第2次学校安全の推進に関する計画の策定について(諮問)

28文科初第48号
平成28年4月18日
中央教育審議会

次に掲げる事項について,別紙理由を添えて諮問します。



第2次学校安全の推進に関する計画の策定について


文部科学大臣   馳  浩


(理由)
  第2次学校安全の推進に関する計画の策定について

  子供が心身ともに健やかに育つことは,全ての人々の願いです。子供の育つ環境が安全なものとして整えられ,また,子供や保護者その他全ての人々が安全な生活を送ることができるような社会を築いていくため,必要な取組を進めていかなければなりません。

  学校は,人と人との触れ合いにより,人格の形成がなされる場であり,児童生徒等が生き生きと学び,自己実現に向かうために,安全で安心な環境であり続けることが必要です。
  また,児童生徒等は守られるべき対象であることにとどまらず,その生涯にわたり,安全な生活を送るための基礎的な素養を身に付けていくことが求められます。
  さらに,学校における安全に係る取組は,次世代の安全文化の構築につながる教育活動であり,自他の生命を尊重し,安全を最優先する気風が育つ取組が全ての学校で行われることが重要です。

  こうした理念を踏まえ,学校における教育活動が安全な環境において実施され,児童生徒等の安全の確保が図られるよう,学校における安全管理等に関して必要な事項を定めた「学校保健安全法」に基づき,平成24年4月に「学校安全の推進に関する計画」を閣議決定しています。
  現行計画は,平成24年度から28年度までの5年間にわたり,国と地方公共団体が相互に連携を図り,各学校において安全に係る取組が確実かつ効果的に実施されるようにするための重要な指針として策定されたものです。
  現行計画に基づく取組の結果,防災教育の重要性の認識が高まり,先進的な取組が進められた地域や学校がある一方,いまだ十分とは言えない地域や学校もみられます。また,現行計画策定以降,安全に関する新たな課題も生じており,策定から5年が経過するにあたり,これまでの状況を踏まえた計画の見直しが必要です。

  以上のことを踏まえつつ,学校安全の推進に関する計画の改訂に向けては,計画に盛り込むべき内容として,主に次の事項を中心に御審議いただきたいと考えております。

  第一に,現行計画に基づくこれまでの取組状況を踏まえ,計画策定後の社会の状況の変化等に基づき,今後改善すべき点や新たに追加すべき点について御検討をお願いします。特に,甚大な被害をもたらした東日本大震災から5年が経過し,時間の経過とともに震災の記憶が風化し取組の優先順位が低下することが危惧されています。また,今後発生が懸念されている首都直下地震や南海トラフ巨大地震等に対して,児童生徒等の命を守るための対策が喫緊の課題とされています。その際,災害時に学校が避難所になった場合の学校や教職員と関係機関・団体や地域の人々との役割分担・連携等については,日頃から共通理解が形成されていることが大切であると考えられます。
  さらに,依然として,児童生徒等が学校における活動中や登下校中に事件・事故に巻き込まれる事案も毎年のように発生しており,家庭や地域,関係機関と連携した対策を着実に実行することが求められています。加えて,スマートフォンやSNSの普及による児童生徒等を取り巻く安全に関する環境の変化や学校を標的とした新たな危機事象も懸念されており,現行計画策定後のこうした状況を踏まえた新たな視点からの取組も必要になっています。
  これら全体にわたり,日常的に地域学校協働本部の整備などを通じて学校と地域との連携を深めることは,学校安全の推進にもつながると期待されます。

  第二に,安全教育について,これまでの中央教育審議会における議論の蓄積等を踏まえた次期計画への位置づけ方について,御検討をお願いします。
  安全教育においては,いかなる状況下でも児童生徒等が自らの生命を守り抜くために主体的に行動する態度の育成や,安全で安心な社会づくりに貢献する意識を高めることを視点として,災害安全のみならず,防犯を含めた生活安全,交通安全の三領域を網羅した安全教育を効果的に行うことが引き続き求められています。
  また,現在,平成26年11月20日の「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」の諮問を受け,学習指導要領改訂に向けた審議が中央教育審議会において進められており,安全教育について,同諮問を受けた形で議論されています。その中では,児童生徒等が,自らの命を守り抜くために必要な資質・能力を身に付けることや,各学校において安全に関して教科横断的な視点を踏まえて教育課程を編成し,学校内外の様々な人的・物的資源等を効果的に組み合わせて教育活動を行い,その状況を評価し,改善を図っていくカリキュラム・マネジメントの実現の重要性が指摘されており,こうした議論を踏まえた安全教育のあり方についての検討が必要となっています。

  第三に,安全教育や安全管理を適切に行うために必要な組織体制のあり方とともに,教員養成段階で身に付けるべきことや教員研修のあり方について御検討をお願いします。自然災害や事件・事故災害が発生した際に,児童生徒等の命を守るためには,全ての教職員が協力し合って的確に対応しなければなりません。また,児童生徒等に対する安全教育の充実を図るためには,教職員自身が自然災害等の安全に関する知見等,指導すべき内容を明確に把握しておくことが重要です。

  このほか,今後の学校安全の推進を図る上で必要な取組について御検討をお願いします。

  以上の点を中心に,今後の学校安全の推進施策について,基本的方針及び諸方策の御審議をお願いします。

お問合せ先

初等中等教育局健康教育・食育課

(初等中等教育局健康教育・食育課)