これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第17回) 議事録

1.日時

平成20年6月25日(水曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省生涯学習政策局会議室

3.出席者

委員

中川委員、榎本委員、佐々木(秀)委員、菅原委員、鷹野委員、高安委員、名児耶委員

文部科学省

平林社会教育課長、栗原社会教育課企画官 ほか 関係官

4.議事録

(1)主査、副主査の選任等について

 各委員の互選により、中川委員が主査に、水嶋委員が副主査に選任された。続いて平林社会教育課長の挨拶が行われた。

(2)報告(博物館法改正等)について

 事務局から博物館法改正等の報告が行われたのち、以下のとおり、質疑応答が行われた。

【委員】
 「学芸員補の職に相当する職等の指定」の新旧対照表で、学芸員補の職に相当する職について書かれている第3条の中では、大学共同利用機関、独立行政法人国立科学博物館及び独立行政法人国立美術館においてとなっているが、国立文化財機構、東京国立博物館はないのか。

【事務局】
 新旧対照表では省略しているが、第2号で国立文化財機構を指定している。

【委員】
 国会まで上がって、博物館に関する議論がされたということは一つのきっかけになると思う。これをテコにして、次の改正、次の改善に進めてほしいと思っている。

【委員】
 附帯決議では、特に「指定管理者制度の導入による弊害」と言い切っている。また、「各地方公共団体での取組における地域間格差を解消」とあるが、こういう附帯決議に対しては、具体的にそれについてはこうするとか、それについてはこういう意見というようなことをアクションしなくてよいのか。

【事務局】
 附帯決議というのは、今回、この法案の成立に際して、これらのことに留意しなさいと条件つきで認めるという意味なので、国会から政府に宿題として課せられたものと認識している。地域間格差に関して、例えば図書館の場合、まだまだ町村部における設置が進んでおらず、それを進めるべきではないかという質問がたくさん出ていたため、そういう観点からの指摘であると認識している。

【委員】
 美術史学会の美術館博物館委員会で、博物館法の改正内容を報告したら、学会の方々も意気消沈していた。ただ、引き続き検討していくということになっているので、また、何かの機会に意見を反映するため美術館に従事している人たちの意見をくださいと言っておいた。特に登録博物館制度の見直しに関しては、国際化を考えると、だれに聞いてもそのような意見があるので、やはり対象を広くというところは努力すべきだと強く思った。

【委員】
 今回、2年近く検討してきたのは、公教育も同じだと思うが、いわゆるグローバルスタンダードと国内の基準が合っているかどうか。また、社会と直接、コンタクトのずれはないかということは、どこの分野でも言われていると思う。その点で言うと、グローバルスタンダードと合っているかどうかというのは、この検討会で随分議論してきたが、そのことが周囲の関係者にあまり理解されていなかったかもしれず、これからも議論していかなければならないと思っている。それから、社会との関係性では、1つの例で言うと、学芸員養成課程、養成制度のことを大学の科目だけで議論しているが、もう一方で議論していた博物館での実務経験や、別の認定制度など、イギリスで行っているようなことを日本でも議論しておかなければならない。このことは、法律や、省令改正の中でまだあまり議論されていないので、博物館のあり方の1つの例として、検討する必要があるのではないかと思う。

【主査】
 今、委員から発言があったように、結果だけ報告すると何だという感じがあるかと思う。しかし、少なくとも国会で取り上げられ、附帯決議になり、これだけ細かなアイテムが取り上げられたというのは、おそらく博物館活動が始まって以来初めてではないか。そういう意味では、期待が多かった分多少落差があったかと思うが、内容からすれば大変な進歩ではあったと思う。したがって、それをいかに今後に結びつけていくかというのは、我々の1つの仕事としても、非常に重要ではないかと考えている。

(3)今後の会議の進め方について

 事務局から、説明が行われたのち、以下のとおり、質疑応答が行われた。

【委員】
 今の事務局から説明のあった学芸員養成科目の案は、ワーキンググループの単なる意見の積み上げと言うにとどまらないものと思っている。多少重複するところがあったり、あるいは本当にこれを学部でやるのかという内容のものがあるにしても、この内容である程度行きたいという意思を持ってこの会議に報告したという認識を私は持っている。今後は、まだこれからいろいろなところとの調整の必要は当然生じることはよく承知しているが、1つの議論の土台としていただきたい。

【主査】
 今の委員のご発言については、ワーキンググループの意見ということも含めて今後の討議の中に生かしていくことにしたほうがいいと思う。

【委員】
 これから博物館法、省令のレベルと、本来これからの日本の博物館の在り方を検討するとなると、システムの構築だとか運用論みたいなものが問題になってくると思う。そうすると、お金と人の問題が当然議論になってきて、これらの調査はその辺の可能性がどのくらいあるかということで、行われたものだと理解している。どこかでそういうグランドデザイン、戦略、手順というような目標値を立てないと、どこのレベルでどんな議論をしていいかわからなくなると思う。全国レベルではこうしたことを検討しているのはこの会だけだとすれば、大きな意味での10年、20年単位のグランドデザインをぜひ運用を含めて検討すべきではないかと思う。その際に、必ずしも海外の事例ばかりがいいわけではないが、ヨーロッパでやっているようなことを選ぶのか、今まで日本が積み上げてきたものの延長上で物事を考えるか、そういった基本的なところをある程度整理した上で、それぞれの学芸員制度の問題や登録の問題などを手順よく議論していったらいいのではないか。

【委員】
 私は現場にいて、学芸員を教える側と受け入れるほうの両方をやっているが、大学側も努力しなければいけないけれども、博物館側もかなり努力しなければいけないところがあると思う。今、博物館の事情があまりいい状況ではないので、例えば、うまく実習を受け入れるとか、博物館側の実態とかももう少し情報を手に入れて整理しないとずれが出てくると思う。教える人がいるのかという問題は、どうも実態がわかってないと思う。いろいろな大学で教えているが、例えば、自分の例で申し訳ないけれども、古美術を取り扱うという重要性を講座の中で今まであまりやってなかったところをやり始めているが、古美術品になると特殊になってきて依頼が集中するという実態があり、その辺も整理しないといけないと思う。このことは、望ましい基準や、登録のメリットということにも関わってくるのかもしれないが、具体的にいくと今の2つの問題が気になる。

【主査】
 どこかで教えるほうを養成しないで平気なのかという意見は確かにある。

【委員】
 短い単位ではなくて、例えば、10年間たったら育てる人もできるかもしれないというぐらいの、少し長い目で見ていかないといけないという気がしている。

【委員】
 今後は、ワーキンググループで特に重複の問題を精査して、もう一度調整する。そして、ガイドラインもワーキンググループの方が中心になって検討して、それとは別に協力者会議というのが望ましい基準の見直し、登録制度を抜本的に見直すということや、今までの教育委員会から博物館を切り離してしまうのか、それとも教育委員会がどこまで絡んでくるのか、また、日博協の役割などという非常に難しい、時間がかかりそうな話があるが、いずれにしても協力者会議でその部分はできるだけ議論はしておいたほうがいいのだろうという感じがする。養成に関すること、実習のガイドラインはワーキンググループに任せて、次の段階で協力者会議がこれからやるのは、少し別なことを議論して、オフィシャルに分けて考えて、別々に進行していくという方向を明確にしたほうがいいのではないか。

【委員】
 学芸員養成科目の検討については、実際には、協力者会議、ワーキンググループ、委託調査という3層構造だったのだが、ワーキングの場で議論しても、緻密さに欠くという感じがしており、やはりワーキングを2つのグループに分けるなり、四、五人で精密に作業をすると、さらに成果も上がるかと思う。その辺の進め方については事務局でもよく検討していただき、緻密な作業を施す必要があるかと思う。次に、協力者会議そのものの検討については、第一次の報告書では抜本改正を目指して我々も言いたいことを申し上げたわけだが、全然実態と違うという批判はあるものの、私はもう開き直ってその路線で行けばいいのではないかと思っている。

【委員】
 今年1月にアメリカと、それから今回、韓国の方々と交流したが、地域ごとに違うとはいえ、やはり世界はICOMにどう対応するかで動いている。アジアのことも今調査しているが、外のことを見ながら議論し、キャッチアップしていかなければならないという実感を持った。

【委員】
 国会でも博物館に関する質疑応答が行われていたということだが、あの内容自体については新聞等に出ない非常に地味な話でもあり、ほとんど報道もされない。ただ、図書館に比べて少なかったとは言え、少しでも議論がなされたということは、こういう協力者会議を含めたワーキンググループでの活動が何らかのベースになって、そういう意識が高まっていくと思う。これまで美術館の関係者と話をしていても、現状はあまり学芸員制度、学芸員資格、いわゆる免許のことになると、もうほとんど我々の世代では持ってないような人が多い。まず持つことに関心もないし、館にそういう人が1人いればいいというぐらいの認識で、ほとんど免許制度は実効性を伴っていないという状態とのことだった。しかし、一方で、免許を持っている人が何人もいて、しかも美術館の鑑賞者のほうでは大いにそれが役立っているとは言っても、実際のところ、美術館に採用されて働いているわけでもないというところがあり、そこのところをどのように考えるのか。学芸員制度が、現状のままでいいのかどうか、どこかやはり改革していったほうがいいのかどうかということも議論すべきだと思う。

【主査】
 今後、私たちがこの会議をどう進めていくか。事務局の提案もあったが、そういうものの基本的なベーシックなところをどこまで我々が現実と合わせていけるかというところで、かなり厳しい過程にあるとは思うが、ある意味、それはそういう期待にこたえるプロセスでもあると思うので、今後もしっかりやっていきたいと思う。

(事務局から、次回の日程についての説明が行われたのち、散会となった。)

(以上)

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