(2)学校の組織体制の再編整備

 学校においては、その責任者は校長であることは言うまでもないが、個々具体の業務については、校務分掌などの校内組織が定められ、教職員が分担してこれを処理することとされている。しかし、校長、教頭以外は横一線に並んでいる、いわゆる「なべぶた」組織といわれ、かつ、横一線に並んでいる教職員については、「一人一役」の考え方のもと、担当が細かく分けられ、かえって分かりにくいものとなっている。このため、実際には、分掌とは関係なくその場で気が付いた者が処理することがあるなど、組織が実態と必ずしも合っておらず、責任をあいまいにしていることもある。
 また、先に述べたように、学校においては集団としての力を生かすことが大切であると考えられることから、各教職員の適切な役割分担と連携によりチームとしての機能を発揮し、学校全体の組織力の向上につながるようにする視点も重要であると言えるのではないか。
 これらを踏まえ、組織的な学校運営を実現するため、簡潔で機能的な校内組織の在り方について検討する必要がある。その際、今行われている業務をきちんと分析し、その上で事務改善を図るという発想が求められよう。
 一方で、現在の学校運営は実質的には校長と教頭で行われていると言っても過言ではない。しかし、学校の権限の拡大などにより、学校における最終的な責任者は校長であるとしても、すべてを校長、教頭が担うことは難しいと考えられることから、これら学校運営を支える機能の充実について検討する必要がある。さらには、学校運営を支える機能の一つとして、事務処理体制について、学校自らが適切に権限を行使できるようにするとともに、教育活動の充実に資するものとなるよう検討する必要がある。

1.校務分掌など校内組織の整備

 各学校において校務分掌などの校内組織が定められているが、前述のように、「一人一役」の考え方により校務が細かく分けられ、担当する職員が入り組んでおり、組織が複雑で分かりにくく、かえって責任の所在が不明確になっているものもある。極端な例では、備品ごとにこれを管理する担当者が決められ、学校全体の備品の管理について、誰が責任を持ちどのように管理されるのか分からない場合も見られる。
 職員がいろいろな経験をすることは意義のあることであるが、事務が細分化され、かつ担当者がしばしば変わるのでは、そのノウハウの蓄積もなく責任感も育ちにくく、組織的な学校運営にとってはかえって逆効果であるとも言える。
 また、各種の委員会等が置かれ、これに伴う会議や打合せが頻繁に行われることにより、かえって学校運営を非効率なものとしている場合もある。
 このため、組織的で効率的な学校運営が行われるよう、スクラップ・アンド・ビルドの考え方を踏まえ、校務分掌の整理合理化や会議のスリム化といった校内組織の見直しを行う必要があると考える。その際、地域、保護者との連携の一層の推進や情報公開、情報発信の重要性の高まりなどを踏まえ、渉外の業務の明確な位置付けにも留意することが大切であると考えられる。

(ア)校務分掌の整理合理化

  • 校務分掌などについて整理合理化を行い、これを簡潔なものとする必要がある。その際、教育活動の領域とこれを支える領域に分けて、その有機的な連携を図ることも考えられる。
  • 新たな課題に対応できるよう柔軟に組織を見直し、例えば、○○(まるまる)委員会といった新しい組織を作るときは、スクラップ・アンド・ビルドの考え方により、既存の組織に加えるだけではなく、組織の統廃合を行うことが大切である。併せて、非効率な業務や慣行の見直しを行うことも大切であると考える。
  • 校長が代わるときなど随時校内組織を見直すことも適当であると考える。

(イ)会議のスリム化

  • 組織が複雑化し、例えば委員会や部会などが多くなれば、それだけ会議が増えて時間を取られることになる。組織を整理し、会議をできる限り少なくする必要がある。
  • 職員会議については、中央教育審議会の答申を踏まえ、学校教育法施行規則について、その位置付けを明確にする規定整備が行われ、より一層適正な運営が図られたところである。さらに、企画調整会議などを有効活用し、職員全体が集まる必要がある場合に限定するなど、そのスリム化を図ることも重要である。

(ウ)渉外・広報の位置付け

  • 校内組織の見直しに際しては、学校の説明責任や地域住民などの参画などによる対外的な業務の重要性の高まりに合わせ、渉外の業務を明確に位置付ける必要があるのではないか。
  • また、情報発信の機能も充実する必要があり、広報などの位置付けも重要である。

2.学校運営を支える機能の充実

 学校組織については、校長、教頭以外は横に並んでいる、いわゆる「なべぶた」組織であると言われている。これは、一人一人が責任を持って業務に当たる上では一定の役割を果たすかもしれないが、組織的な学校運営をかえって難しくしている面もあるのではないか。このような組織では、前述の「一人一役」の考え方とあいまって、その場の対応に終始したり、責任の所在を不明確にするおそれもあると考えられる。
 前述のように、学校の権限の拡大などに伴い、このような「なべぶた」組織では対応しきれないと考えられることから、組織的な学校運営を支える機能が重要であると言える。先に述べたように、学校においては集団としての力を生かすことが求められることから、組織的な学校運営においては、校長、教頭のもとでそれぞれのグループをまとめたり調整を行う中間的な指導層の役割も大切である。同時に、新たな課題への対応も含め、様々な専門職や外部の力の活用が求められているところであり、これらを有機的に連携させ、学校全体の総合力を向上させるよう調整を図る機能も大切である。
 主任制については、中央教育審議会の提言も踏まえながら、一層の定着が図られてきたところであり、全体としては概ね定着してきていると考えられる。特に教育指導面などにおいてその機能を果たしているという認識がある一方で、例えば校長の方針などを組織全体に伝達するには一人一人に説明することになるなど、校務運営面では必ずしも十分に機能していないという指摘もある。これに対し、東京都では担当する校務をつかさどる主幹を置いているが、これについては、担当する校務の責任ある処理が期待できるとともに、管理職と各職員のいわばパイプ役となってその意思疎通や理解に寄与するなどの効果が見られるという指摘もある。
 これらを踏まえ、学校運営を支える機能の充実について検討する必要があると考えるものである。
 さらに、学校組織においては、職員の横並びが指摘される一方で、横の連携が必ずしも十分に行われず、例えば、授業を他の教員に見せたがらない、指導方法について相談することを好まない、あるいは先輩が後輩を指導することが余りないなど、OJT(On the Job Training)が十分に行われず、一人の職員の研修の成果が他の職員になかなか共有されないこともある。組織的な学校運営を支える在り方の一つとして、組織力の向上に資するよう職員間の連携を更に図ることも大切であると考える。

(ア)学校運営を支える体制の整備

  • 校長や教頭を支えるものとして、例えば教頭や教務主任などを副校長や副教頭として位置付け、これに一定の権限を委ねるような仕組みについて検討する必要があると考える。
  • また、例えば教育課程管理などにおいて主任が機能するよう更にその定着を図り、あるいは、必要に応じ、管理職を補佐して担当する校務をつかさどるなど、一定の権限を持つ主幹などの職を置くことができるようにする仕組みについて、更に検討する必要があると考える。
  • その場合、これらを一律に行うのではなく、それぞれの実情に応じて工夫することが大切である。
  • 教頭の役割を再確認し、その機能をより確固としたものとすることも大切であると考える。また、教頭の複数配置の一層の活用について検討することも考えられる。

(イ)職員間の連携

  • 職員間の連携をより一層緊密なものとし、特色ある学校づくりなどに学校全体として取り組むことが大切である。
  • そのためには、個々人の知識や経験を学校全体で共有することが重要であり、例えば、研修の成果を他の職員も共有できるよう校内研修を行うなど、「知の共有化」が図られる体制を作ることが必要である。

3.事務処理体制の整備

 学校の権限の拡大などにより、学校が自ら責任を持ってその事務、業務を執行することが必要となる。そのなかで、事務職員は、より効果的、効率的な事務処理を図り、事務執行や渉外などにおいて学校経営の専門スタッフとして中心的な役割を担うことが期待される。しかし、特に小・中学校については、事務職員の配置が1人のところが多く、十分な組織体制が取れず、教育行政サービスに差が生じたり、安定性に欠ける場合もある。また、上司、先輩の指導助言も得られないなど、職員自身の資質や意欲の向上を図りにくいという問題がある。また、高等学校等も含め、事務組織の職務権限が必ずしも明確でなかったり、一層の権限の委任が効果的であると考えられるものもある。
 このようなことを踏まえ、人的措置を含め事務処理体制を整備し、前述の教育活動を支える領域として明確に位置付けることが必要ではないか。これにより、効率的で安定的な事務処理が図られるとともに、指導時間の確保など教員が教育活動により専念できる環境づくりにもなり、教育活動の領域にも好影響を与えると考えられる。
 また、教育委員会事務局と学校との間において、学校事務に関し適切な役割分担と協力が大切である。

  • 事務処理体制が必ずしも十分でない小・中学校については、事務処理の効率化、標準化や職員の資質向上のため、事務の共同実施を推進する必要があると考える。具体的には、拠点校に共同実施組織を置き、各校の事務職員が定期的に集まって共同処理を行う方式などが考えられる。
  • その場合、共同実施組織に事務長を置くことができるようにするなど、その制度化についても更に検討する必要があると考える。これにより、学校への権限委譲を更に進め、状況に応じ共同実施組織に予算を示達するなど、一層の効果が期待できるのではないか。
  • 高等学校等においては、事務長や事務室の職務権限の明確化、一層の機能強化について検討する必要があると考える。
  • また、事務局と学校の事務職員の人事交流なども考えられる。
  • マネジメント研修も含め研修などにより、事務職員の事務能力のみならず教育活動への理解や学校運営に参画する意欲の向上を図るとともに、管理職や教員の事務に対する理解を進め、相互に刺激し合うようなことも大切ではないか。
  • これらに関連して、事務処理も含め学校運営面のIT化を進める必要があると考える。

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