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地方分権時代における教育委員会の在り方について(諮問)

15文科初第1109号
平成16年3月4日
中央教育審議会

次に掲げる事項について,別紙理由を添えて諮問します。

地方分権時代における教育委員会の在り方について

文部科学大臣 河村 建夫


(理由)

 近年,地方分権が進展し,地方公共団体の権限と責任が拡大するとともに,市町村合併に向けた動きが急速に進む中,教育委員会には,教育行政の責任ある担い手として,地域のニーズに応じた教育行政を主体的に企画し実行していくことが,一層強く期待されるようになっている。
 また,我が国の教育が直面する様々な課題に対応し,「人間力向上」のための教育改革を着実に進めていくためには,各地方公共団体の教育行政体制を地方分権時代にふさわしいものとしていくことが不可欠である。このような中,教育委員会制度について,その在り方に関する様々な指摘も踏まえつつ,必要な見直しを図っていくことが重要と考える。
 このため,教育委員会の在り方について,次の事項を中心に検討する必要がある。

(1)教育委員会制度の意義と役割について

(2)首長と教育委員会との関係について

(3)市町村と都道府県との関係及び市町村教育委員会の在り方について

(4)学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確立について


文部科学大臣諮問理由説明

平成16年3月4日

 近年,地方分権が進展する中,教育の分野においても,内容と制度の両面で地方公共団体の責任と権限が拡大しております。このような中,教育委員会は,地方公共団体における教育行政の責任ある担い手として,拡大した権限を生かし,地域のニーズに応じた教育行政を主体的に企画し実行していくことが,一層強く期待されるようになっています。
 また,市町村合併が急速に進み,基礎的自治体である市町村の規模が拡大する中で,合併を契機とした行政体制の再編が進んでいます。この中で,新しい市町村における教育の在り方と,それを実現するための教育行政体制の在り方が検討されているところであります。
 一方,我が国の教育は,子どもたちの学ぶ意欲の低下,規範意識や道徳心・自律心の低下,不登校や中途退学,体力の低下,学校の安全管理など,喫緊に対応すべき様々な課題に直面しています。このような教育課題に対応するため,現在,21世紀教育新生プランや人間力戦略ビジョン等に基づき,「人間力向上」のための教育改革を進めておりますが,これらの改革が十分に成果を上げ得るか否かは,各地方公共団体において直接教育改革に当たる教育委員会の力に待つところが大きいと考えております。
 このように,今日の教育委員会は,保護者や地域住民から大きな期待が寄せられるようになっていますが,その一方で,近年,教育委員会について,本来の機能を発揮していないのではないか,また市町村教育委員会や学校にもっと権限を委譲すべきではないか等,その在り方に関し様々な指摘がなされるようになっております。
 地方教育行政の在り方については,平成10年に当審議会から提言を頂き,各地方公共団体が責任を持って教育行政に取り組めるよう,国,都道府県,市町村の役割分担の見直しや教育長の任命承認制度の廃止などを行ったところであります。このような体制の下,教育改革を着実に進め,保護者や地域住民の期待にこたえる質の高い教育を実現していくためには,各地方公共団体の教育行政体制を強化し,地方分権時代にふさわしいものとしていくことが不可欠であります。そのためには,教育委員会制度について,その在り方に関し近年指摘されている課題に対し,現状を十分検証しつつその要因を探り,運用の改善で対応できるものについては速やかに対応する一方,現在の制度に起因するものについては必要な見直しを図る必要があると考えます。
 このような観点から,教育委員会の在り方について,次の事項を中心に御審議をお願いいたします。
 第1は,教育委員会制度の意義と役割についてであります。
 教育委員会は,各地方公共団体において,首長から独立した合議制の執行機関として設けられております。この教育委員会制度は,地方公共団体が主体的に事務を処理する責任を負うという団体自治と,住民の意思を行政に反映させるという住民自治を実現するとともに,教育行政における中立性・安定性・継続性を確保することを目的として戦後全国で導入され,以後幾度かの制度改正を経て現在に至っているところであります。
 教育の中立性確保などの教育委員会制度の目的は,普遍的に重要なものであり,今日においても実現すべきものでありますが,他方,教育委員会制度が発足して半世紀以上が経過し,制度を取り巻く社会状況も著しく変化しております。その中で,首長から独立した執行機関や合議制の機関としての位置付け,教育の専門家ではない非常勤の委員が教育行政の基本方針を決定するという,いわゆるレイマンコントロールについて,迅速な意思決定や責任の所在の明確化等の観点から,意義を問う指摘もなされております。
 このような状況を踏まえ,教育委員会制度について,教育行政の中立性・安定性・継続性の確保や多様な民意の反映の重要性を踏まえつつ,今日における意義と役割について御検討いただくようお願いいたします。
 また,教育委員会制度については,先般の教育改革国民会議の報告等を受け,教育委員の構成の多様化や会議の公開等,教育委員会の活性化のための制度改正を行ったところであり,現在,各地方公共団体において,制度改正を踏まえた取組が進められているところであります。その一方で,依然として,会議の形骸(がい)化や委員の名誉職化といった指摘もあるところです。このため,現在進められている教育委員会の活性化に向けた取組の状況を踏まえつつ,教育委員会が更にその機能を高めるよう,教育委員会制度の見直しについて御検討をお願いいたします。

 第2は,首長と教育委員会との関係についてであります。
 近年,若者や中高年層の職業能力の向上や家庭や地域の教育力の向上,子どもの体力の向上や高齢者の健康の増進,まちづくり等の地域課題の解決のため,生涯学習,文化,スポーツの振興が,地方行政とりわけ市町村にとって大きな課題となっています。このような中,首長の教育行政に対する関心が高まっており,一部の地方公共団体においては,生涯学習,文化,スポーツ等の事務について,首長が積極的にかかわろうとする動きが見られます。また,幼児教育においては,公立・私立の幼稚園,保育所等を含めた,総合的な次世代育成支援のための取組が求められています。
 地方公共団体の中には,首長と教育委員会が緊密に連携し,大きな成果を上げているものがある一方で,必ずしも連携がうまくいっていない事例も見られるところであります。このため,教育委員会の現在の取組が十分なのかどうかを検証し,その上で,今後の首長との関係について検討することが必要となっております。
 このような状況を踏まえ,首長と教育委員会との役割分担も含め,生涯学習,文化,スポーツ,幼児教育等の教育事務の在り方や,教育行政における首長と教育委員会との連携の在り方について御検討をお願いいたします。

 第3は,市町村と都道府県との関係及び市町村教育委員会の在り方についてであります。
 市町村教育委員会は,人口が300万人を超える大都市から,人口が千人を下回る村まで,極めて幅の広い人口規模の地方公共団体に設置され,教育事務を執行しています。
 今後,市町村合併が進展する中で,合併を契機に市町村教育委員会の体制が整備されていくことが期待されますが,それでもなお規模が小さく,単独では十分な体制を整えることができない市町村においては,教育行政の広域化を進めていくことが求められます。
 このため,市町村教育委員会がその機能を十分に発揮し,充実した教育行政を行うことができるよう,広域化の推進のための方策や事務局体制の在り方について御検討いただくようお願いいたします。
 また,教育行政における市町村と都道府県との関係については,平成10年の当審議会の答申等を踏まえ,教育長の任命承認制度や都道府県の市町村に対する基準設定権の廃止など,市町村教育委員会の主体的な活動を促進する観点から見直しを図ったところであります。このような制度改正の下,多くの市町村において地域の状況に応じた特色ある教育行政が展開されていますが,その一方で主体性を十分に発揮することができずにいる事例もあります。また,小中学校の教職員の人事権の扱い等について課題を指摘する市町村もあるところです。このような状況を踏まえ,教育行政における市町村と都道府県との関係の在り方について御検討いただくようお願いいたします。

 第4は,学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確立についてであります。
 保護者や地域住民の教育に対するニーズが多様化し,また急速に変化する今日においては,学校に権限と責任を与え,その自主性・自律性を高めることにより,ニーズに迅速にかつきめ細かく対応していくことが必要であります
 学校と教育委員会との関係については,当審議会の提言を踏まえ,学校管理規則の見直しによる承認事項の削減や学校裁量予算の拡大など,学校の自主性・自律性を高める取組が,それぞれの教育委員会において進められているところであります。
 今後更に,各学校が自らの判断と責任で教育活動を展開し,保護者や地域住民の期待にこたえていくためには,各学校が教育活動について説明責任を果たすとともに,自ら継続的に改善していくシステムを構築する必要があります。
 このため,学校の自主性・自律性を高めるための学校と教育委員会との関係の在り方や,学校の教育活動の成果を検証し改善につなげるための学校評価の在り方について,御検討をお願いいたします。
 また,学校の自主的・自律的な運営を実現するためには,校内体制を整え,校長のリーダーシップの下で教職員が力を発揮しつつ一致協力し,組織的な学校運営が行われることが不可欠であります。
 このため,管理職にふさわしい人材を幅広く確保するための方策や,管理職を支える学校の組織運営体制の整備,教職員の資質を向上させ意欲を引き出す方策など,学校の組織及び運営の在り方についても併せて御検討をお願いいたします。

 以上,今後の審議に当たり,御検討をお願いしたい事項について申し上げました。国民の期待にこたえる質の高い教育行政が各地方公共団体で展開されるよう,教育委員会の在り方について幅広い観点から忌憚(たん)のない御意見を頂くようお願いいたします。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課

(初等中等教育局初等中等教育企画課)

-- 登録:平成22年09月 --