学びを通じた地域づくりの推進に関する調査研究協力者会議(第3回) 議事録

1.日時

平成28年9月26日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 学びを通じた地域づくりの推進の在り方についてヒアリング等
  2. その他

4.出席者

委員

明石委員、井出委員、小曽根委員、古賀委員、重森委員、関委員、田原委員、牧野委員、山崎委員、大竹市河内社会教育指導員、松江市池田主任

文部科学省

有松生涯学習政策局長、神山大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、佐藤生涯学習総括官、里見生涯学習政策局政策課長、西井社会教育課長、渡辺社会教育課地域・学校支援推進室長、石丸社会教育官、佐藤社会教育官、石川社会教育課専門官

5.議事録

【明石主査】

 定刻となりましたので、ただいまから第3回の会議を開催いたします。委員の皆様におかれましては、本日もお忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 また、本日は、ヒアリングのために、広島県大竹市の玖波公民館より河内様、松江市の玉湯公民館より池田様に御出席いただいております。ありがとうございます。
 それでは、事務局より、資料の確認、本日の会議の流れを説明してください。


【石川社会教育課専門官】

 それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。まずは議事次第、その次に座席表、その後に資料1から資料5までございます。資料1、資料2、資料3、資料4-1、4-2、資料5になります。その他、机上資料がございます。お手元にございますでしょうか。
 続きまして、事務局に異動がございましたので、紹介させていただきます。神山審議官が8月に来られております。また、その後、佐藤生涯学習総括官が9月に着任しております。
 まず、神山審議官の方から、挨拶をさせていただきます。


【神山大臣官房審議官】

 神山でございます。8月から生涯学習政策局の審議官を拝命しております。いろいろと、生涯学習、社会教育、学びを通じた地域づくりにつきまして、忌憚のない御意見をお願いできればというふうに思ってございます。どうぞよろしくお願いいたします。


【佐藤生涯学習総括官】

 生涯学習総括官の佐藤でございます。1年ほど前まで生涯学習政策局におりましたので、また引き続き皆様と御一緒に仕事をさせていただければと思います。よろしくお願いします。


【石川社会教育課専門官】 

 それでは、本日の流れでございます。まず、広島県の玖波公民館の河内様より、地域課題解決の取組とともに、そうした取組の実施の中で感じられた社会教育行政の課題等も含めまして、御発表いただく予定でございます。続きまして、松江市玉湯公民館の池田様より、青少年による地域活性化を支える公民館の役割、地域住民等が主体的に運営する公民館の取組につきまして、課題なども含めまして事例発表いただく予定でございます。最後に、牧野委員の方から、学びを通じた地域づくりの推進と社会教育・生涯学習行政・制度の課題につきまして、御発表いただく予定でございます。各委員の発表ごとに質疑や議論を深める時間をとりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


【明石主査】 

 では、最初に、玖波公民館から御発表をお願いいたします。よろしくお願いします。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 よろしくお願いいたします。玖波公民館、河内ひとみです。きょうは、お勉強したいと思ってきました。このような発表の場を持って、有り難いと思います。それでは、始めます。
 「~ひとが変わり・まちが変わる~「学びのカフェ」物語」、この物語は、玖波公民館の自主事業「学びのカフェ」の学びを通じて誕生した「地域ジン」が、まちを元気にしていくお話です。この物語は3章から成っていります。第1章、「学びのカフェ」スタートです。「学びのカフェ」を開催していくことにより住民同士の横のつながりを構築し、第2章、地域課題を住民とともに学び、考える、「地域ジン学びのカフェ」にバージョンアップしていきます。そして、第3章では、第2章で考えた地域課題解決に向け、住民とともにまちを元気にする活動、「地域ジンまちカフェプロジェクト」が誕生していきます。この物語に登場する「地域ジン」とは、「学びのカフェ」の受講者のことです。
 物語の舞台である、まちと公民館を紹介いたします。玖波はかつて、西国街道宿場町として、栄えていました。現在も白壁の美しい町並みが残る、歴史と癒やしの町です。しかし、現在では人口が減少し、高齢化が進んでいます。玖波公民館は、昭和49年に設立され、今年で41年目となります。そして、そこの常駐職員は、私一人で行っております。

 それでは、物語を始めたいと思います。物語は4年前に始まりました。
 第1章「学びのカフェ」、平成23年7月スタートです。その頃、玖波公民館は、いつも固定客のみが利用している、貸し館(たち)状態でした。何とかしたいと、毎日考えていました。そこで、貸し館からの脱皮、マンネリ化していた公民館事業の改革のため、「学びのカフェ」、おしゃれ空間を思い付きました。では、なぜカフェ? ネーミングの「学びのカフェ」の「カフェ」とは、居心地がよく、ゆったりできる空間です。様々なテーマについて自由に語り合うスタイルの活動カフェ。最初に行いたかったことは、公民館のイメージチェンジです。公民館は、暗い、ださい、やぼったい、そんなイメージから、明るく、おしゃれな学び空間にしたいと思いました。玖波公民館の自主事業の改革を考えました。
 それでは、「学びのカフェ」とはどんなものでしょうか。まず一つ目、参加型交流。地元住民の参加意識を変える。通常は講師の話を聞くお客様状態から、自分たちが参画していく講座。二つ目、地域の触れ合う時間・空間を持つ、カフェタイムを設ける。三つ目、地元の地域資源(歴史・文化・人材)を発掘し、眠っている宝を輝かせる場。四つ目、講座・講演のテーマをタイムリーな題材とする。五つ目、広報媒体を現代社会のニーズにマッチさせるため、フェイスブック、ブログを活用していきました。
 「学びカフェ」、毎月、土曜日に専門講師による講座を行いました。毎月、毎月、行っていきました。内容は、御覧のとおりです。この一つ一つのつながりは全くなく、とにかく一つずつ単体で行っていきました。
 それでは、第1章「学びのカフェ」の成果です。2年間継続して行った「学びのカフェ」、地域の人々に定着していきました。まず、広報媒体を、従来の紙媒体、公民館だより、市広報に加え、フェイスブック、ブログを立ち上げ、リアルタイムで情報発信を行いました。また、おしゃれな学び空間の提供を行うことにより、公民館のイメージが変わっていきました。そのことにより、新規来館者(受講者)が増えていきました。そして、学びを入れた参加型交流を継続してきたことで、住民同士の横のつながりができてきました。ただ、この段階では、PDCAサイクルは完全ではありません。

 物語は第2章にバージョンアップしていきます。第1章「学びのカフェ」では、触れ合い、リラックスを重視していましたので、講座内容は主に楽しいメニューばかり行いました。しかし、第2章では、グループワークで地域課題を発見し、その解決に向けて取り組んでいきます。参加者は、主体性を持ち、意欲的に事業の企画・立案を行うようになっていきます。そして、ここで名前も、「学びのカフェ」から、「地域ジン学びのカフェ」へと変えていきました。そして、ここでついに、「地域ジン」の誕生ということになります。「地域ジン」の「ジン」とは、人のことです。共通の仲間意識を持ち、新しいコミュニティーづくりを目指していく集団の愛称です。各自が責任を持った活動を行うため、「地域ジン」名刺、Tシャツ、うちわ、のぼり、最近ではテーマソングが出来上がりました。そして、講座・講演の演題幕は、「地域ジン」による手作りです。アイデンティティー、主体性、仲間意識を打ち出していきました。知性と感性を共有して、おしゃれ感を出し、好感度アップを目指していきました。

 こちらは、先ほど紹介したテーマソングです。タイトルは「DAKARA KONOMACHIGASUKI」。まちの良さが伝わってくる曲にしました。「学びのカフェ」、初めと終わりにこの曲を流しています。この曲がまちのあちこちで、例えば、郵便局、信用金庫、スーパー、駅のホームにおり立ったら、流れていたら、すてきなまちだなあという思いを込めて、作りました。
 それでは、活動の様子を少し御覧ください。これは紅茶講座の様子です。講座の様子。どんどん前に出て、発表していきます。地元の人材発掘も、たくさん行いました。そして、中学生の参加もあります。「学びのカフェ」で学んだ「地域ジン」が、いよいよ、まちに向けて動き始めました。くばミシュラン? いえいえ、「くばミシラン ガイドマップ」です。自分たちのまちを見知らないので、こういうマップ作りに乗り出しました。これは地域デビュー講座グループワークの中で「地域ジン」によって発案され、まちの飲食店の活性化のため、地元の商店に取材に行き、店を紹介する、オリジナルマップを作りました。このマップを利用して、1か月のスタンプラリーを行い、公民館での抽選会を行いました。このことが、まちの人々に地元の商店を知ってもらう、きっかけとなりました。200人が公民館にやってきました。

 それでは、第2章「地域ジン学びのカフェ」の成果をお話しします。まず一つ目、ネットワークが広がりました。企業、自治会、学校など、多くの団体と連携・協力が可能となりました。二つ目、地域デビューを行うための入門・計画・実践を行っていきました。団塊世代の定年戦略も学び、男性の受講者もこのあたりでどんどん増えていきました。住民の方の地域課題への関心が、ここで高まっていきました。通常、公民館活動は、8割が女性です。このあたりで、地域課題への関心ということで、男性が8割という逆転の現象が起こりました。これは、まちづくり、まちおこしへ、大きな力となっていきます。三つ目、「地域ジン」同士の仲間意識が高まり、公民館とともに頻繁にミーティングが行われるようになりました。事業の企画・立案ばかりでなく、事業実施後にも、振り返り、見直しを行い、「地域ジン」と公民館による学びのPDCAサイクルが回り始めました。

 第3章、「地域ジンまちカフェプロジェクト」が誕生していきます。これは、3年目、4年目、5年目と、続いていきます。このプロジェクトは、まちを元気にすることに意欲的となった「地域ジン」が、公民館とともに様々なイベントを企画していくものです。このプロジェクトは、地域丸ごと巻き込み作戦を行い、まちを元気にすることを目指しました。「まちカフェ」レトロ体験イベントを開催しました。内容は、ふるさとお宝写真館、そして、地元の講師による、ふるさとリレー講演会。そして、まちに新名所、うだつがたくさんあるところを「うだつストリート」と名付け、そこを散策しました。マップ片手にレトロファッション、マップも作りました。さらに、まちの空き古民家にてカフェを行い、蓄音機コンサートを行いました。蓄音機の講師をお呼びして、蓄音機で、美空ひばりとか、昔の曲を流して、行いました。参加者は、スタッフ、みんなレトロな服装でまちを練り歩き、昭和レトロムードで盛り上がり、多世代交流の大イベントとなりました。地元の歴史や文化を知ることで、ふるさとを愛する心を育み、まちの良さを再発見してもらうことができました。

 それでは、「まちカフェ」体験イベントの様子を御覧ください。これは2階の研修質での講座の様子です。中学生が、いっぱい参加しています。地域の方も、レトロな格好でこの日はやって来ました。これがテーマソングです。ここが公民館の前です。そして、うだつがいっぱいあるまちがあって、そこを「うだつストリート」と、新名所を作りました。そして、ここが空き古民家。空き古民家を「まちカフェ」、コミュニティーカフェをつくりました。そして、ここの中で蓄音機コンサートを行いました。
 「地域ジン」がまちづくりへと乗り出していく様子は、地域の子供や若者たちの心を動かしていきます。私たちも「地域ジン」の一員と、「まちカフェ」イベントの企画に名乗り出てきました。このことで、更に地域を巻き込む大イベントに発展しました。まちの大人が変われば、子供が変わっていきます。玖波中学校とは、平成23年から、地域連携、「玖波スクラム」を組んでいます。公民館、学校、地域の連携をとるため、このようなことを4年前に始めました。「玖波スクラム」とは、学校の文化祭には公民館が乗り込んでいきます。そして、いろんな発表をしたり、部屋を使ったりして、宣言していきます。そして、公民館のお祭りには、中学生がこのようにスタッフとしてやってきます。何十人もやって来て、スタッフになります。これは地元の住民の様子です。こちらは観客の方なのですけど、かなり盛り上がっています。発表の人より、観客の人が本当に主体的に。中学生がこのように飛び入りで参加して、アドリブで踊っています。多世代交流ができてきました。
 「地域ジンまちカフェプロジェクト」の成果です。レトロマップが完成し、新名所「うだつストリート」が誕生し、空き古民家の活用を行ったことで、まちの良さを再発見することができました。さらに、「中学生地域ジン」の誕生により、学校と地域のつながりがより強くなり、多世代にわたって交流できました。まちの活性化につながってきました。この「まちカフェ」、たった一つの自主講座なのですけど、お祭りでも何でもないのですが、その日、300人が集まりました。

 物語のまとめに入ります。まず、事業全体の成果です。平成20年、何でもない、本当に廃れた、やぼったい公民館、貸し館状態のときに、年間の自主事業、1年間で220人でした。そして、「学びのカフェ」を始めて3倍になり、「地域ジン学びのカフェ」を始めて1,879人に膨らんでいきました。それから、26年、翌年には2,286人、27年には3,000人を超えました。これは、公民館の来館者ではなくて、「学びのカフェ」という事業、講座を受けに来る人たちの人数です。どんどん増えていきました。それから、事業におけるネットワークの構築。協力・連携団体は、21団体もの連携となりました。そして、情報の積極的発信。フェイスブック、ブログを更新。あくまでも、紙媒体、公民館だより、市広報がメーンで、プラスアルファで、フェイスブック、ブログを活用して、行ってきました。

 「学びのカフェ物語」がもたらしたもの、それは、ひとが変わり、まちが変わったことです。公民館が核となり、地域課題を見付け、その解決に向けた取組を行ったことで、地域のネットワークが生まれ、地域住民を主体とするまちづくりが行われました。このことで、これまで全く公民館に来ていなかった新規来館者が大幅に増え、それと同時に「地域ジン」が誕生し、物語の中で自分の役割を見付け、まちを元気にすることに主体的に取り組みました。そして、その姿を見た中学生が自ら「地域ジン」の仲間に加わるなど、地域の新しい担い手が育つ土壌となりました。そして、一番大きなこと、それは、ふるさとを愛する心が芽生えて、まちが輝いたことです。忘れかけていた自分のふるさとを愛する心がみんなに芽生えて、玖波のまちのすばらしさがよみがえったことです。まちの人々に自信と誇りを持っていただくことができました。これが、一番大きなことだと思います。物語は3章まででしたが、続いていきます。4章、5章と、続いていきます。まだまだ目が放せない、「地域ジン」の動きです。
 今年は「くばコレ」。今年は、「くばコレプロジェクト」が立ち上がりました。「くばコレ」、パリコレに負けません。これ、市長です。リハーサルをします。大竹の名産は和紙なので、和紙の服とかも加わりました。地元のいいものをたくさん、こいのぼりも取り入れました。リハーサルの様子です。中学生です。これは公民館のロビーです。
 これが「くばコレ」の様子です。当日の様子です。パリコレに負けません。小学生も参加。モデル募集をして、180人が応募してきました。地域のまちを歩いている、おじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃんが、モデルとなります。地元の信用金庫の人、郵便局の人、普通に歩いている方々が、きょう1日は主役です。あなたがモデル。ひそかに練習を重ねていた着付けの人たち、目隠し着付けショーも行いました。そして、着ぐるみも登場。たくさんの地域の人々が、この日はみんなが主役になって、集まってきました。公民館の体育館です。300人が登場して、まちのあなたが輝いた、感動の1日でした。
 どんなに社会が変っても、変っていけないものは人と人のつながりで、その人と人をつなぐための学び。さらに、まちづくりへ向けて、学んだことをどのように地域に生かして、地域の力にしていくかなど、行政の立場も踏まえながら、でも、地域目線で、地域の見方で、行っていきたいと思います。公民館が大好きです。
 以上が、玖波のまちを舞台にした物語でした。玖波のまちに笑顔がいっぱい増えました。だから、だから、このまちが大好きです。
 以上です。御清聴いただきまして、ありがとうございました。


【明石主査】 

 河内さん、ありがとうございました。非常に興味深い事例でした。
 ちょっと、私の方から、質問させてください。急に変わったのですよね。今から4年前に変わった。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 5年前に。


【明石主査】 

 5年前で、それは河内さんが主事になったからですか。それとも……。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 5年よりももっと前に私もいましたけど、まちをいろいろずっと見てきて、改革をしようと思ったのが、5年前です。それまで、いろいろまちを何年か見て、考えてきました。


【明石主査】 

 そのきっかけは何なのですか。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 きっかけは、ここで変えたいというふうに思いました。本当に、ださい、暗い、やぼったい公民館をちょっと変えていきたいということと、公民館が、マンネリ化して貸し館状態になってきて、カルチャーセンターみたいになってきて、でも、そうじゃなくて、本当に公民館の良さに戻したくて、そうじゃない、公民館の役割はもっと違うんじゃないかなということで、5年前に変えようと思いました。


【明石主査】 

 それは河内さんが玖波公民館に勤めて何年目なんですか。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 4年目です。今、5年間やってきましたので、4年目に思いました。4年間、地域をずっと見てきました。


【明石主査】 

 そうすると、公民館主事というのは、10年ぐらいの経験が必要でしょうかね。将来、人事を行う場合に、どのくらいいた方がいいのかというのは非常に大事な問題なので。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 ちょっと長いかもしれませんけど。


【明石主査】

 地域を知るのに4年かかるということを言った。その辺を出してくれると、今後の議論がしやすくなる。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 そうですね。実際には3年ぐらい、地域をしっかり見てきました。


【明石主査】 

 二つ目は、男性が物すごく増えていますよね。ですけど、さっきの公民館祭りではほとんど女性だったのですが、男性はどこにいたのでしょうかね、公民館祭りでは。


【大竹市(河内社会教育指導員)】

 通常は女性主体なのですけど、そういう講座、いろんな講座、タイムリーな講座を行っていく中で、男性がどんどん増えていきました。例えば、防災とか、防犯とか、マイナンバーの秘密とか、いろんなタイムリーなものを入れていく中で、男性がどんどん増えていきました。


【明石主査】

 例えば2012年に10回のカフェをやっていますけれども、このカフェで男性が増えた講座というのがもし分かれば。一番悩んでいるのは、男性の方にいかに公民館に来てもらうかというのを物すごく悩んでいるのですけれども、こういう講座を組めば男性が来てくれるというのがあれば。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 急に増えたのは、地域デビュー講座というのを行いました。団塊の世代の男性が定年にちょうどなる頃に、肩書が翌日から全部外れていく、それまで会社とか組織の中の方が翌日から普通の人になっていく、そこで「よろいを脱いだ男たち」というのを行って、今一番、能力もあり、力も、体力も、全部ある、そういう方々に、今度はその力をまちに向けて発揮していただきたいということで、男性、おうちにくすぶらず、まちに向けて何か活動をしましょうみたいな講座を、3回講座で行いました。そうしたら、男性が結構増えました。


【明石主査】 

 ありがとうございました。
 では、最後の、なかなか難しい中学生が参画していますよね。これは、生徒会と協働したのか、中学校のサークルというか、部活動がありますが、部活動と連携したのか、それとも、学校の先生方等の援助があったのか。どういう形をとれば、中学生が公民館の活動に参画してくれますかね。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 通常、イベントだから中学生が何人要るからとかって学校に頼むとか、そういう形だとその日だけで終わってしまうので、そうじゃなくて、やる前、企画段階から、すごく前から、学校とではなく、中学生の子たちとつながっていって、そして、その中学生が生徒会にかけてくれるのですね。お話を持っていってくれて、学校の生徒会で生徒に呼び掛けていただいて、それから先生に報告するという、ちょっと逆バージョンだったのですけど、そうしたら、中学生が、人だけ、人数だけ欲しいんじゃなくて、その子たちがいかにまちにかかわることで成長していくか、中学生の人たちが学んで、その子たちのためになるような、そういう一緒の仕掛けで、すごく早い段階から、企画から一緒に入ると、中学生は、自分たちがやっている感が出て、自分たちの企画なんだというふうに思っていろんな意見を出してくださって、それをつぶさず、中学生の意見をいっぱい取り入れたイベントにしていくと、中学生が、わくわく、どきどき、盛り上がりで浮き浮きしてくるという、そういう形になっていったので、学校の校長とは最後でした。


【明石主査】 

 ちょっとお聞きしたいのですけれども、いわゆる俗に言う一本釣りですよね。一本釣りする方法としては、フェイスブックとかブログという形で中学生はヒットするのでしょうか。要するに、生徒会とか部活動じゃなくて、一人一人に刺激を与えますよね。どういう形ですれば、反応があるのでしょうかね。


【大竹市(河内社会教育指導員)】

 誰々さんって決めてお願いしたのではなくて、「地域ジン」という、地域がすごく盛り上がって頑張っていたら、中学生がそれを見て刺激を受けて、とにかく大人が頑張ってやっていたら、子供に余波が行って、子供たちの方から、何かやりたいということに、たまたまうまく流れていきました。


【明石主査】 

 ありがとうございました。
 ほかに何か、御質問、御意見ありましたら。
 どうぞ、関委員。


【関委員】 

 今の発表、非常に興味深く聞かせていただきました。ありがとうございます。先生の今の質問ともかぶるのですが、子供との関係というのは、中学生になって、そこで初めて関係性が生まれたようなパターンの子供ですか。あるいは小学校のときからずっと?


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 ありがとうございます。小学校の頃からこういうイベントに参加していただくのですけど、主体性を持って一緒に、企画とか、こういう会議とかミーティングで意見をしっかり述べていただくのは、小学生ではちょっと難しいかなと思います。イベントに参加はとっても効果的ですけど、一緒に考えて何とかしよう、まちを動かそうみたいな、中学生とだったら結構対等にお話ができて一緒に盛り上がることができましたけど、個人の中学生と仲良くなっても、その中学生は卒業していきますので、また白紙に戻ります。学校の校長先生、教頭先生も異動してしまいますので白紙に戻るので、個人の人たちとそこでつながるのではなくて、ずっと長い目で、絶対、気を抜かず、手を抜かずみたいな、一度仲良くなったから、こちらのお願いはとか、そういうことではなくて、常に常につながっていく何かアクションを起こしてないと難しいです。


【関委員】 

 地域のことが本当に好きになったら、その子供は恐らくずっとその地域と関わってくれるのかなという、我々も期待をいつも抱いているのですが、もう1個だけ。ちなみに、河内さんの立ち位置は、どういうふうな立ち位置で仕事をされるのですか。非常勤職員ですか、正規職員ですか。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 正職員ではなくて、今は専門員という形で、社会教育指導員ではないのですけど、社会教育専門員ということで、嘱託職員という形です。正職員ではありません。でも、たった一人の、常駐一人という残酷な状態なのですけど、予算もない、人もないという苛酷な状況で、サボテンのような状態で。


【関委員】 

 そこから掘り起こしたのであれば、本当にすばらしいことだと思います。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 ありがとうございます。


【明石主査】 

 あと1人ぐらい、いかがでしょうか。
 では、牧野委員。


【牧野委員】 

 どうもありがとうございました。前にもちょっと伺って、とても興味深かったのですけれども、今、中学生が話題になりましたので一つお聞きしたいのですが、実は、私たちの調査で、15歳までに地域でとても大事にしてもらった子供たちは、40歳以降、一生懸命、地域のために働いているという、相関関係があることが分かってきているのです。大竹市の場合、まだ時間的にあまり経っていないので確定的なことはいえないかも知れませんが、「地域ジン中学生」が誕生してから、中学生と大人との関係が変わったとか、日常的に地域の大きな人間関係や行動が変わったといったことがもし何かありましたら、感じだけでも結構ですので、少しお話いただければと思います。いかがでしょうか。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 地域の子供たちが、今まで自分の住んでいるまちの歴史とか、ふるさとの良さ、そういう全く気に留めていなかったものが、こういうことによって子供たちが自分たちのまちを改めて好きになったというか、地元の通りの良さとか、まちの良さって、学校の授業では習わないので、地域が教科書となって子供たちにすごく伝わっていったのではないかというふうに思います。今までは何でもないまちだったのですけど、こういうつながりによって、今、牧野先生がおっしゃっていただいたように、そこでしみつくと将来的には、自分のまち、ふるさとを好きになるという、そういう気持ちが芽生えたというふうなことは実感しました。


【牧野委員】 

 ありがとうございます。


【明石主査】 

 ありがとうございました、貴重な御発表を。
 どうぞ。


【石川社会教育課専門官】 

 事務局から1点質問をさせていただければと思うのですけれども、5年前に大きく変わったということで、もちろん、先ほど残酷な体制ということがありましたけれども、その以前と比べて、その以後で、公民館の中で体制というか、地域住民との関わりの体制が変わったとか、若しくは、例えば地域住民が公民館に参画する、そういったシステムであるとか体制が変わったとか、そういったことがあれば、教えていただければと思います。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 それまでは、公民館がマンネリ化して、同じメンバー、同じ顔ぶれだったのですけど、今は、本当にいろんな方が毎日のようににぎわって、とにかく公民館が拠点となってきているのがちょっと変わったかなというのと、場所ではなくて、建物のことじゃなくて、本当に建物はぼろぼろで、ひび割れていて、すごいんですね。でも、そんな建物のことじゃなくて、心の拠点みたいな、そういうふうなみんなが、一度というか、1日に何回も何回も公民館に来てくださるような、そういう、人の流れが変わったと思います。


【石川社会教育課専門官】 

 なるほど。地域住民の方で誰か、引っ張っていただくリーダーとか……。


【大竹市(河内社会教育指導員)】 

 「地域ジン」の中からリーダーがすごく生まれてきて、まちを引っ張るように、あくまでも、公民館がじゃなくて、地域の人が主体ということでやるように、意欲的に変ってきました。


【石川社会教育課専門官】 

 ありがとうございます。


【明石主査】 

 ありがとうございました。
 では、引き続きまして、松江市玉湯公民館の池田様、御発表をお願いいたします。


【松江市(池田主任)】 

 失礼します。松江市の玉湯公民館の池田と言います。今日は、貴重な時間を頂きまして、ありがとうございます。15分でしたか、限られた時間ですけれども、本事業の取組を御覧いただければと思っております。
 それでは、早速、説明をさせていただきます。今日の発表ですけれども、青少年の活動ということで、青少年が地域活動に参画することで地域の活性化と自己実現を達成する様子、それから、公民館が、活動の受皿、居場所として役割を果たしているというところを見ていただければと思っております。対象は若者という形になりますけれども、大きく言えば、地域住民全般という形になります。連携先としては、地域の諸団体、青少協や子供会、それから自治会といったところですね。そのほかにも、観光協会とか、NPOとか、いろんなところと連携をしております。あと、学校、家庭ですね。それから、行政との関わりですけれども、松江市の公民館の場合は公設自主運営方式ということで常勤職員がおりますので、余り手を借りてないというか、財政・施設的にはもちろん力を借りている状態なのですけれども、地域の特色ある取組を行うということで、これこれの関わり程度という形になっております。
 本日の内容ですけれども、青少年育成からざっくり見ていただいて、それから高校生以上の地域のボランティア活動というのを見ていただいて、まとめという形にしていきたいと思います。

 まず、地域資源ですけれども、松江市の南に玉湯町は位置しておりまして、教育資源としては、中学校が1校、小学校が2校、幼稚園、保育園が二つずつという形になっております。

 松江市の公民館の概要ですけれども、指定管理制度の公設自主運営方式という形で運営をしております。職員体制は4名ということで、松江市非常勤特別職の館長と、常勤の職員が3名おります。職員は地域の運営協議会雇用の職員という形になっております。
 玉湯公民館ですけれども、ちょっとこのあたりは飛ばして、昨年度、改修もあったりしまして、4万人ぐらいの利用があるかなと思っております。
 公民館の組織ですけれども、六つの専門部で活動をしております。それぞれ地域課題の解決に向けて取組をしておりますけれども、特徴としては、運営委員のほかにも、専門部員という形で、それぞれボランティアの方に関わっていただいております。

 青少年育成について、話をしていきます。まず、玉湯の青少年育成ですけれども、学校や諸団体と連携して、地域の個性を生かしたふるさと教育というところをモットーにしております。スタッフ、参加者が楽しく活動ができるということも、一つの大きな目的です。

 具体的な活動ですけれども、子供会連合会の活動で、家族ふれあい・ふるさとものづくり教室というのをやっております。これは、地域の資源や人材を活用した体験活動、小学生を対象にした活動なのですけれども、地域でとれたソバを使ってそば打ちをやったり、有名な窯元がありますので、そちらで指導を受けて陶芸体験をしたり、それから、地域のウオーキング大会をやったり、障害者の施設でパン作りを教えてもらったりということをやっております。夏休みの期間に、二つの宿泊研修をやっております。
 青少年育成協議会ですけれども、メディアと上手に付き合って、家族の団らんの時間を作りましょうというキャンペーンをしたり、それから、社会教育諸団体連絡会といって、年に1回、社会教育関係の団体が集まって情報交換をしたり、次年度の行事の日程調整をして児童生徒が参加しやすくするということも、特徴的な取組です。あと、青パトですね。これも、県内有数の数じゃないかと思っております。
 玉湯町の青少年育成ですけれども、小学校、中学校、高校と、発達段階に応じていろいろな体験を、意識をして取り組んでおります。小学校には、いろんな体験をするということ。中学生になるとそういった活動の手伝いをしたりとか、高校になると、更に将来について考える時期になるというような形で、ステップを踏んでおります。
 今、御説明したように、玉湯町では小さい頃から地域のいろんな体験活動というのを強く意識して取り組んでおりまして、そういった活動が、高校生のボランティアサークルといいますか、ボランティアグループの立ち上げにつながったと考えております。
 「たまゆメンバーズくらぶ」と言いますけれども、こちらは、地域のいろんな活動への参画を通して、地域の活性化と自己実現を目指しているグループです。高校生以上ということに原則しておりまして、今、148名ですね。学校を卒業した人や県外へ転出した人なんかも含めていますので、こういった数字になっています。現役の高校生としては、33名ですね。ちなみに、中学校は1学年50人ぐらいですので、大体1割から2割ぐらいが参加しているという計算になります。

 公民館の位置付けとしては、公民館の青少年育成部がサポートをする形になっておりますが、主には主体性を育むためのサポートということを意識して、大人としては取り組んでおります。

 結成のきっかけですけれども、平成17年に今の公民館長が就任いたしまして、文化祭は、非常ににぎやかだけれども、若者の姿が少ないということを感じたようです。で、翌年に中学校に模擬店等で文化祭に参加してみませんかということを呼び掛けたところ、学校の方から、2日間あるうち、1日目を出校日、2日目をボランティアとして参加させましょうという形をとっていただきました。模擬店の出店や、発表、イベントのサポートを、それからしていただいております。今では、先ほど御説明した、幼稚園、小学校、中学校、保育園もですけれども、全て、地域の文化祭の初日が出校日となっております。
 文化祭に参加した生徒は、大変だったけれども、地域の方々と触れ合って、本当に楽しかったということ。それから、地域の方々は、中学生の姿がすごく良かったと、見る目が変わったという印象を持ったようです。文化祭で地域のために活動することで、今後もふるさとのために役立ちたいということを感じて、ボランティアクラブ「たまめん」を結成しました。月に1回、定例会というのをやっていまして、そこで行事の計画や振り返りというのを自由な雰囲気でやっております。
 入会の流れですけれども、中学校3年生の卒業前にメンバーと公民館が学校に出向いて、入会の説明会をやっております。中学生、小学生からいろんな活動に関わっていますので、よく知っていると思うのですけれども、学校に行って改めてこういう機会を設けております。歓迎のパーティーは、ボランティア、サポーターの人とも一緒にやっております。
 活動の理念としては、三つの柱というのを立てております。自分たちが楽しみながら、地域貢献、自己実現をしていくということが、自分たちが立てた目標です。

 活動の呼び掛けはどういうふうにしているかということですけれども、主に、グループメールとか、はがきとか、LINEですね。とにかく、いろんな手段をとって、必ず目に届くようにしております。先ほど148名とお伝えしたのですけれども、県外に進学したり、就職したりした子たちにも活動の様子を知らせたり、保護者の方にも興味を持っていただいたりとか、帰省したときに参加をしてもらったりということも考えて、退籍はせずに、籍を残しております。こうやって、活動の様子を写真で知らせたりとかもしております。

 主な活動ですけれども、主催事業として、星空観察会というのをやっています。こちらは、ふるさとの自然に親しんで、家族や友人との親睦を深めるという目的でやっております。100人ぐらい参加する行事です。自分たちでレクリエーションを考えたりとか、日が暮れるまで時間がありますから、夕食を用意したりとか、そういうことも高校生たちがやっております。
 合宿ですね。青少年リーダーの資質を高めるために自分たちも勉強の機会を持とうということで、例えば、小・中学生に指導するレクリエーションの内容をやったり、勉強をしたりとか、あと、地域巡りをやったりとか、地域の方と接する上でのコミュニケーションのとり方とか、そういった勉強会を年に1回やっております。一番は、公民館に寝泊まりして、夜遅くまで騒いでというか、親睦を深めるということを目的にしています。
 こちらは勉強会ですね。これは、高校生たち、学校生活はいろいろ忙しいですので、そういう中でも活動に参加してもらえるようにということで、企画しました。勉強会といっても、小・中学生が勉強するのを見守るという形ですね。終わった後は、かき氷を食べたり、ゲームをしたり、親睦を図っています。
 公民館で一番大きい活動である文化祭ですけれども、文化祭に当たっては、最初のところで、中学校に地域活動の意義というのを我々の方で説明します。それから、模擬店をやるのに、試作会というのを前の週にやって、それから、中学生たちが不自由なく作れるようにサポートをしております。もちろん、大人のスタッフが、食品の扱いとか、礼儀作法、コミュニケーション等を指導していくということも、大きな狙いです。模擬店の運営では、このように、もう9年になりますので、大人顔負けの形で仕切ってくれています。サポートだけじゃなくて、自分たちの趣味・特技を生かして地域を盛り上げようということで、ダンスとかバンドをやったりしています。
 そのほかに、先ほど見ていただいた子供会活動への協力ということで、スタッフとして協力してもらったりしています。先ほど説明した宿泊研修には、小学校4年生対象の宿泊研修があるのですけれども、こちらには、4年生51人のうち、49人が参加しました。中学生が24人、そこにスタッフとして参加してくれて、小学生の活動を中学生・高校生がサポートするという、そういう流れができているのかなと思っております。そのほかにも、地域の観光協会のイベントですとか、いろんな社会貢献活動にも取り組んでおります。
 他地区との交流ということで、松江市内のいろいろな地域のボランティアグループとの関わりですとか、あと、県内のほかの地域のボランティアグループの立ち上げ等のお手伝いもさせていただいたりしております。

 このように高校生たちが熱心に取り組む理由としては、三つのポイントがあるかなと思います。交流の場、社会経験の獲得、地域への愛着ということで、先ほどお示しした三つの柱というのが大きなポイントかなと思っております。

 高校生たちだけでこういう活動はできませんので、やはり、それぞれの立場で活動の意義を十分理解することが大事かなと思っております。特に学校は、地域に生徒の状況を知ってもらう機会ということですね。あと、生徒たちが活動に関わることで、成長して帰ってくるということ。地域としては、単純に青少年との触れ合いの楽しさとか、伝統文化の継承。家庭としては、自分の子供が生き生きと活動する場ということで、非常に協力的に関わっていただいております。
 こういった意義を感じていただくために、小学校のPTAでの説明会をしたり、自治会の総会で公民館活動に関して話をしたり、あと中学校に、こうやって研修会で地域活動に関するグループワークをやったりしております。
 地域の方々には、サポーターズと言って、青少年をサポートする立場で関わっていただいております。
 全体への呼び掛け以外にも、キーパーソンを見付けて、そちらにアプローチをしていくということ、広報を継続的に行うこと、こちらも大事かなと思っております。お手元に配った広報ですけれども、これも自分たちで作った広報です。
 そのほかには、持続可能ということで、いろんな方々に活動の意義を十分に理解していただくこと、それから、財源を確保すること、補助金に左右されないということ。活動は強制ではないのですけれども、メンバーの意思を尊重して、企画内容や時間帯を工夫したり、魅力的な活動を展開する、これが大事かなと思っております。中でも大切にしておるのは、楽しさということですね。青少年世代がどういうことに楽しさを感じるかということを活動にちょっとずつ盛り込んでいくということが大事かなと、心掛けております。

 成果としては、自主運営に移行した後にも絡んでくるのですけれども、事業参加者はこのように増えております。これは、青少年活動の意義というのを地域のいろんな方々に知っていただいたということもあるかなと思います。そのほかにも、公民館に小学生・中学生とかが放課後になると遊びに来たりとか、勉強したり、図書館に来たりとか、日常的に憩いの場という形に定着をしております。

 先ほど見ていただいたのですけれども、支援者や参加児童保護者というのは、非常に好意的に捉えていただいております。
 メンバーとしても、活動に参加することで、自分たちの成長を非常に感じているということがあります。高校を卒業して社会人になったりすると、「たまめん」の活動に参加することで、いろいろな自分たちの経験を積んだりとか、社会に出ていくための専門的な経験を積むということも、最近は進んでおります。こういったまちづくりの会社に就職したりということも、メンバーの中から出てきております。
 これは公民館のロビーに飾っているのですけれども、地域の方々が青少年やふるさとへの思いをこういうメッセージカードに書いて貼っていくという、そういう記念製作を作っております。300枚ぐらい、今、貼ってありますかね。中には、「たまめん」への期待ですとか、地域への愛着ということが、たくさん記されています。
 取組を通して、これは先ほど説明した部分と重なりますので少し飛ばしていきたいと思いますが、最後のところですね。きょう呼んでいただいた部分ですけれども、青少年育成に焦点を当てていくと、やはり若者が地域と関わる機会を継続的に作ることかなと思っております。どの公民館でも、中学校卒業後はなかなか、公民館、地域との関わりがなくなってしまうということが、口々に言われます。そういったことを、卒業しても、引き続きキャッチアップしていくということが大事かなと思っております。そのためには、保護者世代へのアプローチも必要かなと思っております。
 主体性ということがあります。高校生や大学生、社会人になって、いきなり責任ある立場につくということではなくて、いろんな体験活動を通して、自分たちで考えて行動するという習慣を幼少期から付けていくということが大事かなと思います。役割を任せたり、頼ったりすることで、承認欲求といいますか、自分たちが必要とされているのだということを感じられることも大事だと思っております。
 公民館が、若者が定期的に立ち寄れるような場所としての機能を持つことが大事かなと思います。
 公民館職員は、社会教育主事という資格はもちろんあるのですけれども、青少年指導者としての経験も積んでいくべきかなあと思っております。どういった資格があるかというのは余り詳しく存じ上げないのですけれども、若者と関わる上での必要な資質というのを、資格取得したり、そういった研修の場を公民館職員自ら積んでいくことが大事かなと思っております。
 主体性ということを言ったのですけれども、青少年に丸投げするだけじゃなくて、一緒に活動したり、一緒に達成したり、そういうコミットできる人材というのが公民館として必要かなと思っております。
 学校や地域との連携としては、地域と学校が定期的に対話の場を設けるということと、今、学校支援地域本部等、いろいろありますが、地域資源を学校教育に生かすということはやっているのですけれども、逆に学校教育を地域に還元するということはなかなか見られないというのを、正直思っております。そういった部分で、学校側がもっと理解して、地域の貢献しようという学校を育てていくことが必要かなと思っております。
 以上になります。ありがとうございました。


【明石主査】 

 池田様、公民館を中心とした、中・高校生の活躍の姿が見えてきました。
 井出委員、ゆう杉並というか、杉並の中・高校生のたまり場が全国で有名なんですけれども、是非、この発表をお聞きして、突っ込みをお願いします。


【井出委員】 

 今、最後の指摘のところで、学校を支援する取組というのは分かりやすいから、全国的にも学校支援地域本部とか地域学校協働本部とかという形で制度的に広めていこうという動きがあるけれども、反対に学校から地域に何ができるかということって、意外とないのですね。私たち杉並区の教育ビジョンは、「いいまちはいい学校を育てる」。これは地域が学校を支えていくということで「学校づくりはまちづくり」という、もう一つのものをセットで目標にしているのです。ですから、学校が地域から支えられるというだけではなくて、学校と地域の関係を、学校をつくっていく、あるいは子供を育てていくという活動を通して、そこで得られた新たな社会的資源のようなもの、人間関係資源のようなものを地域にもう一遍還流させていくというところを目指しているのです。
 今、明石先生の方から御指摘があった、ゆう杉並というのがあるのですけど、ここは、学校が地域を支えるというよりは、地域を支える取組を学校が直接するのではなくて、間に青少年を挟んで、青少年が自分たちの地域のことを自分たちで考えていく。そのとき一番中心になるのは、地域の課題といっても、子供たちに直接的には余り実感はありませんから、遊び場の問題であるとか、環境の問題であるとか、いろんな行事にどう関わっていくのかということなんかも、その辺が身近なものになってきていて、ただ集まって余暇を過ごすということではなくて、過ごすことを通して得られた人間関係の中から、身近な環境について考えていこうとか、それから、小さな子供たち、乳幼児の遊びについてお手伝いをするとかというようなところまで育ちつつある、かなりいい線行っているのです。

 ところが、ここのところは大人には非常に分かりにくいところなのですね。今も、新しい、ゆう杉並の次の入れ物をつくろうという議論をしているのですが、そこにこういう話もあるのです。行き場所のない子供のために居場所を作ってやるというのはよくないと。つまり、もっと簡単に言うと、ひきこもりの子供や学校に行かない子供たちのために居場所を作るというのは非生産的だという考えも、まだ根強くあるのですよ。考えられないかもしれないのだけど、結構根強い考えなんです。なぜかというと、言ってみればプータローの居場所を作ってやる必要はないという、これ、聞きようによってはとんでもない響きがある。信じられないでしょう。でも、大人にはそういう部分、つまり、社会の中で善なる立場として存在しているものについては、時間とか、お金とか、空間を積極的に提供していくけれども、ひきこもりとか、居場所がないとかっていう青少年のために何かを提供していくということは非生産的だという考えはまだある。これを何とか変えていきたい。

 今、お話を伺っていて、子供たちの自主性を育てるためには、自主性を持ちなさいと言って育てていくわけじゃないから、いかにそこで自立的な活動ができていくかということを、お金と時間と居場所を提供しながら、その見返りを求めないで我慢して育てていくというのも大事かなと、改めて思っているのです。最初の発表のところでもそうでしたし、今のお話をそうですけれども、学校というのは意外と保守的で、支えてもらうことについてはウエルカムだけど、学校を地域に出していくというのは余りウエルカムじゃないのですね。それは多分お分かりかと思うのですが。そうすると、どうやって中学生を参加させたのか、最初のお話のときに、学校に頼むではなくて個人に呼び掛けるのだという話があって、その個人を根付かせるためのネットワークをどう作っていくのかということで、説明を受けました。多分、この取組も、学校が学校の教育課程の中に位置付けてあるからやるのだという形でやっていけば、必ずどこかでなくなっていく。だけど、自立的なものとして支えていくのを我慢していけば、今度はそれが、自己成長していくというか、自転を始めるのですね。自転を始めるまで、大人の社会、地域社会が我慢できるかどうか、というのは、結構気長にやる必要があるかなと。私たちは、そういったものの、そんなこと言わないで、もう少し長い目で見守っていく必要あるでしょうとかっていうのは行政の役割で、金を投資しても成果が得られないから事業の見直しをしていきましょうって、よく出てくる話だけど、もっと我慢して、先ほどの、15歳まで、地域に関わる、地域に愛されて育った子供は、必ずそれが原体験になって、大きくなってから地域に関わるようになってくるというのが実証されますから、それまで我慢しなくちゃいけないのではないかといつも言っていることです。


【明石主査】 

 ありがとうございました。
 ほかに何か御質問はありますでしょうか。
 なければ、私から1点。玉湯公民館の活動は分かったのですけれども、松江市には公民館は何館あるのでしょうかね。多分、数多いと思うのですね。聞きたいのは、ほかの公民館はこれぐらい頑張っているのでしょうか。細かいことじゃなくて、大ざっぱに見て、ほかの公民館も、玉湯公民館に負けないぐらい、青少年の自立を育成するような活動をされているのですか、されてないのですかということをお聞きしたいのです。


【松江市(池田主任)】 

 松江市内に32館、自主運営方式の公民館があります。今、御質問にあった、青少年の活動はどのぐらいなさっているかということですけれども、実は玉湯は松江市内で2番目に誕生した青少年ボランティアグループでして、先輩に当たるグループが既に存在していました。八雲というところですけれども、そちらで中学校の教員をなさっていた先生が玉湯の中学校にいらして、文化祭への参加のきっかけとなったのも、その先生が大きな役割を果たしていただいたということになります。地域で言ったら、八雲と、玉湯と、島根町というところと、あとは宍道町というところにあります。これは主に中学生を対象にしたボランティアグループですね。八雲の場合は、我々の先輩ですから、大学生たちもいますけれども。おっしゃっているのは、中学校卒業後にどうやって地域の活動に関わらせるかということですね。高校生になっても継続して関わってもらうために、まずは中学生を対象にしたボランティアグループを作ろうという、長期的な視点でやっていらっしゃる地区もあります。我々の取組もいろんなところで説明させていただいていますけれども、聞けば、全国的にもそうだと思うのですが、地域の運動会ですとか、文化祭への関わりはあるのですけれども、それ以上のところはなかなか生まれにくいというところが、正直なところです。


【明石主査】 

 池田様は、公民館に着任して何年目なのでしょう。


【松江市(池田主任)】 

 玉湯公民館は7年ですね。以前は別の公民館に6年おりました。


【明石主査】 

 10年かかって、ここまで来ていますよね。そうすると、池田様の立ち位置というのは、どのくらいこの事業に携わっているのでしょうかね。


【松江市(池田主任)】 

 私が来るまでに既にこのグループはありましたが、立ち上げに関しては非常に苦労したということを伺っています。要は、文化祭に中学生が参加してもらったところから始まったのですけれども、中学生は非常に大変だったということで、翌年は、教頭先生から猛反対があったり、そんな大変なことはもう今年はやらせんということを言われたり、保護者の方にも模擬店のボランティアで関わってもらうのですけれども、保護者も2日間通して非常に疲れるのでもうやりたくないと言っているということも、言われたことがあるのですね。そこで、本当にみんなはやりたくないと思っているのかということで、いろいろ我々の気持ちを込めて、学校に行って中学生に説明しました。地域のこういった活動を一緒に頑張っていきませんかということを説明したら、翌年はほぼ100%参加してくれたのですね。保護者の方が大変だとおっしゃっているのですけれども、地域の60代、70代の方も一緒に活動していますので、そういった方々があなたたちの子供を育てようと必死になっているのに、自分の子供も育てられないのですかということを、うちの館長が言ったそうなんですね。それからは非常にポジティブに頑張っていただいているということです。


【明石主査】 

 館長さんは、非常勤ですけれども、どういうキャリアをお持ちなのでしょうか。


【松江市(池田主任)】 

 高校の校長を退職後館長に就任して、非常に青少年の活動には熱心ですね。


【明石主査】 

 ありがとうございました。

【井出委員】 

 先ほどの公民館と学校の関係を具体的な場面で見ていくと、例えば、学校の先生と公民館主事、社会教育主事がよく話をする場面ってありますか。多分、学校側からすると、学校の教育はメインシステム、公民館とか社会教育というのはサブシステムというふうに見ているのです。学校の先生はね。本当はそうじゃないのだけど、両方をうまく機能させていかなきゃいけないのだけれども、どうしても学校がメインで、地域とか、公民館活動とか、子育てとかっていうのはサブシステムだから、捉えようによっては、厄介なことというのが最初の感想なんですね。この厄介なことを厄介じゃなくて、ここをやったら先に進むんだというのをずっと私も言い続けてきているのだけど、なかなか厄介な壁を越えられない。最初に校長が越えちゃうと、あとの教員はそこになだれ込んでいくという形になるのだけれども、今、副校長がすごく忙しくなってきて、持ち込まれてくる話は厄介な話ばっかりで、そんなことやっていたら、今でさえ忙しいのに、余計、学校が立ち行かなくなるというのが、多分、一番素直な感想だと思うのですよ。そうすると、たまに物好きな教員がいて、じゃあやってみましょうかと言うと、そのときはぽこっとうまくいくのだけど、その人がいなくなると断ち切れになる。属人的な努力に寄り掛かっている事業というのは必ず、その当事者がいなくなれば、自然になくなっていってしまう。そこのところをうまくつなぎながら、継続していかなくちゃいけない。多分、その辺が一番、苦しいところというか、難しいところだろうと思うのですが、その辺の話を学校とするようなことはあるのでしょうか。


【松江市(池田主任)】 

 先ほどの玖波公民館の発表の方でおっしゃっていただいた部分と我々はちょっと逆でして、生徒に参加してもらうのに、学校を通して、いろいろ呼び掛けをしておりました。生徒会とか部活動の顧問の先生に相談をして、生徒に参加させていただいたりしておりました。学校というのは、管理職の先生によって、方針ががらりと変わります。これが大体二、三年置きにいろいろ起こってくるわけで、以前はよかったことが突然駄目になったり、いろんなことが起こっておりますが、我々の地区では、校長先生、教頭先生が替わったら、替わりしなに館長と地域の方々が一緒に御挨拶に行って、校長室で、玉湯はこういう取組をしていますから、よろしくお願いしますねということをお話しするのですね。それと、退職というか、管理職の方が替わられるときには必ず、次の先生にはこういう引継ぎをしておいてくださいということも、申し上げております。学校現場の先生方に管理職の先生方の指導というのがあると思いますので、そのあたりは注意をしております。それでも理解いただけないとき場合には、教育委員会の方に、地域がこういう活動をして子供たちを育てようとしているのだけれども、教育委員会の方針としては学校にどういうものを求めていますかということを求めたこともあります。そうすると、やはり学校としては、地域の方々の思いというか、おっしゃっていることが間違いなければ、聞いていただけるということもあるなと思います。


【関委員】 

 私は1点だけ。ちなみに、松江の学校はコミュニティースクール? 学校運営協議会を設置しておるところが多いのですか。


【松江市(池田主任)】 

 していますね。コミュニティースクールという表現をしているかどうかは知らないですけど、余りしてないかもしれないですが、ありますね。


【小曽根委員】

 最初に館の運営自体は指定管理制度によるというふうに伺ったのですが、青少年の健全育成とか、そういうのに指定管理を導入して、いいところ、悪いところ、その辺をちょっと教えていただければと思うのですが。


【松江市(池田主任)】 

 指定管理を受ける以前は町の教育委員会の主管だったわけですけれども、主に教育委員会の職員が仕事としてやっているという感じだったようです。文化祭とか、いろんな地域の行事にしても、役場の職員が全部、準備から何からお膳立てをして、地域の方々は参加するだけというような状況だったと、聞いています。それが自主運営方式になって、地域の方々が自分たちで地域を盛り上げようという気持ちを持っていただいて、いろんな準備とか、そういう運営面でも、非常に積極的に関わっていただくようになったと思っております。
 青少年に関しては、旧玉湯町時代には非常に手厚い予算が付いていまして、青少年育成については非常に熱心にやっていただいていました。そういった部分が自主運営に移行しても残っていて、地域の方々と一緒になって青少年育成を盛り上げようと、そういう昔からの文化というのが根付いているのが、こういう活動につながっていると思います。


【明石主査】 

 ありがとうございました。
 今、全国的に、指定管理を進めるところと、反対する地域もありますので、一つのヒントになる事例だと思います。ありがとうございました。
 田原さん。


【田原委員】 

 大変興味深く、先生の発表を聞かせてもらいました。ありがとうございました。
 ざっくり、私のイメージとして、その昔、地域に脈々と生きてきた、人の子も、うちの子も、真っ当に育てようよと、そういう気持ちが日本人にあった。日本だけじゃないかもしれませんが、あったものが、それぞれのアプローチでよみがえりつつあるというか、ちゃんと作っていらっしゃるのだなあと思って、大変感心しました。玖波の方では中学生を中心にという感じで、玉湯の方では高校生が中心ということ。それから、それぞれのアプローチが本当に違うのが、驚きでした。孤軍奮闘しながら長年かかってというタイプと、組織的にきちんとというところで、どちらもとても参考になって、すごいなあと思ったところでしたが、文部科学省の言っている生き抜く力とか、社会でそういうものを育てていくと、本当に生きる力になっていくし、こういうところで育った子供たちってひきこもりにならないよねえと思って、話を聞かせていただきました。私も教育の方に長年足を入れておりましたので、耳の痛い話もありながら、実感として、よく分かっています。
 一つ、玉湯さんの方で質問させていただきたいのですけど、「たまめん」結成前後のイベントの紹介の表が出たときに、家族ふれあい教室というのが6倍ぐらいに増えていたのです。家族ふれあいというのは、どんなものなのですか。ざっくりでいいですから、一言教えてください。


【松江市(池田主任)】 

 家族ふれあい教室というのは、最初の方のスライドにもあったのですけれども、地域の人材とか資源を活用した体験活動ということで、小学生や、その保護者を対象にした、体験活動です。


【田原委員】 

 ありがとうございます。親子でということですね。


【松江市(池田主任)】 

 そうですね。「家族ふれあい」という名前ですので保護者の方と子供と一緒に体験をしようという活動でやっていたのですけれども、実は希望がとても多くなったりした関係で、内容によっては子供に制限している部分もあります。地域にいろんな子供の活動を呼び込むためには、やっぱり保護者と一緒になって活動に参加できる場というのが必要かなと思っていまして、それも一つの課題ですね。子供と保護者が一緒に活動できる場というのをもう少し復活させていこうかなと思ったりしています。


【田原委員】 

 ありがとうございました。家族で触れ合うことまで学ばなくちゃいけないのかなと、ちょっと心配したものですから。ありがとうございました。


【明石主査】 

 まだまだあるかと思いますけど、ちょっと先へ急がせていただきます。
 では、次、牧野委員の方から、御発表をお願いいたします。


【牧野委員】 

 失礼いたします。私の方からは、これから、へ理屈をこねるような話をさせていただきたいと思います。社会教育課の方から、事例発表ばかり聞いて楽しんでいてはいけないと、少し総括をしなさいというようなことのお題を頂きましたので、これからはちょっと、すみません、眠くなるかもしれませんけれども、少し、理屈っぽい話をさせていただきたいと思います。
 今日の資料ですが、最後のところに机上配付という形で、まだゲラ刷りのままなのでお出しできなかったのですが、「月刊公民館」に掲載していただく文章の原稿の一部を持ってまいりましたので、後から参考にしていただければと思います。
 私からの報告は、「学びを通じた地域づくりの推進と社会教育・生涯学習行政・制度の課題」ということで、私が今考えていることを少しお話させていただきながら、皆さんから御意見を頂きたいと思います。
 もう少し言いますと、この話をさせていただくと、学会に喧嘩を売るような話になるかなあという気もちょっとしていまして、叩かれ続けているのでこれでいいのですけれども、私なりの考えをお話させていただいて、皆さんから御意見を頂ければと思います。

 社会教育・生涯学習の行政・制度というわけですけれども、後から申しますが、それはたとえば公的な社会教育ですとか、「公的な」という形容詞が付くかと思いますけれども、それを、今の社会の状況を基本に考えますと、国を前提でそれをとらえるよりは、むしろ、ソーシャルであるというか、社会で私たちがどう生きていくのかといったことをもう一度とらえ返すなかで、そのあり方を考える必要があるのではないか、私たちが地域社会で生活するための行政や制度であるということを改めて考えることが必要になってくるのではないか、と考えています。例えば、行政的な保障を行うという場合、公的な社会教育や公的な生涯学習、それが行政と言われるわけですけれども、そのときには「公的」とは一体何であるかといったことが問われてきたはずであるわけです。従来であれば、それは例えば国や自治体という形で、ちょっと硬い言葉で言えば、行政的な権力を「公的」なものとしてとらえていたことがあると思うのですが、公的ということを社会という形で少し組み替えていく必要が、これからはあるのではないかと思います。言い方を換えますと、「公的な」という場合に、従来でしたら「公-私」という枠組みで捉えられていて、私たちには個人としての私的な自由があり、そして、その自由を保障するために公的な保障や介入があるのだという捉え方をしていたのだといってよいと思います。

 別の言い方に換えれば、自由と平等という問題があって、私たちは自由を確保するために、少しその自由を制限することで、平等を拡大して、その結果、より大きな自由の保障を得るという形で公的な介入や保障があったと考えてきました。それはまた、少し難しい話になりますけれども、自然権と社会権という議論となります。これは、例えば、物を所有する、または社会にある富を自分のものにしていく所有という自由の問題と、それを使いつつ、私たち自身が、全ての人々がきっちりと生活ができる、生存できるということを保障するための生存という社会権になっていて、その意味では、最初に物を自分たちが好き勝手に所有するということの自由の制限をしていきながら、人々をできるだけ平等に扱って、生活を保障しつつ、更にその過程で、市場や社会を拡大することで、富を拡大して、より多くの分配といいますか、富を得ることができる、つまりより多くの所有が可能となるような保障をしましょうという形で行政が機能してきた。別の言い方をすれば、これも難しい話になりますけれども、生権力と言いますが、生かす権力、人々を殺してしまう権力ではなくて、全ての人々がきちんとと生きられるように富を分配していく権力として行政権力があった。それを公的な保障といってきたのだと思います。
 これをさらにいいかえれば、私的な権利としては、私たちは個人の内面の自由、つまり内面の価値を所有する自由を持っているので、そこには権力的な介入は許されていない。その意味では、例えば教育も、私たちの私的な、個人の内面の価値所有の自由を保障するためのものであるので、教育行政というのは、簡略化していえば、一般行政から独立してなければいけないし、さらに、教育行政も個人の内面に介入してはいけないと考えられてきたということです。
 そして、更にこういう言い方があります。社会教育の本質というのは、個人の自己教育や自己学習であり、更に市民の文化活動であって、基本は私的な領域での活動である。であるので、教育行政は公的な範囲でのみ関与することができるという言い方です。別の言い方をすれば、公民館ですとか、そういう場所は保障しながら、そこに参加する自由を保障して、あとは個人の自由に基づいて生涯学習活動や社会教育活動を展開し、そして個人が社会で自由に活動できるようにしていくのが社会教育行政の役割なのだと言われてきました。しかし、今の状況から見ますと、社会教育行政というのは、逆に言えば、ダブルバインドというか、二重拘束を受けてしまうことになってはいないだろうかと思われるのです。一つは、個人の内面に介入してはいけないという形で、個人の生活に関与できなくなってしまっているということがあり、もう一つは、教育行政として一般行政から独立しているべきであるという議論の中で、一般行政にも、教育的な配慮といいますか、そういう論理で関与できなくなるということが起こっているのではないかと感じています。それは、もう一度言いますと、行政論としては、公-私という問題、それは国家-国民という形ですし、さらには権力と市民・住民というような二分法に基づいて私たちが公的であることを考えてきた結果、そういうことが起こっているのではないかというふうにも思われます。
 私たちはいわゆる民主主義社会に生きていて、しかもこの国は高度行政国家ですから、簡単に言えば、民主主義って一体何かというと、統治と被統治が一致をしているということです。私たちには参政権があって、そして、自らを治めるために自ら統治をするということになっているわけです。さらに、今の私たちのこの国は、基本的には現代福祉国家と呼ばれるような、私たちの自由の分配を保障するために、自由を制限して、人々に平等を保障し、そして、社会的な富を拡大生産して、より多くの自由つまり大きくなる富の所有を人々に与えるつまりより多くの富を分配するような仕組みを持った国としてある。その意味では、それは富の拡大再生産と再分配を行うような権力構造になっているはずで、それを生権力、生かす権力と呼んだりします。
 その意味では、統治と被統治が一致するということを考えていくと、「公的」という議論をどこに持っていったらいいかといいますと、「自治」という問題をもう一度捉え返しておく必要があるのではないかと思います。この国においては行政の基本は、団体自治と住民自治から成っているわけです。団体自治というのは、地方公共団体、自治体の、簡単に言えば、国家からの法人格の独立と対等な関係であるという形になっていて、これは、経営体として税金を、例えば住民税を徴収しながら、自ら経営をしていく、つまり統治していくということになっています。さらに、その基盤として住民自治があって、それは団体自治の基盤としてある。何が根拠になるかというと、個人の人格と尊厳の固有性と独立性です。個人の人格はその人固有のものとしてあって、個人が尊厳をも持っていて、それは誰かに与えられたものではなくて、固有のものであるということです。そして、それはある意味では、今まで話をしましたように、いわゆる権力から自立をしたものとして置かれている。むしろ権力の根拠となるものとしてある、ということです。そうしたものが住民自治のベースになっているわけです。言い方を換えれば、人々が固有の日常の生活を営んでいるということが、「自治」のベース、つまり行政の基礎、権力の基盤になっているはずです。

 ただ、個人がばらばらに存在しているから個人の尊厳が固有に存在しているのだということかというと、そうではなくて、人格と尊厳の固有性と独立というのは、実は、私たち自身が相互に認め合っているからこそ、存在するものであるわけです。これは、人権そのものも実は発明されてきて、人々が感覚的にそれを受け止めながら、自らの人権を意識していくことによって成立しているものだといわれたりするわけですが、その意味では、人々がお互いに認め合うからこそ存在するものとして、人格の独立性とか、尊厳といったものがある。そうしたものが、これは難しい話になりますけれども、一般意志といわれるものであるわけです。人々が自分の意志を表明しなくても、当然、社会的には保障されるべきものとして存在するようになっている。その根拠は、人々がお互いに認め合っているという関係なのだということです。

 さらに別の言い方に換えれば、お互いに想像力を持ちながら、同じ人間としてここに存在している。また、同じ国民として、更に同じ住民として、ここに存在をしているのだという形で、お互いのことをおもんぱかることができる力を持っているといったこと、その上でその根拠はどこにあるかということを問うていくと、それは実は身体性にある。同じ人間として、同じように私たちは、この身体を持ち、この社会に存在して、場所を占めて生きているのだということが意識できるわけです。さらに、それを共有するために言葉を持っていて、言葉を介してお互いに認め合う関係を作っている。その意味では、尊厳といったものが、身体がこの社会の中にきちんと場所を占めてあるという感覚を持つことで、そこから言語によって普遍化されていく。だけれども、普遍化されずに残ってしまうものが、それはいいかえれば、普遍化すればするほどどこかで普遍化をすり抜けてしまうものがどうしてもある。そこが個人の固有性の問題なのだと捉えることができるのではないかということなのです。
 この意味では、「自治」を考える場合にも、実は、人の尊厳は、一般意志として発明され続けながら、一般意志に解消され得ない、固有性として私たちそのものを自ら作り出していくという活動をしていることそのものなのではないか。それは、ちょっと難しい話になりますけれども、日常生活を社会の中で営んでいくことにおいて、お互いの関係の中で私たちは生活を営み、お互いを認め合う関係の中で自分を新しくつくりだしていく活動をし続けている。その中で、お互いが同じだという意識を持ちながら、この社会を作っているということになるのではないか。それが社会の自治の根本になっていくのではないかということです。

 そうしますと、逆にいえば、今までのように二分法に基づいて公的行政をある種拒否をするというか、個人の自由だからという形で拒否をするということは、言い方を換えれば、住民生活の相互性を拒否することにつながるのではないか。もう少し言えば、本来であれば、公-私を媒介するものが「自治」であって、その根本は住民自治であり、更に住民生活であると考えますと、一般意志という、この社会の基盤を作り、法律の根拠にもなっている人々の共通認識、意識もしないような形での共通認識といったものは、関係性概念として相互に承認し合う関係の中で作り出されているものと捉えた方がよいのではないかということなのです。本来は、こうしたものが住民自治に求められていて、それが、団体自治というか、地方自治体の基盤となっているのではないか。

 ですから、この意味では、公-私の二分法で公的行政を拒否する、または個人の自由だといってこれをはねのけるといったことは、逆にいえば、そこに自己のカウンターとして権力を置いてしまって、支配関係が成立し、もう少しいえば、本来であれば団体自治の基盤であるはずの住民生活が、十分に保障され得ない関係ができ上がってしまうことで、住民自治が衰退して、団体自治が後退していくということが起こってしまうのではないか。こう思われます。
 この意味では、いま改めて、住民自治を鍛え直すことを考える必要があり、さらに、団体自治を経営していくためにどうしたらよいのかといったことを考える必要性があるだろう。そこに、専門職としての職員といいますか、または専門職としての住民の在り方が問われてくるのではないかと思います。
 そこで、新たな職員論として、専門職論といいますか、団体自治の住民経営論としての構築が求められてくるのではないかと思います。例えばということで、参考なのですが、従来の専門職というのは、私たちのような、専門的な知見を持ち、高見に立って偉そうなことをいう、そして指導・助言を与える者としての専門職という位置づけがあったわけですが、例えば、最近、オランダの福祉コミュニティーのビュートゾルフという実践があるのですけれども、そこの人たちと交流をしていますと、彼らはこの専門職論をいま振り返って、反省しているというのです。どういうことかといいますと、従来は、例えば、健常者が障害者を、または健康な人が病気を持った人々を支援するという発想で専門職を作ってきた。しかし、そういう専門職がよかれと思ってやってきたことが、結果的には合成の誤謬を起こして、悪い結果になってしまったのではないかという反省が出てきた。つまり、よかれと思って、過剰な介護、過剰な看護、過剰な福祉、過剰な医療をやってきた結果、クライアントである人々の尊厳を傷つけてしまって、生きる意欲を殺いでしまったのではないか。例えば、半身不随になった人に対して車椅子をあてがう。これはよいことだと思われていたのです。しかし、あてがった結果、もう一方でその人は使えるはずの機能を失っていったかもしれない。さらには、車椅子をあてがわれることによって、歩こうとする意欲を失ってしまったかもしれない。いいかえれば、尊厳が傷つけられて、生きる意欲を減退させてしまった。もしかしたら、一時的に機能を失った一方の足も、生きようとする意欲を持ち、歩く訓練を続けることによって、動いたかもしれない。そうしたことを全部奪ってしまったのではないかという反省が出てきたというのです。その意味では、新たな専門職というのは、クライアントと一緒に生活をして、クライアントの意志決定に寄り添っていくような人々である必要はないかと問い返し始めているというのです。
 これを社会教育に置き換えますと、地域住民と一緒に生活をしながら、住民の言葉にならない感情や思いを、または課題を可視化し、言語化して、住民に返していく。それは、もう少し言えば、あなたが思っていらっしゃることはこういうことですかと住民に返していって、対話を生み出していきながら、相互の承認関係を作る中で住民が学びを生成させていくといったこと。そして、その中で住民が学びを通して自らの生活を作っていくことを支援するような人々。さらに、日常生活の中では解決できない課題を行政課題に練り上げて、行政へと返していって、今度は行政的にそれをきっちりと解決するような手立てが講じられる人のことを専門職と呼ぶようになるのではないかということなのです。

 そうしますと、言い方を換えれば、これは、地域住民の意志決定に寄り添いながら、地域住民の生活の未来に関わる専門職になりますので、当然、相対的な自立性というのは必要でしょうし、さらには、行政そのものを、ちょっとこれはこなれない言い方なのですけれども、「学び」化していくというか、一般行政と教育行政をきっちりと区切って相互に介入しないということをいうのではなくて、むしろ一般行政そのものを住民の学びを基盤にしながら組み替えていくといったことが、これから問われるのではないかということです。その意味では、地域コミュニティーでいわゆる住民とそういう専門家が融合しながら、地域の経営を住民自らが行っていくような社会の在り方を構想する。そうしたことが「自治」を新たなステージへ引き上げていくことにつながっていくのではないかと思います。

 例えば、長野県の飯田市は、実はこの議論をしていましたら、そこの職員から、我々の行政というのは、学び化という議論と言われれば、それはしっくり来るというふうに言われたのですけれども、公民館活動が活発で、この地域は人々が公民館をやるというのです。日常生活をすることを「公民館をやる」というぐらい、公民館というのは、貸し館とか、そういうことではなくて、事業館的に扱われています。いま、ここを九州大学の八木さんという地方財政の教員が研究をされているのですが、類似の自治体と比較して、扶助費が極めて小さいことが分かっています。これは福祉に関わるお金がとても小さいということです。逆に補助費、これは住民に使ってもらうお金ですが、それがとても大きいことが分かっています。そして、類似の自治体と比較して職員がとても多いのですけれども、人件費は小さいことが分かっています。例えば、現場への厚い職員配置。ここは、公民館が中学校区に1館あって、今、21館あるのですけれども、全てに、一般行政職員を教育委員会出向にした上で公民館主事として派遣して、先ほどの議論ではありませんが、6年から7年、長い人ですと10年ぐらい現場経験を積んだ上で行政に引き上げて企画や総務に入れています。こういうことをやっているのですが、そういう厚い人員配置と人件費は余り関係がないことが分かっています。

 その意味では、飯田などがやっている公民館の実践、さらにこれは公民館と言った方がよいのか、また公民館ではなくなってしまったけれども、公民館的なものなのか、そうしたものでの実践も含めて、学ぶことと働くことが融合しながら、そうしたものが新しい地域コミュニティーを作り出していく。その基盤は、人格と尊厳であり、それを支える身体性。つまり、そこに自分がきちんと位置付いているのだ、お互いに認められているのだ、という思いが持てるような関係といったことです。そういう関係をつくりつづける過程で、コミュニティーの豊かな価値を生み出していくことになるのではないかと思います。そのときの活動の主体というのは住民です。私たちも飯田の公民館と一緒に共同調査をしていますが、人々のネットワークを豊穣化することによって、生活満足度が高まっているのです。公民館に参加することが即、生活満足度を高めるわけではなくて、公民館的なるもの、また、公民館の活動、社会教育の活動が、人々のネットワークを豊穣化することで生活満足度が高まっていることが分かってきています。さらに、先ほど少し申し上げましたけれども、地域の活動に熱心に取り組む層には、共通して15歳までの地域活動の分厚い体験があることが分かってきています。
 その意味では、社会基盤として、公民館、または公民館的なものがきっちりと機能しつつ、そこに住民が関わって、まちを自ら経営していく。しかもそれは、個人がそれぞればらばらに孤立する形ではなくて、相互に承認をし合う形で、認め合う形で、尊厳を守り合っていく、それが自治の基盤になっていくということだろうと思います。

 さらに、今、こういう議論が出ています。RMO(Region Management Organization)というのがあります。これは総務省で議論されているわけですけれども、平成の大合併に関しては、政府は余りはっきりいわないのですが、失敗であった、と。そして、合併した結果、各地域のいわゆる基盤つまりコミュニティが壊れてしまっているので、もう一度、地域コミュニティーを建て直すという形でRegion Management Organizationを作って、そして総合生活支援サービスを展開すると言い始めています。実は、このRMOに関係する方々からお話を伺いましたら、ようやく私たちは社会教育の議論に近付いてきましたと、この間、言われたのです。「何のことですか」と聞きましたら、地域がしっかりしているところは、ほとんど総じて公民館がちゃんとある。今、私たちは公民館に着目をしている、というおっしゃるのです。少し心配だったのですけれども、いわゆる総務行政的に公民館に手が入るようになると、公務員が住民を引っ張っていくという議論になりかねないところがあるので、住民の学習を組織しながら、住民が自らそこで学んで、地域を経営するという議論になりにくいのではないかと思うのです。その意味では、もう少しそこのところをきっちりと議論をして、一般行政をある意味で「学び」化していくような議論をする必要があるのでないか。それは、もう少し言いますと、社会教育・生涯学習的に一般行政そのものを再編していく必要があるのではないかということなのです。

 幾つか事例を申し上げたいと思いますが、一つだけ申し上げますと、泰阜村というところがあります。飯田の横の村なのですけれども、ここは高齢化率が4割を超えている地域なのですが、住民が学習をして、どのような送り方をしたいか、どう送られたら幸せかを議論して、結果的に在宅看取りが5割を超えている地域です。今日、高齢者終末期の医療費は全国平均で約110万円かかっているのですが、泰阜村では1人当たり45万円で済んでいるのです。さらに、村としては、浮いたお金を使いながら様々な福祉的なものに手を打ってきており、今では、高齢者が出資をした地域のケア会社を経営していて、雇用まで作り出すというようなことをしています。このように、多くの住民が地域のフルメンバーになることで、新しい学びを作り出して、地域を自ら経営するという事例があちこちで挙がってきています。

 さらに、先ほどの議論と関わりますが、これはお手元の資料に入ってないのです。私、これを見て、昨日、帰ってきたものですから、今日、入れたのですが、今、高校生たちがまちづくりの主役になる事例が各地で生まれ始めています。飯田市も、OIDE長姫高校という工業科と商業科が合併してできた専門高校があるのですが、ここで「地域人教育」という実践を展開して、今年で6年目に入っています。これは、公民館と連携して、公民館の主事さんたちがこの学校の商業科に行って、地域の課題のプレゼンをすることから始まった者です。それに対して、高校生がその課題解決に応募をするのです。そして、どんな形で自分が地域の課題解決ができるかといったことを、フィールド調査を繰り返しつつ、住民と一緒に考えていって、いろんな社会的な課題解決の実践を展開するという取り組みです。今では、これが高校の正課に位置づけられていて、1年生から3年生まで連続してカリキュラムが組まれるようになり、そこに大学や公民館が関わって、子供たちの学習、地域活動を支援していくということで展開しています。この実践に昨年度から飯田市そのものが関わりを持ち始めています。飯田市が人材サイクルという議論を始めていて、地域で育てた子供たちは、一旦地域を出るかもしれないけれども、将来、ここに帰ってきて地域を担ってもらう、そういうような人材育成をしていくということを強く打ち出していて、県立高校であるOIDE長姫高校の「地域人教育」を市の取り組みとしても位置づけて実践化しているのです。もともとは、これは先ほども議論がありましたが、ちょっと変わった先生がいらっしゃってこれを始めたのですが、現在では、これが学校のカリキュラムの中に組み込まれていて、今では、市そのものがこの学校を取り込んみつつ、市全体の施策の中にこの「地域人教育」を位置づけている。その結果、学校としても、この先生が転勤になっても、からめ手といいますか、「地域人教育」をやめられないような仕組みをつくることへと動いていて、さらには、将来的には小中の義務制と高校を連携させながら、地域の子供たちを地域できっちり育てるという議論をしたいと言い始めています。

 この「地域人教育」から、今日、新たな動きが生まれています。子供たち自身がいろんな活動を始めているのです。例えば、Sturdy Egg、割れない卵という名前のサークルを作って、まちおこしに皆でかかわり始めています。この過程で、彼らは、つながりとか、相互承認といったことが、実は自分たちの社会の基盤であることを彼らは感じ始めています。更に自分が学んでいる商業についても、例えば、高齢者が多くなって、買物難民が問題化している地域にリヤカー行商を始めることで、その過程で、物が売れるからうれしいのではなくて、お互いに関係があるから物が売れていくのだということを発見していくわけです。この社会というのは実は信頼関係を作っていかなければならなくて、それによって物が売れる関係ができ、さらにそこで物が売れると信頼関係を強化することにつながっていくと、自分たちが習っている商業が地域社会を作ることに貢献できるのだということを彼らは発見していくわけです。そこにさらにSturdy Eggのようなサークルができて、地域の人々を結び付けていく様々な事業を展開するようになってきています。
 例えば、空き家を借り上げて、「古家と家守のマッチング」と彼らは言っていますけれども、自分たちが活動する拠点のシェアスペースを作っていく。そこに地元の企業や大人が支援をして、そして資金的な援助も含めて高校生に経営を任せていくというようなことが始まっています。
 さらに、地域の高校生ブランド「ひめたま」というものを作って、自分たちで商品をプロデュースして、レストランなどで試食会を開いたりしています。
 あと、遠山郷という、日本のチロルと呼ばれている、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』のモデルになった、湯立て神事・湯渡り神事が残っている地域なのですが、急な斜面にへばりつくように集落が点在している地域があります。ここで子供が坂を転がっていなくなってしまったら、探しにいくより、もう一人つくった方が早いと冗談で言われるような谷の村なのですけれども、こういうところの村おこしに彼らが関わり始めて、「とおやま丸」というゆるキャラをつくって、彼らがプロデュースをしたり、さらに、この地域を自立させるために小水力発電と絡めた事業を展開しようというので、市と検討をし始めていて、高校生たちが起業をするようなことが起こり始めています。

 少し端折りますけれども、そのような様々な実践を通して、住民自身が自らの地域コミュニティーを経営しつつ、確かな安心に満たされた社会を作っていく。そうしたことが、これからは求められてくる。そのための「公的」な行政の在り方が考えられなければならないのではないかと思います。その意味では、生涯学習というのは将来への投資ではなくて現下の社会保障でしょう。以前も中教審で議論になりましたが、高齢の方々の死亡率を見ていくと、それにかかわる要因として運動と栄養と社会参加があって、栄養は余り効いていないのですが、運動と社会参加が特に効いていて、その中でも社会参加が大きく死亡率を下げる要因であることが分かっているのです。この意味では、生涯学習は将来への投資ではなく、現下の社会保障だといってよい面があります。

 これらの意味で、ソーシャルであること、もう少し言えば、従来の国とか行政とかという議論ではなくて、「自治」を基本にして、私たちがどのような形でこの社会を経営していくのか。そして、そこで相互に認め合う関係を作りつつ、自分がこの社会の中にきっちりと身体を持って存在していることを認め合っていく、こういうことを保障し合うような行政・制度の在り方が問われてくるのではないか。その基盤になるものが先ほど申し上げた新しい専門職であり、その社会で人々が活動することで新しい事業を、例えば若い世代が展開しつつ、新しい社会を作っていくということにつながるのではないかと考えているということです。
 ちょっと早口で端折りましたが、今まで私たちがここで様々に学んだ事例は全て、こういう形で概括されて、新しい時代の在り方に結びついていくのではないかと受け止めています。
 長くなりました。以上です。よろしくお願いします。


【明石主査】 

 牧野委員、ありがとうございました。
 時間の関係で、進行がまずいのですけれども、一つだけ、私の方から質問をさせてください。今までの専門職論と新しい専門職論ということを言われていますけれども、新しい専門職論というのは、地域経営力といいましょうか、地域をデザイン化するという力を新しい専門職と言っていいのでしょうか。

【牧野委員】 

 それもあると思うのですが、私自身が考えていますのは、むしろ住民の中に入っていく力です。住民の中に入っていって一緒に生活しながら、(私たちのようによくしゃべる人間はどうでもいいのですけれども、)しゃべらなくて、じっと我慢している方々の気持ちを忖度しつつ、あなたが考えていることや思っていることはこういうことでしょ、というふうにお返しができる人といいますか、まず言語化し、可視化できることです。その過程で、いやそうじゃないのだという反応があることで、じゃあこうですか、いや違いますという対話を作り出していくような、住民の側がいろんなことに意識を向けつつ、こうしたい、ああしたいというようにニーズが発生してくるような関係を作れる人のことだと思います。基本的に私は、ニーズというのは個人の中にあるのではなくて、関係の中で発生すると受け止めていますので、その意味で、ニーズが発生してくる、その過程で人々が生活を改善したいというように変化してくるところを、更に背中の後押しをしていけるような人々のことを新しい専門職と呼べないかと考えています。


【明石主査】 

 ほかに何かありますか。
 いろんな質問があるかと思いますけれども、あと10分しかございませんので、どうも、3人の方、ありがとうございました。
 では、引き続きまして、今、教育振興基本計画部会の方で第3期の教育振興基本計画が策定されつつあります。まず、それを石川さんの方で簡単に、できたら資料4-1の右端だけを説明してくれると、分かりやすいのですけどね。


【石川社会教育課専門官】 

 分かりました。
 それでは、資料4-1ということで、平成30年度から第3期の教育振興基本計画ということで、本年から検討されておるところでございます。明石主査も計画部会の方の委員に入っていただきまして、現在、1月をめどに基本的な方針を策定しておるところでございます。その後、来年度にかけて、具体的な中身が議論されていくという予定でございます。現在、その基本的な考え方が議論されているところでございます。
 左側の方は、大きな方針ということで、現在の課題でありますとか、個人、社会の目標、教育に関する目標ということで、記載されているところ。また、右側の方で具体的に、基本的な方針ということで、上の方から、全ての人に基礎・基本を保障するという、学校関係のものから、二つ下に行きまして、生涯学び、活躍できる社会をつくるでありますとか、多様な人々が協働し、一人一人が活躍できる社会をつくる。また、その次でございますが、学校・家庭・地域・企業等が連携・協働して、人づくり、地域づくりを進める社会をつくるということで、学校を核としたまちづくりでありますとか、学びを通じた地域づくり等の推進ということで、議論されているところでございます。
 また、こちらの方、この有識者会議との連携を深めていく必要ございますので、また経過等を紹介させていただきます。
 以上です。


【明石主査】 

 これは、今日御出席の里見課長さんの方でまとめられております。個人的には、一言で申しますと、興味あるのは、人工知能ってありますけれども、「東大ロボ」であります。「東大ロボ」は、今、偏差値57.8ぐらいでしょうかね。これは大体、千葉大の教育学部に入れるのですね。だから、人工知能に負けない教育をどう作っていくかというと、個人的には、学校教育、10年後は人工知能でほとんどカバーできそうな感じがしている。教頭先生の仕事は別ですよ。あれは人工知能では駄目ですから。そうすると、家庭教育と社会教育は、なかなか人工知能、ロボットではできないだろうという感じがしているのですよ。そういう視点で10年後を見据えて、人工知能でカバーできるところと、できないところはどこかというと、住民の苦情とか、人々の苦情。さっき牧野先生がおっしゃったように、いろんな多様化している中で、人工知能に負けない教育システムをどう作っていくかが、今後大事かなと思っております。それが一言です。
 では、引き続きまして、29年度の概算要求について、特に社会教育関係に限定して、お願いいたします。


【石川社会教育課専門官】 

 それでは、概算要求の説明をさせていただきます。こちらの概算要求の方、8月末に文部科学省の方から財務省の方へ要求しておるという段階でございまして、この後、財務省との調整を進めまして、12月末に調整を終えるというような流れになっております。
 最初でございますけれども、地域の教育資源を活用した教育格差解消プランということで、真ん中にございますような様々な格差があるというような状況を踏まえ、左側の青いところ、地域の教育資源の活用と、右側の方、困難を抱える親子へのアプローチということで、困難を抱える親子が共に学び・育つことを応援する地域発の教育格差解消の取組を推進するために多様で特色ある取組モデルを構築することとしておりまして、下にございますように、図書館資源を活用した困難地域等における読書・学習機会提供事業や、右側の訪問形家庭教育支援、左下の自然体験活動の推進、右下、高校中退者等への支援ということで、学びを通じたステップアップ支援促進事業を検討しております。
 次のページからは、具体的な内容でございますので、省かせていただきます。2、3、4、5、6、7ページまでが、今の事業の具体的な中身でございます。
 8ページに参ります。学びによる地域力活性化プログラム普及・啓発事業ということで、こちらは、現在も続けておりますけれども、地域力活性化カンファレンスの事業を引き続き要求しております。
 次のページ、10ページの方に参ります。こちらの方は、社会教育の関係の資質向上等事業ということで、講習、研修等を実施するものでございます。また、その下、高齢者による地域活性化促進事業も、引き続き要求しております。また、右側に参りますけれども、博物館に関して、より地域活性化、また国際発信の拠点ということで、そういった関係の事業も要求しておるところでございます。


【渡辺地域・学校支援推進室長】 

 13ページのスライドを御覧いただけますでしょうか。学校を核とした地域力強化プランということで、これは、学校・家庭・地域の連携・協働によって地域社会を活性化していこうというプランでございます。こちらは、29年度要求で82億を要求させていただいています。特に社会教育の関係で申し上げますと、左の方にございます地域学校協働活動推進事業、こちらが中心になってまいりますので、そこにポイントを絞って説明いたします。
 14枚目のスライドを御覧いただけますでしょうか。地域学校協働活動推進事業という形で、これまでの学校・家庭・地域の連携・協力を推進する事業というものを看板替えいたしまして、これは、昨年12月の中教審答申、今年1月の「次世代の学校・地域」創生プランというものに基づいて、子供たちの成長を支え、地域を創生する、地域学校協働活動というものを推進していくための事業として、全面的に見直しをしたものでございます。こちらにございますように、この推進事業を通じまして、左側にございます地域学校協働本部、こちらは答申の中にも提言されてございますが、15ページにございますように、学校と地域の連携・協働を推進していく社会側の体制、社会教育の体制としての地域学校協働本部というものを推進していくということ。さらに、次の16ページにございますように、これは、これまでの学校支援地域本部といった仕組みをベースにいたしまして、これまでの学校支援というものから、学校と地域の連携・協働へということ、それから、個別の活動の総合化・ネットワーク化、コーディネート機能の充実を図っていくということで、地域学校協働本部に発展させていこうというものでございます。14ページのスライドに戻りますと、そういった地域学校協働本部を整備していくための地域コーディネーターなどに関する謝金でございますとか、地域学校協働活動、それから、外部人材を活用した土曜日の教育支援活動、地域未来塾、放課後子供教室といった、様々な地域と学校の連携・協働による子供たちの成長を支える活動に対して、国として補助していくという方針でございます。
 以上でございます。


【明石主査】 

 ありがとうございました。
 引き続きまして、今後のスケジュールについて、事務局から御説明をお願いいたします。


【石川社会教育課専門官】

 本日は、どうもありがとうございました。次回は、11月21日、月曜日になります。こちらの方からは、これまで頂いたヒアリングでの御意見などを踏まえまして、少しずつ課題を整理していくというような段階に入ってまいります。よろしくお願いいたします。


【明石主査】 

 ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきたいと思います。皆様、本当にお忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございました。



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電話番号:03-5253-4111
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