大学院部会における審議経過の概要-国際的に魅力ある大学院教育の展開に向けて- はじめに

 「大学改革」は、未だ道半ばにある。

 大学院は、深い知的学識を涵養する高度な教育の課程を提供する場であり、「知」の時代とも言われる21世紀にあって、その役割・使命は重要である。このため、大学院の教育研究機能の強化について、大学審議会、及びその任を引き継いだ本審議会において、これまで累次の答申、報告がなされてきた。国、大学等は、これらに基づく改革に取り組んできており、大学院の質的・量的な充実強化が図られてきていることは事実である。
 しかしながら、これまでの急速な量的な拡大は、大学院教育の質の分散化をもたらしている面もあり、結果的には、これまで指摘されてきた課題を解決するに至っておらず、現状では、総じて未だ大学院がその役割・使命を十分に果たしているとは言える状態にはない。
 さらには、専門職大学院の制度化などに代表される近年の大学改革により、高等教育における大学院教育とそれ以外の教育との関係についても、改めて整理が望まれるなど、大学院に関する新たな課題も指摘されている。

 また、現代社会を顧みるに、社会・経済・文化のグローバル化と変化の激しさを増す国際的な競争社会が到来し、今後、我が国では、少子高齢化が進み、社会経済を支える人材の減少も懸念されている。今後とも、我が国が国際競争力をもち、質の高い国民生活のできる国として持続的に発展していくためには、高度で知的な素養のある人材層が広く社会を支える知識基盤社会へと移行していく必要がある。
 このため、高度な人材養成機能をもつ大学院が、その役割・使命を積極的に果たし、国際的にも信頼性のある「魅力ある教育」を展開していくことは、国家社会の行く末を左右する重要な課題である。

 こうした観点から、平成13年4月の本審議会に対する文部科学大臣からの「今後の高等教育改革の推進方策について」の諮問においても、大学院の役割、在り方等について幅広く検討することが求められている。

 当部会は、このような状況認識の下、今後求められる大学院の在り方、如何にしてその教育研究機能の強化を図るべきかなどについて、審議検討を重ねている。その審議経過を通して、我が国の大学院が国際的に魅力ある教育を展開していくために、目下、最も重要なことは、各大学院が、特に人材養成機能の面で自らその目的について焦点を明確にした上で、競争的環境の中で多様化・分化しつつ、国際通用性・信頼性のある高い水準の教育を実践できるよう、その機能の実質化を推進することであると考える。

 会議では、関係者からのヒアリングを実施するなど多方面から総合的な視点で、主に大学院教育の実質化を図るための改革支援方策についての審議を計9回重ね、当部会は、ここに現時点までの審議経過の概要を取りまとめることとした。

 今後、当部会は、これまでの審議経過をもとに、学問分野別の審議等を進めることを通して、更に検討を深化させていく予定である。

 もとより、当部会がこれまで審議してきた改革支援方策等の実現には、大学等の関係者の努力のみならず、地域社会、産業界等の幅広い理解と支援を得ることが不可欠である。このため、当部会の審議経過が広く国民各層に周知されることを通して、今後、広く関係者の積極的な議論が展開されることを期待したい。

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