これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第13回)議事録

1.日時

平成19年6月8日(金曜日)17時〜20時

2.場所

三菱ビル地下1階「M1会議室」

3.出席者

(委員)

佐々木秀彦、鷹野光行、高安礼士、中川志郎(主査)、名児耶明、水嶋英治

(事務局)

中田大臣官房審議官(生涯学習政策担当)、平林社会教育課長、馬場社会教育実践研究センター長、行松地域学習活動推進室長、渡部社会教育課長補佐、関根美術学芸課美術館・歴史博物館室長 ほか 関係官

4.議事内容

(1)事務局により、資料の確認と説明が行なわれた。

(2)委員により、報告書案について審議が行なわれた。以下、その内容。

<「はじめに」、第1章、「第2章 博物館とは」>

【委員】

 7ページ一番上の3行目、「つまり博物館学等も含まれる」というのは少し違和感がある。

【委員】

 「つまり博物館学等」は削除でいいと思う。

【委員】

 「つまり」も削除して、「活用方法等に関することなども含まれる」にするのでどうか。

【委員】

 博物館学というのは、定義そのものは狭義の博物館学と広義の博物館学と両方あると思う。だから、狭義にとる人はおかしいと思うだろうし、広義にとる人もおかしいと思うかもしれないが、むしろここで強調したいのは、資料管理、保存科学及び展示、教育普及的な視点から見た資料の活用方法等に関する研究ということ。「つまり博物館学」と言ってしまうと、強調する意味がなくなる。昔から博物館学はあるわけだから。したがって、「つまり博物館学等」を削除して詰めるということで、意味ははっきりストレートに通るかもしれない。

【委員】

 6ページ最後の行、「博物館にとってまず求められるのは、自らの館の資料そのものに対する調査研究」は、意見公募で、自然史系博物館の人から、資料そのものではなくて、自然史研究があってそれから標本として資料を採集することもあるという指摘があったので、「資料とその専門分野に対する調査研究」としたほうがいい。7ページ1行目はそうなっているので、そこは合わせたほうがいい。

【委員】

 自然史系の博物館では、資料収集よりも研究のほうが先行することが多い。その結果として資料が収集されるというのが多い。

【事務局】

 その関連の部分で、7ページ1行目、「現行法が前提にしているとおり」という文章のかかり方がややこしいと思いましたので、「前提にしているとおり」は、資料管理、保存科学も含まれるという部分にかかっているので、「調査研究の範囲は、資料とその専門分野に対するものだけではなく」、その後、「現行法が前提にしているとおり、資料管理、保存科学」というふうに移させていただければと思います。

【委員】

 7ページ目の「資料とその専門分野に対するものだけではなく」は取ってもいい。

【委員】

 「自らの館の資料とその専門分野に対する調査研究であるが、調査研究の範囲は、現行法が前提にしているとおり、資料管理、保存科学及び展示や教育普及的な視点から」とすればよろしい。

【委員】

 1ページの枠内に「まる」で書いてあるところとか、3ページの枠内に、例えば、設立、運営、継続性などの経営的視点が欠けていたということを、1ページ目の「まる」5つ目に「設立や運営、継続性などの経営的視点が欠けていた」と書くか、あるいは、3ページに書くなら、そういった経営的、社会的存在意義の明示が求められるようになったと書くか、または19ページの博物館運営に関する諸問題の中で少し触れるかして、経営または運営に関することが今の時代に問題になっていることを、全体にかかるように言ったほうがいい。それから、いきなり指定管理者制度というのは順番としてどうか。

【委員】

 今の位置づけは、登録基準のところ、マネージメントということで10ページに主に書いてある。

【委員】

 ここに出てくるので、前もって少しは書いておく必要がある。

【委員】

 我々の考え方の中で、運営上の問題を第1章の問題点の中に入れる必要があるかどうかということにかかわると思うが。

【委員】

 確かにこれが導き出される背景としては、例えば3ページ「2 博物館を取り巻く状況」の中で、これは指定管理者制度や市場化テストもかかわるので、その手前に、特に公立博物館では設置者による評価というものが始まって指定管理者制度にも連なるが、館の存在意義というのを明確にする必要が出てきたことは1つ言えると思う。

【委員】

 確かにそうだが、違う見方をすれば、今回の報告書の中のポイントを示す意味では、定義と登録制度と学芸員制度ということを言っているので、頭から言うことはないのではないか。むしろ3ページで言っているので、私は現行でもいいという気がする。

【委員】

 19ページの諸問題の中で扱うのはちょっと違うのでは。というのは、ここはそれぞれ1つずつ項目を挙げて述べているので、もし書くとすれば、もう一つ別に、かなり長い記述、説明が必要になるという問題で、そうすると3ページで、文章の中に、公立博物館の評価といったことを書き加えるのかと思う。

【委員】

 おそらく今、問題になっているご指摘は、19ページにも出てくるし、3ページにも、10ページにも出てくるが、何回も出てくるというのは当然大きな、全部をカバーするような問題なので、問題点の中に出したほうが首尾一貫するのではないかというご意見が出ている。それに対し、全体から見れば、むしろ博物館を取り巻く状況の中の「まる」で、一応同質のことを言っているので、これでもいいのではないかというご意見が出ている。

【委員】

 3ページ目の四角の中に「博物館は経営上大きな変化の中にある」と入れたらどうか。妥協ではあるが、予算や財政面など、経営上大きな変化があるという意味で。

【委員】

 おそらく指定管理者制度でも、公益法人の認定という大きな、博物館以外のもっと広い社会的な動きの中から出てきたこと。その中で、個々の博物館の公益性が問われるので、各館として存在意義を明確にする必要が生じてきたという文脈だと思う。だから、前段は大きな潮流を置いておいて、言及するとしたら、特にここが各館が、経営の問題や使命を明確にするようなマネージメントが問われてきたという感じ。

【委員】

 なぜそれが気になったかというと、7ページ以下の登録基準のところ、12ページ(6)で情報公開だけが出ているが、「審査基準が外形的に過ぎる」と言っていて、その裏では活動だけ評価しようという視点しかなかったと思う。設立、それから最後は博物館を廃止するところまでも、登録基準の視野に入れたほうがいいのではないかというのが気になってきた。ワーキンググループでこれらを細かく詰めるのであれば、そういう視点があったほうがいい。

【委員】

 基本的には、この論議の過程では、問題点はこの4つが大きなアイテムとして出てきて、指定管理者制度、あるいは独立行政法人その他については、どちらかというと経営や運営に関する諸問題ということで、後ろの方で扱うというスタンスで来た。したがって今回もそのような整理になっているが、それを戻すとなると、ある程度全般的な見直しになってくる傾向があるので、「2 博物館を取り巻く状況」の中で若干、ご提案になったようなニュアンスを盛り込んで、それで収めることでいかがか。

【委員】

 その整理でよろしいかと思う。そうすれば、登録制度や養成制度の中でマネージメントが出てきて、コレクション、コミュニケーション、マネージメントの3本柱で通るので説明がつく。

<「第3章 博物館登録制度の在り方について」>

(特になし)

<第4章>

【委員】

 大学における基礎課程で、前回のご議論を踏まえて文章の整理と見直しの方向性ということで、別紙の1から3までつけ加えた整理をしている。

【委員】

 16ページ1大学における基礎課程の、(1)資料に関する基礎的な研究能力、これは「研究能力」でとめるのではなくて、「研究能力の修得」という文言が必要。下が「体系的な学修」になっているので。

【委員】

 29ページ「2交流・教育への対応」の25行目終わり、「博物館における教育をより重点的に養成内容に」は、「博物館における教育」あるいは「…学習支援の在り方」でどうか。

【委員】

 表題で「教育への対応」が出て来てしまうので、ここから直す必要がある。

【委員】

 16ページ30行目、日本の大学で「ミュージアムスタディーズ」という名称で開講している大学はないと思う。だから、博物館学だけでいい。英語で言えば「ミュージオロジー」とか「ミュージアムスタディーズ」と言っているから、あえて片仮名で言う必要はない。

【委員】

 29ページの「2交流(コミュニケーション)・教育への対応」について、「教育の在り方についての学習」でいかがでしょうか。「博物館における教育をより重点的に養成内容に位置づける」ではなく、教育の方法とか教育の在り方を大学では教育する。

【委員】

 「教育をより重点的に」というその前で、「学習者への情報提供・学習相談、啓発活動の方法等も含め、博物館における教育をより重点的に」と言っている。

【委員】

 博物館の教育機能と読むことができる。

【委員】

 17ページ2)のところ、私のところは、学芸員資格取得者でなくても応用演習をやっているが、あまり関係はない。

【委員】

 大学院では必ずしも学芸員取得をしてこない学生もいる。あと、38ページ<参考5>にオランダのラインワルトアカデミーなど、オランダの事例を入れておいた方がいいだろう。

【委員】

 オランダも非常に参考になるという意味ですね。

<(2)現職学芸員の段階的な専門的資質・能力の向上>

【事務局】

 「学芸員資格見直しのイメージ(素案)」という横長の資料をつけさせていただきました。

【事務局】

 ここの理解としては、右側の短期大学のところですが、ここで基礎資格ということは、連続すると4年の実務経験という理解です。

【委員】

 これで見ると、かなりハイレベルになったという感じがする。

【委員】

 勤めはしないが、どうしても資格が欲しいという人も出てくるといったことを、この表がすべて物語っているわけではないから、そういうルートはどうするか。

【委員】

 案ではあるので、今の試験認定も残すという考え方だったが。

【事務局】

 少なくとも試験認定、無試験認定を、この議論の中でやめるということにはなっていないと思いますし、我々も引き続きその必要はあるかと思いますが。

【委員】

 試験認定は文科省がやるのか、あるいは第三者機関がやるのか。

【事務局】

 第三者機関ができたときに、また議論があるのだと思いますが。

【委員】

 現行の試験認定を残すとすれば、文科省がやるわけだが、第三者機関がどうなるかによって、それはまた変わると思う。だから、現行規定の中でも、勤めないけれども資格だけ取っておきたいという人のルートは、あることはある。

【委員】

 表に入れておかないと、無くなったと思われてしまう。

【委員】

 この表だけを見ると、勤めないと資格が取れないというように捉えられかねない。

【委員】

 理系では、学芸員資格を学部で取りにくいところがあるようだ。開講されていないとか、忙しくてとても資格を取れないという事情があるようだ。そういうところだと、採用してから講習を受けて資格を取ってくることもあるようなので、その辺を配慮して入れておいたほうがいいのかもしれない。

【委員】

 仮に今のルートをこの中に入れるとすれば、どういう形になるのか。

【委員】

 「博物館に雇用され」というのをやめて、「博物館での1年以上の学芸業務の実務経験」とすれば、とりあえずは雇用とは関係なくなる。実際は雇用されるけれども、雇用されないけれども資格だけ取りたいという人の道もあるということを示すには、ここでは「雇用」という言葉を取った方がよい。

【委員】

 ここは「雇用」という言葉をはっきり残しておいた方がよいのでは。皆さんここを見て、インターンか何かを1年間させておくのか、という反応が多かった。

【委員】

 これについては結構、反応が大きかったところだ。

【委員】

 現実にはこういう形で学芸員になる人が多いが。例えば、アルバイトで入って実績を積んで、別の館の採用試験でそこでの活動内容を話したら、優先的に採用されたという形。つまり、実務をアルバイトでしていたということが評価されたケースもある。

【委員】

 今の議論の発端は、基礎資格も関係なく、無試験認定や試験認定でという話。そうすると、ここの「雇用」の話と関係なくなる。

【委員】

 でも、雇用契約があるかどうかという問題は、本質的には、あまり資格とは関係ない。雇用契約があることが前提だとなると非常に狭まる。だけれども、博物館においてということならば、さきほどのお話のように、アルバイトしながら実務経験を積んでも採用され得る。つまり、能力は認められたということだ。

【委員】

 アルバイトで受け入れていた館の方で、仕事をしたということを学芸員に証明書を出したら、要するに優先的に採られたということ。

【委員】

 雇用が前提ではないので、入れるとしたら、博物館において1年以上、学芸業務の「職務経験」にするぐらいでどうか。表現上の問題だが。

【委員】

 前回の議論の中では、雇用されて、そこでみっちり仕込まれることが重要なプロセスだというご意見が強くあったので、「雇用」という文字が入れられている。

【事務局】

 私どもに提出された要望書には、「無給のインターンとして、就職の保証もないままに」という、以前の理解に基づいて書かれている部分もありますけれども、こういうところを意識して、そうではないということを言うとしたら、どういう人に対してこの絵でメッセージを送るのかということだと思うのですが。
 まさにこれを法律にそのまま書くということであるならば、確かに「雇用」という言葉を緩めて書いた方がいいと思うのですけれども、一方で、そうすると、また同じように、それで博物館に就職できる資格だというところがわかりにくくなる。

【委員】

 雇用されて実務を経験する以外に、雇用されなくても実務を経験したいというのが、もう一つ入っているといい。

【委員】

 そこのところは、この前から議論があるように、非常に悩ましい部分で、「雇用され」という文字を外すと、さきほどの要望書にあるように、それだけやって採用の保証はない、そんなことをさせていいのか、ということになる。そうなると、やはり雇用されて実務経験を踏むということだと、門は狭いがキャリアパスとしてはそういうものだということがわかる。

【事務局】

 委員会の理解として、別に雇用にこだわらないということであれば、今後の法令の検討も含めて、どういう絵をつけるのがいいかというところで、雇用にするか、採用にするか、そのあたりのところを中で調整させていただくのではどうか。

【事務局】

 本文でうたっていないのでは。17ページの一番上は、雇用するように努めることが重要で、積極的に雇用しというのは、博物館はなるべくそうしなさいと言っているだけで、資格要件としては、2で一定期間の実務経験と言っているだけで、雇用には触れていないので。

【委員】

 基礎資格でも、ともかく採ってくださいと言っている。だから実務経験の中身はまだですよね。

【委員】

 その辺は、事務局と主査で相談して文章を考えるということにします。

【委員】

 もう一つ。これまで、考え方として1つあったと思うのは、例えば大学4年間でもって1年間に相当するような実務経験が積めれば、それでもいいのではないかという雰囲気があったが、それはここでは示さない。

【委員】

 それは可能でしょうか。

【委員】

 多分、無理だと思うけれども、これも大学向けのメッセージみたいなものかもしれないが、夏休みを使って4年間でということを本当に行うとすればだが。それから、日常的な単位をものすごく増やしてやることが、学芸員養成課程を中核にした大学ができれば可能だと思う。

【事務局】

 資料3で出てきますけれども、この会議として、カリキュラムとか実習、実務経験をどういうふうにしていくかというご議論を、これ以降お願いしたいと思いますので、もし差し支えなければ、その中でご議論いただくのもいいかと思います。

【委員】

 これは一応、皆さんのイメージとして示すわけだが、これが法案化されて、具体的なシステムとして動き出すまでには、まだかなりの時間があるし、内容についても、この協力者会議の中からも検討に参画するという形も考えられているようなので、とりあえず今の点については保留にして、本日の議論は締めにさせていただきたい。

【委員】

 あと1点。本文との対応だが、17ページ19行目、ここでは「博物館現場での職務を」という言葉を使っている。図表の言葉を考えるときに、うまく合わせないといけない。

<第5章「博物館運営に関する諸問題について」>

【委員】

 先々週、韓国の全国博物館大会に行ってきたら、まさにこれをやっていた。韓国ではつくれないので、ICOM基準を確実に適用すると言っていた。

【委員】

 これに従うようにとICOMの基準にも書いてある。

【事務局】

 「4.博物館を支える多様な人材の養成・確保」というところで、ここは、前のバージョンでは箱書きがなかったので、書かせていただいた。「まる エデュケーターなどの博物館専門職の養成確保についても検討する必要」と要約させていただいている。

【委員】

 エデュケーターは、括弧書きで日本語で書けないか。いきなりエデュケーターでは分かりにくい。もし確実に書くのであれば、ミュージアムエデュケーター。
 現場では、インタープリターと言っているところもあるし、コミュニケーターとか交流員と言っているところもあるが。

【委員】

 博物館教員とあえて言っているところもある。

【委員】

 言ってみれば教育担当学芸員でしょう。

【委員】

 博物館教員というと、学校から来た教員という意味のほうが強い。

【委員】

 日本博物館協会で調査に行ったときは、エデュケーターというとエデュケーションのイメージが強いので、ロンドン市立博物館はインタープリターというふうに言っていたりしていた。

【委員】

 サッチャーの教育改革の中の、博物館の項ではミュージアムエデュケーター。要するに今、少なくとも博物館界で、エデュケーターといえばこういうものだというふうに、確立した用語として流布しているわけではない。

【委員】

 美術館などでは、普及という言葉をよく使う。

【委員】

 最近、自然系の博物館でもそうだし、科学博物館でもそうだけれども、サイエンスコミュニケーターというのをそのまま使っている。あれは大分流布されてきたという感じはしないでもないが、サイエンスコミュニケーターというのはこれとは全然別の意味になってしまう。

【委員】

 もっと幅広く国民とサイエンティストを結ぶ役目という意味。

【委員】

 だから、あえて言うならば、ミュージアムエデュケーターだろう。「いわゆるミュージアムエデュケーター」という表現でいいのではないか。おそらく今後、そのジャンルの人が極めて重要な役割をするであろうことだけは、委員の中でも一致した意見なので、よいのではないかという気がする。

【委員】

 見出しに書かずに、学習支援を担当するとか、教育普及活動を担当する博物館専門職ぐらいにして、文中の括弧でミュージアムエデュケーターぐらいがいい。
 日本語で、学習支援担当というか教育普及担当というか、その辺は少し検討が必要だが。

【委員】

 この解説の中では、「教育普及を専門とする「エデュケーター」」というふうにしているので、そんな感じで考えればよいのではないか。

<第6章>

【委員】

 13行目は、「以下に挙げた基本的な3つの重要な機能のほかに」という表現でどうか。3つが重要だということをストレートに言うのではだめか。

【委員】

 「基本的な取り組みであり」ぐらいの方がよいのでは。

【委員】

 「さらに、関係者の総意により」と、「さらに」を付けて強調しては。

【委員】

 最後の24ページ、「さらに」の方はよろしいですか。「大学と博物館が協働して実施できるようなネットワーク形成を支援する」。これはいいか。

【委員】

 これは入れていただいたほうがいい。

<「おわりに」および別紙>

【委員】

 31ページ36行目、「すべての館に必要なレベルの妥当性」を、「検討」ではなく、「検証」ぐらいがいい。その方が、きちんと現状に即してやってみるという点が表せるのではないか。35ページ「卓抜と均等」では、「共通の富」というサブタイトルがあったはず。サブタイトルを示したほうが、どういう報告書なのかというイメージが湧く。

【委員】

 「卓抜と均等」も「共通の富」も、学習支援というものに全てが収斂しているという非常に強いメッセージだ。特に「共通の富」の場合は、博物館が学校教育を支援する活動をどのぐらいやっているかという徹底的な調査をして、本当にやっているのは24パーセントしかなかったという驚愕的な結果が出て、これはだめだということから出発している。「共通の富」の基本的な考え方に、資料はすべての国民の財産だということがあるが、むしろそれは、イギリスはよくやっている事項であって、ただ、それを使っていかに普及、教育をするかというところがものすごく欠けているというもの。
 それから、「卓抜と均等」もそうだが、これも訳からするとイメージが湧かない。「卓抜と均等」と言われても、これはサブタイトルがどうしても必要だという部分だが、けれども本来的には、21世紀の博物館の像を、2つのタームでとても良く言い表している。

<全体をとおして>

【委員】

 報告書のテキストに関しては、今日が一応最後の検討ということで、1点主査預かりになっている部分がありますが、それを除いてはほぼ、今日出た修正点を全部一応採用して直すということを前提に、別紙も含めて、これで最終的な検討にしたいと思います。よろしいですね。

【事務局】

 別紙3は、キャリアパスのイメージとなっていて、先ほど積み残しになった雇用の話とも関係しますが、これを少し工夫して、基礎資格を取った後、博物館に採用されて、経験を積んで、今度学芸員という資格で採用というように、そういう資格に変わるといったことを、このキャリアパスのイメージの中で工夫して表現できないかと思いましたので、別紙3を見直してみたいと思います。上級は多分、第三者機関で審査して認定をするのでしょうけれども、学芸員というのは、どういう形で実務経験を積んだかを確認することついて、あまり議論していないというか、本文にも書いていないので、それも含めて、今の別紙と、先ほど席上配付した紙とを、うまく整理をしたい。

【委員】

 文章よりも、こういう絵はよく見られるということがありますので、そこらあたりの整合性も含めて、さらに検討する必要があるだろう。

【事務局】

 別紙3の、真ん中の基礎資格の上にある、「インターンを含む技術の修得のための実務経験」とか、ここら辺もほんとうはもう少し議論しないといけないところも確かにあるかもしれません。

【事務局】

 やはりキャリアパスのイメージは結構大事だと思いますので。

【委員】

 キャリアパスのイメージ、それから学芸員資格見直しのイメージというのは、別物だけれども別物でないので、この辺のところの整合性も考えないといけない。

【委員】

 そうすると、これは(大学卒学芸員の場合)と書いてあるけれども、養成の場の左のほうは大学等と書いてあって、新しいのは大学卒だけということか。

【事務局】

 ここは大学卒に限定して、キャリアパスは書いたほうがいいかもしれない。(短大含む)とか書かないで、ここは限定して議論したほうがよいのではないか。

【委員】

 実際には、博物館で業績を上げていく道があるわけだから。

【委員】

 これは報告の後の基本的な課題として残す部分でもあるし、ただ方向性は示さないといけないので、今のご指摘も含めて、考え方としての整理をしておいた方がいい。それを含めて、報告書については、最終的なものということでお認めいただきたい。

(3)資料2および資料3について、事務局から説明が行なわれた。

【委員】

 資料3について、具体的なワーキンググループの設立、設置について、事務局から素案を示されましたが、これについて、当会議の中で、ご意見あるいはご希望がありましたら承りたい。

【委員】

 どうも人文系と理系とでは、随分様子が違う。理系は、学部でも忙しくて取れないとか、大学院ではなおさら取れないということがあるようなので、館種のバランスは考慮されたほうがいい。

【委員】

 異論はないが、カリキュラムのガイドラインは、どの程度の深さまでやるのかというレベル合わせ、最初の方向づけを決めておかないといけない。例えばICTOPは、ほんとうに1行しかない。例えば、農民教育をどうするかとか。農民教育というキーワードが出ている。そういう1行ぐらいの体系づくりをするのか、今回のワーキンググループでは、その辺の方向性を、ワーキンググループの前にやっておかなければいけない。

【委員】

 それは、議論を始める第1回ぐらいで大きな議論になると思う。それまでに一応、協力者会議としてもフレームワークは考えておく必要があるかもしれない。

【委員】

 目安としては、資料2の11ページぐらいのものにするのか、もっと深くするのか、もちろんこれが一つのたたき台になる。

【委員】

 スタート時点であまり考え方が違うと、まとまらないのではないか。

【委員】

 確かに大きいところと小さいところでは違ってくる。

【委員】

 博物館関係者は、どうしても過去の経験に縛られるから。だから、最初に条件、枠組みをきちんとつくってやらないと、もとへ話が元に戻ってしまったり、繰り返しになる可能性がある。

【委員】

 幸い、基本方向や枠組は、今回出た報告書になるから、深さというか、どこまで細かくやるのか。それは調査を委託する部分もあるので、段階的なものがある。

【委員】

 ここまで来ると、かなり具体的にならざるを得ないだろう。

【委員】

 基本的には、別紙4の3つの点への対応ということが大きな枠組みだろう。

【委員】

 いろいろな館種があって大変難しいが、古い美術を扱っているところと、同じ美術でも現代物とかヨーロッパとか外国のものを扱っている人とでは全く考えが違う。どういう人が学芸員として、現場で働くときに必要なのかという意見を、先に聞いておく必要がある。学校側がまとめる前に、現場の声というのが必要。
 それが実務経験と非常にかかわってくるし、館種が全部違うから、自然史系は大学自体に、あまり博物館学というのはない。一番多いのは考古で、次に美術。美術でも、実際に古美術へ行く人たちは少なくて、多いのは現代美術。少し別な話になるが、最近、横書きのキュレーターというのが世の中にあるが、博物館法とはどういうかかわりがあるのか、学校で養成されているのかどうかなど、現場の声を先に聞く必要があるだろう。一番大事なのは、システムだけではなくて、本当にどういう人が必要なのかという現実問題と、未来に向かってどういう人をつくるべきかというのが根底にないと、いいカリキュラムを一生懸命組んでも役に立たなかったというと困る。

【委員】

 カリキュラムの考え方が、かつて想定されている何を学べばいいかというのと、一般的理解が変わっている。教員の能力や条件整備も含めて、カリキュラム開発と言っていることが多い。その点も、大学の人は、カリキュラムというと何を教えるかということだけに論点が行きがちだが、一般的にはもう少し幅広く、教育課程での科目だけではないことも考えることを言っているので、その点も、今の時代に合ったカリキュラムという考え方で整理する必要がある。

【委員】

 ただ、あくまでも基礎資格でしょう。ほんとうの応用面は、実務経験以後のことで学ぶ。例えば、美術館にほんとうに必要なものというのは、実務経験のところで、美術館で実務経験を積むことによって学ぶという設定。だから、この段階であまり深いところまで、各館種ごとの特性を打ち出す必要はないのではないか。

【委員】

 特性というか、共通の部分を拾い上げるということが必要かと。要するに、いろいろな意見を聞かないと共通部分が見えてこない。あまり館種を限定して呼ばない方が良い。漏れてくるところが出てくる。

【委員】

 現実的に大学の学部でできることと、できないことを分ける必要がある。例えば資料に関することというのは齟齬が多い。美術館経験しかない人が、一般論を、私は美術のことしか知りませんと言って話すということはある。現実にはそうなってしまうと思うが、カリキュラムを拡充したときに、受講者は自然史の人だろうが、動物園に行こうと思っている人だろうが、みんな聞いてしまうという現状があるので、その辺の資料の専門分野と大学でできることとの関係とか、幾つかカリキュラムに関する論点があると思う。その点を、ワーキングに入る前に、一回整理検討した方がいいのかもしれない。

【委員】

 もう一つは、理想的なカリキュラム案ができたとしても、教える人の問題もある。

【委員】

 大学教員への講習がまず必要との辛口のコメントを述べた人もいた。

【委員】

 カリキュラムを組んだはいいが、教える人がどこにもいない可能性があるから、教える先生のことといった条件や人数を含めて考えないといけない。それは学校ではなくて実務でやらせるべきところだとか。

【委員】

 社会教育実践研究センターでも博物館研修をやっていますが、教える人というのは結構、数がいるものなのか。

【事務局】

 それは非常に限られます。

【委員】

 この問題は、新しいシステムと新しいカリキュラムをつくって、実際にシステムが動き出すための資源や人材といったものについて別途書かなければいけない部分があるが、とりあえず今、我々に託されているのは、今まで我々がやってきた、新しい博物館を実際に機能させる人材を養成するためにはこれぐらいのカリキュラムが必要だというのは、是非やらなければいけないと思う。それを実際に今度動かしていく、実際に教えていく、あるいは指導していく、それをどうするかというのは、その次の問題としてあるが、それも含めた環境整備ということになろうかと思う。

【事務局】

 今とりあえずこの報告を、私どもとして、次の中教審のプロセスに上げていくということを、まずやらせていただきたいと思います。今後の審議項目については、できるだけ早く皆さんにご相談をして、協力者会議全体の、今まで6人でここまで引っ張ってきていただいたのですけれども、今後、カリキュラムとか、登録基準とか、特に登録基準をつくるという視点で、博物館関係の方以外の視点も入ったほうがいいのではないかという議論もあると思いますので、事務局で、委員を増やすということも含めて検討させていただければありがたいなと思っております。

【委員】

 一言いいですか。やっと報告書ができたという感じですけれども、我々これから、新しい制度をつくろうとしているわけですが、何でも新しいことをやるときには障害がつきものですけれども、どうぞ、新しい制度をつくるのだから、障害があるからだめだという考え方ではなく、障害を排除するためにどうやっていったらいいかという立場で、これからぜひ積極的に、お願いしたいということであります。

【事務局】

 先生方には、13回ということで長丁場、しかも1回1回非常に濃密にご審議いただきまして、大変感謝しております。おかげさまで、ほぼ今日の議論で報告書がまとまるというところまでこぎつけました。
 内容的には、新しい制度を築こうということで、これから中教審のプロセスとか、政府部内で各省との調整とか、法案を出すまでにもいろいろとくぐり抜けなければならない事があります。今、激励もいただきましたので、是非これを、なるべく理想的な形で実現できるように頑張っていきたいと思っております。
 引き続き先生方には、ご協力いただくことになっておりますので、ぜひご指導のほどよろしくお願いいたします。とりあえずここまでまとめていただきましたことに、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

【委員】

 それでは、本日の会議はこれまでにしたいと思います。ありがとうございました。

(以上)

(生涯学習政策局社会教育課)