平成30年度以降の子供の学習費調査に関する研究会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成30年2月14日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省生涯学習政策局会議室

3.議題

  1. 平成32年度以降調査に係る検討課題について
  2. 調査項目の現代化について
  3. 統計精度向上に向けた標本設計の再構築について
  4. その他

4.出席者

 <有識者>

石田賢示氏,岩間晴美氏,卯月由佳氏,佐藤一磨氏,邵勤風氏,土屋隆裕氏,山田哲也氏

 <文部科学省>

佐久間教育改革調整官,牧野分析調査官

5.議事要旨

議題(1) 平成32年度以降調査に係る検討課題について
 資料1に基づき,今後の検討課題(案)について事務局から説明の後,意見交換を行い,一部修正の上,本検討課題に沿って今後の議論を行うこととした。出席者からの主な発言は以下のとおり。


○ 「世帯特性データのさらなる充実可能性」には,世帯の年間収入に関する調査項目も検討対象に含まれるか。
○ 平成32年度調査での実現は難しいかも知れないが,本調査と他のデータとの連携・結合による分析の可能性を考えるべきではないか。例えば,成績や非認知能力といった外部データとの連携が想定される。
○ 標本サイズの拡充は実現すべきだが,そのためには十分な検討が必要である。検討課題(2)を独立して検討するのではなく,標本設計に係る必要性や回答者負担を考えつつ,検討課題(1)・(3)と一体的に検討すべき。



議題(2) 調査項目の現代化について
資料2-1に基づき,現代の子供の生活に対応した支出項目の見直しに係る主要な論点について事務局より説明の後,意見交換を行った。出席者からの主な発言は以下のとおり。


○ 現代の子供の生活への対応として,「デジタル化」及び「グローバル化」に関する支出を,独立した支出項目として把握することを考えた方がよい。
○ 「デジタル化」については,学習アプリ等比較的安価なものからプログラミング教室・ロボット教室等高価なものまで幅広くあり,家計の状況に応じて様々な支出状況が考えられる。
○ 「グローバル化」について,外国語教育の充実等に伴い,英会話教室や語学検定受験の費用等が増してきていることが考えられるが,今の本調査における支出項目区分では,どこに入るのか分からない。
○ 学習塾について,かつては補習目的・進学目的のいずれかで区別できたが,現在は生徒確保等に向けてそのどちらとも言えないサービス(サイエンス教室等)を学習塾が提供することも増えてきている。
○ 本調査は「子供に対する教育にかかるお金」を調査するものであり,その対象を広げて子供に対する消費支出を何でも調査するとなると,際限なく拡散してしまう。「教育に対する支出」が何か,焦点を絞りながら検討するべき。
○ 学資保険等について調査すべきでないとまでは思わないが,これが「学習費」の範ちゅうで捉えられるものか。「学習費」の区分けを整理しないまま資産状況まで調査対象に広げると,保護者としてもなぜ資産に関わることまで調査するのか,との疑念が生じる可能性がある。
○ 「グローバル化」については中長期的対応が必要と考えるが,ICT機器等は数年後には新しいものが現れ,そのたびに機器に関する定義の整理が必要になってくる。時代を先取りした調査項目設定は必要ないと思う。
○ 「グローバル化」「デジタル化」への対応は重要だが,小学校段階での整理は難しいようにも思える。補助学習費とその他の学校外活動費でまたがる経費もあり,例えば英語で行う体操教室や異文化交流活動が挙げられる。独立して支出を把握するとすれば,分類をしっかり整理しないといけない。
○ 補助学習費の中での整理において,「グローバル化」「デジタル化」関係の2つだけを具体的に独立させる必要があるのか。他にも読解力のような伝統的な能力もある中で,目新しいものだけ抜き出すことは,敢えてそうした支出を期待しているような印象を与える可能性がある。
○ 修学旅行費を遠足・見学費から独立して把握することは,就学援助制度等の中で独立した費用であり,実態把握のために分けた方が良いということであれば,独立化も良いと思う。
○ 修学旅行・遠足・見学費の項目分割にはパターンが複数ある。「修学旅行」「遠足・見学」で分けるのか,それとも,海外への修学旅行が比較的高額であることを考慮するならば,「海外修学旅行」「国内修学旅行」「遠足・見学」で分けるのか。
○ 統計調査には時系列を大切にすることが求められ,そのためにはなるべく調査項目を変えないことも重要。その一方で,今回の議題のとおり現代化も進めなければならず,その折り合いをどうつけていくかが,統計を変えていくにあたって重要なポイントである。
○ 「変えるべきではないもの」と「時代に即して変えるべきもの」を一緒に議論するのではなく,ホットトピックとして調査すべきものは別建ての調査票を用いるなど,柔軟な対応も必要ではないか。例えば修学旅行費について,国内・海外別という細かい部分については附帯調査で聞く等の工夫が考えられる。
○ 時系列を大切にし,調査項目を大きく変更するべきでない。あまり急激な変化があると,経年での比較が困難になる。
○ 子供を取り巻く近年の環境変化として,共働き世帯が増え,多様な放課後の過ごし方・学童保育等の利用増が挙げられる。民間学童保育では様々なサービス提供が行われており,また,こうしたサービス提供には地域間の差があることも考えられる。本調査では学童保育等の費用を「教養―その他」に分類しているが,この把握方法で問題はないか。
○ 本調査は学校教育が中心に据えられており,学童保育は学校外での活動の中のさらに「その他」という扱いになっている。「学習費」とは何かを捉え,分類の整理を講じた上で,学童保育のような現代的課題を検討するべき。
○ 貯蓄・保険的要素の支出は,一般的な消費支出と異なりどのような目的にも使い得るお金であり,決まった支出に入れるのは難しいのではないか。
○ 貯蓄・保険的要素の支出は,例えば附帯調査等の別枠で調査することは良いと思う。しかし本調査の結果は「幼稚園から大学まで一人の子供の教育費はいくらかかるか」という視点で利活用されることが多く,そうなるとダブルカウントを生じる可能性もあるので,支出と一緒に取り扱うことは難しいのではないか。


引き続き資料2-2に基づき,事務局から世帯特性データのさらなる充実可能性について説明の後,意見交換を行った。出席者からの主な発言は以下のとおり。


○ ひとり親の状況把握は,なかなか回答者に回答してもらえないことが考えられ,難しいのではないか。
○ ひとり親の状況把握は,教育支出の状況を分析する上で有用と思うが,その調査の仕方は難しい。配偶者はいるか・同居している人はいるかという聞き方が考えられ,家族表のような手法もよく見られる。
○ ひとり親に関する設問は,回答者の心理的負担にならないことが大切。設問に当たっては,同居人はいるかと聞いた上で配偶者がいるかどうか聞かないと,単身赴任のケースが除けないという問題がある。配偶者の有無が聞きにくいならば,代替案として,同居家族とは別に単身赴任している家族がいるか聞くという方法が考えられる。正確にひとり親世帯を把握できないかも知れないが,同居家族のみ聞くよりは良いのではないか。
○ 可能であれば,ひとり親のデータは取った方が良いが,調査の方法が課題。また,ひとり親世帯の割合は小さい規模になると思うので,統計表にした際に信頼できる数値になるかどうかは課題。



議題(3) 統計精度向上に向けた標本設計の再構築について
資料3に基づき,事務局から説明の後,意見交換を行い,学習費総額における標準誤差率を1パーセント未満とすることを一定の目標として,設計を進めることとした。出席者からの主な発言は以下のとおり。


○ 参考資料3(総務省事務連絡)中「目標精度の設定,結果精度の検証等も適切に行われていない状況もみられる」とあるが,本調査は結果精度の検証は適切に行われていると考える。総務省は具体的に何を問題視しているのか。
○ 標本設計だけでなく,推計方法も検討する必要がある。
○ 項目の無回答はどれくらい存在するか。未記入をなるべく避けるための方法および未記入を補完するための方法の検討が必要。
○ 学習費総額の標準誤差率は5パーセント未満で推移しているとのことだが,これは標本設計がやや粗いことを表しているのではないか。学習費総額ではできれば1パーセントを切ることが望ましく,学校教育費・学校給食費・学校外活動費の大項目区分で2から3パーセント程度,性別・学年別等の細かい属性別で5パーセント程度という辺りが許容可能な範囲と思われる。
○ 新たな学校種の調査対象化の可能性について,本調査では国立学校を調査対象としていないが,学校数・児童生徒数の関係で困難ということか。
○ 議題(2)で意見のあったひとり親の状況把握における回答数の小ささに関して,そのために誤差があまりに大きくなる部分は,集計結果の秘匿処理もひとつの方法なので,検討すべきである。
○ 層化抽出に当たり,学校の所在する市町村の人口規模を利用しているのは,学習費支出の地域差を表章する目的で導入されたのではないか。



議題(4)その他
事務局から今後のスケジュール等について説明があった。


<以上>

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