大学院部会における審議経過の概要-国際的に魅力ある大学院教育の展開に向けて-(要旨)

1.審議事項

  • 中央教育審議会大学分科会大学院部会は、平成15年12月より審議を再開し、大学院教育の実質化(大学院における教育の課程の組織的展開の強化)を図るための改革の基本的方向について審議。
  • 本審議の概要は、これまでの審議経過をまとめたもの。

2.大学院教育の実質化を図るための改革の基本的方向

今後の大学院の基本的方向

視点1 今後の大学院が果たすべき役割

  • 今後の知識基盤社会の到来を踏まえ、大学院は、「深い知的学識を涵養する高度な教育の課程を提供する場」であり、その使命をより積極的に果たすことが必要。
  • 今後の大学院は、特に以下の機能が重要。
    1. 高度な人材養成機能
      • 創造性豊かな優れた研究・開発能力を持つ研究者等
      • 高度な専門的知識・能力を持つ高度専門職業人
      • 確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員
      • 知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材
    2. 教育研究を通じた学術研究の高度化
    3. 地域社会、国際社会への貢献

視点2 課程制大学院制度としての在り方、発展の方向性

  • 国は、各課程について、当面、次のような考え方に沿って、重点的に施策を進めていく必要。
    • 【博士課程】
      産官学を通じたあらゆる研究・教育機関を担うために、創造性豊かな優れた研究・開発能力を持つ研究者等/確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員の養成を行う課程として、明確な役割を担う。
    • 【修士課程】
      1.研究者等養成の一段階、2.高度専門職業人の養成、3.知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材の養成など、社会の多様なニーズに的確に対応し、学士課程の教育をもとに、その専門性を一層向上させていく課程として、役割を担う。
    • 【専門職学位課程】
      幅広い分野の学部の卒業者、社会人を対象として、大学院段階より特定の高度専門職業人の養成に特化して、社会の各分野において国際的に通用する高度で専門的な知識・能力が必要とされる人材の養成を行う課程として、明確な役割を担う。
      ただし、専門基礎と実習・実技との関係等に配慮して、一貫した教育の課程の編成が重要である専攻分野については、学士課程に配慮。
  • 現状、各大学院のそれぞれの課程の目的・役割が不明確であり、国は、各大学院(専攻等)の課程の目的が明確に示されるよう方策を講ずる必要。

視点3 今後の大学院規模の全体の方向性

  • 今後の大学院の量的規模の方向性について展望すると、全体としては、進学需要全体の増加傾向に合わせ、着実な増加傾向になると予想。この傾向は、今後の知識基盤社会の到来に向けて、一般的には望ましいもの。
  • 大学は、人材需要の動向の把握に努めながら、新たな専攻等の設置、改組の検討を機動的に行っていく必要。
  • 学部規模との関係は、18歳人口の動向やそれぞれの大学が社会の中で果たすべき役割を再認識し、各大学の責任において十分検討する必要。

大学院の教育・研究機能の充実/強化

視点4 大学院教育の質を抜本的に向上するための課題

  • 各大学院(専攻等)が、それぞれの過程の目的等について焦点を明確にすることが求められ、これを前提として、大学院教育の実質化を推進することを重要であり、そのための課題は、以下のとおり。
    • 【基本的な課題】
      • (1)人材養成の観点からの大学院の機能の明確化
      • (2)大学院教育と学部教育、大学院以外の専門教育との関係の明確化
      • (3)大学院教育の実質化のための大学院組織のあり方
    • 【特に学問分野別検討が必要と考えられる課題】
      • (4)課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立
        • 教員の教育・研究指導能力の向上のための方策
        • 今後の研究者・技術者等として必要な高度な素養の涵養の在り方
        • 教員・学生の流動性の拡大のための方策
        • 社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策
      • (5)研究者養成機能の充実
        • 博士課程における体系的な教育課程の確立
        • 大学院の研究機能の強化(施設・設備など)
        • 学生に対する経済的支援と大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策
      • (6)実効性ある大学院評価の確立

視点5 大学院教育が発揮すべき人材養成の機能

  • 人材養成の機能ごとに、体系的な教育課程のもと、主に以下の教育が重要。
    • 【研究者等/大学教員の養成に必要な教育】
      • 多様な研究活動の場を通じて研鑽を積ませる教育
      • 学生の創造力、自立力などを磨かせる教育
      • プロジェクトのマネジメント能力を高める教育
      • 加えて、大学教員を目指す学生には、学生に対する教育方法を学ばせる教育
    • 【高度専門職業人の養成に必要な教育】
      • 「理論を実務の架橋」を目指し、国際的に活躍できる水準の高度で実践的・継続的な教育
      • 長期間の単位認定を前提としたインターンシップにより、学問と実践を組合せた教育
      • 特定の職業的専門領域における職業的倫理を涵養する教育
    • 【知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材層の確保に必要な教育】
      • グローバル化や科学技術の進展など社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与える教育を基本とし、課題に対する柔軟な思考能力と深い洞察に基づく主体的な行動力を兼ね備えるための高度な素養の涵養する教育
      • 1.学生の知的好奇心に応える教育、2.論文作成を基本とした教育のほかに、関連する分野の知識・能力を体系的に修得するコースワークを重視した教育
  • 各大学院は、魅力ある大学院教育を行うための組織的な取組み(FD)の実施が必要。
  • 国は、それを踏まえた魅力ある大学院教育の組織的展開(実質化)への重点支援とそれらの事例を広く社会に情報提供する必要(GP)。

視点6 大学院教育と学部教育、大学以外の専門教育との関係

  • 大学院教育は、学士課程の教養教育に十分な裏打ちをもつ専門的素養の上に立ち、専門性の一層の向上を図るための、深い知的学識を涵養する教育が基本。
  • 学部教育には、幅広い専門的素養のある人材育成のための教育などを基本として、高等教育としての確かな基礎的能力や生涯学習の基礎等を涵養することを期待。
  • 専門職学位課程における教育は、大学の学士課程の教養教育等を基礎として、特に「理論と実務の架橋」を重視し、深い知的学識に裏打ちされた高度の専門性が求められる特定の職業を担うための知識・能力を養うもの。
  • 専門学校は、実際的な知識・技術等を習得するための実践的な職業教育・専門技術教育機関として重要な役割を果たしてきており、その性格の一層の明確化を期待。

視点7 大学院教育の実質化のための大学院組織

  • 大学院教育に関する組織面の課題が指摘されている中、大学院教育を実施するための適切な組織の在り方について整理する必要。
  • もとより、大学院を置く大学は、大学院教育の実質化のための組織改革の在り方について、自主的な検討が必須。

視点8 大学院教育改革のための支援方策の基本的方向

  • 【基本認識】
    • 国は、1.大学院教育の実質化を図るための基盤形成の基本的な方向性の明示、2.そのための制度的な改革方策、及び財政基盤の充実について検討。
    • 大学院を置く大学のうち、特に大学院における教育研究活動に力点を置く大学は、学長のリーダシップの下、具体的な計画を策定し、改革を実行していくことが必須。
  • 【改革支援方策の基本的方向】
    • 各大学院(専攻等)が、特に人材養成機能の面で、自ら過程の目的等について焦点を明確にすること。これを前提として、大学院教育の実質化に焦点を当てた改革を総合的に進めていくことが重要。(必要な制度改正、集中的な計画など)
    • 制度改正:各大学院(専攻等)の課程の目的が明確に示されるよう、大学院設置基準に関係規定を新たに置く。
    • 集中的な計画:大学院教育の実質化のための総合的かつ集中的な取組期間を設けることも考えられる。

学位授与

視点9 学位制度の相互関係等の明確化等

  • 学位は、大学における教育の課程の修了に係る知識・能力の証明として、学術の中心として自律的に高度の教育研究を行う大学が授与するものであり、国際通用性・信頼性の観点が重要。
  • 専門職学位については、職業資格との関係等、更に検討する必要。また、我が国に相応しい専門的なアクレディテーションの早期確立が望まれる。
  • 学位授与の促進のための改善策として、以下の事項が挙げられる。
    • 国は、「課程博士」の授与の円滑化のため、毎年度、各大学の取組みを把握し、公表。
    • 各大学は、学位授与の至るまでのプロセスの明確化などが必要。
  • 「論文博士」制度の見直しは、大学院博士課程の教育機能の一層の向上が前提であると考えられ、今後、大学院教育の実質化の検討の中で、併せて議論していく。

視点10 学位授与(大学院)へのユニバーサルアクセスの拡大

  • 大学院教育が学生のニーズを的確に受容し、学位授与へのユニバーサルアクセスを拡大していくことは重要。
  • 国境を越えて展開される大学教育の提供により、学位授与の機会拡大を推進することも重要。その際、我が国を含め諸外国の大学の学位の通用性などについて判断できる情報ネットワークの構築が急務。

3.今後の審議の進め方

  • 今後は、学問分野別のWGを設置し、学問分野毎の審議を行い、更に検討を深化。
  • 大学院部会は、学問分野毎の審議状況を踏まえつつ、再度総合的な議論を実施し、最終的に答申をまとめていく。

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)