万人をはるかに超えてしまうのですね。だから、それは、実は裏返せば、今、渡久山さんがおっしゃったように、無宗教ということなのかもしれませんね。

○ 茂木副会長
 素人考えですが、私も、文化財の保護というのはやはり教育委員会の仕事から外したほうがいいのではないかという感じはするのですけれどもね。ということは、さっきどなたかがおっしゃいましたけれども、教育委員会の役割というか、教育委員会の存在意義というのはやはり教育の中立性ということであって、ですから、そこにやはり中心を置いて、そのほかのことはむしろ外したほうがそこに集中できるのではないかという感じもいたしますし、それから、教育委員会の人たちというのはフルタイムで働いているわけではありませんから、やはりそういう意味の負担をなるべく減らして、本来の教育の中立性というところに中心を置いて仕事をしていただいたほうがいいのではないか。文部科学省で取り扱っているから全部教育委員会というのは、ちょっとやはり私もおかしいのではないかという感じがいたします。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それで、皆さんのお手元、資料1の9ページの下半分を御覧いただきたいのですが、そこに四つ「○」がありまして、上の二つの「○」の最後の文章が矛盾しているのです。というのは、相対立した文章が書いてあるのです。一等最初の「○」の3行目、真ん中から読みます。「文化財の保護に関するものは、引き続き教育委員会の事務とすべきではないか」という御意見があったということが記載されています。2番目の「○」の一番最後は、「これらを踏まえ、地方自治体の判断により権限分担を変更できるようにすることも考えられるのではないか」、これの主語というのは、この二つ目の「○」の一番上の行でして、「生涯学習、文化、スポーツにかかわる行政分野については」なのですね。生涯学習、文化、スポーツにかかわる行政分野については、その最後の文章ですが、「地方自体の判断により権限分担を変更することも考えられる」。相対立する文章が二つ実は構わず並べてある状態に今なっています。今お話を伺っておりますと、佐藤委員のような御意見もありますが、真ん中の、要するに2番目の「○」の意見の方が若干多いように思いますけれども、この点について今後修文をして、この次のステップに踏み込むときに、少なくとも一番上の3行はちょっと過激過ぎるいうことでよろしいのか。いかがでしょうか。
 山本委員、どうぞ。

○ 山本委員
 その辺は慎重にしていただきたいと思うのですけれども、歴史的なことでは申しわけないかもしれませんけれども、明治以来、この領域は内務省がずっとやってきまして、それで様々な問題がございました。そして、極端な話、1940年代に入る前後から極限に行ってしまっているわけですけれども、その反省で戦後こういうことになっていったわけですね。では、またこれをもとに戻してもいいよということになると、ある意味では教育観を変えるということにもなってくると思うのです。ですから、その根本的なところを議論していただかないと危ないなと思います。明治以来、この領域というのは、必ず教育の問題をやると天下分け目の攻防戦になるのですよ、どっちが取るかでですね。そのときに、やはり今みたいな根本の問題まで一度戻ってじっくり考えていただく必要があるかなと思います。戦後にしましても、後のほうに出てきますけれども、地域という、地域ってそう簡単ではないのですね。様々な政治、宗教も絡んで大変な争いをしてきているわけです、PTAも巻き込んで。そういう経緯がございますので、この辺は慎重に御議論いただいたほうがいいと思います。
 私は、今みたいなところに絡むところは教育委員会に置いて、それ以外のところは一般行政部局で持っていってやっていただいてもいいのではないかと思っているのですけれども、少なくとも教育委員会に置いたほうがいいところがあるということをやはり議論したほうがいいのではないかと思います。

○ 鳥居部会長
 森田委員、どうぞ。

○ 森田委員
 先ほどから議論を伺ってきて、教育委員会に文化財その他のことを置くということについては否定的な御意見が多いように思うのですけれども、首長部局に置くべきであるという御意見もちらっとあったような気がするのですけれども、そこは、今のここで言いますと2番目の「○」にありますように、自治体の判断によって置けるという、その可能性もあるわけでございまして、必ずしも教育委員会に置くべきではないということにはならないはずでございまして、そこのところは少し、私の持論ですけれども、いろいろと選択の自由があったほうがいいではないかという考え方で、問題は、もしそれがぐあいが悪いとしますと、何を最小限制度的に担保しなくてはいけないか、そういう形で議論をされたほうがいいのではないかなと思いまして、どちらがいいか、だから全部すべきであるというふうにちょっと聞こえるものですから、気になりましたので申し上げました。

○ 鳥居部会長
 田村委員、どうぞ。

○ 田村委員
 私の感じでは、この問題はかなり慎重に扱ったほうがいいのではないかという、山本委員と同じような感じを持っております。これは例の教育改革国民会議で沈壽官さんから聞いた話なのですけれども、小学校の先生が村の鎮守の森に子どもたちを連れていきますね。これは日常的によくあるそうです。連れていって、鳥居のところまで行くと、はい、ここで我々は終わり、宗教教育だからこれ以上できないといって、そこで先生は引率をやめて、その神主さんとか地域の人が出てきて、鎮守の森で昔からその地域の中心になった地域を見にいくことすら先生はおやりにならないという実態があるということを聞きました。仮に教育は宗教とかスポーツとか文化にかかわらないということにしてしまいますと、ますますそういう傾向が強くなるのではないかという気がします。
 ですから、宗教教育に踏み込むという議論もある、私どもはやはりそういうことをきちっと教えたほうがいいというふうに思っているのですけれども、そういうことを考えると、教育があまりにも中立性を標榜するがために、いろいろな分野と関係をしないでいいのだというような仕組みにしてしまうのは、教員の意識を非常に狭めてしまうような気がします。ですから、確かに教育委員会が専管するというのでなくてもいいかもしれませんが、教育にはそういう分野があるわけですから、やはり教育委員会がかかわっているという仕組みは大事にしないといけないのではないかと思います。そんな感じを持っております。

○ 鳥居部会長
 片山委員、どうぞ。

○ 片山委員
 私、さっきちょっと申し上げて、結論のようなことは申し上げなかったのですけれども、当分はどっちがやってもいいようにしておけばいいのではないかなという気はするのです。といいますのは、教育委員会から全部はがしてしまうとまずい面もあるのです。例えば純粋の文化財の保護とか修復とかになりますと、これはかなり専門的になるわけです。本当に今の首長部局でそれがスタッフを集めて可能かどうかという現実の問題もあります。やはり教育関係者の中でそういうものをきちっと保存していくという体制があったほうがいい面もあると思うのです。
 それから、文化財というのはお寺に限りませんで、神社なんかもそうですけれども、宗教とつながりがある面が多いわけです。今、宗務行政は知事の仕事になっているわけです。ところが、文化財を修復しようとか保護しようというと、支援しなければいけない。宗務行政をするところが、その宗教法人である文化財を直接支援するというのはあまりいいことではないのではないか。ならば、ちょっと方たがえで、教育委員会のほうから文化財というものに着目をして、宗教法人のものだけれども支援するというような、そういうルートがあってもいいのではないかというようなことを現実に感じています。
 それから、具体例を申しますと、さっき教育委員会にハッパをかけているという話をしましたが、文化というと、さっき八代さんも言われましたけれども、伝統文化というのがあるわけです。今、鳥取県では伝統文化とか伝統芸能というものをもっと重視しようではないかということでいろいろな取組をしているのですけれども、その一環で鳥取県は伝統芸能大会というのをやっています。これは教育委員会の文化課にやってもらっているのです。従来はあまり人の注目を浴びなかったのですけれども、いろいろな工夫をしましたら、大きな会場が満杯になるぐらい客がつくのです。やっているほうも張り合いが出まして、今どんどん後継者を育成するということで、いい方向に向かっているのです。これは教育委員会がやってくれています。
 一方、青少年郷土芸能大会というのをこの間やったのですけれども、これは去年から初めたのですが、ちょっと教育委員会の体制が整わなかったので知事部局関係でやっているのです。これも今年なんかは大変大きな反響がありまして、参加希望が多くて、見るほうも本当にまじめに最初から最後まできっちり見てくれるのです。それで、ああよかったなということになったのですけれども、これらは本当だったら、青少年は教育に関係あるから教育委員会とか、そういう仕切りがあるかもしれませんけれども、その辺はアドホックに、ちょっとお互いに競い合ってやってみようじゃないかとやってみると、非常によくなるのですね。ですから、私は、どっちでもできるというとちょっといいかげんですけれども、知事部局でもこの分野はできるとしておいたらいいのではないか。首長によって対応が違いますし。
 もう一つは、首長の怠けの退路を断つことになると思うのです。というのは、例えば伝統文化の保存とか、これがうまくいっていないじゃないかという指摘を受けたときに、今までだったら、あれは教育委員会の仕事ですからと言って逃げられたのですね。ところが、知事部局でもできますよということにしておくと、だったらあんたがやってみなさいという、そういう追及ができるわけです。ですから、逃げ道を断つという意味でも、選択にしておいたらいいのではないか。
 これは図書館も実はそうなのです。私は、図書館は非常に重要だと思っています。今、文部科学省も、やっとというと失礼ですけれども、図書館に非常に力を入れてくださり出したので、非常にいいと思っているのですけれども、全国の市町村の多くは図書館の大切さということに対してあまり認識がないわけです。うちの県もそうなのです。やいやい躍起になって言うのです。県は県で図書館にすごく力を入れてするのですけれども、市町村がなかなか笛吹けど踊らずのところがありまして、やはり聞いてみると、市町村長さんが、私の仕事じゃありませんという牢固たる考え方を持っているわけですね。そういうときに、町長部局でもやれるのですよ、だから今の惨状を改善するためにあんたがやりなさいというような、そういう追及ができるような選択肢があれば、また状況も違ってくるのではないかなと思ったりしています。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 八代委員、どうぞ。

○ 八代委員
 先ほど言われた、教育委員会が関与しないと学校教育で教えなくなるというのはちょっと悲観過ぎて、そうであれば、例えば福祉なんていうのもぜひ学校で教えていただかなければいけないのですが、だからといって教育委員会でやる必要は別にないわけでして、そこは、学校は大事だと思うことはすべて関与する。しかし、何もそれを教育委員会の独占にする必要はないので、今、知事も言われましたけれども、やはりそれぞれの自治体で選択できるようにしていくというのが大事ではないかと思います。
 それから、文化財の保護の話ばかりなのですが、スポーツもやはり私は、スポーツは学校教育の中でやるという考え方はそろそろ見直すべきではないか。サッカーなんかは地域に根づいたスポーツとして随分盛んになっておりますし、そういう意味で、もう少し教育の範囲を超えた、一種の社会的なものとして考えられるものはかなり多いのではないかと思っております。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 稲田委員、どうぞ。

○ 稲田委員
 今まで出た意見に私もかなり賛成の部分が多いと思います。やはりこれから先は、「弾力化」とここに書いてありますけれども、どちらがやってもいいとか、あるいは話し合いによってこちらでやるとか、そういう幅を持たせる必要があるのではないかと思うのです。現実、私も生涯学習センターの館長もやっていますけれども、女性センターの館長もやっているわけです。そうすると、教育委員会と知事部局に私自身の仕事が既にまたがっているわけです。それから佐賀市の体育協会の会長もやっていますけれども、佐賀市のいわゆる一般のスポーツ部門の担当は首長部局です。そういうことで、例えば農林水産部門にしろ商工労働部門にしろ、この生涯学習とか文化とかスポーツとかというところは、おれは知らんではもう今から先通用しない時代になってきているのではないか、そういうふうに思います。それから、文化財保護の問題にしても、いわゆる県とか市町村の観光行政とも非常に大きなつながりがあるわけで、そういった意味で、いわゆる首長の判断による弾力化がやはり必要になってくるわけで、それに携わっている私たちも、そういう幅のある動きをしなければいけないのではないか、そういうふうに思います。

○ 鳥居部会長
 どうぞ。

○ 茂木副会長
 私も、今の段階では選択肢を持つというのが一番いい方法ではないかと思います。さっき森田委員もおっしゃいましたし、また片山委員もおっしゃったのですが。ですから、この文化財の問題もそうですし、それから、教育委員会を持つかどうかということも選択肢にしていいと思うのです。さらに、議論がもとに戻って恐縮ですけれども、さっき吾妻委員のおっしゃった、教育長と教育委員会の役割分担についても、私はやはり選択肢にしておいていいのではないか。それは首長の選挙のときにローカルマニフェストの中に入れていただいて、自分が例えば知事になったら、あるいは自分が市長になったら教育はこうやりますよ、教育行政はこうやりますよということをマニフェストの中に入れていただいて、それを選挙民が選べばいいわけですから、ですから選択肢があっていいのではないか。もっとも、あまり選択肢があっては、これは提言にならないということになるかもしれませんけれども、ある程度選択肢があっていいのではないかと私も思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 今までの御議論を伺っておりますと、9ページの二つの「○」の上の3行は、下の2番目の「○」の中に取り込んだ形にして、つまり、引き続き教育委員会の事務とするということも含めて、2番目の「○」の最後にありますように、「これらを踏まえ、地方自体の判断により権限分担を変更できるようにする」、これを「変更」ではなくて「選択できるようにする」というような書き方で次回修文してみたいと思います。よろしゅうございましょうか。 ―ありがとうございました。
 それでは、もう一つの、これもいろいろと議論のあるところだと思いますが、教職員の人事の都道府県と市町村の関係ですね。資料3を御覧いただきながら、資料1の本文で言いますと11ページなのですけれども、ここのところを今日少し御議論をいただきたいと思います。
 11ページ自体は極めてあっさりと数行で書いてありますが、資料3のほうを御覧いただきますと、いろいろとこれは意見のあるところだ、意見のあるいは分かれるところだと思いますので、並べ方としては、一般の市町村、都道府県と、それからその次の段階として中核市をまず御覧いただいて、これは並べ方を逆にするとよかったなと思って今ちょっと反省しているのですけれども、それから最後に政令指定都市、この3種類のあれを見ていきますと、特に下の半分を見ていただきますとわかりますように、一般の市町村は教員の研修の実施とか研修計画さえもやっていない。それに対して中核市は、研修の実施、初任者研修、10年研修、それから研修計画の立案というのをやっているわけですね。さらに、真ん中の政令指定都市になりますと、プラス任命、採用と異動と分限、懲戒免職が行えるようになっているというのが現状ですね。ここのところをどうするかということでございます。この辺について少し御意見をいただきたいと思います。
 11ページの真ん中では、「市町村への教職員人事権の委譲」というふうになっていまして、まず一つ目の「○」では、市町村に可能な限り権限を委譲していくことが必要だという意見が書いてあります。それから、2番目の「○」では、下から2行目でございますけれども、一定水準の人材を県内全域で確保するため広域人事を行う必要があるということについて留意すべきであるという考え方が書いてありまして、3番目の「○」では、当面の方策として、中核市や一定規模以上の市町村では教職員人事異動の権限を委譲する方向で検討すべきというふうになっています。この辺のところをどんなふうにこれから考えていったらいいか、御意見をいただきたいと思います。
 小川先生、どうぞ。

○ 小川委員 わからないというか、ちょっと勉強不足なので、ちょっと事務局の方に教えていただきたいのですが、藤田さんの2枚目の権限委譲のところで政令指定都市の話が書いてあって、「区に下ろすか否か?」ということでクエスチョンマークがついているのですが、確かにこれまで教育行政の話をする場合、都道府県、市町村というところで話をしてきたのですけれども、今までは政令指定都市の教育行政の問題をどうするかということは確かにほとんど意識して議論されてきていなかったので、藤田さんのこの指摘を見て、少し考えたいなというようなことで思っているのですが、確かに政令指定都市の各区レベルを見ると、例えば横浜なんかを見ると、ある区なんていうのは中核市と同じくらいの人口規模があるというふうなところもあるわけですので、例えば藤田さんが言うように、人事を含めて区レベルでそういうふうな権限を処理することをもしもしようとすれば、今の地教行法の枠の中で、政令市がやりたければ自由にどうぞというふうに政令市の判断でこれはできることなのでしょうか。それとも、いろいろな人事等々の処理を区レベルまでおろすというふうな方向をとろうとする場合、やはり例えば今の地教行法といろいろな面で抵触する部分が出てくるのかどうかというのをちょっと教えていただければと思うのですが。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 お答えいたします。御案内かもしれませんが、政令指定都市の区につきましては、東京都の23区とは違いまして、あくまで地方公共団体という位置づけではなくて、行政の区画ということで位置づけられているものでございます。したがいまして、これは教育行政だけではございませんけれども、独自に行政を行うシステムにはなってございません。ただ、おっしゃるように、横浜市などにおきましては、区としてのまとまりが大きゅうございまして、市単独ではなかなか事務が進みにくいということもあろうかと思いますが、そういった状況の中で、区ごとに事務を回していくということは、運用上は、これは教育委員会がブランチを置くという形になろうかと思いますけれども、十分可能ではないかと思っております。ただ、それはあくまで区という一つのまとまりに権限を委譲するということではなくて、現在市が行っております教育委員会の仕事を区ごとで行うような仕組みを工夫して行っていくということになるのではないかと思っております。

○ 鳥居部会長
 現実の問題として、政令指定都市の区には教育委員会を置いているケースは全くないと。

○ 角田初等中等教育企画課課長補佐
 制度上、置くようにはなっておりません。

○ 鳥居部会長
 渡久山委員、どうぞ。

○ 渡久山委員
 教職員の人事の関係ですけれども、これは前も多くの意見がありましたように、学校での予算裁量権あるいは校長の人事権をやはり拡大すべきではないかという意見が非常にあったのですね。そうすると、今、県と政令指定都市は別といたしましても、そうではない学校は直接県の人事権ですよね。そうすると、学校での校長の人事裁量権というのは随分離れているのですよね。そうでありましたら、やはり一定程度中核あるいはある程度の規模の自治体、連合会でもいいのですけれども、自治体にやはり一つの人事権を与えたほうがいいのではないだろうかという気がいたします。できるだけ現場に近い方向で人事権があったほうがいいのではないかなということが一つです。
 もう一つは、今ここにも教育長がいらっしゃいますけれども、学校の校長になっていく際に、幾つかの教育委員会あるいは地域を回らなければ校長になれないという規定、内部規定なのですが、あるのですよね。そのために、例えば、ある地域から動けない、いわば家庭の事情とかいろいろあって動けない教員なんかがいるのです。そうすると、退職まで管理職になれないのです、この人は。しかし、見ていると非常に優秀だと思う人もそうなのですね。ですから、そういう人事における非常に細かい内規あるいは条例、そういうものを緩和していかないと、実質的にどうも学校教育の活性化というのはうまくいかないのではないかという気がします。ですから、この二つの方向から検討したり、あるいは整理していく必要があろうかと思うのです。

〔茂木副会長退席〕

○ 鳥居部会長
 どうぞ、横山委員。

○ 横山委員
 教員の人事権を考える、人事権にもいろいろあるわけですね。その主体というのはやはり教員の任免権ですよね、その本体というのは。そこで考えた場合に何が一番重要かというと、実際に学校の現場で子どもたちと相接している教員の資質をどう確保するかということですね。教員の資質を確保する、その資質の中身に、私はかなりの部分、能力といいますか、意識的なものが非常にあると思うのです。それは何かというと、その所属団体に対するロイヤリティです。広域人事をやっている限りは、義務教育、その団体に対するロイヤリティというものは絶対生まれないです。それぞれの団体が基本的には任命権を持つがゆえに、それぞれの教員はその所属団体に対して最大限の努力を傾注する。したがって、私は、基本的には任命権はすべて渡すべきだと思っています。ただ、それが現在のようないろいろ団体の規模がある中で一律にそれができるか、そういう話は別ですが、基本的な義務教育、小・中学校の教員の人事権というのはそれぞれの設置者に渡すべきだと私は思っております。

○ 鳥居部会長
 横山さん、その場合に、うんと学校が広い範囲にちらばっている県を想定した場合、そこでの良質な先生の均等な配分というのをどうやってうまくやっていったらいいのかという問題が起きますよね。

○ 横山委員
 常にその話が出るのです。これはまた次元が違うという話にもされるかもわかりませんが、それでは、町村の職員というのはそれぞれの県から派遣しているのですかと。いかに村とはいえども自分で採用しているのです。では、そこの職員が優秀ではないかというと、そんなことはないのですよ。やはり私は、仕事をする場合に一番大事なのは、団体に所属した場合、その団体に対するロイヤリティだと思っています。そういう意味では、これは小・中学校の場合ですが、実際の設置者に任命権を渡すべきだ、交付すべきだ、そう思っています。ただ、今、会長がおっしゃったように、では離島はどうするのだと、こういう個別の話はございます。基本的な方向と例外というのはございますが、基本的にはおろすべきだろう、委譲すべきだろうと思っています。

○ 鳥居部会長
 アメリカの学校の理事会を想像してみたり、あるいは今度私立学校法が改正されて、各私立学校の理事会は本気でもって自分の責任で最高の理事長なり学長なり先生なりを探してくるのが理事会の責任だというふうに発想が明らかに変わったわけですけれども、それと同じことなのですね。つまり、市町村の教育委員会、教育長あるいは教育委員長が本気でもっていい先生を探すことができれば、それは理想なのですね。ただ、それが現実になかなか難しいということを仮の反論として今申し上げたわけですけれども、そういう反論がよく出てくるわけですけれども、吾妻委員、どうでしょうか。

○ 吾妻委員
 東京都の教育長と私のような2万程度の町の教育長とは当然立場が違うわけですので、今のお話をお伺いして、それぞれの設置者にというお考えは大変ありがたいですけれども、やはりできないことはできないという現実があるわけです。例えば、最も簡単なことで言えば、ある中学校の教員が出産休暇をとった、そのときにその先生が美術の先生であったり音楽の先生であったりしたようなときに、自前で見つけるというのは大変なことでして、その近辺に休んでいる間の講師を見つけるというのは簡単には田舎の町ではいかない。当然これは県の教育関係の人事の中で県が抱えている持ちごまといいますか、そういうもので配置をしていただいて初めてできるわけでして、これを教育委員会や各学校の校長が人探しを始めたら、本務はどこかに行ってしまって、とても大変なことになるわけですね。
 ですから、最初のときに一つのわかりやすい、わざと具体的な例を申し上げたのですけれども、この人事権は、各市町村の教育委員会、そして学校長にもというのは一見いいようですけれども、やはり県と市町村の違い、それから市町村のうちでも政令都市あるいは中核都市あるいは普通の市でも、10万、20万の市、そういうものと、本当に人口何百人、何千人の町、村の教育委員会にとってはそれぞれ違うわけですので、その辺を同じレベルで議論をしていても、結局は、できないことをしなさいと言われても非常に大変になってくるわけでして、私はいつも最終的には町、村の教育長の代表ということでお話を申し上げるわけですけれども、自前で教員を採用する、あるいは自前でいい教員を探してくるというのは、やはり現実的に非常に難しい問題がありますね。ですから、先ほど横山委員がおっしゃった話は理論的にはよくわかるのですが、現実問題として広域人事で異動してきた教員を、その地域でいかに立派な教員になって、その地域に根差した教育をしてもらうようにその配置された教員を指導していく、あるいは町の地域ぐるみの学校づくりという中でその教員にその中に入ってもらう、あるいは町、村レベルでも教職研修を行う、あるいはいろいろな学校内部でのいろいろな研究実践に共同で当たる、そういうことで、広域的に動いてきた教員がそこで本当にそこの教育に没頭するような環境づくりを精いっぱいやるということで、なかなか人事権の範疇というのは市町村のレベルをしっかり踏まえた上で議論していただかないと全然かみ合わないのではないかな、そんな感じがしております。

○ 鳥居部会長
 現実はたぶんそういうことだろうと思うのですけれども、教育界文化といいますか、そういうものの少し長期的なことを考えてみると、中長期的にはやはり今とは違ういろいろな媒体、例えばアメリカにはありますけれども、大学の教員のジョブマーケットが雑誌の形であったり、あるいはインターネットの形で存在していますね。そういうような形でやる時代がいずれは近づいてくると思うのですけれども、それまでの間この制度をどうするかという視点が一番大事なのだろうと思うのですけれども、片山委員、どうぞ。

○ 片山委員
 教員の人事を考える場合にどこが一番ポイントかといいますと、学校現場における教育の中心は教員ですから、一人一人の教員の能力が遺憾なく発揮できるかどうかということで、そのためにどういう人事がいいかということだと思うのです。ということは、教員が能力を遺憾なく発揮するためのモチベーションをつける、そのためにはきちっと評価をして、その評価が処遇に結びつくということが必要だろうと思うのです。そうなりますと、今のような県単位でやっていますと、なかなか目がかけられません。鳥取県なんかは一番小さい県ですけれども、それでも恐らく一人一人の教員を全部県教委が把握しているかどうかというと、これはなかなか言いにくい面があると思います。ですから、教員から私も直接話を聞くと、意見を聞いてもらえないとか、見てもらっていないというような、そういう印象を随分持っているのですね。ですから、モチベーションを高めるための評価ということになると、やはり身近な市町村が一番いいだろうと思うのです。もっと言えば学校長が本当は一番評価する立場なのですけれども、市町村教育委員会が本当は人事権を持ったほうがいいと思います。これが理想だろうと思います。
 ただ、では、今はどうかと言われると、政令市なんかは別にしまして、町村の場合は、これは事実上無理だと思います。それはもう今率直な意見が出たとおりで、私もそう思います。例えば、一つの町で一つの中学校しかないというところで人事権を持った場合に、一生そこでやる。それはいろいろ県内で調整をして人事異動はありますよということにはできるのでしょうけれども、特にばばを引いちゃった場合に、ばばを抱えた場合に、誰も受け取り手がありませんから、そうすると、終身雇用をやめて首を切るという選択肢があればいいのですけれども、そうでなければ、一生そこで塩漬けになってしまうというようなことが起こりかねない。それから、市町村といっても等し並みではなくて非常に差がありますから、人気があって財政も豊かだというところは、プロ野球のどこかのチームみたいにどんどん人を集める、人気も出る。だけど、人気のないチームだとそうもいかない。やはりそういうプロ野球のような現象というのは起きると思うのですね。それをどう考えるか。それは競争原理だからいいのだとかいう面もあると思いますけれども、日本全体で考えた場合に本当にそれがいいのかどうかという議論も実はあるのではないかと思うのです。
 もう一つは、教員のモラールといいますかモチベーションないし、誇りというものもあるのです。これは私なんかは言いにくいのですけれども、隣の国の話をしますと、今、韓国でも地方分権化ということが大きな議論になっているわけです、特に教育と警察が。韓国の教員は国家公務員なのです。これを地方公務員にしようという今分権の動きなのですけれども、教員が猛反対しているのです。その理由は、誇りがなくなるということなのですね。それはおかしいじゃないかという議論はあるのですけれども、教員には根強いそういう誇り、プライドというものがあって、日本は国家公務員ではありませんけれども、過渡期にはたぶんそういう強いあつれきというのは出てくるのではないかなという気もしたりします。
 今、ではどうすればいいのか。将来の理想は身近な市町村に、だけど今現実にはなかなか難しいという面があるので、一種の過渡期だから便法といいますか、過渡期にふさわしいようなソフトランディングをしたらどうかなと私は思うのです。例えば、今、校長の人事というのは非常に重要ですけれども、校長の人事なんかは、今、具申をするという、市町村に具申権はありますけれども、例えばこれが同意権だったらどうだろうか。県教委は、これでどうですかと協議して、同意するかしないか。だけど、もうあんたのところはこれしかないよという不毛の選択を押しつけられても困りますから、同意権プラス独自に他の代替案を市町村が見つけることも可能にしておく。県教委から話があっても、それなら要りません、どこかから、例えばさっきの佐賀市ですか、東京都から校長を引っ張ってくるとか、そういう選択肢もつけた上での拒否権、同意権というものを市町村の教育委員会に与えたらどうだろうか。個々の教員についても、そこまではどうかと思いますけれども、何らかの拒否権とか他の代替的選択肢を現場でとり得るような、そういうふうなことをしていって様子を見たらどうかなと思うのです。私なんかは田舎の県なものですから、田舎の実情を踏まえて言うと、そんなところが理想と現実との組み合わせかなと最近思っているのですけれども。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 先ほど佐藤委員が挙手されましたので、それから千代委員、田村委員の順でお願いします。

○ 佐藤委員
 全国で市町村の数が3,000、市町村の合併が進んだとしても2,000何がしという、その中で大体7~8割がいわば10万あるいはそれを欠ける市町村だということになりますと、その中で人事を円滑に、しかも人材を適切に得ながらということは非常に困難な状況だと、私どもは全国の組織を通じて伺っております。そういう点では、やはり都道府県がその市町村をある意味でまとめて面倒を見ていただく、人事の調整役として県下の、あるいは都道府県の中での人事の調整役を買って出ていただく。それから、もちろん財政力も10万以下あるいは4~5万以下というような市町村では、いわゆるその人件費を捻出するというのはなかなか容易ではないということになれば、やはり県費負担教職員制度というものは今後とも相当な期間、いわゆるその市町村の規模あるいは行政規模がある程度拡充される間にやはりフォローしていただかなければならないというのが、本岩手県もそうですけれども、そういった実態に即した制度の運用というものをやっていただきたいと思っております。
 それから、規模の非常に小さい町村ですと、教育長さん自体すらも自らの市町村の外側からお願いしなければならないという市町村もあるわけですので、理想は理想として、現実に合ったような行政制度というものをお願いしたいと考えております。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 では、千代委員、どうぞ。

○ 千代委員
 今の佐藤委員の意見にはかなり私も同意するところでございます。ただ、理想ならば、各教育委員会でその市町村の特色等を反映しまして、例えば埼玉県で共同で採用試験を行っております。その採用試験の際に、どこそこの市町村を希望するという意味の共同試験を行っておりまして、その後は、その目的とする市町村に応募者がやってきまして、面接だとかいろいろな独自の採用試験をまたやる、こういうことができているわけでございまして、それと同じように、教員の場合も、予算の裏づけがなかなか各市町村にはないのですが、理想的にはそういう形で機会均等を図るべきだろうと思いますが、現在、私どもの10万以下の市町村においては、人事の交流を教員だけで見た場合には、やはり県の教育委員会のとりなしをもって人事をやっていくというのが一番スムーズにいくのではないかと思っております。
 そういう意味では、今のソフトランディングといいますか、現状では、ある規模の市町村までを人事権を独立させて持ってもらう、それ以下については、その市町村においていろいろと県教育委員会との対応をしながら行っていくというような形が暫定的にはよろしいのではないか、こんなことを思っているのです。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、田村委員、どうぞ。

○ 田村委員
 教員の人事というのは非常に難しい問題があるわけですね。つまり、教員というのはハローワークで探してくるわけではありませんから、要するに一定のルートみたいなところで採用されているわけです。一つの県を考えると、多くの場合はその県の中に学閥みたいなものがありまして、何々大学卒がこれぐらい、何々大学卒がこれぐらいと、その学閥ごとに勉強会みたいなのをやったりして、非常に固定しているのですね。現場に採用権をおろすということは、私は大事だと思いますが、何も考えないで現場におろすと、それが固定するという危険があります。これは想像以上にはっきりしているのですね。ですから、ある県の先生になりたいと思って外部から受けてもなかなか採用されない。その内部の学校の組織みたいな、卒業生の仕組みみたいなものが牢固としてでき上がっているわけですね、戦後50年かけて。ですから、それを全く考えないで ―東京都の場合にはそういう色が非常に薄いのですね、数が多いから。しかし、地方に行くと物すごくそれがはっきりしているということが現実にはあるわけですね。ですから、ただ地方に、できるだけ現場に近いところにというだけでは問題は全く解決しないという問題が教員の人事というのはもともとあるのだということを知っていないとまずいのですね。
 ですから、制度をいじるときに現実を見るというのは、その点が私は一番大事だろうと思います。普通の会社だとか公務員が採用する人事とは教員の場合にはちょっと違う面があるということですね。教員になるという人はその辺にいっぱいいるわけではありませんで、非常に特殊なコースというか、一定のルートみたいなところで養成されてきますから、どうしてもそういう流れがつくられてしまう。それはなるたけオープンにして、いろいろなところから育ってきた人間を教員にするのが理想なのですけれども、現実にはそういう形がなかなかとりにくい。ですから、その部分を温存してしまう危険がありますから、制度をいじるときにはよほど考えてやらないといけないのだろうなと思います。

○ 鳥居部会長
 どうしたらよろしいですか、先生のお考えでは。

○ 田村委員
 ですから、やはり現場に近いところに任せると同時に、結果を必ず見ていくということですね。その見ていく、評価をするとか、透明性を高めるとかというようなことで採用の状況をオープンにしていくということがすごく大切だと思います。これはぜひ実行される前に実態をお調べになったほうがいいと思います。私の知っている範囲では、地方の県になると、ある県の教員というのは大部分、ある大学の卒業生とか、それは複数の場合が多いですけれども、そういうことでちゃんとでき上がってしまっているわけですね。そのほうが教えやすいということもあるのだと思いますね。教育長も幾つかの大学の卒業生が順番にやっているとか、こういうのが実態としてあるわけですね。非常に閉鎖的なのです。これは何とかしないと、制度改革を簡単にやってしまうと、むしろその閉鎖性を強めてしまうという危険があると思いましたので、ちょっと申し上げました。

○ 鳥居部会長
 浅見委員と渡久山委員と國分委員が挙手されていますので、どうぞ。

○ 浅見委員 先ほどの議論もそうですけれども、やはり今度のねらいは、自由度を高め、競争原理をどう導入するかというところにあるのだと思います。それをなるべく現場に近いところにというのがその方向だと私も思っているのですが、人事権に関しても、そういう意味で、制度でかくあるべきだというふうに決めるよりは、それぞれの県の独自性をどう担保するか、その中で県と市町村それぞれお互いの連携のもとに、どういう規模に人事権をおろしたらいいのかということをお決めになればいいのではないか。そうなると、ある県はそれぞれ市町村全部に渡すというところもあるかもしれませんし、もうちょっと小さいところは、ある規模、まとまった中で考えたほうがいいということになるかもしれないし、その辺はあまりはっきりと決めてしまうということではないのが今度の新しい制度の在り方ではないかと思っています。

○ 鳥居会長
 ありがとうございました
 渡久山委員、どうぞ。

○ 渡久山委員
 一つは、今、田村委員が言われたけれども、昔から師範学校というのがあったときの名残が若干あることは否定しないのですけれども、今はあまりないです。ほとんどないのではないですかね。幾つかの県ではまだあるようですけれども。しかし、若干校長人事なんかでそういうのがあるかもしれませんけれども、採用人事では今のところはほとんどないのではないかと思います。なぜかというと、ここにも教育長さんがいらっしゃいますけれども、要するに試験制度で採るわけですから、ほとんど競争試験で採りますから、あまりそういうことが配慮される余地は採用の段階ではないと思うのです。ただ、校長とか管理職になる場合に、先輩方が、そういうことが起こるところもあるようですけれども、今はほとんどないと思います。逆に、ないものだから先輩方が、あれはあそこの会だったのに、何で、けしからんというふうなことが出てくるぐらいですから、そういうことだと思うのです。

〔八代委員退席〕

 もう一つは、私は田舎で、離島でも教員をしたことがあるのですけれども、やはり一番人事で非常に厳しいのは、人事というか、異動されるほうの側ですから、私はそうだったわけですが、広域人事というのは非常に困るのですね。要するに生活基盤というのが失われる可能性もある。それから、自分の希望したところとあまりにも離れていると、それがやはり、先ほど出たように、能力どころか、働く意欲をなくしてしまうのですね。ですから、あまり強制的に希望のないところへ行かされると、何か最近の場合はやめるという教員まで出てきているわけですね。ですから、それはやはり、片山知事も言われたけれども、やはりある程度希望が生かせるような人事をやっていくということと、ある程度地域性がないと、やはりそこの地域の文化だとか、あるいは地域の生活習慣だとか、そういうようなものを、教育の地域性と言われている中では、やはり地域の教員が地域の学校にいたほうが非常に教育効果も上がるのですね。
 そういうことで、私も田舎ですから、もう卒業生が帰ってきても学校に誰も知り合いがいない、先生方の知り合いがいない。そうすると、学校に対する愛着心もない、母校に対する愛着心もない。だから、逆に言うと、それが一つのネックになって、地域に対する愛着を失うというようなことも非常に出ているようですから、私は、今度の場合、最も教員の人事という場合は、やはり教育文化という、日本の文化のスタイルとして将来どういうようなものをつくっていけるのだろうか、そういう形でやはり教員人事もダイナミックに考えたほうがいいのではないかという気がいたします。

○ 鳥居部会長
 どうもありがとうございました。
 國分委員、どうぞ。

○ 國分副部会長
 前にも申し上げましたけれども、今の教員人事については、県教委が任命権を持って、市町村教委が内申権を持って、そして校長が具申権を持つという仕組みですね。制度としては一つですけれども、それぞれの県の地理的な状況、あるいはそれぞれの地域の歴史的状況、あるいは行政のいろいろな仕組みによって47通りの人事があると言っていいというふうに私は前に申し上げたことがあるのですけれども、そういうことを、まず制度と現実というものをどう調整していくかというのがこれからも必要ではないかと私は思うのです。
 では、今問題になっているこれをどうするのかということですが、人事権の委譲と言っておりますけれども、完全な意味での任免権を個々の市町村に委譲するということになりますと、先ほど吾妻委員がおっしゃったように、現実の問題としてそれができるのかという問題もあると思いますし、それから、横山委員も役場の職員との比較で、内心じくじたるところがあって、次元が違うかもしれませんがという前提つきで、まさに次元が違うので、やはり役場の職員と学校の教員はちょっと違うのではないか。やはり義務教育ということを考えると、全国的にも同じレベル、あるいは、ましてや県内で同じレベルの教育を施すということが前提になるということからすると、いきなりそこまで行ってしまうのはどうだろうかという気がいたします。
 しかし、一方で、校長あるいは市町村教員にある程度の発言権をというのは十分理解できることなので、任命権は任命権として、先ほど鳥取の知事さんがおっしゃったようなのも一つの方法かと思いますし、今の内申権といったって形だけで、内申を出したらそのとおりやらなくていいわけですね。それではいけないので、何らかのそこの尊重性を高めるというか、拘束性を高めるというか、それは校長の具申権もそうですけれども、何かそういう仕組みの中で少なくとも経過的には考えていくのが私はいいのではないかと現時点では思っております。
 それから、ついでですが、渡久山委員が、教員の人事で家庭の事情や希望を無視した人事が行われるということですが、それは十分配慮しなければなりませんけれども、それだけでもって人事が行われるということになると別の問題も出てくるので、これは民間企業も同じだろうと思います。できるだけ個人の希望なり家庭事情なりと配慮するのが当然のことですが、それだけで人事を行うということになるといろいろな弊害も出てくるのではないかなということをついでに申し上げておきます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 どうぞ、稲田委員。

○ 稲田委員
 市町村立ということですから、いわゆる市町村に人事権があるべきだという議論は当然だと思いますけれども、今議論になっていましたいろいろな問題点がある。そこで、藤田先生のお書きになったのを見ていましたら、2ページ目の一番下に、「教職員の一定枠を市町村の採用枠とする?」と、これはクエスチョンマークがついていますけれども、そういう提案がなされているのですね。実は、市町村長あたりの話を聞いていると、例えば、自分のところのここの中学校にはこういう教育をしたいからこういう先生が欲しいなと、いわゆる海外協力隊に行った経験がある人とか、あるいは、いわゆるスポーツで国体なんかで優勝した人とか、そういう人を教員として採用したいというふうな希望があるのですね。だから、そういうのはやはり地域の事情で聞いてあげる必要があるのではないか。
 実は、これはもう10年以上前なのですけれども、剣道のすごくうまい、いわゆる国体で優勝した、しかも警察官から中学校の教員に転向したのが佐賀県にいたのですけれども、一番荒れている中学校にその先生を配置したのですね。そうすると、そこの学校が、いわゆる荒れているのがおさまったというか、よくなった上に、剣道で全国大会で優勝してしまったのですね、その学校が。それで、そこの学校が非常に大きな誇りを持って、周りの生徒に与えた影響というのが大きかったわけです。そういうことで、そういう人を選んで採用したいというふうな市町村の意見はやはり県の教育委員会も聞いて、だからこの「教職員の一定枠を市町村の採用枠とする」という考え方も必要なのではないかなと思っています。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 國分委員、どうぞ。

○ 國分副部会長
 ちょっと言い落としたことがあるので、お許しを得てもう一回発言させていただきたいと思いますが、それは、現在の政令指定都市が全面的な人事権を持っているわけですね。それを中核都市あるいは一般の市町村にまで及ぼそうかという流れの中での議論だと思うのですけれども、現に政令都市が人事権を持っていることに対する弊害というものがかなりあると私は思っています。例えば、教員はそこに入ったら利便地ですから、絶対よそは行かないわけですね。ということは、ほかからは来ない。そうすると、その利便地だけでもって異動している。それ以外の教員は、僻地とは言いませんけれども、不自由なところを一生教員でもって、それはそれで使命感を持ってやればいいといえばいいことですけれども、という問題が現実の問題としてあるわけです。さらにこれを中核都市にやるとなると、これまた中核都市ですから利便地です。教員はそこから出ようとしません。何もその地の出身だけではなくて、採用されたらそこにいる、それ以外の人はそれ以外のところをぐるぐる動く、こういうようなことがいいのかという問題は、私は、便利なところも不便利なところもみんなでもって分け合おうという観点から言うと、いかがなものかなと私は思っておりまして、流れに逆行するかもしれませんが、先ほど市町村に何らかのもう少し強い権限を与えるというふうに前提にするならば、むしろ政令都市からそういう人事権を一般の市町村並みにするという考えだってあるのではないかなということを申し落としましたので、つけ加えさせていただきます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 どうぞ。

○ 森田委員
 教員の人事の現場の実態については私は存じませんけれども、一般的にこの制度の話をする場合に、今出ているお話ですと、なるべく現場で近いところで人事をやるというのが必要だということですけれども、他方面におきましては、一定のクオリティ・コントロールをするためには母集団が大きくなければ、一定の規模がなければならない。その両方をどうバランスをとるかというお話ではなかったかと思っております。
 これまで申し上げました私の持論ですと、いろいろあってもいいのではないか、自由でもいいではないかということなのですけれども、確かに一つの自治体の中で教育委員会を必置にするかどうかとか、その首長との関係をどうするか、これはかなり自由な選択の余地があると思いますけれども、人事のケースに関して申し上げますと、率直に申し上げまして、いわば自治体の区域を越えた形での人材の異動が起こる話ですから、これはあまりそれぞれ自由にという形になりますと、やはり優秀な人材が集まるところとそうでないところと、既にお話が出ていますけれども、かなりの格差が生じてくる可能性がある。そういう意味で言えば、何が一番問題になるかというと、やはり最低限の ―最低限のという言い方は非常に難しいんですけれども、一定の規模というものを確保して、その中で人事を行うという仕組みは配慮する必要があるのではないかと思います。
 そうしますと、これまでの御議論もそういう形で整理できるのではないかということですけれども、その場合にどの程度の規模が望ましいのか。今は県レベルというお話もございましたし、いや、もっと下までということもあったと思いますけれども、今日いただいた資料3にしましても、一般の市町村は全部これというのはあまりにも荒っぽいくくり方ではないかなという気はいたしますけれども、具体的にどうするか。県の規模がいいのか、それより小さな規模としたら広域連合のようなものも考えられますけれども、具体的にそういうものとしてどういうふうに考えていくのか。少しその辺に進んでいくような議論をしたほうが生産的ではないかと、ちょっと失礼な言い方かもしれませんけれども、今までの御議論を伺っていて感じたところでございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 吾妻委員、どうぞ。

○ 吾妻委員
 蛇足になるかもしれませんが、私が言いたいこと、それぞれたくさん言っていただきましたので、もうこれで十分なのですが、先ほどちょっと私が申し上げた、県に人事を任せると言った意味は、全く丸投げで県の言いなりにということではありませんで、これは教育長も校長も県の教育委員会と徹底的に話し合いをした上で決まっていくのだということを一つ申し上げます。
 もう一つ、広域といっても県全体ではなくて、普通今行われているのは、教育事務所単位の中での人事が中心でありますので、つけ加えておきます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、資料1の11ページの記述は、今日は相当たくさんの御意見が出ましたので、それらをできるだけ、まず教員人事が満たすべき条件をいろいろな角度から列挙してみて、そして、その中で考えられる選択肢を列挙するという形で一度整理し直してみようと思いますので、事務局の方でもまたよろしくお願いいたします。
 今後のことでございますが、実は次回が11月22日になっています。その間しばらく時間がございます。一方、11月22日には「意見のまとめ(案)」を一応一回まとめた形にせざるを得ないのでございます。というのは、その1週間後ぐらいに総会があって、そこに出すのですか。 ―そこに出さなくていい。では、もう少し審議は続けられる。わかりました。総会にはまだ持ち出さないそうですが、とりあえず11月22日には取りまとめの方向に向かいたいと思っております。ただし、あくまでもこれはまとめ(案)でありまして、「意見のまとめ(案)」の次に来るのが中間報告、それから最終報告ですから、まだステップはずっと残っていますけれども、やはり「意見のまとめ(案)」の段階で一回出すべき論点は全部出してみたいと思っています。
 というわけで、11月22日までに、今日までに御審議いただけなかった項目について御意見がございましたら、事務方に何らかの方法で、一番楽に御意見をお届けいただくことができる方法、人によっては手紙を投げてくださるのも結構ですし、ファクスを送ってくださるのも結構ですし、お電話でも結構でございますので、何らかの方法で事務局の角田補佐のほうに御意見をお寄せいただければと思います。それらも踏まえて次回11月22日の月曜日に開く次回の当部会で皆さんにまた御審議をいただくというふうにしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 今日はこの辺で終わりにさせていただきます。どうも本当にありがとうございました。

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