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別添 学問分野別ワーキング・グループ報告書 医療系大学院の目的とそれに沿った教育等の在り方について[医療系ワーキング・グループ報告書]

1.医療系大学院の目的・役割について

○ 医療系大学院は、従来、研究者として自立するに必要な研究能力を培い、医学・医療における特定の専門分野について深い研究を行い得る研究者の養成を行い、また、学術研究を遂行することを主たる目的としていた。しかし、現在における医療系大学院は、これら研究者のみならず、医師・歯科医師など高度の専門性を必要とされる業務に必要な能力と研究マインドを涵養することも求められるようになってきており、医療系大学院が果たすべき機能は多様化している。

○ このような状況を踏まえ、今後における医療系大学院の在り方としては、およそ専攻単位程度で、研究者養成を主たる目的としているのか、優れた研究能力等を備えた医療系人材の養成を主たる目的としているのか、その目的と教育内容を明確にすることが必要である。
 特に、医学・歯学系大学院にあっては、専攻や分野の別を超えて、研究者養成と、優れた研究能力等を備えた臨床医、臨床歯科医等の養成のそれぞれの目的に応じて、研究科として二つの教育課程を設けて、大学院学生に選択履修させることが適当である。

○ この場合、研究者養成を主たる目的とする場合の教育内容としては、医学・生命科学等の領域で研究者として将来自立できるだけの幅広い専門的知識と、研究に必要な実験のデザインなどの研究手法や研究遂行能力を修得させることが適当である。

○ また、優れた研究能力等を備えた臨床医、臨床歯科医等の養成を主たる目的とする場合の教育内容としては、臨床医、臨床歯科医など高度の専門性を必要とされる業務に必要な技能・態度等を修得させるほか、当該専門分野で、研究マインドを持ち、主として患者を対象とする臨床研究の遂行能力を修得させることが必要である。

○ 研究遂行上又は職業上必要な資格の取得(遺伝子実験、放射線取扱いなど)や、関連学会における認定資格(専門医など)の取得のための講習や研修と、医学・歯学系大学院博士課程における教育とは、本来、趣旨・目的を異にするものであるが、専門分野の資格取得のための本人の負担等を考慮すると、大学院の教育課程の中に当該資格取得に必要な教育内容を取り込む工夫も適当と考えられる。

2.課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立について

(1)教育・研究指導の在り方について

1 各分野共通の教育・研究指導の在り方

○ 医療系大学院における教育・研究指導には、これまで、ややもすると大学院学生が所属する各研究室の指導教員に教育を任せきりにするという傾向も見られた。しかしながら、先に示したように大学院の目的と教育内容を明確にし、教育・研究指導を実効性あるものにするためには、専攻単位で組織的に教育活動を計画することが重要である。

○ また、専攻を単位とする組織的な教育活動が、動物実験や遺伝子実験、放射線の取扱いなど、単にさまざまな診療上や研究上の規制に対応した知識・技術のみを修得させるのではなく、体系的な教育を提供するという課程制大学院の趣旨に沿った相応しいものとなるよう、関係者が努力していくことが強く求められる。

○ 具体的には、幅広い視野と当該専門分野での専門的知識を修得させるため、例えば次のような、専攻を単位とする組織的な教育活動が効果的と考えられる。

  • 幅広い視野を身につけるための関連領域に関する組織的な教育活動
  • 各専門分野に関する専門知識を身につけるための体系的かつ組織的な教育活動
  • 自立的な研究者として必要な能力や技法を身につけるための組織的な教育活動
    (例えば、各分野毎に研究テーマを設定し、それに応じて実験のデザインを行わせるなど)

○ このほか、単位の認定や最終試験による課程修了資格の認定において客観性を確保することや、学外や関連分野の教員等も交えた学位論文審査を実施することが適当である。

○ さらに、各専攻等の目的や教育内容等に応じて、大学院入学者選抜の在り方を見直すことも求められる。

2 各分野毎における教育・研究指導の在り方

(1)医学・歯学系大学院(博士課程)について

○ 研究者養成を主たる目的とする教育課程においては、研究者としての基本的素養を身につけさせるという観点から、例えば、遺伝子に関する技術、RIの取扱い、タンパク質解析、細胞培養、統計処理、研究計画・デザインの立案など、研究者に求められる医学・生命科学研究の遂行に必要な基本的知識・技術をコースワークで修得させることが必要である。

○ 優れた研究能力等を備えた臨床医・臨床歯科医等の養成を主たる目的とする教育課程においては、臨床医、臨床歯科医など高度の専門性を必要とされる業務に必要な技能・態度を修得させるほか、例えば、医の倫理、臨床心理、医師と患者関係、臨床研究方法、臨床教育法・指導法など、臨床医・臨床歯科医に求められる資質や能力を涵養するために必要な内容をコースワークに盛り込むなど、体系的かつ組織的な教育活動が必要である。
 また、併せて、病気の成因、新しい診断・治療法の開発評価、臨床疫学など、患者に対する診療を通じた臨床研究のテーマを課し、博士論文作成のための研究指導を行わなければならない。
 このほか、先に示したように、コースワークの中に、関連学会における認定資格(専門医など)の取得に必要な教育内容を取り込むこともできるが、この場合、大学院博士課程としての教育課程であることと、当該資格取得のための教育内容との整合性を図る必要があることに留意すべきである。

○ また、医学・歯学系大学院が、その教育課程を、研究者養成と、優れた研究能力等を備えた臨床医・臨床歯科医等の養成の二つに分けて明確化するに当たり、それぞれの課程の教育・研究指導体制が硬直化することのないよう、教育・研究指導教員が、双方のコースワークに携わることができるようにするほか、学生による双方の教育課程からの単位選択の自由度を一定程度確保するなど、相互の連携を保つような配慮が求められる。

(2)医学・歯学系大学院(修士課程)について

○ 医学・歯学系の修士課程の大学院は、医学部・歯学部卒業者以外を対象とし、当該課程修了後に医学・歯学系の博士課程に進むことを想定して設置されているが、実際には、課程本来の目的に沿って、4年の医学・歯学の博士課程と合わせた研究者養成のプロセスを担っている面と、医学・歯学に関する専門知識を有し、幅広く医療関連分野で活躍する高度専門職業人の育成を担っているという両面があり、このような現状に対応した教育が必要である。

(3)薬学系大学院について

○ 現行4年間の修業年限である薬学の学部教育は、臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とする場合、修業年限が6年(それ以外は現行のまま4年)とされ、平成18年度入学者から適用される。

○ このことにより、4年制の基礎薬学等に係る学部を母体とする大学院は、5年制(区分制又は一貫制)の博士課程として研究者養成を主たる目的とすることが予想されるが、新たな制度が適用されたことに伴い、その教育内容については、今後、関係者により検討されることとなっている。
 この場合において、幅広い基礎知識の修得ができるようにする観点から、例えば、医薬品評価学、薬剤疫学、医薬品情報学などをコースワークに盛り込む工夫が必要であるほか、研究者として自立するために必要なプロジェクト企画力などの涵養も重要であることを十分踏まえた検討がなされることを期待する。
 また、臨床現場の薬剤師業務に精通した基礎薬学研究者の養成が必要とされていることにも留意する必要がある。

○ 6年制の臨床薬学等に係る学部を母体とする大学院は、4年一貫の博士課程として優れた研究能力等を備えた臨床薬剤師の養成を主たる目的とすることが予想されるが、その教育内容については、臨床を通じた薬学研究の在り方を中心に検討されることとなっている。その際、専門薬剤師として活躍するための高度専門職業人養成プログラムの在り方についても検討がなされることを期待する。

(4)看護学系・医療技術系大学院について

○ 看護学系・医療技術系分野の区分制博士課程(前期)にあっては、一専攻当たりの学生数が小さい場合などは、同一専攻の中で、博士課程(後期)修了後に教育研究職に就く者のための研究者養成プログラムと、前期課程修了後に専門職に就く者のための高度専門職業人養成プログラムを併せ持つなどの工夫が必要である。
 この場合、看護学系・医療技術系分野は特に実践性が求められることから、いずれのプログラムにおいても、専門職業人としての一定の実務経験を経てから入学させることが望ましい。

○ 研究者養成プログラムにおいては、研究者としての基本的研究手法を身につけることが重要なことから、例えば、看護実践を質的又は量的側面から扱う研究手法(面接法、参加観察法、質問紙法及び収集データの分析に必要な応用統計学など)、研究倫理など、研究デザインや研究手法に関するコースワークを整備し、論文作成を通して、研究者に求められる批判力、論理性、表現力の涵養が重要である。また、実践的な研究テーマと基礎的な研究テーマの両方が教育できるような体系的な教育プログラムが必要である。

○ 高度専門職業人養成プログラムにおいては、看護や医療技術の現場において、将来指導的立場で活躍できる人材を養成する観点から、例えば、患者の主体性を尊重したマネジメント論やコミュニケーション論、看護倫理学、実践現場での教育方法論、コンサルテーション論、装具等の作成技術論等のコースワークや実践体験を含んだプログラムを整備し、当該専門領域に係る学際的な知識、実践能力、教育能力を育成する体系的な教育プログラムでなければならない。
 また、専門領域での認定資格等に係わる教育を大学院の教育課程の中に効果的に取り込む工夫も求められる。

○ 博士課程(後期)においては、研究者の育成を主たる目的とすることから、研究能力の育成に必要な理論構築や技術開発に関する方法論のコースワークを含んだ教育プログラムとすることが適当である。

(5)公衆衛生分野の大学院について

○ 医療疫学、医療経済、予防医療、国際保健、病院管理等の幅広い分野を含む公衆衛生分野の大学院については、高齢化等の進展に対応して、また、医学、歯学、薬学等のヒトを対象とした臨床研究・疫学研究の推進を図るためにも、公衆衛生分野における高度専門職業人の育成が課題となっている。

○ このため、欧米の状況も踏まえ、2年制の専門職大学院として、大学院の整備を進めていくことが必要であり、また、それに必要な教員の養成やカリキュラムの開発、修了者の社会での活躍の場の拡大など、関連する施策を進めていくことが求められる。また、その場合の教育内容については、各専門領域に共通するコア科目の修得と、各専門領域における専門科目の修得とを組み合わせるような工夫が必要である。

○ 博士課程(後期)においては、当該分野における研究者養成とこの分野の教育者の育成を主たる目的とし、その目的に相応しい教育内容とすることが適当である。

(2)修得単位数に関する大学院設置基準の改正について

○ 大学院において修得すべき単位数及び単位の数え方については、大学院設置基準の定めによるところであるが、特に、現在の単位の数え方は、学部の単位の数え方(一つの講義・演習につき、15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位となっていることなど)に準じている。

○ 今後、大学院におけるコースワークの充実を図る観点から、例えば、研究テーマに応じた実験のデザインなどを各週毎に行うことにより、あわせて1単位とするなど1単位の考え方を見直すとともに、修得すべき総単位数などについても併せて見直すことが必要である。

(3)教員の教育・研究指導能力の向上方策について

○ 大学院が教育の場であることを再認識し、教育内容・方法の充実を図るためには、教員に対し、大学院の教育を実施するに際しての、学生に対する教育の在り方や、指導能力を高めるため、各専攻において、当該大学院の教育についての共通理解を高めることが重要である。併せて、教員に対する研修などのファカルティ・ディベロップメント(FD)の努力も必要である。

○ 教員に対する評価としては、研究実績や教育に関する資質・能力に加えて、臨床医学系、臨床歯学系分野等の大学院の教育・研究や機能を高める観点から、担当教員の臨床に係る実績や、臨床を通じた研究成果の評価が重要である。

○ サバティカル制度の導入等により、教員が自らの研究・教育能力を高めるため、国内外の優れた大学院教育に直接触れる機会を確保することも効果的であると考えられる。

(4)論文博士制度について

○ 諸外国における博士の学位が、博士課程において必要な教育プログラムを修めた者に授与されるという現状を勘案した場合、学位の国際的通用性の観点からみても、日本における論文博士の制度は独自のものである。このため、課程制大学院の実質化が図られることを前提として、論文博士制度を廃止する方向で検討を進める必要がある。
 その際、各大学院において「博士候補(仮称)」制度(学位取得プロセスにおいて、学生が必要単位を修得して一定レベルに達し、学位論文審査による学位取得の見込みが一定期間内にあると認められる場合、そのことを明らかにする制度)を設ける等の工夫を講じるなど、制度の変更に伴う諸問題の緩和方策についても検討することとする。

○ これに併せて、現に論文博士の制度を前提として研究を続けている者がいること等から、課程博士の授与状況を踏まえた十分な経過措置期間の設定や、日本学術振興会において、アジア諸国を対象とした「論文博士号取得希望者に対する支援事業」が実施されていることとの整合性についても整理する。

3.学生に対する経済的支援について

○ 医療系大学院においては、他の分野と異なり、大学院入学前において、臨床研修や一定の実務経験を必要とすることなどから、学生に対する経済的支援の充実が不可欠である。
 特に、進路選択に当たって、経済的な事情から大学院に進むことを断念することがないように、大学院受験前に経済的支援が予約されるような措置を講ずるなど、学生が安心して進学できるようにする制度の検討が強く求められる。

○ 現在、大学院学生に対する経済的支援は、日本学生支援機構による奨学金や留学生給与の支給、国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金に含まれるTA、RAによるもの、さらには日本学術振興会の特別研究員制度(DC)、科研費補助金等の競争的資金や21世紀COEに包含されるTA、RAなどがあるが、今後ともこのような各種4つのタイプを併存する形とするのか、あるいは競争的に配分される教育資金や研究資金に包含されることを主としていくのか検討する必要がある。

○ 臨床医学・歯学系大学院の学生が、附属する大学病院において医師・歯科医師として診療を行うことは、当該大学院における教育や臨床研究の一環であるという面があるものの、大学院学生の経済的基盤として、大学病院以外の病院での診療によって実質的に生計を支えていることの弊害等を考えると、当該大学病院における診療内容に応じた処遇を図ることが望ましい。

4.教育・研究環境の整備について

○ 医療系の各分野において、研究者や高度専門職業人等の人材養成機能及び学術研究機能をさらに一層充実させるためには、国際水準の教育研究環境が整備されることが重要であり、教員の増や教育スタッフ・支援スタッフ等の確保、施設・設備の整備等に伴う予算の充実など、国などによる財政支援が不可欠である。

○ また、現在、医療倫理、医療疫学、レギュラトリーサイエンス分野等の教育者・研究者が必要とされており、この分野の人材養成の充実が急務となっているほか、教育スタッフ・支援スタッフ等について、例えば外部資金や産学連携、あるいは遺伝子組み換え実験等における様々な社会的・倫理的規制などについて、一定水準の知識や高い専門性を有するスタッフの育成が大学関係者から求められている。

5.大学院評価の在り方について

○ 各大学院の人材養成の目的に沿った教育の実質化が一層図られるよう、実効性ある大学院評価を早期に確立していくことが重要である。

○ 学校教育法に基づく認証評価制度においては、現在、専門職学位課程だけが、大学全体とは別に対象とされている。大学とは別の大学院だけの事後評価、あるいは分野別の大学院の事後評価については、当面、学協会が中心となって専門分野別事後評価のシステム作りに取り組むことが必要である。
 さらに、専門分野別事後評価システムの運用に当たっては、例えば、博士課程(後期又は4年制一貫)に限って、設置認可申請の際に行われるような教員個人の教育・研究指導能力についての評価を行うことも有効と考えられる。

6.メディカル・スクール等について

○ 米国等におけるメディカル・スクール、デンタル・スクール制度を、我が国に導入することについては、現在進められている医学・歯学の学部教育改革の状況や、卒後初期臨床研修制度及び後期専門研修制度との関連、さらにこの制度の導入による基礎医学・歯学研究への影響などを十分踏まえる必要があるほか、大学学部教育全体への影響など、多角的な検討と十分な議論を必要とすることから、今後、中期的な課題として関係者による十分な検討が必要である。

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

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