平成30年度以降の子供の学習費調査に関する研究会(第5回) 議事要旨

1.日時

平成30年7月4日(水曜日)13時30分~15時40分

2.場所

文部科学省9階生涯学習政策局会議室

3.議題

  1. 調査事項の現代化について
  2. 統計精度向上に向けた標本設計の再構築について
  3. 回答者負担軽減のための調査手法見直しについて
  4. その他

4.出席者

 <有識者>

石田賢示氏,岩間晴美氏,卯月由佳氏,佐藤一磨氏,邵勤風氏,土屋隆裕氏,山田哲也氏

 <文部科学省>

今村調査統計企画室長,牧野分析調査官


5.議事要旨

(括弧内は事務局発言)

議題(1)調査事項の現代化について
資料1に基づき事務局から説明の後,意見交換を行い,「ひとり親か否か」の把握については、B案を採用することで合意し,次回研究会において統計表案をもとに表章の方法を更に検討することとした。また,兄弟姉妹の通う学校の公・私立の別の把握については,平成30年度調査の結果を踏まえて事務局において引き続き検討することで合意した。出席者からの主な発言は以下のとおり。

○ 「ひとり親か否か」については,B案の設問の方がすっきりとして直感的に分かりやすい。
○ B案では父子世帯の把握ができるので,比較的所得が低いと考えられる母子世帯だけの状況を識別することができる。
○ 母子世帯・父子世帯の別によらず合算して集計することでひとり親の状況が分かれば,本件の目的は達成できるので,父子世帯の回答数が低いことが想定されることはさほど気にしなくてよいのではないか。「兄弟姉妹の通う学校の公・私立の別」も,ユーザーの観点からすればB案の方が詳細な分析ができて望ましい。
○ B案の方がよいと思う。A案の場合,いずれの選択肢にも回答していないものがひとり親という判定の仕方になるが,それでは無回答の場合と判然としない。B案ではそうした問題はなく,無回答との識別は可能である。
○ 「ひとり親か否か」について,B案の1から4までの選択肢で調査を行った場合は,統計表への表章も1から4までの区分ごとに行わなくてはならないのではないか。父子世帯と母子世帯を合わせたひとり親全体の状況として表章は可能なのか。
○ 選択肢上の区分で表章しつつ,1と2を合わせたひとり親全体の状況も併せて表章できるのであればよいのではないか。父子世帯のサンプル数が少ないことは,注記として明記できれば問題はないと思う。
○ 基本的にはB案でよいと思うが,設問の表現はより吟味が必要。案で示されている設問で,回答者にとって分かりやすいと言えるかが不安である。回答しにくい部分もあるのではないか。
○ 「ひとり親か否か」については,表章の案も併せて示してほしい。兄弟姉妹の項目については,保護者の回答から兄弟姉妹の数を類推しなくてはならない点が問題である。無回答の場合や欠けていた場合は,兄弟姉妹の人数を把握できないので,人数だけでも別項目で調査すべきだ。
○ 小・中学校段階では私立学校を選択する家庭の割合はそれほど高くないが,特に大学に関しては,世帯所得が高くなくても私立大学に通わざるを得ない場合も十分あるので,公・私立の別を調査する価値はあると考える。また,未就学については,公・私立以外と考えられる設置形態も多数取り得るので,国・公・私の3選択肢では回答できない場合もあるのではないか。あるいは,どのような回答を想定しているかについて注記を加える必要がある。
○ 本調査の目的から考えると,一人っ子にかける金額と3人きょうだいにかける金額では意味合いが違ってくるため,兄弟姉妹の人数は最低限把握すべきだ。それに加え,通う学校の公・私立の別も,分析の角度を広げるためできれば調査する方が良いところではあるが,絶対にというわけではない。

議題(2)統計精度向上に向けた標本設計の再構築について
資料2に基づき事務局から説明の後,意見交換を行い,点検1(市町村の人口規模に応じた抽出)に基づく見直しはB案を採用すること,点検2(高等学校の学科に応じた抽出)に基づく見直しは案のとおりとすること,点検3(私立小学校の調査実施学校選定)に基づく見直しは,調査対象学校数を全数から3分の1に変更する案とすることで合意した。また,新たな学校種の追加可能性については,幼保連携型認定こども園が将来的に相当程度の園児・幼児数規模に達した場合,本調査における取扱いを検討することとした。出席者からの主な発言は以下のとおり。

(点検1(市町村の人口規模に応じた抽出)について)
○ 人口の状況の偏りを是正するのであれば,現在の人口規模別4区分のうち2区分を合体させ,3区分とする案は考えられないか。その方が,過去調査との結果の比較可能性は高いと思われる。
○ B案で,特別区を100万人以上市町村と同じ区分にしているのはなぜか。個別の特別区の人口を考えた場合,いずれもさほど大規模な人口を持たず,100万人以上の大都市と同区分に置く理由が良く分からない。
(特別区は,経済や人口密度等の都市化の状況いずれを見ても,他の大都市と遜色ない。本調査で人口規模に基づく区分を置くのは,それに基づき一定程度家庭の生活状況が区分できることを期待しているためであり,特別区は最上位層に位置付けることで生活状況に応じた適切な区分に近づけると考える)
○ 単純に人口による区分ではなく,豊かさによる区分けを意識したものであるということか。
○ 指定都市について,実態を見れば指定都市か否かという自治体の枠組みではなく,人口規模に基づく区分が現実的と思う。一口に指定都市と言っても状況は様々であり,将来的に人口が減ると考えられる指定都市もある。均等性という観点から言うと,B案の方が良く,将来的にもバランスを保てるのではないか。
○ 検討の観点としては,まず結果の利用を念頭に置いて考え,区分の設定が学習費支出状況の分析に生きるのかを検討するべきだ。次いで結果の精度を考え,どのような区分設定を採れば,分析したい学習費支出状況の差がより現れるようにできるかを検討することが重要。区分間でサンプル数が均等であるかということは,さほど重要ではない。むしろ均等にすることによって精度が悪くなる可能性もある。
○ まずは,結果を利用する上で,どのような区分にすれば最も意義のあるものになるかを考えるべきであり,均等性の議論は最後に確認する程度でよいのではないか。
○ 小規模人口の市町村,例えば人口1万人未満の自治体では,塾が少ないということや,進学に係るピア・プレッシャーが強くないため塾に通う動機が少ないといった特徴があるのであれば,それは社会的に特殊な傾向が見られるものであり,分析する意味があるように思う。小規模市町村の区分に関する人口割合が減ったからと言って調査上の重要度が減るということは一概には言えず,分析の視点においてどこの人口規模に分断性を見るかを特定できれば,小規模市町村の区分を持つことがむしろ重要な意味を持つこともあると思う。
○ A案にすると,2045年には30万人以上の区分における人口は大きく減る推計であり,現行よりその減少度合いは大きくなってしまう。均等性は優れているとは言えないのではないか。
○ A案・B案の比較では、100万人以上の一部の都市で状況に違いがあるものと思う。この両案のいずれを採るべきかは難しいが,地域を鍵にグルーピングを行うことの動機は理解した。

(点検2(高等学校の学科に応じた抽出)について)
○ 現在行っている調査結果で,総合学科の生徒の学習費支出には,他の学科の生徒とは異なる特徴があることは把握できるか。
○ 就職状況等のデータから見ても,総合学科の学習費支出特徴が見いだせるのであれば,集計において総合学科を区分けするのは有効であると思う。
○ 総合学科と同様に考えると,工業科も他の学科とは異なる特徴があり得るため,独立して学習費支出状況を表章できれば大きなインパクトになり得るのではないか。
○ 調査実施学校に複数の学科が設置されている場合,当該学校の生徒はどのように抽出しているのか。
(全ての調査実施学校は,どの学科の生徒を調査するかを定めた上で選定しているため,その学科に所属する生徒を学校で選定している)

(点検3(私立小学校の調査実施学校選定)について)
○ 資料2で示されている標準誤差率の試算は、現状に基づく試算と考えて良いか。
○ 私立小学校の標準誤差は,他の学校種類と比較して高いのか。
(近年の調査結果では,他の学校種類より標準誤差は低く推移している)
○ 資料3にある2.29%という標準誤差率が他と比較して特別に大きいというわけでないのであれば,調査対象学校を全数から3分の1にしてもよいのではないか。
○ 2分の1や3分の1にする場合は,調査ごとに対象校をローテーションするということか。ローテーションする場合は,最初の調査対象のグルーピングを注意して行わなければ,回ごとの調査結果に偏りが生じてしまう。
○ 調査実施学校に対し,私立小学校は全校調査であることを伝えているのであれば,それにより回収率が一定程度確保されている可能性があり,抽出調査に変わると回答へ協力する必然感が薄れ,回収率に影響が出ることも考えられる。抽出調査として学校に依頼するよう変えた場合の懸念点は考えておくべきではないか。
○ 2.29%という標準誤差は,ユーザー目線で考えるとそこまで問題が生じる数値ではない。この場合は,回答者負担の軽減の方を優先すべきではないか。
○ 3分の1に変更した場合,私立小学校では2年に1回対応していた調査が,6年に1回に変わる。そのことによる回収率の変化等は懸念しておくべきだ。
○ 学校ごとの学習費支出の分布が分かる資料を,学校教育費・学校外活動費それぞれ示してほしい。

議題(3)回答者負担軽減のための調査手法見直しについて
時間の都合上,本日は議論を行わず,次回へ持ち越すこととした。

議題(4)その他
事務局から今後のスケジュール等について説明があった。


<以上>

お問合せ先

生涯学習政策局政策課