「熟議」に基づく教育政策形成の在り方に関する懇談会(第4回) 議事要旨

1.日時

平成22年11月12日(金曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省東館講堂

3.議事要旨

  • (資料2)会議の公開の取り扱いの改訂について、了承された。
  • (資料3,4)事務局より、ネット熟議及びリアル熟議について、報告された。
  • (資料5)「熟議に基づく政策形成展開~更なる推進に向けて~」(素案)について、座長より第一部について、事務局より第二部のネット熟議について、各委員より第二部のリアル熟議について、説明された。
  • (資料6,7)リアル熟議推進委員会の設置について、了承された。
  • (資料8,9)事務局の案内に従い、グループ討論(リアル熟議)の準備へ移行された。(移行時間の間に、リアル熟議推進委員会(第1回)が別室にて開催。)

【グループ討論(リアル熟議)の概要】

<グループ1>

(参加者・実践者の増加について)

  • 学校運営等に意見が反映されにくい保護者の参加の促進が重要。

-保護者は、教育についてあまり知識が自分にないと考えて意見することを遠慮する傾向が見られる。

-コミュニティ・スクール導入に際しても、人事や運営について意見が言えることについて、最も困ったのは保護者であることが多い。権利が与えられて逆にどうしたらよいかと戸惑ってしまう。

-保護者の影響力の大きさを保護者が気づいていない面がある。

  • 学校の仕組の解説やパソコンの使い方の支援が重要。
  • 小さい単位で実践され、口コミ等により実践が広がっていくことも重要だが、全体に組み込まれる仕組も必要。

-学習指導要領とまではいかなくとも、指導書に、話し合いの手法として熟議を入れてもよいのではないか。

  • 参加の敷居を下げれば、熟議はより活性化する。
  • 熟議について、行政の側の理解度が不十分。
  • 熟議は意外に楽にでき効果的だが、実際にやってみないと分からないというところがあるので、まずはやってもらうようにすることが重要。
  • 熟議が学校組織・運営の中に組み込まれていけば大変有意義。

(ツール・ノウハウの洗練について)

  • 主催者に熟議の価値・方法・効果等について十分に理解してもらうことが重要。

-熟議で寄せられた意見は、政策に生かされるだけでなく、自分でも実践しなければならないという自覚も重要。

-「ふるさと教育」で、保護者、子ども等各主体がそれぞれにやるべきことを考えてきたが、連携・協働を中心とする熟議が加わることで、さらに活性化してきた。

-熟議のプロセスによって多くの大人が学ぶことができたと感じる。

-熟議は単なるツール・方法ではないと思う。

-小グループで率直に意見交換する機会が少なくなってきた中で、熟議は効果的。

  • 主催者向けノウハウ(リアル熟議実践パッケージ「虎の巻」等)をより洗練させることが重要。

-「つまらない」会議が多いので、それを面白くする仕掛けを工夫することが重要。

  • ファシリテーター向けノウハウを洗練させることが重要。
  • 熟議の理念を整理することも重要。「熟議」という理念・言葉に必ずしもこだわるものではないが、対話・協働に関する様々な手法がなされてきた中で、それらを集約して熟議を一つの「合言葉」にして、多様な人・取組を有機的につなげていけたらよい。
  • ツールの洗練手法を洗練させることが重要。

-好事例だけでなく、失敗事例も蓄積させていくことも重要。

-成果を挙げた人に対して「もう一回神様に同じチャンスを与えられるとしたら、何をやるか?」といった問いによって、更なる改善方策を創発できたらよい。

(戦略の構築・明確化について)

  • 熟議の理念が重要だからこそ、明確なゴールを据えるべきではないか。

-ゴールは、認知度か、参加者数か、リピーター度か、素晴らしいアイディアが1件でも生まれることかなど、設定の仕方によって、推進方策も変わっていく。

  • 熟議の「態度」「文化」の形成が先決で、その次に具体的な成果の追求があるのではないか。

-好事例の蓄積と広報によって、全国によい取組を広げていけたらよい。なお、広報に当たっては口伝が効果的。

  • 各主体がやれることをやろうとすることが重要で、参加することによって学ぶこともあるので、少し気楽に入ってもらうことが重要。
  • リアル熟議の記録をしたり伝えたりするのにネット熟議を活用してもよく、ネット熟議を現場における熟議の実践プロセスのツールの一つとして使えてもよい。

<グループ2>

(参加者・実践者の増加について)

  • リアル熟議の未実施地域を少なくしていくことが重要。
  • 初任者研修、5年経験者研修、10年経験者研修等に熟議を組み込んでいけたらよい。
  • 企業等をどのように巻き込んでいくかが重要。
  • 文部科学省内の周知啓発も重要ではないか。
  • 行政・教育委員会等に熟議を認知してもらうことが重要。

-文部科学省は、リアル熟議について、「行く」だけでなく、「言う」ことも重要。

-文部科学省は、教育委員会に対して熟議を発信していく必要がある。

  • 熟議が記事に取り上げられることが重要。

-「グローバル人材の育成」に関する熟議などは、社会的関心も高く、メディアに取り上げてもらいやすいのではないか。

  • まず「聞く」ことが重要だという熟議を文化として育てていく姿勢を大事にしていけたらよい。

(ツール・ノウハウの洗練について)

  • 熟議のよさをもっと伝えられたらよい。

-審議会等の議論では、現場の人たちには「他人ごと」として受け止められてしまっている節があるが、熟議では、皆が「自分ごと」として受け止める。

  • 政策形成プロセスの段階に応じた熟議の設計が重要。

(政策形成への結びつきについて)

  • リアル熟議実施後のフォローが重要。
  • 中央教育審議会との関係を整理することが重要。

  -審議会でも熟議がなされるとよい。(生涯学習分科会で一部、熟議が試行されたところ。)

<グループ3>(ネット熟議関係)

(熟議への巻き込みのフェーズについて)

  • 発言者を増やす方策が強く求められる

-目標値を7万人あるいは10万・100万人等に設定

-リアル熟議からの導線を強化し、ネットで続きの熟議を行う部屋を設ける

-リアル熟議参加者へのメールや郵送での連絡が可能なよう個人情報の許諾を得ることを検討する

-ターゲティングも検討した上で、効果的な他のサイトからの導線を強化

  •  「ライト熟議」の設置が強く求められる

-携帯電話等、熟議性を確保しながらライトな入り口を設ける

-仕組みとして別の箱を設けたり、ID登録の垣根を下げる等の方策も検討

-関心ある方が多く集まる状況をつくるため、ティザーとしての位置づけをしたテーマや熟議の在り方も検討

(熟議を深めるフェーズについて)

  • 発言者の固定化を平準化する取り組みが必要

-発言回数の制限等のルール作りや、発言を促す等の運用上の工夫が必要

-属性や志向のバランスを考慮した、指名による限られたメンバーでの熟議の可能性を検討

-ファシリテーションを強化し、ライトなウェルカムを丁寧に行い発言を誘発する

  • シーズン制(仮称)の導入の検討が求められる

-春の課題発掘型、秋のパパブコメ型等の年間スケジュールの確立

-ライト熟議との組み合わせによる参加のしやすい状況づくり

  • テキストマイニングの活用が求められる

-ファシリテーションへの活用

-発言状況や意見の傾向の把握に活用

(政策等へ繋げるフェーズについて)

  • 熟議の意見の引き取り方の整理が強く求められる

-熟議の意見をどのように引き取るかの明確化

-「成果公開」のページで意見を踏まえた状況を可視化することが重要

  • テーマを熟議懇談会委員や文部科学省担当者が発議することの検討(その際意見の引き取り方の検討も必要)

(その他 熟議の更なる展開関連について)

  • マーケティング観点で、運営状況の分析を強化する必要がある

-基礎データの取り方や分析方法の再考が必要

-利用状況等についてのユーザアンケートの実施も有効ではないか

  • 審議会の活性化のツールとしてネット熟議を活用の検討
  • 各地域でネット熟議連携を実現するネット熟議協働員(サポーター)の検討

【全体会の概要】

  • 各グループ討論の結果概要について、各グループの代表者により紹介された。
  • 事務局より、リアル熟議推進委員会(第1回)において、貝ノ瀬委員が委員長に選任されたことが報告され、貝ノ瀬委員長により、熟議協働員の選任の了承等について、報告された。
  • 金子座長により、リアル熟議推進委員会の委員として塩見委員が追加指名され、リアル熟議推進委員会の全委員が確定された。
  • 鈴木副大臣より、以下のとおりコメントがなされた。

-資料5のとおり、委員の皆様のおかげでリアル熟議が大変な盛り上がりをしていることに感謝申し上げたい。

-内閣府が行っている政策コンテストにおけるパブリックコメントでは、36万通のコメントが寄せられたが、うち28万通が文部科学省関係であり、さらにそのうち、10万通が10代、20代からであった。我が国の政策形成過程上、10代、20代が、「石を投げ」ない形で、このような健全な反応をしたというのは極めて画期的なことだと思う。これは、ネット熟議により、多くの方々が教育問題に関心を持ってくださったことにもよるものと思っている。

-横浜市の事例のように、熟議により、世の中が変わるアクション、あるいはポリシーメーキングにつながっていくにはどうしたらよいかということも、引き続き、委員の皆様と考えていきたい。

-熟議により政策に反映されるということも大事だが、熟議文化が広がっていくことも非常に意味があると考えている。秋田や青森のように、市民に熟議文化が広がっているというのは、大変嬉しく、かつ、面白く思う。

-教育というのは地道な日常の積み重ねであり、何か特効薬があって、劇的に何か変わるという話ではないので、このような文化というのは大事だと思っている。

-私は、8月の【「熟議」in 横浜(教育夏まつり2010)】で「子ども熟議」に立ち会い、非常にうまくいった。青森県の弁論大会で優勝した中学3年生の作文を読ませていただいたが、非常に感動した。彼の取り組みたいテーマは「人間関係」ということだが、その中の一文に、自分たちは「人間関係」が大事だと思って取り組んでいたが、大人も熟議でそういうことを語っている。大人も分かっているではないかと、それで安心したという作文だった。大人がちゃんとそのようなことをわかっているとメッセージを伝えることは大変重要だと思った。

-現在、いじめ、不登校、引きこもり等、改めて文部科学省がきちんと取り組んでいかなければならないと考えている。もちろん従来の手法を徹底するということももちろん大事なことだが、それだけでは行き詰まりがあると私は個人的に考えており、子どもの中で熟議文化を広げていくことが、子供たちも悩んでいる人間関係の再構築、再構成、あるいはそうしたことのうまくいってないところの早期の発見、ケアというようなことに非常に有効である可能性を秘めており、こうしたことについても、委員の皆様と一緒に考えていきたい。

  • 板東生涯学習政策局長より、以下のとおりコメントがなされた。

-役所の人間や教育委員会の方に、十分に熟議文化が広まっていないというところを痛感しており、まず文化のところを官のほうにも広めていかなければいけないと改めて感じさせていただいた。

-文部科学省の中でも、全省的に熟議を色々な形で色々な分野で取り組むための仕掛けも考えなければいけないと考えており、また、教育委員会との協働体制もさらに充実していかなければいけないと感じさせていただいている。

  • 金子座長より、以下のとおりコメントがなされた。

 -ネットワークはコミュニティをつくる非常にパワフルなツールなので、ネットの力について、ネット熟議ではまだ十分に発揮されていないと思う。

 -リアル熟議は、今の火のように燃え盛っているところをしっかりプロセスとして定着させ、いい教育、いい地域をつくるというモデルにしていくということが重要。

 -熟議の取組は、これまでのところ、間違いなく大成功。ここにとどまらず、これから進めなければいけないと思う。

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