6.改革の円滑な実施のために

 今回示した教員養成・免許制度の改革方策については、教員を取り巻く状況や改革に対する国民の期待等を考慮すると、できる限り速やかに実現することが求められる。
 一方、これらの改革方策を実現するためには、教育職員免許法等の改正のほか、例えば、課程認定大学における教職課程の再編成や免許更新講習の開設のための準備、都道府県教育委員会における免許管理体制の整備、国における教員志願者等への制度改正の周知徹底や都道府県教育委員会等に対する支援等様々な準備が必要であり、今後、これらを遅滞なく進めていくことが必要である。

 今回示した改革方策は、現行の教員養成・免許制度を大きく変えるものであり、特に更新制の導入は、関係機関や関係者への影響も少なくないことから、国においては、制度導入の趣旨や制度の仕組みについて、課程認定大学や都道府県教育委員会、学校、教員、関係行政機関等に十分説明し、理解を得ることが重要である。
 また、教員に対する国民の揺るぎない信頼を確立するためには、今回の改革を通じて、多くの国民が教員養成や教員免許状に対して抱いているイメージを基本的に刷新することが必要である。国民や社会からの幅広い理解を得るため、国や課程認定大学、都道府県教育委員会、学校、教員等の関係者においては、それぞれに課せられた役割を十分果たすことにより、新しい教員養成・免許制度を国民の間に定着させていくことが必要である。

 今後とも、教員に優れた人材を得るためには、教職が魅力ある職業であることが不可欠であり、今回の改革が、教員や教員志願者の意欲を高めることにつながるようにする必要がある。このため、国や都道府県教育委員会等においては、教員や教員志願者に対して、教職実践演習(仮称)の新設や更新制の導入に対する理解を得るための取組を実施することが必要である。
 また、更新制の導入については、今でも多忙感を抱いたり、ストレスを感じる者が少なくないと指摘される教員に対して、いたずらに過重な負担を課すことにならないよう、各学校においては、免許更新講習の計画的な受講を可能とする校内の協力体制の確立や、学校の事務・事業の見直し、事後処理体制の整備等について、検討することが必要である。

 今回の改革においては、課程認定大学には、教職課程全体を通じた教職指導の充実や組織的指導体制の整備、教職実践演習(仮称)の開設等、大学の教職課程の水準を維持・向上させるための様々な取組が求められている。これらの取組は、教員や教員免許状に対する信頼を確立する出発点であり、免許更新講習の開設主体となることも併せ考えれば、課程認定大学は、今回の改革の成否を左右する中心的役割を担っていると言っても過言ではない。課程認定大学の関係者には、このような役割についての認識を深めるとともに、改革の円滑な実施に向けた真摯な取組が強く求められる。

 平成10年の教養審第二次答申を踏まえ、引き続き現職教員に修士レベルの教育機会を提供することにより、主体的な資質能力の向上を促すことが必要であるが、特に教職大学院の創設を契機に、都道府県教育委員会等は、これまで以上に、大学院修士レベルへ現職教員を積極的に派遣することが必要である。このため、国においても、引き続き、研修等定数の措置を行うことが重要である。また、修士レベルの教育を受け、専修免許状を取得した教員については、都道府県教育委員会等において、その資質能力を適正に評価した上で、給与をはじめ所要の処遇改善を図ることが必要である。

 今後、各学校が、複雑・多様化する教育課題に適切に対応するためには、学校は一つの組織体であるとの認識のもと、教員同士が学び合い、高め合っていくという同僚性や学校文化を形成することが重要である。このため、教員の資質能力の向上を図る際には、個々の教員の能力向上という視点だけでなく、学校における校務遂行上のチームワークを重視し、全体的なレベルアップを図るという視点を持って、校内研修の充実等に努める必要がある。

 また、有機的、機動的な学校運営が行われる体制をつくることも重要であり、このため、校務分掌などの校内組織を整備するとともに、個々の教員の知識・経験を他の教員も共有できるよう校内体制の在り方を検討することが必要である。校長や教頭等の管理職に優れた人材を確保するとともに、それを支える体制の整備についても、検討する必要がある。

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