学びを通じた地域づくりの推進に関する調査研究協力者会議(第5回) 議事録

1.日時

平成29年1月13日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省 東館9階生涯学習政策局会議室

3.議題

  1. 学びを通じた地域づくりの推進の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

明石委員、小曽根委員、古賀委員、関委員、田原委員、牧野委員、重森委員、山崎委員

文部科学省

有松生涯学習政策局長、神山大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、佐藤生涯学習政策局総括官、里見生涯学習政策局政策課長、西井社会教育課長、石丸社会教育課社会教育官、佐藤社会教育課社会教育官

5.議事録

【明石主査】 

 時間となりましたので、ただいまから第5回の会議を開催いたします。委員の皆様におかれましては、本日もお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、早速、事務局より、資料の確認をお願いいたします。


【石丸社会教育官】 

 本日もよろしくお願いいたします。
 お手元に、議事次第、座席表、資料1、資料2、参考資料、その他、机上資料を配付しております。過不足等ございましたら、事務局の方までお知らせください。よろしくお願いいたします。


【明石主査】 

 本日は、これまでの御意見を踏まえまして、当会議としての論点整理に向けて、その骨子案について議論を行いたいと思っております。
 まず、事務局から、資料1の骨子案について御説明してください。


【石丸社会教育官】 

 御説明を申し上げます。これまで4回、そして、新居浜会議を含めまして5回の会議を開催しまして、頂戴しました御意見を整理させていただき、論点整理の骨子案を作成いたしました。
 お手元の資料1をお目通しいただければ幸いでございます。論点整理の骨子案でございますが、項建てといたしまして、4つの柱から作ってございます。「はじめに」を飛ばしまして、1つは、社会教育を取り巻く環境の変化。2番目といたしまして、それを受けた社会教育に期待される役割と方向性。3点目といたしまして、その役割を担うために社会教育の概念の整理。4点目といたしまして、今後の社会教育システムの構築に向けた視点ということで、大きな4つの柱から構成しています。

 最初の「はじめに」につきましては、近年、社会教育におきまして、学びの成果を地域づくりの実践につなげていくことに対する社会の期待が高まっていることを受けまして、その期待に応える観点から御審議を賜った内容を社会教育を取り巻く環境の変化として整理するとともに、今後の社会教育行政や社会教育施設の在り方について論点を整理するという位置付けで論点整理を行いたいと考えている次第です。
 次に、社会教育を取り巻く環境の変化といたしまして、これまでの御議論の中でも、少子高齢化・人口減少の問題、地域コミュニティの衰退の問題、そして、貧困や格差の問題にいかに対応していくかという多数の御意見を頂戴したところでございます。
 それに加えまして、事務局といたしまして、社会教育に影響を与えるような環境変化として、グローバル化の進展、そのほか、先日も御議論賜りましたが、人工知能をはじめとする技術革新の進展、社会教育の提供主体の多様化、行財政制度の変化、厳しい財政状況といった、計7つの環境変化について整理した次第でございます。

 続きまして、こうした社会教育を取り巻く環境の変化を受けまして、今後の社会教育に期待される役割と方向性を、3つの役割と2つの方向性として整理してございます。
 まず社会教育に期待される3つの役割でございます。1点目といたしまして、地域コミュニティの維持・活性化への貢献という形で整理しております。人口減少と人口構造の変化、地域コミュニティの衰退を受けまして、今後の社会教育におきましては、身近な地域における多世代交流を通じた地域の絆づくり、学びの成果を活かした地域づくりを通じて、地域コミュニティの維持に貢献する視点、そして、施設の特性に応じまして、博物館など社会教育施設においても交流人口の拡大、そして、地域活性化に寄与することが求められるのではないかというような役割として整理してございます。
 また、2点目でございますけれども、社会的包摂への寄与ということで、人口構造の変化に伴う高齢者の皆様の増加、貧困と格差に起因する困難を抱える人々の存在、グローバル化に伴います外国人の増加、こうした環境変化を受けまして、今後の社会教育におきましては、高齢者、障害者、外国人、困難を抱える人々、様々な人々が孤立することなく地域社会の構成員として社会参加できるように、社会教育においても貢献していくことが必要ではないかという視点で整理してございます。
 3点目でございますが、社会の変化に対応した学習機会の提供でございます。グローバル化の進展ですとか、人工知能をはじめとする技術革新の進展によりまして、社会構造が今後大きく変化するとともに、社会で求められる能力もまた変化していくことが見込まれるところでございます。こうした環境変化に、社会教育といたしましても今後とも適切に対応した学習機会を提供していくことが必要ではないかという観点から、3点目として社会の変化に対応した学習機会の提供という視点を入れた次第でございます。

 おめくりいただきまして、今後の社会教育の2つの方向性という形で、これまでの御議論を踏まえ整理してございます。1点目でございますが、官民パートナーシップの推進という視点を入れさせていただきました。これまでの御議論の中でも、社会教育の提供者というのは、行政にとどまらずNPOや民間教育事業者、大学、様々な主体が学習機会を御提供いただいていると御議論いただいたところでございます。今後の方向性といたしまして、そうした多様な主体と連携協働し、各主体の強みを活かして住民の多様なニーズに応えた学習機会を提供していくことが必要なのではないかということで、今後の方向性として整理した次第でございます。
 2点目でございますが、持続可能な社会教育システムの構築という整理をしました。市町村合併や地方分権など、行財政制度の変化、そして、厳しい財政状況を踏まえまして、今後の社会教育においては、先ほどの地域コミュニティの維持・活性化、あるいは社会包摂への対応、こうした様々な役割を今後とも社会教育が主体的に担っていくためには、民間の資金やノウハウも活かして社会教育施設の運営や整備を行っていくといった視点。あるいは社会教育分野への教育投資について国民の理解が得られるようにPDCAサイクルを進めて事業の不断の見直しを図りまして、その理解の促進を図っていく視点が重要ではないかということで、2点目の柱といたしまして、持続可能な社会教育システムの構築という点を上げた次第でございます。

 4点目でございます。社会教育概念の再整理という項建てを置かせていただければと考えているところでございます。今後、社会教育におきまして、学びの成果を活かした地域づくりを進め、地域コミュニティの維持・活性化に貢献していくためには、そうした取組、そうした学びが社会教育の概念に入っているのだということをしっかりと各現場において確認していくことが必要になってくるわけでございます。こうした学習成果を地域づくりの実践につなげていくことを、「地域課題解決学習」といたしまして、社会教育の概念に含まれることを、教育基本法や社会教育法の規定と照らしながら再確認をさせていただければと考えている次第でございます。

 5点目といたしまして、持続可能な社会教育システムの構築に向けた3つの視点を整理しました。ここは具体的な取組になってまいりますが、1点目といたしまして、社会教育行政のネットワーク化と官民パートナーシップの推進という点を挙げました。今後の社会教育におきましては、社会教育を取り巻く環境の変化に対応して、教育委員会と首長部局の連携は当然図っていかなければいけないわけですけれども、それに加えて、民間のNPOや民間教育事業者、大学、企業等と、多様な主体との連携を促進し、官民パートナーシップの推進による社会教育行政を行っていくことが重要ではないかと考えている次第でございます。
 2点目といたしまして、これまで御議論いただきました学びの専門職としての社会教育主事の養成・活用でございます。今後、社会教育におきまして、地域課題解決学習、学習成果を地域づくりの実践に活かしていくような学びの取組を促進していく観点からは、その役割が果たせるように、その中核的な担い手となります社会教育主事の養成も図っていく必要があると考えてございます。その観点からは、カリキュラムをはじめといたしまして、その養成の在り方を検討いたしますとともに、NPO、民間教育事業者、大学、企業などにおける社会教育活動、これらも教育的な観点からより効果の高いものが行われるように、可能な限り、それらの関係者に対しまして社会教育主事講習の機会を開放し、社会教育主事の資格が教育委員会と行政という限られた公的なセクターにとどまらず、民間においても幅広く活用いただけるように、その促進の取組を図っていく必要があるのではないか、このような点を入れているところでございます。
 3点目でございますが、新しい学びの場と社会に対応した社会教育施設の運営・整備についてでございます。今後の社会教育におきましては、利用者の視点に立ちまして、社会教育施設を中心とした行政による学習機会にとどまらず、NPO、民間教育事業者、大学、企業等、多様な主体による学習の機会の提供にも着目いたしまして、社会全体として学習機会の確保と拡大につなげていくという視点が重要ではないかと考えているところでございます。
 これまで賜りました御意見につきましては、事務局におきまして何度も確認させていただきまして、この項建ての中で網羅されるように項建てをさせて頂いたところでございますけれども、本日この骨子について御議論を賜り、その後、本日の御議論を踏まえまして、事務局の方で論点整理の案を作成したいと考えてございます。よろしくお願いいたします。


【明石主査】 

 ありがとうございました。これまで4回の議論を重ねてきまして、それを踏まえて、事務局でこのような論点整理の骨子案を出していただきました。それで、今日は具体的にまず初めの1番と2番の2つについて議論を頂き、全体で細かいセグメントに分けて議論を頂きたいと思っております。そういう意味では、初めと、2番目の社会教育を取り巻く環境の変化について、何か御意見ありましたらお願いいたします。
 なければ、また戻りますけれども、その次の3番目から具体的に何か入ってきておりますから、また戻ってもいいかと思います。
 では、次、3番目の社会教育に期待される3つの役割と2つの方向性についてお願いしたいと思いますけれども。できましたら、表裏の3番だけで何かございましたら。


【関委員】 

 これもつくづく、今の環境の変化の中でも感じるのですけれども、昔は社会教育というものを定義するときに、学校教育を除いた領域を社会教育と呼ぶという感覚で我々は思っておったのですけれども、今、学校教育と社会教育の重なりの部分がものすごく増えてきているような気がするんです。それをどこまでが社会教育が担うべきか、あるいはどこまで以上は社会教育が本来入っていくべきではないのか、その辺のボーダーが、我々いろいろな事業を進めていく上で非常に頭を抱えておるところなのですが。例えば、放課後のアフタースクールの子供たちとの関係性、それはどこまでが社会教育で、どこまでが学校教育的な思いをその中にきちんと組み込まなければいけないのか。ましてやアクティブラーニングとかいう方向に流れていく中で、これからそこにいかに我々社会教育領域の人間が関わっていくかということを、もう少しうたってもいいのかなというのを感じます。
 以上です。


【明石主査】 

 その辺大事なところですけれども、何か関連した御意見はございませんか。チーム学校とか、コミュニティスクールとか、放課後アフタースクールという問題を絡めて。要するに、これまでの初中局が生涯学習局とタイアップしてきつつあるという、そのグレーゾーンが増えつつあるというか、重なり合う面がものすごく増えつつあるなという。これに関しては何か。


【牧野委員】 

 ありがとうございます。多分これは、4番目の議論とも関わってくるのだと思います。社会教育概念の再検討、または再整備、さらには再創造ということと関わるのではないでしょうか。イメージとしては、まだ何となく学校教育と社会教育と家庭教育支援という従来の分け方にもとづいて議論しているような感じがするのです。この三分法の枠の中で、社会教育を扱おうとされているような感じがしています。さきほど、関さんがおっしゃったように、学校と社会教育のいわゆる従来の分け方におけるところのグレーゾーンというか、重なり合うところをどうするかという問題は、実はもう一つの大きな社会構造の変化の問題と深くかかわっていると思います。今まで、学校教育、社会教育、家庭教育に分けておけばよかったというのは、社会がある種、単一な価値観といいますか、拡大再生産という社会の単一なあり方をベースにして、大きくなっていく、発展していく、しかも一つの価値観を共有していた社会の在り方であって、それが、従来の工業社会から消費社会に変わってくることで、しかも人口減少・少子高齢化という問題を抱えていて、社会の縮小と多様化とが同時に起こる社会に入ってきていて、従来のように分けておくことができなくなってきているのではないかと思うのです。
 その意味で、行政的には分けて、縦割りにしておかなければいけないのかもしれませんけれども、これまでの製造業中心の社会ではなくて、消費社会・情報社会といわれる社会において、もう少し社会教育の社会とは一体何であるかとか、また教育とは何か、学習とは何かということを検討することで、例えば、子供たちが学校に行って、学んで、大きくなっていくことで主体になっていくという、従来のあり方ではなくて、むしろ子供たち自身がすでに社会の担い手になっているという面があると思うのです。さらに、この新しい社会において、いろいろな格差や子どもの貧困も広がっていて、格差が再生産されているようなことが起こっていたりします。
 その意味でも、もう少し社会教育の守備範囲といいますか、ウイングを広げておくというか、従来のような教育行政の中の社会教育というとらえ方ではなくて、先ほども御指摘がありましたけれども、多様なアクターですとか、官民パートナーシップですとか、多様なアクターとネットワークを組んでいき、従来の教育の対象ではなかったところまで手を伸ばして、社会基盤を整備していく、しかもそのとき、従来のように、行政がすべてを保障するということよりは、むしろ各個人が自ら学びながら社会を創っていくというような、こういう方向に転換していくような議論ができないかと思います。
 曖昧な話になってしまいました。従来の行政の区割りでは社会問題は解決できない社会になってしまっているのではないか、その中でもう一度、社会教育が、社会基盤をつくる役割を果たさなければならない時代がやってきたのではないか、ということを申し上げたいと思っていました。


【明石主査】 

 ありがとうございました。特に重森さんは公民館を主として学校教育との関わりを考えていますけれども。今の関委員と牧野委員の言葉に関連して何かございますか。


【重森委員】 

 言ってくださったように、放課後の問題というか、放課後の子供たちの居場所をどういうふうにするかということを、学校とも話をするし、PTAとかそういう方々と話をしていく中で、現場ではそこの線引きは実際はしていなくて、子供のためにどうあったらいいのかという形で、それぞれができることをやっているのが現状だと思うので、正に今言ってくださったことが実際は行われているけれども、それが余り文字化されていないというか、そこをこういう文章にしたときには、学校教育が、社会教育がみたいに実際はなっているのかなと。
 「社会教育」と私も仕事で使いますけれども、その言っている言葉が、どちらかと言うと生涯学習というか、学校教育も含めたということで結構最近自分では使っているなという認識があるので、今言ってくださったのが、正に現実はそうなのではないかと感じています。


【明石主査】 

 古賀委員も、民間から見てどうですか。従来の社会教育という概念と新しい社会教育の概念の構築と言いましょうか、それについて。


【古賀委員】 

 私は、社会教育・生涯学習・家庭教育については、本当に素人なのですが、最近、公民館とか児童館でのNPO等との協働のコーディネートをしている中で、現場はシームレスという印象を抱いています。いずれも、対象が違うだけで、取り組んでいる内容は学びそのもので、時にはアクティブラーニング的な側面もあったりします。
 先ほど重森委員もおっしゃったとおり、何かちょっと限定というか、もうちょっと夢を持てるような言葉遣いにしてはと思います。例えば、3番の(1)の地域コミュニティの維持という言葉がちょっと引っかかったりもします。小さな町ほど、地域コミュニティが衰退しきっているところもあり、維持どころか再構築ぐらいしないといけないのではないかとも思われたり。全体のトーンを、前向きかつ現場がハッとさせられるような、そういうものにした方がいいのではないかと思います。


【田原委員】 

 まとまっていないのですが、今までの御意見を伺って、そうだなあと思っているのが、今、コミュニティスクールを取り組んでいますが、そう考えたら、学校教育と社会教育と何なのか分からない、今、婦人会さんも、老人会さんも、いろいろな方が学校にたくさん出入りしてくださっていて、私から見たら、子供たちがこの幼いときから、学校教育という限定ではなく、いろいろな意味での学びに接することができているのはいいなあと思ったので、そこら辺も今、各委員さんが言っていたように、この骨子案の再構築の中に入っているといいかなと思います。今、地方行政の意識変革を自分の住んでいる市町とかで一生懸命訴えているところなのですけれども、こういうところにうたってあることでちょっと進むかなという期待感があります。
 それから、コミュニティスクールの進めるときの大きな歯車は公民館の主事さんたちでした。何回もここでお話しするように、社会教育の資格をしっかり取って、長い目で見て行政として育んでいって、地域づくりをこの人たちがしていくんだという視点でしていってほしいなと思ったときに、やはりここら辺に折り込んでおくというか、そういう必要性を今感じているところです。
 それから、社会的包摂という言葉があってよかったなと思っているんですけれども、先ほど言ったように、文部科学省さんがずっと言っておられる、生きる力とか、生き抜く力とかいうのが、コミュニティスクールの中で、やっと少しこんなことかなと見えてきたので、そういう意味でも、こういう言葉を折り込んでもらっているのは大切なことかなと思いました。まとまりませんで、すみません。


【明石主査】 

 ありがとうございました。では、小曽根委員。


【小曽根委員】 

 まず、放課後の方の関係ですと、放課後子供教室、放課後子供プランといった一体化、そういったグレーゾーンが広がっているということは実際感じるところです。と言いますのも、子供の居場所という意味合いでは、放課後子供クラブは基本的には毎日やっていますので、それに対して、放課後子供教室は、うちの方では10か所あるいは11か所やっているのですが、月一、二回とか、居場所とすればはるかにもの足りないという部分があります。ただ、そのかわり、放課後子供教室では、子供の体験、小さい頃の体験というのは非常に貴重なわけですし、それを行う場というのは、地域の人たちの力によって大変有意義なものなので、一体化がうまく進んでいけば、これは非常にすばらしいことだなと思っております。そのためには、縦割りが一番の課題と感じております。
 また、先ほど、社会的包括ということで、社会教育の分野はそういう意味では非常に広がっているし、特にまちづくりといったところに一番力点が置かれていると感じているところです。
 どうぞよろしくお願いします。


【明石主査】 

 それで、山崎委員、3の(1)と(2)、これに関して、御専門の立場から、地域コミュニティ作りをやってきましたし、そこにおける学校教育とのせめぎ合いではないけれども、協働的な作業をこれからいろいろ変えて作っていくんですね。地域学校協働本部を作るとかですね。そういうのを絡めて、(1)の、コミュニティの再構築か維持か活性化と、社会的包摂に関して何か御専門の立場からありますでしょうか。


【山崎委員】 

 ありがとうございます。先ほどあった、地域コミュニティが維持もままならないところもある、再構築も必要ではないかといった思いは、多分次の活性化という言葉に含めているんだろうなとは思いますが、少し分かりにくければ3つの言葉に分けてもいいのかもしれないと思います。維持すら難しいところもありますので、それを活性化させるのか、あるいは再構築のようなことをやるのか。そのとき、いずれにしても、その担い手は専門職でもないし、行政でもないし、地域が自ら再構築や活性化しなければいけない。そこに教育や学習は不可欠なものだと思います。では、その不可欠なものをいつからやればいいのか。私たちぐらいの年齢になって、はたと地域でこれからどうしようと言って、教育を受けて間に合うかと言うと、ちょっと遅い気がする。では、働き始めたころかと言うと、それはもう一生懸命になっていて、地域のことどころではない。大学生なのか。さかのぼっていくと、この問題は学校教育とシームレスにつながっていくと思うのです。さらに、それと同時並行で社会的包摂のこともあって、その社会的包摂が必要とされるような、逆に言うと、社会的排除の対象になっている人たちは、一体いつから排除の対象になる可能性を生み出してしまったのか。これもさかのぼっていくと、学校教育とシームレスです。
 この話のオチは、学校教育より前に、かなり起因しているという気持ちがあります。地域にいると、3か月から3歳までの期間は本当に大事なんですよね、第一次反抗期と言われますけれども。いわゆる自分の自我が形成されるということ、それまでの間に、保護者と呼ばれる人たちとの対話であったり、じっと我慢することであったり、自分の意見を主張することであったりを、どういうふうに促進されるような対話が行われたのか。これは父や母という属性だけではなく、いろいろな人たちと、どういう触れ合いがあったのかがすごく重要になってくる。学校教育と社会教育をつなげようと言うと、どうも放課後であったり、義務教育が終わった後という感じですけれども、義務教育が始まる前は、社会教育にとってものすごく重要な時期かもしれないなと思います。相当さかのぼりましたけれども、そこが結構大事な気がするんです。大事な気がするというのは、専門家がかなり言っているので、もう皆さんは御存じだと思いますが、教育の場だけでは、3か月から3年までも義務教育にしなさいという話があちこちで出ているけれども、アメリカの一部の州を除いてなかなか進まない。アメリカも4つか5つかは3か月からは義務教育にしたんでしたっけね。それはマイノリティだったり人種の問題だったりかなりあるので、そこをきちんとやっていた人たちが40年後の調査でかなり見えてきたらしいです。大学の進学率であったり、協調行動であったりという研究が出ているから、そこをしっかりやろうと。日本でも義務教育化を生後3か月からやることがハードルが高いのであれば、先に社会教育そこを行えばいいじゃないかと思います。
 そこが結果的には、後でやらなければいけない困難を抱える人々等々を生み出すとすれば、社会教育側が、お母さんやお父さんや、あるいはそれ以外の人たちも含んで、3か月から3年までもやり、学校教育とも、皆さんがお話ししたような現場的交流というのもやり、そして、それが終わった後の青年の教育だってもちろんやる。それ以降、超長寿社会の活躍の場である前期高齢者にもそういう機会がある。3か月ぐらいまでさかのぼると、社会がどのように教育の機会を作っていくべきなのかということがとても重要で、それは社会的包摂のことにも関係してくるような気がします。どのように書けばいいのか分からないんですけれども、その結構大事なことを、学校教育側が余り書けない、まだ今はちょっと決断できないのであれば、社会教育側からどんどんやってしまって、実績を作ってしまって、じゃあ、2020年頃には義務教育化するかみたいな機運を社会教育側から出していくことはできないのかな、何ていうことを、ちょっとお話をお聞きしながら感じました。


【明石主査】 

 ありがとうございました。私は、この(1)の丸がありますね、その2行目の丸1、これが今、山崎委員のことかなと。身近な地域における多世代交流を通じた地域という、これがなかなか学校教育ではできないことなんですね。生涯学習で言うと、身内だけではなくて、近所のおじさん・おばさんも含めた多世代の方の交流ができるという、これを出していくと、0歳児から100歳までも対象になるんですよという、これが非常に大事なキーワードかなと今の話をお聞きしながら思いました。
 もう一つ、3番目の社会の変化に対応した学習機会の提供、これはもう少し、重森さん、岡山あたりでは、75歳から高齢社会になるという答申もあるんだけれども、80歳・90歳の人の学習コンテンツというのはあるのでしょうか。


【重森委員】 

 公民館に実際来られている方は高齢の方がすごく多くて、80歳とかでも学びたいという意欲がすごく強いし、健康であり続けたいという意欲がすごく高い方が多いので、そういう事業や講座に、すごく積極的に参加してくださっているんです。ただ、やはり運転できなかったり、岡山市も公共交通が周辺部はなくなってきているので、公民館に来られない人たちのために、ICTを使って、来ないと学べないのではなくて、自宅や自宅の近くの集会所などでみんなでインターネットでそれを見て、離れていても会話したりするというような形が、これからは必要なのではないかというのは、考えてはいるけれども、まだできてはいません。


【明石主査】 

 関委員のところは、新居浜のあたりで、85歳以上の方の学習コンテンツというのはあるのでしょうか。


【関委員】 

 今お話を聞きながら、果たして高齢者がスカイプとかいろいろなICTを有効に使っていけるようなスキルを身に付けるような事業に我々今取り組んでおるのかなと反省しました。本当に一部の熱心な方は先に先に進んでいくけれども、取り残されている人の存在が非常にズキンと来ています。
 うちもどちらかと言うと、いつになっても現役でいよう、将来、社会に必要とされるような存在であり続けるような場づくりというのは、社会教育の中で意図的に組み込んでいるような気はします。生涯働いて、だんだん量は小さくなっていくかもしれないけれども、誰かのために、認められる、あるいは自分の存在がきちんと確保されるような、そんな学びの場を確保するのが社会教育ではないかなと。福祉であれば、どちらかと言うと、そこは割と薄くなってくるような気がするので、むしろ社会教育はいつまでも高齢者が活躍できるような、そんな場面作りをするのがいいのかなというのは、いつも思っておるところでございます。


【明石主査】 

 田原委員いかがですか、佐賀あたりでも、こういう高齢者を対象とした健康寿命を延ばすとか、いつまでもお元気でいるとか、そういうコンテンツの開発というのは進んでいるんでしょうか。


【田原委員】 

 残念ながら進んではいません。今提案しているのは、大々的な何とかではなくて、全国でちょこちょこっとお見かけする、散歩道にちょっとした運動器具が置いてあるとか、日常的な動きの中でそんなのがあればいいねということです。ICTについては、学校ではとても理解があって導入してもらっているんですけれども、今度は社会教育施設に配備が必要だねという話を今していますが、予算の関係で実現できてはいないです。でも、必要で、興味を持っている方は結構いらっしゃるんだろうなと思っています。
 それで、学校で新しいものを入れるからというときに、そちらの幾らかを老人の皆さんとかも集まれる公民館とかにどうにかできないのかなということを今探っているところです。


【明石主査】 

 小曽根さん、栃木でも結構頑張っているような感じしますけれども。


【小曽根委員】 

 うちの市の場合、高齢者ということですと、これは福祉の方の分野なんですが、ふれあいサロン事業ということで、それぞれの地区ごとに高齢者が集まり、そこに場所を作ることによって補助金を出している、支援しているということをしばらく前からやっております。
 あとは、うちの方の分野ですと、楽習講師、楽しく習う講師、これは年齢関係ないんですが、結果的には入った人がだんだん高齢になって、70とか80に近い方でも、踊りなどで講師として活躍できるというのは、こちらとしても支援しているところですし、楽習講師会というところが今自ら活性化を図っているという状況でもあります。


【明石主査】 

 ありがとうございました。先ほど言われましたように、社会教育におけるICTの導入をどう促進するかというのは非常に大事な課題で、ある程度スキルアップしておかないと、元気なうちはいいけれども、在宅で学習するにはそれをうまく使いこなさないといけないというのはあります。また後半の方に出てくると思いますけれども。3番であと何か言い残したことはないでしょうか。


【古賀委員】 

 3番の裏面の2つの方向性という箇所について、1つが、(1)のパートナーシップの推進というところで、学習機会を提供していくことが大切で、そのためには、コーディネーター能力も必要で、これまでもファシリテーター能力の必要性について議論がありましたし、「必要である。そのために、コーディネーション等の能力向上が不可欠である」といった書きぶりにしてはと思います。
 それからもう一つ、これまでの会議で私何回か申し上げているのが、(2)の社会教育システムの構築というところで、その社会教育分野への教育投資について云々必要であるとあるんですが、いかに投資を受けるために効果を見える化するか、そのために一定の、前向きな意味合いでの評価の仕組みが必要という点です。評価の仕組みづくり自体、大変でしょうが、少なくとも効果の見える化なりの表現も入れていただいて、教育投資が誘発されるような、そんなトーンで書いていただければと思います。特に市町村行政は、財政当局との予算折衝がネックのようですので、理論武装をする上で助かるのではないかと思った次第です。


【明石主査】 

 ありがとうございました。山崎委員、日本全国を飛び回っていらっしゃって、ふるさと納税とか、クラウド基金とか、いろいろな民間などの資金を投資してまちづくりをやっているところはあると思うんですけれども、何かいい事例はありますでしょうか。ある首長で、ふるさと納税を使ってうまくまちづくりをやっているとか、公園作りをやっているとか。


【山崎委員】 

 ふるさと納税は余り詳しくないんですが、クラウドファンディングはかなりのデフォルトになってきていますね。何かやるときの200万ぐらいまでのレベルであれば、かなり確率は高く集められるようになってきています。やはりこれはITのリテラシーが全国的に相当高まっているということもあって、本当に意義があることであれば、3,000円か5,000円ずつぐらいみんなが出していくということで、200万は大体行く、達成率としても200万までというのは相当な高い達成率のようです。
 その意味では、子供たちのためにとか、次世代のためにという大義名分は結構強いと思いますから、学校教育的な雰囲気のものの課外プログラムに対してはお金を集めやすいような気がしますね。だから、社会教育全般みたいなことを掲げたときに、みんなの心に火がつくかと言うと、漠としてしまってお金が集まらない感じがしてしようがないんです、これは偏見かもしれないんですけど。何のためにやるかを明確にしなければいけない。そのときは1つは、若い次世代のためにほど力はないかもしれないんだけれども、先ほど来お話に出ているような、高齢者の健康寿命を延ばすということは、若い人たちが使えるお金にも相当関係してくる話題ですね。税財源だけで30兆、社会保障費全体では110兆円を超えていますから、これだけのお金の半分が高齢者、47.何%高齢者向けのお金である。これをどうやって減らしていくかを考えたときに、平均寿命と健康寿命をどれだけ近付けていくか。高齢者の社会参加で、これは社会教育の分野だと思いますから、テーマをしっかり特化して、こういう面白い意義あるプロジェクトをやろうと思っているということをしっかり発信して、それで税金以外のお金も資金としてきちんと集められる。
 逆に言うと、そういうことのノウハウであったりお手伝いを社会教育側がするのは全然問題ない気がするんですね。今必要であるものに対して、ツールは整っていると。では、どういうふうにクラウドファンディングの方に載せればいいか、どんな写真を載せて、どこをゴシック体で大きくしておくとみんなの共感を得られるのかとかいうことを、社会教育主事の講習に入れるとか。それで、地域の人たちが本当にやってお金を集めなければいけないものに対して的確に助言ができる人がいれば、これは社会教育の畑だけではなくて、いろいろな課が、これから住民参加で何かプロジェクトをやっていこうと思うときに適切なアドバイスができる人材になりますから、社会教育人材が結構引く手あまたになる可能性があるのではないかという気がします。


【明石主査】 

 ありがとうございました。この前、九州の小さな島で、冷凍庫が駄目だから、150万のファンドで、1週間で集まりましたからね。村の活性化で。ポイントを絞ってやるという。これが古賀さんがおっしゃるような見える化というか、その成果をうまく提示しなければいけないということだと思います。
 あとほかに何かございますか。個人的には(2)の社会教育分野の教育投資について国民の理解が得られるというね、こういう雰囲気と言いましょうか道筋を作っていくことが非常に大事かなと思っておりまして、非常に新鮮みを感じておりました。


【関委員】 

 そこの(1)の官民パートナーシップ推進の部分なんですけれども、官と民が連携して何かをするときに、今まで社会教育は割とその辺に対して非常にハードルをあえて高くしておったというか、特定の企業に対しての利益供与になるようなものについてははなからシャットアウトしてきたような気がするんですけれども、これから先そういった人の力も、場合によったら、公平・公正性を担保しつつ、いろいろな人の力を借りなければ前へ向いて進まないこともいっぱいあるような気がします。多様な主体と連携・協働、各主体の強みを活かす、この辺のところ方向がもう少し見えたら非常にありがたいんですが。


【明石主査】 

 ありがとうございます。青少年教育課で企業の社会貢献、CSRを、今度4目を募集していますけれども、大企業、中小企業からも、自分たちの仕事、本業をてこにしながら、青少年の体験活動を促進することをやっております。だから、今年で4目ですけれども、こういうことをここでうまく、本業として地域に貢献するという方向がものすごく伸びつつあります。企業は、社会貢献、社会の責任に対してどうしていくかというのがありますよね。そういう意味では、官民パートナーシップの推進というのは、時代的には非常に大事な視点かなと思っております。
 あと、ございますか。
 なければ、4番目の、社会教育の概念の再整理について、何か御意見ありましたら。これ、かなり大胆な提案だと思っているんですけれども。


【牧野委員】 

 社会教育の概念の再整理、私も重要だと思います。なぜかと申しますと、先ほども申し上げたのですが、今までの社会は、例えば、子供がたくさん生まれてくる、人口が増える、経済が大きくなっていく、拡大再生産する、と、形としては、同じ一つのパターンが繰り返されながら大きくなっていくという社会だったと思うのです。経済発展していくとか、子供が大きくなっていくことも、同じ「発達」という言葉を使います。ある一つの価値観を共有したものが縦の方向に大きくなっていくというか、伸びていくという感覚の社会であったと思うのですが、それが今はもう止まってしまっていて、少子高齢化・人口減少の社会で、市場が小さくなっていく。しかも、みんなが同じ価値観を持って同じような生活をすればいいのだという社会ではなくて、もっとばらばらな価値がたくさん出てきている。例えば、高齢者が増えていくということは、身体機能もそれぞれがばらばらになっていくという社会に生きているわけです。同じ年齢であってもばらばらになっていってしまう。多様化・多元化の社会に入る一方で、縮小していく社会に、私たちは生きている。この意味では、従来のように皆が同じように大きくなっていく社会の中でできてきた社会教育というものを、小さくなりながら、ばらばらになっていく社会に合わせて、つくりかえなければいけなくなっているのだと思います。社会教育の概念をもう一度とらえ返す必要があるのではないでしょうか。
 今までは、行政の施策として社会教育というものがあって、税金を取って、一括で同じように保障することがよかったはずであったのですけれども、今や、それが難しくなっている中で、では、社会教育って一体何なのか、学びといったものをどう捉え返すのか、が問われてきている。単に知識を得て使うということなのかというと、そうではなくて、むしろ知識を活用しつつ、新しい価値を作り出していくとか、または、自分たちの生活を自分たちで作り出してながら、人と共有し、共存していくとか、そういう議論をしていかなければならなくなっていると思うのです。その意味では、明石先生がさきほど、大胆な、とおっしゃいましたが、今、そういう時期に来てしまったのだと思います。これらの意味で、社会教育の概念をもう一度ここで検討して、新しい社会教育概念に変えていく、それが新しい社会をつくっていく基盤になるのだというような置き方といいますか考え方、そういうことがこれから必要になるのではないかと考えています。後から少し議論をお願いします。


【明石主査】 

 ちょっとここ時間を取りたいのは、今回の学びを通じた地域づくりの推進に関する調査研究協力者会議そのものが、この概念の構築なんですよね。そういう意味で、もうちょっと、今、牧野委員がおっしゃったようなことも含めて、知恵があれば。
 古賀委員、どうでしょうか。


【古賀委員】 

 NPO等の現場では、社会教育という言葉は二の次という感覚があります。社会教育は、行政の政策用語という側面が強いと思っていますが、教育の担い手自体が多様化していて、受け手も多様化しています。先ほどシニアの話が出たんですけれども、福岡の方でも、県と一緒にアクティブシニアの社会参加応援プロジェクトをやっているんですが、一口にアクティブシニアと言っても、働きたい方もいたり、働きたくない方もいたり、活動したい方もいたり、活動は嫌だという方も、非常に多様化をしている中で、いかに主体とメニューとターゲットを多様化できるかが肝要と感じています。ここで言うと、多分、地域課題解決学習というのがまさしくそうかなと思うんですけれども、この4行、5行では、なかなかそこまでのイメージが私みたいな社会教育の素人にはつきづらいと思うので、もう少し、主語・主体と、対象と、メニューの多様化が必要だみたいなトーンも盛り込んでいただくといいなと思いました。


【明石主査】 

 関委員いかがでしょうか。一番この問題について熱心に考えていらっしゃいますけれども。


【関委員】 

 私はこの意見に全く同感なんですけれども、こういう意見が出てくる背景には、従来の社会教育というのは飽くまでも学ぶこと、教育の時点で、そこで自分らの仕事は終わりという前提で動いてきておった傾向は強いような気がするんです。この辺、我々の町なんかでもいまだそうなんですけれども、教育がやるところはここまでで、ここからは次に引き渡すみたいな発想、あるいはもうここ以上は我々はしないという公民館も正直多いような気がいたします。そこの枠をもう一つ超えて、恐らくこの下に出てくる行政のネットワーク化とか、そういう絡みの中で、恐らく社会教育が逆に行政の中に手法として全部組み込まれていくようなところまで進んでいけば本物になるのかなという気がします。行政全体を社会教育化していくという話は牧野さんからもたびたび出ておったんですが、そういうイメージが本当に必要な時代ではないかなという気がします。


【明石主査】 

 重森さん、岡山の公民館を中心とした実践を見ると、正に学びを地域課題解決に向かっていますよね。こういう発想はいつ頃から芽生えて、どんな苦労があったかということをちょっと言っていただければ。


【重森委員】 

 岡山市の公民館は、もともと今みたいな活動をしていたわけではなくて、部屋貸しだけをしていたりとか、趣味・教養の講座だけをしていた時代ももちろんあったんですけれども、改めて社会教育というものを捉え直したり、女性がどんどん活躍してくるという時代の中で、本来果たすべき役割は何なのかと言ったときに、今、関さんおっしゃったとおり、学習するというか、知識を得るだけではなくて、得たものを実践するという、学びと実践というものがずっと循環して、より豊かになっていくし、いろいろな活動へも広がっていくということを常に、公民館でやることはそれだというふうにやってきていたので、地域作りにもつながっているのかなと思います。
 公民館で学び、公民館で実践するといったように、公民館でという主語でいつも捉えがちなんですけれども、本当は、地域でという主語でいろいろなことを捉えた上で、場所が公民館だったり、そういう視点がもしかしたら今薄くなっているかなというのは感じているので、それが今この文章だけだと分かりづらいかなと思います。先ほど最初に牧野先生がおっしゃった、学びということの捉え方も、これからは作り出していくということがすごく大事で、教えてもらうだけではない、自分たちでそれを新たに学びも作っていくというようなことが、もう少し全面に出るような形で、学習とか教育というものが捉えられることが書かれていると、すごく現場の職員としては分かりやすいかなと。今までと少し違うかなと思いました。


【明石主査】 

 山崎先生、ずっと地域課題解決を行ってきたと思うんですけれども、そういう発想はいつ頃から先生の頭の中にあったんでしょうか。


【山崎委員】 

 私はデザインの畑だったので、教育は全然疎くて、名前は忘れてしまったけれども、牧野さんとかも一緒の教育の大きな会議に初めて呼んでもらったんです。そのときに、社会教育のことを話をしていて、これって私がずっとやってきたコミュニティデザインのことだなと思って、公民館ってどういうところだろうって、そこからすごい興味を持ったんですよ。だから、この一、二年なんですけれども。だから、全く素人で、偉そうなことは全然言えないんですね。ただ、この2年ぐらい影響されて、昨年11月に出した本に、「縮充する日本」という本を出したんですけれども、この本の最終章を教育にしたんです。縮んで充実していく日本になってほしいし、もう今なりつつあるという概念です。縮充ウールですね、ウールをアルカリのところでグチュグチュとやったら縮んでいくけれども、フェルトという暖かい生地になるじゃないですか、ああいう日本になりたいと思ったんです。人口は減少するけれども少数精鋭化する日本にしたい。何が大事かと言ったら、そこで教育ですよね。みんな一人一人が充実した日本を作るための人間として育っていってもらうことが大事だから、この本は何を書いているのかと言うと、参加型というのがあらゆる分野で盛んになってきているねということを各章に書いたんです。
 最初、私は、まちづくり、デザインなので、まちづくり、建築、土木の分野でも、参加型になったよ、45年、70年、95年にそれぞれ変わったよと。環境分野もそうですね、公害反対という運動から、フロンガス、CO2、原発、いろいろなことがあって、自分たちも加担している、じゃあ、自分たちの生活を変えよう、参加型になった。全部そうなんですね。商業の分野もマーケティングが参加型になったし、メディア、ITも、信じられないけどウィキペディアなんて参加型で百科事典を作るようになっちゃったし。ウェブ2.0でSNSになって、みんな参加型で、ユーチューバーとかいう人たちがテレビの人たちより有名になるぐらい参加型で娯楽を作ってしまうようになってきた。防災は当然参加型です。福祉、医療、医療もそうですね、80年代にインフォームドコンセントで患者参加型医療にしないと治らないんです、だって、生活習慣病だから。がんとかだったら、専門家でいいんですけれども、生活習慣病は、みんなが参加しなければ治らない。福祉も地域福祉ですよね、先ほど地域へという話がありましたけれども、特養等の施設から地域福祉へに入ってきた。いろいろな分野参加型になってきたねというのを1章から8章までずうっと書いた上で、最後、私はここが本丸だと思っていると書いたのが教育分野なんです、第9章だったか、それが教育です。
 何でかと言ったら、今まで全部言ってきた分野が、1945年の終戦のときに戦後民主主義が始まった第1段階、市民参加1.0、68年、69年の学生運動も含めて、公害反対も含めた70年代に市民参加が2.0になって、1995年が阪神・淡路大震災でボランティア元年と言われた、このときに反対だけではない参加が出てきた、3.0が出てきたんですね。こういうときに、それぞれのメディアも、ウィンドウズ95、インターネット出たり、縦につながっているので、45年と70年と95年と、25年ずつで新しい参加が出てきているんです。次は2020年です。95年から25年、2020年の新しい参加がもう見えているはずなんですね、今。先ほどのクラウドファンディングという参加の方法だったり。
 そういう意味では、新しい参加に必要なことは、やはり知ることですよね、教育。ああ、こういう時代が来ている、こんなツールがある、みんなとやったらこんなに元気になれる、笑顔になれる、健康寿命延びる、そういうことをしっかりみんなが学んでいくという、この学びをどう参加型で作るのかということを、今、社会教育を模索しようとしていますというのを、本に書きました。
 各教育分野以外のところに、教育が大事なんです、参加型の社会にするために。だから、牧野さんもおっしゃっているみたいに、行政各課に社会教育主事が忍び込んでいて、中で住民を集めて、福祉も変えたよ、環境も変えたよ、公園緑地も変えたよ、農村整備も変えたよ、どうやって、参加型でって。誰がやったの、社会教育主事だって。何かそんなようなことに変わっていくといいなと思いますから、重森さんがおっしゃるみたいに、公民館で、ではないというかね。地域に出ていって、地域を参加型に変えていくための基礎的な学習を、どうやってみんなのやる気を醸成しながら、みんなをうまくつなげながら実現させていくのか。多分、社会教育にとって、とても今大事な時期だと思う。その意味では、これすごく私も共感します。地域課題解決学習というのがもうきちんと入っている、位置付いているということ。この地域課題というのは、行政で言えば、各課にわたっているんだよ、そこに社会教育全部いるんだよということをしっかりうたうというのは、すごく賛成ですし、重要なことだと思います。


【明石主査】 

 ありがとうございました。それを受けまして5番に行きたいと思います。そこで今、山崎委員がおっしゃってくださったことの具体的な3つの視点ができたと思うんですね。これについて、関委員、2番目の学びの専門職としての社会教育主事の養成・活用で、今、山崎委員がおっしゃったように、各課に行って本当に仕掛けができるか、この辺の可能性について何か。どうすれば今の山崎委員のプランが実現できるか。


【関委員】 

 いつもよく思うんですけれども、当然、講習を受けるだけではなかなかそれを担っていくのは正直きついような気はいたします。そこからあと、今までは行政職員が社会教育主事になることが多かったと思うんですけれども、割と行政の職員というのは自分の畑の中だけにこもってしまうので、ここにも書いておられたように、行政以外の社会教育主事資格を持った人間との切磋琢磨というか、お互いが触発するような場面をたくさん作っていくようなことが非常に大切ではないかと思います。
 それと、これはこことは直接違うんですが、今、子供たちの教育は、2020年の新教育指導要領の中でアクティブラーニングなるものを積極的に打ち出していこうとしている、正に社会教育の中にもアクティブラーニングを取り込んでいくことをもっと全面に押し出していくことで、逆に、行政全部の、子供も含めてそこに関わっていける契機ではないかなと、今、山崎さんのお話を聞きながら、ふと思ったところでございます。


【明石主査】 

 本来は社会教育主事はアクティブラーニングのプロだと思っているはずだけれども、そこまで来ていなかったから、いろいろな問題が起きているかなという感じで、再度、学校教育が言う前に、社会教育はずっとやってきたんですということをもう一度整理をし直して見ていきたいということですね。
 古賀委員、5番目の(1)(2)(3)で意見がありましたら。


【古賀委員】 

 これを呼びかけている対象が改めて気になったんですけれども、これまでの章建てを見ていると、幅広く担い手がいるよねと、そことつながることが大事だよねということで。確認なんですけれども、5番目は、だから、社会教育行政の担当課はこうするべきという呼びかけモードなのか、それとも、社会的な提言トーンであるのか、ちょっとそこが私の中でいまいちよく見えていないんですが。


【石丸社会教育官】 

 お答え申し上げます。その点につきましては、これまでの御議論の中でも2つのことが両方入ってございまして、総論として社会教育行政のみならず、広く社会における教育という話と、いわゆる行政がどうなっていくのかという話。ここでは2つの要素が入っているわけですけれども、それらを織り交ぜて書いたものですから趣旨が不明確になり恐縮です。両方の視点が重要ではないかという思いを込めたところでございます。


【明石主査】 

 そういう意味では、4番までが大きなことで、5番目が具体的な社会教育を推進する、船で言うと中核と言うか、エンジン部分をどう作っていけばいいかという視点だと思っております。
 皆さんにお聞きしたいのは、2番目の学びの専門職という言葉に私個人的には抵抗を感じています。専門職と言われたら、先ほど山崎委員のようなことができないんですよね。何かその辺で、これからの新しい社会教育主事のネーミングとして、どういうキャッチコピーを出していけばいいかというのがありましたら。


【牧野委員】 

 学びの専門職と言うと、専門家に任せればいいみたいな議論になると困るなという感じはするのです。今、私たちが東京都の主事会と一緒になって進めようとしているプログラムは、「学びのクリエイター」という言葉を使っています。例えば、住民の中に入り込んで、住民の方々の声にならない声を聞き取りながら、まず対話をつくれる人たち、そして、言葉としてそれをお返ししながら、こうでしょう、ああでしょうといいながら、住民の声を反映させて、学びをつくっていける人たちのことを、学びのクリエイターと呼ぼうと今いっているのです。こういう表現でもいいかなと思います。まだ検討中ですが。


【明石主査】 

 重森委員どうですか、現場サイドで。学びの専門職と言われたら、ちょっと引くのではないかと思ったけれども。


【重森委員】 

 そうですね、私は名乗れないって思うかもしれない。でも、牧野先生おっしゃるみたいに、社会教育主事の役割は本当にすごく幅広くて、もちろんコーディネートもするし、全体的なファシリテーションももちろんするし、でも、自らが主体というか、ワーカーだったり、ディレクターだったり、本当にたくさんの役割があって、そのときそのときでいろいろ違ったりするので、その中にいつも学びというものをどう入れていくかと考える人って、どう言ったらいいのか。これ、というのはないけれども、クリエイターって、作り出すとか、創造するという意味で言うと、合っているというか、ああなるほどと。専門職というよりは言いやすいかもしれないなと思うけれども、どちらも大変。


【明石主査】 

 多分この辺は山崎委員が一番詳しいんだけれども。例えば、クリエイターとかオーガナイザーとかね。全体をさっき言ったまとめ束ねていく。


【山崎委員】 

 学びのクリエイターはいいなとは思いましたね。確かに専門職と言われてしまうと、先ほど来御指摘があるみたいに、その言葉が市民に伝わっていったときに、じゃあ、専門職に任せていこうって、当然の反応として出てきてしまうような気がしますから。名乗るのであれば、さっきおっしゃったように、学びを何かに練り込んでいくというか、全ての事業の中にうまく学びを浸透させていくような人という、いい言葉が出てくるといいなあと思いつつしゃべっているんですけれども、出てこなかったです。


【明石主査】 

 ほかに何かありますか。今のところ、クリエイターとかオーガナイザーとかですね。学びというのは要るんですね、やはり社会教育だから。
 すぐに出ないと思いますけれども。あるいは、もう一回会合ありますから、そこまでにはお考えいただく。とはいえ、古賀委員あたり、何かいいのありますか。


【古賀委員】 

 参考までになんですけれども、最近、20~30代の方々は、コミュニティオーガナイザー講座とかに参加され、そこでの新たなつながりも創られたりしています。コミュニティと言うと2つの意味合いを持ち始めている感があります。1つは地域、もう一つが、テーマとか、同年代とか、職場の仲間とか、割と嗜好や属性が似たような人たち同士の集まりという感があります。そこで、コミュニティという言葉もゆるやかな意味合いになっていて使えるのかなと。コミュニティクリエイター、コミュニティコーディネーターとか、いろいろ考えていたところでした。


【山崎委員】 

 コミュニティデザイナーというのもありますね。


【明石主査】 

 では、ほかに、全体を通して何か。


【田原委員】 

 全体ではないんですけれども、さっきの言葉のことで、クリエイターとかいう雰囲気の方が、まちづくりを考えたときにいいなと思いました。私が聞いたら、参加しないと思います、任せてしまう。参画なんてとんでもない、あの人がいるから大丈夫なんだと思ってしまいそうなので、そういう言葉の方がもっと耳に入ってくるかなとは思いました。それから、5番の(2)の最後のあたりに、社会教育主事資格が多様な社会教育の場において活用されることが期待される、このとおりなのですけれども、限定してしまわないで、あらゆる場で活用されていくと、行政の方々の意識も変わってくるかな、そういう力になるかなと思いました。
 それから、きょうここに来て私も学んだのですけれども、(3)の新しい学びの場としてと書いてあるところで、サーッと自分が目を通したときには、大人を想定しましたが、山崎委員の話とかを伺って、3か月からを想定していいんだなと思ったので、そういう視点でやると、もう少しどこか言葉の表現が変わるのかもしれないなと思いました。つい大人を、どちらかと言うと高齢ばかりを想定してしまうのですけれども。例えば、今、私の市では図書館を作ろうとしていて、本当にやっと、遅ればせながらの図書館なのですが、だからこそ、何か特色あると考えたときに、絵本だけはここへ行けばそろっているよ、みんなが寝っ転がって絵本を読めるよというふうになればいいかなとか、今いろいろな会議をしてもらっています。それが先ほど言われた3か月からの社会教育になるので、そこまで想像できるような骨子案にどうせならしていきたいなという気持ちになりました。


【関委員】 

 社会教育主事の立ち位置なのですけれども、これは私もいつも思っていたのですが、直接事業そのものを引っ張っていくような立ち位置もときには必要かと思うのですが、基本的には住民自らが動いていく、そのことを化学反応を促すような意味合いの触媒的な機能、自分がそこで何かをやるのではなくて、その人がいることによってその活動そのものが元気になっていく、活性化していくような機能が、社会教育主事なのかなというのは、いつも思うところであります。ディレクターとかになってしまうと、その人がいなければ活動が動かないような町になったら違うのかなというのをいつも感じるところでございます。


【小曽根委員】 

 社会教育主事の関係で、うちの方の自治体は、ほかの職場ですと、社会教育主事というのは正直言って余り知られていないと言いますか、そういう意味では、もっと周りに周知されるような、認識されるようにしていけばいいと思います。社会教育主事はそういったスキルを当然持っているわけですので、それが職場の縦割りではなくて、横のつながりなり、あるいは一番市民と接するのは市役所、地方自治体なので、そういったところでのスキルの活躍の場というのは、これからかなり出てきますので、そういう意味でも、こういった多様な教育の場において活用されることというのは一番大事なのではないかと思います。


【明石主査】 

 3番目の新しい学びの場、田原委員がおっしゃったように、正に新しい括弧で、「3か月から100歳までの学び場の構築」ね。次に欲しいのは、そのためには、社会教育施設の運営整備でICTがないじゃないですか。これから、図書館はあるかもしれないけれども、博物館とか、特に公民館に最新のICTの設備を出していくとか、そうしないと追いつかないよ、3か月と100歳の方に対応するためには、人間わざだけでは駄目ですよと、そういう意味のことを入れ込むと、正に新しい学びの場というのがわかると思います。そうすると、文科省も予算を付けやすい。やはり公民館をリニューアルするためには、ICTを使ったとかいうのが欲しいなという気がしますけれども。


【牧野委員】 

 もう一押しという感じなのですけれども、5番目のところで、今後の施策として、例えば、生涯学習または学びが新しい市場をつくることにもなるのだという議論をすべきだろうと思います。先ほど山崎さんおっしゃったように、今、参加はとてもあるんですね。だけれども、人々が分断されているという状況がある。
 ちょっと話は飛躍しますけれども、最近いろいろな企業から、コミュニティの作り方を教えて欲しいというご相談がとても多いのです。物が売れない社会になってしまった。そこで、いろいろ研究していくと、人々がばらばらになり過ぎてしまっていて、基本的に生理的な欲求だけ満たされていれば、あとは何も要らない社会になってしまったという結果になるというのです。お腹が減ったら、簡単な、安い御飯を食べておなかが膨れれば、それでいいやと思ってしまう。けれども、本当は、誰かと一緒に御飯を食べると、楽しいし、うれしいしということになれば、もっといい御飯を食べようとか、レストランに行こうとか、相手のために何か買ってあげようとするのではないか。そこを壊し過ぎてしまった結果、結局、今、参加はするけれども物は買わない社会になってしまった。その意味では、もう一度人間関係を結び直すにはどうしたらいいかという御相談が結構来るようになっているのです。
 社会教育が社会の基盤になっていくというのは、ある意味では新しい市場をつくっていくことにもなるということなのではないでしょうか。今の公民館のようなものが整備されていくことで、人々がきちんと結ばれて、お互いの関係の中で、誰かのために何かしてあげたいと思うことは、実は自分もうれしいんだという関係ができ上がっていくことによって、そのために、これが欲しい、あれが欲しいという欲望が出てくる。そうでなければ、欲望というのは最も基本的な生理的欲求で終わってしまうのです。本来であれば、承認されたいとか、してあげたいとか、好きになりたい、好きになってほしいという関係の中で、欲望が出てくるので、欲望というものは、本来的に人間関係の中で発生するものなのです。こういうことを押さえておくことで、社会教育というはこれから健全な、人々がきちんとつながっている市場をつくっていくものでもあるのだということも、しっかりと社会に訴えていくことで、むしろ産業界などももっと出てくるようになるのではないかと思います。
 そうであれば、例えば、(2)にありましたように、NPO、民間教育事業者、大学、企業等における社会教育活動と書かれているわけですが、それはある意味で4番の概念の再整理とも関わってきて、従来の社会教育の領域の中のところに社会教育活動がきちんとあるべきだといわれているわけですから、そうしたものをベースにしながら、新しい市場社会をもつくっていくのだという議論になると、もっと社会変革との関わりで、社会教育の在り方を、いろいろな人々が関わることでつくっていくことになるのではないかと思いました。


【山崎委員】 

 今の牧野先生のお話、正におっしゃるとおりで、先ほどの「縮充する日本」で書いていて、調べてびっくりしたんですけれども、トヨタのハチロクという車があるんですか、私は車を持っていないので知らないんですが、ハチロクというスポーツカーみたいなやつがあるらしいのです。これはすごく高いんですかね、600万円か800万円ぐらい、ネットで1回調べて金額を忘れてしまったのですが。それで、この高い車を買うモチベーションは何と言うと、このハチロクのオーナーになった人しかメンバーシップに入れないコミュニティがネット上にあるんです。このハチロクコミュニティに我がハチロクの写真をアップして、どこの峠を攻めているかみたいな写真をブワーッと置いていくのです、これで「スッゲー」とか言い合っているコミュニティがある。つまり、ハロチクという車を運転したいわけでもないし、その内装が、デザインがいいからではなくて、ハチロクコミュニティに参加したいから600万か800万の車を買ってしまうという時代。だから、車をどれぐらいリデザインしても売れない、みんな乗らないと言っているのに、コミュニティを先にきちんと作って、そこがみんなにあこがれるようになると物が売れるようになる。
 もしこの仕組みを作ったのが社会教育主事だったみたいな話になったら、すごい面白いと思うんですよ。だから、今、そういう夢想をしたわけです。社会教育主事を行政の人たちだけの講習で、40日間とか百何時間やったではなく、もっと一般の人たちも社会教育主事講習からヒントを得て、あの人はこっちで参加してしまったよと、もちろん、対価は払っていいと思うのです、でも、それで払って、教育を受けた人たちが、社会教育分野以外のところでもどんどん活躍するということが出てきたら、あ、社会教育ってすごい力を持っているなと。現場の社会教育の人たちも負けていられへんという関係になったらお互いにいいような気がしますから。やはり産業の中に入り込んでいくような社会教育というのを本気で考えるというのは1つな気がします。
 差し当たって、うちの事務所の25人のスタッフはみんな受けさせます。行政職員ではないけれども、社会教育主事講習を受けられるようになったら、おまえら全員受けてこいと、40日受けて、コミュニティデザインとしてやる。社会教育主事が25人集まったチームが大阪にあるわけですね、年間二、三億円ぐらい売上げを出している、いろいろなところから発注を受けては、社会教育のスキルを使って町を元気にしている人たちがいるって宣伝で使ってもらっていいです、うちのスタッフの写真か何かをね。何かそんなことになったら、本体社会教育次第も活気づくというかね、面白くなるなと。今話を聞いていて、そんなことを感じました。


【明石主査】 

 私も牧野先生の話をお聞きして、前半、教育投資という視点がこれから必要になってくるのだ、同時に、市場作りと言いましょうか、欲望を作り出していくということを思いました。本当に70歳の高齢者は欲しい物がない、若者も欲しい物はない、小学生も、年末の欲しい物がないと言う。本当にないのだろうか、それを私たちが作り出していないのかもしれないし、本当に分断されたというか、切断された社会状況の中で、もう一度、新しいものを作り出すことが可能かなという。新しい市場づくりという、こういう発想は、生涯学習だから出てくるのだという。そういうダイナミックなことをやっていかないといけないかと、今、2人のお話をお聞きして思いました。


【牧野委員】 

 すみません、もうちょっと悪ノリで申し上げますと、昔は「いつかはクラウン」といいましたよね、御存じでしょうか。今はもうない車、パブリカから始まって、カローラ、コロナ、クラウンとなるのが、人々の夢だった時代があったのですが、今はもうクラウンを買わないですよね。なぜかということについて、いろいろ研究があるのですけれども、いわれているのは、車を持つと、一家の中で「お父さんすごい」といってもらえたからではないかというのです。出世するにつれて、より上級車に乗り換えて行くというのは、家族のためにという思いと、家族みんながすごいといってくれるのと、自分も、みんなの目から自分を見ることができて、「やっぱり俺ってすごいよな」と思えるというか、そういう関係があったからだと。これはある意味では、市場がしっかりしているし、人々が相手のことも想像できたという関係にある、つまりそれは信頼感でもあったはずなのです。今それが、人々が分断されることで、人のことを考えたり、親しい人から凄いといわれる快感を思ったりしなくなって、車だったら動けばいいやと思っているので、軽しか買わないとか、そういうことになってしまっている。クラウン買ったって別にすごいと言ってもらえないし、自分もすごいと思えない。ただお金があったから買っただけみたいな、または自己満足で買っているんだということになると、売れなくなってしまっているということらしいのです。
 新しい欲望、欲望といってしまうと何か誤解を招くかもしれませんが、お互い信頼感を持って生きられるような社会を作っていくことによって、相手のことを慮ることで自分のことも見えるという関係ができてきて、その中で、この社会のために、誰かのために、自分のためにという形で、欲望が出てくるということになってくると思うのです。そういう意味で、今のハチロクコミュニティもそうだと思うのですけれども、少しでも社会教育や生涯学習が社会の信頼を改めてこれからつくっていかなければいけないのではないかと思います。


【明石主査】 

 ありがとうございました。では、この際、これで大体お願いしたのですけれども、全体を通して何かまだ言い残しがあればお願いします。初めから、環境の変化から、3つの役割と2つの方向性を含めて、社会教育概念の再構築ということまで来まして、それで5番目で、具体的なデザインを作っていきたいという構成ですけれども。


【関委員】 

 3の(1)の地域コミュニティの維持・活性化への貢献の中に、最後のところ、施設の特性に応じて、博物館など社会教育施設においては交流人口促進と地域活性化に寄与することが求められるとあえて書いておるのですが、今、つくづく思うのは、中山間地あたりの公民館、それが今、いろいろな形に変容していっておるようなのをいつも感じるのです。コミュニティセンターや貸し館にしてしまうところが一方にあれば、地方創生の流れの中で、地域をもう一回よみがえらさんがために新しいものに切り替わっていこうとしているところが一方にはある。その中には、以前から言いよった社教法23条の営利活動等との絡みがどうしてもあって、地域で頑張っていこうとしたときに、金もうけもできなかったら地域再生はできないが故に、公民館を様変わりさせようとするところが一方にはあると考えます。
 そういった中で、ここもあえて博物館の集客機能的なものが出ておるかと思うのですが、もう少し、減少しつつある公民館等にもここに何か目を当てていただくと非常にありがたいです。


【山崎委員】 

 公民館の法律は知らないのですけれども、カフェとか入った方がいいなと思うのです。自分のメモの中にもカフェを入れたらって書いてある、無知だから書いてしまったのかもしれませんけれども、正しいだけで人は動かないというのは、この仕事をやっていていつも思うのです。楽しい、おしゃれ、かっこいい、おいしい、気持ちいい。感覚の方もすごく大事で、これは行動経済学、ノーベル経済学賞も取ってしまいましたからね、証明したことですよね。人間の判断は、システム1とシステム2があるので、正しいとか、理解とか、リテラシーとか読み取りとか、そういうのが必要なものって、時間をかけてじっくり学んでいかなければいけなくて、それは感覚で、瞬発的に判断できる方のシステム1の方にすぐ凌駕されてしまいます。たばこの箱のデザインが典型的ですね。たばこを売りたい側の企業の戦略はシステム1で、たばこを吸ってもらっては困る、肺がんを少なくしたいと思っている厚生労働省側はシステム2で攻めるわけです。だから、たばこを売る方は、バーでかっこいい男の人が煙をフワーッとやっている、たばこの値段も出さないし、たばこの物質についても何も言わないけれども、イメージで攻めるわけですね。きれいなマニキュアの人が細いやつを、口紅きれいにやって吸っている、おしゃれ、それで買わせようとする。でも、法律上、一定面積では、システム2で攻める厚生労働省があって、厚生労働省ではないかもしれないけれども、たばこを吸うと一定の確率で肺がんになりますみたいなパーセンテージで書いているのです。このシステム2の説得はシステム1に勝てないですから、かっこいい、かわいいの方でみんな手に取ってしまうわけですね。
 社会教育がいかに正しいことをやっていても、正しいことを、正しそうな建物の中で、正しくやっている、でも、決まった人しか来ないですよね。そうではない気持ちで来た人たちがどうやってそこに接続するのかと言ったときに、公民館の中に雑貨屋もないし、カフェもないということでは、今来る人しか対象にしていないねと言われてもしようがない気がします。これは科学的に証明されてしまったことなので、もう少し感性を揺さぶるような内容があるといいと思います。それは、美術館や博物館は入り口としてそれができているかもしれないし、ミュージアムショップで少しそれができているかもしれないのですが、もっとミクロに、地域に近いところで、人々が感覚的に行きたいな、関わりたいなと思えるような機能がその中に入っていた方がいいような気がします。これは専門的にはどうすればいいのか分からないけれども、まず、そういうことが大事だよと国の方でも言ってあげることで、いろいろな地域から試行錯誤のアイデアが出てくるかもしれないので、我々はそこまでも許容しようと思っているという態度を表明してあげるのは、背中を押してあげることになるのではないかと思います。


【明石主査】 

 ありがとうございました。ではほかに。


【牧野委員】 

 何度もすみません。場の問題でよろしいですか。今のことと関わるのですが、私たちがあちこちで関わっていますと、高校生が場所が欲しいとよくいうのです。彼らがいうのは、小中生も交えて一緒に議論したり活動する場所が欲しい、なかなかそういう場所がない。公民館でもいいし役場でもいいからつくってほしいという運動があったりして、つくってくれるところが出始めているのです。今の山崎先生の議論と関わらせますと、ある会社の名前が出てしまいますけれども、あるファーストフード店がうまくいかなくなったのはなぜかと言うと、食べに行っているわけではなかったということをうちの学生たちはみんな言うのです、場所を使いに行っていたのだと。問題は何かと言うと、電源とワイファイなのです。そのファーストフード店は整備するのが遅れたのです。それでみんな別のファーストフード店に行ってしまったということなんです。そうしたものが公民館にも必要だろうと思うのです。
 その意味では、まじめだとかおっしゃいましたが、正しく間違えるということはよくあるので、合成の誤謬というのですけれども、正しいことをやっていると実は間違えてしまう。ある意味では、遊びがなければいけないことはいっぱいあるので、そうしたものを、公民館の作り方ですとか場所ということを考えるときに、考慮する必要があるのではないかと思います。


【明石主査】 

 ほかにないでしょうか。今の話と関連して、古いですけれども、杉並のゆう杉並というのは有名で、中学生に実行委員会を設けて、正にたまり場なのですね。それをヒントにして、長野県の茅ヶ崎のたまり場で、駅の近くに本当にたまり場で、そこへ行けば誰かに会えるという、そういう先ほど言ったシステムを一応大事にしていくという。公民館もそろそろそういう形で、システム1と2のせめぎ合いがこれから出てくると思います。


【田原委員】 

 人を集めるためのおしゃれな空間作りに対しては、ある程度支援ができますよというのが国からあったらうれしいなと、お話を聞いていて思いました。楽しい移動図書館とか考えて、扉を開けて、カフェをして、二、三時間そこに滞在しますとか、いろいろアイデアを出したのですけれども、理解をしてもらうのは大変難しいですね。国のそういうのがあったりとか、いろいろあったらうれしいなと。とにかく、今から、私もそろそろ高齢者の仲間で、使わせてもらう場所が必要なのに、おっしゃったように、正しいだけで行っておしゃれな雰囲気になるかなと言うと、問題がありますね。そういう人のために、国のレベルでこんなのをちょっと入れてもらうと助かりますと思いました。


【明石主査】 

 局長、そういうのは。非常に分かりやすい。そういう積算の方法というのはないのでしょうかね。


【有松生涯学習政策局長】 

 御存じのように施設の予算がないものですから、施設としては今は現実には難しいです。魅力アップのために何か新しい手法を考えるとか、事業として考えていくと。施設そのものは現実には難しいので、ソフトの話としては、できますよね。


【山崎委員】 

 民間のお金も使えれば、箱の予算はつかないんだけれども、カフェをやりたい人たちが本当に場を貸してくれるのだったら自分たちで作りたい、それが社会教育の入り口になるのだったら喜んで、営利ではなくてもやりたいと思える人たちがいるのだったら、法をいきなり変えるのは難しいかもしれないけれども、特区的なのか、何かモデル事業的な、ひとつ1回やってみようという社会実験として3年限定とかでやって、これが今まで来なかった人たちをどれぐらい公民館に呼び寄せたのかとか、新しい活動が生まれたのかということを、ちゃんと対外的にも説明できるような社会実験を1回やってみると、ひょっとしたらその後の説明がしやすくなるかもしれないですね。でも、やらないことには、多分、みんな分からないのですよね。気持ち、システム1の方なので、わくわくするかどうかが目に見えないと、議論していても分からないというのはありますね。そんなのが何かできるといいなと思いますね。何かそういうネタを持っているのですか。


【石丸社会教育官】 

 ネタではございませんけれども、若干補足いたしますと、先ほど山崎先生からもお話があったように、国としてそういうことができるのだということを明らかにすること、やってはいけないと思っている方もいらっしゃいますので、まずそこは重要なのだろうと思っています。しかし、実はもう進んでいるところはございまして、1つはPFI、そして指定管理者の例がありまして、例えば、いわゆるツタヤ図書館には、カフェがございますし、さらに、多賀城市のツタヤ図書館には、同じ建物にレストランも入り、交流の拠点作りをやっていたりされます。また、大田区だったと思いますけれども、区の土地を民間事業者が借りてPFIで複合施設を建てて、その1区画を区の方で借り上げて図書館も入り、カフェもレストランも含めたものが全部一つのビルに入っているような例もあるわけでございまして、やはり民間とのパートナーシップということがこれから重要ではないのかなと。国については、国土交通省の社会資本整備総合交付金を使って、中心市街地の活性化や交流人口の拡大などの観点から図書館などの複合化などをやっている事例もありますので、国においても、優良事例の情報収集とか展開をして、いろいろな工夫ができるのだということを紹介していくことによって、その促進を図っていくことが重要なのではないかと考えてございます。


【明石主査】 

 是非公民館でね、ライブラリーというのは非常に首長が熱心ですから。一番大事な拠点ですので、是非、公民館でもできるのですよという方向性で行きたいと思います。
 あとはよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。本日の議論は以上になります。
 最後に、今後のスケジュールについて、事務局から御説明をお願いいたします。


【石丸社会教育官】 

 本日は貴重な御審議を賜りまして、ありがとうございました。
 次回でございますが、3月21日、14時から、文部科学省で、最後となります会議を開催させていただきたいと存じます。本日賜りました御意見を事務局といたしまして整理をし、論点整理の案を作成いたしまして、次回、御審議を賜りたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。


【明石主査】 

 それでは、これで本日の会議を閉会とさせていただきます。皆様どうもありがとうございました。

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