平成23年5月12日(木曜日) 10時00分~12時30分
文部科学省16F特別会議室
【委員】福原座長、肥田副座長、秋田委員、織茂委員、鎌田委員、岸委員、中田委員、新山委員、堀委員、松岡委員、山田委員、山根委員、横田委員
(1)1.「電子書籍の利用と流通の円滑化に関する検討会議」における「デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項」に関する議論の整理(案)の説明(略)
2.質疑応答(略)
(2)議題「報告書検討」
委員:読んでもらう報告書にしたいなら、玉虫色に何でも盛り込むのではなく提言は3つにすべき。例えば、1.金を出せ、予算を付けろ、2.関係する組織の在り方をトップダウンで統合・整理せよ、3.IT化に対する国家戦略を出せ、の3つ。第1章・第2章にはいくらでも書いて良いが、第3章は絞るべき。
座長:この協力者会議としては、IT化については、3つめに位置付けると言うよりは、ぜひ今後検討せよという課題にすべきではないか。
委員:何を3つにするかは皆さんの意見で決めれば良いと思うが、自分としては、IT化の問題は、「読書」のような各論の中でこそまず述べて注意を喚起すべきではないかと思っている。
委員:読者が誰かという問題は重要。
第1章では、「推進」とは何かについての記述が不足。少なくとも、従来とはIT化をはじめとする状況が大きく変わっている中での「推進」とは何かについて記述すべき。
第2章では、単なるデータを載せるだけではなく、関連する政策についても記述し、その結果として現在こういう状況になっていることを書くべき。それが提言の内容にもつながる。
図書館関係の政策だけでなく、広く幼児期から高齢期までを見通して、誰がどう支え読書を推進するのか、国、自治体、関係者がそれぞれどう引き受けるのか、構造を整理して提言をまとめるべき。その数が3つで良いのかどうかはともかく。この会議ではあくまで政策を提言すべきであって、「おすすめの3冊」などはなじまない。必要ならHPででも取り上げればよい。
委員:読書に関して「推進」の文字はあふれているが、結果として手応えがないのが現実。第1章ではそのことを踏まえてもう一度読書について考える必要がある。
委員:地域社会の崩壊や核家族化によって子どもの言葉が奪われている。新しい地域社会を作ることが必須条件。学校や図書館を超えた読書の仕組みを作りたい。地域ごとに核になる人が重要であり、それを育てる仕組み、予算、援助が必要。
座長:「誰に読んでもらうのか」に関し、地域の人たちにという点はぜひ盛り込みたい。
委員:新しい環境への心構えや、どう対応していくのかという点をもっと記述すべき。
委員:全国の公共図書館にも差が大きい。職員の中には学習しようという意欲の低い人も多い。公立図書館だけに頼ってはいけない。ボランティアや朝の読書、お話し会など、学校の図書館の充実が大事。取組は結局「人」の問題。理解ある司書教諭や職員を育てることが必要。特に今一番活躍しているのはボランティア。
委員:そういうボランティアの活動を支えるのが図書館の仕事であり、図書館職員の技量が問われる。現状では残念ながら市役所で使えない人が図書館に回されているところもある。予算と人が大事。
委員:昨年度、国民読書年を契機として、教育委員会で学校図書館を活用し子どもたちの学びを豊かにする「学校図書館活性化プラン」と「司書教諭ガイドブック」を作成して市内の全小中学校に配付した。これらの計画が絵に描いた餅にならないよう、教育委員会とその職員一人一人、現場の小中学校の先生、各図書館、ボランティアの方々とも共有し実施していくことが必要。ただ、これらの計画や冊子は、自分の市を越えてモデルとなっていくことは難しい。
委員:ボランティアに頼りすぎると教員や職員が育たなくなることにも注意が必要。どうしても行政の壁はある。この報告書は首長や議員に読んでもらい、その人たちの意識を変え、読書に対する優先順位を上げてもらえるようなものにしたい。
座長:ボランティアの力は不可欠のものになってきているが、現場での兼ね合いは実は難しい。軽視せず、また、甘えすぎない関係づくりが必要。
委員:読書の推進は、首長や実施主体に理解がないので遅れている。文科省としては、読書時間のカリキュラム化や教員養成などに特化して取り組むとともに、総務省に働きかけを強めてほしい。片山大臣は、指定管理者制度は図書館にはなじまないと発言しているが、現場ではコストダウンのために導入されている。政策と執行をどうかみ合わせるか。
委員:本が人をつないでいる。個人だけでなく、自治体ごとにも経済格差がある中で、すべての人に平等に質の保証を確保するための読書推進計画を、国、自治体、専門家がそれぞれの責任を負いつつ作成すべき。この会議の名称にある「国民」「推進」は上からの目線のように感じる。誰もが主体となってやっていくという理念をきちんと書くべき。
指定管理の中でも、職員はより良い読書環境を作るために頑張っている。そうした人と人との連帯が大事。
委員:著者や出版関係者などの知的生産物を生み出す人にも、自分たちが読書推進にコミットするメンバーだと認識してもらい、自分たちの問題として考えてもらえるよう、この報告書を読んでもらいたい。読んでもらう人の裾野を広く捉え、広報を充実すべき。
次につながる種を盛り込みたい。案に示されている「総合的な研究」はその一つと思う。現状のブレイクスルーにつながるものがほしい。また、第1章は「国際性」の視点が不足。日本語のリテラシーを育てないとダメだということも必要。
委員:報告書を誰に読んでもらうか、マーケットはどこか。すでに問題意識を持っている人はもう読んでいる。読まない人、届かないところにどうアプローチするかを考えるべき。例えば、サラリーマンは仕事以外の本を読んでいない。親のそういう姿を見ていると子どももいずれはそうなる。
座長:「エスキモーに冷蔵庫を売る」ということか。本を読む人をターゲットにするか、読まない人にするか、どちらかというのはなかなか難しいのではないか。
委員:それぞれがそれぞれの立場から努力しているのになぜうまくいかないのか。それは物事が複雑系だからである。複雑系の多様なパラメーターを一つ一ついじろうとするからうまくいかない。一人一人がそれぞれの意見を持っているから、議論しても結論が出ない。このため、ある命題を考える際には、それに一番影響を与えやすいもの(オーダー・パラメーター)を見ていく。そして、それを踏まえて全体の状況を考えることが必要。つまり、結論から決めて、その上で色づけをしていくべき。その意味で、結論として、1.金、2.どういう組織なら実現できるか、3.将来をどうすべきか、ITの観点から具体的に、の3つを提案する。
委員:「本のシビルミニマム」は、最終的にコミュニティとしてどう考えるかというもの。このためには最低限の予算は必要。読書の最低基準を考えるべき。
委員:学校、図書館、地域、書店、仕事の場いずれにおいても「人」が重要。
今は、本と人との関係をつくり出すことが非常に難しい時代。書物を何かとくっつけたモジュール空間が作れないかと長年考えてきた。一方で、情報はモバイル化され、ネットワーク化され、思いがけずにこれを達成してしまった。IT化が進み、知のインフラとしての電子的なものが拡がっていく中で、アレキサンドリアの図書館のような構造化された知をどのように電子的なものの中に織り込んでいくか、このことを通じて本と人をどうくっつけるか。いわば、電子化されて海のように拡がる本の空間と人とのかかわりをどのように作るか、そのモデル化のために全く新しいプランが求められている。
報告書は、おもしろくおしゃれなものに。こうした委員会の継続が必要なことや、読書のために読書を語ること、お金を使うべきことを盛り込むべき。
山根委員の言う学校でも図書館でもない読書のコミュニティを考えたい。「結」「講」のような結合様式をもったコミュニティと読書を結びつけたい。
肥田委員の言う総務省との連携も重要。
委員:情報をどうセレクトするか。各委員の意見はすべて大事だが、それをどうやったら20%までカットできるかを考えるべき。
委員:子どもゆめ基金のような仕組みも視野に入れてほしい。
座長:次回はもう一度構成案を議論したい。
(了)
生涯学習政策局社会教育課