専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議(第30回)議事録

1.日時

令和5年11月9日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

5F4会議室(WEB会議併用)

3.議題

  1. 専門学校における「分野」の現状等について
  2. 「専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議」における方向性のとりまとめ(案)について

4.出席者

委員

芦田 宏直  人間環境大学統括副学長
浦部 ひとみ 東京都立葛飾総合高等学校進路指導部、東京都高等学校進路指導協議会事務局次長
大谷 武士  全国中小企業団体中央会労働政策部長
河原 成紀  学校法人河原学園理事長
小杉 礼子  独立行政法人労働政策研究・研修機構研究顧問
佐藤 由利子 東京工業大学環境・社会理工学院融合理工学系地球環境共創コース准教授
寺田 盛紀  京都先端科学大学客員研究員、名古屋大学名誉教授
冨田 伸一郎 株式会社ウチダ人材開発センタ代表取締役社長
野田 文香  独立行政法人大学改革支援・学位授与機構研究開発部准教授
前田 早苗  千葉大学名誉教授
吉岡 知哉  独立行政法人日本学生支援機構理事長
吉本 圭一  滋慶医療科学大学教授

文部科学省

望月 禎    総合教育政策局長
八木 和広  社会教育振興総括官
石橋 晶    生涯学習推進課長
中安 史明  専修学校教育振興室長

5.議事録

 【吉岡座長】  定刻になりましたので、ただいまより専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議を開催いたします。
 本日は御多忙の中御出席いただき、誠にありがとうございます。
 初めに、事務局に交代等がありましたので、御紹介します。まず、望月総合教育政策局長より御挨拶いただきます。望月局長、お願いいたします。
【望月総合教育政策局長】  総合教育政策局長、望月でございます。吉岡座長はじめ、委員の皆様方におかれましては、専修学校の充実につきまして、この会議の委員をお引き受けいただきましてありがとうございます。また、本日もお忙しい中、大変ありがとうございます。これまで回を重ねて、今日が30回目ということでございまして、普通、会議というと、大体区切りをつけて、そこからまた1回目が始まることが多いんですけれども、この協力者会議は、ずっと継続している形で30回目の開催ということで、この2年間の取りまとめに向けた回ということでございまして、これまで専修学校については、本協力者会議を通じ、質の保証や、あるいは職業実践専門課程制度を創設するといった新しい質の保証の観点、あるいは質の向上のための取組ということを、成果として仕入れさせていただきました。それも学校現場ではかなり定着してきてございまして、それを専修学校は目標として、あるいはそういう制度を活用しながら、多くの生徒たちに対する教育の充実がなされてきているというふうに考えてございます。専修学校はもとより御承知のとおりでありますけども、非常に実践的な職業に結びつく教育を行ってございまして、そういう意味でいきますと、社会あるいは時代の変化がいろいろありますけれども、それに応じて、大学以上に柔軟にカリキュラムを編成したり、あるいはその人材の育成にも対応していけるものであるというふうに考えてございます。また、生徒も留学生も含めて、これらの多様なニーズと多様な背景を持った方々が多く入ってくるという中で、専門課程においては、おかげさまで本当に高等教育機関の大きな一翼を担うまでにだんだん成長もしてきている。これからますますその充実を図っていかなければならないと考えてございます。
 そういう意味では、この協力者会議が、今回取りまとめを行うと。我々としてもまた今回の新しい取りまとめを踏まえ、次のステップもしていきたいと思ってございますので、委員の皆様方におかれましては、それに向けて闊達な御意見、御議論等を取りまとめ、お力をおかしいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
【吉岡座長】  ありがとうございました。引き続き、八木社会教育振興部総括官から御挨拶いただきます。よろしくお願いします。
【八木社会教育振興総括官】  皆様、こんにちは。10月1日から社会教育振興総括官を拝命しました八木と申します。
 私も一言だけ申し上げますと、今は総合教育政策局ですけれども、昔は生涯学習政策局という時代がございました。私も平成6年に入省して、実は社会教育をやってきたのはこれで4回目になるんですけれども、いつも今の地域学習推進課、昔の社会教育課のサイドから、専修学校の内容などを見てきたんですけれども、約30年前から比べると、当時も専修学校の重要性というのは高く言われてはいたんですが、だんだん、私が着任するたびにその重要性が高まっているのを感じておりまして、特に、今まさに世の中の不確実性が高まって、テクノロジーが進み、国際化も進む中で、専修学校の重要性が今までになく高まっていることは間違いないと思っております。そうした中で、専修学校の在り方について、また、今後のしっかりとした枠組みをつくっていただくために、先生方にこのように集まっていただいて御議論いただくことは本当に貴重な機会だと思っておりますので、我々としても、御提言を受けていろいろ取り組んでいきたいと思います。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
【吉岡座長】  ありがとうございます。続いて、石橋生涯学習推進課長から御挨拶いただきます。よろしくお願いします。
【石橋生涯学習推進課長】  同じく8月に着任いたしました石橋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私も、3か月程度この仕事で専修学校の皆様方といろいろと関わってまいりまして、やはり今、局長、そして総括官が申し上げたように、専修学校の重要性は非常に高まってきているなと思っておりますし、かつ、やはり高等教育機関として、この先どういうふうにさらに発展していくかというところは、この会議でいろいろ御議論いただいていることがベースになってこれまでも進んできておりますので、今回の取りまとめに当たりましても、先生方のお力をいただけますように、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【吉岡座長】  ありがとうございます。よろしくお願いします。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 最初の議題、専門学校における「分野」の現状等について、事務局から資料の説明をお願いいたします。
【中安専修学校教育振興室長】  お時間をいただきまして、ありがとうございます。
 資料1、専門学校における分野の現状等についてということでございます。
 関係法令等における分野の位置づけですけれども、専修学校設置基準上、専修学校の各課程には基本組織を置くこととされており、それを分野と称しております。分野は8つありまして、設置基準の別表に規定されております。運用上、分野の変更は目的の変更であり、認可事項とされております。また、分野の区分をまたぐ場合であっても、密接な関連を持つ学科を置く場合は、これらを合わせて1つの教育上の基本組織とすることが限定的に認められてきております。この考え方は、専修学校制度施行時の昭和51年の事務次官通達において示させていただいております。
 以上を踏まえまして、各都道府県においては、分野を踏まえた設置認可等の行政実務を行っていただいております。文部科学省では、設置基準に加えまして、学校基本調査の中で分野行動等をお示ししているわけでございますけれども、こういった情報が各都道府県による分野の判断の際に御参考いただいているものと考えております。
 そこで、近年の施策の動向でございますけれども、現在、修学支援新制度の中間層への拡大が検討されておりますところ、対象としては、多子、また理系、専門学校で申しますと工業関係、農業関係の分野ということになってございます。また、専修学校専門課程に対する第三者評価の導入等も検討されているという状況がありまして、分野の考え方の重要性が高まっているという状況がございます。
 これに関連しまして、工業関係等の分野に係る認可の状況について文部科学省で調査を行いました。そうすると、おおむねは、学科目や教育内容と認可の分野が一致しておったわけでございますけども、一方で一部、社会通念上ほかの分野に属するものの、個別の事情により工業関係等の分野で一体的認可を受けていると考えられる例が散見されました。具体例として、下の点線枠囲いに書いてございますけれども、工業課程の専門課程にIT系の学科等が置かれているわけですけれども、それとセットで声優学科やミュージシャン学科、ダンス学科、芸能学科などが置かれている例、また、別の学校でも同じように法律情報科、経営情報科、ビジネス基礎科、医療事務科などが置かれている例がありました。
 修学支援制度の文脈で申しますと、修学支援新制度の対象拡大は、デジタルやグリーンなどの成長分野の振興の観点、それから理工農系は、私立において特に授業料負担が重いという実態を考慮しまして、支援対象の拡大が検討されているものでございます。このため、一般的には他分野の専門課程に置くべきと考えられる学科は、たとえ工業関係等の分野の専門課程に一体的に置かれているとしても、支援の拡大の対象外とすることが適当なものもあるのではないかと考えてございます。
 そうした状況を踏まえまして、分野に関する今後の検討ということでございますけれども、分野については、修学支援新制度の対象の拡大の検討の中で考え方の整理の必要が出てきているということでありますけれども、本来であれば各学科が属するべき分野で設置認可を受けるというのはある意味当然という考え方もあり得ると思ってございます。他方、都道府県様の認可の一部が分野の区分をまたがる形で行われている背景には、前述の通達、ひいては専修学校制度に内在する自由度の確保の要請もあると考えられます。また、認可は都道府県の事務として都道府県に裁量があるということは当然のことでございます。このため、各学科の教育実態と認可を受けている分野、これを一致させていくということは重要、必要ということを前提とした上で、それを進めるに当たっては、都道府県と文科省が連携して少し時間をかけつつ対応していくということが考えられるのではないかと思っています。その際、文部科学省では、分野と認可に関する考え方の再整理でございますとか、学校基本調査の分類見直しも含めた必要な情報の整備、そういったことを進めることが考えられると思っています。また、当面のこととして修学支援新制度の運用としては、特別の事情により、本来属するべき分野とは別の分野で認可を受けていると考えられる学科に在籍する者は支援拡大の対象外とすることも考えられると考えております。その際は、判断基準を明確にすべきということでありますし、具体的には学校基本調査における分類や、同様の教育内容を行っている学科の分野に対する認可の全国的な状況等を判断基準とすることも考えられるのではないかと思ってございます。
 今日のトピック、メインは取りまとめに向けた動きですけれども、各論として、この話題について、まずは御意見を賜れればというふうに考えてございます。
 以上です。
【吉岡座長】  ありがとうございます。今の点につきまして、御質問あれば、どなたからでも結構ですけれども、いかがでしょうか。基本的な情報だと思いますけれども。あったら、お願いします。吉本委員、どうぞ。
【吉本委員】  分野の検討ということが議題に上がっていまして、これは前回報告させていただきました東京都の専修学校各種学校協会で、全般的に専門学校教育についてかなり包括的に検討した結果として、分野分類をはっきり見直そうということで、これはメンバーとしては多先生のほうで担当しておったんですけれども、報告をさせていただいております。
 そこでは、もちろん今回の話は、修学支援新制度のことなので、本来支援すべきところとそうでないところという、非常にデリケートな話を含めて、それでも分野分類を扱わなければならないということになったので、これはいい機会だと思います。そこでこの小さな部分だけにこだわらずに、もう少し全般を議論いただければと思っております。
 ですからもちろん、こういう検討をぜひ進めていただければと思うのは当然ですけれども、それ以上に、ほかの分野も含めていろいろな形を議論しなければならないと思っているところです。例えばここに、説明にありましたけれども、8分野というだけではなくて、学校基本調査等の分類を基に都道府県が判断の際の参考にされているということなんですけれども、実は、この8分野の分類というのがいろんな意味で限界があります。これはもう前回お話しもしましたけれども、1つは「その他」という分野がないということで、第8分野となっている「文化・教養」のところに多様な分野が入っていって、これが同じものであるのかどうなのか大きな疑問です。広く同じというか、文化・教養という形でひとまとまりになるのかどうかというのは、これは非常に怪しい部分があります。それから、具体的なもう少し細かなところで言えば、今日頂いている資料の参考の2の、例えば402「調理」と702「料理」の2つの分類の下位に同じ「調理」という学科名があります。402「調理」は恐らく営業的なことを考えて、702「料理」は家庭での料理ということを言っているんでしょうけれども、しかし、そういう区分というのは、学生が入るときに必ずしも明確に分かれていないし、それを受け入れるときも分けていないわけですから、こういうところが出てきたときに、かえって都道府県が混乱するのではないかと考えます。そういうことも含めて、細かなところも、大きな基本的なところもありますので、ぜひ分野分類は見直しをしていただければと思います。
 この点についてもう一つ大きな軸としては、東京規約との関連です。つまり国際的に通用する分野の分類をつくるということで、この課題は恐らく専門学校だけの話ではなく大学、短大も同じです。「実質的な相違があることが明らかである場合を除くほか」という東京規約の原理的な文言をどう理解するかという方法論は、まだ実は示されていない。今手探りでこれをやろうとしていますが、究極にはレファレンスが何かないといけない。レファレンスになるのは本来はISCEDの2013Fという教育訓練の分野分類があるので、これに合わせていくことが必要となります。大学も短大も専門学校も高専も一緒に、分野分類の議論をしなければならない。ちょっとここまでになると、今回の修学支援新制度と進み方がちょっと違うかもしれませんけれども、ぜひ検討の課題に乗せていただければというふうに思っているところです。
 まず、その当たりを少し申し上げておきます。
【吉岡座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。河原委員、お願いします。
【河原委員】  資料1の3ページにもありますように、学科設置の自由度の確保にやや重きを置きつつ、文部科学省通達の趣旨を踏まえながら各都道府県で認可が行われてきた経緯もあって、工業分野に分類するにはやや分かりにくい学科が現状存在しているのだと思います。しかし、今日、修学支援制度との関係で、理工系の進学者に支援対象を拡大しようというときに、社会通念上疑問の余地を残すような学科まで対象に加えることは、公平性の観点から理解を得にくいのではないかなと思います。今後、学校基本調査の学科コードの見直しまで含めて、あるいは学科分類のガイドライン策定等も含めて整備が必要なのだと思います。
 ただし、学科分類ガイドラインを設けるとなると、一定の強制性も必要で、もしガイドラインに抵触する既存学科が存在していた場合については、猶予期間を設けた上で分野を変更し適正化を図ることも必要になるのではないかなと思います。また、将来、質保証の強化策として、第三者評価を機関別評価ではなく分野別評価まで実施していこうとした場合に、分野と学科の関係が妥当なものでないと、実際の評価において適切に進めにくいかなと思います。日本版NQFを進めていった先で、枠組みの下に既存学科を包摂しようとしたときにも混乱が生じかねないと思います。
 以上のことから、学科分類と既存学科の関係は、一定の適正化を図る必要があると思います。
【吉岡座長】  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 1つは、直近の問題として修学支援新制度との関係でどうするかという問題と、それからそもそも分野自体にどう手をつけるかという、かなりのところまでは技術的にできるのかなとも思います。ここで上がっているような例について、私は詳細については分かりませんけれども、言える範囲であれば、つまり、対象から外すかどうかということの判断というのはある程度はできるかなと思いますけれども、そもそも分野の問題から始めてそっちに行くと、多分間に合わないというのはおっしゃるとおりだろうと思います。
 いかがでしょうか。何かこの点につきまして、ここで御意見があればいただきたいと思いますが。何となく考えてみると、工業関係のところに、例えば声優学科やミュージシャン学科が入ってくるというのは、学校を卒業した後の例えば会社の分類や、どういうところと関係しているみたいなことで恐らくそうなったのかなと推測します。つながりは全くないわけではないんだろうなとはもちろん思いますけれども、確かに修学支援新制度との関係で、このような学科が対象になるというと、何でだということで、ほかのところに全部逆に影響してしまうことになると思うので、その辺はやはりある程度基準を立てなければならないだろうと思います。
 事務局、何かいいですか、今のところで。
【中安専修学校教育振興室長】  御意見いただきありがとうございました。踏まえて、省令改正等の検討を進めさせていただければと思っております。
【吉岡座長】  ありがとうございます。それでは、次の議題に入りたいと思います。
 「専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議」における方向性のとりまとめ(案)について、事務局より資料の説明をお願いいたします。
【中安専修学校教育振興室長】  ありがとうございます。
 それでは、資料2を御覧いただければと存じます。
 資料2の1ページ目には、これまでの議論の経緯をまとめさせていただいております。令和2年度から3年度間のクールにおいては、第20回から第25回ということで、テーマは職業実践専門課程の充実に向けてということでございました。職業実践専門課程の充実ということで、やや複雑化しつつある専修学校振興の方策について、専門士の認定の部分と、職業実践専門課程の認定の部分を要件そろえていくということですとか、都道府県・企業への理解促進等と書いておりますけれども、この裏に、例の職業実践専門課程への特別交付税措置の創設ですとか、そういったところをまとめていただきました。また、職業教育のマネジメントということで、教員に対する研修の充実ですとか、育成する人材像の明確化等、近年の高等教育のトレンドに沿った対応を専修学校においても進めていくべきという御提言を賜っていたというところでございます。
 それから、令和4年度から5年度、今回のクールということでございますけれども、第26回から第30回までということで、大学設置基準に合わせた専修学校設置基準の見直しですとか留学生の関係、それから、専修学校振興構想懇談会専門学校検討部会の報告書の御報告といったものをいただいてきたという経緯になってございます。
 次のページを御覧ください。2ページでございます。
 このページは、この後、取りまとめに向けた議論を様々いただくわけですけれども、端的に整理して、今回の御議論を踏まえて、文科省としてどういう対応をしてきたのか、またしていくのかといったことを書いているものでございます。職業実践専門課程の充実ということで特別交付税措置が始まっておりますので、こちらを都道府県様と連携しながら充実させていくというようなこと。それから、職業実践専門課程における実習や教員体制といったものについて、もう少し、いろんな効果が職業実践専門課程でもついてまいっておりますので、要件をしっかりしたものにして、職業教育機関としてよりふさわしいものにしていくという検討があってもいいのではないかという御提案もいただいてきているものだと思っていますので、その対応を進めていくということを考えております。
 また、社会人に対する教育ということも専修学校に果たしていただいている大きな役割でございますので、大学には履修証明プログラムの制度化があるんですけれども、専修学校にはなかったものですから、御提案いただいて、令和4年6月に制度をつくらせていただいておりますし、高度専門士について、区分性について検討していくべきという御提言もいただいているところでございますので、それも検討していく必要があると考えてございます。
 また、留学生の関係については、卒業後の在留資格の切替えの問題がございました。こちらについては、外国人留学生キャリア形成促進プログラムを令和5年6月に告示で制定させていただきまして、現在、学校の認定作業等を進めさせていただいているところでございます。
 それから、前回の吉本委員、それから関口副会長の御提言の核になる部分だと思いますけれども、職業教育を行う教育機関としての位置づけの明確化ということで、単位制の問題、それから称号の位置づけの問題、学生/生徒の呼称の問題、教育の質の保障ということで、第三者評価などの検討を進めていくべきというお話がありました。
 それから並行して、河原委員からも御発言がありましたけれども、ISCEDの関係について、特に、ここで位置づけの見直しと書くと少し大仰ですけども、高度専門士の位置づけがレベル5のままだったものをどうしていくかということについても検討を進めるべしという御提言だというふうに考えてございます。
 それから、分野の考え方、あとオンライン教育、こちらはコロナ禍の下で一部大分進んだものがあります。従来専修学校はあまり遠隔授業等をやっていなかったと思うんですけれども、あのときに整理された法令上の考え方、それから実態、そういったものを整理していったらどうかという御提言をいただいておりますので、ちょっと今回間に合っておりませんけれども、次の会議等に向けて準備を進めさせていただき、また御相談させていただければと考えてございます。
 以上が、今回の会議を踏まえてどう進めていくかということの概略でございますけども、3ページ目からは、実際報告書の話ということで、議論の依り代のようなところで目次のようななものを整理させていただいております。
 まとめの方向性、これまでいただいた御意見などということでございますけれども、前提としてありますのは、2040年に向けた高等教育のグランドデザイン、新たな諮問が高等教育全体についてなされていますので、それはそれであるんですけれども、まず、これまでのベースということで、例のグランドデザインということを書かせていただいております。ポイントは3つあって、学習者本位の教育、多様性と柔軟性の教育研究体制、それから教育の質の保証と情報公開というものがあったわけですけれども、それぞれを専門学校に当てはめていったときにどういうことがあるかということでございますが、学習者本位の教育という部分については、社会で活躍する専門人材を養成していくというのが専門学校の立場であろうということでございます。多様性と柔軟性については、専門学校はそういう特徴をある程度もともと持っていたというところがありますので、逆に教育プログラムの標準化や可視化ということが困難だが重要な課題になるのではないかということを書かせていただいております。それから、教育の質保証と情報公開ということについては、高等教育の一翼を担う専門学校としての評価等の在り方、具体的な第三者評価の在り方等を検討していく必要があると書かせていただいております。
 その後の社会情勢や政策の変化というのは、グランドデザインが平成30年ですので、その後何があったかということをざっくり書いているわけでございますけれども、少子化が加速しておりますし、いわゆる大学全入ということもしばしばささやかれるようになっておりますし、全業種で人手不足というのが、社会問題としては出てきているという状況だと思っています。また、政策のほうで、修学支援新制度について、専門学校も対象になったというところが大きかったと思いますし、話題にも出ていました世界規約の制定というようなところで、国際的な高等教育人材の流動性の向上のようなことも話題になってきております。G7と書いておりますのは、G7においても職業教育人材の確保ということは各国共通の話題として、議論の経緯ではイギリスやドイツがそういうのも書いてくれということで書かれているという状況で、そのことも世界各国の共通の課題になってきているという状況を書かせていただいております。
 専門学校の現状、教育内容等に関する高い評価、こちら、ミレニアム調査は、2001年にお生まれになったお子さんを文科省と内閣府がずっと追跡調査をかけておりますけれども、その方々が二、三年前から高等教育機関に在籍されているという状況があったということでございます。その中で、通っていらっしゃる学校種の教育に対する満足度ですとか、それが、将来、自分の就職していくに当たって役に立つかどうかということについては、各学校種がある中で、専門学校が一番高い評価を得ていたということがありますことをもって、足元高い評価というふうに書かせていただいております。一方で、ここ2年について見てみますと、高等教育機関における専修学校進学者に占める割合は少し減っているということのが起こっていますので、そういった状況があることをどう評価していくかということがあろうかと考えてございます。
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 総論、議論の方向性でございます。専修学校への期待、役割ということで、最初の望月局長からのお話にもありましたけども、実践的な職業教育機関、これが専修学校の中核的な考え方ということは変わらないんだろうと思っています。教育内容、具体的に言えば企業等と連携した実践的な教育カリキュラムの実施、その典型は職業実践専門課程だと思っています。それから、卒業生については、専門人材の地域や産業への供給ということで、データもありますけれども、他学校種に比べても地元への就職率はかなり高いというのが専門学校の特徴だろうと思っています。その中に留学生や社会人といったものも、今後、あるいは既に含まれていますけれども、そういったことへの対応も今後もしっかり進めていく必要があると考えてございます。
 それから、政策の方向性としては、効果的な支援策の実施・継続ということで、職実の特別交付税、修学支援等があります。留学生や社会人の受入れ推進、それから職業教育機関としての位置づけの明確化、それに伴う教育の質の確保や経営改善、これを進めていく必要があるのではないかということでございます。
 次のページを御覧ください。
 各論、まずは専門学校でありますけれども、機能強化、それからどういう施策という部分については、企業と連携した実践的なカリキュラムの推進、職実の推進ですし、具体的には教員の資質や体制の向上、特に研修なども含めて、今後しっかり見直していく必要があると考えてございます。また、職業教育マネジメントについても進めていく必要があると考えてございます。留学生の受入れ促進については、外国人留学生キャリア形成促進プログラムができましたので、今後、在留資格の運用改善に向けて具体的な取組を法務省様と連携しながら詰めていくということが考えられますし、そのほかにも少し国際化の推進ということについても考えていく余地があるのではないかと考え、書かせていただいております。それから、社会人のリスキリング、受入れ促進ということでございまして、社会人の学び直しによる専門性の高度化、今予算事業なんかもやらせていただいておりますけども、高度専門士の区分制導入に関する検討等について具体的な御議論をいただいておりますし、現状、研究者の方の論文を見ると、どういった方が専門学校に学び直して入っていらっしゃるのかということで見ていくと、地元Uターンですとか、企業の現職受入れといったところがあると思いますので、そういったことをどうやって促進していくか、そういうことも考えていく必要があるということで書かせていただいております。
 それから、職業教育を行う高等教育機関としての位置づけの明確化でございますけれども、これは吉本先生、関口先生のお話にありました単位制、称号、高度専門士の区分制、それから学生/生徒の呼称、第三者評価などということを、今後制度化として検討していく必要があるのではないかということでございますし、ISCEDについても考えていくと。その中で職業教育の体系化ということの議論が出てくるということですし、また、中期事業計画の策定についても、少し検討してもいいのではないかという話が関口さんの話なんかにあったと考えております。
 それから、その次のページに行っていただきまして、高等専修学校でございます。こちらについても、後期中等教育の学びのセーフティーネットとしての機能強化ということで、近年、永岡大臣のときにつくられた不登校対策のCOCOLOプランでございますとか教育振興基本計画の中においても、高等専修学校が割と、しっかり位置づけられるということが進んでまいりました。こうしたことについて、さらに学校と都道府県、文科省が一緒になって進めていくということが必要なのかなと考えております。留学生についても、高等専修学校についても受入れ促進を考えていく必要があるということでございます。
 そのほかということで、オンライン教育、分野の考え方、あと広報活動の充実といったこともしっかり進めていくということが必要だと考えてございます。また、専修学校に関するデータということで、机上配付資料という形で今日は御準備させいただいておりますけども、説明は省かせていただきますけれども、分野別生徒数の経年の推移ですとか、5ページ目から、主な資格の取得要件、学校種別の養成施設数等ということで、今専修学校が果たしていただいている状況等について整理してみました。
 以上になります。いろんな御意見いただければと思います。
【吉岡座長】  ありがとうございます。それでは、今の説明に対して、質問でももちろん構いませんし、より一般的に、報告書で言及すべき事柄等、あるいは考え方等、どのような観点からでも結構ですので御意見いただければと思います。いかがでしょうか。
【河原委員】  よろしいでしょうか。
 資料2の5ページですけれども、「職業教育を行う高等教育機関としての位置づけの明確化」ですが、吉本先生が専門学校制度の可視化ということで、専門士、高度専門士の称号、大学編入資格の有無、職業実践専門課程の認定の有無について、現在の専門学校学科には、多様なタイプの課程が存在し得るという状況について御報告があったと思いますが、これらの諸制度を整理する方向で進めていければというふうには思っております。
 吉本先生の御報告の中で、専門士、高度専門士の資格については、学校教育法の条文で、大学等と同様に文部科学大臣の定めるところにより授与されるものとし、履修主義の観点から単位制を明記することで、別途の規定なく、専門士の大学編入資格、高度専門士の大学院入学資格をそのまま承認するものとしてもよいのではないかと思います。もちろん、専修学校設置基準も、そこに合わせて1年間当たりの最低取得単位数を31単位に変更すればよいと思いますが、5ページのところの単位制、称号の位置づけ、高度専門士の区分など、具体的な制度改正の内容まで書かれてはいないので、ここの項目について御説明をお願いしたいと思います。
 まず1つ目ですけれども、単位制については、専門課程のみを想定しているのか、他の省庁の国家資格の指定要請規則との整合性はどうなっているのか。
 2つ目に、称号の位置づけは、専門士、高度専門士とともに法律上明記されるのか。
 3つ目、高度専門士の区分については、大学院入学資格との関連性はどうなるのか。
 4つ目に、第三者評価の努力義務の範囲や大学と同等の認証評価機関による評価を想定しているのかということです。
 このような論点があるかと思いますので、検討状況について可能な範囲で教えていただければと思います。
 あともう1点、資料2の6ページですが、高等専修学校の機能強化の方向性、それに伴う施策の改善提案のところなんですけれども、高等専修学校が担う学びのセーフネットとしての機能強化は最も重要な点ですが、そういった役割を果たしていくために都道府県と国との連携による支援策が欠かせないと思います。その支援の充実について盛り込んでいただきたいと思います。
【吉岡座長】  事務局のほうから答えられることがあれば、お願いします。
【中安専修学校教育振興室長】  単位制については、前回協力者会議における吉本先生からのプレゼンテーションにおいて、基本的には専門課程ということをまずは前提とした御発言をいただいていたと承知しておりますし、そこがまずメインなのかなと考えてございます。
 他省庁との関係ということでございますけれども、今日は机上資料にさせていただいておりまして、またどこかで他省庁様とも調整をさせていただいた上で明らかにさせていただければと思いますが、机上資料の13ページを御覧いただきますと、国家資格における単位制と授業時数制ということについて現状整理をしておりまして、ある程度、単位制に移ってきている国家資格も多くございますので、猶予期間等を、検討期間等を含めて考えればソフトランディングしていけるということではないかと考えております。
 称号をどうするんだということについては、今後制度改正の議論の中で詳細を詰めさせていただくという形にできればと思っておりますけれども、吉本先生が従来おっしゃっている制度の可視化ということでも、認定制度自体が多くなっているという状況がありますので、そういったことの見直しも含めた検討をさせていただければと思っています。
 それから、高度専門士の通算を何らかの形でした場合、区分制で設けた場合に、大学院入学資格についてはどうするんだという御議論をいただきました。こちらは、制度に対する今日のような御議論について、文科省としてその御提案を受け止めて、その制度案を作成し、それを今度は大学分科会、中教審のほうとのご関係も含めて検討していくというプロセスの中で、どうしていくかということが決まっていくということだと思います。ただ、4年制の高度専門士については、大学院入学資格が制度上付与されているという現状も、相当程度考慮をいただきながら検討を進められればありがたいなと考えております。
 それから、認証機関のようなものを置くのかということでございますけれども、こちらも御議論の中でということになるとは思いますが、ある程度の第三者性の確保、評価機関の質の確保自体は必要であり、一足飛びに認証評価とはいかないと考えますが、独立性の確保など、そういったことも視野に入れた検討になるのではないかと思っています。
 最後の高等専修のことについては、支援自体は重要だと思っております。報告書でどのような書きぶりができるかということも含めて御相談させてください。
 以上です。
【吉岡座長】  よろしいでしょうか。
【河原委員】  ありがとうございます。
【吉岡座長】  ほかにいかがでしょうか。それでは、浦部委員、よろしくお願いします。
【浦部委員】  高校の立場ということで、やはり高校生が進学する先に1つ大きな選択肢として専門学校がございます。こちらの中に、内容の面では多分含まれてはいるんですけれども、はっきりとした示し方は、特に今回に関してはなかったのかなという形には見えるんです。高等学校では学習指導要領が新しくなりまして、現在3年生が旧課程、来年度になりますと全日制課程全体で新学習指導要領という形になりまして、新しい時代を担う子どもたちの育成というところが非常に大きな本当にテーマとなってきます。その生徒たちが選ぶ選択肢としての専門学校を、どのように示して進学先として位置づけてあげられるのか。先ほどの高度専門士の件もそうですし、なかなか現場として分かりにくいという部分がどうしても残ってしまいます。また、専門職大学についても、大学や専門学校とどこがどう違うのかという点において、現場の教員すらも戸惑っているというところもあります。なので、高度専門士でしたら、その先にこのような道が開けるですとか、現場にそうした点が十分浸透しているとは言いがたい部分が実際あるので、そこをどういうふうに手当てをしていただいて、これから未来を担う子どもに大きな選択肢の1つとして提示できるのかというところを盛り込んでいただくチャンスがあればぜひお願いしたいと思っております。
 以上です。
【吉岡座長】  事務局、何か、よろしいですか。
【石橋生涯学習推進課長】  浦部委員、ありがとうございます。そこはおっしゃるとおりかなと思っておりまして、専門学校、それから大学、専門職大学と、短期大学も含めればいろいろな選択肢が生徒さんたちには準備されておりますけれども、専門学校というところに行くと、自分はどういうことが身について、また社会にどう役立つことができていくのかということが、この報告書の中でも、丁寧に書いていくことで1つアピールができればなと思っておりますので、実際の記述のところでまた委員からもアドバイスをいただければ大変ありがたいと思っております。
【吉岡座長】  ありがとうございます。では、吉本委員、どうぞ。
【吉本委員】  幾つかあったんですけれども、今の浦部委員からの、高校生に向けて、1つは複雑な認定制度をほとんどクリアにするというとおかしいですけれども、除いていくことで、制度上より明確な入口を示す、可視化ですよね。制度の可視化というのは、大変に重要ななことだと思うんです。もちろん、制度の可視化だけでなく、浦部委員がおっしゃるように、どこかで人材と学修成果という出口の軸が必要ですし、そのためにも分野分類を見直すことが科技になります。これは、専門学校だけでできないことではあるけれども、他の学校種も含めて、検討の課題ということを言ってほしいと思うんです。
 そうすると分野というのは何かということを考えることが必要です。大学では分野別の参照基準等々があり、厚生労働の世界ですと職業能力評価基準などもありますから、そういうものと対応するようなものをつくっていく必要があります。個々の学校が3ポリシーをそれぞれ自由につくっているという実態はあるんですけれども、その相場、標準をつくっていくということが、改めて課題になっているわけです。
中教審(2018)の『グランドデザイン』の中から専門学校については学修成果の標準化や可視化が課題であるという指摘も読み取れますが、大学のような分野別参照基準や学士力などの検討もないため、専門学校にはほとんど相場が見えない。しかし、だからといって、浦部委員がおっしゃる、大学で学修成果の何かが見えているかというと本当は見えていない。恐らく、800の大学が同じように学修成果を書いて高校生に出口が見えるようにするということは、この先もなかなか大変だろうと思います、そうであれば、専門学校のほうが、職業教育という分野を意識した教育を行っているだけに少し有利なスタートラインに立てるのではないかなとも思うんです。そういうことを加筆してみたらどうかと思うんですよね。。
 次に、大学院入学資格の認定制度の話です。確かにこれは大学分科会のほうの話であって、ここで議論する話ではないとも見えます。しかし、明らかに専門学校側から言うべきことは、大学院入学資格としては、特に「外国において、学校教育における16年(医学、歯学、薬学又は獣医学を履修する博士課程への入学については18年)の課程を修了した者」という要件のがあります。外国で16年間の学校教育を受けた人は、大学院入学資格があるのに、日本で、もし高度専門士など4年制の教育を受ければ、高卒から始まるから16年の学校教育は超えているのに、直ちに大学院入学資格にはつながらないのです。形式上、どうみても大学院入学資格があるべきところを、わざわざ文部科学大臣が、学校のプログラムを調べて、それで認可して告示をすると、このもったいぶった煩雑な過程をたどる必要がないということはもう明確だと思います。それは整理して示すべきだと思っているところです。
 それから、まだ議論されていないことですけれども、私が仮称としてでいつも言っていますけれども、1年制の準専門士という制度も、1年間の学習単位を31単位にすると円滑に制度化できます。もちろん、31単位または800時間以上という併用でも構わないと思うんですけれども、でも実際にどちらでも換算できるので、そういうふうに、ぜひやっていただければと思っているところです。
 もうひとつ、単位の続きで言えば、高等専修学校の取扱いです。高等専修の関係者には、単位制まで必要なのか、可能なのかという議論があるようにも聞いておりますけ。それは、高等専修学校が「学びのセーフティーネット」という形で、一人一人の、生徒たちに対応する、対応してどこまで伸ばすかという考え方が蓄積されいろいろあるのだから、それが単位制になじまないのではないかという考え方であろうかと思います。学校の現場からいうと理解できる考え方えはあるのですけれども、しかし、単位制というのは、そのレベルをそろえることではなくて、目標をここまでという基準にして、それぞれの学校が生徒の状況を踏まえ目標を調節し、それに合わせて習得させるという扱いのものです。一定の習得をしたときに単位を認めればいいので、これは、特別支援教育高等部の学習指導要領の考え方を取ればいいわけです。高等部は高校と並んで単位制であるし、そういう意味で、高等専修学校でも単位制にできないことはないし、進めていくべきかと考えます。ただし、この場には高等専修学校関係者が少なくてまだ議論できないと思いますからき今後の課題として頭出しはしていただければと思っているところです。
【吉岡座長】  ほかにいかがでしょうか。では、芦田委員、どうぞ。
【芦田委員】  先ほど浦部委員の指摘されたことは非常に重要なことだと思います。外から見える、わかりやすい成果をこの会議の中でつくっていかなければいけない。自己点検を含め、いろいろなことをやっているけれども、それがどういう実質を持ち得ているのか、どういう、実質的で有効な学校選びにつながっていっているのかという点が大切であって、我々も当事者として日夜それが見えるように学校内のいろんな仕掛けをつくり続けているんですけれども、非常に難しいというのが実感です。
 2005、6年辺りから、安倍政権が教育基本法の改正に入っていって、教育基本法の中に「職業」という言葉が入りました。専門学校、東専各、全専各を中心に、これは、一条校化のチャンスだと。基本法の中に職業教育という言葉は入りませんけれども、「職業」という言葉が入って、やっと職業的な教育が学校教育体系の中で位置づけられていく動きになったときに、全専各全体はたいへん盛り上がりました。今こそ一条校化のチャンスだということになった。そのとき、先ほど吉本委員が言われたグランドデザイン論というのが出てきて、僕はそのときグランドデザイン論というのは、今こそ専門学校の再評価のチャンスだと思いました。それは結局何かというと、偏差値でポスト中等教育の進路を考えるのではなくて、実質で大学と専門学校の選択肢を用意すべきだと。専門学校(専修学校制度)が1975年にできたときは進学したくても進学する基礎学力のない高校生たちのセーフティーネットでした。高等教育を受けたくても学力的に受けられない子たちをそのまま高卒で出すのではなくて、少しは何かのスキルを身につけさせていこうという形で専修学校が議員立法でできたという経緯があって、その意味でいうと、やはりそれは偏差値の体系の中での職業教育の制度化という大変悲しい出発の仕方をしてしまったわけです。しかし、今日のような大学全入時代になってくるとその受け皿論は意味がなくなってきて、今度は底辺の大学が職業教育に走り始めて、どちらにしても職業教育は底辺の学生に対する社会化をどうやっていくかというような位置づけの中でしか機能しない状態が長く続いた。安倍政権の教育基本法の改正はその流れの中での出来事だった。基礎学力を職業教育で補うということではなくて、偏差値の高低に縛られない自由なポスト中等教育の選択肢をどう形成していくのかということが、僕はその時、グランドデザインの本旨だと思っていたんです。
しかし、途中で「グランドデザインはなくなった」という話を、2010年ぐらいかな、文科省の方からお聞きしました。その点で、僕、吉本先生がこの会議にもおられるというのはすごく大事だと思っています。全専各、東専各などの一条校化運動の中で、吉本先生が専門学校教育の実態調査を2007年の12月に発表されました(「専修学校の振興に関する検討会議 」)。専門学校を一条校化するにあたって、専門学校の教育の実態は一体どうなっているんだということを、大学の研究者である吉本先生に調査していただいたわけです。
職業教育とか言うけれども、就職率は実際どうなっているんだというようなことを調べようと思ってもなかなか専門学校はデータがないということを吉本先生は嘆きながら、それでも調査されて、無業者が20%もいるではないかというような数字を挙げられたり、当該学科関連分野の就職率が70%しかないと。このような状態で、本当に専門学校は職業教育を担ってきたと言えるのかどうかという指摘がまずありました。また、学力不足のセーフティーネットとして、できない子に対してもねんごろな教育をやっているのが専門学校のいいところだと聞いてきたけれども、退学者は大学平均でそのときは7%、専門学校は15%もいると。これで本当に熱心な親身の教育をしていると言えるのかどうか、あるいは教員1人当たりの学生数も、大学と専門学校では18人前後で、何も変わっていない。その上、専門学校の教員の持ちコマ数は、週13コマ程度持っていて、大学教員の平均は8.56コマだったと。当時、公開資料が少ない中でも、吉本先生はそのような指摘をされたわけです。
 その当時、いろいろな意味でとても重要な指摘を吉本先生はされたと思いました。東専各や全専各が、それに対して組織的に、この調査結果に対してどう考えていくのかとか、そのような数値で見ればそうかもしれないが、もっと別の見方をすれば、専門学校の、教育的な内実の貢献度は見えてくるのではないか。そのような議論をやるチャンスだったかと思いますが、できないまま大学の真似事のような自己点検評価に変わってしまった。教員資格の問題や教員の質の問題、そして平均持ちコマ数などの話になっていくと、専門学校の各種組織は、だったら助成金を出してくれよという話になってしまって、悪循環を繰り返し、その種の議論がはじめからできない状態を数十年繰り返しているわけです。どこかでそれを断ち切っていかなければいけないんですけれども。
結局、専修学校全体のまとまりで一条校化はもう断念してしまって、その結果出てきたのが職実の課程です。そうすると、職実の課程に入った専門学校の一団は、今、その当時、吉本先生が指摘された様々なKPI(Key Performance Indicator)に対して、高校からの信頼を得られる、あるいは進学生やその保護者に対するきちんとしたKPIを出し続けているのかということ、それが一条校化断念以後の課題になったわけです。また、最近はそういう調査は今、私はやっていませんが、その当時広島大学にいらっしゃった小方直幸先生が、就職の実態調査も行われたわけです。東専各経由で当時私も手伝いました。あの頃はかなり熱心に大学の先生方が専門学校に関心を持っていただいて、でもやっぱり就職実績もリタイア率が高いと。
そうすると、専門学校の職業教育は、どこまで本当にそうなのかという話が、ぐるっと1回りして専門学校に突きつけられたわけです。
高校からの専門学校に対する信任の問題です。勉強ができないんだったら専門学校に行くしかないというような進路指導もまだまだ存在しており、勉強ができるんだったら専門学校には行かなくていいよというような話にもなってしまう。それに対して、この15年間、職業実践専門課程も含めて専門学校全体は何をやってきたのか。自己点検評価を受ける学校が増えてきたとか、そういう変化は幾らでも見えるんですけれども、高校側や高校生が選択できる実質的なKPIがやはり出せていないし、東専各、全専各など専門学校全体の取組として、もっとここを強化していこうだとか、あるいは都道府県から助成があっても、助成をした分、週単位の教員持ちコマ数が、その学校はきちんと減っているのかとか、あるいは教員の質向上に対する取組が、助成した分何かの教育上のKPIと相関しているのかというようなことの調査もやっていかないと税金の無駄遣いになっていきます。その辺りを含めて、政策的に有効なお金を回していくことが高校の選択の実質的な指標につながるような取組になっているのかが問題なわけです。
その点、我々は15年ほど前に吉本先生や小方先生の調査を受けたときにきちんとした対応ができていなかったなと思いますし、それらの重要な指摘を放っておいて、自己点検をいくら積み重ねても、多分大学もそうですけれども、あまりそういうものが効いているというようには思えないというのが私の実感です。
 もともと職業教育は、前回座長が言われたように、リベラルアーツの後に続くものですから、何でリベラルアーツより低い状態で専門学校の職業教育という位置づけがあるのかすでにそこがボタンの掛け違いなわけです。その論点は、中世以来の伝統ですけれども、そもそも過ぎるかもしれませんが、なぜか職業教育が、大学教育よりも一段劣っている風潮に対して、そういった偏差値の輪切りを突破するだけの実質を専門学校が持てていないという現状があって、そういったことを吉本先生や小方先生は指摘されたわけですが、だからこそ、何とかみんなで力を合わせてやっていかなければならないし、そういう実質を作り出そうとしている学校に対する助成がきちんとできるような政策上のマークを作っていかないと、全く無駄な政策になっていくのではないかというのが、この場の議論を聞いていて思ったことです。
【吉岡座長】  重要な指摘だと思います。寺田委員、お願いいたします。
【寺田委員】  端的に3つ申し上げたくて、さきの2つは繰り返し述べていることです。3番目に新たな問題提起もしたいなと思っています。
 1点目は、職業実践専門課程のことで、そもそも、先ほど報告のように令和2年度に職業実践専門課程の充実のための方策を考えるということから始まって、徐々にそのテーマが広がってきていて、最終的にぜひこの職業実践専門課程の充実方策についてはきちんと触れてほしいなと思っています。基本は、この資格制度の在り方というより、職業実践専門課程の目標だとか基本的な在り方を示さないといけないのではないかなと思っています。どう発展させていくのかということです。
 やや踏み込んで言いますと、職業実践専門課程ができた後に専門職大学が誕生し、いわゆる一条校としての大学が誕生するということになったわけですけれども、この専門職大学というのが一方であり、他方でというのは、同じ専修学校の中で言うのもおかしいんですけれども、従来の専門課程があり、その中で4割強の職業実践専門課程が、これまで10年ぐらいかけて拡大されてきました。こういう位置関係の中で、職業実践専門課程をどう発展させるかということなんですが、私見を述べますと、そういう意見もあるということで結構なんですが、専門課程というのは、いわゆる日本的な職業教育システムとして日本タイプを大いに追求すればいいと。知識であるとか実技というものを主として校内でインテンシブに訓練するということでいいのではないか。できれば先端性を目指してほしいと思っています。
 他方で、職業実践専門課程なんですが、これは基本的に初期の議論ではドイツモデルが1つ念頭にもあったわけで、デュアルシステム的なものをしっかりと位置づけるということからいうと、実践、言ってみれば、英語で言うとemployabilityというのか、日本語で言うと労働能力、職業能力、あるいは職業観という、そういう現場的な能力や考え方というものを徹底して身につけるというふうな役割を与えていくということで役割分担すべきではないかなと思います。具体的な連携教育の、あるいは企業内隣地実習の量的なもの、あるいは進め方、在り方、チェック体制等々ぜひ触れてほしいなと思います。
 2点目は、社会人のリスキリングという話、括弧の中で学び直しと書いてあるんですが、これは小杉委員あたりに意見を聞いてみたいと思っていますけれども、学び直しというものが主として何を意味していたのかなということです。僕、あまりそこはチェックしていないので。幅広い意味があると思うんですけれども、再教育なのか。転換訓練なのかな、あるいは企業内での昇進キャリア形成と結びつけたものなのかなと。多分、どれも入っているんだろうなと思うんです。中でも、学び直しというときに、提案文書では、地元Uターンや企業の現職受入れの推進と書いてありますけれども、後ろのほうの現職受入れの推進と関係があるんだろうと思いますけれども、企業の中での現職者のキャリア形成にどうドッキングしていくのかという観点が、労働市場が内部化されているという日本の事情からいうと非常に難しい問題ですけれども、そこに食い込んでいくこと。学び直しによって得られた学歴や資格というものが、企業の中で評価されるようなシステムの構築が必要なのではないかと思っています。
 最後、3つ目なんですが、最近、自分自身も調査をして、新たに知ったことなんですけれども、特に資格系の医療や幼児教育、あるいは看護という分野の基礎力調査、職業観調査みたいなことをやったんですが、非常に小さいものですが、そこで面白いことというか非常に重要なことですが、言葉で言うと難しいんですが、男女両性教育の推進ということが課題になっているのかなと思いました。私、このような問題提起するのは初めてなんですけれども、例えば看護の場合ですと、男性が少数者として学習をしているわけですが、他方で、例えば柔道整復師あたりになると、結構女性もいたりするんですけれども、なかなか男性中心、あるいは伝統的に女性分野と言われてきた職業分野での学習というのが非常に困難があるようですし、若干、このところ学生数の停滞というのがあるようです。あるいは進路、就職という点でもいろいろ困難があったり、早期離職につながったりとか、いろんな問題があるんですけれども、この専修学校教育における男女両性教育の強化拡大というのについて取り組んでいく必要があるのではないかと思っています。
 以上です。ありがとうございました。
【吉岡座長】  ありがとうございます。どれも非常に重要な点だと思います。まだ発言されていない方々からも御発言いただきたいんですけれども、それでは、冨田委員、お願いします。
【冨田委員】  冨田でございます。企業の立場といたしまして、やはり社会人のリスキリング、学び直しというところが非常に注目されるところでございますが、本日データをいただきましたけれども、専修学校における社会人の受入れ人数の推移というのが、データのほうの19ページでございますけれども、平成28年が19万人、令和3年度が18万人ということで、上のくくりにもございますとおり、おおむねこの事業に関しましては減少傾向ということでございます。私ども社会人教育をやっている中で、今一番のキーワードは人の生産性向上というところでございまして、その中で、DXだとかデジタルだとか、あるいは今回グリーンという言葉も出ておりますけれども、やはり社会人の方たちの学び直しをどうやるかというのがすごく課題になっております。それは、我々のような企業だけではなくて、まずは専修学校様の特徴としましては、社会の流れに敏感なコースとかそういったのも開いていただいておりますので、やはり、専修学校様がもう少し本腰を入れて社会人を受け入れるということの促進をするべきだと思っております。
 そのときに、今度は、我々がどうやって専修学校に行って勉強するかということを考えますと、まず1つは国家資格、これは当然でございますけれども、そのほかに何らかの証明というのが非常に必要でございまして、その証明を持って次の会社に転職をしたり、あるいは企業の中での地位を上げると。あるいは企業の中での職種転換をするということに使っていきたいわけでございますので、単位制ではないですけれども、細かな専門性を認めると。全体じゃなくて、何らかのスキルを身につけましたよということが証明できるようなものというのが今後必要になってくるのではないかと思っております。
 また、専門学校様に私も訪問する機会は結構あるんですけれども、この辺りの社会人のリスキリング、あるいはリカレント教育ということに関しては、あまりまだ積極的なところが少ないかなとも感じますので、その辺りの施策も、今後やっていっていただければと考えております。
 もう一つ、第三者評価のところで受講点検、学校関係者評価等ございまして、私も何回かこれのヒアリングに行ったりしたことがあるんですけれども、非常に自己点検評価のチェック表なんかはよくできているなと思います。ただ、1つ少し足りないというのが、やはりどうしても学校様でございますので、その教育をどうするかというビジョンは非常に明確に書かれていらっしゃるんですけれども、学校経営をどうやるかという長期的観点が抜けているかなと。例えば、3か年の中期経営計画ですとか、そういったところをもう少し補足で入れていただくと、健全な学校運営が図れるのではないかなと思いました。そこのところは、聞かないとなかなか分からないところだなと思った次第でございます。
 以上です。
【吉岡座長】  ありがとうございます。佐藤委員、小杉委員が挙手されていますので、まず、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】  今回の方向性の取りまとめの中でも、留学生について触れていただいてありがとうございます。特に外国人留学生キャリア形成促進プログラムは、企業実習など、留学生の日本就職につながる学びを増やして、日本就職率を向上するために非常に重要な施策で、これが導入されたことは大変喜ばしいことだと思っております。留学生は、コロナ禍が明けて、また増加傾向が見られています。特に専門学校の留学生は、ベトナム、ネパール、スリランカ、ミャンマー、バングラデシュなど、大学の留学生に比べてアジアの非漢字圏の、比較的所得レベルの低い国からの学生が多い傾向が見られます。こういう所得レベルの低い国から来た学生の多くは、学費や生活費を捻出するためにアルバイトの時間が長い傾向があり、それが彼らの学びの時間を減らして、日本就職の際に必要なスキルや日本語力が不足するというジレンマに陥っております。
 本日、修学支援制度のお話があり、これはデジタルやグリーン分野で人材確保するために修学支援制度を設けるという御趣旨だと思いますけれども、ぜひそういった制度を検討される際に、優秀だけれども経費支弁能力の低い留学生が、そういった修学支援を受けられるような制度設計をしていただければと思っております。特にIT分野など、日本で人材が不足している分野において、例えば途上国のIT分野で専門教育を行っている短大や専門高校などと日本の専門学校が連携して、そういった人材を呼び込む、そして、就職に必要な学びや支援を受けて日本に定着するというような形での制度活用についても御検討いただければと思っております。皆さんも既に御存じのとおり、厚労省では、介護福祉士の養成のために修学資金の貸付け制度、都道府県を通じて学生に直接奨学資金を貸し付け、当該地域で5年間、介護士として就労すればその返済を免除するという制度もあります。さらに介護福祉士を目指す留学生向けに、留学生を受け入れる予定の介護事業所が留学生に奨学金を供与する場合には、年間168万円までその費用を国が補填するという制度もあります。
日本では、介護以外にも非常に人手が不足している分野があります。日本商工会議所が、人手不足の状況について、中小企業6,000社の調査結果を今年9月に発表しておりますが、これによると、介護・看護業がトップですが、建設、宿泊・飲食、情報通信・情報サービス業でも人手不足が深刻であることがわかります。こういった分野で、人材不足に悩む企業や企業の連合体が、自治体及び専門学校と連携して、留学生の修学を支援し、就職につなげるような形のモデル事業を、今後の「専修学校グローバル化対応推進事業」などで検討していただければと希望いたします。そうすれば、経費支弁能力は低いけれども優秀な留学生の獲得と日本就職が促進されるのではないかと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【吉岡座長】  ありがとうございます。では、小杉委員、お願いいたします。
【小杉委員】  ありがとうございます。先ほどリスキリングの話が出ていたので、私も関心があるのはそこばかりです。リスキル、今日本の使われ方は職種転換というほうの意味に使われていると思います。やはり今経済社会が大きく変わっていて、技術革新が進んで、今までどおりの職業では立ち行かなくなるという人たちに、職種転換をして新しい産業分野へと移ってもらう、これが政府の方針だと思いますが、私は専門学校に、かなりそこで力を発揮してもらいたいなと思っています。まさにリスキルに貢献するようなリカレント教育を、その中心的な担い手になれるだけのこれまでの経緯、蓄積したノウハウがありますので、ぜひそうなってほしいと強く思っています。
 特に、専門学校は、地方における中核的な高等教育機関なんですよね。そこのところがとても大事だと思って、今リスキルという、これはもう世界的に必要なことなんですが、それをどこが担ってきているかというと、例えば欧州型の職業別の労働市場であれば、まさに職業別の労働組合などが教育訓練機能も持って職種転換ということにかなり力を発揮していると思うんですけれども、日本の場合には、教育訓練は企業主導で、特に大企業の場合はまさに内部市場で、今も大企業ではかなり力入れて進んでいるところがあるんですが、どうしても立ち後れるのが中小企業なんですよね。
 中小企業におけるそのリスキルをどう進めていくかというときに、かつ中小企業の多くというのは、実は地方に点在していて、そういうところをどうやってパワーアップさせていくかというときに、地方に拠点を置く高等教育機関がそれにどう関わっていくかというのはこれから本当に大事だと思っているんです。
 そこで、やはり都道府県、地方自治体ですね、地方自治体との関連の中でその役割を持ってこれないか。今、地方自治体との関連や教育関連部門との関連を中心に持っていらっしゃると思いますけれども、産業振興部門との関係をしっかり持たなければいけないのではないか。産業振興部門、Uターンの受入れなんかもやっていると思いますが、まさにそことの関係で、地域の産業、これからの産業、それを見据えて、リスキルのための教育が、プログラムを開発していくということが必要だと思います。今既に予算化されていらっしゃる事業で、スキルアップデートするための教育コンテンツをつくるというようなことも、予算を見ると書いてあるんですけれども、それを地方レベルで、それぞれの地方の産業構造と見合いながら、地域の都道府県の持っている産業振興策、それとも盛り上がってつくっていく必要があるのではないかと思います。企業、業界団体のニーズにおいてはカスタマイズ、まさにこの地域の産業政策と連動してやっていくべきではないかと。
 これは少し余談ですけれども、実はDXなんかが一番遅れているのは、私は地方自治体だと思っているんです。結構いろんなところで、まだフロッピーディスクを使っているとかいろんな話がありましたけれども、地方自治体のDX職員向けに地方自治体のDS職員養成プログラムみたいなものをどこかで開発して、それを1つのコンテンツとして売り込んだらどうか。これは思いつきのアイデアですけれども、そんな形で地方の高等教育機関、貴重な高等教育機関としてリスキルを中心的に担っていく機関になってほしいというふうに思っています。
 以上です。
【吉岡座長】  ありがとうございます。ほかに。それでは、野田委員、お願いいたします。
【野田委員】  野田です。これまでの会議で議論されてきたとおりですけれども、専門学校を高等教育段階の職業教育として、国内そして海外に国際通用性を訴えていく必要性を改めて強調したいと思っています。
 このたび、ISCEDで高度専門士が適切なレベルに位置づけられた、見直しがされていることは、大変大きな一歩だと思っております。ただ、先ほど留学生のお話がありましたけれども、国によっては、いまだ専門士、高度専門士が適切に評価されていない現状がありまして、最近行った調査で、日本の専門学校への留学生数が多いベトナムですけれども、外国資格を評定承認するベトナムの機関に対して調査を行いましたところ、日本の専門士、高度専門士に対応する資格がベトナムにはないという回答がありまして、対応させるにしても、中等教育程度あるいは中等後の非高等教育といった認識であることが分かっています。ほかに、タイやネパールでも同様の傾向が見られるわけで、こういった国の留学生が母国に帰ったときに、就職や進学の際に何が起こるかということが懸念されます。これについては、ユネスコの世界規約で資格枠組みを構築していくことが提言されたわけですけれども、この前の3月に、日本の教育資格に特化した枠組みを試案として提案させていただきました。そのときのものをブラッシュアップしたものを、この夏に、大学改革支援学位授与機構のウェブサイトに掲載しておりますが、ここでは、どういう称号が、どういう要件で次の課程に接続できるのかという説明も加えておりますが、今後、国内そして海外により参照されますように、可能であればナショナルとしての発信を期待しております。
 2点目ですけれども、リカレント教育、リスキリングのお話で、先ほど冨田委員の御提案にもありましたが、専門学校での特定分野の知識スキルの習得というのは、マイクロクレデンシャル、今国際的に大変注目されている短期の学習で身につけた知識、スキルの学習証明書になるわけですけども、これとの親和性が非常に高いと感じています。これから履修証明プログラムを展開していくという話ですが、今現在、大学、短大、高専を対象にしている「数理・データサイエンス・AIの認定プログラム」がありますけれども、こういった認定プログラムが専門学校にも開かれてよいと思っています。また、必ずしも資格取得やキャリアにつながる社会人の学び直しだけではなくて、地域コミュニティに開かれた生涯学習の場として、大人だけではなくて、これは思い切った提案ですが、小中高の若い人たちを対象とした短期モジュール型の学習機会を提供するというニーズもあるのではと感じております。これは、アメリカでの経営戦略モデルの1つでもありますが、地元の大学やカレッジが短期のプログラムを提供していまして、学童期の夏休みや冬休み、放課後に、小中高生が受講するということで、例えば専門学校がどういう教育を提供しているかというものが身近なものとして理解できるようになりますし、社会人になっても、身近に、近所にある教育機関を学びの場として活用していくという発想が自然になり、生涯学習の文化が浸透していくのではないかということも考えております。
 以上です。
【吉岡座長】  ありがとうございます。では、前田委員、お願いします。
【前田委員】  第三者評価についてなんですけれども、実は専門職大学院の認証評価から、既に非常に苦労をしておりまして、つまり、ある分野1校しかないところでも、認証評価機関をつくって認証評価しなければならないという状況があります。このため、認証評価機関が安定的なものかどうかというのがまず第1に問題なんですが、もしそれを置いておくとしても、どのような基準であれば的確に認証評価できるのか、それを評価する体制はどういう人であればできるのかというのも、私は課題だと思っています。
 というのは、設置審はその大学だけを見ていけばいいので厳格に審査できるかもしれないけれども、認証評価機関は分野として基準をつくって、そこに実は1校だけ申請が来るというときに、その1校に向けての評価基準をつくるのかどうかという問題もあります。最初に吉本委員がおっしゃっていたように、その分野であれば、どういうものを身につけていなければいけないのかとか、そういったことがない中で、認証評価がどうあればよいのかが難しいところです。この度専門職大学ができてきています。専門職大学の認証評価に手を挙げているところは意欲的な団体ではあるんだけれども、どんな基準だったらいいのか、どんな評価委員がいればいいのかというのは、やはり問題になっているんです。非常に難しい問題です。
 専門学校は、恐らく、分野別のところまで行くのはまだ先であろうとは思うんですけれども、やはりそういう土台ですね、分野だったらどういうものが必要なのかという、吉本先生がおっしゃっていたような、そういうものができるのが非常に望まれます。その前の段階としては、やはり機関評価の中で見ていくような第三者評価になるのかなと思っています。頂いた机上資料の15ページのところを見ると、第三者評価を受けている学校が、専門課程でいうと2,721のうちの8.9%とあって、これは恐らく国家資格との関係のところであろうと思います。その一番右のところの評価機関を見ても、3機関がやるということですが、1つはこれからやるということで、上2つを見ると、多分数校が第三者評価を受けているという現状だと思うんです。なので、第三者評価を実施するに当たっては、やはりこういう経験を持ったところが、どんな連携をして問題なり方針なりを共有して、どんな土台をつくれば、いろいろな学校向けに評価ができるのかという、その辺りをまず考えて、そしてそのためには、学校にどんな支援をすれば、無理なく負担なく、でも確実に質というものを評価していくことができるのか、この辺り、第三者評価を入れますよ、ではなく、まずはその土台をきちんと整える、それが重要なのではないかなと思っております。
 以上です。
【吉岡座長】  では、吉本委員。短めにお願いします。
【吉本委員】  今ほど前田委員の話に続けて言うと、私が勤務していた九州大学で、私の学府(人間環境学府)には、日本に1つの専門職大学院があって、臨床心理系の絵専攻です。1つの認証評価団体というのをつくると。よく人を見ると、似た人が入っているという。それだけのことになってしまうという、それが第三者評価、認証評価になる。でも、そうせざるを得なくなりますよね、結果的に。
 それはよいとして、専門学校はストレートには、職業実践専門課程から第三者評価を始めるという、こういう宣言をしたらいいと思うんですけれども、ということはどういうことかというと、これはもう分野別でしかあり得ない。1つの課程は、いくつかは職業実践専門課程の認定を受けているけれども、いくつかは、職業実践専門課程でない1年制の課程であったりその他の専門課程であったり、もちろん高等課程も一緒にくっつけているところがある。その学校の評価をするというのはちょっと大変なので、基本は分野別の評価を先にやることが当然となります。まさに職業教育だからこそ機関評価はいらないとまでは言いませんけれども、まず、先に分野別評価がある。そのためには、分野ごとの学位資格枠組みの開発が課題です。そのために、どこの国でもほぼ同様にその開発のために設置されているのは、ISCとかSSCとか、産業別技能審議会などと訳されるような組織です。その産業別技能審議会が、特定の分野で、職業院にどういう仕事をさせるのか、その役割に応じて求められる知識、技能、態度は何かを検討し基準をつくり開示していくわけです。業界の側からの枠組みでつくっていったものを教育プログラムと対応させて使うというケースが多いようですが、これができない限りは、分野別の評価はできないですから、そういうところがポイントかなと思っています。
 まだほかにも、リカレントとリスキリング、こういうことをやってほしいと皆さんおっしゃるけれども、芦田委員が言うように、専門学校がなぜ中退が多いかというと、要するに、学年制だから1つ単位を落とせば、次の年にもう1回勉強するということが、ほぼ必修型ですから、やりにくいんですよね。そういう中に、専門課程の中に小さなモジュールは簡単には入れられないんです。基本的には附帯事業のような形でリカレント学修を専門学校は担っています。ですから、2013年頃、生涯学習政策局の合田局長らが、専門学校の課程そのものをモジュール制にするという結構大胆な議論をして、成長分野等における中核的人材養成等に関する開発的な委託研究事業が始められました。もちろん現状でも、なかなか制度実装までは動いていません。ですから、これはそんな簡単な話ではなく、地方だからとか何とか、マイクロクレデンシャルとか、思いつきみたいに言ってもちょっと難しいというのをまずは考えて、ちょっと始めてほしいと、そこだけは言っておきたいと思います。
【吉岡座長】  ありがとうございます。座長として、今のお話はどれも非常に重要で面白い話でした。これを最終的にまとめると、どこに持っていったらいいのかというのはほとんど見当がつかないですけれども、どれも非常に重要な議論だと思って聞いておりました。
 前から何度か申し上げましたけれども、ここでの議論というのは、本当に日本の高等教育、実は高等教育だけじゃなくて教育課程全部だと思うんですけれども、その中で、職業は何なのかという根本問題だと思うんですね。それは、要するに技術を身につけるかどうかとか就職をどうするかということではなくて、学ぶということが職業ということとどう結びついていくものなのかということについての問題と突き当たっているというのが、私の基本的な印象ですし、そこから考えていければと思っています。
 これもこの間の繰り返しですけれども、ヨーロッパだったら、例えば専門職業訓練というのは大学ではないです。これは伝統的に、先ほど芦田委員がおっしゃっていたように、大学の分野ではなくて、大学というのは基礎となるリベラルアーツ、哲学と神学、医学、法学ですけれども、非常に抽象的な学問分野をやっていたわけで、そこが組合をつくって、ほかの同業者組合と並んでいたわけです。職業訓練はそれぞれの同業者組合がやっていたわけですね。それが、近代になって、職業訓練をどうするかというので、一番典型的なのはナポレオンがエコール・ポリテクニックをつくったわけです。あれはエコールだから、要するに職業学校、専門学校です。だからフランスは、今でも職業専門学校のほうが大学よりも就職の問題ではいいというか、要するに社会のトップクラスはみんな高等専門学校を出ているという、そういう仕組みになっているわけです。でも、日本は、明治のときに工業化、殖産興業から始まったということと、それから戦後そこにアメリカのリベラルアーツを結びつけたという非常に複雑な仕組みを持っているので、日本の高等教育全体が非常に分かりにくいというのが一番根本だと思うんです。そういう意味では、大学が、最初から職業訓練というのを組み込んでいる。工学部はもともとそういうところがありますし、これも芦田委員がおっしゃったように、今どんどん職業訓練の学科ができ、そういうコースがつくられていっている。そうすると、専門学校の位置づけというのが非常に見えにくくなっているというところがあるだろうと思います。そこが1つの根本的な問題かなと思いますが、だから、これを全部つくり直せというのは無理に決まっているし、そういうつもりはないんですけれども、そこに1つ大きな問題があるなと感じています。
 それに多分重なっているんですが、ここでの議論は、多分、専修学校制度に精通していないほかの人が聞いたら分からないのではないか。例えば、私も関わってからそうなんですけど、多分誰もが、特に高校生も大学生も専門学校の学生たち、生徒たちにとっても、大学と専門学校の違いぐらい分かるけれども、専門学校のいろんな言葉、そこで使われている職業実践専門課程という言葉も非常に分かりにくいし、専門がついていたり、実践がついていたりという、言葉が非常に分かりにくくて、それが多分全体の中で外から見たら分かりにくいかなと思います。整理するのは難しいかもしれませんが、それは1つ問題かなと感じています。
 そのことは、大学と専門学校はどこが違うんだという議論と重なっていて、これは先ほど言ったように歴史的な経緯があると思うんですけれども、その中で、違いをはっきりしていくのがいいのかどうかすらよく分からないんですけれども、やはり専門学校のやれることというのを明確に打ち出していくことが必要かなと思います。その1つとしては、確かにリスキリング、リカレントの問題は非常に大きな問題であるということと、それから大学がいかに職業訓練校化していたとしても、やはり職業訓練の持っている意味というのは、専門学校がずっと積み重ねてきているので、そのプログラムの重要性を明確に自覚していかなければいけないのかなと感じています。というのが全体的な感想です。
 もう一つは、今申し上げたリカレント、リスキリングですが、冨田委員がここにいらっしゃるので敢えて申し上げるというところなんですけれども、私、1つは企業が、リカレントやリスキリングのために、大学に行くとか専門学校に行くために、社員のために例えば就業時間を調整してあげるとか、そこで資格を取ったら給料を上げてあげるとかという、そういう動機づけをもっとやっていただきたいと考えています。これは大学側の人間として思うことです。例えばドクター取ってこいと言っても、実際にはドクター取りに行ったりとか修士取りに行ったりするのも、30代ぐらいの、企業とすれば一番働かせたいところの連中に行けと言ったって、行けるのは仕事終わってからの深夜と、あるいはオンラインと、あるいは土日に行くとかということになるんです。就職した後に資格を取ってもあまり給料が上がらなかったりする場合も多い。これもものすごく企業によると思うんですけれども、特に教育に関係している企業はその辺を敏感に感じていらっしゃると思うんですが、その環境が変わらないと、少なくとも日本の企業の、働いている30代、40代の一番生産性を上げるべき世代のリスキリング、リカレントが進むというのは非常に難しいだろうと思います。
 最近は随分改善されましたけれども、昔は社会人のコースなんかに来ている学生は、会社には秘密に来ていると。会社に言うと転職を狙っているだろうと言われるという。大分それは変わってきているのは確かなんですけれども、そういった側面があるので、その辺は企業も一緒に変わっていただいて、そうすれば、特に専門学校は、今のところ自由度が高いので、そのためにカリキュラムを変えていくということは、割とやりやすくなってくるのかなと思いました。
 取りあえずそんなことを思いました。
 いかがでしょうか、ほかに。芦田委員、どうぞ。
【芦田委員】  先ほど吉本先生が言及された退学率の問題ですが、大学の退学率は特に私立大学だと、選択科目を多くして、どの科目ついても単位不足となると次は違う選択科目の履修で単位を補うという仕組みが良い意味でも悪い意味でも出来上がっています。以前、私立大学を調査したとき、大体、必修科目なんて20%あるかないかぐらいで、選択科目で退学率を処理しているという状態でした。しかし、専門学校はその種の救済策がないのかといえば、全然ありまして、再試験が慢性化しているわけです。
私が、情報教育協会で調査をやったときに、大体30%ぐらいの科目の再試験が慢性化していて、担当教員以外に誰も管理していない状態で再試験をやってしまう。本試験と同じ再試験をやっている専門学校も結構あって、1回目で落ちたら2回目また再試験をやる。5回目ぐらいになると、教科書を清書しろというような再試験をやったりしているということで、要するに受かるまでやる再試験が慢性化している。だから吉本先生が言うような意味で、専門学校は必修科目が多いから退学率が高いというのは、専門学校の退学率問題とは何の関係ないわけです。その意味で、僕は、この吉本先生が調査されて出てきた、大学の平均退学率が7%で、専門学校の平均退学率が15%というのは、文字どおり専門学校の関係者がきちんと受け止めなきゃいけない数字だと、今でも認識しています。
 あと最後にもう一つ、「実践的」と先ほど座長が言われましたが、専門学校はもともと実践的な職業教育をやっていたんじゃないのかということに対して、何を今さら実践的な「職業実践専門課程」と言っているんだという問題があります。高校からすると、専門学校は「実践的」な「職業教育」を担ってきたのではないか、そうではなかったのかという混乱をこの新課程の名称は招いた。これは一条校化になれなかったので、せめて全専各としてはお土産が欲しくて、こういうタイトルとも連動しないような不可思議な名前をつけて、専門職大学のような「機能的分化」論で処理してしまったという問題が、高校の進路指導に混乱を起こしているんだと思います。
 ある調理学校のカリキュラムの教育課程編成委員会に私が出ていたときに、そこで第三者の調理ジャーナリストが、この学校はすごく理想的な環境で、食材も非常に高価なものを使って、理想的な環境で教育をやっていると。だけど、本当の「実践的な」教育というのは、現場では常に新鮮な卵が使えるわけでもないし、新鮮な魚が使えるわけでもない、場合によっては賞味期限が切れているようなものでも、どうやってそれをおいしく食べさせるかというようなことを教えることこそが「実践的な」教育ではないかという提案をされました。そのときに、私は学校側のメンバーでしたから、何て答えるのかなと思ったら、見事なお答えをされまして、いやいや、味の評価値のストライクゾーンが分かりもしない学生をつくり出しておいて、いいかげんな食材をごまかして出すというやり方、どうやってできるんですかというお話を教員側はされました。つまり、学校教育における職業教育は、理想的な環境で、何が美味しいと言える味なのか、何がまずいと言えることなのかというストライクゾーンをあくまでも求めていく中でしか、それをどうやって調理するか、加工するかということや、あるときは少しごまかすかというようなことは、ストライクゾーンの教育なしにはあり得ないんだというのがまず1点。この指摘は、「実践的」とは何かということについて非常に大事なことだと私は思いました。つまり、1年や2年実務現場でいれば自然に身につくようなことを、1年も2年も学校教育の体裁をかけてやっている実践教育なんていうのはおかしい。若い子を受け入れて、あのときの学校の教育が40歳になっても50歳になっても、自分の職業人としての基本をつくっているんだというような教育を学校教育における実践教育と言わないと、すぐ実務で磨滅してしまうような実践教育をやっている限りいつまでたっても専門学校の実践性というのは存在しないだろうということです。
もう一つ、同じその委員会で、ある中華料理の、超有名な中華料理の指導者の方が、この学校の卒業生は、ピーマンを繊維の目に沿って切れ、ピーマンというのはそういうふうに切るものだと教えられて入ってくると。ただ、うちの店長は、ピーマンを繊維とは逆の方向に切れと指導する。それが、うちの中華調理の特色の一つだという話をされました。これはすごく大事な話で、つまり、事業所ごとにボスが違う調理方法を指導したときに、ちゃんとした理論的、体系的に正しい食材の処理の教育を専門学校は一所懸命真面目にやっているはずですけれども、そこを真面目にやっていい成績をとっている子ほど、そこで萎えてしまうんです。自分が2年間やってきた勉強が全否定されたと思ってしまって、不安になって、三、四年で退職してしまう。
 そうすると、専門学校が具体的な実践につながるようなことを事細かに一つずつ教えていくということと、実際に入って、たまたま入った小さな事業所のボスから、何をやっているんだと怒られたときに、どうそれを処理する力をつけていくのか。これは、文科省が「自立した」職業人育成という場合の問題です。この場合の「自立性」という言葉を、非常に大事なことだと僕は思っていて、つまり、自分が学んできたことと、たまたま入った事業所のボスとのやり方が違うときに、どうやってもう一歩引いた広い観点から、ここのボスや事業所はそういう傾向があるんだなというように相体化できるか。その場合の職業教育の実践性は何なのか。それを課題化しない限り、リタイア率が減っていくということはない。その両方の実践問題というのは、専門学校の関係者が実践的なことやっている、「即戦力」人材を育てているというんだけれども、何を「実践」と考えるのかというところが、全然検討できていないと思います。いつもそこがかみ合わないような気がします。ぜひそこは、いろんな企業の方とかの意見等もいただきながら専門学校が学んでいかなきゃいけないところだなと思っています。
【吉岡座長】  ありがとうございます。冨田委員、どうぞ。
【冨田委員】  ありがとうございます。リスキリングに関しまして返答として申し上げます。
 企業の実態を申し上げますと、やはり御指摘のとおりでございまして、私どもは今、厚生労働省様から委託事業を受けておりますけども、これはもうまさに、今、新たなビジネス創造をつくる人材ということで、対象が30歳代なんです。そうすると、企業では中堅のところでございますので、なかなか9時-5時の中でできないということで、150時間の研修時間があるんですけれども、それを週2回と土曜日を使って、2か月半かかってやるということで、その辺りの企業の心持ちというか、そこに関しましては、変わっていないというところがございます。要は労働時間内で教育ができるような仕組みというのは、企業側としても考えなければいけないですし、その保障というのも考えなければいけないなと考えております。
【吉岡座長】  ありがとうございます。よろしくお願いします。
【中安専修学校教育振興室長】  本日御欠席の大谷委員より、全国中小企業団体中央労働政策部長という肩書でいらっしゃいますので、中小企業の人手不足が深刻でありますので、学校からの就職支援活動、そういったことについても、ぜひ支援をお願いしたいということと、従業員のリカレント、今日も出ていましたけども、どのようなことができるのかということについて、政策ですとか事例の周知をお願いしたいと、そういう御意見をいただいております。
【吉岡座長】  ありがとうございます。まだ少し時間がございますが、いかがでしょうか。
 1つは、専門学校というか技術を教えていくということのもう一つの問題は、これだけ技術の進歩が速いと、要するに技術を教えているうちにその技術が先にいってしまう。AIなんかも完全にそうですけれども、そこをどうするかということですよね。多分かつての専門学校とかであれば、そのときに重要そうな技術をきちんと教えていれば、就職もできるし、そこからずっと生きていくことができたんでしょうけれども、最近は必ずしもそうではないので、まず教えられる人がいないということと、それからその技術自体があまりに専門化したというところもあると思いますけれども、その専門化した技術だけではもうやっていけない。これは芦田委員がおっしゃるとおりで、それを身につけていくプロセスで変化に対応できる能力をどうやってつけていくかということだろうと思うんです。これは、大学、いわゆる4年制の大学や大学院でも同じで、例えばリベラルアーツが大事だということで言われているのはそういうことだと思うんですよね。専門学校と大学と区別の1つの仕方は、リベラルアーツを前提にしているか、していないかというのが伝統的な分け方ですけれども、実はそれはもう違ってきているのではないかと私は思っています。
 要するに、大学で必要とされている専門リベラルアーツのような、あるいは総合力と言われるような能力というのを、誰もがどんなところでも身につけていかないと、必ず置いてかれてしまうという事態になって、大学も既にそうなんですけれども、大学の学科ももう追いつかなくなっている。だから、学科改編を促すというふうに言っているんですけれども、そうすると教員がいないのでなかなかうまくいかないというのが大学の現状で、だから専門学校も恐らくそういうところだと思うんですが、ただ、専門学校は、さっきの実践とは何かということでもありますけど、実際に物に触れたりしている側面が非常に強いので、技術の一番技術たる部分と触れているということが非常に重要なところかなと思います。その中で学んでいくという側面を手放さないようにしないといけないのではないかなと思っています。
 要するに、一番大きな問題は、技術の進歩に合うだけの教育のシステムが追いつけるか、原理的に追いつけないのではないかというのが最近の状況で、そもそも無理なんだと、大学と学校はそういうところはもう無理なんだというところから始めなければいけない段階に入っているという気が少しいたします。それは、先ほどの評価の問題もそうなんですが、評価しようと思っても評価する人たちは当然、昔の仕組みの中で生きているわけですし、分野の枠組みもそうです。
 もう一つそれに付け加えて言うと、やはり専門学校は、企業との実践的な結びつきが強調されますが、企業が今求めているものに完全に対応しているだけではもう遅いというのかな、先行きが見えなくなっているということなんだろうと思うんです。だから、本当に企業が求めているのはその先が見える人なんですけれども、でも企業が実際に要求してくるときの言葉というのは、たかだか目先30センチぐらいのことしか言えないので、それに対応して、目先30センチの仕組みを専門学校のほうでつくっているとうまくいかないという、そういう事態に今や至っている。もうほかの国にどんどん抜かれていっているというのはそういうことだなと思っています。これは、ここの議論というだけではなくて、大学分科会等での議論ですべきことでもありますけれども、結構重要な問題だろうと思います。技術というものをどう教えていったらいいのかということと結びついているということだと思います。相変わらず抽象的な言い方で申し訳ないんですけれども、もともとの専門が非常に抽象的な専門をやっておりましたので、そういう意見になってしまいます。
 ほかにいかがでしょうか。河原委員、どうぞ。
【河原委員】  非常に細かなことですけれども、職業実践専門課程で、教育課程編成委員会で、企業の方からいろんな御意見をいただくのですが、そのときに意見をいただくことで、カリキュラムを改定する必要が生じてくることがあります。実際授業の中身を変えないと教育が変わっていかないという問題があって、そのときにどんどん技術が進化している世の中で、ですが、それに見合うテキストというのが一般的にあるのだろうかという問題があります。やはり、そこに関しては、例えば、そういった教材の開発というのが適切にできるというか、そういったところを例えば文科省の委託事業等で取り組んだりということができると、座長がおっしゃる10年先はなかなか難しいかもしれないですけれども、5年先とかそういった先を見据えた教材を開発することによって、職業実践専門課程を通して得られた、教育課程編成委員会で提案されたカリキュラムというか授業内容を取り入れていくことも、専門学校サイドとしては小さなことですけれども、進めていけるのかなと思っております。
【吉岡座長】  ありがとうございます。吉本委員。
【吉本委員】  たびたびですけれども、前にも関係する、今座長がおっしゃられたその教養という言葉ですけれども、大学で教養といっているのにも、みんな人それぞれいろいろ違った理解をしているように思うんです。
 もう一つ、分野別参照基準、あるいはその学士力で言うところの、もう一つ職業に向かうときには、教養ではないですけれども、社会人基礎力、基礎的、汎用的能力という言葉が政策的に多様されています。僕から言うと、これが一番問題であったというふうに思っているんです。基礎的汎用的、ジェネリックなものだけをやれば、あとは何でも使えるというように、だから専門はやらなくてもいいというぐらいの倒錯した感覚を発達させます。現実の大学においても、社会人基礎力で業者が点数をつけてくれる評価でもって学生を指導することもあります。学士力、学修成果というのも、学生にとってあまり関心がないし企業にとっても関心がない。大卒採用の出口を、その社会人基礎力とガクチカとか、そういうところで見てしまうという現実を考えたときには、職業教育には固有の有効性があると思います。何かというと、30センチ先を行かなくても、職業教育でも学術的な教育でも、ある程度の法則性の相場ができたものを、そこの文脈に応じて、ある程度今使えるものを教える。今使えるものは、それを深めていけば、職業の専門を深めていけば、それはまた時代が変われば転用可能なものとなるはずです。職業教育に基づく能力の転用可能性、トランスファラブルということとジェネリックということは全然違うんですよね。そこの議論が、キャリア教育、職業教育の諮問の段階でもうボタンが掛け違っていたと私は思っているんです。そういう意味で、今おっしゃられたところについては、専門学校が教養と言う授業の単位や、あるいはよく言うキャリア教育の単位なんかを全然つくらなくてもいいと思っているんです。ひたすら今の現場の、ピーマンを縦に切ろうが横に切ろうが、それぞれ両方理解することができるわけだから、その後で転用可能なわけですよね。だから、そういう未来が分からないから基礎的、汎用的だという議論をここではすべきでないというふうに私は特に思っています。これが学術のアプローチと職業のアプローチ、やっぱり違うところだと思うんです。
 大学は職業教育でないというと、お医者さんは職業教育ですよね。僕は今見ていて、ひたすら職業教育だけを追究しているようにも思うんです。それはそれでいいと思っています。
【吉岡座長】  ありがとうございます。
【芦田委員】  すごく面白い話です。こういう議論をやりたいんです。
【吉岡座長】  ありがとうございます。私も基本的には技術教育というか、そういう職業教育というのと、いわゆる大学における勉強との関係はそういうところがあるかなと。入り方の問題というところがあるかもしれませんけれども、そういうところはあるかなというふうに思います。特に、私、学部は法学部だったので、法学教育というのはちょうどそういう側面が非常によく見えるところだったので、最近そういうふうに思います。まず教養教育をして専門というのは、今や崩れましたけれども、ということでもないし、専門教育だけとにかく、専門教育を全部下からやってしまえばいいという、そういう議論でもないということだろうというふうに思いました。
 ありがとうございます。せっかくこういう議論になったという芦田委員のお言葉がありましたけれども、これを事務局が、今日の議論をまとめてくださるということですので、それを楽しみにしたいと思います。
 その他ということで何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 事務局から特に何かありますでしょうか。
【中安専修学校教育振興室長】  ありがとうございます。次回会議については、来年1月から2月をめどに開催させていただきます。追って日程調整をさせていただきます。
 また、報告書を作らないといけないので、その素案は1月から2月の会議に先立ち委員の皆様にお送りして御意見をいただく形を取りたいと思っています。めどとしては12月以降を考えております。
【望月総合教育政策局長】  率直な、根本に遡るような議論、ありがとうございました。中教審では、あまり我々は慣れていない、聞けないようなお話も、率直なものが出て、聞いていて、どれが正しい、どれが間違っているというよりも、どれも先生方のお考えを聞いていてあるなと思っているところですけれども、正直、私も大学を出て何を身につけて学んできてというところを、リベラルアーツを十分に学んできていますかとか、あるいは卒業して確かに学位は取っているんだけれども、その学位で何ができますかということについては、みんなあまり話ができないのではないかと思います。それも、簡単に言えば、手に職をつけるということができる最前線の専門学校で、その子たちが必ずしも単に座学だけではないところで学んだことが、結局自分の力として応用できて、生きていく上での力に、即戦力になっていくというところがあると思うんです。
 ですから、必ずしも何か教養が、あまり大学よりも深まっていないこととか、あるいは、職業実践専門課程で、実践的なことが、より普通の専門学校でそういう課程で行けば、さらに高度なものが物すごく身についているかというところにあまり重きを置くということに、結局、専修学校自体の来た歴史や、あるいはこの位置づけを、今のままを一応守りながらもどうしていくかというところの御意見をいろんな観点からいただいたのではないかと思っております。
 いずれにしても、今回御意見いただいたものをそのままそっくりまとめて何かというわけにはなかなかいかないところもございますけれども、ただいま御意見いただいたものを、すぐできることと、ほかの学校制度に通用することも多分にあると思っています。学校教育全体にわたるようなことも、自ら考え、自ら学んでいく力というのを身につける、生きる力を見つけているというのが、専門学校のみならず、ほかの大学を通じても同じでございますので、そういった中でも専門学校の良さや特徴、強みというのを生かしていくことができるというところをフォーカスしながら少しまとめをさせていただいて、次の協力者会議で、またそれを基にして御議論をいただければと思っております。
 本日はどうもありがとうございます。
【吉岡座長】  ありがとうございました。どんどん深みにはまっているようなところもありますし、そうなると、評価とは何かとか、成果とは何かというような、そういう教育の根本に関わる議論になりつつあるところですが、残念ながら時間でございますので、あとは、事務局に一旦はバトンをお渡しするということにさせていただきたいと思います。
 ということで、本日の会議は、これにて閉会させていただきます。どうもありがとうございました。
 
                                             ―― 了 ――

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