民間教育事業者における評価・情報公開等の在り方に関する検討会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成25年9月11日(水曜日) 15時30分~17時

2.場所

文部科学省9階生涯学習政策局会議室

3.議題

  1. 民間教育事業者における評価・情報公開等に係るガイドライン作成に向けた検討について
  2. 自由討議

4.出席者

委員

 笹井座長、五十嵐委員、稲葉委員、桜林委員、佐野委員、中山委員、棟近委員、山口委員

文部科学省

 早川生涯学習推進課長、楠目民間教育事業振興室長

オブザーバー

経済産業省
 落合サービス産業室長
厚生労働省
 内田基盤整備室長

5.議事要旨

(1)民間教育事業者における評価・情報公開等に係るガイドライン作成に向けた検討について事務局から説明を行い、委員から以下の意見等がなされた。

【桜林委員】
 学習者に対するアンケートと事業者に対するアンケートの両方を行うということだが、ガイドラインの対象となる業界は非常に多岐にわたる。ガイドラインの内容としては、あらゆる業界に共通の部分と、特定の業界のみに該当する部分が想定されると思うが、どのようにアンケートを採ることを想定しているか。

【楠目室長】
 そのことも含めて御議論いただきたい。第2回検討会における議論でもあったように、個々の業界ごとに行うのは、際限がなく難しいので、今回のガイドラインは、民間教育事業者が評価・情報公開等に取り組む際に共通して重要な項目について、基礎的な入り口になるようなものを作りたいと考えている。アンケートについてもその趣旨を踏まえて、個々の業界ではなく、業界に共通の項目を作ることになると思う。

【桜林委員】
 基本的な項目のアンケートを集めてガイドラインを検討し、その後、業界別に必要なガイドラインを別途考えるということか。

【楠目室長】
 既に学習塾協会のように、業界ごとのガイドラインが作成されていることもあると承知している。これまで取組のない業界については、今回のガイドラインを参考に別途検討いただくか、あるいは別の形で検討することもあるかもしれないが、今回は業界共通のガイドラインにすることを考えている。

【稲葉委員】
 2点質問がある。1点目は、ガイドラインの対象に家庭教師が入るか。2点目は、資料1の「1.ガイドラインの趣旨」の二つ目の段落「学習者が民間教育事業者を選択する際に、費用やプログラム内容、事業者に関する基本的な情報(経営者氏名、本社の所在地、従業員数、教室・場所、事業内容等)、学習成果に関する情報を重視しているということが明らかとなった。これらの情報が適切に学習者に提供されることは、学習者が自ら適切な学習機会を選択することに資するとともに、事業者間の公正な競争を促し、……」にある、「学習成果」が重要なポイントだと考えている。例えば、基本的な情報は公開しなければ人が集まらないが、学習成果は各業界によってまちまちであり、なおかつ、基準を設けないと「公正な競争を促す」ことにならないと思う。例えば、塾業界では、自主基準の中で、受験日から遡って6か月以内で3か月間連続して通った人の実績のみを公開すると定めている。業界ごとに基準を規定しないといけないと思うが、どうだろうか。

【笹井座長】
 家庭教師を対象に含めるか否かについて、稲葉委員としてはどう考えるか。

【稲葉委員】
 派遣業なので、教育事業者という定義からは少し外れると思う。ただ、業務の内容は塾と同じなので、どこで線引きをするのか難しいと思う。

【笹井座長】
 学習成果は業種・業界によって異なるが、どこまで成果を公開すればよいか、塾の例を教えていただきたい。

【稲葉委員】
 塾業界の場合、○○大学に○○名合格といった表示が分かりやすいが、業界としては様々な問題を引き起こしている。例えば、最近では、公立高校では学内予備校と称するものを実施している。今までは学校でやることと塾でやることを線引きしていたため、学習塾で学んだ人の合格実績を出すとともに、学校独自の合格実績を出していた。しかし、本来は一人の人間が学校でも塾でも学んでいるので、本当の実績はその二つによるものである。そのため、表示する方法としては、何らかのコメントをつけないと、学習者にとって紛らわしいのではないかという懸念はある。このような実態を踏まえた上で議論いただきたい。

【楠目室長】
 事業者がそれぞれ自らの実績を評価するというように、個別の対応に委ねると問題が生じるということか。

【稲葉委員】
 「学習成果」について私の解釈では、そこで習って何が習得でき、試験に受かったあるいは○○に合格したということかと思うが、これらを学習成果というならば、そこにしっかりとした基準を設けないと、例えば、1日でもその塾で勉強した、あるいはテストを受けただけの人を1名として合格実績にカウントするか、あるいは6年間学んできた人を1名としてカウントするかで差が出てくる。学習者は○○大学1名合格という表示を見ても、中身が分からないので1名合格したんだとしか理解しようがない。実績の数字の出し方についてもガイドラインで規定しておかないと、表示の仕方がまちまちだと混乱を起こすのではないかという趣旨である。

【楠目室長】
 昨年度の調査研究において、学習サービス事業者を選択する際に、どのような点を学習者が重視しているかを幅広に検証したが、そろばん教室や音楽教室、予備校などでの取組内容は異なると思うので、共通の部分と個々の業界ごとに考える部分について留意する必要がある。
 家庭教師については、日本標準産業分類では、「その他の教養・技能教授業」に含まれているので、対象にならない訳ではないが、民間教育事業者の典型的な例に入るものではないので、参考的に使っていただけるものになればよいと考えている。

【山口委員】
 学習成果について、先月バンコクで留学フェアに参加して、ブースに来た200人ほどにアンケートを採ってみた。彼らが日本語教育機関を選ぶときに何を重視するかというと、1番目は教育内容、2番目が学費、3番目が成果だった。これは、平成24年度の調査研究で日本人の学習者を対象としたアンケートとかなり似ており、この三つはどの国の人にとっても重要であると改めて理解した。ところが、「教育成果」という言葉は注意して使用しなければならない。日本語教育機関の場合、これまでは、高等教育機関への進学が中心であった。成果は、どの大学に入学したか、試験で何点採ったかということで、単純に表すことができた。ただ、日本語教育の一番の目的は、日本を理解する人をどれだけ増やすかということだが、そうするとここでいう成果はどう判断するのか、判断のためのきっかけも考えておかないと、数字だけになると教育の幅を狭めてしまうのではないか。第2回検討会でカルチャーセンターの取組内容について話を伺った際に、学習成果というよりも、学習者の満足度を意識していたように、学習成果と学習者の満足度の二つを合わせて考えることが必要ではないか。

【佐野委員】
 成果については、業界ごとに考え方が違うので、飽くまで自己評価にするしかないのではないか。カルチャーセンターにおける学習者との満足度と、学習塾における、大学の合格者数というのは全く異なるものなので、違う形で書けるようにするか、自己評価にしてそれ以上のことは各業界で進めていってほしい。

【棟近委員】
 私自身も一教育事業者として、一律に学習成果を定めるのは難しいと考える。一般的には、教育事業者が学習目標として掲げている内容、そしてその評価として考えている内容と、その達成度を公開するのが筋ではないか。
 業種、業界という用語について確認しておきたい。例えば、学習塾、語学学校といったものは一つの業界という理解でよいか。

【楠目室長】
 厳密に用語を定義しているわけではないが、日本標準産業分類を基に整理している。

【棟近委員】
 学習塾やそろばん教室といったものにそれぞれ業界団体があるという理解でよいか。

【落合室長】
 学習塾や語学教室は業界団体があるが、業界団体がない業界もある。

【五十嵐委員】
 今回のガイドラインは、情報を公開するのかどうか、そして公開する中身をどうするかに切り分けられる。成果に関しては情報を公開する方がよいと思うが、中身は業界によって異なるだろう。ガイドラインの対象として、パソコン教室は想定しているか。

【楠目室長】
 日本標準産業分類では「その他の教養・技能教授業」にパソコン教室は含まれている。

【中山委員】
 調査を行うときにアウトプットのことを考えると、今回、業界横断型の基本的なガイドラインを作るということであれば、調査するときにカテゴリー化して調査分析をしないと曖昧なものになるのではないか。第2回検討会におけるヒアリングのときに業界によって全く異なっていたように、全く異なる学習塾とカルチャーセンターなどを横断するガイドラインを作成するのであるから、非常に原則的・基本的な事項になるだろう。調査研究の際には、学習者が選択するときに必要な情報、事業者にとってはリスクレベルの高い情報(個人情報保護やハラスメント、著作権の問題)をよく考えた上で、調査研究の項目を絞るべきではないか。

【佐野委員】
 ガイドラインの項目のところに「学習サービスの計画・実施・評価・改善」とあり、その実施のところについて、「学習者に対する相談体制を整えているか」について盛り込んでほしい。困ったときにどう対処すればよいかの項目が必要と考える。また、家庭教師の業界についても、必ず対象としてほしい。「4.留意事項」の中に「ガイドラインの周知・普及」とあるが、学習者にどのようにして分かってもらうか。事業者がガイドラインに取り組んでいることを学習者が分からないと、事業者もやる意味が半減する。

【佐野委員】
 P.3に「途中退会等の受講料の扱い」とあるが「途中解約等の情報」とした方がよい。

(2)自由討議において、ガイドラインの周知・普及の在り方や、既存のガイドラインとの整合性について、委員から以下の意見等がなされた。

【笹井座長】
 佐野委員から指摘があったように、どのようにガイドラインの周知・普及を行うかについて、現段階で事務局の方で何か案はあるか。

【楠目室長】
 学習者が事業者の選択をするときに、事業者がガイドライン等に沿った取組を実施していることを見えるようにするのが、一番の課題である。現段階では、検定試験の取組内容が参考になると考えている。検定試験における評価・情報公開に関する取組としては、第1回検討会の参考資料としてお配りしたとおり、ガイドラインと自己評価のチェックシートを作成・公開し、普及を進めている。取組に賛同した事業者には、ホームページにおいて自己点検としたというロゴを掲載できるようにしている。そこをクリックすると、自己点検した情報公開や評価のシートが閲覧できるようになっている。さらに、文部科学省のホームページにおいて、取組に参加している事業者の一覧表を閲覧できるようにし、取組を促している。このような取組を参考にしていくことに加えて、各業界団体や教育委員会を通じて周知を進めていくことも考えている。そのほかにもアイデアや御意見があれば頂きたい。

【佐野委員】
 検定試験は登録制度か。

【楠目室長】
 登録制度ではない。検定試験については、文部科学省の後援という制度はある。

【佐野委員】
 検定試験については、文部科学省がロゴの認証をしているのか。

【楠目室長】
 自己評価や情報公開に取り組んでいる事業者の希望があれば、ロゴマークを使っていただくような仕組みとしている。ただし、検定事業者自体の数がそれほど多くないため、民間教育事業者に関しては、もう少し検討が必要と考えられる。

【中山委員】
 第2回検討会のヒアリングにおける栄光ホールディングスの提言では、業界全体の取組が少ないとのことだった。市場で生き残るためにこのようなガイドラインの作成が必要だということを、まず事業者側が理解していないので、事業者側にも理解してもらいたいと言っていた。全国学習塾協会などが推進していけばよいのではないかということも意見としてはあったが、これについてはどう考えるか。

【稲葉委員】
 全国学習塾協会としても、栄光ホールディングスと全く同じ考え方である。最終的には我々がまとめていかないと、学習者からそっぽを向かれてしまうので、当然のことである。一番怖いのは、文部科学省のお墨付きというようなものとして捉えられてしまうと、中身を精査しないままになってしまい、余計にトラブルの元になってしまうのではいかということである。

【五十嵐委員】
 ガイドラインが作成されたときに、そのガイドラインに沿って自己評価してもらうことになるが、自己評価をしている事業者としていない事業者に分かれる。そして、自己評価をしている者の中では、その中身が問題になる。自己評価をやってみて、評価が悪い場合は公開せず、評価がいい場合は公開したいので、文部科学省に申請するかもしれない。重要なのは、学習サービスの質を高めることなので、業界団体のあるところでは、業界団体による自主規制をやるしかないのではないか。業界団体のないところは、どうするかが課題である。例えば、そろばん業界では団体が三つあるのでカバーしているが、ないところについては今のところよい案はない。

【山口委員】
 日本語教育機関は20数年前に国際問題を引き起こした。それを解決するために、日本語教育振興協会ができた。その後、基準だけでは縛れないので、維持会員のみのガイドラインを作成し、学費の返還方法や海外での募集活動でのトラブルにおいて規定している。作成の際には維持会員全員が賛成した。ところがそれだけでは学習者に内容が届かないので、現在でもガイドラインに違反しているのではないかという声も聞こえる。そのためには、ガイドラインの存在を対象者に読めるように発信を続けていかなければならない。日本語協会のガイドラインは英語、中国語、韓国語に翻訳されている。今後はベトナムやネパールの言語に対応するのが課題である。まずは業界内で対処すること、次にどう学習者に伝えるかが必要である。各学校では、ホームページで学費の返還については日本語教育振興協会のホームページのリンクを貼っている。ガイドラインを作成した後は、事業者がそれをいかに普及させるかということを考えていかなければならない。

【落合室長】
 全国学習塾協会や全国外国語教育振興協会でも様々な取組をされている。全国学習塾協会では、認証制度をやっているが、業界団体自身が制度の普及・PRを行って普及させるのは重要だが、困難であり、我々も悩んでいる。ガイドラインの作成だけで止まってしまうのはもったいないので、調査研究を行う上でも御意見を頂きたい。ガイドラインを実りあるものにしていきたい。調査研究において調査対象や質問項目については、委員の皆様に適宜情報提供し、御意見を頂きたい。

【笹井座長】
 調査研究の中身について、盛り込むべき項目や調べるべき内容について意見はあるか。

【山口委員】
 本会議における議論の対象が、日本人だけを想定していると思うが、日本社会には留学生として日本に来て、定住する人もいると思うので、日本に滞在する外国人についても調査対象の一部にしていただきたい。

【内田室長】
 今回のガイドラインは基礎的なものになるが、厚生労働省の「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」は、国の職業訓練を国に代わって行ってもらうので、質を確保するために情報量が多いものになっている。厚生労働省のガイドラインは専門的な特定の業界のためのものとして位置づければ、住み分けは可能である。

【中山委員】
 私ども、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、全国に約100の職業訓練実施機関を有しており、独自の教育訓練ガイドラインを定め実施している。そのガイドラインには380のチェック項目があり、内部監査員の養成研修も行っている。このような形のものを推進していくのは大変な費用と労力がかかるので、そうではないものを作らなければならない。非常に基本的は入門編としての位置づけでないと、どのようにチェックするのか、そして定着させていくかを考えていくときに困難である。

【五十嵐委員】
 調査研究の方向について、アンケートの中身はポジティブな面ばかりなので、むしろクレームの面からも見ないと行けない。実際どのようなクレームがあって業界が問題を抱えていて、消費者どのように思われているのかといった観点からのアプローチの調査研究を行ったらどうか。

【稲葉委員】
 もっともな意見である。やっている/やっていないだけでは学習者にとって有益な情報とはならないので、内容を精査した方がよい。

【佐野委員】
 学習者のアンケートでいろいろな問題が明らかになると思うので、それを参考にしたらよい。

【笹井座長】
 厚生労働省のガイドラインでは専門的な技能を身につけさせる教育の体系を保証するものである。今、議論しているのは、適切に市場原理が働くように行政が支援することでサービスの質を向上させる環境を作っていくことで民間教育事業の発展を促すことができる。

【桜林委員】
 4~5年前に経産省とプロジェクトを組んで、学習者はどのような不満を持っているかということでクレーム集を作成した。事業者はどのように対応しているか、学習者はどのように訴えて解決しているのかを調べた。アンケートを行うときには、聞き方や言葉の選び方が難しい。今回アンケートを行う中では、学習者の不満に対し事業者はどう取り組んでいるかを調査してほしい。

【山口委員】
 日本語教育機関のガイドラインも、学習者から上がってきた課題をなくそうとして作ったものである。

【笹井座長】
 本日の自由討議はこれで終わりにしたい。調査研究でデータを集めてガイドライン案を作った後、次回検討会において、委員の皆様にお示しするので御意見を頂きたい。なお、次回検討会は年明け以降の開催を予定している。ガイドライン案の作成までは、事務局と私に一任いただきたい。

【楠目室長】
 資料1の修正版については座長と相談して作成したい。また、10月下旬に調査研究を行うので御協力お願いする。

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生涯学習政策局生涯学習推進課

伊藤、新見
電話番号:03-6734-3273

(生涯学習政策局生涯学習推進課)