資料1.「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」についての報告(案)

1.基本的な考え方

1.経緯

○昭和25年の図書館法の成立以来、長期にわたり図書館の設置及び運営上の望ましい基準が規定されていない状態が続いたが、平成13年7月18日に図書館法第18条に基づき、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年告示第132号、以下「現行基準」という。)が告示された。
○平成20年6月の図書館法改正において、第一に従来の基準の対象を私立図書館に拡大すること、第二に図書館の運営状況に関する評価及び改善並びに地域住民等に対する情報提供に努めることが新たに盛り込まれた。
○また、現行基準の施行から8年が経過し、その間の社会の変化に対応する必要がある。
○これらのことを背景に、「これからの図書館の在り方検討協力者会議」(主査・薬袋(みない)秀樹・筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授)において、改正後の「図書館の設置及び運営上望ましい基準」(以下、「新基準」という。)に盛り込むべき視点やその具体的な内容について、関係者からの意見を聞きつつ、報告をとりまとめた。

2.図書館の現状

○図書館数は、一貫して増加しており、平成20年度社会教育調査 においては、初めて3,000施設を突破した(平成20年度調査から、都道府県・市町村首長部局所管の「図書館同種施設 」を含む)。平成17年度に比べると186館(伸び率6.2%)の増である。
○地方公共団体における図書館の設置率(図書館を設置する市(区)町村数/市(区)町村数)は、平成20年度には市(区)立は、%であるが、町立では%、村立は%にとどまっている(平成17年度は、市(区)立は、97.9%、町立は53.9%、村立は22.9%)。一方、市町村合併が急速に進み、市町村数の減少(平成11年3月31日3,232市町村→平成22年3月31日現在(予定)1,730市町村)に伴って数字の上での図書館の設置率は上昇しているが、旧町村部を中心に図書館サービスを身近に受けられない地域は多く残されている。
○厳しい財政状況が続く中、図書館職員の総数は増加傾向にあるが、このうち司書・司書補等の専任職員 の割合は、43.8%(平成17年度は、49.8%)にとどまり、その割合は、減少傾向にある。。
○図書館資料購入費は減少傾向にあり、1館あたりの平均資料費は、平成16年度から平成20年度の5年間で、都道府県立では、635万円の減(5,345万円→4,710万円)、市町村立では160万円の減(1,092万円→932万円)となっている。
○図書の貸出冊数及びレファレンスサービス は増加傾向にあり、平成20年度社会教育調査では過去最高である(貸出冊数 平成17年58,073万冊→平成20年度63,187万冊、レファレンスサービス 平成17年度650万件→平成20年度710万件)。
○各都道府県の住民一人当たりの平均年間貸出冊数は、多いところでは9.2冊、少いところでは2.2冊である。

3.これからの図書館に求められる「基準」の視点

○近年、我が国においては、少子高齢化、高度情報化、国際化などが急速に進む中、地域の社会構造の変化、地域の課題の増加や複雑化に対応した図書館サービスの見直しが急務となっている。
○都道府県、市町村立図書館の各々の役割を明確にするとともに、政令指定都市立図書館の扱いをどうするか検討する。
○平成20年における図書館法の改正を反映する。
(1)基準の対象が私立図書館に拡大されたことに伴い、私立図書館の基準の内容を新たに定める。
・基準の対象となる「私立図書館」を整理する必要がある。
・私立図書館を設置する一般社団法人若しくは一般財団法人(公益社団法人若しくは公益財団法人、特例社団法人若しくは特例財団法人を含む)の定款や規則等において、一般公衆の利用に供する図書館を設置することを法人の事業内容として位置づけることが望ましい。
・基準は、私立図書館の設立の理念やその有する専門性に基づいた運営を行う上での包括的な望ましい基準(目標とすべきもの)であり、自立的な運営を損なうものではない。(図書館法第26条に規定するノーサポート・ノーコントロールの姿勢を維持するものである。)
・図書館の運営や職員の資質の向上等に効果的な面があることから、他の図書館等との運営面における連携・協力を行うことも必要である。
(2)図書館の運営状況に関する評価及び改善並びに地域住民等に対する情報提供に努めることとされた。
(3)国会での審議、社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議の趣旨も反映する。
○改正される基準の構成は、「総則」・「公立図書館」・「私立図書館」とする。「総則」には、公立図書館と私立図書館とに共通する、設置と運営の大原則とし、「私立図書館」については、図書館法の規定に基づき、図書館の設置及び運営上一般的に望ましいと考えられる原則についてのみ定め、自立的な運営を保障する内容とする。
○図書館と国の情報化政策との関係として、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(平成12年法律第144号)などを活用することが考えられる。
○知識基盤社会 の中の図書館の位置づけを明確にする必要がある。
・「知識基盤社会」とは、「新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す社会」であり、その社会の中で、図書館は、知識を蓄積、保存、提供する役割とともに、情報リテラシー の向上という支援をしていく上で重要な役割を担っている。
○図書館におけるネットワーク情報資源の活用
・情報化の進展に伴い、インターネットやWeb上で提供されているデータベース等のネットワーク情報資源が多様化・量的増加され、図書館において、ネットワーク情報資源の活用の重要性が増している。そのため、従来からの紙媒体とネットワーク情報資源との併用により、豊富な情報の提供が可能となる。
○「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年文部科学省告示第132号)施行後に制定された法令や、新設された制度、提言の内容等を盛り込み、社会の変化や新たな課題等に対応する。
・現行の基準と「これからの図書館像~地域を支える情報拠点をめざして~」(平成18年3月、これからの図書館の在り方検討協力者会議報告)の内容をうまく盛り込み、読書支援や課題解決支援、新たな課題等を含む形でまとめる。
・「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平成13年法律第154号)及び、「文字・活字文化振興法」(平成17年法律第91号)等の内容も取り込む。
○教育委員会及び図書館は、基準に基づいて、目指すべき成果及び新たな目標を設定し、社会の変化に応じて、柔軟に改訂していくことが望ましい。

2.「基準」の具体的な内容

1. 図書館法改正により新たに盛り込む内容

○図書館における評価の実施やその結果に基づく運営の改善に関する包括的な努力義務規定の新設。
・図書館における評価システムの更なる充実と、その評価結果に基づく、運営改善のための取組を一層促すため、各図書館が、図書館サービスについて目標を設定し、その達成に向けて計画的に必要な措置を講ずるよう努める。
・評価を行う際には、利用者である地域住民の意向が適切に反映されるよう、図書館協議会を十分に活用することも考えられる。
・私立図書館においては、この努力義務をどのように果たすかは、各図書館が自主的に判断する。
○図書館の運営状況に関する地域住民への情報提供に関する規定の新設。
・地域住民への説明責任及び、個人の要望や社会の要請に適切に応える運営を行うため、住民との共通理解を図り、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力を図ることが重要。
○都道府県教育委員会に対して、司書及び司書補の資質向上のため、必要な研修を行うことについて、努力規定の新設。
・近年、図書館は、多様化・高度化する人々の学習ニーズや地域における課題に対応することが求められており、司書及び司書補の研修を充実させ、専門的な知識・技能の習得と資質の向上を図ることが重要である。
○図書館が図書館奉仕(図書館サービス)を行う際に、家庭教育の向上に資することとなるよう留意することについて新たに規定
・子どもの読書活動は、「子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの」(「子どもの読書活動の推進に関する法律」第2条)であり、家庭教育においても、その推進が図られるよう、図書館奉仕を行うことが重要である。
○図書館が実施すべき事項として、学習成果を活用して行う活動の機会を提供する事業の実施及びその奨励について、新たに規定
・社会教育による学習の成果が社会において実際に活用され、人々が社会教育を通じた学習の意義を実感できるような環境の整備が重要である。
・図書館における学習の成果を発揮する活動として、子どもへの読み聞かせや、書籍の保護・修復等のボランティア活動等の機会を提供する事業の実施及びその奨励が重要である。
○図書館資料に、電磁的記録も含まれることを新たに規定
・「電磁的記録」とは、具体的には、音楽、絵画、映像等をCDやDVD等の媒体で記録した資料や、図書館であれば市場動向や統計情報等のデータ等が想定される(「社会教育法等の一部を改正する法律等の施行について」(20文科生第167号付、平成20年6月11日文部科学事務次官通知)。
・これまでの図書館は、図書、記録、視聴覚資料等の提供が中心であったが、情報技術の進展により、デジタル写真・映像や、ハイビジョン映像等資料の記録媒体が多様化していることを反映する必要がある。
○大学における司書養成教育を制度上明確化 
・大学における司書養成教育の充実のための取組の必要性が改めて認識され、その取組の充実が図られることが期待される。
○国会での審議や附帯決議の内容
・国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、図書館における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度についても十分配慮し、検討する必要がある。
・地域における教育力の向上のため、学校・家庭・地域等の関係者・関係機関の連携の推進し、各施設資料の相互利用や人材の相互活用等を図る。

2.「これからの図書館像(報告)」の提言を踏まえ新たに盛り込む内容

「これからの図書館サービスに求められる新たな視点」
(1)図書館活動の意義の理解促進
○情報化の進展の中、地域社会の情報格差を埋めるための図書館の役割は大きい。
○図書館サービスにおいて、医療・健康、福祉、法務、雇用等に関するとの施策と結びつけることも考えられる。地域の課題解決に向けて、行政における各部局との施策の連携を検討するにあたり、教育行政の独自性という側面を維持する形で、図書館の位置づけを考察する。
○個人、地域及び行政の課題解決にあたり、図書館の利用により様々な多面的観点からの情報を入手することが可能であり、課題解決や調査研究の支援が可能であることについて、理解されるよう努めることが必要である。
(2)レファレンスサービスの充実と利用促進
○レファレンスサービスを図書館において不可欠のサービスと位置づけ、担当職員の確保及び能力の向上を図ること、サービスの評価を行うこと、行政支援・学校教育支援・ビジネス支援等の中でサービスを実施すること等が必要である。
○レファレンスサービスの充実等にあっては、商用データベースやネットワーク情報資源の利用にも努める。
○利用者が自主的に文献を調べたり調査を進めたりできるよう、文献探索・調査案内(パスファインダー)やリンク集の作成、講習会の開催など、条件整備等の支援に努めることも必要である。
○レファレンスサービスの件数は増加傾向にあるものの、その存在を知る利用者が多いとはいえない。レファレンスサービスの利用促進のため、図書館は、ホームページを設置し、図書館の利用案内、ニュース、各種所蔵目録(Web-OPAC )等を用いた、積極的な情報発信を行うことも必要である。
(3)課題解決支援機能の充実
○図書館が従来より担ってきた役割、すなわち、住民の身近にあって、図書やその他の資料を収集、整理、保存し、その提供を通じて住民の個人的な学習を支援するという役割に加え、特に近年は、地域が抱える課題の解決や医療・健康、福祉、法務、雇用等に関する情報や地域資料等、地域の実情に応じた情報提供サービスを行うことが必要である。
○このため、貸出、リクエストサービス、レファレンスサービスの充実や、地域の関係機関・団体との連携・協力が不可欠である。
(4)紙媒体と電子媒体の組合せによるハイブリッド図書館 の整備
○情報化に対する図書館の対応、とりわけ、ネットワーク上の情報(一次情報を含む)に対する図書館のサービスの在り方について、図書館は、読書環境及び情報環境の整備の双方を行う必要がある。
○情報環境の整備については、様々な情報を自宅から入手可能となるよう、ホームページの充実や、電子メールによるレファレンスサービス、メールマガジンの配信等も充実すべきである。
(5)多様な資料の提供
○地域情報の収集・発信、デジタルアーカイブ化、地域のポータルサイト としての図書館の役割がますます重要となっている。
(6)児童・青少年サービスの充実
○図書館においても、家庭教育における保護者の読書への啓蒙といった視点が必要である。
○青少年に対して行われるヤングアダルトサービスの普及や、読書会の開催、子どもの読書活動を推進する団体・グループやボランティアとの連携等が必要である。
(7)公立図書館と他の図書館(学校図書館・大学図書館・国立国会図書館・私立図書館・専門図書館)、行政部局、各種団体・機関との連携・協力
○図書館資料の横断検索システムの整備や資料搬送サービスの実施により、市町村立図書館等への支援や全域サービスを展開していくことが重要である。
○大学図書館や専門図書館等との間のネットワーク形成等に関する検討や、コンソーシアム の設置、協力協定などの工夫が必要である。
○多様な分野の行政部局と連携・協力した図書館サービスを行うことにより、図書館の機能を向上させるとともに、図書館の機能の理解促進に努めるものとする。
(8)学校との連携・協力
○子どもの読書活動や学習活動を推進する上で、図書館は、学校図書館の活用が進むよう、図書の長期的貸出しやレファレンスサービスの実施等による学校教育への支援を積極的に行う必要がある。
(9)著作権制度の理解と配慮
○ 図書館では、利用者の求めに応じて迅速かつ適切に資料を提供することが重要であるが、その際に著作権制度の正確な理解と著作権者への配慮を怠ってはならない。
○ 図書館職員の著作権制度に関する研修機会の確保及び利用者への著作権の基本的知識の普及を図ることが必要である。
「これからの図書館経営に必要な視点」
(1)図書館の持つ資源の見直しと再配分
○レファレンスサービス、課題解決・調査研究の援助等のサービス充実のため、図書館の経営方針や、資源配分の優先順位と比率の見直しが必要である。
○情報化の進展に伴い、ネットワーク環境の整備だけでなく、それを十分に活用できるだけの人材を確保していくことも必要がある。
○都道府県立図書館と市町村立図書館は、それぞれの図書館の役割や地域の特色を踏まえつつ,資料及び情報の収集,整理,保存及び提供について計画的に連携・協力を図る必要がある。
(2)図書館長の役割
○今後図書館の改革を行うため、図書館長の役割の重要性はますます高まる。
○図書館長は、地方公共団体の首長・行政部局や議会に対する積極的な働きかけや、図書館職員が社会のニーズや行政の施策と図書館サービスを結びつけることができるような配慮を行うべきである。
○教育委員会は、図書館長としての業務を行える勤務体制と権限を確保する必要がある。(→後半は「(9)図書館職員の資質向上と教育・研修」へ。)
(3)利用者の視点に立った経営方針の策定
○図書館は,地域住民,及び社会・地域の要求に基づき,適切な図書館サービスを提供するため,それぞれの図書館がめざす使命や目的を定め,公表する必要がある。
○図書館の経営にあっては、社会や地域の実情,利用者の要求の変化に応じ、さらに,利用者の視点(マイノリティを含む)に立った図書館サービスを行うよう、サービス内容の見直し等が必要である。
○多様な分野の行政と連携して図書館サービスを行うことも必要である。
○教育委員会は,地域住民が、どこでも日常的に図書館サービスを利用できるように,公民館図書室,学校図書館,各種図書室を活用するなどの,図書館サービスの拠点の拡大にも努める必要がある。
(4)効率的な運営方法
○読書支援や課題解決支援、情報リテラシーの支援等に重要な役割を担っている図書館において、専門的職員である司書の配置が必要である。
○専門的職員の雇用や管理運営を含め、公立図書館運営の広域化により、単なる人事交流ではない、柔軟な職員の配置あるいは運営を行うことも考えられる。
○図書館職員の、その資格、勤務経験等に応じた適切な業務への配置、機械化や業務委託の推進、他の図書館、行政部局、学校、各種団体・組織等との連携・協力等による業務の効率化を図ることが必要である。
(5)図書館サービスの評価
○公立図書館は、利用者である地域住民の意向が適切に反映されるよう、経営・サービス目標及び数値化が可能な指標についてはこれらに係る数値目標を設定し、その達成状況等に関し自ら点検及び評価を行う。
○社会のニーズに応じた評価の在り方を考えるとともに、アウトカムを表す評価指標や、設置者・住民・図書館と連携協力する諸機関の三者の視点からの評価が必要である。
○今後の課題として、第三者評価、第三者評価及び自己点検・評価のための評価基準の策定の必要性も挙げられる。
(6)継続的な予算の獲得
○図書館において、継続的に質の高いサービスを提供するために必要な予算を確保するため,教育委員会は,地域住民の生活にどのような利便性の向上が生じるか,専門的職員がそれにどのような役割を果たすかを明確にすることによってどのように社会がより良く変化するかを明確に示し,地域社会から評価を得る必要がある。
○教育委員会は,質の高いサービスを継続的に提供できる図書資料を確保するため,交付税の算定基準額を措置した上で,地域の実情に応じたサービスに必要な資料収集のための予算の確保に努めることが求められる。
(7)広報
○現状では、図書館サービスの意義に対する社会の理解が不十分であることから、広報活動を重視し、住民並びに地域の関係団体等を対象に、図書館の多様な機能を紹介することが必要である。
○広報対象を絞って実施することが重要であり、ホームページや報道機関を通じた広報は非常に効果的である。
(8)危機管理
○図書館は誰もが利用する施設であり、人的災害や自然災害等の災害に対し、危機を回避し、被害を最小限にとどめるためには、徹底した予防策を講じるとともに、図書館の特性を考慮し、館内外で発生が想定されるあらゆる事態に対する危機管理マニュアルを作成し、危機発生時に誰がどう行動するかを明確にしておくことが必要である。
(9)図書館職員の資質向上と教育・研修
○社会の変化に対応して図書館を改革し、図書館が地域の情報拠点としての役割を果たすため、図書館職員自身も、その意識を持ち、自主的な学習活動を行うことが必要であり、その研修機会を十分に確保することが求められる。
○教育委員会は、図書館長や司書等に対し、図書館経営について継続的に研修を受けられるように配慮する必要がある。
○国は、地域においてリーダーとなりうる者や図書館長や司書等を対象に政策的な観点から研修を行うことが望まれる。
(10)市町村合併を踏まえた図書館経営
○市町村合併により、図書館サービスの対象地域が拡大されるが、同一市内におけるサービスの格差のないよう、職員の配置や体制を検討し、周辺地域を含む全域サービスの実現とサービスの質的向上をめざすことが必要である。
(11)管理運営形態の考え方
○指定管理者制度や業務委託を導入する公立図書館の増加に伴い、図書館職員の専門性の確保の課題がある。
○図書館の管理運営形態を検討する際には、具体的な評価基準を作成し、当該地域の実情に照らし、当該図書館の設置目的をもっとも効果的に達成することができる管理運営体制について各図書館の設置者が判断する必要がある。
○図書館の設置者は、どのような管理運営形態が、当該地域の実情に照らして、当該図書館の経営目的を最も効果的・効率的に達成することができるかを、専門的職員の確保に十分留意しつつ、必要な事項について十分検討した上で,判断する必要がある。
「国、都道府県の役割」
(1)都道府県の役割
○都道府県教育委員会は、都道府県の図書館政策の指針の設定およびその実現に向けて主体的に先導することや、図書館の新しいサービス、その評価方法の調査・研究に努めること、市町村立図書館への支援を行うこと等が望まれる。
(2)国の役割
○国は、先進事例の収集・分析をもとに、情報提供を行うことによって、その成果の普及、図書館の在り方の提示等を行う。
(3)国立国会図書館の役割
○国立国会図書館では、公共図書館をはじめとする国内の各種図書館とより密接な連携・協力を進めることを取り組みの一つとして掲げている。
○現在、図書館へのサービスとして、資料の貸出、複写、レファレンスを提供しているとともに、図書館員を対象とした研修の実施、総合目録の作成を提供している。
○図書館は、国立国会図書館の機能を活用して、積極的にサービス向上に努める。

3.その他(最近の動向、諸外国の情勢など)

○読書は、一人一人の人生を実り豊かなものにする上で不可欠なものである。とりわけ子どもたちにとっては、言葉を学び、その感性を磨き、感受性をはぐくむとともに創造力を培う上で欠くことできないものである。
○図書館の数値基準について、都道府県が域内の図書館に共通する基準を策定することが望ましい。

なお、改正「図書館の設置及び運営上望ましい基準」に盛り込むべき視点やその内容をまとめた基準案は、別紙のとおりである。

 

別紙

図書館の設置及び運営上の望ましい基準(案)

目次

1総則
(1)趣旨
(2)図書館の設置

2公立図書館
(1)市町村立図書館
1.運営の基本
2.図書館経営(または,図書館運営)
3.図書館の評価
4.資料及び情報の収集
5.資料の提供
6.レファレンスサービス等
7.利用者に応じた図書館サービス
8.多様な学習機会の提供
9.著作権制度の理解
10.ボランティアの参加の促進
11.他の図書館及びその他関係機関との連携・協力
12.広報及び情報公開
13.職員
14.開館日時等
15.図書館協議会
16.施設・設備
17.危機管理
(2)都道府県立図書館
1.運営の基本
2.市町村立図書館への援助
3.都道府県立図書館と市町村立図書館とのネットワーク
4.図書館間の連絡調整等
5.調査・研究開発
6.資料の収集,提供等
7.職員
8.施設・設備
9.準用

3私立図書館
1.運営の基本
2.図書館経営(または,図書館運営)
3.図書館の評価
4.資料の収集、提供等
5.レファレンスサービス等
6.著作権制度の理解
7.他の図書館及びその他関係機関との連携・協力
8.広報及び情報公開
9.職員
10.施設・設備

1総則
(1)趣旨
1.この基準は、図書館法(昭和25年法律第118号)第7条の2に基づく図書館の設置及び運営上の望ましい基準であり、公立図書館及び私立図書館の健全な発展に資することを目的とする。
2.図書館の設置者は,この基準に基づき,同法第3条に掲げる事項などの図書館サービスの実施に努めるものとする。
(2)図書館の設置
1.都道府県は、都道府県立図書館の拡充に努め、住民に対し適切な図書館サービスを行うとともに、図書館未設置の町村が多く存在することも踏まえ、当該都道府県内の図書館サービスの全体的な進展を図る観点に立って、市(特別区を含む。以下同じ。)町村立図書館の設置及び運営に対する指導・助言等を計画的に行うものとする。
2.市町村は、住民に対して適切な図書館サービスを行うことができるよう、公立図書館の設置(適切な図書館サービスを確保できる場合には、地域の実情により、複数の市町村により共同で設置することを含む。)に努めるとともに、市町村合併によって、市町村の地理的範囲が拡大した現状と住民の生活圏、図書館の利用圏等を十分に考慮し、必要に応じ分館等の設置や移動図書館の活用により、サービスの格差のないよう当該市町村の全域サービス網の整備に努めるものとする。
3.公立図書館の設置に当たっては、サービス対象地域の人口分布と人口構成、面積、地形、交通網等を勘案して、適切な位置及び必要な図書館施設の床面積、蔵書収蔵能力、職員数、専門的職員の配置等を確保するよう努めるものとする。
4.私立図書館を設置・運営している法人は、図書館の設立の理念やその有する専門性に基づき、利用者に対して適切な図書館サービスを行うために必要な環境の整備に努める。

2公立図書館
(1) 市町村立図書館
1.運営の基本
市町村立図書館(政令指定都市立図書館を含む)は、住民のために資料や情報の提供等直接的な援助を行う機関として、住民の需要を把握するよう努めるとともに、それに応じ地域の実情に即した運営に努めるものとする。
市町村立図書館は、相互に協力し、それぞれ都道府県内の図書館の相互協力の促進と振興に寄与する。
教育委員会は、「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平成13年法律第154号)及び、「文字・活字文化振興法」(平成17年法律第91号)の目的の達成のため、公立図書館の運営の改善及び向上のための環境の整備に努めるものとする。
運営にあたっては、知識基盤社会における地域の情報拠点として、また地域の読書活動の推進拠点として、住民の情報リテラシーの向上に資するよう留意するものとする。
2.図書館経営(または,図書館運営)
ア.図書館は、地域住民、及び社会・地域の要請に基づき、適切な図書館サービスを提供するため、それぞれの図書館がめざす使命や目的を定め、公表するものとする。
イ.図書館は、継続的に質の高いサービスを提供し、当該図書館の運営及びサービスの改善を促すため、使命や目的をもとに、経営・サービス目標を定めるとともに,その目標について,各々適切な「指標」を選定し,数値化が可能な指標については、これらに係る「数値目標」を設定するよう努めるものとする。
ウ.図書館は、図書館の役割や地域の特色を踏まえつつ、資料及び情報の収集、整理、保存及び提供について計画的に連携・協力を図るものとする。
エ.図書館の経営にあっては、社会や地域の実情、利用者の要求の変化に応じて、常に図書館の経営(または運営)方針や資源配分の見直しを図るよう努めるものとする。
オ.図書館は、情報技術の積極的な活用を図り、有効かつ迅速なサービスを行うことができる体制を整えるよう努めるものとする。
カ.教育委員会は、地域住民の生活にどのような利便性の向上が生じるか、専門的職員がそれにどのような役割を果たすかを明確に示すことによって、地域社会から評価を得るように努めるものとする。
キ.教育委員会は、どこでも日常的に図書館サービスを利用できるように、公民館図書室、学校図書館、各種図書室を活用するなどの、図書館サービスの拠点の拡大にも努めるものとする。
ク.教育委員会は、どのような管理運営形態が、当該地域の実情に照らして、当該図書館の経営目的を最も効果的・効率的に達成することができるかを、専門的職員の確保に十分留意しつつ、必要な事項について十分検討した上で、判断するものとする。
3.図書館の評価
図書館は、各年度の図書館経営・サービスの状況について、図書館協議会の協力を得つつ、経営(運営)・サービス目標及び数値目標等の達成状況に関し自ら点検及び評価を行うとともに、運営状況に関する情報を積極的に住民に提供することにより説明責任を果たし、住民との共通理解の下、運営を行うよう努めるものとする。
4.資料の収集
ア.住民の高度化・多様化する要求に十分配慮するとともに、読書・学習活動や調査研究等の内容や特性を把握し、それをもとに必要な資料の確保や、他の図書館との連携・協力により図書館の機能を十分発揮できる種類及び量の資料の整備に努めるものとする。
イ.教育委員会は、質の高いサービスを継続的に提供できる図書資料を確保するため、地域の実情に応じたサービスに必要な資料収集のための予算の確保に努めるものとする。
ウ.地域内の郷土資料及び行政資料、新聞の全国紙及び主要な地方紙等多様な資料の整備に努めるものとする。また、多様な種類・内容の視聴覚資料の収集に努めるものとする。
エ.電子資料の作成、収集及び提供並びにネットワーク情報資源の利用に関するサービス等に努めるものとする。また,多様化・量的増加されるネットワーク情報資源の重要性にかんがみ,従来の図書館資料とネットワーク情報資源との併用により、適切な情報の提供に努めるものとする。
オ.本館、分館、移動図書館等の資料の書誌データの統一的な整備や,インターネット等を活用した的確かつ迅速な検索システムの整備に努めるものとする。
5.資料の提供
住民の読書や調査研究の内容や特性を把握し、貸出の充実を図り、予約制度などにより住民の多様な資料要求に的確に応じるよう努めるものとする。複写サービスについても充実を図る。
6.レファレンスサービス等
ア他の図書館等と連携しつつ、電子メール等の通信手段の活用や商用データベース、ネットワーク情報資源の利用支援にも配慮しながら、住民の求める事項について、資料及び情報の提供又は紹介などを行うレファレンスサービスの充実・高度化に努める。また地域の情報窓口として、地域情報の収集・発信,デジタルアーカイブ化、地域のポータルサイトの機能の充実,及び地域の状況に応じ,行政情報や学習機会に関する情報その他の情報の提供を行うレフェラルサービスの充実にも努めるものとする。
イ.情報入手の重要性の高まりを考慮し、利用者が自主的に情報の入手ができるよう図書館において環境(報告書は「条件」)整備等の支援にも努めるものとする。
ウ.図書館は、ホームページを設置し、図書館の利用案内、ニュース、各種所蔵目録等用いた,積極的な情報発信に努めるも.のとする。
7.利用者に応じた図書館サービス
ア.住民や行政等に対する課題解決支援機能の充実に資するため、地域が抱える課題の解決や医療・健康、福祉、法務、雇用等に関する情報や地域資料等の収集、地域の実情に応じた情報提供サービスに努めるものとする。
イ.成人に対するサービスの充実に資するため、科学技術の進展や産業構造・労働市場の変化等に的確に対応し、就職、転職、職業能力開発、日常の仕事等のための資料及び情報の収集・提供に努めるものとする。
ウ.行政関係者に対するサービスの充実に資するため、地方公共団体の政策決定・行政事務に必要な資料及び情報を積極的に収集し、的確な提供に努めるものとする。
エ.児童・青少年に対するサービスの充実に資するため、必要なスペースを確保するとともに、児童・青少年用図書の収集・提供、児童・青少年の読書活動を推進するための読み聞かせ等の実施、情報通信機器の整備等による新たな図書館サービスの提供、子育て支援施設や学校等の教育施設との連携の強化等に努めるものとする。
オ.高齢者に対するサービスの充実に資するため、高齢者に配慮した構造の施設の整備とともに、大活字本、拡大読書器などの資料や機器・機材の整備・充実に努めるものとする。また、関係機関・団体と連携を図りながら、図書館利用の際の介助、対面朗読、宅配サービス等きめ細かな図書館サービスの提供に努めるものとする。
カ.障害者に対するサービスの充実に資するため、障害のある利用者に配慮した構造の施設の整備とともに、点字資料、録音資料、手話や字幕入りの映像資料の整備・充実,資料利用を可能にする機器・機材の整備・充実に努めるものとする。また、関係機関・団体と連携を図りながら手話等による良好なコミュニケーションの確保に努めたり、図書館利用の際の介助、対面朗読、宅配サービス等きめ細かな図書館サービスの提供に努めるものとする。
キ.地域に在留する外国人等に対する多文化サービスの充実に資するため、外国語資料の収集・提供、利用案内やレファレンスサービス等に努めるものとする。
8.多様な学習機会の提供
ア.住民の自主的・自発的な学習活動を援助するため、講座、相談会資料展示会等を主催し、又は行政機関、学校、民間の関係団体、他の社会教育施設等と共催するなど、多様な学習機会の提供に努めるとともに、学習活動の場の提供,設備や資料の提供などによりその奨励に努めるものとする。
イ.地域社会の情報格差の解消及び住民の情報リテラシーの向上を支援するため、講座等学習機会の提供に努めるものとする。
ウ.子どもの読書活動の促進のため、読み聞かせやお話し会、子どもに薦めたい図書の展示会等の開催に加え,保護者を対象とした読み聞かせや本の選び方・与え方の指導等を行うなど,家庭教育の向上に資する学習機会の提供に努めるものとする。
9.著作権制度の理解
資料の提供等に当たっては、複写機やコンピュータ等の情報・通信機器等の利用の拡大に伴い、職員や利用者による著作権等の侵害が発生しないよう、著作権制度の正確な理解と著作権者への配慮に十分な注意を払うものとする。
10.ボランティアの参加の促進
ア.学習の成果が社会において実際に活用され、人々が学習の意義を実感できるよう、図書館において、ボランティア活動等が一層促進するよう環境の整備に努めるものとする。
イ児童・青少年、高齢者、障害者、外国人等多様な利用者に対する新たな図書館サービスを展開していくため、必要な知識・技能等を有する者のボランティアとしての参加を一層促進するよう努めるものとする。そのため、希望者に活動の場等に関する情報の提供やボランティアの養成のための研修の実施など諸条件の整備に努めるものとする。なお、その活動の内容については、ボランティアの自発性を尊重しつつ、あらかじめ明確に定めておくことが望ましい。
11.他の図書館及びその他関係機関との連携・協力
ア.図書館は、資料及び情報の充実に努めるとともに、それぞれの状況に応じ、高度化・多様化する住民の要求に対応するため、地域内の資料や情報等の資源を相互利用し、柔軟な活用を実施することによりサービス向上に努めるものとする。その際、公立図書館相互の連携(複数の市町村による共同事業を含む。)や、学校図書館、大学図書館、国立国会図書館、私立図書館等の館種の異なる図書館や公民館、博物館等の社会教育施設、官公署、民間の調査研究施設等との連携にも努めるものとする。
イ.図書館は、子どもの読書活動や学習活動を推進する上で、学校図書館をはじめとした活用が進むよう、学校教育への支援に努めるものとする。
ウ.図書館は、地方公共団体の行政部局や関係団体と連携・協力して、図書館サービスを行うことによって、図書館の機能の向上、その理解の促進に努めるものとする。
12.広報及び情報公開
広報活動を重視し、住民並びに地域の関係団体の図書館に対する理解と関心を高め新たな利用者の拡大を図るため、広報紙等の定期的な刊行やインターネット等を活用した情報発信など、積極的かつ計画的な広報活動及び情報公開に努めるものとする。
13.職員
ア.館長は、図書館の管理運営に必要な知識・経験を有し、社会や地域の中での図書館の意義・役割及び任務を自覚して、図書館機能を十分発揮させられるよう不断に努めるものとする。
イ.館長となる者は、司書となる資格を有する者が望ましい。
ウ.専門的職員は、資料の収集、整理、保存、提供及び情報サービスその他の専門的業務に継続的に従事し、図書館サービス.の充実・向上を図るとともに、資料等の提供及び紹介等の住民の高度で多様な要求に適切に応えるよう努めるものとする。エ.図書館には、専門的なサービスを実施するに足る必要な数の専門的職員を確保するものとする。
オ.専門的職員のほか、必要な数の事務職員又は技術職員を置くものとする。
カ.専門的分野に係る図書館サービスの向上を図るため、適宜、外部の専門的知識・技術を有する者の協力を得るよう努めるものとする。
キ.教育委員会及び図書館は、館長、専門的職員、事務職員及び技術職員の資質・能力の向上を図るため、情報化・国際化の進展等に配慮しつつ、継続的・計画的な研修事業の実施、内容の充実など職員の各種研修機会の拡充に努めるものとする。
ク.教育委員会は、当該市町村の所管に属する図書館の職員を前号の研修に参加させるように努めるものとする。
ケ.教育委員会は、図書館における専門的職員の配置の重要性に鑑み、その積極的な採用及び処遇改善に努めるとともに、その資質・能力の向上を図る観点から、計画的に他の公立図書館及び学校、社会教育施設、教育委員会事務局等との人事交流(複数の市町村及び都道府県の機関等との広域的な人事交流を含む。)に努めるものとする。
コ.図書館の職員は、その能力の向上を図るために、継続的に館内あるいは図書館外の研修に積極的に参加するとともに、自主的な学習を行い、専門的知識や技術の習得に努めるものとする。
14.開館日時等
住民の利用を促進するため、開館日・開館時間の設定にあたっては、地域の状況や住民の多様な生活時間等に配慮するものとする。また、移動図書館については、適切な周期による運行などに努めるものとする。
15.図書館協議会
ア図書館協議会を設置し、地域の状況を踏まえ、利用者の声を十分に反映した図書館の運営がなされるよう努めるものとする。
イ図書館協議会の委員には、地域の実情に応じ、多様な人材の参画を得るよう努めるものとする。
16.施設・設備
本基準に示す図書館サービスの水準を達成するため、開架・閲覧、収蔵、レファレンスサービス、集会・展示、情報機器・視聴覚機器、事務管理などに必要な施設・設備を確保するよう努めるとともに、あらゆる人に開かれたものとなるよう、児童・青少年、高齢者、障害者及び外国人等に対するサービスに必要な施設・設備を確保するよう努めるものとする。
17.危機管理
ア人的災害や自然災害等の災害に対し、危機を回避し、被害を最小限にとどめるためには、徹底した予防策を講じるとともに、図書館の特徴を考慮し、館内外で発生が想定されるあらゆる事態に対する危機管理手引の作成に努めるものとする。
イ職員全員は、手引の内容を把握するとともに、関係機関・部署等と連携しつつ、定期的な訓練に努めるものとする。
(2)都道府県立図書館
1.運営の基本
ア.都道府県立図書館は、住民の需要を広域的かつ総合的に把握して資料及び情報を収集、整理、保存及び提供する立場から、市町村立図書館に対する援助に努めるとともに、都道府県内の図書館間の連絡調整等の推進に努めるものとする。
イ.都道府県立図書館は、図書館を設置していない市町村の求めに応じて、図書館の設置に関し必要な援助及び図書館未設置の市町村に対する図書館サービスの支援を行うよう努めるものとする。
ウ.都道府県立図書館は、住民の直接的利用に対応する体制も整備するものとする。
エ.都道府県立図書館は、図書館以外の社会教育施設や学校等とも連携しながら、広域的な観点に立って住民の学習活動を支援する機能の充実に努めるものとする。
2.市町村立図書館への援助
市町村立図書館の求めに応じて、次の援助に努めるものとする。
ア.資料の紹介、提供を行うこと。
イ.情報サービスに関する援助を行うこと。
ウ.図書館の資料を保存すること。
エ.地域資料のデジタル化に関する援助を行うこと。
オ.図書館運営の相談に応じること。
カ.図書館の職員の研修に関し援助を行うこと。
3.都道府県立図書館と市町村立図書館とのネットワーク
都道府県立図書館は、都道府県内の図書館の状況に応じ、コンピュータ等の情報・通信機器や電子メディア等を利用して、市町村立図書館との間に情報ネットワークを構築し、情報の円滑な流通に努めるとともに、資料の搬送の確保にも努めるものとする。
4.図書館間の連絡調整等
ア.都道府県内の図書館の相互協力の促進や振興等に資するため、都道府県内の図書館で構成する団体等を活用して、図書館間の連絡調整の推進に努めるものとする。
イ.都道府県内の図書館サービスの充実のため、学校図書館,大学図書館、専門図書館、政令指定都市立図書館、他の都道府県立図書館、国立国会図書館等との連携・協力に努めるものとする。
5.調査・研究開発
都道府県立図書館は、図書館サービスを効果的・効率的に行うための調査・研究開発に努めるものとする。特に、図書館に対する住民の需要や図書館運営にかかわる地域の諸条件の調査・分析・把握、各種情報機器の導入を含めた検索機能の強化や効率的な資料の提供など住民の利用促進の方法等の調査・研究開発に努めるものとする。
6.資料の収集、提供等
都道府県立図書館は、2の(2)の9.により準用する2の(1)の2.に定める図書館経営(または、図書館運営)、提供等のほか、次に掲げる事項の実施に努めるものとする。
ア.市町村立図書館等の要求に十分応えられる資料の整備
イ.高度化・多様化する図書館サービスに資するための、郷土資料その他の特定分野に関する資料の目録、索引等の作成、編集及び配布
ウ.地域情報の収集・発信、デジタルアーカイブ化、地域のポータルサイトとしての機能の充実
7.職員
ア.都道府県立図書館は、2の(2)の9.により準用する2の(1)の12.に定める職員のほか、(2)の2.から6.までに掲げる機能に必要な職員を確保するよう努めるものとする。
イ.都道府県教育委員会は、当該都道府県内の図書館の職員の資質・能力の向上を図るために、必要な研修の機会を用意するものとする。
8.施設・設備
都道府県立図書館は、2の(2)の9.により準用する2の(1)の15.に定める施設・設備のほか、次に掲げる機能に必要な施設・設備の確保に努めるものとする。
ア.研修
イ.調査・研究開発
ウ.市町村立図書館の求めに応じた資料保存等
9.準用
市町村立図書館に係る2の(1)の2.から16.までの基準は、都道府県立図書館に準用する。

3私立図書館
1.運営の基本
図書館は、設立の理念やその有する専門分野の図書館として、適切な運営に努める。
なお、本基準でいう「私立図書館」において、一般社団法人若しくは一般財団法人の設立理念と目的を達成するための公益的事業として一般公衆の利用に供する図書館を設置することを法人の事業内容として定款に位置づけることが望ましい。
2.図書館経営(または,図書館運営)
図書館を設置・運営している法人は、その設立理念と目的を達成するために必要な経営に努める。
3.図書館サービスの評価
図書館は、その設置目的を達成するために設置母体の経営方針に基づき,図書館自らが点検・評価するように努める。
4.資料の収集、提供等
ア.対象とする専門分野の図書館として、利用者に供するに必要十分な種類と質の資料及び情報を、計画的かつ継続的に収集・整理・保存するように努める。
イ.収集した資料及び情報を、利用者が的確かつ迅速に検索するために、適切なツールを作成するとともに、検索システムの整備に努める。
ウ.資料の提供等に当たっては、複写機やコンピュータ等の情報・通信機器等の利用の拡大に伴い、職員や利用者による著作権等の侵害が発生しないよう、著作権制度の正確な理解と著作権者への配慮に十分な注意を払うものとする。
5.レファレンスサービス等
情報技術環境の進展に配慮しながら、収集提供する資料及び情報の特徴、利用者の利用形態や利用状況、職員の配置、施設等を考慮して、閲覧・複写・レファレンスサービス等の適切な図書館サービスを展開するとともに、対象とする資料や情報に対する研究や学習を援助するため、資料展示、講座等の開催にも努める。
6.他の図書館及びその他関係機関との連携・協力
図書館は、その専門性を活かし、他の図書館、学校図書館、大学図書館、国立国会図書館等の館種の異なる図書館や博物館等の社会教育施設、官公署、民間の調査研究施設等との連携・協力にも努める。また、他の私立図書館等との管理・事業の運営面における情報共有に努める。
7.広報及び情報公開
インターネット等を活用した情報発信など、積極的かつ計画的な広報活動及び情報公開に努める。
8.職員
ア.図書館には、司書資格と専門領域の知識を持った専門的職員の確保に努める。
イ.私立図書館を設置・運営している法人及び図書館は、その設立理念と目的を達成するために必要な職員の資質・能力の向上に努める。
ウ.図書館の職員は、その能力の向上を図るために、継続的に館内あるいは図書館外の研修に積極的に参加するとともに、自主的な学習を行い、専門的知識や技術の習得に努める。
9.施設・設備
図書館は、そのサービスを提供するに必要な施設・設備を確保するよう努める。

参考資料一覧(案)

 1.図書館の現状
(1)図書館数の推移
(2)公立図書館の設置率の推移
(3)移動図書館の整備状況の推移
(4)建築後30年以上経過している図書館数
(5)図書館における施設・設備の所有館数
(6)図書室を置く公民館数の推移
(7)図書館職員数の推移
(8)図書館の蔵書数の推移
(9)図書の受入数の推移
(10)資料費予算額の推移
(11)図書館の貸出冊数の推移
(12)レファレンスサービス実施件数の推移
(13)図書館における情報化の状況  
・コンピュータ導入状況
・オンライン化の状況
(14)児童向け図書館サービスの状況
・児童室を置く図書館数の推移
・蔵書に占める児童用図書数の割合
・図書の貸出冊数に占める児童用図書の割合
(15)図書館における事業実施状況)
(16)情報提供の方法
(17)図書館費の推移
(18)平成21年度地方交付税単位費用積算基礎
(19)人口10万人当たりの図書館数(欧米諸国との比較)
2.図書館の利用と読書の状況等
(1)1か月の間に地域の図書館へ行った回数
(2)1か月の間に地域の図書館から借りた本の数
(3)保護者が子どもの読書活動を推進するためにしていること
(4)子どもの読書活動を推進するために必要なこと
(5)1か月に読む本(16歳以上)
(6)1か月間の平均読書冊数の推移
(7)不読者(1か月間に読んだ本が0冊)の推移
(8)学習者の図書館司書についての認識
(9)子どもの読書推進計画策定状況(平成21年3月31日現在)
3.図書館サービスの指標の例、及び人口段階別の上位の数値
4.図書館法(昭和25年法律第118号)
5.公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準(平成13年文部科学省告示第132号)
6.著作権法(昭和45年法律第48号)(抄)
著作権法施行令(昭和45年政令第335号)(抄)
7.子どもの読書活動の推進に関する法律(平成13年法律第154号)
8.文字・活字文化振興法(平成17年法律第91号)
○これからの図書館の在り方検討協力者会議設置要綱、委員名簿
○会議開催状況

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生涯学習政策局社会教育課