平成25年8月27日(火曜日) 16時~18時
文部科学省9階生涯学習政策局会議室
笹井座長、稲葉委員、桜林委員、佐野委員、中山委員、棟近委員、山口委員
早川生涯学習推進課長、高井生涯学習推進課長補佐
ヒアリング対応者 栄光ホールディングス株式会社 横田保美 広報室長 株式会社イーオン・イースト・ジャパン 浜井篤 総務課長 株式会社NHK文化センター 原田隆司 経営総務室長 経済産業省 落合サービス産業室長 厚生労働省 内田基盤整備室長
(1) 平成24年「民間教育事業者における情報公開及び自己点検・評価シート(案)」について、事務局から説明を行い、委員からは特段の意見はなかった。
(2) 栄光ホールディングス株式会社、株式会社イーオン・イースト・ジャパン、株式会社NHK文化センターの3事業者から評価・情報公開等の取組や「民間教育事業者における情報公開及び自己点検・評価シート(案)」に対する意見等について、ヒアリングを行った。説明の内容及び質疑応答の概要は以下のとおり。
【横田氏】
資料3に沿って説明。栄光ゼミナールでは、各教室で1週間のずれもなく、どこの教室でも全く同じ授業が受けられるというのが基本。ISO29990の取得を通し、既存の仕組みを体系化することができた。
【浜井氏】
イーオンでは、学習者のニーズ調査の把握のために、入会時にYour informationというアンケート調査を行っている。
語学学校については、目的や成績評価の方法を明文化するのは難しい。理由としては、人によって、学ぶ目的が異なること、また、一般的な英会話の能力について点数化するのは難しいということもある。
情報公開については、財務諸表は、以前は過去前年度分について各教室に設置していたが、閲覧したいと言った人は皆無であった。現在は、全ての教室に設置し、毎年更新することの不都合さ等を考慮し、本部で一括管理しているが、過去3年間一度も要望は来ていない。学習者にとっては、年間売り上げ等の情報がわかれば十分なのではないか。
講師については、基本的に全講師をホームページに掲載している。ただし、悪質ないたずらをされる場合もあるため、写真について掲載をやめることもある。また、写真には、会社のロゴを附している。
【原田氏】
NHK文化センターは昭和52年に株式会社として設立され、テレビ・ラジオの企画力を生かして講座を開始した。カルチャーセンターの歴史が50年と言われているので、後発組といえる。現在、北海道から熊本県まで50カ所に教室があり、会員は約26万人、1年間の受講者はのべ約68万人である。
カルチャーセンター事業が教育事業と言えるのかは、難しいところだと思う。カルチャーセンターの場合、教育目標や評価、合格や修了の要件の設定というのは馴染まない。もちろん、語学や囲碁・将棋、日本画等の評価する講座もあるが、ほんの一部である。カルチャーセンターの役割としては、大きく3つあると考えていて、「つどう」「つながる」「つづける」生きがいを与える生活サービス業のようなものだと考えている。
現在では、以前より、講座の紹介を新聞広告に折り込んでも見てくれなくなっており、情報提供の手段としては、チラシよりインターネットに移行するようになっており、各教室のホームページを用意している。受講者は各教室のホームページを事細かに調べている。カルチャーセンターにおいては、講座は標準化されたものではなく、その地域にいる講師に講座を実施してもらっている。
会社の情報や支払いの方法についても全て掲載している。
ガイドラインに対する意見としては、カルチャーセンターにおいては修得度という概念がないので、習得度の把握についての仕組みの構築等については、馴染まない。カルチャーセンターの特徴としては、いつでも受講できるし、いつでも止められるということ。キャンセル料の規約については、講座の途中であっても理由にかかわらず取り消せることになっている。
【佐野委員】
(栄光ホールディングスに対して)クレーム対応は、事業者として対応しているのか、それとも講師と情報共有をしているのか。
【横田氏】
基本的には本部の担当部署で対応している。しかし、現場で改善に取り組んでほしい、現場にフィードバックした方がよい事案においては、次に同様のトラブルを起こさないようにするため、現場を管轄する運営部長や地域を管轄する課長に情報を共有している。
【棟近委員】
(イーオンに対して)PDCAのマネジメントについてどのように取り組んでいるか。
【浜井氏】
明文化していないものもあるが、PDCAは社内で行っている。例えば、サービスの質に関して、毎年年末に生徒に対してアンケート調査を行っている。4段階で評価してもらい、コンピューターで登録し、各校に対して平均値との差を一覧にして、送付している。各校において平均より低い項目に関しては、支部長を中心に原因追及を行い、指導をしている。評価結果については月2回の支部長会議で共有し、次年度のPDCAに役立てている。
【中山委員】(NHK文化センターに対して)質保証についてどう考えているか。
【原田氏】
番組出演者や大学教員、日本美術院会員といった、何らかの肩書を持っている人に講師を依頼している。
【棟近委員】
(NHK文化センターに対して)資格と結びつくコースもあるが、資格を取ることが出来なかったというクレームはあるか。受講者からのフィードバックはあるか。
【原田氏】
資格取得に関するクレームに対処するために、事前に、取得できる資格について、受講料以外に資格試験の受験料が必要な旨を示している。受講者からのフィードバックについては、各教室の社員が受講者からの声を聞いたり、投書箱を設置したりしている。何より講座の内容が伴わない場合は受講者が減るので、受講者が減り始めたら社員が講座を見学に行き、内容をチェックする。場合によっては、受講者に電話で意見を聞くこともある。
(3) 自由討議において、委員から以下の意見等がなされた。
【笹井座長】
1.ガイドラインのイメージ、2.ガイドラインの項目について、3.調査研究で取り扱うべき項目について、自由に議論いただきたい。
【桜林委員】
24年度のデータは、事業者側からの意見と学習者側からの意見が反映されていて、ここに現れている傾向はそう大きく外れていないと思われる。例えば、事業者側は、財務状況に関する情報や講師の経歴等は公開する必要はないと考えている。一方、学習者側は、授業料、授業内容やカリキュラム、事業者の基本情報、学習成果に関する情報を得たいと考えている。学習者側は、講師の経歴や財務状況については受講にあたりあまり考慮しないのではないか。確かに事業者側が公開したい情報と学習者側で知りたい情報は異なると思うが、全てを公開、説明する必要はない。ガイドラインを作成するにあたっては、どの業界にも当てはまる部分と、業界別の部分を取り入れる必要があるのではないか。
【佐野委員】
業界ごとの項目を追加することについては賛成である。平成24年度調査研究について、学習者に関するシート1枚しかない。学習者は受講費用だけでなく、解約時の費用負担や講師の採用基準について知りたいのではないか。学習者側のアンケートも細かくやってほしい。
【中山委員】
たたき台を観ると、「土壌作りのサポート」という文言があるように、ガイドラインの対象とする枠組みを明確にしていかないと、項目までは考えづらい。例えば、NHKカルチャーセンターと、ISOを取得している栄光ホールディングスは段階が違う。情報公開の重要性とマネジメント(PDCA)の重要性は、事業者の規模によって違いが顕著に出てくる。2~3割の小規模事業者にとっては習熟度の評価や講師の研修はできていない。エントリーレベルのたたき台ということであれば、底辺の質保証ということで、特定の業界を対象とする以前の問題だと考える。
【高井補佐】
次に新しいガイドラインをつくるのであれば、エントリーレベルにこだわるわけではない。今後その枠組みについて決めていかなければならない。
【笹井座長】
カルチャーセンターは単発の、趣味・教養レベルのものが多い。一方、学習塾と語学学校は学習のカリキュラムはある程度固まっている。既に決まっている教育内容をどう提供するかという塾や語学学校と、講座の内容は講師に任せているカルチャーセンターとでは、必要とされるガイドラインは異なるのではないか。したがって情報公開の内容も異なってくるので、業界ごとにガイドラインを作りたいと考えている。
【棟近委員】この種のガイドラインを業界ごとにつくるのは困難である。民間教育事業者の類型を明らかにして、そこからガイドラインを定めるべきである。
【山口委員】
業種ごとにつくると、際限がなくなるのではないか。全体を考えるときにはPDCAのサイクルに基づいているか、設置形態に応じて基準に則っているかを考える必要がある。
【佐野委員】
全体的なガイドラインを作成し、個々の業界に関しては作りたい業界は作ればよい。すべてを細かく規定する必要はない。
【稲葉委員】民間教育事業者とはどういうものかを整理する必要がある。NHKカルチャーセンターは講座ごとに1つの教室のようなものである。文部科学省では民間教育事業者にはどういうものがあるか調べているか。
【高井補佐】
第1回検討会の時に業界図を配布した。経済産業省で平成22年度特定サービス産業実態調査をやっていて、その中で教養・技能教授業である学習塾サービスをメインターゲットにしたい。教養・技能教授業とは、カルチャーセンター、外国語会話音楽、書道、生け花、茶道、そろばん、スポーツ・健康、囲碁・パソコン、そして学習塾である。これらについてのガイドラインを作成した。対象とする民間教育事業者は広範に渡っており、範囲についてはこれでいこうと思っているが、さらなる検討が必要であると考えているので、意見をいただきたい。
【笹井座長】
今までの議論をまとめると、評価システムに関して、情報公開については共通に考えるべきであるという方向であったが、そのほかに共通に考えるべき事項はあるか。
【稲葉委員】
評価シートはあくまで自己評価を行うものである。自己評価したものを公開して横並びにしたときに、学習者側からは不透明に見えるのではないか。項目の「深さ」が分からないので、浅くてもやったことになってしまう。学習者側は実際に事業者に問い合わせてみると、自身が考えていた深さと異なる場合も生じる。栄光ホールディングスが報告していたように、クレームがありそうな箇所をあらかじめ明示しているという点においては、クレームを減らすのには役立つのではないか。
【中山委員】
資料P.25がキーポイントとなる。情報公開とPDCAを回していくことが重要である。山口委員の指摘のとおり、目に見えないものの質保証をするためにはPDCAを回していくほかない。PDCAのプロセス管理がガイドラインの大きな柱になる。栄光ホールディングスは自己評価をYES/NOの2択ではなく、4段階にしているとのことだが、これがヒントになるのではないか。
【笹井座長】どこまでプロセス管理に関与すればいいか。具体的に踏み込むべきラインはあるか。
【中山委員】
厚生労働省のガイドライン(参考資料2)の第3章では、厚生労働省では職業訓練のカリキュラムを作成している・経営事業内容のPDCAなのか教育内容のPDCAなのか、どのようにガイドラインに盛り込んでいくかを考えないといけない。
【内田室長】
厚生労働省のガイドラインはリーマンショック後の離職者支援が背景にある。そのため細かく定められている。
【笹井座長】
厚生労働省のガイドラインは企業や産業界のマッチングが必要なものである。専門的な知識や技術が必要で、企業や産業界がどのような人材をもとめているかニーズの把握が必要である。一方、NHK文化センターのように、趣味・教養といった専門性が不要な業界に関しては、PDCAサイクルが変わってくる。どこまで教育の中身に関わるPDCAを作るかが重要である。調査研究への意見はあるか。
【中山委員】
最終的な目標は民間教育事業の質保証であり、質保証を考えるときには顧客が誰であるかを考えなければならない。受講者が顧客なのか、職業訓練ならば企業が顧客となる。顧客のタイプ分けはなされているか。
【高井補佐】
基本的には学習者である。職業訓練のガイドラインは既にあるので、今回のガイドラインは、受講している学習者に対する情報公開や質の高い教育サービスが提供されているかを考えるのが中心である。
【中山委員】
ISOを取得している事業者、厚生労働省のガイドラインを取得している事業者は適用除外になるのか。「土壌作りのサポートの一貫として」ならば、業界横断的なISOや厚生労働省のガイドラインにまでは至ってないけれど、必要最低限のPDCAサイクルと情報公開にについて定めないと議論が深まらない。
【佐野委員】
どういう教室を選ぶかの分かりやすい何らかの目安がほしい。学習者が間違えないように、もし間違えたとき、合わなかったときに学習者の負担にならないようにすることが基本である。まずは基本的なことを定めて、必要であれば来年以降改定するということも考えられる。基本的には民間教育事業者を選ぶ目安になればいい。
【笹井座長】本日の自由討議は以上で終わりとしたい。今日の議論を踏まえた上で、次回の検討会では、調査研究をどう行うか考えていきたい。
【落合室長】
より広い事業者アンケートを取ったり、年齢や性別に分けたアンケートを取ったりすればよい。
【早川課長】ヒアリングを通して、業界が多様であることを事務局も再認識した。大きな宿題をいただいたので、次回までに事務局で再検討して、議論のたたき台を作りたい。
伊藤、新見
電話番号:03-6734-3273