中央教育審議会(第131回) 議事録

1.日時

令和4年10月28日(金曜日)14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※WEB会議

3.議題

  1. 「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について
  2. 次期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方について(案)
  3. 教育未来創造会議の検討状況について
  4. 生涯学習分科会における議論の整理について

4.出席者

委員

渡邉(光)会長、荒瀬副会長、永田副会長、井坂委員、今村委員、内田委員、越智委員、加治佐委員、清原委員、後藤委員、小林(い)委員、小林(真)委員、貞広委員、清水(敬)委員、清水(信)委員、日比谷委員、浜委員、湊委員、吉岡委員、渡辺(弘)委員、

文部科学省

永岡文部科学大臣、簗文部科学副大臣、伊藤文部科学大臣政務官、柳事務次官、伯井文部科学審議官、藤江総合教育政策局長、里見大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、森友社会教育振興総括官、小幡教育人材政策課長、永山国立教育政策研究所長、瀧本教育未来創造会議担当室長 他

5.議事録

【渡邉(光)会長】 それでは、永岡大臣がご到着されましたので、ただいまから中央教育審議会を開催させていただきます。本日は、大変御多忙の中、御出席いただき、本当にありがとうございます。
 本会議は、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点より、前回同様、ウェブ会議方式と対面を併用するハイブリッド型での開催とさせていただきます。
 本日は本年9月から公務に当たられております、永岡桂子文部科学大臣、簗和生文部科学副大臣に御出席をいただいております。伊藤孝江文部科学大臣政務官におかれましては、15時前に到着予定と伺っておりますので、後ほど御紹介をさせていただきたいと思います。
 それでは、永岡大臣と簗副大臣から一言ずつ御挨拶をいただければと思います。早速ですが、永岡大臣、よろしくお願いいたします。
【永岡大臣】 皆様、こんにちは。ただいま御紹介いただきました、第2次岸田内閣におきまして、文部科学大臣を拝命いたしました、永岡桂子でございます。
 今回の総会は、就任後、初めての総会でございます。中央教育審議会に出席されていただきますに当たり、渡邉会長、そして永田副会長、荒瀬会長をはじめ、委員の皆様方のこれまでの御尽力を、まずもって感謝を申し上げる次第でございます。委員の皆様方の御意見を踏まえながら、全力で教育政策に取り組んでまいる所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 いつの時代も、教育というのは、やはり国家社会の礎でございまして、発展の原動力と、そう思っております。国づくり、人づくりの根幹とも言える教育をしっかりと前に進めていくためには、何といっても皆様方の御提言を踏まえまして、政策を一つ一つ着実に進めていくことが重要であると考えております。
 本日の総会の議題でございます、令和の日本型学校教育、これを担います教師の養成、採用、そして研修などの在り方については、新たな教師の学びの姿ですとか質の高い教職員集団の構築に向けた答申素案について、御議論いただくものと承知をしております。また、次期教育振興基本計画の策定につきましては、教育基本法に基づきまして、今後5年間の教育政策の基本的な方針や講ずべき施策をしっかりと内容とする計画の基本的な考え方につきまして、御議論いただくものと承知をしております。
 本日のテーマは、いずれも我が国の教育にとりまして、極めて重要なものでございます。委員の皆様方のこれまでの御尽力に対しまして、改めて深く感謝を申し上げますとともに、引き続きまして、御審議に御協力を賜りますよう、重ねてお願いを申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉(光)会長】 永岡大臣、本当にありがとうございました。
 続きまして、簗副大臣からもよろしくお願いします。
【簗副大臣】 第2次岸田内閣におきまして、文部科学副大臣を拝命いたしました、簗和生でございます。
 中央教育審議会の委員の皆様方におかれましては、日本の発展の礎となる教育政策につきまして御議論いただき、心から感謝を申し上げる次第でございます。
 私も委員の皆様方の御議論をしっかりと踏まえ、永岡大臣の下、過去から続き、未来へつながる我が国の繁栄の最も重要なところを支えているという、そうした強い気持ちを持って全力を尽くしてまいります。
 委員の皆様方におかれましては、忌憚のない活発な御審議をいただきますよう心からお願いを申し上げまして、御挨拶とさせていただきます。誠にありがとうございます。
【渡邉(光)会長】 永岡大臣、簗副大臣、本当にありがとうございました。
 永岡大臣と簗副大臣につきましては、この後、用務がございまして、ここで退席をされます。今日はどうもありがとうございました。
【永岡大臣】 ありがとうございます。大変、失礼をさせていただきますが、よろしくお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。どうも失礼いたします。
【渡邉(光)会長】 それでは、会議を続けさせていただきます。次に、委員の交代と文部科学省の人事異動がございましたので、事務局から紹介させていただきます。
【森友総合教育政策局政策課長】 まず、本年6月16日付で、藤田裕司委員が辞任されまして、6月17日付で、東京都教育委員会教育長、全国都道府県教育委員会連合会会長の浜佳葉子委員が就任されております。浜委員、一言よろしくお願いいたします。
【浜委員】 東京都教育委員会教育長、浜でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 東京都の教育委員会は約100万人の子供たちと、その学びを支える教職員、約6万人を所管しております、非常に大きな組織でございます。そのために、国をはじめとして常に関係機関の皆様と連携しながら、子供たちのために何をすべきか考えていくことが重要と考えております。
 本日のテーマであります、1つは、まず教員の、特に採用につきましては、東京都も大変苦慮しているところでございまして、先般10月22日に初めて東京教育フェスタという就職説明会のようなものを行いましたところ、大変大勢の関係者が、参加者がありまして、特に10時頃の開場から2時、3時まで長い時間帯在して、様々な教員の職について情報収集したいという大勢の熱意を感じる場となりましたので、こういったものをどうやって生かしていくかということを、今後、私どもとしても考えてまいりたいと思いますし、皆様方のお知恵もいただきながら取り組んでまいりたいと思っております。
 それから、教育振興基本計画の関係で申しますと、私どももこの4月に子供政策連携室という新しい組織を設置いたしまして、学校だけでは解決できないいじめ、不登校、児童虐待、ヤングケアラーなどといった子供たちをめぐる様々な課題に取り組んでいくということとしております。この辺につきましても、皆様方のお知恵を頂戴しながら、一緒に考えてまいりたいと思いますので、今後どうぞよろしくお願いいたします。
【森友総合教育政策局政策課長】  ありがとうございました。
 続きまして、事務局の異動がございましたので、御紹介いたします。
 文部科学次官の柳でございます。
【柳事務次官】 柳でございます。よろしくお願いします。
【森友総合教育政策局政策課長】 総合教育政策局長の藤江でございます。
【藤江総合教育政策局長】 藤江でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【森友総合教育政策局政策課長】 大臣官房審議官総合教育政策局担当の里見でございます。
【里見大臣官房審議官】 里見でございます。よろしくお願いいたします。
【森友総合教育政策局政策課長】 総合教育政策局政策課長の私、森友でございます。
 以上でございます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、プレスの皆様につきましては、御退出をお願いします。本日はありがとうございました。
(報道関係者退室)
【渡邉(光)会長】 それでは、本日の会議開催方式と資料につきまして、事務局から説明をお願いします。
【森友総合教育政策局政策課長】 会長から御説明いただいたとおり、本日も前回同様、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、Zoomを用いたウェブ会議方式を基本としつつ、ウェブ会議と対面式を併用した形での会議開催とさせていただきます。加えて、本日は、報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をユーチューブにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。
 また、本日は、議題1から4のそれぞれ説明の後、委員の皆様に御議論、質疑の時間を設けさせていただいております。御意見がございます場合、会場で参加の委員の皆様はネームプレートを立てていただき、ウェブ参加の委員の皆様は挙手ボタンを押してお知らせください。御発言は、会長の御指名の後にお願いいたします。
 ウェブ参加の委員の皆様は、御発言時以外は、マイクをオフにしてくださいますようお願い申し上げます。会場で参加の委員の皆様は、会長から御指名があった後、事務局がマイクをお持ちいたしますので、机上の端末にお顔を映していただきながら、御発言いただければ幸いです。
 委員の皆様には御不便をおかけすることもあろうかと存じますが、円滑な進行に努めてまいりますので、何とぞ御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 続きまして、本日の資料、議事次第にございますとおり、資料1から9まで、加えて参考資料が参考資料1から2となっております。御不明な点等ございましたら、事務局までお申しつけください。
 なお、資料9は、中教審運営規則等に基づきまして、前回、今年2月の開催以降、中教審の会議を経ないで行われました諮問につきまして、御報告をするものでございます。参考資料1及び2は、令和5年度の概算要求、税制改正要望事項のポイントをまとめたものです。本年8月に文部科学省のホームページにも掲載をしてございます。これらの資料につきましては、お時間の関係がございまして、資料配付とさせていただいております。御理解をいただければ幸いでございます。
 最後に、本日の御出席につきまして、全29名中、会場参加の方が9名、ウェブ参加の方が11名、合わせて20名の方々に御参加いただいていることを御報告申し上げます。御公務との関係で、本日、途中退出、途中参加予定の委員の方々もおられますので、御承知おきください。
 以上でございます。よろしくお願い申し上げます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。
 ただいま伊藤孝江大臣政務官が到着されました。早速ではありますが、着任の御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【伊藤政務官】 遅参をいたしまして、大変申し訳ありませんでした。
 第2次岸田内閣におきまして、文部科学大臣政務官を拝命いたしました、伊藤孝江です。
 中央教育審議会の委員の皆様方におかれましては、日本の宝である子供たちのために御議論を重ねていただき、本当に心から敬意を表し、感謝を申し上げます。
 私も、委員の皆様方の御議論をしっかりと踏まえ、コロナの影響で複雑化、多様化する問題にしっかりと対応しつつ、障害がある子や、また、不登校の子供たちを含めて、誰一人取り残さない教育をしっかりとつくっていく、そのために全力を尽くしてまいりたいと決意をしております。
 今後ともどうか御指導賜りますようよろしくお願い申し上げます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に移らせていただきます。議題1は令和の日本型学校教育を担う教師の養成・採用・研修等の在り方についてですが、事務局より答申素案を説明いただいたのちに、意見交換を行いたいと思います。
 次に、議題2ですが、次期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方についての案を説明いただいて、意見交換を行いたいと思います。
 議題3の教育未来創造会議の検討状況と、議題4の生涯学習分科会における議論の整理については、続けて事務局から説明をしていただき、併せて意見交換を行いたいと思います。
 それでは、議題1に入らせていただきます。まず、令和の日本型学校教育を担う教師の在り方特別部会については、私自身が部会長を務めさせていただきましたので、まずは私から説明をさせていただきます。
 最初にこれまでの審議の経過について、ご報告させていただきます。令和3年3月に令和の日本型学校教育を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について、文部科学大臣から諮問がございました。これを受けて中央教育審議会総会の下に、令和の日本型学校教育を担う教師の在り方特別部会を設置しまして、審議を進めてまいりました。
 諮問においては、参考資料1にあるとおり、①教師に求められる資質能力の再定義、②多様な専門性を有する質の高い教職集団の在り方、③教員免許の在り方、教員免許更新制の抜本的な見直し、④教員の養成大学、学部、教職大学院の機能強化、高度化、⑤教師を支える環境整備、の5点が検討項目として挙げられました。
 このうちの教員免許更新制につきましては、必要な教師数の確保と資質能力の確保が両立できるような抜本的な見直しの方向について、先行して結論を得ていただきたいという要請がございましたことから、特別部会の下に、教員免許更新制小委員会を設置しまして、令和3年11月に令和の日本型学校教育を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて、審議まとめという形で取りまとめた次第であります。これについては、昨年12月の総会にて御報告させていただいたとおりであります。
 政府におきましては、審議まとめを踏まえた法案を国会に提出いただきまして、今年の通常国会での審議を経て、令和4年5月には、教育公務員特例法及び教育職員の免許法の一部を改正する法律、この2つが成立いたしました。これによりまして、教員免許更新制の発展的解消と、研修履歴を活用した新たな教師の学びの姿を実現するための体制の構築、の2つが図られることになりました。そして残り4点の検討事項に対応するため、特別部会の下に、加治佐委員を主査といたしまして、基本問題小委員会を設置し、団体ヒアリング等を含めて、10回にわたり御議論をいただきました。
 そして、今月24日の特別部会において答申素案をお示しして、必要な修正を加えるという前提で、私に御一任をいただいたところであります。御参画いただきました委員の皆様をはじめ、改めてこの場をお借りして御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
 そもそも今回の諮問は、昨年1月の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現~」、いわゆる令和3年答申でありますけれども、この答申におきまして、教職員の養成・採用・研修等の在り方が今後さらに検討を要する事項として整理されたことが発端でありました。
 今回の答申素案におきましても、教師の学びの姿も、子供たちの学びの相似形との記述がありますように、令和3年答申と軌を一にする内容と考えております。一体的な改革を通じて、素案の「終わりに」に表現されているように、教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され、教師自身の士気が高まり、誇りを持って働いてほしいということ、そして、これからの環境変化を前向きに受け止めて、生涯を通じて学び続けて、子供たちの学びをリードするような伴走者であってほしいと考えるところであります。
 以上、私から簡単に令和の日本型学校教育を担う教師の養成・採用・研修等の在り方についての審議状況を説明させていただきました。
 次に、事務局から答申素案の概要について説明をお願いします。藤江局長、よろしくお願いします。
【藤江総合教育政策局長】 総合教育政策局長の藤江でございます。私のほうから答申案の概要について説明をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 お手元の資料1が概要、資料2が本文となっております。
 まず、全体の構成を概観いただくために、本文を開いていただきまして、目次を御覧いただければと存じます。全体の構成といたしましては、「はじめに」ということに続きまして、第1章として総論、それから第2章に各論を置いておりまして、最後に、ただいま部会長からも触れていただきましたけれども、「おわりに」ということでの全体構成となっております。
 それでは、資料1の概要資料に基づきまして、内容を御説明させていただきます。1枚目にございますのが、第1章、総論でございます。1では、令和3年答申で示された教師及び教職員集団の姿をお示ししています。続いて、2でございますが、ここでは子供たちの多様化と社会の変化の状況を説明しております。特に、高等学校において、情報1が本格的に始まったこと、また、いわゆる教師不足という産休、育休等を代替する臨時的任用教員などが不足していることなどを説明しております。
 続いて、3でございますが、ここでは教員の養成、免許、採用研修に関する制度及び現在の実態についてお示ししております。このうち、右上にございます、免許、赤いところでございますけれども、ここでは、普通免許状の授与件数が約19万件、これは1人で複数の免許を取得する人もいますので、人数ベースでは約10万人となっております。学校種別では、この5年間で、小学校では微増、特別支援学校は増加しており、それ以外の学校種では減少しているという状況でございます。また、特別免許状でございますが、グラフにありますように制度導入以来、徐々に増加してはいるものの、令和2年度の1年間で237件にとどまっているということでございます。
 また、左下を御覧いただきますと、採用選考試験のことが書かれておりますけれども、採用試験の倍率につきましては、小学校が2.5倍と過去最低、それから、中学校が4.7倍、高等学校が5.4倍という状況でございます。全体的には倍率が低下しておりますが、これは、大量退職や特別支援学級の急増を反映した採用増と、既卒受験者層の減少が要因となっております。一方、新卒受験者に限定すれば、小学校ではやや増加ということ、中学校高等学校では減少傾向という状況にございます。
 続きまして、4のところでは、今後の改革の方向性ということで3点、お示ししております。1つ目の柱は、新たな教師の学びの姿の実現ということで、子供たちの学びとともに、教師自身の学びを転換し、新たな教師の学びの姿として、個別最適な学びや協働的な学びの充実を通じて、主体的で対話的で深い学びを実現することをお示ししております。また、養成段階を含めた教職生活を通じた学びにおける理論と実践の往還の実現も示しております。
 2つ目の柱は、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成でございます。具体的には3点ありますが、1点目は、学校を取り巻くあらゆる課題に対応するためには、組織のレジリエンスを高める。そのためには、教師一人一人の専門性を高めるとともに、多様な専門性や背景を持つ人材を外から取り込んでいくことが重要だということをお示ししております。
 2点目は、多様化した教職員集団のマネジメントですが、学校管理職のリーダーシップの下で、目標の明確化、心理的安全性の確保、教職員の経歴、背景の多様性を考慮したマネジメントも不可欠であるということを示しております。
 3点目は、学校の働き方改革が不可欠であることを示しております。3つ目の柱は、教職志望者の多様化や教師のライフサイクルの変化を踏まえた育成と安定的な確保でございます。
 1点目に示されているのは、教職を目指す学生の中には留学ですとか、教職以外の資格の取得、インターンシップ希望など様々な学生がいる点でございまして、教職課程について、こうした多様な教職志望者に対応できるよう、柔軟性を高めていく必要があるという旨が示されております。
 2点目は、産休、育休取得者の増加、定年延長など、教師のライフサイクルの変化を前向きに捉え、採用や配置等を工夫する旨が示されております。
 以上が総論でございまして、続きまして、2枚目、各論となります。これは部会長からも御説明いただきました諮問事項の5項目に沿って整理をしております。
 1は令和の日本型学校教育を担う新たな教師像と、教師に求められる資質能力についてです。その中で、教師に共通的に求められる資質能力の柱といたしまして、1、教職に必要な素養、2、学習指導、3、生徒指導、4、特別な配慮や支援をする必要とする子供への対応、5、ICTや情報教育データの利活用の5項目に再整理し、それを踏まえ、任命権者が教員育成指標の変更など、必要な見直しを実施することや、各大学が教職課程の自己点検評価をすることをお示ししています。また、教育実習等の在り方の見直しということで、実施時期の柔軟化ですとか、学校体験活動の積極的な活用による教育実習の一部代替などを示しております。
 2は、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成についてです。その中の1つに、教職課程における多様な専門性を有する教師の養成を掲げています。具体的には、強みや専門性を身につける活動との両立のため、4年制大学において、最短2年間で必要資格が得られる教職課程の特例的な開設を認める。あるいは、小学校の専科指導優先実施教科、外国語、理科、算数、体育に相当する中学校教員養成課程を開設する学科等において、小学校教員養成課程の設置を可能とする措置を講じることとしております。
 続いて、教員採用選考試験の早期化、複線化、特別免許状や教員資格認定試験など多様な専門性や背景を持つ人材を教師として取り入れるための方策、校長等の管理職の育成及び求められる資質能力の明確化、計画的な育成を掲げております。
 3は、教員免許の在り方についてです。まずは、既に法律が成立したものではございますが、教員免許更新制の発展的解消と研修履歴を活用した資質向上に関する指導助言等の仕組みによる教員研修の高度化についてお示ししております。続いて、義務教育9年間を見通した教員免許の在り方として、小学校と中学校の両方の免許を併有することを促進する点についてお示ししております。
 4は、教員養成大学学部教職大学院の在り方についてです。この中では、教職大学院の授業科目の先取り履修による在学年限の短縮、教育委員会と連携協働した研修プログラムの展開、教職大学院の学びを生かしたキャリアパスの設定、教員養成学部における実務家教員の配置基準の設定等についてお示ししています。
 5は、教師を支える環境整備についてです。
 1点目は、学びの振り返りを支援する仕組みの構築ということで、研修履歴記録システムの構築、研修コンテンツを一元的に収集、整理、提供するプラットフォームの構築を記載しております。
 2点目は、多様な働き方など、教師を支える環境整備についてです。教員免許更新制が発展的に解消されたことを契機に、失効免許、休眠免許の保持者が再び教職に就く機会が増えることが予想されます。このため、特に免許状を失効した人の再授与手続の簡素化や入職者の不安を軽減するための研修の実施などを実施する旨が示されております。
 また、学校における働き方改革の推進についてですが、成果は着実に出つつある一方、長時間勤務の教職員も多く、引き続き取組を加速させていく旨が示されております。なお、冒頭、目次を御覧いただきましたが、本文のほうには、最後に「おわりに」の記述がございます。本年、学制150年を迎えましたが、最初の師範学校の設立は学制発布と同じ年ですので、教師の計画的な養成としても150年を迎える点、今回の改正で示す新たな教師の学びの姿は、教育基本法第9条に掲げる教師の在り方とも一致する点、今回の答申は、教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され、希望者が増加し、教師自身も士気を高め、誇りを持って働くことができるという将来の実現に向けた提言である点が示されております。
 私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、皆様より議題1の答申素案についての御意見、御質問をお伺いしたいと思います。要領につきましては、冒頭、説明がありましたとおり、会場参加の委員については、ネームプレートを立てていただき、ウェブ参加の委員は挙手ボタンでお願いできればと思います。
 それでは、渡辺委員からお願いいたします。
【渡辺(弘)委員】 日本医師会の渡辺でございます。資料1に関しまして、発言をさせていただきます。
 提言に書かれておられるような研修体制が滞りなく、かつ、現場の教職員の先生方に過度の負担なく実施でき、教職員一人一人の専門性が向上できるということがあれば理想的だと思います。しかし、そのためには、教師にこれまで以上の負担がかかるのではないかということを危惧するところでございます。
 また、各論の右下に、学校の働き方の推進、改善も項目が記されてございます。この言葉が叫ばれて久しいですが、精神的疾患による休職率はいまだに高く、現状では業務負担軽減が十分改善されたとは言えないと思います。外部から人材を加えるということも示されてございますが、全体を俯瞰し、調整しなければならない常勤職員のこれまで以上の業務負担を考えると、なかなか問題があろうかと思います。
 このようなことを考えますと、メンタルヘルスを含め、教師の健康を管理する体制整備をもっと積極的に対処していただく必要があるのではないかと思います。特に、今抜けている教職員数50名未満の学校に対する産業医の配置が、労働安全衛生法に定められていないからということで放置するのではなく、教育委員会に配置するなどの形で産業医の関与を推進していただくということが必要ではないかと思います。
 私は学校医として日々、教師を見つめてまいりました。文部科学省の方には、教師の健康は国が責任を持って守るという強い意志を持っていただいて、対策を立てていただきたいなと感じております。そのためには、先ほど申し上げたことも含めて、教師の健康を守るという明確なメッセージを部会から発信していただけないかと思います。
 以上でございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございました。学校医としての働き方改革の視点、大変重要な御指摘だと思います。
 今回の答申素案においては、総論で、学校の働き方改革をこれまでの取組として掲げた上で、本文の52ページ、53ページに、多様な働き方など教師を支える環境整備として、御指摘のような学校における働き方改革の一層の推進を掲げております。その中でメンタルヘルスの関係も記述させていただきまして、御趣旨のようなことが、この中でも伝わるような形にしてございます。
 また、「おわりに」にも、働き方改革を同時に実現することは非常に重要だということで、御発言いただいた趣旨は、この答申素案に盛り込まれていると思いますので、御理解をいただければと思います。
 事務局から補足的に何か説明はありますでしょうか。
【小幡教育人材政策課長】 簡単に補足させていただきます。研修に係る教師の負担について、本文の51ページに少し記載をさせていただいております。
 今回、プラットフォームなどの開発を国としても進めていく中で、オンデマンドで研修することで、対面で研修のセンターなどに通わなくても研修を受けられるような形での負担の軽減ということも進めていきたいと思っておりますし、また、研修の履歴についても、これが決して目的化することではなく、あくまでも教師の新たな学びにつなげるものということの手段であるということも明示した上で、教師の負担には十分留意すべきということが記載されているところでございます。
 以上でございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、次に、小林真由美委員、お願いいたします。
【小林(真)委員】 お願いします。
 2つお伝えしたいことがありまして、1つは細かいことで、最後のまとめのところにもございますが、学びの振り返りという点で、今おっしゃった研修履歴が、単に記録としてとどまることがないように、先生方自身の制札の意味を含んだ、ポートフォリオ的なニュアンスを加えていただけるといいなと思います。それは私自身の感想ですが。
 それから、もう一つは全体的なことですが、本当に内容について、ここまでいろいろ審議会での様々な御意見等を取り入れていただきまして、本当に素晴らしい内容になっているなと思いました。私は「おわりに」のところを読んだときに、涙が出そうになりまして、教員として読んだときにそんなふうに感じられるなと思いましたので、ぜひこの内容を先生方に読んでいただきたいと思います。そうすることによって、向かうべき方向も、それから、先生方が受けるべき研修の意義もきちんと伝わっていくように思います。
 これまでの答申ももちろん動画配信していただいたり、要旨をまとめていただいたりといった、読まれる工夫をしていただいているのですが、実際のところ、本来、本当に一番理解しないといけない教員は、ほとんど読むことなく決まったことだけを受け入れてきたというのが本当のところではないかと思います。概要版だけを見ても、なかなか本意が伝わらない。ですので、例えばですが、研修の中で意見を語り合う場を設ける、何か読む機会を設けられるといいなと思います。そうは言うものの、先ほど渡辺委員もおっしゃられたように、本当に教員に50ページの答申を読む時間がないということも事実で、働き方改革の1つの方向性として、教員が一体何に時間を費やすべきなのかと、そういうことも一緒に考えていただけるとありがたいなと思います。どうもありがとうございます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございます。1点目については、答申素案において、理論と実践の往還という言葉で表現されておりますので、十分に御意見を踏まえた内容になっているものと思います。
 2点目は、私も全く同じ思いでありまして、これをぜひ教師の人に届けてもらいたいと思います。これは行政の仕事そのものだと思いますので、事務局から何か補足はありますでしょうか。
【小幡教育人材政策課長】 ありがとうございます。特別部会の中でもこういった御意見をいただいているところでございます。教師の方ももちろんでございますが、大学や教育委員会の関係者の皆さんにもぜひ読んでいただかなければいけないものと思っておりますので、答申をおまとめいただいた後に、ステークホルダーごとにしっかり伝わるような資料や、様々な発信するやり方を考えていきたいと考えております。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございます。教育委員会を通して周知するというのが一般的ではありますが、ぜひ全ての教師の皆様に届くような工夫をしていただけたらと思います。
 それでは、次に、清原分科会長からお願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。清原です。
 今回の取りまとめにつきましては、諮問の内容を超えて、より発展的にこれからの教員の養成・研修・採用等について、お取りまとめいただいたものと思います。2点申し上げます。
 私も小林委員と同様に、「おわりに」というところに、とりまとめの趣旨が非常に簡潔にまとめられていると思いました。54ページの第3段落目ですが、「今回の答申は教師の養成・採用・研修の一体的な改革を通じ、教師が創造的で、魅力ある仕事であることが再認識され、志望者が増加し、教師自身も士気を高め、誇りを持って働くことができるという将来を実現するための提言である」とあります。
 これは、タイトルは「おわりに」という中に書いてあるのですが、私は「未来に」というか、「現実を直視して、今後こういう思いで教員の在り方、教職の在り方を考えていくんだ」という大変強いメッセージですし、しかも環境の変化を前向きに受け止めていると思います。生涯を通じて学び続け、子供一人一人の学びを最大限に引き出す役割を果たし、渡邉会長もおっしゃいましたが、「子供の主体的な学びを支援する伴走者」としての能力も備えている教師が、1人でも多く教壇に立つことを期待するという、このメッセージを、私は、強く強く発信をしていただきたいです。潜在的によい教師になる方がたくさんこの社会にはいらっしゃるのに、なぜか教師になっていただいていないので、ここを強く発信していただくための答申であると思います。
 2点目は、各論のところに、そのための展望があるところがありまして、例えば各論の1の「令和の日本型学校教育を担う新たな教師像と教師に求められる資質能力」のところですが、「特別支援教育の充実に資する介護等の体験の活用等」と示されております。これは、資料1の2ページ目のところでございますけれども、また、私は令和の日本型学校教育を進める上で、極めて大切なところが各論2の「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成」というところであり、特にデータ活用、STEAM教育、障害児発達支援、日本語指導云々と検討していただいていて、これらが決して今までの教員の皆様に負担を増やすということではなく、むしろ多様な人材が養成され、あるいは発掘され、そして、着実に必要なところに、そういう教員の方が活躍できるように採用、配置をしていただくという意味であると思います。採用については、主として都道府県にお願いをしなければいけませんし、養成については、教職員大学や教員養成課程にお願いしなければいけませんが、特に「多様な専門性を要する質の高い教職員集団の形成」が各論に書かれているところが未来につながっていくのかなと受け止めました。
 幅広いお取りまとめを集中的にしていただきましたことに感謝いたします。どうもありがとうございます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございます。応援メッセージと受け止めさせていただきました。私も思いは同じでございまして、先ほどの小林委員の御指摘と同じように教師の皆様に伝えていくことが非常に重要だと思います。ありがとうございました。
 それから、各論の御指摘のところも、データ活用、STEAM教育、障害児の発達支援、それから日本語指導と並んでおりますが、要するにこれは多様性と包摂の問題を御指摘いただいたのだと思います。今回の答申素案においては、多様性がキーワードになっていると思います。御指摘の趣旨は、この中に盛り込まれているものと理解しております。ありがとうございました。
 それでは、オンラインで御出席をいただいております、小林いずみ委員、お願いいたします。
【小林(い)委員】 小林です。素案の取りまとめ、ありがとうございます。非常に意欲的な、そして重要なポイントをしっかりと押さえた、いい素案だと思います。
 あえて私からお願いをしたいのは、私も今、清原委員が御指摘になられた、多様なスキルの集団であるということ、そして、教職志望者の多様化、あるいはライフスタイルの多様化というものを活かすような組織になっていくという、この点が非常に重要であると考えておりました。今回、ここの部分がしっかりと書き込まれたことは非常に良いと思いますが、併せて、そういった多様な人材の力を本当に生かして、そして組織として強くなるには、校長のリーダーシップが非常に重要になると思います。これについては、素案の38ページ、39ページに、評価の仕方のところまで踏み込んで書いていただきまして、これは非常にいい取組だと思います。
 あえて申し上げると、ここに書くだけではなくて、実際に現場で、こういったリーダーが活躍し、そして、そういったリーダーシップのもと、教職員のチームの力が成長していくような具体的な仕組みづくりに、今後もぜひつなげていっていただきたいと思います。多様化する子供たちに対して、教師の側も多様化していく、そして、チームとして強いチーム、強い学校をつくっていくということが非常に、これからの新しい時代のキーとなりますので、この点、よろしくお願いしたいと思います。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。御指摘のとおり、従来、教師の資質等については、色々な答申の中で、あるいは色々な提言の中で取り上げられてきましたが、新しい時代においてマネジメントし、アセスメントし、ファシリテーションしていくということになると、どうしても校長をはじめとした管理職の能力が非常に重要になってきます。そのため、今回の答申素案では、その点を従来にはないくらい強調していると思います。
 それでは、次に清水委員、お願いいたします。
【清水(信)委員】 ありがとうございます。1点だけ、免許のお話をさせていただこうと思います。
 今回の答申の中にも特別免許状のことが出ておりますが、なかなか活用されていないということですけども、現状、私ども、専修学校というのは学校教育の124条で、教員資格については免許ではなく学位規定でございます。お隣の後藤委員の高等専門学校も学位規定でございます。教員免許がなくても教壇に立っている人が世の中にはいっぱいいるわけですけども、そういった観点で言うと、特別免除の仕組みを本当にやわらかくしていただいて、社会で今、眠っている人材をぜひ掘り出してほしいなと思います。
 今、公立学校がなかなか教員不足で御苦労されていますが、ただ、私たち私立学校もなかなか厳しい状態に今なっております。しっかり社会人として眠っている人材を、やわらかい仕組みをつくっていただき、その仕組みを広く社会に呼びかけていただいて、発掘していく方法もあるのではないかと思いましたので、御発言させていただきました。よろしくお願いします。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございます。免許については、御指摘のような点も盛り込まれていたと思います。ありがとうございました。
 それでは、次の議題もありますので、大変申し訳ないのですが、少し短めに御発言を頂ければと思います。それでは、今、手を挙げていらっしゃる井坂委員、清水敬介委員、後藤景子委員、越智委員、の順番でお願いします。
 それでは、井坂委員、お願いいたします。
【井坂委員】 ありがとうございます。県立学校の校長を10年やっています、井坂と申します。先ほど御指摘がありましたが、私のほうからも発言させてもらいます。
 1つは、総論のところの1番のポツの6つ目でしょうか。教師は創造的で魅力ある仕事であることが再認識され、教師自身も士気を高め、誇りを持って働くことができるとございます。これはもう既に、例の最後の部分でまとめていただいたということで、既に清原委員をはじめ、御指摘いただいたのですが、全くおっしゃるとおりで、学校の教員というのは、私は自分で教員をやっていますので、自分では言いにくいのですが、多くの教員は子供の成長に出会うこと、非常にそれを喜びとしております。
 今回、示させる素案が最終的にまとまった際にも、教員の養成・採用・研修の在り方についても、恐らく真摯に受け止めて、大多数の教員はそれに基づいて研修に励むと思います。その中で、我々は周囲から認められて、頼りにされること、もっと言うとリスペクトされることで、ますます意気に感じて、一生懸命子供たちのために尽くす職であるということが言えると思います。
 実際に今、言われていますが、本校は毎年、新採の教員、うちは高校ですが、あるいは若い教員、そして実習生を見ていましても、正直言って、私が若い頃よりもはるかに高い使命感、職業観を持っていることが分かります。その上で、これも御指摘いただいたのですが、難しいのは、これは教師は教師で、また不祥事がございまして耳が痛いところでございますが、教師が創造的で魅力ある仕事であることが「再認識」されるというの 、広く社会からということだと思います。
 「再認識」についてはは議論される中におきまして、特別部会では、社会から再認識されるというのは、どのような形で御議論されたのかなというのが大変気になっているところでございます。
 また、各論のほうで、教師を支える5番目、環境整備でありますが、私はなかなか教師が誇りを持って働くことができるとなりますと、確かにシステムとしては、研修システムは有用であると思いますし、また、働き方改革もいろいろな形で進んでいます。私は、「働き方改革」まとめのところでばしっと書いていただくと、より一層、現場の教員としては力強い応援をもらったなと感じる次第です。
 現役の高校の教員としては、感想と、もっと頑張らなくてはいけないという気持ちがありますが、社会から再認識されることについては、実現に向けて御議論があったら教えてほしいというのが1点です。
 あと1点、今、御指摘あったように、これからますます校長という立場が、マネジメントを含めて新たなアセスメントであったり、ファシリテーションであったり、そういう力を求められてきます。これは当然、任命権者は計画的な育成を図っていく必要があると、おっしゃるとおりなのですが、例えば、文科省で、学校に対しては色々な形で、新しいモデル校、指定校をつくり、あるいはもう既にやっているかもしれませんが、いわゆる任命権者は自治体と一緒になって、例えば戦略的に管理職をつくっていくのだと。これは放っといても校長はできないと思いますので、まさに段階的につくっているのです。ですので、そういうシステムを国と、どこか指定したような、地方公共団体や、モデルのようなパターンをつくるようなことは考えられないのか、ということを考えている次第でございます。
 以上、2点でございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございます。御指摘のとおり、メディア等で取り上げられているような不祥事がどうしても社会の前面に出てしまうものですから、現実の姿以上に強調されているように思います。
 今回の答申素案の中では、教師の本来の姿、今の良い点も含めた好事例が数多く出ておりますので、そういったものを踏まえた考え方、そして未来に向けての考え方を整理しております。御発言にあったような趣旨を、ぜひ答申素案を通じて知っていただきたいと思います。
 後半に御指摘のあった点について、事務局から何か補足的にございますでしょうか。
【小幡教育人材政策課長】 御指摘を踏まえて、しっかり対応していきたいと思います。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございます。
 それでは、続けさせていただきます。次に、越智委員、お願いいたします。
【越智委員】 ありがとうございます。もう多くの方々から御意見を伺いながら、なるほどと思うのは、内容はすばらしいと思いますし、特に1番目の教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識という文言がよいと思います。それと少しリンクするのですが、2番目の臨時的任用教員等が確保できない教師不足の問題というところを考えると、5.教師を支える環境整備の52ページ、後ろから2段落目のところに、特別措置法等の法制的な枠組みを含めたということで、教師の処遇の在り方の検討というのが書かれております。
 今の教員については、労働の内容と給与水準とのバランスがどうであるのかということが考慮されないと、優秀ないい先生が直接、学校の現場に入ってきてくれない可能性はあるのではないかと思っております。ここにありますように、昭和49年の学校教育の水準の維持向上のための義務教育、諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法というのが昭和49年にあり、この3条だけですが、義務教育諸学校の教育職員の給与については、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇処置が講じられなければならないという点が述べられて、定められております。
 やはり今、人づくりというのが国力の源泉であるということを考えると、現在、教育というのが市場競争主義的な私的財という考えに少し寄りつつあるのですが、公共財としての側面をもう一度見直して、そこに力を入れていくべきではないかと思います。内容としては、すばらしいと思います。ありがとうございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございます。御指摘の点は非常に重要なことだと思います。
 したがって、53ページに記載のとおり、文科省において教員の勤務実態の調査を踏まえて、給特法について法制的な枠組みを含めた教師の処遇の在り方等を検討する必要があるということを明記したのは非常に重要な要素だと思います。今後については行政のほうでご尽力頂きたいと思います。各方面からさまざまな御意見が出てくると思いますので、ご対応をお願いいたします。
 それでは、オンラインでご参加の清水敬介委員、お願いいたします。
【清水(敬)委員】 日本PTA、清水です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私のからは、資料1の総論の4番目の今後の改革の方向性の中の教職志願者の多様化や教師のライフサイクルの変化を踏まえた育成と安定的な確保というところについて、意見を申し上げたいと思います。
 児童生徒の多様性と同じように、教員の多様性も認められるべきであり、それが当たり前の時代になっています。ただ、多様性の意味が違う方向に向かないように気をつけなければならないとも考えています。何でも認めるのが多様性ではなくて、教職で求められるものを習得した上でのキャリアアップやリカレント教育など、自己を高める行動としての多様性が求められており、また、ライフサイクルについても、一般社会と同じように働き方の多様性が求められていると思います。その求めに対して、しっかりと対応していかなければなりません。教員の質の向上や教職志願者の増加を願うためにも必要な改革ではないかと考えております。
 以上、意見でございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございました。おっしゃるとおりの御指摘だと思います。多様で、専門性を有する質の高い教職集団をつくる必要がある、ということだと思います。ありがとうございました。
 それでは、後藤景子委員、お願いいたします。
【後藤委員】 教員の養成・採用・研修という非常に幅広いところから、御議論いただいていると思います。
 私は、教員の養成という観点で、教員養成学部、あるいは教員養成大学の入口と中を考えたときに、入学者の選抜方針というか、教員志向の高い入学生をいかに確保するかということも大変重要なことだと思います。モチベーション、あるいは基本的な資質を持ち合わせている入学生を確保していくというところが1つ大事かなと思います。
 中については、教員を育てる教員養成学部、教員養成大学の教員の意識や専門性というところも大事かなと思っています。教職と教科の担当者間の、しっかりした連携が必要かと思います。
 それから、教員研修に関しましては、現場にいる人間としまして、教員の繁忙というのを日々見ております。ですから、研修には教員の支援という観点が重要で、自発的な学びを促すような内容を構築していくことが重要かと思います。
 日本型学校教育には資質の高い教員の確保が肝になるかと思います。教員を志願するには教職に対する夢を持っていただくということが重要だと。
 それから、さっき御指摘がございましたが、私も給与のところ、少し見直す必要があるかと考えております。
 以上でございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございました。理論と実践の往還のところは、御指摘のとおり、非常に重要な視点だと考えます。
 それから給与については、先ほどの御意見と同じように、これから非常に重要な要素になると思います。どうもありがとうございました。
 まだまだ御意見があるかもしれませんが、本日は大変貴重な御意見をいただいたと思います。いただいた御意見については、今後の対応においてもしっかり受け止めさせていただきたいと思います。本答申素案につきましては、御説明したとおり、この特別部会、教員免許更新小委員会、基本問題小委員会の中で議論を重ねてきたものでございます。先ほどから御意見がありましたように、「おわりに」の中でいろいろな思いを込められていると思います。
 そういう意味では、一部は今後の教育振興基本計画部会の議論に反映していく、あるいは具体化については、教員養成部会で引き継ぐ、ということを前提とさせていただきまして、パブリックコメント等の必要な措置を行った上で、年内には答申としてまとめていきたいと考えます。引き続き、御協力いただければと思います。
 それでは、議題1については以上とさせていただきまして、次に、議題2に入らせていただきます。
 まず、教育振興基本計画部会の部会長を私が務めさせていただいておりますので、総会への報告に当たりまして、これまでの考え方や部会での議論についてご説明したいと思います。
 本年2月に、末松文部科学大臣から次期教育振興基本計画の策定について諮問をいただきました。これは参考資料2にあるとおりであります。私といたしましては、ちょうど学制150年の節目の年に諮問されましたので、この諮問の受け止め方として、歴史の積み上げてきたものと未来の間に立つ、不易流行の視点が重要ではないかと考えました。
 不易としての視点は、改正教育基本法の理念体系にあると考えます。足元の世界情勢を見るにつけましても、我が国の教育基本法が、前文において、民主的で文化的な国家をさらに発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献するということを掲げていることについては、本当に誇りに思います。そして、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとしていること。さらには伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進するということについては、先人の教育の本質を希求してきた結晶のようなものだと感じます。このように、改正教育基本法の理念体系は次期計画における変わることない不易であると共有化すべきものだと考えています。
 もう一つの不易流行の流行として認識すべきことは、諮問の趣旨や第3期計画期間での答申や提言で明確に示されていると受け止めております。現行の第3期計画の間に、人生100年時代、あるいは超スマート社会であるSociety5.0の到来といった未来社会の変化を見据えた、未来志向の教育政策の在り方が既に示されています。第3期において示された答申や提言ということですけれども、中央教育審議会では、令和の日本型学校教育の答申、学校の働き方改革答申、そして、高等教育におけるグランドデザイン答申、これらが示しているということだと思います。
 教師に関しましても、本日御議論いただきました、教師の養成・採用・研修の答申取りまとめに向けての審議が進められているところであります。
 次期計画は、第3期の間のこれらの答申や検討された事項、さらに文部科学省以外での審議事項も含め、これらを十分考慮しながら、変化への対応を実践していくための総合的な基本計画、という位置づけをしていく必要があると思います。不易と流行の本質は同じということで考えますと、これらの変化対応を実践してこそ、教育の本質が未来につながっていくのだと考えます。こうした考え方を基に、教育振興基本計画部会では本年3月以降、これまで8回にわたり、精力的な議論を行ってまいりました。
 第3期計画の進捗状況に関するフォローアップを行った上で、諮問にあります、教育のデジタルトランスフォーメーション、ウェルビーイング、誰一人取り残さない教育、グローバル化への対応といった多岐にわたるテーマについて委員からの発表をいただきまして、闊達な議論をいただきました。
 本日は、これまでの審議の中間的な整理としまして、次期計画の策定に向けた基本的な考え方について報告することとなっております。特に重要な視点として、3点挙げさせていただきたいと思います。
 1点目は、Society5.0、SDGsといった未来志向を持って、一人一人の多様な幸せであるとともに、社会全体の幸せでもあるウェルビーイングが実現されるように教育の在り方を考えていく必要があるということ。
 2点目は、一人一人の可能性が最大限に引き出せると同時に、誰一人取り残さないという多様性と包摂性、そして公平・公正という視点、すなわちダイバーシティー、エクイティー、インクルージョンというDE&Iの視点が重要だと考えます。
 3点目は、答申で示す方針や方向性について、確実に実効性あるものとするため、人的物的資源、あるいは財源の確保と再配分について、具体的な手段を念頭に置く必要があるということだと思います。
 また、今回の基本計画部会の審議では、初等中等教育から高等教育に至るまでの連続性を重視して、共通課題を横断的に議論するという形で進めてきております。この点は従来とは違った視点で取りまとめられていると考えます。
 さらに、これまでの審議では、第3期の成果と課題からの検討のみならず、社会の現状や変化への対応要素がかなり色濃く出されております。まずは何といってもコロナ禍の影響により、日本のデジタル化が周回遅れであるということが露呈したということ。従来のICT利活用のレベルとは一線を画した、教育DXのような視点が重要になったということだと思います。
 もう一つは世界情勢により、非常に地政学的なリスクが高まった形で、世界の潮流から受けるものという視点だと思いますけれども、社会の持続的な発展の重要性がより明確になったということです。その流れでの教育と社会の関係性が重要になったということではないでしょうか。基本計画部会ではこういった視点が重要になっていると考えております。すなわち、社会課題の解決、個人、社会のウェルビーイングの向上という視点、こういったものが重要になったということではないでしょうか。こうしたものは全体の潮流から来る課題認識だと思います。
 繰り返しになりますが、特に個人、社会のウェルビーイングの向上は、第3期にはない要素として、非常に重要な理念になってくると思います。そうしたことから次期教育振興基本計画は、単に第4期という認識ではなくて、新教育振興基本計画と位置づけられるものではないかと思います。冒頭申し上げましたとおり、今年は明治4年に学制が公布されて、150年になる節目の年でもございます。例えれば、この教育振興基本計画は、予測困難な時代のVUCAの海を行く日本の教育という船の羅針盤となるようなものだと考えます。新たな時代の船出に当たって、進むべき方向性を示す大変重要な意味合いを持つ計画であると考えております。本日は、その総論としての基本的な考え方をお示ししますけれども、今後の各論の審議に向けて、委員の皆さまから御意見を頂戴したいと考えております。
 それでは、詳細についての説明は藤江局長よりお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【藤江総合教育政策局長】 それでは、私のほうから基本的な考え方についての概要を説明させていただきます。
 資料といたしましては、基本的な考え方の概要が資料3、それから、本文といたしまして、資料4をお示ししてございます。私からは、資料3の概要に基づき、御説明をさせていただきます。
 まず、0と書いてあるところでございますけれども、コンセプトを整理しておりますが、現行の第3期計画期間中に生じた大きな出来事といたしまして、新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアのウクライナ侵略があったわけでございます。予測困難な事態と言われて久しいわけですが、まさに想定外の出来事でございまして、学校の役割や学びの変容ももたらされております。そうした中で、誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出すための教育により、共生社会の実現、様々な個人と地域、社会のウェルビーイングの実現を目指すことが求められております。
 次に、グローバル化や少子化などが進む中で、持続可能な社会の発展を生み出す人材育成が必要となっており、そのために主体的な社会形成参画や生涯学び続けること、課題発見、解決の学びをいつでも受けられるようにする環境整備が必要となっております。そして、コロナ禍で飛躍的に進展したデジタルトランスフォーメーション、DXを教育、学習全体の中に組み込んでいく。それにより、Society5.0の実現を目指すということを基本的なコンセプトといたしております。
 次に、ローマ数字の1のところにございます、我が国の教育をめぐる現状と課題というところでございますが、まず、教育の普遍的な使命として、今年、学制150年を迎える中で、教育基本法に示された理念、目的、目標というのは、時代を超えて求められる普遍的なもので、合わせて、社会や時代の変化に対応した教育を進めることで、不易と流行の考え方に基づき教育を行っていくことが重要であると。そして、教育振興基本計画は、予測困難と言われる時代において、我が国の教育の方向性を示す羅針盤となるものとの認識を示しておりまして、このことは先ほど会長の御説明もいただいたところでございます。
 その上で、まずは第3期期間中の成果と課題について、フォローアップを記載させていただいております。資料の左側のところでございます。成果といたしましては、初等中等教育段階では、国際的に高い学力水準を維持しており、GIGAスクールや定数改善などが進んでいる。高等教育では、教学マネジメントや質保証の取組、連携統合に向けた体制整備が進められたということ。さらに、学校段階を横断して、教育負担軽減による進学率向上や耐震化などが進んだと整理しております。他方、右側の四角の中にございますように、課題といたしまして、コロナ禍によるグローバルな交流や体験活動の停滞、いじめの重大事態や自殺者数が増加している。学校での長時間勤務や教師不足の問題、地域の教育力の低下、高度専門人材の不足や労働生産性の低迷。教育改革に対する大学間の取組差、博士課程進学率の低さなどを挙げております。
 そして、この間の社会の現状や変化といたしましては、VUCA化の時代、グローバル化、少子化、人口減少、コロナ、学校の福祉的役割、国際情勢、行政社会、社会的包摂、DX、AI、ロボット、グリーン、経済的豊かさでなく精神的な豊かさの重視、18歳成年、こども基本法の成立などを挙げていただいております。
 続いて、オレンジのローマ数字の2のところで、今後の教育政策に関する基本的な方針を整理してございます。今までお示ししましたことを踏まえた上で、今後の教育政策に関する基本的な方針、5点を示しておりますが、①として、日本社会に根差したウェルビーイングの向上、共生社会の実現に向けた教育の推進、②として、グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成、③として、地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進、④として、教育DXの推進、⑤として、計画の実効性確保のための基盤整備、対話、この5つを掲げているところでございます。
 個々、簡単に御説明いたしますと、①につきましては、四角の中にございますように、誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す学びを日常の教育活動に取り入れることによる、ウェルビーイングの向上を目指すということ。子供が抱える課題が多様化、複雑化する中で、多様性、公平、公正、包摂性ある共生社会の実現に向けた教育を推進するということ。その際、日本に合った形での調和と協調ある日本発のウェルビーイングというものを取り入れ、目指していくということ。また、教師のウェルビーイングや地域住民のウェルビーイングも重要であるということ。そのためには、同調圧力への偏りからの脱却が必要であることなどを掲げてございます。
 ②につきましては、社会課題の解決を経済成長と結びつけてイノベーションにつなげる新しい資本主義の考え方に基づく取組や、一人一人の生産性向上に向けての人への投資が必要という認識の下、グローバル化が進展する中での持続可能な社会のつくり手の育成に向けて、留学等の推進、また、日本人が弱いとされている主体的に社会の形成に参画する態度の育成やデジタル、グリーン等の成長分野での人材育成に向けた取組、人生100年時代のマルチステージにおける学び続ける学習者の育成などを示しております。
 ③につきましては、後ほどまた御説明させていただきますが、生涯学習分科会での審議のまとめで示された方向性も踏まえ、持続的な地域コミュニティーの基盤形成に向けての公民館や社会教育人材の活用、学校と地域の連携に向けたコミュニティースクールと地域学校協働活動の一体的推進、生涯学習を通じた高齢者を含む全ての人のウェルビーイングの向上、障害のある方の生涯学習機会などを掲げております。
 ④につきましては、DXに至る3段階として、電子化、デジタイゼーション、それから最適化、デジタライゼーション、そして、新たな価値、デジタルトランスフォーメーションと言われておりますが、その中で、当面、第3段階を見据えつつ、第1段階から第2段階への移行を着実に実施するということ。そして、教育データの分析、利活用、情報活用能力の育成、DX人材育成、対面のリアルな活動も不可欠であるという認識などを示しております。
 最後の⑤につきましては、経済的、地理的状況によらない学びの確保、指導体制、ICT環境整備、NPOや企業等多様な担い手などの基盤整備とともに、子供を含むステークホルダーとの対話を通じた計画の策定等を盛り込んでおります。なお、各論の施策や教育投資などの留意事項は今後の議論としておりまして、年度内の答申に向けて、引き続き議論を行うことといたしております。
 今後は、本日いただく御意見も踏まえまして、教育振興基本計画部会で目標や施策群、指標に関する議論を進めていく予定といたしております。
 以上でございます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。
 ここまで伊藤大臣政務官に御臨席いただきましたが、用務のために、御退席となります。本日はありがとうございました。
【伊藤政務官】 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、議事に戻らせていただきたいと思います。ここから皆さんの御意見、御質問を伺っていきたいと思います。要領は先ほどと同じように、ネームプレートを立てていただくか、挙手ボタンでお願いできればと思います。
 それでは、お願いいたします。渡辺委員からお願いいたします。
【渡辺(弘)委員】 日本医師会の渡辺でございます。
 本文である資料4の2ページの2つ目の丸に関して、意見を述べさせていただきたいと思います。ここは教育基本法について触れられていて、第1条は、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた、心身ともに健康な国民の育成だと書かれてございます。つまり、健康とは教育基本法の第1条に規定されるほどの教育の一丁目一番地であると。非常に大事なものだと考えられます。
 3つ目の丸に当てはめて言えば、健康という不易を、普遍的な使命としつつ、新型コロナやがん対策、性をめぐるような問題など、様々な流行の中で、我が国の健康教育について羅針盤となるものを基本計画で打ち出していくことが重要だと考えます。
 よって、以前にも発言させていただいたことがございますが、せっかく担当課のほうで、健康教育の充実に尽力されておられるのでございますから、その取組も踏まえた、健康教育に関する明確なメッセージを、できれば盛り込んでいただきたいと思います。
 以上でございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございました。もともと健康あればこそということでありますし、知徳体の調和ということでも、御指摘の趣旨を踏まえたものだと思います。ありがとうございます。
 それでは、小林真由美委員、お願いいたします。
【小林(真)委員】 ありがとうございます。前文の中に、何度も一人残らず、全ての人の可能性を引き出すという言葉が書かれておりまして、大変魅力的な言葉だと思う一方で、先日発表された不登校の数の増加ということを鑑みますと、コロナによる影響もあると思いますし、いろいろな事情が重なっているものと思いますが、なかなか学校に来られない子に対して一人一人の可能性を引き出すということを、どのように行っていくのかということはなかなか難しいと思いまして、今まで先生方は家庭まで行って色々話をしたり、連携を取ってということで、本当に涙ぐましい努力を続けてきているわけですが、働き方改革という問題もありますので、先生の熱意に頼るということではなく、今、全国的に不登校特例校も設けられておりまして、その取組等に目を向けたり、あるいは、また、こども家庭庁と新しく取組の連携を取ったりということで、私たち、みんなが真剣にこのことについても考えていかないと、引き出すというきっかけさえ、なかなか設けられないのではないかと思いますので、また、その点についてもお諮りいただければと思います。
 以上です。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございます。今の御指摘というのは、社会的な包摂の視点でもあり、豊かな心の育成というような問題でもあろうかと思います。非常に多くの視点から対応を図る必要があるという御指摘と受け止めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、オンラインのほうから、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】 今村です。今、小林委員がお話しになったことに重ねさせていただいて、私からも発言をさせていただきます。
 本当に、昨日、文部科学省から発信された不登校のデータについては、これは本当に、この総会でこそ、いの一番に扱うべきものだったのではないかと思うぐらい、とても社会に衝撃を与えていると実感しています。これまでの不登校の2013年からずっと増え続けているわけですが、平均すると、7.2%の増加率で来たものが、今回は増加率が24.9%と、増加のスピードが桁違いで起きているということは、とても重く受け止めるべきことだと思います。また、最も注目すべきなのが、36.3%が学校内外での何の相談も受けられていない、支援にも接続できていないという点は、誰一人取り残さないというキーワードは、少し前から中教審の中では掲げられていますけれども、誰一人取り残さないどころか、取りこぼしまくっているという実態を、ここではっきりと示されたということだと思っています。
 今回すごく様々なキーワードが盛り込まれている振興基本計画で、私も部会に参加させていただいているので、ここでも申し上げるのは力不足で申し訳ないのですが、何を優先すべきかということが、もう少ししっかりと位置づけられるべきなんじゃないかと思います。私は取りこぼしている人たちの存在をはっきりと明らかにして、そこに対する手だてをきちんとしていくべきなのではないかと思います。今の不登校の子供たちのための支援施策は、不登校特例校が代表的な語られ方でいるのですが、不登校特例校には定員がありますので、不登校特例校に接続できる子たちは、すてきな学校機会と接続できる。しかし、そうじゃない何万人もの子供たちは、そうじゃないという施策です。
 誰一人取り残さないというのであれば、一体今何をしなければいけないのかということをきちんと考えていかなければいけない。これはまさに振興基本計画の中で位置づけて、最重要課題として取り組んでいくべきかと思います。
 本題ではないのですが、昨日、発信された問題行動、不登校等の調査についての取り方も、教員の方々の指標、教員の方々の捉え方でアンケートに答えているというやり方もやはり限界があると思います。不登校の理由の第1が無気力になっていましたけれども、無気力というのは生まれたときから無気力な人はいなくて、無気力は結果です。何らかの環境によって、結果として無気力になっているわけで、その無気力が原因だというのは、原因ではないと思います。おそらく、自分の仕事をメタ認知するということは難しいので、例えば先生方との関係性とか教え方というところが理由だとしても、それが原因だということを教育委員会には報告しないんじゃないでしょうか。そういうことも含めて、アンケートの取り方含めて、教育基本振興計画の中でどのように対策をしていくのかということの優先度を上げて、不登校の問題には取り組むべきだと思います。
 以上です。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございました。不登校の視点からお話しいただきました。確かに今、コロナ禍がその要因ということで報道がされていますけれども、いじめの問題であったり、ヤングケアラーの問題であったり、場合によっては、特異な才能の問題だったりということで、いろいろな要因があろうかと思います。そういった視点を次期計画の目標案としてどう置くのかということについての検討が重要だと受け止めさせていただきました。
 寺門審議官、不登校に関連する御発言でしょうか。
【寺門学習基盤審議官】 お許しいただければ、補足をさせていただいてもよろしいでしょうか。
【渡邉(光)会長】 それでは、よろしくお願いいたします。
【寺門学習基盤審議官】 ありがとうございます。小林先生、今村先生の御指摘、危機意識、全く恐縮でございます。ぜひこの部会、審議会でも合意を深めていただければと存じますけれども、今日、大臣からも御発言していますが、改めて児童生徒課のほうも、有識者会議のほうでも要因分析しながら、多面的な形で子供の学び、居場所で支えていくという取組を続けてまいりたいと思いますので、引き続き御審議の御協力お願いしたいと思います。
 以上でございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 ほかに事務局から補足的な説明はございますか。よろしいですか。ありがとうございました。
 それでは、貞廣委員、お願いいたします。
【貞廣委員】 ありがとうございます。千葉大学の貞廣と申します。3点、意見を申し上げようと思ったのですが、1点目は小林委員と今村委員と全く同じ重なる意見ですので、簡単にということでできれば今日は議題に先立って、この物事についての情報共有をいただく時間を設けていただきたかったと思っているところです。それが1点目です。
 2点目です。内容についてです。先ほど渡邉会長から冒頭で、大変格調の高い、御説明がありました。ウェルビーイングを柱にして、多様性、包摂性、公平性、公正性をベースに考えていくという御説明がありました。こうした基礎となる政策的の価値や規範というものをしっかりと明示して共有していくことは大変大事なことなのだと思います。
 これまでは、目前の課題に玉を打ち返すように対応しなければいけない部分があることもあり、我が国の教育政策というのは、ある特定の大変重要な規範から演繹的に政策体系をつくっていくというよりも、眼前の問題への対処の中で、例えば現場の直観的判断とか政治的な創発によって、全体がつくり上げられてきたところがあると思っておりますそうした個別の政策が全体の体系をつくり上げているため、必ずしも全体に共通する基本的な価値の検討がなかなか行われず、政策もまだらで離散的で、国民的な議論も生まれにくいというような実態があったように思います。
 ただ、先ほどの御説明もあったように、転換期こそ、各論においても個別的な議論に終始するのではなく、政策のバランスの担保や、先ほど今村委員から何を最重要とするのかという御発言ありましたけれども、諸価値の中でも、最優先は何に置くのかという価値序列についても目配りをしていく必要があるのではないかと思います。そう考えますと、本日、資料3で今後の教育政策に関する基本的な方針の中に5つの方針、立ててくださっていますけれども、このうちの5つは全て並列というよりも、1が筆頭方針となるような、ベースのような扱いになるのではないかと思いますし、そこの中で掲げられているD&Iの中にも、価値序列というものが出てくるのではないかと思います。そういう形で、各論の検討に臨んでいただきたいと考えます。
 また、3点目でございます。方針の資料3の上に、成果と課題を書き出していただいています。これは、本当に個人的な印象論でが、ここまでしっかりと課題を書き出してくださっていたことがなかったように思います。このように不都合な真実にしっかりと向き合って次をつくるというような覚悟を見せていただいているように思います。ぜひ、こうした課題にしっかりと向き合っていただいた上での各論の議論をお願いしたいと思います。
 以上、雑駁でございますが、3点申し上げました。ありがとうございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございます。これから各論の審議に移る際には、従来の判明している調査結果や、分析を同時並行で行いながら、目標の指標として、どう整理するのかについては、御指摘の視点を踏まえて、検討していきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。内田です。私も次期教育基本振興基本計画の部会のほうに入らせていただいておりましたので、いろいろな議論に参加させていただいておりました。
 そうした中で、ウェルビーイングということに関して、主に私の中では発言をさせていただいておりまして、今回も、1点目にあげていただいていると思います。ウェルビーイングには非常に多様な意味が包含されていると思います。この中には誰一人取り残さないということも含まれていますし、また、そうした社会課題に対する対応ということだけではなく、いかに日本の教育の中を通じて、教育を受ける人たちがどのように夢を実現していくことができるか、ということも、含まれていると思います。
 将来的に、教育を受けることによって、私たちは何が実現できるのかという観点が弱かったのではないかということも再認識もいたしました。例えば、小学校から大学に至るまでの教育期間の中で、ゴール設定が短期的目標になってしまったり、大学に行って教育研究を受けたときに、一体自分がどのように世界の中で貢献できるのかという意識を持つことというのも、多様なウェルビーイングを実現するという意味では、非常に重要なことかと思います。
 そのためにも、先ほど今村委員がおっしゃったように、思い込みでいろいろなことを評価するというのは、危険かもしれなくて、子供たち、あるいは教育を受けている人たちに、尋ねる形で測定することも重要ではないかと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【渡邉(光)会長】 ありがとうございました。今回は基本的方針としてウェルビーイングに関する視点で御議論いただきましたが、このウェルビーイングという考え方はいろいろなところに関係していくのだろうと思います。従いまして、御指摘のように、今後については少し幅広の議論をお願いできればと思っております。ありがとうございました。
 それでは、まだまだ御意見もあろうかと思いますが、一旦、意見交換はこれまでとさせていただきます。今後も議論は継続されますので、次回以降に再度御意見をいただきたいと思います。
 続きまして、議題の3と4に移らせていただきます。それでは、まず、議題3について、本件を担当いただきました、瀧本室長からご説明をお願いします。
【瀧本内閣官房教育未来創造会議担当室長】 ありがとうございます。内閣官房で、教育未来創造会議担当室の室長を拝命しております、瀧本と申します。
 本日は資料5を用いて、本会議の第2次提言に向けた検討状況につきまして、御説明を申し上げさせていただきます。
 2ページをお開き願います。教育未来創造会議は、昨年、令和3年の12月に閣議決定により設けられ、岸田総理を議長とし、永岡文部科学大臣兼教育未来創造担当大臣と松野官房長官を議長代理とし、関係閣僚、全部で11名、有識者13名から成るメンバーで構成されているものでございます。関係閣僚が議論に加わることにより、これまで以上に、教育に加えて各省が連携をして、政府一丸となった様々な取組を含めた提言が期待されているものと考えております。本年5月に第1次提言を取りまとめ、先月の9月29日から第2次提言に向けた議論を開始したところでございます。
 次の3ページをお願いします。第2次提言に向け、「コロナ後のグローバル社会を見据えた人への投資」ということをテーマに議論を始めたところでございますが、その検討の趣旨を記載したものが、先月の会合で示されたペーパーになります。1点目、新しい資本主義を実現していくために、人への投資を一層進めることが重要であるとした上で、世界で活躍する高度専門人材、あるいは多様な価値観を持った人材を育成、さらには確保していくこと、また、多様性と包摂性のある持続可能な社会を構築することによって、我が国のさらなる成長を促していくことが必要不可欠としております。
 4ページに、大きく3点の主な論点案を整理し、9月の会議で提示をされたところでございます。
 1つ目が、コロナ後の新たな留学生受入れ・派遣計画です。留学生については、これまで10万人計画、30万人計画とございましたが、2019年に一旦30万人計画は達成をしております。ただし、その過程においては、例えば在籍管理に問題のあった大学や日本語学校等、幾つもの課題も指摘をされたところです。今後、新たな外国人留学生の受入れはもとより、日本人学生の海外派遣を含めた計画を議論していくという中で、どのようなKPIが考えられるのだろうかといった課題や、留学の概念、オンライン教育も相当進展しましたので、それも踏まえた在り方についての検討、受入れ地域や分野の重点化といった点も課題になってこようかと思います。
 とりわけ、外国人留学生受入れの質の向上や、外国の留学生のうち、現在、日本に来られている方は、アジアからがおおよそ93から94%近い外国人留学生の割合になっておりますが、高校段階から、多様な国々からの受入れというものも推進していく必要があるのではないか。また、官渡邉会長もいらっしゃいますが、官民協働のプロジェクト「トビタテ!留学JAPAN 」などの実留学に加え、オンラインも含めた多様な形での日本人学生の海外大学での学びの推進もしていく必要があるだろうと考えております。
 大きな2つ目は、卒業後の活躍に向けた環境整備です。外国人留学生の高度専門人材としての定着率の向上と書いておりますが、おおむね、外国人留学生の6割が国内就職を希望しておりますけれども、3割から4割程度に実際の国内就職はとどまっているところで、希望しながら帰国を余儀なくされる外国人留学生も多くいらっしゃる状況です。こうした状況も踏まえて、留学生はもとより、留学生だけではない高度外国人材の在留資格制度について、世界に伍する水準への改革や、企業等で努力いただく部分も含めて、議論を進めてまいりたいと思います。
 日本人の海外留学については、内向き志向の高まりを指摘されておりますけれども、国内での就職に不利になるといった点、よく指摘がございます。その就職円滑化に向けた環境整備も併せて必要です。関連をして、教育の国際化、国内大学の国際化や、あるいは、外国人材の活躍に向けたインターナショナルスクール等の教育環境整備、逆に、国内の大学が海外に分校をつくる、もしくは既に、アジアに3例ほど実例がありますが、高専をはじめとする日本型教育の輸出といった点も含めて、幅広くグローバル関係について議論を進めていくこととしております。
 5ページの下から4段目、「これらについて」という小さい字がありますが、総理からは、来春のG7サミットも見据えて、来春には第2次提言の取りまとめ、その上で、速やかに実行に移していくということで、指示をいただいているところです。実は、昨日もワーキンググループを開催し、
議論を深めていただきましたが、本日、御出席の永田国大協会長をはじめ、公立私立大学の関係団体からのヒアリングも併せて行わせていただきました。教育未来創造会議におきましては、来春までの第2次提言取りまとめに向けて鋭意努力をしてまいります。
 私からの説明は以上とさせていただきます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。次期教育振興基本計画とも非常に関連する内容ですし、コロナ禍で、非常に冷め切ってしまったグローバル化の視点、こういった点について、取り組まれていることに大変敬意を表したいと思います。ありがとうございました。
 続いて、議題4について、藤江局長から御説明をお願いいたします。
【藤江総合教育政策局長】 それでは、議題の4、生涯学習分科会における議論の整理について、私のほうから説明をまず、させていただきます。
 資料の6にございます、この整理までの経緯でございますが、昨年5月以降、第11期の生涯学習分科会ということで、清原分科会長、それから牧野副分科会長の下、委員の皆様方で、御熱心に計10回にわたり御審議いただき、本年8月に、議論の整理としてお取りまとめいただいたものでございます。第9期の答申、第10期の議論も踏まえながら、教育振興基本計画部会でも御議論いただいている、ウェルビーイングやデジタル化への対応といった視点も取り入れつつ、社会的包摂の実現や地域コミュニティの基盤といった生涯学習、社会教育の果たすべき役割や振興方策について、大変重要な内容を御提示いただいたものと受け止めさせていただいております。
 内容について、まず、1、生涯学習、社会教育をめぐる現状課題ということですが、社会の変化等により、人と人とのつながりが希薄化、貧困の状況にある子供や障害者、高齢者、外国人など困難な立場にある人々に関する課題が顕在化、深刻化しているという中で、社会的包摂の実現と、それを支える地域コミュニティの基盤づくりが一層重要となってきているということで、また、新しい資本主義に向けた人への投資の充実や、デジタル社会の進展への対応の必要性が増大している中、社会人の学び直しをはじめとする生涯学習が一層重要となっており、特に、デジタルデバイドの解消や国民全体のデジタルリテラシー向上が喫緊の課題となっているということでございます。
 次に、2の生涯学習、社会教育が果たし得る役割ということですが、従来から生涯学習には個人の生涯にわたる自己実現を図る役割と、また、社会教育には、学びを通じて人づくり、つながりづくり、地域づくりの循環を生み、持続的な地域コミュニティを支える基盤としての役割がありました。人生100年時代やVUCAとも呼ばれる予測困難な時代においては、こうした従来の役割に加え、ウェルビーイングの実現、社会的包摂の実現、デジタル社会への対応、地域コミュニティの基盤といった役割がより重要となってきているということでございまして、ウェルビーイングの実現にとっては、個人の成長を支える生涯学習と持続的な地域コミュニティを支える社会教育のいずれも必要不可欠なものでございます。
 また、貧困の状況にある子供や障害者、高齢者、外国人、女性、孤独孤立の状況にあるものなど、それぞれに学習ニーズがあることから、誰一人取り残すことなく学習機会を提供し、社会的包摂の実現を図る役割を果たすことが求められます。デジタル社会の急速な進展の中では、デジタルデバイド解消を含め、国民全体のデジタルリテラシーの向上を図る役割も期待されているところでございます。さらに、地域住民がともに学び合う社会教育は、学びを通じた人と人とのつながりにより、地域コミュニティの基盤を安定させる役割が期待されていると整理いただいております。
 次に、緑の3、今後の生涯学習、社会教育の振興方策についてでございます。時間がございますので、全て触れて御説明はできませんが、緑の四角の中にございます、5つの方策を挙げていただいた上で、国及び地方公共団体の果たすべき役割を記載いただいております。
 まず、公民館等の社会教育施設につきましては、社会的包摂の実現や地域コミュニティづくりなどの役割を明確化すること。リアルとオンラインの双方で住民が相互につながりを持てる機会を増やすこと。パソコン等の機器の導入やWi-Fi環境整備など、社会教育施設のデジタル基盤の強化を図ることなどを示していただいております。
 次に、社会教育人材の養成、活躍機会の拡充につきましては、社会教育主事の配置の促進により、地域課題に応じた関連部局や施策と社会教育との連携、調整を推進すること。社会教育士の公民館等への配置促進、社会教育費のネットワーク化等により、活躍機会を拡大すること。多様な分野の施策と連携しつつ、つながりづくりや地域づくりを担えるよう、例えば、社会教育士の役割や称号付与要件の見直しなど、社会教育士に関する制度の在り方を含めた検討を進めることなどを示しております。
 3点目の地域と学校の連携、協働の推進につきましては、コミュニティ・スクールについて、全国的に導入を加速すること。そして、地域学校協働活動推進員の常駐化や学校運営協議会の運営等に係る支援員の新たな配置を促進することなどを示しております。
 そして、リカレント教育の推進につきましては、時間的、経済的な制約の中で、学び直しを希望する女性や就業者、求職者など、個々人のニーズに応じたリカレント教育の充実などを示しております。
 5点目でございますが、多様な障害に対応した生涯学習の推進につきましては、障害者の生涯学習の推進を国、各地方公共団体の生涯学習、社会教育推進施策として、明確に位置づけること。障害者の生涯学習推進を担う人材育成確保や共生社会についての理解を促進することなどを示しております。
 最後に、国、地方公共団体が果たすべき役割として、生涯学習、社会教育が社会的包摂の実現や地域コミュニティ構築の役割を果たせるよう、国は振興方策の全体像を明確化すること。地方公共団体は、関連する部局やNPO等、民間団体との連携協力を促進することなどを示しております。
 私どもといたしましても、この議論の整理でお示しいただいた方向性をしっかりと踏まえながら、生涯学習、社会教育の振興を図るよう努力してまいります。大変充実した御議論いただいた分科会の委員の皆様に、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。
 私のほうからは以上でございます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。本日、清原生涯学習分科会長にも御出席いただいておりますので、補足的な説明があればお願いしたいと思います。
【清原委員】 ありがとうございます。生涯学習分科会長を務めている清原でございます。
 第11期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理についての概要は、ただいま藤江局長から御説明いただいたとおりでございます。今期、生涯学習分科会としては、諮問を受けてはおりませんが、生涯学習、社会教育についての課題認識と解決に向けた議論を深め、その議論の整理をまとめる過程では、委員の皆様の間で、多様で重要な御意見が交わされましたので、私からも総会において、委員の皆様とぜひ共有したいと思う幾つかの論点について、御報告させていただきます。
 1点目は、「ウェルビーイングの実現」についてでございます。「ウェルビーイングの実現」について官民を超えた関心が高まり、教育振興基本計画特別部会においても、「日本型ウェルビーイング」の概念が検討されている中、生涯学習や社会教育をより充実させていくことは、個人だけではなく、個人を取り巻く地域社会のウェルビーイングの実現に寄与するものであるということを生涯学習分科会でもお示しをいたしました。このことは議論の整理の副題にも反映しておりまして、副題は「全ての人のウェルビーイングを実現する、共に学び支え合う生涯学習・社会教育に向けて」とさせていただきました。
 2点目でございます。「誰一人取り残さない社会的包摂を実現する上での生涯学習、社会教育の重要性」については、第10期の議論も踏まえまして、今期の議論の整理においても改めて強調をしているところです。特に、この間、政府としても、誰もがデジタル化の恩恵を受けられるような社会の実現を目指している中、誰一人取り残さない社会的包摂の実現には、社会のデジタル化への対応の観点も必要とされると、皆様と考えました。デジタル社会の利点を最大限活用できるよう、社会教育施設へのパソコン等の機器導入にとどまらず、特に、Wi-Fi環境整備等のデジタル基盤の強化が、学校教育と大きな格差がないように、また、社会参加に制約のある人を含めた利用者の学習機会の充実を図ることが重要であることを提起いたしました。公民館や図書館における全ての世代のデジタルデバイド解消をはじめとする社会的包摂に関連する取組等を推進する重要性も提起しました。
 さらに、地域課題解決のための学びを、ICTを活用して幅広く実施し、それを通じた地域のつながりづくり、地域人材の育成等を推進するとともに、「デジタルシティズンシップ」という概念も強調しました。すなわち、インターネットを利用するに当たってのデジタルリテラシーの向上や基本的なサイバーセキュリティー対策に関する知識の習得、多くの情報から正しい情報を適切に取捨選択、活用し、社会のよき担い手として行動できる資質や規範意識の涵養などを含むための教育について配慮すべきことも提起しました。このことは次期教育振興基本計画の内容にも関連すると思います。
 3点目、「社会教育主事等のICTスキル等の継続的な学習機会の確保」も重要となります。加えて、先ほど局長も御紹介されましたが、令和2年度から「社会教育士」の称号を得られる制度が始まり、地域社会でコミュニティ・スクールなどでの、学校教育との連携を含む多様な活躍が広がっています。こうした制度がよりよい制度になるよう、必要な見直しを引き続き検討していきたいと考えております。
 4点目でございます。社会教育というのは、一方的な教育ではなく共に学び合う学びを通じて、地域コミュニティの基盤を安定させるという機能を持っています。近年、多くの省庁で、地域コミュニティに着目した施策が進められる中で、ますます社会教育というのは重要性を増していると考えられます。教育と社会の関係性、教育と地域社会の関係性の中に社会教育があると思います。今後も、生涯学習・社会教育が、「学びを通じて人づくり、つながりづくり、地域づくりの循環を生み、持続的な地域コミュニティを形成する基盤」としての役割を果たしていけるよう、必要な提言や施策について、文部科学省をはじめ、幅広い現場の関係者の皆様と御一緒に考えていきたいと考えております。
 私からは以上でございます。どうもお時間いただき、ありがとうございます。
【渡邉(光)会長】 どうもありがとうございました。今の御説明にありましたように、昨今の変化の中では、生涯学習の重要性はますます高まっていると思いますし、次期教育振興基本計画の策定と連動して御検討をいただいているということについて、大変ありがたく感じております。本当にありがとうございました。
 それでは、時間も押していますが、先ほど議事2のところで、不登校等の問題について、御意見をいただきました。これは、昨日、児童生徒の問題行動、不登校等の調査の内容が報道されたものですが、これについて、事務局から補足説明をお願いいたします。寺門学習基盤審議官、よろしくお願いします。
【寺門学習基盤審議官】 お時間いただきまして、申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
 昨日、発表した内容でございます。全て重要な問題ですが、今回はお時間の関係上、いじめと不登校に限って御説明申し上げます。
 先ほど御紹介いただきました、いじめについて、令和2年度に減少してございましたが、いじめの認知件数が61万5,351件ということで、過去最高となってございます。これにつきましては、教育委員会からの聞き取り等によりますと、いじめ防止対策推進法の定義に即した積極的な認知が進められているという点もございますけれども、コロナ前の学校生活に戻りつつある中で、様々な制限が緩和され、児童生徒の関わりが増加した等の要因があろうかと思ってございます。
 対策につきましては、それぞれ不登校もいじめもそうですが、本部会等でも、次期の振興基本計画への策定とかもございますし、また、今日の御意見を踏まえまして、対策を充実した上でございますけども、政府として、新たな取組といたしましては、今般、こども家庭庁設立準備室と共同で、関係府省の局長等による会議を新たに立ち上げまして、検討を深めるとともに、専門家により構成されるいじめ対策の協議会におきまして、審議要請を行いまして、対策を深めたいと思ってございます。これらの会議において、特に今後、重大事態に係る対応ですとか、関係機関との連携等について、さらなる検討を深めてまいりたいと考えてございます。
 それから15ページでございます。不登校でございます。これにつきましても、過去最多となってございまして、24万4,940人でございます。これについては、先ほど来、今村委員等をはじめ、様々な御指摘ございました。十分それを踏まえまして、まず、様々な対策を講じますけれども、まず、要因分析をさらに深めることが必要だと思ってございまして、今後、不登校に関する調査研究協力者会議におきまして分析を深めつつ、施策を練り上げてまいりたい。この点については、引き続き初等中等教育分科会と中教審の関係部会等にも御意見をいただきながら、対応、検討を深めてまいりたいと考えてございます。
 簡単でございますが、以上でございます。
【渡邉(光)会長】 御説明ありがとうございました。恐らく、政府として、対症療法的なことも含めて直ちに対応いただくということと、それから教育振興基本計画のように少し長期的な目線で、その要因について、今後の取組という形で対応していくという両方があると思います。引き続き、よろしくお願いしたいと思います。
 本来であれば、皆さんから、先ほど御報告いただいた内容についても、御意見、御質問をいただきたかったのですが、お約束した時間になりましたので、御意見や御質問などございましたら、後ほど事務局のほうにお願いできますでしょうか。お約束の時間になりましたので、議事は以上とさせていただきたいと思います。
 事務局より、全体を通じて、補足的な説明はありますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、これにて終了させていただきたいと思いますけれども、委員の皆様、本当にお忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございました。
 次回の中教審の日程等につきましては、追って事務局から御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日、ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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