(4)管理職の一層の適材確保

 組織的な学校運営を進める上でも、校長やこれを支える教頭といった管理職に人を得ることが肝要であることは言うまでもないところである。
 管理職の適材確保については、これまでも、その選考の在り方について、知識等に偏重しないで、より人物、識見を重視する方向で、例えば面接を取り入れたり、筆記試験の比重を少なくするなどの取組が行われてきたところである。また、その研修においてマネジメント研修や社会体験を取り入れるなど、管理職としての能力の向上を図る取組も進められてきたところである。さらに、中央教育審議会の提言を踏まえ、平成12年の学校教育法施行規則の改正により、校長、教頭の資格要件を緩和する制度改正が行われた。これにより、各教育委員会において、民間人をはじめ幅広い人材の登用が図られているところであるが、これについては、今後、その成果を地域全体に広げていくことが課題となっていると言える。
 これらを踏まえ、管理職の一層の適材確保について検討する必要があると考える。

1.管理職の一層の適材確保

 管理職の適材確保については、その登用後の研修も重要であるが、登用前の管理職の育成が重要である。とりわけ、前述のキャリアの複線化を図るとすれば、管理職を志向する者について必要な資質能力を育成することが大切となるであろう。

(ア)管理職の育成と登用

  • 管理職の人材育成と適材確保の観点から、管理職となる候補者に研修などを行い、そのなかで資質能力を育成しながらこれを見極めて登用を行うよう、例えば管理職候補者登録制などの仕組みについて検討する必要があると考える。その場合、管理職候補者を前述の主幹や教務主任などとしてOJTを行うことも考えられる。
  • 管理職としてふさわしい人材を育成するため、独立行政法人教員研修センターや各教育委員会の研修センターの一層の活用が必要である。それとともに、教職員については、日々の業務を通じて管理職としての資質能力を身に付けることや、これに関する研修の機会が必ずしも十分にあるとは言えないことから、大学院における研修などの充実も含め、大学院と連携した育成の在り方について検討することも考えられるのではないか。
  • 管理職の登用については、教員の年齢構成や今後の退職者数の推移を踏まえ、計画的な人事を行い、在職期間の長期化を図るなど、それぞれの理念や能力を発揮できるようにすることも重要な視点であると考える。

(イ)幅広い人材登用

  • 教頭について、校長と同様、民間人などを登用できるよう、学校教育法施行規則の改正により、その資格要件を緩和することについて検討する必要があると考える。さらに、前述の事務長や主幹についても民間人などを登用することが考えられるのではないか。
  • キャリアの複線化のなかで、教頭は校長になれなかった人というのではなく、教頭としてまっとうする人、さらに前述のスーパー・ティーチャーなどとしてまっとうする人など、教職員のキャリアの在り方も様々な形があってよいのではないかと考える。

(ウ)組織全体の総合力の向上

  • 学校運営の責任者は校長であるが、校長一人がすべてを担うのではなく、学校組織全体の総合力を高めることが重要である。そのためには、すべての職員が自らの職責を自覚しながら能力や個性を発揮し、組織全体として有機的な運営態勢となることが求められることから、例えば、教育活動面で特に力量のある校長のもとに民間人等の教頭を配することなどが有効であると考えられる。
  • さらに、組織的な学校運営を行うには、すべての教職員がマネジメントの発想やリーガル・マインドを持ちながら教育活動を含め業務を遂行することが大切であり、そのような研修等について工夫することも必要であろう。それとともに、学校の組織運営全体について整理しておくことで、人事異動などがあっても、全体の組織運営の流れは維持されるものと考えられる。

2.教育委員会の学校支援

 組織的な学校運営を進めるには、前述の管理職の適材確保、あるいは組織体制の整備などと同時に、教育委員会が学校を支援する機能を強化することが不可欠である。これについては、地方教育行政部会で同様の検討が行われているが、本作業部会としても、以下の点について言及があったところである。

  • 学校への支援の強化や教育委員会とのパイプ役となるよう、校長職、教頭職に相当する学校支援の専門職を教育委員会に置くことができるような仕組みについて検討する必要があるのではないかと考える。その場合、これを含め計画的な人事を行うことにより、管理職の在職期間の長期化を図ることも考えられる。
  • 特に危機管理などにおいて学校を支援する機能を充実し、例えば事件、事故などの場合、法務相談をはじめ学校を支援し、学校に過度の責任を負わせないようにすることが求められる。
  • 教育委員会の行政評価の中で、教育委員会の学校への支援が十分に行われているかチェックすることも重要な視点であると考える。
  • 学校の権限の強化に伴い、学校が適切にその権限を行使しているか、管理職のマネジメントがうまく機能しているかなどについて、学校現場自らや住民が評価することが重要になるであろう。
  • 学校の評価に関連して、学校現場からのフィードバックを可能にするシステムについても検討する必要があると考える。

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