「新しい時代の博物館制度の在り方について」のコメント

産業技術記念館
島田　紀彦

• トヨタ／トヨタグループにおける社会貢献活動の、重要な分野の一つと位置付けて活動中。（環境・安全・人づくり・芸術文化・共生社会）
• →トヨタ自動車は2006年に「社会貢献推進部」を立ち上げ、社会貢献活動を本格的に展開する体制を整備
• 公立博物館との違い
  • →公的教育施設として教育委員会管轄下で設置される公立の博物館とは異なり、企業の社会的責任を果たすための社会貢献活動の一環として、「モノづくり文化」「クルマ文化」の継承という高い理想を掲げた博物館運営を展開中。
    • a．産業技術記念館：トヨタグループ13社による運営組合
    • b．トヨタ博物館：トヨタ単独運営
  • →経済活動であげた収益を社会に還元するというのが基本。従って、本業に収益があがってこそ続けられる活動。
• 上記2館は、企業PRを目的としているものではないし、ましてや本業収益増のために運営しているものではなく、それは不可能。
• 一方、企業立博物館であっても、公益性／公共性は保持していると自負。
• 「博物館活動」の定義の3要素（収集保管・展示・調査研究）について、上記2館がこれらを、具備しているか否かは、外形的と実質的な捉え方により判断が分かれる。

• これまでの登録博物館として認められなかった、国立も含めた「類似施設」が「日本国の博物館」として認知されることについては、歓迎すべき動きと認識。
• 企業立博物館として、この登録制度を考えた場合、具体的なメリットが不明。
  • →利用者へのメリット：使用する側（見学者）の意見や如何？
    • −　「登録博物館」の名称独占が、見学者にどれだけインパクトを与えるのか、「登録」「優れた博物館」となるか疑問。
    • −　見学者の大多数は「登録」「相当」「類似」などを意識・認知していないと思われる。
    • −　「スポンサー・寄贈者に指標を与える」としても、欧米に比して、寄付に対する損金算入限度額（特に、個人）が不十分という指摘もあり、そうした条件などの整備も並行して検討されるべき。
  • →博物館のメリット：具体的なメリットが不分明？
    • −　現在の活動に比して、「認可」のために、逆に「制約条件」が課せられることにならないことを希望。それぞれの館の独自性、持ち味といったものが最大限考慮されるべき。
    • −　税制上の優遇措置や助成／補助金などについても、いろいろな枠作り（例：展示面積、入館者など）をもとに決定されて行くものと推測するが、それぞれの館の地域性や特異性などを、幅広く考慮にいれた、柔軟性を望む。
    • −　「制約条件」となる可能性のある「登録基準」次第では、現在とあまり変わらない結果となるのではないか。また年次報告や更新手続きなどに、過大な労力や費用の発生を危惧する。
    • −　審査登録を第三者機関が行うことについては望ましい方向と考える。
    • −　「より望ましい博物館」創造のための「博物館評価制度」の導入については、今回の改正を通じ、各博物館が容易に採用できる契機になることを期待。

• 学芸にとっては一つの目標であり、資格取得への門戸は広くあるべき。現行制度は、資格者を養成し、博物館活動の支援者拡大に必要と認識。
• 博物館としては、専門性からは、現行の学芸員養成制度は不十分であるが、大学の履修内容でその専門性を求めても、早期の解決は困難か。
• 「博物館実習」単位が中途半端で、現行の2週間程度ではなく、より長期かつ実務に根ざした研修とすべき。
• 「上級資格」の創設については、実質的に学芸員の中で、ランクをつけている博物館もあると聞くので、むしろ、「専門性」がより明確になる制度設計が必要か。

以上