参考資料1 民間教育事業者における評価・情報公開等の在り方に関する検討会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成25年8月27日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省9階生涯学習政策局会議室

3.議題

(1) 平成24年度「民間教育事業者における情報公開及び自己点検・評価シート(案)」について
(2) ヒアリング
  ・栄光ホールディングス株式会社
  ・株式会社イーオン・イースト・ジャパン
  ・株式会社NHK文化センター
(3) 自由討議

4.出席者

委員

笹井座長、稲葉委員、桜林委員、佐野委員、中山委員、棟近委員、山口委員

ヒアリング対応者

 栄光ホールディングス株式会社 横田広報室長
 株式会社イーオン・イースト・ジャパン 浜井総務課長
 株式会社NHK文化センター 原田経営総務室長

文部科学省

早川生涯学習推進課長、髙井生涯学習推進課長補佐

経済産業省

落合サービス産業室長

(オブザーバー)

厚生労働省
内田基盤整備室長

5. 議事要旨

(1) 平成24年「民間教育事業者における情報公開及び自己点検・評価シート(案)」について、事務局から説明を行い、委員からは特段の意見はなかった。

(2) 栄光ホールディングス株式会社、株式会社イーオン・イースト・ジャパン、株式会社NHK文化センターの3事業者から、評価・情報公開等の取組や「民間教育事業者における情報公開及び自己点検・評価シート(案)」に対する意見等について、ヒアリングを行った。説明の内容及び質疑応答の概要は以下のとおり。

【横田氏】 栄光ゼミナールでは、生徒数約7万人、全国420校の教室がある。多店舗展開を前提していたため、どの教室で学んでも同じ仕組みで、同じ内容のサービスを受けられるのが原則。大手と言われる学習塾では、先生の個人的な資質ではなく、学習塾自体がカリキュラムを標準化し、提供する必要がある。
ISO29990の取得についても、これまでに、個人情報保護の取組であるプライバシーマークの取得や株式上場に向けた取組など、会社として質の保証に向けた取組に対応してきた土壌があったため、既存の仕組みを体系化して組み立て直すことができた。
(その他、資料3に沿って説明。)

【浜井氏】 「民間教育事業者における情報公開及び自己点検・評価シート(案)」において「明文化しているか」、「情報公開しているか」と質問している項目に対するイーオンの取組状況を説明する。
イーオンでは、学習者のニーズ調査の把握のために、来校時に「Your information」というアンケート調査を行っている。内容はデータ化し、新しいコースの検討に役立てている。英会話学校については、目的や成績評価の方法を明文化するのは難しい。単純に検定試験の点数を上げたいということであれば、評価はできるが、一般的な英会話の能力について点数化するのは難しいからだ。また、人によって、学ぶ目的は異なる。
情報公開については、ホームページにおいて、サービスの内容や費用、事業者の基本的な情報はもちろん提供している。財務諸表は、以前は過去前年度分について各教室に設置していたが、閲覧したいと言った人は皆無であった。現在は、全ての教室に設置し、毎年更新することの不都合さ等を考慮し、本部で一括管理しているが、過去3年間一度も要望は来ていない。学習者にとっては、年商等の情報がわかれば十分なのではないか。学習成果については、検定試験のハイスコアコンテストを行っている。学習環境については、全てをホームページで公開するのは難しいが、各教室のページがある。講師については、基本的に全講師をホームページに掲載している。ただし、いたずらをされる場合もあるため、掲載をやめることもある。また、写真には、会社のロゴを附している。受講者の感想、前提条件、問い合わせ窓口、個人情報管理方針についても公開している。

【原田氏】 NHK文化センターは昭和53年に株式会社として設立され、テレビ・ラジオの企画力を生かして講座を開始した。カルチャーセンターの歴史が50年と言われているので、二番手の参入といえる。現在、北海道から熊本県まで50カ所に教室があり、会員は約26万人、1年間の受講者数はのべ約68万人、1年間の講座数はのべ約6万8千講座である。
カルチャーセンター事業が教育事業と言えるのかは、難しいところだと思う。カルチャーセンターの場合、達成目標や評価、合格や修了の要件の設定というのは馴染まない。途中でやめてもよいし、受講したからといって、資格が取れるようなものでもない。語学や囲碁・将棋等、達成度を評価する講座もあるが、ほんの一部である。カルチャーセンターの役割としては、大きく3つあると考えていて、「つどう」「つながる」「つづける」、つまり、同好の仲間とともに学ぶ楽しみや、生きがいを提供する生活サービス業のようなものだと考えている。
情報公開等の取組に関しては、講座の紹介の広告を新聞広告に折り込んでも以前より効果が薄れており、手段としては、印刷物よりインターネットに移行する方向を目指している。各教室のホームページを用意して、募集中の講座や講師の情報について掲載している。受講者は各教室のホームページを事細かに調べて受講する講座を探すので、おすすめ講座の紹介や講座の検索機能を充実させている。受講者はホームページ上で受講の予約とクレジットカードによる受講料の支払までできる。
カルチャーセンターにおいては、講座を標準化することはできず、地域ごとに講師を依頼し講座を実施してもらっている。
  会社の情報や支払いの方法についても全て掲載している。携帯やスマートフォンにも適用するように利便性を図っている。
  ガイドラインに対する意見としては、カルチャーセンターにおいては学習成果、修了要件、修得度、到達目標という概念がないので、それらについての仕組みの構築等については、馴染まない。カルチャーセンターの特徴としては、いつでも受講できるし、いつでも止められるということ。その仕組みを確保するため、受講規約に途中受講やキャンセル料の取扱いについて詳しく記載している。そのような仕組みの評価についても検討していただきたい。講座の途中であっても理由にかかわらず取り消せることになっている。

【佐野委員】 (栄光ホールディングスに対して)クレーム対応は、事業者として本部で対応しているのか、現場の講師に情報共有もしているのか。

【横田氏】 基本的には本部の担当部署で対応している。しかし、現場で改善に取り組んでほしい、現場にフィードバックした方が良い事案においては、次に同様のトラブルを起こさないようにするため、現場を管轄する運営部長や地域を管轄する課長に情報を共有している。

【棟近委員】 (イーオンに対して)PDCAのマネジメントについてどのように取り組んでいるか。

【浜井氏】 明文化していないものもあるが、PDCAは社内で行っている。例えば、サービスの質に関して、毎年、年末に生徒に対してアンケート調査を行っている。4段階で評価してもらい、コンピューターで登録し、各校に対して平均値との差を一覧にして送付している。各校において平均より低い項目に関しては、支部長を中心に原因追及を行い、指導をしている。評価結果については月2回の支部長会議で共有し、次年度のPDCAに役立てている。

【中山委員】 (NHK文化センターに対して)質保証についてどう考えているか。

【原田氏】 番組出演者や大学教員、各種技芸指導者など、一定の肩書を持っている人に講師を依頼している。

【棟近委員】 (NHK文化センターに対して)資格と結びつくコースもあるが、資格を取ることが出来なかったというクレームはあるか。受講者からのフィードバックはあるか。

【原田氏】 資格取得に関するクレームは特にないが、資格取得できる講座では、講座案内に取得できる資格について、受講料以外に資格試験の受験料が必要な場合はその旨を示している。受講者からのフィードバックについては、各教室の社員が受講者からの声を聞いたり、投書箱を設置したりしている。新設講座では評価アンケートを行なうこともある。何より講座の内容が伴わない場合は受講者が減るので、受講者が減り始めたら社員が講座の内容をチェックし、講師と相談して改善策を検討する。

(3) 自由討議において、委員から以下の意見等がなされた。

【笹井座長】 1ガイドラインの対象、2ガイドラインの項目、3ガイドラインの検討に当たり、必要な調査項目について、自由に議論いただきたい。

【桜林委員】 平成24年度調査研究のデータは、事業者側からの意見と学習者側からの意見が反映されていて、ここに現れている傾向はそう大きく外れていないと思われる。例えば、事業者側は、財務状況に関する情報や講師の経歴等は公開する必要はないと考えている。一方、学習者側は、授業料、授業内容やカリキュラム、事業者の基本情報、学習成果に関する情報を得たいと考えている。学習者側は、講師の経歴や財務状況については受講に当たり、あまり考慮しないのではないか。確かに、事業者側が公開したい情報と学習者側で知りたい情報は異なると思うが、全てを公開する必要はない。ガイドラインを作成するに当たっては、どの業界にも当てはまる部分と、業界別の部分を取り入れる必要があるのではないか。

【佐野委員】 業界ごとの項目を追加することについては賛成である。平成24年度調査研究では、学習者に関するアンケート結果がp29の1枚しかない。学習者は受講費用だけでなく、解約時の費用負担や講師の採用基準について知りたいのではないか。次回は、学習者側のアンケートも細かく実施してほしい。

【中山委員】 資料1のp30「評価・情報公開等に係るガイドラインの検討の指針(仮称)」のたたき台を観ると、「土壌づくりのサポート」という文言があるように、ガイドラインの対象とする枠組みを明確にしていかないと、ガイドラインの項目までは考えづらい。例えば、NHKカルチャーセンターと、ISOを取得している栄光ホールディングスは段階が違う。情報公開の重要性とマネジメント(PDCA)の重要性は、事業者の規模によって違いが顕著に出てくる。2~3割の小規模事業者にとっては習熟度の評価や講師の研修はできていない。質の保証に取り組む際の基礎的な内容ということであれば、特定の業界を対象とする以前の問題だと考える。

【髙井補佐】 ガイドラインの作成に当たっては、基礎的な内容にこだわるわけではなく、御議論いただければと考えている。

【笹井座長】 カルチャーセンターは単発の、趣味・教養を目的とした講座が多い。一方、学習塾と語学学校は学習のカリキュラムはある程度固まっている。既に決まっている教育内容をどう提供するかという塾や語学学校と、講座の内容を講師に任せているカルチャーセンターとでは、必要とされるガイドラインは異なるのではないか。したがって業界ごとにガイドラインを作ることも考えられるが、どうか。

【棟近委員】 この種のガイドラインを業界ごとにつくるのは困難である。民間教育事業者の類型を明らかにして、そこからガイドラインを定めるべきである。

【山口委員】 業種ごとにつくると、際限がなくなるのではないか。全体を考えるときにはPDCAのサイクルに基づいているか、設置形態に応じて基準に則っているかを考える必要がある。

【佐野委員】 全体的なガイドラインを作成し、個々の業界に関しては作りたい業界は、その業界の判断で作ればよい。すべてを細かく規定する必要はない。

【稲葉委員】 民間教育事業者とはどういうものかを整理する必要がある。NHKカルチャーセンターは講座ごとに1つの教室のようなものである。文部科学省では民間教育事業者にはどういうものを念頭に置いているか。

【髙井補佐】 第1回検討会の資料1のp3に示したとおり、経済産業省で実施している「特定サービス産業実態調査」の中の教養・技能教授業サービス及び学習塾サービスをメインターゲットにしたい。教養・技能教授業とは、日本標準産業分類によると、カルチャーセンター、外国語会話、音楽、書道、生花・茶道、そろばん、スポーツ・健康などである。これらについてのガイドラインを作成したい。対象とする民間教育事業者は広範に渡っており、範囲についてはこれでいこうと思っているが、さらなる検討が必要であると考えているので、御意見をいただきたい。


【笹井座長】 今までの議論をまとめると、評価システム、情報公開については共通に考えるべきであるという方向であったが、そのほかに共通に考えるべき事項はあるか。

【稲葉委員】 評価シートはあくまで自己評価を行うものである。自己評価したものを公開して横並びにしたときに、学習者側からは不透明に見えるのではないか。項目の「深さ」が分からないので、取組が浅くても実施していることになってしまう。学習者側は実際に事業者に問い合わせてみると、自身が考えていた深さと異なる場合も生じる。栄光ホールディングスが報告していたように、学習者からのクレームがありそうな箇所をあらかじめ明示しているという点においては、クレームを減らすのには役立つのではないか。

【中山委員】 資料1のp25のPDCAの明文化が重要だと思う。情報公開とPDCAサイクルを回していくことが重要である。山口委員の指摘のとおり、目に見えないものの質保証をするためにはPDCAサイクルを回していくほかない。PDCAのプロセス管理がガイドラインの大きな柱になる。栄光ホールディングスは自己評価をYES/NOの2択ではなく、4段階にしているとのことだが、これがヒントになるのではないか。

【笹井座長】 どこまでPDCAのプロセス管理に関与すればいいか。具体的に踏み込むべきラインはあるか。

【中山委員】 厚生労働省の職業訓練ガイドライン(参考資料2)の第3章では、厚生労働省では職業訓練のカリキュラムを作成している。経営事業内容のPDCAなのか教育内容のPDCAなのか、どのようにガイドラインに盛り込んでいくかを考えないといけない。

【内田室長】 厚生労働省のガイドラインは、リーマンショック後に大幅に増加した職業訓練コースの多くが民間訓練機関に委託されたのを受けて、訓練の質を公共訓練並みに確保するツールとして開発された。このため、訓練ニーズの把握やマネジメントの内容についても、細かく定められている。

【笹井座長】 厚生労働省の職業訓練は企業や産業界のマッチングが必要なものである。専門的な知識や技術が必要であり、企業や産業界がどのような人材をもとめているかのニーズの把握も必要である。一方、NHK文化センターのように、趣味・教養といった、専門性が不要な業界に関しては、PDCAサイクルが変わってくる。どこまで教育の中身に関わるPDCAを作るかが重要である。調査研究への意見はあるか。

【棟近委員】 最終的な目標は民間教育事業の質保証であり、質保証を考えるときには顧客が誰であるかを考えなければならない。職業訓練ならば企業が顧客となる。受講者が顧客になるのだろうか。

【髙井補佐】 基本的には顧客は学習者と考えている。職業訓練に関するガイドラインは既にあるので、今回のガイドラインは、受講している学習者に対する情報公開や質の高い教育サービスが提供されているかを考えるのが中心である。

【中山委員】 ISOを取得している事業者、厚生労働省のガイドラインを取得している事業者は適用除外になるのか。「土壌づくりのサポートの一貫として」ならば、業界横断的なISOや厚生労働省のガイドラインにまでは至ってないけれど、必要最低限のPDCAサイクルと情報公開について定めないと議論が深まらない。

【佐野委員】 教室を選ぶ際の分かりやすい何らかの目安がほしい。学習者が間違えないように、また、もし、間違えたときや合わなかったときに学習者の負担にならないようにすることが基本である。まずは基本的なことをガイドラインに定めて、必要であれば来年以降改定するということも考えられる。基本的には民間教育事業者を選ぶ目安になればいい。

【落合室長】 より幅広い事業者にアンケートを取ることや、学習者に対して年齢や性別ごとにアンケートを取ることも考えられる。

【早川課長】 ヒアリングを通して、業界が多様であることを事務局も再認識した。次回までに事務局で再検討したい。

【笹井座長】 今日の議論を踏まえた上で、次回の検討会では、今後、調査研究をどのように行うかの取りまとめに向けて考えていきたい。

 

 

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