20文科生第596号
平成20年12月24日
中央教育審議会
次に掲げる事項について,別紙理由を添えて諮問します。
今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について
文部科学大臣 塩谷 立
産業構造の変化や雇用の多様化・流動化、様々な分野での国際競争の激化、少子高齢化の進行など、社会全体が大きく変化するなか、学校には、社会人・職業人として自立した人材の育成が強く求められている。
一方で、フリーター・若年無業者や、新卒者の早期離職が問題となるなど、学校から社会・職業への移行が必ずしも円滑に行われていない状況も見られる。
このような状況に鑑み、平成18年に改正された教育基本法においては、教育の目標の一つとして、「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」が規定され、本年7月に閣議決定された教育振興基本計画においても、「特に重点的に取り組むべき事項」として「キャリア教育・職業教育の推進」が挙げられたところである。
これらを踏まえ、今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について、中長期的展望に立ち、総合的な視野の下、検討を行う必要がある。
社会が複雑化、多様化する中、経済のサービス化、終身雇用・年功型賃金・新卒一括採用といった雇用慣行の変化、非正規雇用の増加、企業における職業教育訓練の縮小など、我が国の産業構造・就業構造は大きく変化してきております。
このようななか、学生・生徒等の職業に関する興味・関心や進路も多様化するとともに、約181万人にも及ぶフリーター、約62万人にも及ぶ若年無業者の存在や、新卒者の早期離職(就業後3年以内の離職者が中学校卒業者で約7割、高等学校卒業者で約5割、大学等卒業者で約4割)が問題になるなど、学生・生徒の社会・職業への移行が円滑に行われていない状況も見られるところです。
他方、我が国においては、輸出の9割以上を工業製品が占めるなど、ものづくりを基盤として発展を遂げてきましたが、団塊世代の技術者の一斉退職や、アジア諸国の台頭をはじめとする国際競争の激化等に伴い、ものづくり基盤技術等を継承、発展させる人材の育成が課題となっております。
これからの学校には、このような産業構造・就業構造の変化や社会の要請等に適切に対応しつつ、初等中等教育から高等教育にかけて発達段階を踏まえたキャリア教育・職業教育を推進することにより、各発達段階において社会・職業への円滑な移行に必要な知識・技能や勤労観・職業観等をしっかりと育成し、学生・生徒等が将来の基盤を築き、自立して生きていくことができるようにしていくことが求められています。
中央教育審議会においては、平成11年に「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」答申をまとめられ、その中で、学校教育と職業生活の接続の改善方策として、キャリア教育の推進等についてご提言いただきました。これを受け、文部科学省においては、初等中等教育から高等教育にかけてキャリア教育・職業教育を推進してきたところですが、その後の約十年間において雇用市場など経済・社会の変化や、学生・生徒等の興味・関心、進路等の多様化がより一層進む中、キャリア教育・職業教育の充実、とりわけ実際に社会・職業への移行が始まる後期中等教育以降におけるキャリア教育・職業教育の格段の充実が課題となっております。
このような観点から、第一に、社会・職業への円滑な移行のために学生・生徒に求められる基礎的・汎用的な能力について、初等中等教育、高等教育それぞれの段階に即して明らかにするとともに、発達段階に応じてその確実な育成を図り、その質を保証していくための体系的なキャリア教育の充実方策について、ご検討をお願いいたします。
第二に、職業に関する専門的、実践的な知識・技能等を身につけさせるための職業教育の在り方について、後期中等教育から高等教育を見通しつつ、以下の観点を踏まえ、ご検討をお願いいたします。
まず、後期中等教育段階、とりわけ高等学校における職業教育の在り方についてであります。
高等学校については、中学校卒業者の97%以上が進学するなど、義務教育ではないものの、国民的な教育機関となっており、生徒の興味・関心、進路等の多様化が学科を超えて進むとともに、学力・学習意欲等の面で課題が見られるところです。
このようななか、我が国の経済・社会の将来展望も踏まえつつ、中長期的視点から、生徒の多様なニーズに柔軟に応える職業教育の在り方について、ご検討をお願いいたします。その際、専門学科については、職業人として必要とされる知識・技能等が高度化していることや高等教育進学率が4割以上に高まっている状況にも鑑み、これまでの3年間で即戦力となる人材育成を目指す教育のみならず、例えば、高等教育機関との接続の円滑化や専攻科の位置づけなど、その職業教育の在り方について、ご検討をお願いいたします。また、普通科については、専門学科に比べ、卒業後進学も就職もしなかった者の割合が高くなっていること等も踏まえ、併せてご検討をお願いいたします。
次に、高等教育段階における職業教育の在り方についてであります。
経済・社会の複雑化等に伴い、より実践的な知識・技能及びその高度化が求められるなか、高等教育段階における職業教育の重要性が高まっております。
各高等教育機関においては、近年、キャリア支援のための取組を充実させるとともに、それぞれの目的に従って職業教育を推進しておりますが、「大学全入時代」と言われる状況のなか、学生の学力・学習意欲の低下、目的意識の希薄化等が指摘されており、卒業者の1割強が進学も就職もしていない状況にあります。
このようななか、各高等教育機関それぞれの目的・役割を明確化するとともに、学生等の社会・職業への円滑な移行に向けた教育システムを形成するといった観点から、例えば多様なニーズに対応するための職業教育に特化した新たな高等教育機関の創設も含め、高等教育における職業教育の在り方について、ご検討をお願いいたします。
更に、社会人等の高度な職業教育ニーズに高等教育機関等が十分に応えていくための仕組み等について、ご検討をお願いいたします。
なお、高等教育段階における上記諸課題につきましては、このたびおとりまとめいただきました学士課程教育及び高等専門学校教育に関する答申や、去る9月に諮問させていただきました「中長期的な大学教育の在り方について」に係る議論との関連も踏まえ、ご検討いただきますよう、お願いいたします。
以上、今後の審議に当たり、特にご検討をお願いしたい点について申し上げました。委員の皆様におかれましては、幅広い観点から忌憚のないご意見をいただきますようお願いいたします。
電話番号:代表:03-5253-4111(内線:3279)
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