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第3章 新時代における高等教育機関の在り方

○ 本章では、中長期的(平成17(2005)年以降、平成27(2015)年~平成32(2020)年頃まで)に想定される我が国の高等教育の将来像のうち、主としてそれぞれの高等教育機関の在り方に関する事項を示すこととする。

1 各高等教育機関の教育・研究の質の向上に関する考え方

○ 大学・短期大学・高等専門学校・専門学校が、それぞれの教育・研究について必要な改善・充実に努め、質の向上を図ることは、今後とも重要な課題である。

(1)大学

 大学は、学術の中心として深く真理を探求し専門の学芸を教授研究することを本質とするものであり、その活動を十全に保障するため、伝統的に一定の自主性・自律性が承認されていることが基本的な特質である。
 このような特質を持つ大学は、今後の知識基盤社会において、公共的役割を担っており、その社会的責任を深く自覚する必要がある
 国際的通用性のある大学教育または大学院教育の課程の修了に係る知識・能力の証明としての学位の本質を踏まえつつ、今後は、教育の充実の観点から、学部や大学院といった組織に着目した整理を、学士・修士・博士・専門職学位といった学位を与える課程中心の考え方に再整理していく必要があると考えられる。

(ア)大学の自律性と公共性

○ 大学とは、学術の中心として深く真理を探求し、専門の学芸を教授研究することを本質とするものであり、その活動を十全に保障するため、伝統的に一定の自主性・自律性が承認されていることが基本的な特質である。また、このような大学における教育の課程の修了に係る知識・能力の証明として授与されるものが学位である。

○ 社会が発展していくためには、その基盤として、新しい知識を創造するとともに高度に活用する高い専門性を持った人材を育成することが不可欠である。人類の長い経験と叡智の中で、これを最も良く担う社会的な存在として確立されてきたものが大学にほかならない。大学は、社会と関連性を保ちつつも一定の距離を置いた自主的・自律的な存在として、教育と学術研究を通じて社会全体の共通基盤の形成に寄与してきたのである。

○ 今後の知識基盤社会において、我が国が伝統的な文化を継承しつつ国際的な競争力を持って持続的に発展するためには、知的創造を担い社会全体の共通基盤を形成するという大学の公共的役割が極めて重要であり、大学は、その設置形態のいかんを問わず、大学としての社会的責任を深く自覚することが必要である。

○ これからの知識基盤社会において求められる人材は、大学のみならず高等専門学校、専門学校、さらには企業内教育等の社会教育においても育成することが期待される。しかし、こうした多様な機関による人材育成は、社会全体の共通基盤の形成という大学の役割を土台としてこそ最も効果的に行われるものであり、社会にとっての大学の重要性を一層高めるものと考えられる。この意味でも、大学においては特に「出口管理」の強化が重要である。

(イ)学位と課程

○ 国際的通用性のある大学教育または大学院教育の課程の修了に係る知識・能力の証明として、学術の中心として自律的に高度の教育・研究を行う大学が授与するという学位の本質は、国際的に共通理解となっている。

○ このため、学位に関する検討を行うに当たっては、学位が国際的通用性のある大学教育等の修了者の能力証明として発展してきた経緯を踏まえ、課程を修了したことを表す適切な名称の在り方、他の学位との相互関係等を踏まえて審議していく必要がある。例えば、博士の学位は独立した研究者としての基礎的な能力証明を意味するものとして授与されるべきとの考え方もある。

○ 現在、大学は学部・学科や研究科といった組織に着目した整理がなされている。今後は、教育の充実の観点から、学部・大学院を通じて、学士・修士・博士・専門職学位といった学位を与える課程(プログラム)中心の考え方に再整理していく必要があると考えられる。

(ウ)教員組織

 大学が、人材育成と学術研究の両面において、本来の使命と役割をより積極的かつ効果的に果たしていくためには、常に教員組織の在り方が最も適切なものとなるよう努力していくことが必要である。現行制度では、大学教員の基本的な職として、教育・研究を主たる職務とする職である教授及び助教授とともに、主たる職務が教育・研究か教育・研究の補助かが必ずしも明瞭でない助手の職が定められている。今後はこれを見直し、教育・研究を主たる職務とする職としては、教授、准教授のほかに新しい職として「助教」を設けて3種類とするとともに、助手は、教育・研究の補助を主たる職務とする職として定めることが適当である。また、大学設置基準の講座制や学科目制に関する規定を削除して、教員組織の基本となる一般的な在り方を規定し、具体的な教員組織の編制は、各大学が自ら教育・研究の実施上の責任を明らかにしつつ、より自由に設計できるようにすべきである。

○ 大学が、人材育成と学術研究の両面において、本来の使命と役割をより積極的かつ効果的に果たしていくためには、常に教員組織の在り方が最も適切なものとなるよう努力していくことが必要である。特に、今日、若手教員が自らの資質・能力を十分に発揮して活躍できるよう、助教授・助手の位置付けの見直しを図る必要があること等が指摘されている。

○ 現行制度では、大学教員の基本的な職として、教育・研究を主たる職務とする教授及び助教授の2種類の職とともに、教育・研究を主たる職務とするか教育・研究の補助を主たる職務とするかが必ずしも明瞭でない助手の職が定められている。

○ このうち、現行の助教授の職は、職名や職務内容が実態にそぐわない等の指摘や国際的通用性の観点を踏まえて廃止し、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」ことを主たる職務とする「准教授」を設けることが適当である。

○ また、現行の助手については、教員組織における位置付けが曖昧で、実際に担っている職務も多様であることから、将来の大学教員等を志す者にとってキャリア・パスの第1段階となる職が明らかになるよう、自ら教育・研究を行うことを主たる職務とする新しい職を設けるとともに、助手は、教育・研究の補助を主たる職務とする職として定めることが適当である。

○ 新しい職の名称については、大学の教員組織の一員として自ら教育・研究を行うことを主たる職務とする若手教員の位置付けに相応していること、現行の学校教育法上の各職の定着度や知名度、運用の実態等を踏まえたものであること、国語的・文化的な観点からできる限り自然な名称であること、国際的な通用性の観点からも説明しやすいものであること等に十分留意することが必要であり、これらを総合的に勘案すると、「助教」という名称が最も適当と考えられる。

○ これらの措置により、今後の大学教員の基本的な職としては、教育・研究を主たる職務とする職として教授、准教授及び助教の3種類を、教育・研究の補助を主たる職務とする職として助手を定めることとすることが適当である。

○ なお、准教授、助教及び助手は、基本的には、大学に置かなければならない職としつつ、各大学の方針や各分野の実情等によっては、置かないことができることとすることが適当である。

○ また、准教授や助教を新設する場合も、大学には、大学院学生等への教育、教育課程の編成、入学者選抜、診療等、大学が組織として決定した方針等に従い、各教員の役割分担及び連携の下、組織的に行わなければならない職務が存在する。こうした職務の遂行について支障が生じないよう、大学設置基準等に各教員の役割分担及び連携の組織的な体制が確保され、かつ、責任の所在が明確であるよう教員組織を編制するものとする旨を規定すべきである。

○ 各大学が、教育・研究の実施の責任を自ら明らかにしつつ、具体的な教員組織の編制をより自由に設計することができるよう、講座制又は学科目制を基本原則とする現在の大学設置基準の規定を削除し、教員組織の基本となる一般的な在り方として、教育・研究上の目的を達成するために必要な教員を置き、主たる授業科目は原則として専任の教授または准教授が担当することや、各教員の役割分担及び連携の組織的な体制の確保等に関する規定を定めるべきである。

○ 上記の制度改正が円滑に、かつ、実効性をもって機能するためには、各大学が制度改正の趣旨を生かして積極的に取り組むことが必要である。各大学において真摯な検討と取組が行われ、教育・研究が一層活性化することが期待される。また、助教等若手教員の活躍を通じた教育・研究の活性化を促すための支援措置の充実を図っていくことが求められる。

○ 高等専門学校の教員組織に関しても、大学の教員組織に関する見直しの趣旨が該当するものについては、同様に見直しを図ることが適当である。

(エ)学士課程

 学士課程について、各大学には、大学における「教養教育」や「専門教育」等の在り方を総合的に見直して再構築することにより、現状よりさらに充実した教育を展開することが強く求められる。
 学士課程は、「21世紀型市民」の育成・充実を目的としつつ、教養教育と専門基礎教育を中心に主専攻・副専攻を組み合わせた「総合的教養教育型」や「専門教育完成型」など、様々な個性・特色を持つものに分化し、多様で質の高い教育を展開することが期待される。教育の充実のため、分野ごとにコア・カリキュラムが作成されることが望ましい。また、コア・カリキュラムの実施状況は機関別・分野別の大学評価と有機的に結び付けられることが期待される。
 修業年限については、従前どおり学士課程を4年かけて卒業する経路のほか、修士・博士・専門職学位課程との関係では、学習経路が多様化し、特に総合的教養教育型において学士課程3年修了による大学院進学という制度が積極的に活用されることが考えられる。
 企業採用に向けた就職活動は、大学と産業界の連携の下、学士課程教育に実質的に支障のないよう配慮が必要である。また、修了・卒業直後の1年間での様々な活動体験や短期在外経験等を重視することも期待される。

《学士課程の多様性》

○ 社会が複雑かつ急激な変化を遂げる中で、各大学には、幅広い視野から物事をとらえ、高い倫理性に裏打ちされた的確な判断を下すことができる人材の育成が一層強く期待されている。各大学には、大学における「教養教育」や「専門教育」等の在り方を総合的に見直して再構築することにより、現状よりさらに充実した学士課程教育を展開することが強く求められる。

○ 学士課程段階での教育には「教養教育」や「専門基礎教育」等の役割が期待される一方で、職業教育志向もかなり強い。したがって、今後の学士課程教育は、「21世紀型市民」の育成・充実を共通の目標として念頭に置きつつ、教育の具体的な方法論としては、様々な個性・特色を持つものに分化していくものと考えられる。例えば、学士課程段階では、教養教育と専門基礎教育を中心として主専攻・副専攻の組合せを基本としつつ、専門教育は修士・博士課程や専門職学位課程の段階で完成させるもの(言わば「総合的教養教育型」)や、学問分野の特性に応じて学士課程段階で専門教育を完成させるもの(言わば「専門教育完成型」)等、多様で質の高い教育を展開することが期待される。

○ 大学(学士課程段階)への進学率の上昇や高等学校教育の多様化等に伴い、入学者の能力・適性や志向も多様化してきていること、また、伝統的学生のみならず社会人学生や外国人留学生が増加していること等を踏まえ、学士課程・短期大学の課程等の大学教育は、全体として一層の多様性を確保し、誰もがアクセスしやすい高等教育システムを構築することが求められている。

《教養教育》

○ 新たに構築されるべき「教養教育」は、学生に、国際化や科学技術の進展等社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与えるものでなければならない。各大学は、理系・文系、人文・社会・自然といった、かつての一般教育のような従来型の縦割りの学問分野による知識伝達型の教育や単なる入門教育ではなく、専門分野の枠を超えて共通に求められる知識や思考法等の知的な技法の獲得や、人間としての在り方や生き方に関する深い洞察、現実を正しく理解する力の涵養に努めることが期待される。

○ このような観点から、教養教育に携わる教員には高い力量が求められる。加えて、教員は教育のプロとしての自覚を持ち、絶えず授業内容や教育方法の改善に努める必要がある。入門段階の学生にも高度な知識を分かりやすく興味深い形で提供したり、学問を追究する姿勢や生き方を語ったりするなど、学生の学ぶ意欲や目的意識を刺激することも求められる。

《専門教育》

○ 職業的素養にかかわる専門教育については、専門職大学院制度の発足を契機として、学士課程段階を中心に完成させるものと修士課程・専門職学位課程段階を中心に完成させるものを、学問分野の特性や各種職業資格との関連に応じて具体的に仕分けして考えていく必要がある。

《カリキュラム、単位、年限》

○ 学士課程は、基本的役割として、学生の人格形成機能や生涯にわたる学習の基礎を培う機能を担っており、内容の充実した教養教育や専門教育を行うことが不可欠である。そこで、学士課程教育の充実のため、分野ごとにコア・カリキュラムが作成されることが望ましい。また、このコア・カリキュラムの実施状況は、機関別・分野別の大学評価と有機的に結び付けられることが期待される。

○ 単位の考え方について、国は、基準上と実態上の違い、単位制度の実質化(単位制度の趣旨に沿った十分な学習量の確保)や学修時間の考え方と修業年限の問題等を改めて整理した上で、課程中心の制度設計をする必要がある。

○ 学士課程教育の修業年限については、国際的通用性の確保や単位制度の実質化等に十分留意しつつ、検討していく必要がある。従前どおり学士課程を4年かけて卒業する経路のほか、修士・博士・専門職学位課程との関係では、学習経路が多様化するものと考えられる。この場合、特に第2章3(2)で1.2.の機能を重視する大学が学士課程教育を総合的教養教育型にする場合においては、学士課程3年修了による大学院進学を積極的に活用することが考えられる。

《就職活動》

○ 企業採用に向けた就職活動は、大学と産業界の連携の下、その早期化・長期化による学士課程教育への実質的な支障のないよう十分な配慮が必要である。さらに、修了・卒業直後の1年間での様々な活動体験や短期在外経験等を重視することも期待される。

(オ)大学院(修士・博士・専門職学位課程共通)

 大学院教育については、課程制大学院制度の趣旨を踏まえて、それぞれの課程の目的・役割を明確にした上で、大学院における教育の課程の組織的展開の強化(大学院教育の実質化)を図る必要がある。
 修士課程は、研究者等養成(の第1段階)、高度専門職業人養成及び「21世紀型市民」の高度な学習需要への対応の三つの機能を担うものであり、これに沿った体系的な教育課程を編成する必要がある。
 博士課程は、創造性豊かな優れた研究・開発能力を持ち、産学官を通じたあらゆる研究・教育機関の中核を担う研究者等及び確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員を養成する。このため、体系的な教育課程を編成する必要がある。
 今後の知識基盤社会にあっては、博士号取得者が、研究・教育機関ばかりではなく企業経営、ジャーナリズム、行政機関、国際機関等の多様な場で中核的人材として活躍することが期待される。
 専門職学位課程は、多様な分野(例えば、法曹、MBA・MOT、公共政策、教員養成等)での創設・拡充等が必要である。

○ 大学院教育は、学士課程における教養教育と、これに十分裏打ちされた専門的素養の上に立ち、専門性の一層の向上を図るための、深い知的学識を涵養する教育を行うことが基本である。

○ 我が国の課程制大学院制度の趣旨を踏まえて、特に人材養成機能の面で、それぞれの課程の目的・役割を明確にした上で、大学院における教育の課程の組織的展開の強化(大学院教育の実質化)を図る必要がある。

○ このため、学士課程教育との適切な役割分担、学生・教員の流動性の向上、教員の教育・研究指導能力の向上等について、学問分野別に具体的な検討を深化させる必要がある。

○ 大学院教育の実質化のための重要課題としては、以下のものが考えられる。

《基本的な課題》

a)人材養成の観点からの各大学院(課程)の機能の明確化
b)大学院教育と学士課程教育、大学院以外の専門教育との関係の明確化
c)大学院教育の実質化のための大学院組織の在り方

《特に分野別に検討の深化が必要と考えられる課題》

d)課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導体制の確立(大学院教育の実質化)

  • 教員の教育・研究指導能力の向上のための方策
  • 今後の研究者等として必要な高度な素養の涵養の在り方
  • 教員・学生の流動性の拡大のための方策
  • 社会のニーズと大学院教育の適切な対応関係の確保のための方策

e)研究者等及び大学教員養成機能の充実

  • 博士課程における体系的な教育課程の確立
  • 大学院の研究機能の強化(施設・設備など)
  • 学生に対する経済的支援と大学院修了者のキャリア・パスの多様化の促進方策

f)実効性ある大学院評価の確立

○ これらの課題についての検討の成果を踏まえ、世界最高水準の質を誇る大学院教育の充実を図る観点から、国は、大学院教育の実質化のための将来計画を策定する等、集中的な取組を行い、大学の自主的かつ意欲的な計画に積極的な支援を行っていくことも検討すべきである。

○ また、先進諸国を含めた世界各国の優秀な留学生・研究者を惹き付けるためには、我が国の大学院における教育・研究の質が世界的に見て高い位置を占めることが前提として必要である。

○ 1.近年の学問分野の学際化・融合化や、2.幅広い知識と柔軟な思考能力を持つ人材等の、社会において求められる人材の多様な要請等に対応する手段として、主専攻・副専攻制(主専攻分野以外の分野の授業科目を体系的に履修させる組織的な取組)やジョイントディグリー(一定期間で複数の学位を取得できる履修形態)は有効な方策と考えられる。

(カ)修士課程

○ 修士課程は、1.研究者等養成(の第1段階)、2.高度専門職業人養成、3.我が国の知識基盤社会を支える「21世紀型市民」の高度な学習需要への対応の三つの機能を担う。各大学院においては、教育目標など課程の目的・役割を明確化し、体系的な教育課程を編成する必要がある。

○ これらの機能を担うために必要な教育としては、例えば、

  • 国際化や科学技術の進展等社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤を与える教育を基本とし、課題に対する柔軟な思考能力と深い洞察に基づく主体的な行動力を兼ね備えるための高度な素養を涵養する教育
  • 1.学生の知的好奇心などにこたえた多様かつ豊富な教育プログラムにより幅広い視点を培う教育、または、2.論文作成を基本とした教育のほかに、3.養成すべき人材を念頭に関連する分野の知識・能力を修得する教育など、学修課題を複数の科目等を通して体系的に履修するコースワークを重視した教育

等が重要である。

(キ)博士課程

○ 博士課程は、創造性豊かな優れた研究・開発能力を持ち、産学官を通じたあらゆる研究・教育機関の中核を担う研究者等及び確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員を養成する課程として、明確な役割を担うことが適当であり、体系的な教育課程を編成する必要がある。

○ これらの人材の養成に必要な教育としては、例えば、

  • 顕著な研究業績を性急に求めるような教育ではなく、自立して研究活動を行う能力の基礎を培う教育
  • 比較的長期にわたる企業や海外での研究経験など、多様な研究活動の場を通じて研鑽を積む教育
  • 学生同士が切磋琢磨する環境の中で、自ら研究課題を設定し研究活動を実施すること等の学生の創造力・自律力を磨く教育
  • 高度な研究開発プロジェクトの企画・管理等の運営管理を行える人材を養成するために、学生に一定の責任と権限を与え、プロジェクトの運営管理能力を高める教育
  • 加えて、大学教員を目指す学生に対しては、学生に対する教育方法の在り方を学ぶ教育

等が考えられる。

○ 今後の知識基盤社会にあっては、博士号取得者が、高度な研究・分析能力や専門的知見を生かして、研究・教育機関ばかりでなく企業経営、ジャーナリズム、行政機関、国際機関等の多様な場で中核的人材として活躍することが十分予想される。大学では博士号取得者のキャリア・パスの多様化にこたえる工夫が求められると同時に、これらの人材を受け入れる社会全体での積極的な取組が不可欠である。

(ク)専門職学位課程

○ 専門職学位課程は、国際的に通用する高度で専門的な知識・能力が必要とされる多様な分野(例えば、法曹、MBA・MOT(技術経営)、公共政策、教員養成等)での創設・拡充等が必要である。理論と実務を架橋する実践的教育や職業的倫理の涵養が充実され、社会人等多様な学生を受け入れて各種の高度専門職業人が養成されることを通じて、社会全体の流動性の向上と活性化に大きく貢献することが期待される。その際、上記以外の特定の高度専門職業人養成の分野においても、国は、専門職学位課程の在り方について、今後、幅広く十分な検討を行うことが適当である。

○ 専門職学位課程は、幅広い分野の学士課程の修了者や社会人を対象として、特定の高度専門職業人の養成に特化して、国際的に通用する高度で専門的な知識・能力を涵養する課程として、明確な役割を担うことが適当である。

○ 他方で、専門職大学院制度の創設により、大学院教育と専門学校教育との関係が曖昧になっているとの指摘がある。

  • 専門学校は、実際的な知識・技術等を習得するための実践的な職業教育・専門技術教育機関として定着
  • 専門職学位課程における教育は、大学の学士課程段階の幅広い教養教育等を基礎として、特に「理論と実務の架橋」を重視し、高度の専門性が求められる特定の職業を担うための知識・能力を高い学問的水準において養うもの

 専門職大学院及び専門学校は、この目的・役割の違いに十分留意しつつ、それぞれの特色を生かし、共に社会が求める人材を養成する機関として一層発展していくことが期待される。

○ 高度専門職業人の養成に必要な教育としては、例えば、

  • 「理論と実務の架橋」を目指すための、産業・経済社会等の各分野で世界の最前線に立つ実務家教員を含めてバランスのとれた教員構成の下での国際的な水準の高度で実践的・継続的な教育
  • 単位認定を前提とした長期間のインターンシップにより、学問と実践を組み合わせた教育
  • 特定の職業的専門領域における職業的倫理を涵養する教育
  • 高度専門職業人として求められる表現能力や交渉能力を磨く教育

等が重要である。

(ケ)短期大学の課程

 短期大学の課程は、ユニバーサル段階の身近な高等教育の一つとして、また、地域と連携協力して多様な学習機会を提供する、知識基盤社会での土台づくりの場として、新時代にふさわしい位置付けが期待され、短期大学の課程の積極的な改革が期待される。これらの点を踏まえつつ、短期大学における教育の課程修了を学位取得に結び付けるよう制度改正を行うことが適切である。

○ 18歳人口の減少や女子の4年制大学志向の高まりなど、短期大学を取り巻く社会や時代の変化の中で、短期大学は他の高等教育機関と異なる個性・特色の明確化に一層努める必要がある。

○ 従来から、短期大学の課程の機能としては、1.教養と実務が結合した専門的職業教育、2.より豊かな社会生活の実現を視野に入れた教養や高度な資格取得のための教育、3.地域社会の必要に根ざしながら社会人や高齢者などを含む幅広いライフサイクルに対応した多様な生涯学習機会の提供等が挙げられてきた。昨今の各種職業資格の高度化の動向等を勘案すれば、1.と2.の機能は事実上一体化して重要性を増しており、3.の機能はさらに充実が望まれる状況にあると考えられる。

○ 短期大学の課程は、ユニバーサル段階の身近な高等教育の一つとして、また、地域と連携協力して多様な学習機会を提供する、米国のコミュニティ・カレッジのような知識基盤社会での土台づくりの場として、新時代にふさわしい位置付けがなされることが期待される。また、そのような位置付けにふさわしい実質を十分に備えるべく、短期大学の課程の教育の積極的な改革が期待される。

○ 学位取得のための教育と技能・資格取得のための教育の性格の違いを内容面から特徴付けるのは教養教育であり、短期大学における教養教育は、4年制の学士課程における教養教育と同様に、自己の人間としての在り方・生き方にかかわる教育であると考えられる。短期大学の課程の教育上の特色は、こうした「大学における教養教育」を幅広い学習需要に的確に対応したアクセスしやすい形で提供する点にあると考えられる。

○ また、短期大学を含めた大学における実務教育・職業教育は、教養教育の基礎の上に立ち、理論的背景を持った分析的・批判的見地からのものである点で、他の機関により提供される実務教育・職業教育とは異なる特徴があるものと考えられる。短期大学関係者は、4年制の学士課程に準ずる実質を備えた短期大学の課程の教育上のこうした特徴を一層明確化するよう、教育の充実に不断の努力を傾注する必要がある。

○ 短期大学は、今後とも、教育内容・方法や経営状態に関する積極的な情報開示や充実した事後評価の仕組みの確立等による社会的信頼・評価の確保に努める必要がある。

○ 以上の点を踏まえつつ、短期大学における教育の課程修了を学位取得に結び付けるよう制度改正を行うことが適切である。

○ 学位の名称については、我が国の学位の沿革や構造、諸外国の短期高等教育の課程に係る学位の名称など関連する要素が多岐にわたるとともに、今後は、大学制度について、短期大学も含めて学位を授与する課程を提供する場としての位置付けを明確化していく方向が望まれること、学校制度体系の現状に即してできるだけ一般に分かりやすい表示が求められること等を総合的に勘案して、「短期大学士」とすることが適当と考える。

(2)高等専門学校

 高等専門学校は、5年一貫の実践的・創造的技術者等の養成という教育目的や、早期からの体験重視型の専門教育等の特色を一層明確にしつつ、今後とも応用力に富んだ実践的・創造的技術者等を養成する教育機関として重要な役割を果たすことが期待される。
 現在、高等専門学校の単位については、教室内における30時間の履修を1単位として計算されているが、授業形態・指導方法の多様性や自学自習による教育効果も考慮した単位計算方法を導入することが適切である。

○ 高等専門学校は、5年一貫の実践的・創造的技術者等の養成という教育目的や、早期からの体験重視型の専門教育等の特色を、大学の学士課程教育や短期大学の課程の教育との対比で一層明確にしつつ、今後とも応用力に富んだ実践的・創造的技術者等を養成する教育機関として重要な役割を果たすことが期待される。

○ 高等専門学校卒業後に専攻科や大学へ進学・編入学する学生の増加を踏まえると、教育内容や履修指導等も含めて他の高等教育機関への円滑な接続にも配慮する必要がある。一方で、高等専門学校の役割や位置付けが相対化し、早期からの体験重視型の専門教育による実践的・創造的技術者等の養成という本来の個性・特色が不明確になることのないよう留意することも重要である。

○ 現在、高等専門学校の単位については、教室内における30時間の履修を1単位として計算することとされているが、授業形態・指導方法の多様性や自学自習による教育効果も考慮した単位計算方法を導入することにより、各学校における柔軟なカリキュラム編成の実現等が期待される。具体的には、教室外での自学自習を促すための指導上の工夫や総授業時間数の維持・確保に特に留意しつつ、一定の範囲内(例えば60単位以内)において、各学校の判断により、45時間の学習を1単位として計算する授業科目を設定できるよう、国は、単位計算方法を見直すことが適切である。

○ 国立高等専門学校の法人化など高等専門学校を取り巻く状況の変化、今後の高等専門学校の管理運営の具体的な在り方や高等専門学校の基本的方向性を踏まえ、名称を含めた社会的認識の改善の問題や専攻科の役割等については、今後の重要な課題である。

(3)専門学校

 知識・技術等の高度化や専門特化した技術者養成等のため、修業年限の長期化・多様化に伴い、専門学校の高等教育機関としての性格も短期から長期まで様々なものに拡大してきている。一方で、実践的な職業教育・専門技術教育機関としての専門学校の性格を明確化し、その機能を充実することが期待される。
 誰もがアクセスしやすい柔軟な高等教育システムを構築し、学習者の立場に立って相互の接続の円滑化を図る一環として、一定の要件を満たすと認められた専門学校を卒業した者に対して大学院入学資格を付与することが適切である。

○ 職業教育をキーワードとした教育体系の中で、専門学校の中核的な役割や位置付けを明確にする必要がある。

○ 知識・技術等の高度化や専門特化した技術者養成等のため、修業年限の長期化・多様化に伴い、専門学校の高等教育機関としての性格も短期から長期まで様々なものに拡大してきている。一方で、大学の学士課程教育や短期大学の課程の教育との対比で、社会的要請にこたえて実際的な知識・技術等を習得した人間性豊かな人材を育成するため、実践的な職業教育・専門技術教育機関としての専門学校の性格を明確化し、その機能を充実することが期待される。

○ 専門士の称号所持者や大学等卒業者が入学する例の増加等を踏まえ、高度な職業教育機関としての役割を担う専門学校は、今後、一層の個性化・多様化を進める必要がある。

○ 専門学校は、今後、教育内容・方法や経営状態に関する積極的な情報開示や充実した事後評価の仕組みの確立による社会的信頼・評価の確保に努める必要がある。

○ 誰もがアクセスしやすい柔軟な高等教育システムを構築し、学習者の立場に立って相互の接続の円滑化を図る必要がある(第2章3(1)参照)。その一環として、以上の点を踏まえつつ、専門学校のうち一定の要件(例えば、1.修業年限4年以上、2.修業年限の期間全体を通じた体系的な教育課程の編成、3.総授業時間数が3,400時間以上、等)を満たすと認められたものを卒業した者に対して大学院入学資格を付与することが適切である。

2 国公私立大学の特色ある発展に関する考え方

 国公私立大学がそれぞれ特色ある教育・研究を展開していくことは、21世紀初頭における社会の多様な要請等に国公私立大学全体で適切にこたえていくというだけでなく、高等教育全体の活性化の上からも重要である。
 各大学ごとの個性・特色は、国公私を問わず、各大学自らの選択に基づくものであるが、国公私それぞれを全体として見た場合の特色を意識しておくことは、高等教育の発展と国公私それぞれへの支援の在り方を考える上で、今日でもなお十分に意義を有するものと考えられる。

○ 国公私立大学がそれぞれ特色ある教育・研究を展開していくことは、21世紀初頭における社会の多様な要請等に国公私立大学全体で適切にこたえていくというだけでなく、高等教育全体の活性化の上からも重要である。

○ 特に、国立大学の法人化、公立大学法人制度の創設、私立学校法改正による学校法人制度の管理運営面の改善により、国公私それぞれの枠組みの中で自律性と透明性を確保する仕組みが整えられた。これらは、各大学の個性・特色の明確化や適正な競争を確保する一つの前提をなすものと期待される。

○ このような個性・特色は、国公私を問わず、各大学が自ら選択するものである(第2章3参照)。したがって、国公私立大学に期待される使命や役割等の区別は必ずしも一律かつ絶対的なものではない。しかしながら、時代や社会の要請に応じて変化しつつも形成されてきた、国公私それぞれを全体として見た場合の特色は、制度面にも反映しており、これを意識しておくことは、高等教育の発展と国公私それぞれへの支援の在り方を考える上で、今日でもなお十分に意義を有するものと考えられる。そこで、既に大学審議会答申等でもなされてきた整理を踏まえつつ、国立大学の法人化等による新たな展開をも考慮に入れると、おおむね、以下のように考えられる。

○ まず、国立大学については、国からの公的支援により支えられるという安定性、学長任命や中期目標・中期計画に関する国の関与等の特性がある。これらは、国立大学が、国の高等教育政策をより直接的に体現するという側面を持つことに由来する。したがって、国立大学には、例えば、世界最高水準の研究・教育の実施、計画的な人材養成等への対応、大規模基礎研究や先導的・実験的な教育・研究の実施、社会・経済的な観点からの需要は必ずしも多くはないが重要な学問分野の継承・発展、全国的な高等教育の機会均等の確保等について政策的に重要な役割を担うことが求められる。そして、このような役割を十分に果たしていない場合には、国立大学法人評価委員会の評価等も踏まえつつ大学の実情に応じた組織運営体制の改善が求められるべきものと考えられる。

○ 国立大学は、国立大学法人制度の趣旨を生かし、自主性・自律性を発揮して一層活性化することが期待されるが、そのためにも、制度の改善・整備を不断に図っていく必要がある。

○ 次に、公立大学については、各地方公共団体が高等教育に主体的に取り組み、多様かつ個性的な教育・研究を展開することは、我が国の高等教育全体の教育・研究の活性化のみならず個性ある地域づくりにもつながるものである。その際、公立大学法人制度を活用することも有力な手法の一つと考えられる。

○ 公立大学は、設置者である各地方公共団体により地方財政という公的資金を基盤として設置・運営されるという性格から、設置者である地方公共団体の人材養成等各種の政策をより直接的に体現するという側面を持つものと考えられる。したがって、公立大学には、各大学の設置目的に沿って、それぞれの地域における社会・経済・文化の向上発展への貢献から国際社会への貢献まで幅広く含め、様々な教育・研究・社会貢献機能のより一層の強化が求められる。

○ さらに、私立大学については、特に戦後の我が国における高等教育の普及、先端的・独創的な研究の進展、高等教育機関の社会貢献の促進の面でそれぞれ大きな役割を果たし、社会の発展にとって重要な貢献をしてきた。とりわけ、各大学の建学の精神を生かした独自の校風による教育・研究の実施は、多様性に富んだ個性豊かな人材の育成や、多様な知的価値の創造等を通して、我が国のあらゆる面での発展を支えてきている。

○ 私立大学は、国公立大学とともに公教育としての高等教育の重要な一翼を担っており、高い公共性を有し、社会的責任を負っている(本章1(1)(ア)参照)。こうした観点から、各大学が、未来社会の創造に向けての様々な要請にこたえつつ、活力ある多様な人材の育成、基礎から応用にわたる多様な先端的・独創的研究、地域社会から国際社会にわたる未来社会の発展に資する多様な活動等の諸機能の強化に努める中で、例えば、世界的研究・教育拠点の形成や高度専門職業人の養成に力点を置くもの、総合的教養教育や芸術・体育等の専門的分野に軸足を置くもの、地域貢献や国際交流等に力を注ぐものなど、全体として多様な発展を遂げていくことが重要である(第2章3(2)参照)。こうした各大学の多様な発展を一層促進するためには、それぞれの建学の精神にのっとった自主的・自律的な運営を確保することが不可欠であり、先般の私立学校法改正による学校法人制度の管理運営面の改善の趣旨を積極的に生かすことが期待される。

3 高等教育機関の設置形態の多様化に関する考え方

 現在、構造改革特区において認められている株式会社立大学の今後の位置付け等については、「高等教育の質」の保証や株式会社の特性といった観点を念頭に置きつつ、特区における実施状況に関し、公共性・継続性・安定性等についての検証・評価を十分に時間をかけて慎重に行った上で、改めて検討する必要がある。

○ 株式会社・NPO・個人等、多種多様な形態により提供される学習機会は、今後の知識基盤社会の中での幅広い学習機会の一環として重要な役割を担っていくことが期待される。

○ 関連して、現在、構造改革特区において認められている株式会社立大学の今後の位置付け等については、「高等教育の質」の保証や株式会社の特性といった観点を念頭に置きつつ、特区における実施状況に関し、公共性・継続性・安定性等についての検証・評価を十分に時間をかけて慎重に行った上で、改めて検討する必要がある。

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