戻る


3  小規模自治体の教育委員会の無力論の検証

 教育委員会の一斉設置以来、小規模自治体の教育委員会は、地域の教育の担い手としての行政能力がしばしば問われ、教育委員会の設置単位再考論の問題として論議の対象になってきた。はたして、小規模自治体の教育委員会は、その運用実態の上で指摘されるような問題を抱えているのか。

 市区町村教育委員長調査にみる小規模自治体教育委員会の運用実態

 小規模自治体の教育委員会の無力論を検証するために、まずはじめに、市区町村教育委員長調査の質問項目を用い、これまで考察してきた教育委員会制度の運用実態にかかわるいくつかの変数と人口規模との間の関係を明らかにする。ここでは特に、人口規模との間に統計的に有意な関係が見られた項目を提示し、小規模自治体教育委員会の問題性について示唆を得たい。

(1)  教育委員の通算就任期間

 教育委員に就任している通算の期間と人口規模との間の関係を見ると、自治体が小規模になるほど就任期間が長くなる傾向がある。
教育委員の通算就任期間
(2)  教育委員の人選

 教育委員の人選においては、規模の小さい自治体で、慎重ではないという印象を持つ委員長がやや多い傾向にある。
教育委員の人選
(3)  教育委員会会議の特徴

 教育委員会会議の特徴(1−2−(1)−12を参照)において、「会議では多様な意見が自由に交わされる」の項目で、「とてもそう思う」との回答が人口規模が小さくなるほど少なくなる傾向が見られ、逆に「提案された政策に関してはあまり発言はない」の項目については「全くそう思わない」との回答が人口20万人以上の自治体では39.2%であるのに対して、人口8千人未満の自治体では18.9%といったように開きが見られる。
教育委員会会議の特徴
(4)  会議の開催頻度

 会議の開催頻度において、人口8千人未満の自治体で11回以下の割合が他の自治体よりも多くなる傾向がある。
会議の開催頻度
(5)  採決の有無と議題の次回への持ち越し

 採決の有無と議題の次回への持ち越しにおいて、自治体の規模が小さいほど採決にいたる場合が少なくなり、議題の持ち越しについて、「全くない」との回答が増加する。
採決の有無と議題の次回への持ち越し
(6)  会議資料配付の時期

 事務局の用意する会議資料を配付する時期について、小規模になるほど、会議日当日に配布されることが多くなり、前もって準備する余裕がないことが推察される。
会議資料配付の時期
(7)  自治体での教育改革の取り組み状況

 自治体での教育改革の取り組み状況において、どの程度積極的であるかを聞いたところ、小規模になるにつれて「やや消極的である」との回答割合が増え、逆に規模が大きくなるにつれて「非常に積極的である」との回答が増えている傾向がある。
自治体での教育改革の取り組み状況


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ