高大接続システム改革会議(第9回) 議事録

1.日時

平成27年12月22日(火曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省 東館3階 講堂

3.議題

  1. 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について
  2. その他

4.出席者

委員

(座長)安西祐一郎委員
(副座長)片峰茂委員 
(委員)乾 健太郎,岡本和夫,恩藏直人,金子元久,香山真一,河野真理子,小林 浩,佐藤東洋士,佐野元彦,長崎榮三,長塚篤夫,南風原 朝和,羽入佐和子,宮本久也,山本廣基,吉田研作の各委員

文部科学省

(文部科学省)土屋事務次官, 前川文部科学審議官, 関政策評価審議官, 小松初等中等教育局長,常盤高等教育局長,杉野私学部長,伯井初等中等教育局審議官,義本高等教育局審議官,大槻国立教育政策研究所長,瀧本総務課長,今井高等教育改革プロジェクトチームリーダー,新田高等教育局主任大学改革官,塩見大学振興課長,橋田大学入試室長,福澤専門官 他

5.議事録

(1)「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について

資料1に基づき説明があり,質疑応答が行われた後,意見交換が行われた。

 

【安西座長】  時間でございますので,ただいまから第9回高大接続システム改革会議を始めさせていただきます。

皆様,御多用の中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。

今回は,新テストの一つでございます「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の作問の在り方等につきまして,検討状況を御報告いただくとともに,議論を行わせていただければと思います。この「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で評価すべき能力,またそのための作問の在り方等につきましては,これまで新テストワーキンググループにおきまして,作問作業チーム,また各分野の専門家の方々の御意見を踏まえて検討いただいてまいりました。本日は,現時点で整理できておりますものをお示しさせていただきまして,御議論いただきたいと考えております。「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施方法,また「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の検討状況等につきましては,次回の会議で資料をお示しして御議論いただく所存でございます。そういう予定にしておりますので,よろしくお願い申し上げます。

それでは,事務局から配付資料について確認をお願いします。

【新田主任大学改革官】  失礼いたします。資料の確認でございますが,議事次第にございますとおりに,資料1,それから別紙の1から3まで,それから参考資料として,昨日出されました国立大学協会の提言につきましてもお付けさせていただいております。机上資料等はございません。落丁等ございましたら,事務局の方にお申し出いただければと思います。以上でございます。

【安西座長】  よろしいでしょうか。

それでは,まず議事に先立ちまして,ただいま事務局から御説明がありましたけれども,国立大学協会におきまして,この会議の最終報告に向けて提言をまとめておられます。この提言につきまして,国立大学協会の入試委員長を務められております片峰委員から御紹介いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【片峰副座長】  参考資料を御覧いただければと思います。

先般,8月の中間まとめを受けまして,国立大学協会では,今回の改革を主体的に担っていくということを前提に,全86国立大学へのアンケート調査をベースに,様々議論を行ってまいりました。その結果を提言という形でまとめて,昨日,国立大学協会の里見会長名で安西座長の方に提出させていただいたということでございます。見ていただくと分かると思いますが,国立大学として自主的にこの改革を担っていくという観点で,今後解決すべき課題あるいは国立大学協会としての見解を,大学教育改革,高等学校教育改革,共通テストあるいは新ルール等々について項目別にまとめてございます。本音の部分も含めまして,現時点の国立大学の考え方あるいは捉え方,受け止め方をかなり正直に記載してあると考えています。

本日は,個々に説明することはいたしません。是非一読いただければと思います。その上で,本会議における今後の議論の中で,今回の国立大学協会の提言を一つの重要な材料として取り上げていただければと考えています。また,今後,新テスト等々,もう具体的な制度設計に入っていくということになりますが,そのプロセスにおいて,国立大学協会として組織的に是非積極的に関わらせていただきたいというのが提言の一つの大きな結論でございますので,よろしくお願いいたします。以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

よろしゅうございますか。

それでは,議事に沿って進行させていただきます。新テストワーキンググループにおける審議の進捗状況につきまして,ワーキンググループの主査をお務めいただいております岡本委員から御報告をお願いできればと思います。

【岡本委員】  岡本でございます。「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」における検討状況を報告させていただきます。

新テストワーキンググループにおきましては,先ほど座長から御紹介がありましたとおり,作業グループ等の作業を踏まえて,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で評価すべき能力やそのための作問の在り方など,今回の論点メモ案に示された内容について検討してまいりました。論点メモ案は資料1にあるとおりで,この詳細は事務局から御説明いただくことになりますが,中でも特に記述式の導入の意義,作問の在り方などを中心に検討を行ってきたところでございます。特に,前々回の高大接続システム改革会議におきまして行われた団体ヒアリングでの御意見等も踏まえまして,今回,評価すべき能力と記述式問題イメージ例をたたき台として用意させていただいたところでございます。申すまでもないことですが,これらのイメージ例については,記述式の作問に当たっての考え方を示すことを重視して作成しております。このため,大学入学選抜の直接のモデル問題として検討したものではございませんので,その点は是非御理解いただきたいと思っております。本日,ここで出ておりますイメージ例を作問イメージのたたき台としながら,よりよい作問の在り方についての議論を深めていきたいと思いますので,この場でもよろしくお願いいたしたいと思います。

なお,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の具体的な実施方法等に係る検討状況につきましては,次回会議にお示しできるように準備を進めているところでございます。

簡単ではございますが,以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

それでは,事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。

【橋田大学入試室長】  それでは,資料1の論点メモ案をベースに説明させていただきます。資料1をお開きください。

これからの時代に求められる資質・能力を育成するという観点から,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で評価すべき具体的な能力を整理・明確化ということで,別紙1の方にその部分の資料を用意させていただいております。別紙1の両面の部分につきましては,中間まとめの参考資料の方でも付けさせていただいておりましたけれども,この中間まとめのフレーズを少し今の時点でリバイスさせていただいているということと,特に,2.にございますように,各教科で重視すべきプロセスということでこの能力の整理をさせていただいております。

例えば3.のところでございますけれども,1枚おめくりいただきまして,求められる諸能力の育成のために各教科において重視すべき学習のプロセスということで,国語の例でございますけれども,左側には中間まとめでもお示しいただきました学習のプロセスの部分,その部分を踏まえまして,こちらの新テストワーキンググループ等の議論を踏まえまして,評価すべき具体的な能力の案ということでお示しさせていただいております。こちらは,教科ごとに能力概念の整理をさせていただいておりますけれども,この対応関係の下に全体の整理をさせていただいているという状況でございます。詳細はまた御参照いただければと思います。

こちらの能力の概念に照らした現在の大学入試センター試験の状況というところを資料1の二つ目の部分で述べさせていただいております。まず,従来の大学入試センター試験につきましては,知識の習得状況の評価に優れていることに加えまして,多肢選択の条件の中でも,与えられた問題を分析的に思考・判断するといういわゆる分析的な思考力の評価に優れているのではないかというところでございます。一方で,複数の情報を統合し構造化して新しい考えをまとめるといった思考・判断の能力とか,その過程や結果を評価する能力,いわば統合的な思考力や表現力の評価についても一層重視していくことが期待されるのではないかというところでございます。

特にこういった統合的な思考力や表現力は,今後社会で活躍する上でも当然求められるものでございますけれども,高等学校教育や大学教育で育成していくということが重要な課題と捉えております。

そういった観点から,平成32年度からの新しいテストにおいては,まず一つには(ア)にございますように,問題の質的改善による思考力等の重視ということで,こちらの方は多肢選択式を含め全体として改善していくというところでございますけれども,例えば複数のテキストや資料を提示し,必要な情報を組み合わせて思考・判断させる問題とか,学んだ内容を日常生活と結び付けて考えさせるような問題,連動型の選択式問題,答えが複数個ある問題,数値や式を直接解答させる問題といった工夫で,こちらの方は多肢選択式分を含めて改革していくというところでございます。

続いて2ページ目をお開きください。こちらには,統合的な思考力や表現力をよりよく評価するために記述式を導入していくということで,そちらの考え方を別紙2-1の図,説明につきましては別紙2-2の資料を基にさせていただければと思います。この両方の資料を照らし合わせて御覧いただければと思いますけれども,別紙2-1の図の左下の領域にございますように,知識・技能を問う問題については,多肢選択式,穴埋め式といったもので実施することができるというところでございますけれども,一方で思考力等をより多く問う問題につきましては,一つには,右上の方にございますとおり個別選抜になじむ問題と,これは中間の方でございますけれども,共通テストになじむ問題とに分類できるかと思われます。個別選抜におきましては,各大学の教育理念に応じた評価も含めまして,解答の自由度の高い記述式とか小論文の形式で実施することが考えられるというところでございます。

真ん中の共通テストの部分でございますけれども,例えば,設問で一定の条件を設定した上で,それを踏まえて,結論あるいはその結論に至るプロセスを解答させる条件付記述式の形式で実施することが考えられるのではないかというところでございます。

そういった観点から,この記述式問題を出題する意義でございますけれども,別紙2-2の2.目のところにございますけれども,解答を選択肢の中から選ぶのではなく,自分の力で考え出すといったことで,主体的な思考力・判断力の発揮が期待できるということ。二つ目には,思考のプロセスが,文や文章の作成を通じて自覚的なものになるということで,より論理的な思考力・表現力の発揮が期待できるということ。特に,文や文章の作成に当たって,目的に応じた適切な表現様式を用いるということで,より的確な表現力の発揮が期待できるのではないかというところでございます。

続いて2枚目のところでございますけれども,3.にございますように,思考力等を問うための条件ということで,記述式問題を出題するに当たりましては,条件付記述式ということで採点可能性を高めていくということが必要になりますけれども,その上で,例えば思考力・判断力の側面につきましては,問題に対する解答が正しいかどうかだけではなくて,解答する上での思考のプロセスが適切に遂行されていくというところがポイントになろうかなと思っております。このため,例えば,あらかじめ結論を設定した上で,結論を導き出した理由,またそれを導き出す思考のプロセスを説明するということを条件とすることなどが考えられるかなと思っております。こういったプロセスにつきましては,現在別途検討を進めているところでございますけれども,例えば,問題の理解,情報の統合,解決方法の探索,計画立案,考察過程や考察結果の吟味といった思考のプロセスが的確に行われているかといったことを問うことが考えられます。特に,情報の統合,解決方法の探索,計画立案のプロセスが重要になろうかなと思っております。その際に求められる情報の比較とか分類,関連付け,推論,仮説の形成等について,的確な理解や操作が行われているかを問うということも重要と考えられるというところでございます。

こういった思考のプロセスに的確に遂行していくためには,記録,要約,説明,描写,論述,作図といった適切な表現様式を用いることが求められるかなと思っております。

こちらの方を少しイメージさせていただいたものが別紙2-3の部分でございます。多肢選択式の場合には,問題文を読んで選択肢の中から正しい答えを選択するというところでございますけれども,右側にございますように,条件付記述式におきましては,思考・判断・表現のプロセスで必要となる具体的な力ということで,こういった情報の取り出し,統合,比較,関連付け等のプロセスを経まして,自分なりの解を構成し,表現していくといったこと,この部分のプロセスを含めて解答させることが必要となってくるというところでございます。

それでは,資料1にお戻りください。2ページ目の(イ)の二つ目の丸の部分でございます。こういった前提の下で,当面,次のような形で記述式の導入を検討してはどうかということで,枠組みを示させていただいております。対象につきましては,当面,高等学校で共通必履修科目が設定されている国語・数学とするということで,特に記述式の導入意義が大きいと考えられる国語を優先させてはどうかということでございます。方式については,先ほどの条件付記述式ということで,採点可能性を高める観点,また思考等のプロセスで必要となる具体的な能力を評価する観点から行うというところでございます。実施方法につきましては,今後のいろいろな検討にもよるところでございますけれども,当面は最大で300字程度までで検討してはどうかというところでございます。当然,この実施に当たっては,採点基準の作成が不可欠になるというところでございます。

3ページ目をお開きください。こういった記述式の試験時間や採点期間の確保のためには,現行の1月の日程とは別日程で実施することも含めて,その日程の在り方を検討してはどうかというところでございます。同じく英語の四技能試験については,民間との連携の在り方を検討しておりますけれども,それとの同一日程も検討する必要があるのではないかというところでございます。ただ,こういった日程の関係につきましては,高等学校関係者をはじめ関係者と十分に調整していく必要があろうかと思っておりますし,大学側の負担も考慮し,可能な限り民間の力を活用して実施することも検討していく必要があるかと思っております。

記述式の実施対象科目や字数,実施方法等につきましては,関係団体等の参画も得まして,この技術の動向やコスト等も踏まえて,試行も行いながら継続的に検討することが必要になろうかと思っております。

英語につきましては,四技能のために,例えばでございますけれども,新センターが基準を示して,民間が作問・実施・採点を行う体制を検討してはどうかというところでございます。

続いて,別紙3の問題イメージ例をお開きください。こちらの方はたたき台という形で用意させていただいておりまして,冒頭,主査の方からございましたとおり,あくまで今回の記述式の出題に当たっての考え方の方針をまずは皆様方に御議論いただきたいというところで作成したものでございます。問題の難易度を含めたテストとしての具体的な作問の在り方については引き続き検討していきたいと思っております。個別の問題の特徴については,これから補足して説明させていただきます。

【福澤高等教育企画課専門官】  失礼いたします。それでは,別紙3,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で評価すべき能力と記述式問題イメージ例(たたき台)について御説明させていただきたいと思います。今回の問題イメージ例(たたき台)といたしましては,国語を三つ,数学を一つ御用意させていただきました。また,更に参考資料といたしまして,かつて行われました英語の調査事業の情報をお示ししております。

それでは,まずこの資料の構造を御説明したいと思います。まず,2ページと3ページをお開きください。この資料の構造といたしまして,まず国語,続いて数学と出てまいりますが,それぞれの教科の冒頭に,高等学校学習指導要領,今回2ページは国語でございますので,国語総合の内容のポイントを,そして3ページの方で,重視すべき学習のプロセスと評価すべき具体的な能力の案をお示ししております。

それでは,これより具体的な問題のイメージについての御説明に入らせていただきますが,今回,先ほど説明がございましたとおり,思考力・判断力・表現力等を中心に評価するということを中心に目的としております。また,その学びのプロセスや評価すべき力を踏まえて問題作成をしております都合上,素材文を御覧いただけないようになっているものがございます。御容赦いただきたいと思います。

それでは,4ページをお開きいただきたいと思います。イメージ例の一つ目でございます。ここの点線の四角囲いにございますとおり,多様な見方や考え方が可能な題材に関する複数の図表や文章を読み,情報を統合しながら,考えを構成し表現する問題ということでお示ししております。ここの問題におきましては,国語総合の読むこと,イ,文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり,必要に応じて要約や詳述をしたりすることとされております。また,読むことの言語活動として,現代の社会生活で必要とされている実用的な文章を読んで内容を理解し,自分の考えをもって話し合うことなどを通じて,培われてきた学びの成果を見ていきたいという問題となっております。

先ほどお示ししました評価すべき具体的な能力との関係でいきますと,この問題で評価しようとしております主なものとしては,エ,オ,カ,クと四つ示させていただいておりますが,例えばエの「目的に応じて必要な情報を見つけ出して文章や図表等の情報と統合し,比較したり関連づけたりする力」など,これら四つの力をはかりたいと考えてございます。

では,5ページを御覧いただきたいと思います。具体的な問題のイメージの例1としてお示ししております。ここに示しております問題は,警察庁事故統計資料に基づいて作成されました交通事故の発生件数,負傷者数,死者数のグラフと,この三つのグラフを見て,交通事故の死者数がほかよりも早く,平成2年(1990年)以降減少傾向になっていることについて,4人の高校生が仮説を立て,その人なりに根拠となる資料を考え,その資料から推測できることについて話し合っている,仮説について話し合う場面を問題としたものでございます。これら4人の高校生の発言の一部を記述して問うものとなっております。

6ページに問題として問1と問2を示させていただいております。問1では,Bさんの発言を40字以内で,問2では,Cさんの発言を80字以上100字以内で答えてくださいという問題となっております。6ページ下に解答例をお示しさせていただいております。

では,問題例2,次の問題に移りたいと思います。7ページを御覧ください。イメージ例の2といたしましては,三つの文章で語られている状況,問題,解決法に関する共通点について考察し,選択式と記述式で構成し表現する問題となってございます。

8ページを御覧ください。この三つの文章は,今回お示ししてはおりませんが,それぞれ別の方について書かれた自伝,評伝についての文章でございます。この三つの文章につきまして,3人の小説家と作曲家がいるわけですけれども,この3人の創作への取組姿勢には,文章上,共通するパターンが見られます。それぞれの文章では,創作への取組姿勢について,どのような状況のときに,どのような問題が生じやすいと述べているか,また3人に共通する状況と問題の組合せを一つ選んで答えていただいた上で,その3人に共通する解決法をそれぞれ30字以上50字以内で要約して書いて答えていただくというものとなっております。

これは,解答例として下にお示ししておりますとおり,状況に丸2,問題に丸4を選び,解決として,規則正しい生活スタイルを確立して,それを崩さないようにするというパターンと,丸2と丸6又はそこに続く40文字の記述にありますとおり,その選択の組合せによって,答えるべき解決方策が変わってくるというもので,どれを選んでもかまわないという形にしておりますが,自ら考える状況,それに連動,関連する問題を選び,それに共通する解決というものを書き記すという問題となってございます。

では,次の問題に行きます。9ページを御覧いただきたいと思います。これも問題文の素材文をお見せせずに非常に恐縮ではございますが,1,400字程度の新聞記事を読んだ上で,一定の目的に沿ってこの新聞記事を読み取り,得られた情報を取捨選択したり,自分の考えを統合したりしながら,新たな考えにまとめて,200字~300字で表現するということを求める問題となってございます。

10ページを御覧ください。素材文の詳細はお示しできませんが,この点線の中の一番上に書かれておりますとおり,要約といたしましては,公立図書館に関して,その現状と課題のほか,若者の自立・社会参画支援を推進する場,家庭教育支援のための場,地域の人たちの対話や交流の場としての試みなど,今後の公立図書館の可能性などについて記されている1,400字程度の新聞記事を読んで答える問題となっております。

問いといたしましては,「今後の公立図書館の在るべき姿について,あなたはどのように考えるか」ということを以下の三つの条件に沿って答えていただくということになっております。まず条件2を御覧ください。答えとして求めているのは,まず2段落構成にしてほしいということでございます。そして,その2段落構成のうちの1段落目には,「今後の公立図書館が果たすべき役割として,あなたが重要と思うもの」について書くわけですけれども,「その際,文中に示された公立図書館の今後の可能性のうち,今,あなたが重要と考える事項を一つ取り上げる」ということとなっております。文中に幾つかの今後の可能性を示されておりますので,その中から解答者が「私はこれが重要である」と考えるものを選んで取り上げ,そして本文中の言葉を用いて,つまり引用して答えるということになっております。条件3にも示しておりますとおり,本文中から引用する場合には,かぎ括弧を付けてもらうということで,確実な引用ができるかというところを問いたいということも条件に入っております。

続きまして第2段落では,ここからは素材文を離れまして,「仮にあなたが図書館職員だとした場合,図書館において,第1段落で解答した姿を実現するために,どのような企画を提案したいかについて書くことを求めております。そして,ただ企画を提案するだけではなく,その企画の内容に加えて,その企画を行ったことによる効果を併せて示していただくということになっております。これらの条件の形式あるいは内容を踏まえて解答できるかということを求めたいと思っております。そして,これを200字~300字以内の文字数で答えてもらうという条件を付した問題となってございます。

解答例としては,一つではございますが,295文字で作られた解答例を以下に示させていただいてございます。

国語につきましては,以上の問題のイメージ例でございます。

続きまして,数学でございます。数学では,恐縮ではございますが,1問だけお示しさせていただきたいと思います。11ページから12ページにかけまして,国語と同様に,数学Ⅰにつきましての学習指導要領の内容のポイントを示させていただいております。

そして,13ページの方では,今回の問題作成に当たりまして,数学において重視すべき学習のプロセスと評価すべき具体的な能力の案について示させていただいております。

では,具体的な問題例を見ていただきたいと存じます。14ページを御覧ください。この問題では,事象から問題解決に必要な情報や条件を抽出・収集したり,仮定をおいて考えたりする問題ということになっております。数学Ⅰの中から,図形と計量について出題しております。「三角比の意味やその基本的な性質について理解し,三角比を用いた計量の考えの有用性を認識するとともに,それらを事象の考察に活用できるようにする」という指導事項に基づきまして,特に今回は図形の計量のうち三角比の空間図形の考察に活用するあたりを出題させております。

具体的な能力につきましては,以下に示させていただいたとおり,ア,イ,ウ,エ,オでございますが,事象や数学的表現から情報を読み取り,必要な情報を抽出・収集したり,仮定をおいて考え,かつ情報を整理・統合して問題解決の方針を立て,適切な数学的表現を用い,論理的に考察・処理して結果を得る力というあたりを問う問題の一つとして考えてございます。

では,15ページ,問題例の4を御覧ください。これは,今年9月28日に「スーパームーン」と呼ばれた事象がございました。月の楕円(だえん)の軌道の動きとその満月のタイミング,地球との距離の関係上,月が見た目上大きく見えるということを占星術的な用語で「スーパームーン」というそうでございまして,天文学用語ではございませんが,実際に月が大きく見える晩があり,それについての記事を読んで,それならば,高校生である伊藤さんが,月について,見た目上どのように大きく見えるかということを,作業としてはフィルムに円を写し取って見るという作業をするのですが,それに先立って,計算上はどれぐらいの大きさではかり取ることができるかということを数学的に考えてみようというものが,(1)の問題でございます。

(2)でございますが,(2)につきましては,少しこれは「スーパームーン」の問題からは外れまして,別の場面にはなりますが,同じく高等学校の校庭に台形の図が描かれているという場面を御想像いただければと思います。伊藤さんが校舎の屋上からその図を見たときに,その台形が遠近法の関係でちょうど正方形に見えるという場面を仮定いたしまして,それを問題としております。(2)といたしましては,その屋上から,実際はフィルムを通してその四角の様子を写し取るという場面ではございますが,そのフィルムに写し取った四角形A'B'C'D'が正方形になったという場合,これはフィルムを外して見てみれば,校庭に描かれているのは等脚台形――脚の長さが同じ長さの台形であるということを説明しなさいというものでございます。目で見れば台形ですということではございますが,これを数学的に説明してくださいという問題となってございます。

また,(3)につきましては,この問いは,この等脚台形の上底と下底といいますか,上の辺と下の辺の比を問う問題となってございます。これは,屋上から見下ろしたときという場面で分かりますとおり,三角比を用いて説明するのでございますが,屋上にいるという場面から,空間の認識をもって,空間認識からその地上に描かれた図形にまで下ろしていって答える。実際には三角比あるいは相似などを使って答える問題ではございますが,それを数学的に説明するという問題となってございます。(3)は,式で答えてくださいということとなっております。

18ページを見ていただきたいと思いますけれども,18ページで式として求めるのは,18ページの一番上の「AD/BC=」と始まる1行だけの式を答えていただく問題ではございますが,この1行の解答をするためには,下に解説的に書かせていただいておりますが,これだけの前提を踏まえて,空間認識をもって思考・判断し,その結果として,図も描いたりしながらイメージをもって表現されたこの1行だけを答える問題ではございますが,それなりの思考と判断を行うという問題となってございます。数学につきましては以上でございます。

英語につきましては,この後ろに付いておりますが,別途四技能を評価するための作問の在り方について検討している段階でございます。このため,現時点では問題のイメージ例をお示ししてはおりませんが,参考資料といたしまして,ライティングやスピーキングの取組事例といたしまして,文部科学省の委託事業で実施いたしました英語教育改善のための英語力調査事業で用いた問題とか採点基準を添付させていただいてございます。

私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。

それでは,ただいまからの時間は,これまで岡本委員,また事務局から説明を頂きました事項について議論を頂ければと思います。どなたでも結構でございますので,御質問,御意見等を頂ければと思います。3時近くまで取れると思います。羽入委員,どうぞ,お願いします。

【羽入委員】  御説明,ありがとうございます。全体的なことで少しコメントを申し上げておきたいと思います。

御承知のように,今,教育課程部会で新しい指導要領について議論がなされています。時間的には,タイムラグがありますので,すぐにそれを利用するということには当たらないかと思いますが,指導要領の方で現在,評価についての議論が集中的になされつつあります。そうしますと,その評価をそのまま今回のテストに適用するということではございませんけれども,将来的に方向性を同じくするという必要があるかと思いますので,その点だけ申し上げておきたいと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。これはよろしいでしょうか。そういう理解だというのは共有させていただいていると思います。ありがとうございます。

小林委員,お願いします。

【小林委員】  ありがとうございました。この検討の過程の中でどのような議論がされたかを教えていただければと思うのですが,今回この記述式のところで,「別の日程で実施するということも含めて検討する」と書かれています。これはもちろん,今後,高等学校関係者あるいは大学関係者と協議しながら進めていくということは理解しているのですが,新テストワーキンググループの方ではどのような議論がされたか,教えていただきたいと思います。

一つは,記述式を別の日程と書かれておりますが,これはいわゆる多肢選択型のような問題のテストと記述式を別々の日程でやるということなのか,あるいは国語を記述式でやるとすれば,国語を別の日にやるといった議論だったのかというのがまず1点。

それから,以前,高大接続答申の中では,この共通テストは複数回実施するといったことが理念として書かれていたと思います。この記述式とマークシート型のようなものを別の日程でやったときに,複数回実施といったことについてどのような議論がされていたのかというのが2点目になります。

もう1点,別の観点ですけれども,これは結構,300字程度の文章というのは,原稿用紙にすると4分の3ぐらいのボリュームがありますので,必ずしも高校生から見たときに少ないとまでは言えないとは思います。これの採点をするときに,先ほど引用とか2段落にとかという表現がありましたが,形式的なものは採点しやすいと思うのですが,内容という表現があったのですけれども,内容については,これは部分点みたいな採点の仕方をするのか,それとも形式みたいに0・1で判断できるようなものなのかというところを少し教えていただければと思います。なぜかというと,これは多分,複数回実施とか記述式と選択式を別々にやるというのは,採点とパワーの問題が非常に大きな記述式の論点になろうと思いますので,そこら辺でどのような議論がされたかを教えていただければと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。

岡本委員,お願いします。

【岡本委員】  必要ならば後で補っていただくことにして,まず内容についての採点という3番目の点ですけれども,これはおっしゃるとおり,非常に,例えば記述式の場合,どういう採点基準を置くのかとか,それはやはり考えていかなければいけない大きな問題だろうと思ってはいます。ただ,今の段階では,イメージとしてこういうものを採点するとしてどういうものが必要かというエグザンプルを示して,更に議論を深めていきたいということでございます。

それから,別にすることということですけれども,これはいろいろな要素がありまして,実際に記述式を採点するときにどのように採点するのだということは当然にあります。したがいまして,もしも記述式を期限内に採点しようとすると,かなりの人手が要るから,それを少し別の時間をとるようにするかというのは,一つのチョイスとしては検討されております,事実として。ただ,では国語は全部記述式にして,ほかの日程にするといった議論はしておりません。つまり,一体的に,現在行われている例えば大学入試センター試験の内容なども,ありていに申し上げれば,いろいろな工夫で,大事なところは依然として見ている。その上で新しいテストとして,思考力・判断力をはかるためにはどうすればいいかという議論でございまして,実際,おっしゃるとおり,複数回ということを含めて,マンパワーとか,そういう問題があります。ただ,この問題を議論し出しますと一歩も先へ進まなくなってしまうということなので,本日あえて少しこういう200字~300字も含めて問題をお出ししたということでございます。その点については明快なお答えはまだ少しできないというのは申し訳ないのですが,考え方としてはそういう考え方で議論してきたと御理解いただければと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。

事務局はいかがですか。よろしいですか。

それでは,宮本委員,お願いします。

【宮本委員】  御質問させていただきたいのですが,本日お示しいただいた問題ですけれども,大体難易度は,どれぐらいの生徒を対象にイメージされてこの問題を作られたのかということを少し教えていただければと思います。

【安西座長】  それでは,文部科学省,お願いします。

【塩見大学振興課長】  今回お示ししました問題につきましては,記述式を今回導入するに当たって,どういう能力をどういう形で評価すべきかというところに重点を置いて,考え方をお示しするという趣旨で作っておりますので,正直に申し上げまして,難易度についてきちんと設定して検討いただいたというところまでは至っていないというところだと考えております。むしろ,記述式を導入することでどういう部分の能力をしっかりと評価して,それを高等学校教育にもどういう形でいい影響を及ぼしていけるかというところを中心に御議論いただいたと理解しております。

【岡本委員】  難易度については,基本的に高校生が分かるということですが,少し数学の例で述べさせていただきますと,これは決して易しい問題ではございません。うるさいことを言えば,最後の式の計算などは数Ⅱまで少し入っているかもしれないという,それはもう重々分かっております。ただ,数学の場合,出題は1題しかないですけれども,数学の問題というのはバリエーションがいっぱいできるので,考え方はこうだと。例えば,念のために申し上げれば,ではどうやってフィルムにお月様を写すのかと。例えば四角形だったら,頂点をとって結べば四角形だ。円を写すときは,ふにゅふにゅっと手で描いてもいいけれども,3点をとって三角形の外接円を描けばきれいに描ける。もうそこで既に思考力とか判断力は生きているわけだから,例えばそういうことを聞きたければ,そういう設問をすることもできるわけです。そういう意味で,難易度も少し考えましたけれども,これはかなり難しいけれども,ここからバリエーションでいろいろなものができるという考え方で提出しております。お答えになったでしょうか。

【宮本委員】  はい。分かりました。

【安西座長】  ありがとうございました。

金子委員,お願いします。

【金子委員】  今度のテストに記述式を導入するというのは,今まで記述式を導入すべきだという意見もこの会議でも多かったわけですが,趣旨としては,単なる知識だけではなくて,考え方とか,問題を整理する力とか,そういった力,それから表現する力というものをこの試験で試すという意味で,従来の学力観から広げた観点から学力を試すということが重要だということが出発点だったと思いますが,その場合に他方で,記述式にすると,非常にコストも掛かるし,様々な問題点が生じるというのも自明でして,私は一つ基本的な考え方として伺いたいのは,ここにいろいろな工夫が出ていますように,必ずしも記述式にしなくても,選択式でも,思考の方法といいますか,思考の方向をある程度チェックすることはできるということもあるわけです。それに加えてなお生徒に記述させなければいけないと,そこは最終的にはどこにというか,どういう問題が一番,そういう記述式にさせることによってどういうことが分かるというのが重要なのでしょうか。

【橋田大学入試室長】  その点につきましては,先ほど資料1の方でも少し御説明させていただきましたけれども,多肢選択式を含めて改善していくという前提ではございますけれども,特に,先ほど申し上げましたとおり,複数の情報を統合し構造化して新しい考えをまとめていくということとか,特に結論あるいは結論に至るプロセスの部分を表現していくという観点からは,特にこの書く力の部分を見ていく必要があるのではないかと。その中で,記述式の導入ということについては,教育効果としても非常に高いものがあるのではないかということで,記述式の導入の意義のところを整理させていただいております。

お手元の資料の別紙2-2の部分でございますけれども,特に1ページ目の下の部分に,記述式問題を出題する意義について述べさせていただいておりますけれども,「解答を選択肢の中から選ぶのではなく,自らの力で考え出すこととなり,より主体的な思考力・判断力の発揮が期待できる」というところ,また,「思考のプロセスが,文や文章の作成を通じて自覚的なものとなることにより,より論理的な思考力・表現力の発揮が期待できる」。「特に,文や文章の作成に当たって,目的に応じた適切な表現様式を用いるなど,より適確な表現力の発揮が期待できる」ということでございます。

また,2ページ目,先ほどは触れておりませんでしたけれども,下の方の表現力の部分でございますけれども,例えば,説明の部分については,事実や事柄,方法を具体的に説明することや,手順や理由を論理的に説明することということで,適切な表現の仕方を考えて書くということ。また,論述については,目的に応じた文章の構成や展開を工夫し,論拠に基づいて自分の考えを文章にまとめること,こういった力を問う上で記述式の導入効果があるのではないかということでございます。

【金子委員】  よろしいですか。

【安西座長】  どうぞ。

【金子委員】  それは分かっていますが,ただ,ここに「発揮できる」と書いてあるのですが,本当に何をテストしているかということが私は問題なのではないかと思います。それと,論理的な力を発揮するというところまで分かるような文章を書くというのは,文章としてはかなり長くなる可能性があって,しかも判断もかなり難しくなるということもあるのではないかと思うのですが,そこのバランスが私は非常に重要かなと思います。私は,ぎりぎり何がここのところで試すことができるのかというところは,この段階でそんなに詰めることはできないかもしれませんが,それから具体的な条件によって,やれることは非常に制約されてくるわけでありますけれども,そこら辺についてどのように,最終期にはどこのところだけは守りたいとか,そういったことはあるのでしょうか。

【安西座長】  答えの候補が有限個並んでいて,その中から選ぶという状況と,答えがなくて,答えの候補が与えられていない中で自ら書き出していくという状況との質的な違いを,後者を重視していきたいと,これは基本だと思いますけれども,それに対する採点とかいろいろなことにコストも掛かっていくわけで,そのコストとメリットの比較対照でいろいろな議論が基本的には行われてきているわけで,これからの時代に向けて,そのメリットの方をとっていくべきではないか,とっていくべきだと,そういう方向でこの議論が進められてきているというのが基本だと考えております。

その中で,金子委員が言われた,論理的であるとか,ここで主体性が発揮できるとかと言われてもという,それは私も同意できる部分がございまして,この別紙2-1を御覧いただきますと,一番左に,これからこれも改善されていくと思いますけれども,答えの数値あるいは式を求めていくレベルの書き出し方,表現の仕方,それから真ん中には,条件付記述式と書いてありますけれども,ある程度,思考の方法あるいは思考の型を制約していくことでもってしっかりした表現をできるかどうかということを評価するというレベルと,それから一番右には,個別の大学が自分の大学で入学してほしいと思う学生を選抜するための,例えば独創力とか,そういうことを見る。これは国ではできないテストだと思いますので,そういうことを見るのは個別の大学でやっていただきたい。三つ,基本的にはそのように分かれているのだと理解しているところであります。

また,本日作文のイメージを出していただいておりますのは,まず当然,実施方法・実施時期等々については,大学関係者あるいは高等学校関係者と着実に議論をさせていただいて,それで決めていく必要があると思いますが,難易度はまた別といたしましても,まず作問のイメージとして,こういうイメージでお考えいただければ,議論していただければということで出させていただいている。少し長くなりましたけれども,そういうことだと理解しております。

【金子委員】  私は,安西座長がおっしゃることに賛成で,基本的に,記入式で論理的力などというものを試すというところに余りこだわってしまうと,実はこれは非常に難しい問題が出てきて,私は,とにかく自分で書くということが要求されるということ自体は,私は非常に重要で,受け身ではなくて,何か書いてみろと言われたときに,書く姿勢というのが出てくるということは,私はそれ自体重要だと思いますので,少なくとも私はそこのところができることが重要だろうと思います。これでもって論理的な力をはかるということに非常にこだわってしまうと,かなり難しいことになってしまうのではないかと思います。

【岡本委員】  特に反論というわけではないですけれども,記述式というのと,いわゆる今安西座長がおっしゃったみたいな個別テストで論文を書くとか,そこも記述式と書いてありますけれども,私は一応論述式と呼んで区別はしていますけれども,トータルにはかっていくということが大事であろうと思っています。それで,もちろん金子委員がおっしゃることはよく理解しているつもりです。ただ,問題例を作るときに,一体的に考えてみると,逆にサンプルを作るというのは余り,例えばもうこれは50字にとどめようとか,そういうのはかえって少しよくないのではないかと。これが300字も書かせるのだったら,これは個別入試とか,そっちの方で活用しようといった議論が出てくれば,もちろんそういう方向でいいと思います。

それからもう一つは,私は数学なものですから,数学の記述式というのは,これもそうですけれども,答えを塗り潰して,5を選んで,3を選んで,5分の3を作るのか,白いところに5分の3ときれいに書かなければいけないですけれども,5分の3と書くとか,これはもう質的に違う。だから,そういう意味で,それで何がはかれるかというのは,これは試験問題によるので,単に計算して5分の3と書くのだけでは,計算力をはかっているだけですけれども,論理的に考えてこう出る。それは問題によるのですけれども,出題するという立場から見ると,記述式が入ることによって,どこまでできるかは別として,作問のときの幅が広がるというか,可能性が広がるということは第一に考えました。それで今回のようなサンプルの提出ということにしております。だから,最初に申し上げたとおり,これがそのままどこかに出るということではなくて,こういう可能性もあるということで見ていただいて,問題がよくなっていけばいいと考えております。

【安西座長】  専門家がおられる前で恐縮ですが,数学の一つの本質として,ある意味,混沌(こんとん)とした状況の中から明確な定式化を行うということが一つと,もう一つは,図を描いていくというのでしょうか,白紙のところにとおっしゃいましたけれども,その二つが私は非常に大事だと思っておりますが,本日出させていただいた数学の問題イメージにつきましても,図をただ描くということではありませんが,図を描いていかないと,なかなかこれは食いつけない。そういう空間認識の問題になっておりまして,そういう意味では今申し上げたことがあてはまってくるのではないかと見ております。

【金子委員】  少し別の話ですが,本日見せていただいた例を見てみますと,国語総合と数学Ⅰですが,一つの問題は,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」でも基本的には国語総合と数学Ⅰ相当のところが予定されているのではないかと思うのですが,そことの差はどのようにするのか。

それから,今の問題を見ていても,これは確かに国語総合の教科の目的には合っているのですが,本当に国語の科目とするべき内容なのか,それとも数学Ⅰの内容とするべきものなのか,もう少し総合的な数的・言語的能力になっているといった見方もできると思うのですけれども,そこら辺はどのようにお考えでしょうか。

【岡本委員】  公的なお答えとしては,サンプルを出すときに一番分かりやすいところから出したということなのですが,既に何人かの先生はお聞きのとおり,例えば,満月の話が出てきましたけれども,これは理科ではないかという議論だってあり得るわけです。それを総合と言うのかどうかという,そこまでは言っておりませんけれども,そういうことがあります。制度として総合問題を出すのかということの御質問だったと思いますけれども,今の段階では,はっきり言って,なかなか急にそこまではいかないだろうと,まず教科のところをやっていく。

「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の話は,まだこれは次回以降の話ですけれども,恐らくここに述べた範囲が「高等学校基礎学力テスト(仮称)」ではないというのはもう現場の先生は見た途端に分かるような話で,逆に言うと,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」というのは,本当に,もっと短い文章が読めるかとか,もっと簡単な式の計算ができるかとか,要するにこういうことを考えるための基礎になる力を試すと。それを使ってこういうことをやっていくということだろうと思います。

少し発言したついでに一言,本日は述べていないことですが,これは個人的意見ですけれども,こういうテストを作るときに,例えば平成32年度からやると,36年度からその新しい学習指導要領でやるということなのですが,これはワーキングなどでもそういうことを議論しているのですけれども,固定的にテストというのを考えるとまずいのではないかということは強く議論しています。つまり,ある方法でこういうテストをやったら,これは20年変えないとか,そういうのではなくて,試行と言ってしまうといけないですけれども,例えばもっとよくなれば,どんどん成果が上がってくれば変わっていけるような,そういう体制ができればいいという,新テストワーキングですから,余り細かい制度的なことは議論しておりませんが,スタンスとしてはそういうのがあって,だんだん発展していけば,テストの在り方も発展していくのかと。それに見合ったような設計をしていって,だからここに出されたものはいつの日か,このぐらいはもう共通テストができますということになるのかもしれないのですけれども,それに対応できるようにしていただきたいということは繰り返し申し上げているところでございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

羽入委員,お願いします。

【羽入委員】  今,岡本委員がおっしゃったことと関係するのですけれども,先ほど申し上げたことと関係しますが,ここではかるべきものが思考力・判断力・表現力ということだとすると,やはり,それがそれぞれの教科で何をもって評価の対象にしているかということの合意がなされている,あるいは,もちろん細かな点ではないにしても,何らかの共通認識がある方が,長期的な視点での作問になると思っております。先ほどの補足です。

【安西座長】  ありがとうございました。

先ほどの別紙3の中では,学習指導要領にどのように関連しているのか等々については,一応の記述はさせていただいております。もちろん,これからそういったところの採点基準等も含めて,何を評価しているかということについては,しっかり詰めていかなければいけないとは思います。

【羽入委員】  一言よろしいでしょうか。それぞれ、教科ごとに,何を評価するかということの議論が既に始まっているものですから,そことの整合性が必要であろうということでございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

佐野委員,お願いします。

【佐野委員】  ありがとうございます。今回,イメージの作問が出てきて,大分理解が具体的になってきまして,ありがとうございました。ただ,これは要望といいますか,たまたま今回の問題にはそこの部分に触れるところが少なかったと思うのですけれども,学力の3要素の知識・技術の定着はマークシートでやりますと,今回の記述等は,いわゆる思考力・判断力・表現力が主に試されるということですけれども,三つ目のところの主体的な考え方,主体性だとか,多様性というのはなかなか今回想定されているテストでははかれないかもしれませんけれども,主体性の部分を幾らかでも見るというのは,多分,なぜという部分,あるいは批判的思考といいますか,そういうところではかれるのだろうと思うので,何か問題の中で,例えば問題文に対していわゆる反対の視点で考えてみるとか,別の課題を発見するとか,そういう点も入れていただいて,3要素の三つ目のところも,ある程度はかれるような工夫をこれから先,お願いできればなと思ったところが1点です。

それから2点目が,この採点結果といいますか,評価結果がどのように示されて,それが例えば個別選抜等でどのように示されるのかというのも,高校生の保護者とすると非常に不安なところです。全体の点数で何点ということではなくて,多分その中で,いわゆる知識・技能の習得に関する部分はこういう評価であった,あるいは思考力に関してはこういう評価ですといった,評価結果の提示方法というのがどのようになるのだろうと疑問に思うのが2点目です。

それから三つ目が,本日の問題を拝見していて,このような考え方,思考力なり判断力を身につけるのは,多分学校の授業の中だけでは難しい,限界があるということを強く感じました。そうなってくると,今度は社会あるいは家庭の教育力とか,そこに負う部分が多い。例えば,ニュースを見て,親と,大人と一緒にそれについて少し議論をしてみるとか,あるいは兄弟とか子供同士で議論をするとか,そういうことを常日頃繰り返していかないと,なかなか難しいだろうと思います。そういう意味で家庭の教育力というのが問われることになるなと思うわけですけれども,そのときに,その教育力の差をどのように埋めていったらいいだろうというところが,私個人として非常にこれから先悩ましくなると思っているところです。教育力の差は,具体的にいうと,経済的困窮家庭等で,親がとにかく家庭教育どころではない,生きるのに必死だという家庭の子供たちの家庭教育のサポートをどうすればいいかというのは,非常に今PTAの関係者としては,強く問題意識を持ったというところであります。

以上です。

【安西座長】  どうぞ。今のことですか。

【岡本委員】  今のことに的確なお答えかどうか分からないですが,学力の3要素の知識・技能とか,思考力とか,別にこれは切り離せるものではなくて,どんな場面でも見ていかなければいけないと思っています。だから,いわゆるマークシート式に択一的にやる試験も,改良の余地はいっぱいあるだろうと思っています。そういうことも少し検討しました。だから,単に答えはアなのかイなのかと聞くだけではなくて,その中でいろいろな出題の仕方,採点の仕方,コンピュータがするにしても,いろいろなことができるだろうと考えました。だから,切り分けてはいないと思います。

主体的というのも同じで,どこまで見られるかというので,作題がうまくできればいいかなと思っています。

それから,それと関連して,三つ目の御意見ですけれども,学校だけでできるのかということをおっしゃって,もちろん家庭の力,そこはもう全然何も否定しないですけれども,私は学校でできることはたくさんあるのではないかと思っています。まだできることはあるのではないかと,私は個人的には思っています。つまり,具体的な活動とか,そういうのをやったときに学校の中で例えば議論するとか,それをアクティブ・ラーニングというかどうか分かりませんが,数学でも,先ほど少し申し上げたみたいに,ではフィルムにどうやってお月様を写すのかといったときのこととか,これはやはり現場でしかできないことだろうと思うのです,この問題をやるときに。ただ単にタンジェントを使って答えを出すだけではなくて,実際にやってみようと,これは現場でしかできない操作であろうと思って,別に家庭の力ということに対してはもう全くおっしゃることに反論しているわけではないですけれども,学校でもう少しできることはあるのではないかと思っています。

それから,真ん中の評価方法ですけれども,これはもう少しお時間を頂きたいと。今ここで明快にお答えは少しまだしにくいという,ここだけは御勘弁いただきたいと。

【安西座長】  ありがとうございました。

学力の3要素につきましては,岡本委員も言われましたけれども,切り分けて,知識・技能は何とかテストで見て,思考はこれで見てということ,そのように分断できるものではないとは私も思いますので,本日提示させていただいたテストをしかるべくできるようになるにはやはり知識・技能も必要でありますし,一方で,おっしゃったようにいろいろな積み上げが必要だと考えられますし,また批判的思考力については,この提示したテストの中にも,自分で判断して,こちらを選んだら,それに対してこういう考え方を文章で示すという問題も入っています。一応そういうことは入れて,多少は入っているということでありますが,主体性については,主体性がある人間かどうかを,それを国が標準テストで見るというよりは,個別の大学が見ていただくということが本質的なのではないかということであります。

また,資料1を御覧いただきますと,資料1の1ページの下の方に(ア)問題の質的改善による思考力・判断力・表現力の重視とありまして,2ページ目の上に「統合的な思考力や表現力」をより評価するため「記述式」を導入とありまして,(ア)がいわゆる技術的にはマークシートで採点するといったことを想定している方に対応するのだと思いますけれども,その1ページの一番下の行に,これは例えばですけれども,「数値や式を直接解答させるなど解答方法を工夫」と書いてあります。これは,今までのような多肢選択,答えは幾つか候補があってそのうちから選ぶというのとはかなり本質的に違う,数値でも式でも,それを直接解答してもらうというのは,幾つかの候補の中から答えを選ぶのとは質的に全く違いますので,必ずしも多肢選択の今までどおりの問題形式がこの(ア)だということを言っているわけではないと思われます。そういう意味では,知識・技能を重視する中にも思考力というのは溶け込んできているとも考えられるかと思います。

どうもありがとうございました。

香山委員,お願いします。

【香山委員】

2点御質問したいのですけれども,これは見て,高等学校入試の大学入試バージョンだと直感しました。全国学力・学習状況調査を受けて,その流れの中で高等学校入試は今A問題的なものとB問題的なものを入れていくといったことが恐らく都道府県,様々なところで起こっているのではないかと思います。そういった理解でよろしいかということが1点です。

特に,思考力・判断力・表現力をどの場面で見るのかということについて,中間まとめの8ページに「これからの時代においては,ある事柄に関する知識の伝達だけに偏らず,学ぶことと社会との関わりをより意識した教育を行い,子供たちがそのような教育のプロセスを通じて,基礎的な知識・技能を習得するとともに実社会や実生活の中で,それらを活用しながら自ら問題を発見し,その解決に向けて」とありますが本日お出しいただいたものは,B問題的であり,かつ実生活・実社会のリアルな文脈の中で思考力・判断力・表現力を活用できるかどうかといった,パフォーマンス評価と言われているような,そういった問題になっている,オーセンティックな評価になっていると理解しているのですが,そういった形でよろしいでしょうかというのがまず第1点です。

それから2点目は,大学入試がそのようになりますと,当然それに向けて高等学校のカリキュラムを走らせていかなくてはいけなくなるわけですが,先ほど羽入委員も御指摘いただいたように,指導要領自体にそういったPBL(Project Based Learning)を促すような記述がふんだんになければ,佐野委員が指摘されているように,家庭教育で補わなくてはいけなくなるといったことになりかねないと思いますので,そのあたりの整合性がどの程度意識されてどこまで進んでいるのかということも気になっているのですが,その点につきましてはいかがでしょうか。

以上2点です。

【塩見大学振興課長】  すみません,失礼いたします。先ほどお話がありました中で最初の,問題が学力調査のB問題を意識したような形になっているのではないかという御指摘がありましたけれども,直接作問関係者の皆様の中でB問題ということで意識されたかどうかはともかくでありますけれども,恐らくB問題で狙っているような活用力といいますか,知識・技能をしっかり活用してより思考力などを発揮させる問題というイメージで作っていただいているところは共通しているのではないかと思っておりますし,我が国の子供たちの学力に関する課題の中でも,特に学んだことを実生活・実社会に引きつけて考えたり,それを様々な形で応用していこうというところの力が十分ではないということはこれまでも指摘されておりまして,その部分をかなり意識して,素材自体も,国語でありながらグラフで社会的な課題を読ませるとか,そういうところを意識した問題を作っていただいていると思っております。そのことは,先ほど総合という部分のお話も出てまいりましたけれども,知識を総合的に活用していろいろな思考を通じて問題を解決していくというところにも一面つながっている問題となっているのではないかとは考えております。

それから,高等学校のカリキュラム,高等学校の指導要領としっかり整合性をとった形で進めるべきだという御指摘はそのとおりだと思っておりまして,現在の学習指導要領の中でも,今回の問題でお示ししているような能力は非常に重視されておりますし,言語活動ということで,子供たちのアクティブな学びということはかなり重視されていると思っておりますけれども,現在,次の指導要領に向けた検討がまさに行われておりますので,そこの検討の方向性とも十分に整合性をとるといいますか,そちらの議論も十分にこちらの方でも受け止めて,こちらの会議にもお示ししながら進めていくということが大変重要ではないかと考えておりまして,御指摘は是非踏まえていきたいと思っております。

【常盤高等教育局長】  1点,補足をさせていただきたいと思うのですけれども,まさに今おっしゃっていただいたとおりで,いわゆるA問題とB問題ということはありますけれども,その前提となるのは,まさに今,塩見課長から申し上げましたように,知識の習得だけではなくて,その知識をどうやって実社会の文脈なども含めて活用していくのかということが,初等中等教育の非常に大きな課題として,この10年ほど取り組んできたことだと思います。それが,今まさにおっしゃっていただいたように,高等学校の入試というところまではたどり着いているわけですけれども,それをどうやって高等学校教育と大学入試,大学教育につなげていくのかというのが今回の高大接続の非常に大きな課題だと思いますので,今の高等学校学習指導要領の問題も含めて,初等中等教育ともよく連動しながら,それをうまくつなげて実現していくという方向で更に練っていきたいと考えております。

【安西座長】  ありがとうございました。

河野委員,それから恩藏委員,お願いします。

【河野委員】  どうもありがとうございます。今回このたたき台をお示しいただきまして,非常に分かりやすく,ありがとうございます。感想とお伺いしたいこととをお願いしたいと思います。

まず,この問題を拝見して感じたことですけれども,高校生がいろいろ経験したり,体験したり,又は興味を持ったり,関心を持ったりしたことが,リアルに問題の中にちりばめていただいている気がしまして,大変取り組みやすい気持ちになるのかと,モチベーションという言葉がいいかは分かりませんけれども,取り組みやすい姿勢になるのかと感じました。

それから,私は神奈川県におりますけれども,例えば高校生にかながわハイスクール議会をしているのですが,そういう様々な経験をしたことがこの問題を解くのにも生かせるというか,経験したことが,自分のが能力をはかってもらえる一部になっているのだというイメージをもてることも,とても重要かと思いました。今回サンプルということではあったのですが,例えば図書館の問題なども,日頃から問題をみつけ思考を重ねておくこと,考えて考えて悩んでおくことがここで生かせるという,大変実生活又は社会にも近い切り口で問題を頂いていると考えました。

それから,これはお伺いになりますが,当たり前ですけれども,これは問題なので,点数が高い方がいいわけです。とすると,当然ですが,では点数を上げるにはどうしたらいいのかという対策になってくるのですけれども,対策という言葉がいいかどうかは分かりませんけれども,その一つとして,先ほど佐野委員からも出ていましたけれども,もちろん学校の中で考え方を先生たちから学ばせていただくことも大切なのですが,興味関心とかきっかけづくりということを考えると,いろいろな行事などに関わるということも重要に感じます。この説明の中に「重視すべき学習のプロセス」というところがあるのですけれども,ここのところが,力を上げるために取り組むべきことと,読めばいいのか,このあたりの,要は,自分はここの問題ができなかった,となるとどうやって力をつけたらいいのだろうと思ったときに頼りになるところは,どこを読めばよろしいのでしょうか。又は,どうしていったらその力がつけられるかという御議論などがありましたら教えていただければと思いまして,一つ質問させていただきます。

以上です。

【岡本委員】  大変よい質問をありがとうございましたと,It's a good question.というのはなかなか答えにくいということを言っているだけですけれども,多分これは,個別の試験に対していい点を取った方がいいわけですけれども,その対策というよりも,ものを考える訓練とか,そういうものの糧になれば一番いいと思っています。恐らく,実は最初におっしゃっていただいたことは,ありがとうございますですが,実際はこういう問題を作るというのは結構大変なのですが,一方では,学校の教室の現場ではもっといろいろな事例がたくさん転がっているのではないかと私は思っています。ただ,それは組織化されていないから,一過性になってしまっているのかもしれないけれども,そういうところの可能性を生かしていくということが本当の試験対策になるのかと,これは理想論ですけれども,思っております。

【河野委員】  ありがとうございます。

【安西座長】  前にも申し上げたことがございますけれども,このテストというのは,高等学校を卒業する,あるいは高等学校にいる生徒たちだけが受けるということではなくて,誰でも大学で学ぶための力があるかどうかということを確かめていただくということが趣旨だと見ております。また,先ほど経済格差等々とのことをおっしゃいまして,これは非常に大事な課題だと理解しておりますが,それこそ,公立図書館の問題は去年出たから公立図書館へ行った方がいいとか,そのようにはなってほしくないわけです実世界で実社会と関連しながらいろいろな生き方をしていく,専門学校に行く子供たちもいれば,いろいろな子供たちがいるわけでありますけれども,理想的に言えば,そういう一人一人の人たちが一生懸命暮らしてきた結果としてこういうテストを受けていくようになっていけばと思っているところであります。ある意味,作問との競争ということになるのかしれませんけれども,これは知恵を絞って,こういう問題づくりを多くの人たちが関わってやっていくべきことなのではないかと理解しております。

失礼しました。それでは,恩藏委員,お願いします。

【恩藏委員】  二つの記述式の問題を見せていただきました。ありがとうございます。基本的な方向性については賛成したいと思います。その一方ですが,私たち試験に関わる者にとって一番大事なのは,公平性だと思います。今回のような論述問題で,しかも文字数が大分長くなってくると,どうしても評価がばらついてくるという危険性が考えられます。実際,私たちの大学の中でこういった論述の長いものを評価すると,特定のA先生とB先生では評価が変わってくることがある。今回のような,「提案をしてください」,その「提案に対する評価」となると,ある先生は非常に高く評価して,もう一人の人は場合によっては低く評価することがあり。もちろんロジックに対する評価も変わってくるかもしれない。そうなってくると,例えば1点刻みで評価するのか,あるいはABCで評価するのかと,それによっても違ってくると思うのですけれども,何十人もしくは百人を超えると思うのですが,これを実際に評価する採点者は,そういったばらつきをどう見るか。

あともう一つ,回答例というのがここにありますけれど,実際の試験のとき,試験が終わった後に回答例を開示するのでしょうか。もし開示すると,それを見た受験生が自分と比較してどう思うか,いろいろな問合せが来るかもしれない。採点結果の開示についても不安があります。自己採点か分かりませんけれども,自己評価との違いについて様々な質問が来るかもしれない。そのあたりの一連の試験後の問題点を少し分かる範囲で御説明いただけたらと思います。

【岡本委員】  かなり入試の機微に入った議論になってきているので,自分の経験でしかお答えできませんが,公平性の問題というのは,依然として残っていると思います。したがって,むしろ最初にどのように採点するかではなくて,その中で,では何段階で見るのかとか,そういうことが自然に出てくるだろうと思っています。

それから,解答を公表するかどうか。例えば,今大学入試センター試験のように択一式で,アが正解とかというのは解答を公開してもいいですけれども,記述式というより,個別の大きな大学,国立大学などがやっているような論述式のときは,どこの大学もそうだと思うのですけれども,大学から模範解答というのは非常に出しにくいです。特に数学などですと,答えは最終的には1個しかないけれども,そこに至る道筋というのは無数にあるので,逆にそこは少し工夫が要るかと。これだけが正しい答えというのがないようなことをやりたいわけだから,それはむしろ,必ずしも模範解答はなくてもいいのではないか。もちろん受験産業が解答例として幾つか出されるのは構わないけれども,きっとこっちの解答例とこっちの解答例が違って出てくれば,みんなその辺は変わってくる。ただ,そこは少し難しい問題だけれども,私は基本的には,自動的に正解を公表するということにはならないのではないかと個人的には思っています。

【安西座長】  よろしいですか。

先ほどからありますけれども,実施の時期あるいは採点の方法あるいは評価結果・採点結果の示し方といったことについては,本日作問のイメージをお出しして,その上で,今申し上げたようなことについては,次回以降議論をしていただきたいということだと理解しております。

評価結果の示し方につきましても,前から段階別表示といったことが言われておりまして,これも個人的にですけれども,このテスト以外に個別大学の入学者選抜があり,それからそれぞれ教科も国語とか数学とかいろいろあって,もちろん調査書もあり,いろいろなそういう情報をどのように組み合わせて大学側が入学者を選抜するのかということは,これは個人的な見方でございますけれども,それは大学側がお決めになることではないか。ただ,大学側として入学した学生には責任を持って教育をしていただきたいということではないかと個人的には理解しております。そういう中でのこのそれぞれの教科が,本日の例えば国語・数学等々の1教科の中の一つの問題の評価の粗さと言うといけませんが,段階別評価でどういう段階で評価するのかというのは,今申し上げたような全体の配分のデザインの中でどのぐらい効いてくるかということも含めて御検討いただければとは思っているところであります。

長崎委員,それから長塚委員,よろしいでしょうか。

【長崎委員】  それでは,今回の問題作成の方針について質問させていただきます。今回は思考力・表現力・判断力ということで,総合的に考えるとか,また活用とか実世界ということが一つの理念となっていると思います。総合的に考える場合には,紙と鉛筆だけではなくていろいろな道具を使うと思います。例えば,理工系ですと電卓などを使って計算していくということがあります。特に統計の問題では電卓やコンピュータは不可欠ではないでしょうか。欧米の大学入学資格試験では,1990年代には数学科などで電卓を自由に使っていいことになっています。PISAでも電卓を使ってよいのではないでしょうか。問題に取り組む時の電卓などの道具の利用をどのようにお考えになっているかということをお聞かせ願えたらと思います。

【岡本委員】  どういう道具を使って答えるかというのは特にまだ検討はしていないですけれども,だから個人的意見になりますけれども,あり得るけれども,難しいと思います。御存じのとおり,今,電卓といってもいろいろな電卓があるわけで,例えば個別入試で大学がこういう電卓を使いなさいと配るのはもちろんあってもいいけれども,例えば何十万人受ける試験でみんな同じ電卓なのかとか,それからそれは本当に電卓であってiPadでないのかとか,いろいろなことが関わってくると思います。ただ,おっしゃっている趣旨はそうではなくて,単に紙と鉛筆だけではないということだろうと思うので,それは絶対検討しなければいけないと思います。もちろん,個別大学でも,電卓を使っていい入試をやっている大学もあれば,英語などで辞書を持ち込んでもいい大学もあれば,辞書などは要らなくて,訳がみんなそこに表になっている入試をしている大学もあり,いろいろだろうと思います。少しそこは分けて考えますが,検討課題としては残っていると思いますが,一般的に電卓を使ってよろしいというのは,なかなか少し難しいのではないかと。

【長崎委員】  すべての生徒が同じ電卓をと考えると難しくなってしまいます。御参考までに外国の場合を御紹介しますと,使ってよい電卓を複数種類挙げたリストを示して,生徒は試験の時にその中のどれかを持ってくるということにしているようです。試験においても生徒が考える際に使える道具の幅は広がるとよいのではと思っております。

【安西座長】  ありがとうございました。

もちろん,いろいろな工夫の余地は今後ともあるかと思いますので,いろいろな御意見を頂ければと思います。

それでは,長塚委員,お願いします。

【長塚委員】  ありがとうございます。高大接続はテストだけでつながっていくわけではないという大きな前提の中でのテストのイメージを示していただきましたが,これを示していただいたおかげで,高等学校の学びをどのようにしていったらいいかという次期の学習指導要領が目指すイメージも,何かつかめた部分があるような思いがいたしました。

ただ,その指導要領がまだこれからという,教育課程の方で議論しているところでございますから,それによってこれからこの内容がもっと深まってくることと思います。ところでこの会議では,テストの実現可能性といったこととの絡みで,記述の問題なども,例えば30文字程度に最初は抑えるかという論点があったと思いました。ですから,今回いきなり,30文字どころではない,非常に記述を重視した,今までの議論の中にあったものとは一段階違う記述問題になっています。記述はもとより大事だと思っていますので,否定しているわけではないのですが,思考力・判断力などを問うにはそういうことが必要だと思っておりましたので,実現可能性の問題は別として,今回のこの提案は非常に前進したといえます。しかし,これだけの記述問題を採点処理まで全部考えていくと,相当なマンパワーや時間が必要だろうと思われます。これについては,次回議論されるということですけれども,このような問題イメージと枠組みでいいのかということは,当然そこにもつながる話ですので,少し感想というか,意見を言いたいわけです。つまり,採点に相当な時間を掛けなければならない。とすると,今行われているような大学入試センター試験の時期にこれをやって,その結果を出していくようなことは,相当難しいのではないかという気がいたします。それで,マークの部分と分離するような考えがあるようにも聞いているわけですけれども,それはある意味,こういうことをやるには仕方がないことになるのではないかと思われます。

また,思考力・判断力だけを問うような問題で,教育課程の中身に必ずしもこだわらないものであれば,時期が早まるようなことがあっても支障は少ないのではないか。私は実は「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について高校部会で議論していたときに,余り教育課程の学習内容にこだわらずに,こういう思考力のようなものを問うのであれば,実施時期はいつでも可能であると言っておりました。もとより,テストの実施時期が問題だということでしたが,この思考力を問うようなことであれば,時期は必ずしも押し迫ったところでなくていいのだという考え方が出てくるだろうと思います。そういうこととその採点処理に掛かる技術的な問題からすると,これを実際に行うに当たっては,時期の問題は今までとは相当違った考え方をしなくてはいけないだろうという思いがしました。

ただし,マークと記述をセットで,それを複数回という話は,ますます難しくなっていくので,いわゆる複数回と言っていたことも,これは考え方が変わってくるのではないかということも,ある意味,自動的に言えるのではないかと思われます。

高等学校現場では現在でも,現行の指導要領に合わせたものですけれども,例えば模擬試験でもマーク模試と記述模試などというのがありまして,それらを複数回実際に行っています。日本特有の教育現場の中でこういうことが大学受験との絡みで行われていますけれども,そのことでむしろ,案外現実的に対応できることではないかといえるかもしれません。とくに,英語については外部の検定を使うのだというのであれば,今行われているようなそういう模試の結果なども高等学校現場では大いに参考にしながら,この新しいテストにも対応していける,少し先走っていますけれども,そんな思いがいたしました。

以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

学習指導要領につきましては,羽入委員が言われましたように,もちろん中央教育審議会の方の議論と密に連絡を取っていただきながら進めていただければと思います。

また一方で,常盤高等教育局長が先ほど言われましたけれども,現行の学習指導要領でアクティブに学んでいくということはもう十分入っておりまして,本日出させていただいているこの作問イメージについては,現行の学習指導要領をベースにして十分な問題のつもりで,その問題として出させていただいているということでございます。

また,300字の文章を書くという場合の採点の問題,採点時期,採点の手間等々の問題については,もちろん議論をしていかなければいけないことでございまして,先ほどの資料1は3ページほどありますけれども,3ページの一番上に「記述式については別の日程で実施することも含めて検討する」と書かれておりますが,そういったことも含めて,実施日程,それから採点の方法,それから作問で本当に300字出せるのかどうか,それは高等学校あるいは大学の関係者とのいろいろな意見交換の中で決めていっていただければと考えているところでございます。

個人的には,記述式をある意味,別建てといいましょうか,そのようにしても,300字程度のある程度の長さの文章を書いてもらうということは,高等学校教育に対しても,あるいはもっと広い意味でのこれからの日本の教育に対しても非常に大きな力になるのではないかと見てはおります。

ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。香山委員,お願いします。

【香山委員】  少し関連するので,再度発言しますが,今カリキュラムの話とか教育課程の話が出ましたけれども,御存じのように高等学校では,教育課程外での部活動等あるいは特別活動も含めて,ペーパーテストではかれない力もしっかりつけていって,それが主体性・共同性・多様性といったことになって,特に大学の個別学力入試でそういったところを特に見ていただけるだろうと期待しているところですけれども,そのように全体像を見たときに,この「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の特に記述の部分が余り日程的に前倒しになりますと,現行のいわゆる学園祭等の日程の多くは私が知る限りでは9月の中旬あたりですので,そこから入試モードに入っていくということを考えますと,できるだけ11月の終わりあたりに設定していただくとスムーズに円滑にいけるのかなということを思いながら,そういった発言は次の回にしようかと思いながら,少しさせていただきました。そのあたりのところはまだ煮詰まっていないでしょうから,お答えはきついかもしれませんが,是非御検討いただけたらと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。

よろしいでしょうか。もしよろしければ,このあたりでもと思いますが,金子委員,どうぞ。

【金子委員】  このあたりということであれば,今後の審議日程はどのようなことになるのでしょうか。

それから,少し伺いたかったのですけれども,昨日出された国立大学協会からの声明を本日お配りいただきましたが,大変,むしろ前向きに積極的に関わっているという御意見で,歓迎すべきものだと思いますが,国立大学協会だけではなくて,私学団体等々について,その関わり方はどのようになっていくのでしょうか。

【安西座長】  ありがとうございます。国立大学協会にも改めて御礼を申し上げたいと思います。

いろいろな関係者,多くの方々が関わっていって初めてできていくことだと思いますので,今後ともよろしくお願いしたいと思いますが,今の金子委員の御質問については,事務局,お願いします。

【塩見大学振興課長】  ありがとうございます。審議日程でございますけれども,次は年明けになりますけれども,年明け,次回の会議におきましては,本日冒頭安西座長からもお話がありましたが,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施方法等について,具体的な部分について御議論いただければと思っておりますのと,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましても,これまでのワーキンググループ等での審議状況を踏まえて御議論をお願いできればと思っております。最終的には,年度末までに最終報告をおまとめいただけるといった日程になっておりますので,次回1月を予定しておりますが,それを踏まえて,順次議論を進めていただくべく事務局としても組み立てていきたいと思っております。

それから,国立大学協会をはじめとしまして,大学の関係団体の関わりという件でございますけれども,今はこの段階,この会議で議論いただいているという状況でございますので,十分議論を頂いた上で,当然のことながら,実施に当たっては関係者の皆様の御理解と御協力を得ていくということが必要になってくると考えております。

本日の資料1の3ページにも,実は最後,(ウ)の上の丸のところにも記述してございますけれども,恐らく,この会議において最終報告として,新しいこの二つのテストを含めて様々な御提案をまとめていただいた上で,それを具体的に実施に移していくということに向けまして,更に関係団体の方々,関係者の皆様の参画を得て具体的な部分を詰めて,試行などもしながら検討して,実施に向けて取り組んでいくということが必要になってくると考えておりますので,そこは我々の方としましても,それ以前より十分に情報提供,御説明などもしながら,御協力を得られるように取り組んでいきたいと考えております。

【安西座長】  ありがとうございます。

片峰副座長,お願いします。

【片峰副座長】  本日イメージを出していただいたのは,物すごくよかったと思います。いろいろ言っても,このテストの中身がこの改革の肝だと思います。本日議論がありましたけれども,高等学校の指導要領の改革にも連動しますし,大学としては,個別入試の中身にも物すごく関係してきます。そういった意味で,これをたたき台にして,とりわけ今後,実現可能性の問題も含めて,国立大学協会も関わりながら実質的な議論をやっていきたいと思います。一つだけ最後に質問させてください。国立大学協会の議論の中で,国立大学は,自分のところの入試に関わる入試問題だから,民間にお願いするのはいかがなものかという議論が一部あります。そういったことで,本日の資料には,明確に民間の活力を導入することも考えるという一文が入っているのですけれども,問題の作成とか,実施とか,それこそ採点とか,いろいろな部分があると思います。そこら辺のイメージを今分かっている範囲でいいですけれども,もし教えていただければと。

【塩見大学振興課長】  ありがとうございます。ここの資料の中に,民間の力を活用してということを書かせていただいておりますけれども,これは,正直申し上げまして,今,事務局としてこうあるべきというイメージがあるわけではございませんけれども,こうした試験の実施を考えてまいりました際に,例えば作問の段階なり,実施の実務なり,あるいは採点にはかなりいろいろな力が必要になってまいりますので,採点の中での部分的なことを含めて関わっていただくなりということで,民間の力も活用してやっていくということで,関係者全体をうまくオーバーラップして進めていくことができるのではないかということで,このように書かせていただいております。ただ,御指摘のとおり,それで決めてしまおうということではなくて,関係者の皆様がどうお考えになるかということが一番大事なことでありますので,こういったことも踏まえていろいろ議論いただいて,最終的にはどのようにしていくのがいいのかということをお決めいただければという趣旨でここには記載してございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

それでは,よろしければ,本日はここまでにさせていただければと思いますが,多少早いですけれども,何か御意見がおありの方は,是非事務局の方へお寄せいただければと思います。

この「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の作問のこと,また実施方法等の具体的な方策の在り方につきましても,新テストのワーキンググループにおいて更に検討を進めていただければと考えております。その結果を踏まえまして,このシステム改革会議において,最終報告に向けて議論を進めていければと思っております。また,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」についても,次回以降,議論をさせていただきます。

よろしゅうございますか。

ありがとうございました。大変貴重な御意見を頂きまして,感謝を申し上げます。

それでは,今後の予定等について事務局から説明をお願いします。

【新田主任大学改革官】  本日はどうもありがとうございました。

次回日程につきましては,年明け1月以降で調整の上,追って御連絡をさせていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【安西座長】  それでは,ここまでにさせていただきます。

どうもありがとうございました。閉会といたします。

―― 了 ――

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