資料9-2.熟議実践パッケージ「熟議 虎の巻」

事前準備編

0.リソースの確保をする

(ア)お金

会場さえ確保できれば、かかるお金は印刷費の他、消耗品、お菓子程度です。熟議ファシリテーターに謝礼を払うかどうかは、1使える予算があれば、それを確保するか、2スタッフで出し合うか、3スポンサーを募る、いずれかの形で確保します。

(イ)人

事務局スタッフ以外に、熟議ファシリテーター、当日のお手伝い(受付、誘導、設営など)をしてくれるスタッフが必要です。

場所や日時が決まり次第、呼びかけ文を作り、メールや掲示板に貼って募ります。

主催者達が、あてのある人に1人ずつ呼びかける事と、大勢の人がいるところ(例えば町内会や商店街、PTAや学校、サークルなど)へ呼びかける事両方やっておくことが大切です。

(ウ)備品

購入せずに、持ち寄りで確保できるものは確保し、別紙の備品リストを参考に、余裕を持って準備します。

1.テーマを決める

(ア)テーマの設定は、1主催者が事前に準備して決める場合と、2参加者が当日にテーマを熟議する場合の2種類があります。想定される参加者の状況を考慮して検討します。「熟議カケアイ」にあるテーマをより具体化/詳細化することも可能です。

例)熟議カケアイ:「未来の学校」 → 熟議実践テーマ「未来の○○地区の学校」

1は、決定が速くなりますが、参加者の参画感、納得感が薄くなる可能性があります。

2は参加者の参画感、納得感が得られやすいですが、決定までに時間がかかります。

2.参加者の検討

(ア)参加者の属性は多様に

一つのテーマを議論する際に、一つだけの立場の参加者が集まっても熟議にはなりにくいものです。様々な立場の人があつまり、一つのテーマについて意見を交換することで、より深い議論を行うことができます。

属性の例:先生(教員)、職員、保護者、学生、生徒、行政関係者、地域住民等。

(イ)熟議は複数グループで実施

熟議を行うには、グループでのディスカッションと、全体での発表の場が必要ですので、複数グループ(出来れば3グループ)以上の実施が望ましいです。

(ウ)1グループの人数は7,8名がベスト

1グループの参加人数は、ファシリテーターをのぞき最大10名くらいまで。7,8名程度が発言をしやすい雰囲気と規模です。

(エ)熟議イベントの最低実施参加人数は、20~30名

上記より、7名×3グループ=20名~10名×3グループ=30名が実施の最低ラインです。熟議をするための人数に、上限は特にありません。

(オ)人数の設定

利用可能そうな場所の候補と、主催者が想定する規模に応じて参加人数の上限を大まかに決めます。

3.会場を設定する

(ア)参加人数の収容可能なところ

参加人数の上限が決まれば、グループ数も決まります。その人数が集まれる場所を条件にします。

(イ)集まりやすいところ

参加者が不安なく集まれるような、よく知られていたり、交通の便がよい場所を設定しましょう。

(ウ)必要機材があるところ

熟議を実践するために、適度な距離感でリラックスして話ができる環境を用意しましょう。熟議の内容をまとめられるホワイトボード、模造紙、付箋紙や画用紙、筆記用具、などがあると役に立つ場合があります。利用の仕方については、熟議ファシリテーションガイドラインをご参照ください。ただ広いだけでなく、そのような機材が確保できるか、という点も考慮して会場を選びます。

4.熟議ファシリテーターを決める

(ア)事前にお願いをする

熟議を行うグループには、グループ毎に1名以上の熟議ファシリテーターが必要です。留意すべき事項が多いため、熟議当日に、参加者にお願いするのではなく、事前に予定する必要があります。

(イ)熟議ファシリテーターの要件

特別な資格や特殊な能力は必要ありません。別紙のファシリテーターの心得を事前に理解して頂ければそれで十分です。

(ウ)熟議ファシリテーターの準備

事前に集まり、熟議ファシリテーターの心得を読み合わせておくとスムーズです。熟議ファシリテーター向けのトレーニングプログラムを利用したり、ファシリテーションに関する参考資料(巻末)等を参考にする事も有効です。

5.日時を決める

(ア)参加者の多くが集まりやすい日時を設定する

(イ)直近ではなく、1カ月以上は余裕のある日程にする

(ウ)1回1テーマの熟議にかかる時間の目安は3時間半程度です。その時間プラス準備と撤収時間を考慮して場所を確保します。

(エ)熟議は1回限りではなく、継続して複数回行っていくとより効果的です。

6.参加募集をかける

   開催1か月前には、募集を開始しましょう。

   申し込みフォームには、属性、名前を明記してもらうようにします。

   その属性情報で、グループ分けをしていきます。

7.資料の作成・共有

(ア)参加者への事前共有

熟議を行うために必要だと思われる、背景となる統計資料等の資料を事前にまとめて、参加者に公開しておきます。同じ情報を踏まえた上で話し合いに臨むことが、熟議を行う上で重要です。

実施準備編

1.会場準備

(ア)グループ討議用の会場のセッティング

議論がしやすいように輪になって座ると良いでしょう。

スクール形式や長テーブルに向かいあって座るようなスタイルは望ましくありません。(図入れる)会場の都合によっては、グループごとに、部屋を分けてもよいでしょう。

(イ)受付のセッティング

入り口からわかりやすいところに受付をセッティングしましょう。

そこでは、名札/参加者名簿を準備し、参加者の出欠確認をします。

グループ分けは、受付時点で参加者に伝えるとよいでしょう。

(ウ)BGM

開場から開会までや、休憩時間等、合間の時間にBGMをかけておくことでリラックスした雰囲気作りができます。

2.機材

(ア)ホワイトボード

議論のキーワードを並べたり、論点を整理するのに非常に役立ちます。もしホワイトボードがなければ、大きな模造紙や付箋をたくさん用意しておくと良いでしょう。

(イ)プロジェクター/PCなど

はじめる前に、なにかしらの発表・報告がある場合は用意してもよいでしょう。

まとめ等の記録用としての使用は、発言が抑制されたり、視点が集まり過ぎて聴くことに集中できないため、お薦めできません。

(ウ)名札/文房具類

参加者の名前がわかるような名札やアンケート記入用のボールペンなどを用意しておきます。

3.飲み物/食べ物

(ア)ソフトドリンクおよびお菓子

飲み物やお菓子もまた、リラックスした雰囲気作りに役立ちます。但し、アルコールを摂取しながら、また、きちんとした食事をとりながらでは、熟議にはなりませんので、それらは熟議が終わったあと、個別に行ってください。

4.アンケート

(ア)(アンケートでは)参加者ひとりひとりの熟議に対する取り組みを聞くこと

その日行われた熟議について、参加者一人一人がどのような気持ちであったのかを集めることが大切です。熟議に対する考えや、その日行われた熟議を受けてどのように感じたのか、ということをきちんと理解することが、次回以降のより良い熟議を運営する参考となっていきます。

(イ)(アンケートでは)熟議では発信し切れなかった情報を拾い上げること

また、その場で発言しきれなかったことを書いていただくなど、ちょっと物足りないな、という思いを表現する機能とすることも考えられます。

(ウ)(アンケートを行った後は)結果をまとめ、熟議を実施する人々の参考にすること

出来ればアンケートの結果を踏まえ、運営した際に気づいたことをきちんと形にのこしてください。その内容を広く共有していければ、今後より良い熟議を実施していくための、とてもよい参考となっていくと考えています。

※ 別紙のようなフォーマットを元にアンケートを実施するとよいでしょう。

実施編

1.タイムテーブル

(標準スケジュール) モデルケース13時~16時30分開催の場合

time

内容

備考

13時

開場 受付開始

人数により開会まで15分~30分の余裕を

13時30分

開会

 

13時40分

オリエンテーション 10分

「短く」なぜ、熟議開催に至ったかを改めて確認

13時50分

テーマに関わる資料の共有

同じ知識背景を持って話し合いを行うために必須

14時

熟議(前半)スタート 60分

自己紹介から、意見をまずたくさん出していく

15時

休憩 10分

トイレ休憩、その他雑談、名刺交換など

15時10分

熟議(後半)スタート 60分

前半出てきた意見について考えていく

16時10分

グループごとの発表 15分

各グループ1分程度でまとめ、全体で発表する

16時25分

終わりの挨拶

「短く」今後の話し合いの場をどこで持つかの案内を

16時30分

閉会

開場で怒るコミュニケーションを大切に無理に追い出さない

 

 

適宜打ち上げなどへ移行(やるなら一部でなく全員で)

  

  時間短縮版は別ファイルエクセルシートに例示しています。

2.全体会合のファシリテーション

(ア)オリエンテーション(5~10分程度)

参加のお礼/主催者の自己紹介/今日の目的/タイムテーブルの説明/トイレの場所などの説明をまとめて簡潔に実施しましょう。

(イ)テーマの説明(5~10分程度)

熟議するテーマの内容説明と、それに関わる情報の説明をしましょう。資料は事前に配布することが望ましいですが、間に合わなければこの場で説明をします。

(ウ)グループに分ける

主催者側が事前に振り分けをして、様々な属性の人が一つのグループに参加するように予めグループ分けを行い、各グループごとに着席します。(1ヶ所で行う場合は、最初からグループごとに着席)

(エ)グループごとの熟議が終わったあとの発表

各グループでの熟議内容を報告してもらいましょう。

3.グループ毎のファシリテーション

(ア)熟議ファシリテーターの心構え

1結論を誘導せずに、様々な考えを引き出そう

2時間を守ろう

3皆に聞こえる声で話をしよう

4多数決でなく、1人1人の意見を尊重しよう

5熟議5カ条を意識しよう

(人の話をよく聴く、挨拶をする、簡潔に分かりやすく伝える、人を傷付けない、共感や感想、考えの変化があったら表明する) 

(イ)参加者に自己紹介をし、熟議ファシリテーターの役割を伝える

熟議ファシリテーターの役割とは熟議の支援と促進です。支援と促進とは、話しやすい場作りと、出た考えを整理することです。

(ウ)参加者に自己紹介してもらう

ただ名前や所属を言うだけでなく、例えば身近なテーマを決めてそれについてその人の人柄が分かるようなストーリーを話してもらうとよいでしょう。話す題材を決めるためのツール等を活用するのもよいでしょう。この時間で、参加者と熟議ファシリテーター自身の緊張感をほぐし、親しみのある雰囲気が作られます。その日のテーマに関連付けた話題、なるべくポジティブなものを設定しましょう。

例:思い出の給食、住んでいる場所の自慢、好きだった先生、最近この学校であったちょっといいこと、など

(エ)熟議のための約束ごとを参加者に伝える

1他の人の発言をよく聴きましょう

2発言は、簡潔に分かりやすく伝えましょう

3人を傷つけない発言を心がけましょう

4共感や感想、自分の考えが変わったことなどを伝えましょう。

5一回の発言で言いたいことは一つだけ

発言が長かったら、「なるほどなるほど」と2回言います。それが止めどきです。

といったルールを設定するのもよいでしょう。

6全体発表はファシリテーターではなく、参加者にしてもらいます。

熟議の途中(休憩明け頃)に発表者を決めてください。

(オ)熟議の手順の再説明

これからどのような順番で何をするか、改めて伝えましょう。質問があればこの時に聴きましょう。

(カ)発言を促す(口火を切る)

熟議ファシリテーターから話をしてもよいでしょう。テーマに関連した参加者の体験や経験を聞くようなところからおこなうとスムーズでしょう。顔をあげている人や、自己紹介の内容等から発言してくれそうな人を指名してみます。

例:「では、熟議を始めましょう。このテーマについて、どんな事を考えていますか?」

例:「では熟議を始めましょう。このテーマについて、どんな体験や経験がありますか?」

(キ)発言の中からキーワードになりそうなものをホワイトボードに記載する

ファシリテーションしながらの記載が難しい場合には、書記を他の人にお願いする方法をとってもよいでしょう。

(ク)中心となるキーワードを抽出する

一通り発言が出そろい、問題点が絞られてきたら、中心となるキーワードをホワイトボードなどに記載します。そのことにより、参加者の頭の中が整理され、重複や誤解が減り、さらに深い討議が可能になります。

(ケ)休憩中に参加者同士のコミュニケーションを円滑にする

たとえば、休憩時間は他のグループと揃え、時間通りにとったり、飲み物を飲む場所を1カ所に制限したりすることで、参加者同士のコミュニケーションを図ることが出来ます。そのことにより、休憩明けの討議がより活発になります。熟議ファシリテーターは、参加者に積極的に関わりを持ちましょう。せっかくのタイミングなので、名刺交換などをしてください、と呼びかけることも効果的です。

(コ)発表者を決める

参加者の自主性を重んじ、立候補制とするとよいでしょう。できるだけ発表者の主観を交えずに話し合われた内容をそのまま発表してもらうとよいでしょう。

4.クロージング

会の終わりに、今日の熟議の振り返りを問いかけ、(時間があれば数人からコメントをもらう)今後の継続的な熟議の進め方について案内をしましょう。その際には、感謝の気持ちを参加者にお伝えするのを忘れないようにしましょう。記念撮影などを行うのもよいでしょう。

フォローアップ編

1.熟議の仲間を維持する

せっかくの熟議を、この場だけではなく今後の生活の中で実践してもらえることが重要です。

(ア)参加者同士のメールアドレス/携帯番号交換の時間をとる

(イ)お疲れ様会(二次会)を設定する

(ウ)熟議でできたつながりを維持し、情報交換する仕組みをつくる

例:学校新聞、回覧板、掲示板、学級便り、ウェブサイトへの掲載など

2.熟議を継続的に

継続的に熟議を実施することも重要です。

(ア)次回の熟議のスケジュールを決めておく

複数回、熟議を設定しておきましょう。

(イ)インターネットなどで継続する場を設けておく

例:メーリングリストの作成、無料掲示板等の利用、無料SNSサービスの利用など

(ウ)(テーマがあてはまる場合には)熟議カケアイの中で継続する

(エ)Twitter上のハッシュタグ #jukugiでは、熟議に関する意見が交わされていますので、のぞいたり、参加することもよいでしょう。

3.熟議結果を公開する

きちんと実施/結果をまとめることが熟議の成果になります。

(ア)報告フォーマットにあわせ報告書を作成する

フォーマット記入内容(案)

  1. 参加日時
  2. 場所
  3. 参加人数(公表はしないが名簿があるとよい)
  4. 発起人
  5. テーマ
  6. 議論内容(グループ毎の総括)
  7. 全体会議内容
  8. 今後の展開(予定があれば)
  9. 所感・全体の雰囲気
  10. 写真など当日の様子がわかるもの

(イ)文部科学省サイト「政策創造エンジン 熟議カケアイ」に掲載する

ほかの熟議の実践を検討している人への参考になります。(メールアドレス)へ実施報告をご送付下さい。

■参考情報

‐熟議について

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http://www.amazon.co.jp/ワークショップ―新しい学びと創造の場-岩波新書-中野-民夫/dp/4004307104/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1273052592&sr=1-1

http://www.amazon.co.jp/参加型ワークショップ入門-ロバート-チェンバース/dp/4750319112/ref=sr_1_5?ie=UTF8&s=books&qid=1273052592&sr=1-5

http://www.amazon.co.jp/学級づくりの「困った-」に効く-クラス活動の技-DVD付-教育技術MOOK/dp/4091058140/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1273052723&sr=1-1

 ‐自己紹介の話題材料として

http://www.4connection.org/about/shaberica.html

お問合せ先

生涯学習政策局政策課