(2)「教職実践演習(仮称)」の新設・必修化

-教員としての資質能力の最終的な形成と確認-

 今後は、教員として最小限必要な資質能力の全体について、教職課程の履修を通じて、確実に身に付けさせるとともに、その資質能力の全体を明示的に確認することが必要である。具体的方策としては、教職課程の中に、新たな必修科目(「教職実践演習(仮称)」)を設定し、その履修により確認することが適当である。
 教職実践演習(仮称)には、教員として求められる4つの事項(1.使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項2.社会性や対人関係能力に関する事項3.幼児児童生徒理解に関する事項4.教科等の指導力に関する事項)を含めることとすることが適当である。
 実施に当たっては、演習(指導案の作成や模擬授業・場面指導の実施等)や事例研究、グループ討議等を適切に組み合わせて実施することや、教職経験者を含めた複数の教員の協力方式により実施すること、最終年次の配当科目とすることなどの工夫をすることが適当である。
 教職実践演習(仮称)が成果をあげるためには、課程認定大学が、教員の相互の連携・協力体制の強化を図るとともに、科目内容・方法や実施体制等について、大学をあげて検討することが重要である。

大学の教職課程で養成すべきとされてきた資質能力のうち、専門的な知識・技能以外については、これまで基礎資格(学士の学位等)の取得及び教職課程の科目の単位修得等により確認されている部分があるものの、教員の役割等を踏まえた実践的指導力の基礎などの最終的な形成は、教職指導等を通じて個々人において形成されているとして、明示的には確認されてこなかった部分である。このため、今後は、課程認定大学において、教員として最小限必要な資質能力の全体について、教職課程の履修を通じて、確実に身に付けさせるとともに、その資質能力の全体を明示的に確認する方策を講ずることが必要である。これにより、教員免許状の授与の前提として、教員として最小限必要な資質能力の全体を確認(保証)することになり、免許状に対する信頼が高まる。

 具体的方策としては、「大学における教員養成」の原則や、我が国の教員免許制度等との関係を考慮すると、教職課程の中に、新たな必修科目(「教職実践演習(仮称)」)を設定し、その履修により確認することが適当である。当該科目は、教職課程の履修全体を通じて身に付けるべき資質能力を最終的に形成し、その確認を行うための総合実践を行う科目として位置付けられるものである。

 教員養成の水準や教員免許状の質を確保するとともに、教職実践演習(仮称)の履修を通じて、教員としての資質能力の確実な確認が行われるようにするためには、教職課程の他の科目と同様、この科目に含めることが必要な事項を、法令上、明確にすることが必要である。当該科目の目的等を考慮すると、具体的には、教員として求められる4つの事項(1.使命感や責任感、教育的愛情等に関する事項2.社会性や対人関係能力に関する事項3.幼児児童生徒理解に関する事項4.教科等の指導力に関する事項)を含めることとすることが適当である。
 これらの項目を科目の中でどのように構成し、実施するかは、基本的に各課程認定大学の判断に委ねられるものであり、また、学校種によっても異なるものと考えられるが、実施に当たっての着眼点を例示するとすれば、別添1のような点が考えられる。

 また、教職実践演習(仮称)の内容・方法等の検討に当たっては、最新の教育に関する動向等を踏まえつつ、例えば教職の意義や教員の役割等を再確認させたり、教員の具体的職務内容や学校現場の実態等についての理解を深めさせたり、教科指導や生徒指導等に関する実践的指導力の基礎を定着させる等、教員としての資質能力を確認するための総合的な実践を行うことに留意する必要がある。

 教職実践演習(仮称)の実施に当たっては、講義形式は極力避け、演習(指導案の作成や模擬授業・場面指導の実施等)や事例研究、グループ討議等を適切に組み合わせて実施することや、基本的に教職経験者を含めた複数の教員の協力方式により実施すること、最終年次の配当科目とすることなど、履修方法等を適宜工夫することが適当である。

 成績評価については、例えば複数の教員が多面的な角度から評価を行い、その一致により単位認定を行うことや、教職経験者が評価に加わること等、学校現場の視点も加味した、適切な評価が行われるよう工夫をすることが必要である。

 教職実践演習(仮称)の最低修得単位数は1単位程度とすることが適当であると考えるが、2単位程度は必要ではないかとの意見もあり、さらに検討することが必要である。科目区分については、この科目の性格が、教科に関する科目と教職に関する科目の双方の目的・内容等を基盤とするものであることから、現行の科目区分とは異なる新たな科目区分(「総合実践に関する科目(仮称)」)を設けることが適当である。この場合、教職に関する科目に属する既存の科目(例えば、教職の意義等に関する科目や教育実習等)についても、あわせて科目区分の在り方を見直すことが適当かどうか、検討することが必要である。

 教職実践演習(仮称)を新設することとした場合、教員免許状の取得に必要な総単位数の在り方については、現行の総単位数を維持することが適当であると考えるが、総単位数の増加も含めて検討すべきではないかとの意見もある。この点については、課程認定大学等関係者の理解を得ることも必要であり、単位数を増加することとした場合の教育上の意義や効果、教育体制の整備等大学側の負担や学生の履修上の負担等を総合的に考慮しつつ、さらに検討することが必要である。なお、総単位数を維持することとした場合、関連する教職に関する科目(例えば、教職の意義等に関する科目)の単位数を減ずるなどの措置を講ずることが適当である。

 教職実践演習(仮称)は、教職課程の他の科目の履修や教職指導の成果が、学生の中で統合され、最終的に教員として必要な資質能力が形成されたことを確認するという、他の科目にはない特色を有している。このような性格の科目が期待される成果をあげるためには、各課程認定大学が、この科目の創設の趣旨を踏まえ、教科に関する科目の担当教員と教職に関する科目の担当教員の相互の連携・協力体制の強化を図るとともに、具体的な科目内容・方法や実施体制等について、大学をあげて検討することが重要である。また、この科目と他の科目や教職指導との関連を明確にするなど、教職課程全体の体系的な編成を進めることが必要であり、各課程認定大学において、教員養成カリキュラム委員会等の組織を活用して、この点の検討を行うことが求められる。

 教職実践演習(仮称)の内容等については、上記の基本方向を踏まえつつ、今後、課程認定大学等関係者の意見を聴くなどしながら、専門的見地から、さらに検討することが必要である。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成21年以前 --