資料2-1.「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」についての報告案

1.基本的な考え方

1.経緯

○昭和25年の図書館法の成立以来、長期にわたり図書館の設置及び運営上の望ましい基準が規定されていない状態が続いたが、平成13年7月18日に図書館法第18条に基づき、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年告示第132号、以下「現行基準」という。)が告示された。
○平成20年6月の図書館法改正において、第一に現行基準の対象を私立図書館に拡大すること、第二に図書館の運営状況に関する評価及び改善並びに地域住民等に対する情報提供に努めることが新たに盛り込まれた。
○また、現行基準の施行から8年が経過し、その間の社会の変化に対応する必要がある。
○これらのことを背景に、「これからの図書館の在り方検討協力者会議」(主査・薬袋(みない)秀樹・筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授)において、改正後の「図書館の設置及び運営上望ましい基準」(以下、「新基準」という。)に盛り込むべき視点やその具体的な内容について、関係者からの意見を聞きつつ、報告をとりまとめた。

2.図書館の現状

○図書館数は、一貫して増加しており、平成20年度社会教育調査 においては、初めて3,000施設を突破した(平成20年度調査から、都道府県・市町村首長部局所管の「図書館同種施設 」を含む)。平成17年度に比べると186館(伸び率6.2%)の増である。
○地方公共団体における図書館の設置率(図書館を設置する市(区)町村数/市(区)町村数)は、平成20年度には市(区)立は、%であるが、町立では%、村立は%にとどまっている(平成17年度は、市(区)立は、97.9%、町立は53.9%、村立は22.9%)。一方、市町村合併が急速に進み、市町村数の減少(平成11年3月31日3,232市町村→平成22年3月31日現在(予定)1,730市町村)に伴って数字の上での図書館の設置率は上昇しているが、旧町村部を中心に図書館サービスを身近に受けられない地域は多く残されている。
○厳しい財政状況が続く中、図書館職員の総数は増加傾向にあるが、このうち司書・司書補等の専任職員 の割合は、43.8%(平成17年度は、49.8%)にとどまり、その割合は、減少傾向にある。
○図書館資料購入費は減少傾向にあり、1館あたりの平均資料費は、平成16年度から平成20年度の5年間で、都道府県立では、635万円の減(5,345万円→4,710万円)、市町村立では160万円の減(1,092万円→932万円)となっている。
○図書の貸出冊数及びレファレンスサービス は増加傾向にあり、平成20年度社会教育調査では過去最高である(貸出冊数 平成17年度58,073万冊→平成20年度63,187万冊、レファレンスサービス 平成17年度650万件→平成20年度710万件)。
○各都道府県の住民一人当たりの平均年間貸出冊数は、多いところでは9.2冊、少ないところでは2.2冊である。

3.これからの図書館に求められる「基準」の視点

○近年、我が国においては、少子高齢化、高度情報化、国際化などが急速に進む中、地域の社会構造の変化、地域の課題の増加や複雑化に対応した図書館サービスの見直しが急務となっている。
○都道府県、市町村立図書館の各々の役割を明確にするとともに、政令指定都市立図書館の扱いを整理する。
・都道府県立図書館は、市町村立図書館への援助や図書館未設置市町村に対する支援等の域内市町村への支援を行う。
・政令指定都市立図書館は、多くの市民サービスの充実が求められるが、市町村立図書館の位置づけと同様に、地域の実情に応じ、住民のために資料や情報の提供等直接的な援助を行う。
○平成20年における図書館法の改正を反映する。
(1)現行基準の対象が私立図書館に拡大されたことに伴い、私立図書館の基準の内容を新たに定める。
・新基準の対象となる「私立図書館」を整理する必要がある。
・私立図書館を設置する一般社団法人若しくは一般財団法人(公益社団法人若しくは公益財団法人、特例社団法人若しくは特例財団法人を含む)の定款や規則等において、一般公衆の利用に供する図書館を設置することを法人の事業内容として位置づけることが望ましい。
・新基準は、私立図書館の設立の理念やその有する専門性に基づいた運営を行う上での包括的な望ましい基準(目標とすべきもの)であり、自立的な運営を損なうものではない。(図書館法第26条に規定するノーサポート・ノーコントロールの姿勢を維持するものである。)
・図書館の運営や職員の資質の向上等に効果的な面があることから、館種の異なる図書館等との連携・協力を行うことも必要である。
(2)図書館の運営状況に関する評価及び改善並びに地域住民等に対する情報提供に努めることとされた。
(3)国会での審議、社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議の趣旨も反映する。
○新基準の構成は、「総則」・「公立図書館」・「私立図書館」とする。「総則」には、公立図書館と私立図書館とに共通する、設置と運営の大原則とし、「私立図書館」については、図書館法の規定に基づき、図書館の設置及び運営上一般的に望ましいと考えられる原則についてのみ定め、自立的な運営を保障する内容とする。
○図書館の情報化に関しては、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(平成12年法律第144号)など、国の情報化政策を活用することが考えられる。
○知識基盤社会 の進展の中で、図書館の位置づけを明確にする必要がある。
・「知識基盤社会」とは、「新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す社会」であり、その社会の中で、図書館は、知識基盤社会における地域の情報拠点として、知識を蓄積、保存、提供するとともに、情報リテラシー の向上に資する上で重要な役割を担っている。
○図書館におけるネットワーク情報資源の活用
・情報化の進展に伴い、インターネットやウェブサイト上で提供されているデータベース等のネットワーク情報資源が多様化・量的増加され、図書館において、ネットワーク情報資源の活用の重要性が増している。そのため、従来の図書館資料とネットワーク情報資源との併用により、豊富な情報の提供が可能となる。
○「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年文部科学省告示第132号)施行後に制定された法令や、新設された制度、提言の内容等を盛り込み、社会の変化や新たな課題等に対応する。
・現行基準と「これからの図書館像~地域を支える情報拠点をめざして~」(平成18年3月、これからの図書館の在り方検討協力者会議報告)の内容をうまく盛り込み、読書支援や課題解決支援、新たな課題等を含む形でまとめる。
・「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平成13年法律第154号)及び、「文字・活字文化振興法」(平成17年法律第91号)等の内容も取り込む。
○教育委員会及び図書館は、新基準に基づいて、目指すべき成果及び新たな目標を設定し、また、社会の変化に応じて、柔軟に改訂していくことが望ましい。

2.「基準」の具体的な内容

1.図書館法改正により新たに盛り込む内容

○図書館における評価の実施やその結果に基づく運営の改善に関する包括的な努力義務規定の新設。
・図書館における評価システムの更なる充実と、その評価結果に基づく、運営改善のための取組を一層促すため、各図書館が、図書館サービスについて目標を設定し、その達成に向けて計画的に必要な措置を講ずるよう努める。
・評価を行う際には、利用者である地域住民の意向が適切に反映されるよう、図書館協議会を十分に活用することも考えられる。
・私立図書館においては、この努力義務をどのように果たすかは、各図書館が自主的に判断する。
○図書館の運営状況に関する地域住民への情報提供に関する規定の新設。
・地域住民への説明責任及び、個人の要望や社会の要請に適切に応える運営を行うため、住民との共通理解を図り、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力を図ることが重要。
○都道府県教育委員会に対して、司書及び司書補の資質向上のため、必要な研修を行うことについて、努力規定の新設。
・近年、図書館は、多様化・高度化する人々の学習ニーズや地域における課題に対応することが求められており、司書及び司書補の研修を充実させ、専門的な知識・技能の習得と資質の向上を図ることが重要である。
○図書館が図書館奉仕(図書館サービス)を行う際に、家庭教育の向上に資することとなるよう留意することについて新たに規定。
・子どもの読書活動は、「子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの」(「子どもの読書活動の推進に関する法律」第2条)であり、家庭教育においても、その推進が図られるよう、図書館奉仕を行うことが重要である。
○図書館が実施すべき事項として、学習成果を活用して行う活動の機会を提供する事業の実施及びその奨励について、新たに規定。
・社会教育による学習の成果が社会において実際に活用され、人々が社会教育を通じた学習の意義を実感できるような環境の整備が重要である。
・図書館における学習の成果を発揮する活動として、子どもへの読み聞かせや、書籍の保護・修復等のボランティア活動等の機会を提供する事業の実施及びその奨励が重要である。
○図書館資料に、電磁的記録も含まれることを新たに規定。
・「電磁的記録」とは、具体的には、音楽、絵画、映像等をCDやDVD等の媒体で記録した資料や、図書館であれば市場動向や統計情報等のデータ等が想定される(「社会教育法等の一部を改正する法律等の施行について」(20文科生第167号付、平成20年6月11日文部科学事務次官通知)。
・これまでの図書館は、図書、記録、視聴覚資料等の提供が中心であったが、情報技術の進展により、デジタル写真・映像や、ハイビジョン映像等資料の記録媒体が多様化していることを反映する必要がある。
○国会での審議や附帯決議の内容
・国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、図書館における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度についても十分配慮し、検討する必要がある。
・地域における教育力の向上のため、学校・家庭・地域等の関係者・関係機関の連携の推進し、各施設資料の相互利用や人材の相互活用等を図る。

2.「これからの図書館像(報告)」の提言を踏まえ新たに盛り込む内容

「これからの図書館サービスに求められる新たな視点」
(1)図書館活動の意義の理解促進
○情報化の進展の中、地域社会の情報格差を埋めるための図書館の役割は大きい。
○図書館サービスにおいて、医療・健康、福祉、法務、雇用等に関するとの施策と結びつけることも考えられる。地域の課題解決に向けて、行政における各部局との施策の連携を検討するにあたり、教育行政の独自性という側面を維持する形で、図書館の位置づけを考察する。
○図書館は、個人、地域及び行政の課題解決にあたり、図書館の利用により様々な多面的観点からの情報を入手することが可能であり、課題解決や調査研究の支援が可能であることを、地域の人々に理解されるよう努めることが必要である。
(2)レファレンスサービスの充実と利用促進
○レファレンスサービスを図書館において不可欠のサービスと位置づけ、担当職員の確保及び能力の向上を図ること、サービスの評価を行うこと、行政支援・学校教育支援・ビジネス支援等の中でサービスを実施すること等が必要である。
○レファレンスサービスの充実等にあっては、商用データベースやネットワーク情報資源の利用にも努める。
○利用者が自主的に文献を調べたり調査を進めたりできるよう、文献探索・調査案内(パスファインダー)やリンク集の作成、講習会の開催など、条件整備等の支援に努めることも必要である。
○レファレンスサービスの件数は増加傾向にあるものの、その存在を知る利用者が多いとはいえない。レファレンスサービスの利用促進のため、図書館は、ホームページを設置し、図書館の利用案内、ニュース、各種所蔵目録(Web-OPAC )等を用いた、積極的な情報発信を行うことも必要である。
(3)課題解決支援機能の充実
○図書館が従来より担ってきた役割、すなわち、住民の身近にあって、図書やその他の資料を収集、整理、保存し、その提供を通じて住民の個人的な学習を支援するという役割に加え、特に近年は、地域が抱える課題の解決や医療・健康、福祉、法務、雇用等に関する情報や地域資料等、地域の実情に応じた情報提供サービスを行うことが必要である。
○このため、貸出、リクエストサービス、レファレンスサービスの充実や、地域の関係機関・団体との連携・協力が不可欠である。
(4)紙媒体と電子媒体の組合せによるハイブリッド図書館 の整備
○情報化に対する図書館の対応、とりわけ、ネットワーク上の情報(一次情報を含む)に対する図書館のサービスの在り方について、図書館は、読書環境及び情報環境の整備の双方を行う必要がある。
○情報環境の整備については、様々な情報を自宅から入手可能となるよう、ホームページの充実や、電子メールによるレファレンスサービス、メールマガジンの配信等も充実すべきである。
(5)多様な資料の提供
○地域情報の収集・発信、デジタルアーカイブ化、地域のポータルサイト としての図書館の役割がますます重要となっている。
(6)児童・青少年サービスの充実
○図書館においても、家庭教育における保護者の読書への啓蒙といった視点が必要である。
○青少年に対して行われるヤングアダルトサービスの普及や、読書会の開催、子どもの読書活動を推進する団体・グループやボランティアとの連携等が必要である。
(7)公立図書館と他の図書館(学校図書館・大学図書館・国立国会図書館・私立図書館・専門図書館)、行政部局、各種団体・機関との連携・協力
○図書館資料の横断検索システムの整備や資料搬送サービスの実施により、市町村立図書館等への支援や全域サービスを展開していくことが重要である。
○大学図書館や専門図書館等との間のネットワーク形成等に関する検討や、コンソーシアム の設置、協力協定などの工夫が必要である。
○多様な分野の行政部局と連携・協力した図書館サービスを行うことにより、図書館の機能を向上させるとともに、図書館の機能の理解促進に努めるものとする。
(8)学校との連携・協力
○子どもの読書活動や学習活動を推進する上で、図書館は、学校図書館の活用が進むよう、図書の長期的貸出しやレファレンスサービスの実施等による学校教育への支援を積極的に行う必要がある。
(9)著作権制度の理解と配慮
○図書館では、利用者の求めに応じて迅速かつ適切に資料を提供することが重要であるが、その際に著作権制度の正確な理解と著作権者への配慮を怠ってはならない。
○図書館職員の著作権制度に関する研修機会の確保及び利用者への著作権の基本的知識の普及を図ることが必要である。

「これからの図書館経営に必要な視点」
(1)図書館の持つ資源の見直しと再配分
○レファレンスサービス、課題解決・調査研究の援助等のサービス充実のため、図書館の経営方針や、資源配分の優先順位と比率の見直しが必要である。
○情報化の進展に伴い、ネットワーク環境の整備だけでなく、それを十分に活用できるだけの人材を確保していくことも必要がある。
○都道府県立図書館と市町村立図書館は、それぞれの図書館の役割や地域の特色を踏まえつつ,資料及び情報の収集,整理,保存及び提供について計画的に連携・協力を図る必要がある。
(2)図書館長の役割
○今後図書館の改革を行うため、図書館長の役割の重要性はますます高まる。
○図書館長は、地方公共団体の首長・行政部局や議会に対する積極的な働きかけや、図書館職員が社会のニーズや行政の施策と図書館サービスを結びつけることができるような配慮を行うべきである。
○教育委員会は、図書館長としての業務を行える勤務体制と権限を確保する必要がある。
(3)利用者の視点に立った経営方針の策定
○図書館は,地域住民,及び社会・地域の要求に基づき,適切な図書館サービスを提供するため,それぞれの図書館がめざす使命や目的を定め,公表する必要がある。
○図書館の経営にあっては、社会や地域の実情,利用者の要求の変化に応じ、さらに,利用者の視点(マイノリティを含む)に立った図書館サービスを行うよう、サービス内容の見直し等が必要である。
○多様な分野の行政と連携して図書館サービスを行うことも必要である。
○教育委員会は,地域住民が、どこでも日常的に図書館サービスを利用できるように,公民館図書室,学校図書館,各種図書室を活用するなどの,図書館サービスの拠点の拡大にも努める必要がある。
(4)効率的な運営方法
○読書支援や課題解決支援、情報リテラシーの支援等に重要な役割を担っている図書館において、専門的職員である司書の配置が必要である。
○専門的職員の雇用や管理運営を含め、公立図書館運営の広域化により、単なる人事交流ではない、柔軟な職員の配置あるいは運営を行うことも考えられる。
○図書館職員の、その資格、勤務経験等に応じた適切な業務への配置、機械化や業務委託の推進、他の図書館、行政部局、学校、各種団体・組織等との連携・協力等による業務の効率化を図ることが必要である。
(5)図書館サービスの評価
○公立図書館は、利用者である地域住民の意向が適切に反映されるよう、経営・サービス目標及び数値化が可能な指標についてはこれらに係る数値目標を設定し、その達成状況等に関し自ら点検及び評価を行う。
○社会のニーズに応じた評価の在り方を考えるとともに、アウトカムを表す評価指標や、設置者・住民・図書館と連携協力する諸機関の三者の視点からの評価が必要である。
○今後の課題として、第三者評価、第三者評価及び自己点検・評価のための評価基準の策定の必要性も挙げられる。
(6)継続的な予算の獲得
○図書館において、継続的に質の高いサービスを提供するために必要な予算を確保するため,教育委員会は,地域住民の生活にどのような利便性の向上が生じるか,専門的職員がそれにどのような役割を果たすかを明確にすることによってどのように社会がより良く変化するかを明確に示し,地域社会から評価を得る必要がある。
○教育委員会は,質の高いサービスを継続的に提供できる図書資料を確保するため,交付税の算定基準額を措置した上で,地域の実情に応じたサービスに必要な資料収集のための予算の確保に努めることが求められる。
(7)広報
○現状では、図書館サービスの意義に対する社会の理解が不十分であることから、広報活動を重視し、住民並びに地域の関係団体等を対象に、図書館の多様な機能を紹介することが必要である。
○広報対象を絞って実施することが重要であり、ホームページや報道機関を通じた広報は非常に効果的である。
(8)危機管理
○図書館は誰もが利用する施設であり、人的災害や自然災害等の災害に対し、危機を回避し、被害を最小限にとどめるためには、徹底した予防策を講じるとともに、図書館の特性を考慮し、館内外で発生が想定されるあらゆる事態に対する危機管理マニュアルを作成し、危機発生時に誰がどう行動するかを明確にしておくことが必要である。
(9)図書館職員の資質向上と教育・研修
○社会の変化に対応して図書館を改革し、図書館が地域の情報拠点としての役割を果たすため、図書館職員自身も、その意識を持ち、自主的な学習活動を行うことが必要であり、その研修機会を十分に確保することが求められる。
○教育委員会は、図書館長や司書等に対し、図書館経営について継続的に研修を受けられるように配慮する必要がある。
○国は、地域においてリーダーとなりうる者や図書館長や司書等を対象に政策的な観点から研修を行うことが望まれる。
(10)市町村合併を踏まえた図書館経営
○市町村合併により、図書館サービスの対象地域が拡大されるが、同一市内におけるサービスの格差のないよう、職員の配置や体制を検討し、周辺地域を含む全域サービスの実現とサービスの質的向上をめざすことが必要である。
(11)管理運営形態の考え方
○指定管理者制度や業務委託を導入する公立図書館の増加に伴い、図書館職員の専門性の確保の課題がある。
○図書館の管理運営形態を検討する際には、具体的な評価基準を作成し、当該地域の実情に照らし、当該図書館の設置目的をもっとも効果的に達成することができる管理運営体制について各図書館の設置者が判断する必要がある。
○図書館の設置者は、どのような管理運営形態が、当該地域の実情に照らして、当該図書館の経営目的を最も効果的・効率的に達成することができるかを、専門的職員の確保に十分留意しつつ、必要な事項について十分検討した上で,判断する必要がある。

「国、都道府県の役割」
(1)都道府県の役割
○都道府県教育委員会は、都道府県の図書館政策の指針の設定およびその実現に向けて主体的に先導することや、図書館の新しいサービス、その評価方法の調査・研究に努めること、市町村立図書館への支援を行うこと等が望まれる。
(2)国の役割
○国は、先進事例の収集・分析をもとに、情報提供を行うことによって、その成果の普及、図書館の在り方の提示等を行う。
(3)国立国会図書館の役割
○国立国会図書館では、公共図書館をはじめとする国内の各種図書館とより密接な連携・協力を進めることを取り組みの一つとして掲げている。
○現在、図書館へのサービスとして、資料の貸出、複写、レファレンスを提供しているとともに、図書館員を対象とした研修の実施、総合目録の作成を提供している。
○図書館は、国立国会図書館の機能を活用して、積極的にサービス向上に努める。

3.その他(最近の動向、諸外国の情勢など)

(読書)
○「子どもの読書活動の推進に関する法律」の規定に基づき、平成14年8月に策定された第一次計画に代わる、新たな「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定された(平成20年3月)。
○子どもの読書活動推進のため、図書館は、保護者を対象とする子ども向けの図書の展示会等を開催し、読み聞かせや本の選び方・与え方の指導等を行うなど、家庭教育の向上に資する学習機会の提供を行うことも必要である。
○2010年を「国民読書年」とすることが国会で決議された(「国民読書年に関する決議」(平成20年6月採択))。本決議では、読書への国民の意識を高めるため、政官民が協力し、国をあげてあらゆる努力を重ねることが宣言されている。
○読書は、一人一人の人生を実り豊かなものにする上で不可欠なものである。とりわけ子どもたちにとっては、言葉を学び、その感性を磨き、感受性をはぐくむとともに創造力を培う上で欠くことできないものである。
○地域における読書活動を推進する上で、図書館は重要な役割を担っている。
(諸外国の状況)
○(P:確認)韓国の例。
(デジタルアーカイブ)
○(P:確認)図書館におけるデジタルアーカイブ事業。
(数値基準)
○図書館の数値基準について、都道府県が域内の図書館に共通する基準を策定することが望ましい。

なお、改正後の「図書館の設置及び運営上望ましい基準」に盛り込むべき視点やその内容をまとめた新基準案は、別紙のとおりである。

 

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課