これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第20回) 議事録

1.日時

平成20年12月24日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 5階 5F3会議室

3.議題

  1. 学芸員の養成に関するワーキンググループからの報告について
  2. 学芸員資格認定の見直しに関するワーキンググループからの報告について
  3. 「学芸員養成の充実方策」(これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議 第2次報告書)(素案)について
  4. その他

4.出席者

委員

中川主査,水嶋副主査,榎本委員,小林委員,佐々木(秀)委員,菅原委員,
鷹野委員,高安委員,名児耶委員,小川委員,猿渡委員,浜田委員,柏村委員,金原委員,西委員

文部科学省

森社会教育課長,栗原社会教育課企画官,ほか 関係官

5.議事録

(1) 学芸員の養成に関するワーキンググループからの報告について

 【委員】 内容がかなり細かく示され、求められているので、大学の担当者が実際に授業をできるのかということが心配される。

 【委員】 能力開発という観点から、それぞれの科目でどんな能力を培うかということが明確になって大変良いが、たまたま生涯学習論だけが最後のねらいのところの語尾が「理解を図る」で終わっていて、ほかは全部「能力を養う」となっている。生涯学習論もそういう観点から「……の能力を養う」と平仄を合わせた方が良い。

 【委員】 「能力を養う」について、ワーキンググループの議論の中で生涯学習概論だけはさわらなかった。司書と社会教育主事資格との共通の科目なので、このままにしている。

 【委員】 ガイドラインは、実習について非常に細かく定められていて良い。こちらのカリキュラムの内容とかなりリンクしているし、これだけ具体的に書いてあると博物館側にとってもやりやすいと思う。

 【委員】 ただし、実習の期間については5日間ではなく、10日間とか12日間のスケジュールを組んで、その中から選ぶようにした方が良い。

 【委員】 ねらいも科目の内容も非常に明快に網羅的に盛り込まれたので、結果として学芸員像というものが浮かび上がるようになった。また、現代の社会の中で博物館や美術館がどんどん変化してきているということも浮かび上がった。

 【委員】 大学の学内実習が非常に充実してくると、館園実習で行う内容と重なり合う部分が出てくるので、10日間の実習のスケジュール計画例の中で、大学における実務実習はこれだけ、館園実習ではそれに足してこれだけ、というようにはっきりと差異化をした方が良い。

 【委員】 この科目改正にあたって、大学では非常勤講師をどれくらい増やせるかという心配があるだろうし、実習については、必要になる設備とか環境整備に各大学がどこまで予算を出せるのか、という心配がでてくるだろう。その中で、恐らく撤退する大学も出てくるのではないか。

 【委員】 基礎的な学芸員像と、博物館というものの役割がすごく明確になったと思う。科目を安易に読みかえさせないことによって、はじめに習得すべき基礎的なものが明確になって良かった。応用的な部分はそれからでもできる。

 【委員】 「大学における学芸員養成教育を“博物館のよき理解者・支援者の養成の場”として位置づけるのではなく」と書かれているが、「なく」と書いてしまうと、特別に否定しているようなイメージがある。多くの人たちが資格をとって学芸員になる一方、資格をとって一般企業に勤める人たちも沢山いるので、理解者養成もとても重要な観点であると思う。

 【委員】 たしかに、理解者・支援者養成の場と割り切っている人も多い。「そう理解されてきた」とか、柔らかい表現の工夫があった方が、より実をとるのかもしれない。

 【委員】 全体について、博物館、美術館の状況の変化に対応した新しい科目を意欲的に取り入れているというのは非常に時代の要請に添っていて良いと思う。逆に心配なのは、これだけの内容をきちんと教えるだけのスタッフが、果たして教育機関で確保できるかということと、これだけのことを学んだ学生が、博物館なりに就職しても、なかなか思うような活動が実践できない現状があること。理想的な博物館学を修めた学生が、宝の持ち腐れにならないような現場で、実力を十分発揮できるような環境であってほしい。

 【委員】 科目数を増やしたことと、ねらい・内容をはっきりさせたことで、学芸員に質の高いものを求めていくことと、日本の目指す博物館像がはっきりと打ち出されて良いと思う。また、具体的に科目の内容を示すことで、担当する教官もやりやすいのではないかなと思う。

 【委員】 大変よくなっていると感じた。特に、ガイドラインを示したことは、いいサジェスチョンになるのではないか。科目についてもかなり明確になったので、教えるほうも学ぶほうも1本筋が通ったと思う。

 【委員】 実習では、学内実習は、どちらかというと決められたことをやって、館園実習では、自分で考えてやるということができるような形にした方が良いのではないか。

 【委員】 今後は、3年間の間に、テキストづくりに精魂込めなければいけない。

 【委員】  試験認定の選択科目についても、やはり見直しが必要なのではないかと思う。

 【委員】 3年後にこれが実際に運用された以降も、全国規模の反省会を設けるなど、教える側の反省も含めた定期的な見直しが必要だと思う。

 【委員】 ねらい、内容が書かれた報告書については、出しただけではなく、その存在を現場まで周知することが非常に大切である。

 【委員】 実習について、館園実習は10日間ぐらいのモデルがいいという話があったが、5日の例示でもいいのではないかと思う。本当に現場に出られるかどうかわからない学生を2週間ほど受け入れる余裕がない館園が多い。どちらかというと、インターンシップに力を入れて、大学院生レベルなり、そういった人たちと半年なり1年近く一緒にいて、じっくりと学んでもらうことに力を入れた方が、より目指している方向に近いのではないか。その方面を強調するような形で報告書を取りまとめた方が良いのではないかと考える。

 【委員】 全体的な科目の内容等については、若干詰めが必要だと思われるが、基本的には高く評価されていると思う。実習については、様々な考え方があるので、今日の意見を踏まえて検討しなければいけない。また、自ら企画し、実際に取り組んでみるという時間を実習の中に入れるというのは画期的な考え方で、自然科学系では特にそういうものが生きるのではないかと思う。内容について、前向きに検討する価値があるだろう。養成の目的としては、支援者とか理解者を増やすことにも大きな意義がある。指摘のあったように、それを否定するような誤解が受けられそうな文章表現上の問題があるので、検討の余地がある。新しい科目について、それを実際にやってみて、評価する。評価の結果、是正する。是正して、新たなフレームワークを再構築していくというプロセスが今までは欠けていた。これからはチェックしながら新しいものを創造していくことを、常に続けていくことが非常に重要かと思う。

(2) 学芸員資格認定の見直しに関するワーキンググループからの報告について

 【委員】 試験認定の受験資格と資格発生について、類似施設で働いている人の実務経験については、今回の改正の中でどういう位置づけをされているか。

 【事務局】 今回の改正の中で、実務経験に関わる職の、登録・相当・類似というものの見直しは行っておらず、類似での経験も引き続き認められる。ただし、「実務経験については、本来であれば登録博物館または博物館相当施設における学芸員補の経験に限定するべきであり、将来的に登録制度の見直しが行われた際には、これらの規定も見直すことが必要である」という注意書きを本文にしている。

 【委員】 受験資格に必要な学芸員補経験が2年以上になっているが、大学でストレートにとった場合でも学芸員補の経験は1年でいいのだから、これも1年でもいいのではないかと思う。

 【委員】 改正案では新たに資格証明書を発行するようにするということだが、大学で資格を取得しても資格証明書を現在は出していない。それとの整合性はどうするのか。

 【委員】 科目の読みかえについては、大学において24年度の新科目の施行以降、それ以前から履修している学生の単位の読みかえは、どう整合性をとるのか。

 【事務局】 複数の大学に渡っての科目履修で積み上げた単位について、今は誰も資格証明書を発行していない。昔は文部科学省が、要請があった場合に学芸員資格取得証明書というのを出していたが、事務負担軽減ということでやめたという経緯がある。今回こういった形で試験認定について合格証明書を出すのであれば、今後、文部科学省が証明書を出す制度を復活させても良いのではないかと考えている。

 【事務局】 取得済みの単位の読み替えについては、適切な経過措置で対応したい。また、事前にさまざま場を通じて理解を得られるよう説明していきたいと思う。

(3) 「学芸員養成の充実方策」(これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議 第2次報告書(素案)について

 【委員】 博物館職員講習について、今年度限りで廃止とあるが、内容は非常にいい講習会をやっているので、現職の学芸員向け講習ではなくて、新しい制度として、各地方の博物館研修会の指導者となるような人材を育てる研修会にしてみてはどうか。この講習を受けた人は県レベルの研修会の講師になれるというようなものにしてはどうか。

 【委員】 本協力者会議は今後も継続して行うのか。

 【事務局】 望ましい基準の見直しという課題や、登録制度の見直しという中長期的な大きな課題もあるので、本協力者会議において引き続きご検討いただきたいと考えている。

 【委員】 今後の課題としては、科目の見直しの点検と、それから実施状況、大学での実態のチェック、といったことを恒常的に行うべきである。

 【事務局】 本文に書いてあるように、国は3年おきに少なくとも実態把握を行うことを提言しているので、それ以外に大学においても点検を行う体制が望ましいと考えている。

 【委員】 研修について、現職研修の体系化等とあるが、新設科目ができるのだから、教員に対する研修、研究協議会、勉強会など、新設科目に現場が柔軟に対応できるように、3年間の間、特に、重点的に新設科目の研修の機会を設けるというのが必要。また、館長に関する研修も必要だと思う。前回、パブリック・コメントを行った際に、現場の人たちから館長にこそ学芸員資格が必要だという意見が多く寄せられた。

 【委員】 学芸員の養成は今まで大学に頼りすぎた面があるが、今後は大学も博物館も一緒になって理想的な学芸員というものをつくっていく仕組みが必要かと思う。組織的に、実習なり養成方法等を主体的に考えていくことも大事なのではないかと思う。総論としては記載があるが、もう少し踏み込んだ書き方をしてはどうか。

 【委員】 研修という意味ではもう少し県を指導した方が良い。博物館制度そのものは、本来は都道府県が主体になってやっていかなければいけないのに、まるで他人事のような感じでいる。その辺を強く、記載したほうがいいのではないかと思う。

 【委員】 これだけ博物館から、あるいは大学から集まって博物館の在り方というものを検討しているときに、「だれかが何かやっているな」程度の関心しかないということになると、これは何のためにやっているかというゆゆしき問題である。一緒に日本の博物館を変えていく力を持っていかないと、一生懸命ここで討議して、フレームワークを決めても、本当のバイタリティーにはならない。やはり博物館関係者全員がそういう意識を持たないと日本の博物館は良くならないと思う。

 【委員】 博物館が指定管理者制度の適用を受けると、市長部局直轄の登録ではなくて相当施設とかがすごく増えるため、なかなか教育委員会経由の情報というのが伝わらなかったりするという問題もある。文部科学省が示す省令や目安といったものの情報が伝わらなくなってしまっている。また、学芸員の基本的な業務というよりも、入館者をいかに多くするか、あるいはどのようにして広報費を投下して宣伝に務めるかといった、切迫した財政難を背景として、指定管理者として生き延びるための方策を考える中で、極めて現実的な論が力を持ってしまっている。博物館法よりもむしろ指定管理者の業務基準のほうが優先的なプライオリティを持ってしまっている状況がある。

 【委員】 都道府県の教育委員会や設置者は、文化施設に関して、真っ先に予算を削ることができる場所というふうに思われている。やはりどのような機会をとらえても、博物館や学芸員が社会的な存在として、これからもっとアピールしていかなくてはいけないし、教育委員会を県単位で動かすことによって、もう少し理解がされるよう、本格的に働きかけていただけるとありがたいと思う。

 【委員】 まず博物館の人間、やはり館長自らが発言して、一般の人たちに、自分の博物館はこういうことをやっているともっとアピールしていかなくてはいけない。

 【委員】 博物館行政の取りまとめは教育委員会だが、県立博物館、美術館の所属は知事部局に位置しているということがある。どちらも自分が担当しているという意識が欠落している。それは今、博物館担当の人がほとんど登録の事務ぐらいしかやっていないという実態がある。

 【委員】 報告書については、基本的にこの方向でまとめていく。評価を行いながら、常に実態をチェックして、是正してよりよいものにしていくという方向づけで、基本的な土台は今日ほぼまとまったと思う。細かな修正については主査預かりとして、事務局と協力しながらまとめていきたい。それから、いかに良いものをつくってもそれが本当に活きなければ、仏つくって魂入らずで、意味がない。今後あらゆる機会に博物館の存在理由、存在価値、あるいは将来に対する博物館の重要さ、そういうようなものを訴える機会を持つような働きかけを我々がしていく義務があるだろうと思う。

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