これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第11回)議事録

1.日時

平成19年5月24日(木曜日)15時〜18時30分

2.場所

三菱ビル地下1階 M1会議室

3.出席者

(委員)

佐々木秀彦、鷹野光行、高安礼士、中川志郎(主査)、名児耶明、水嶋英治

(事務局)

平林社会教育課長、行松地域学習活動推進室長、渡部社会教育課長補佐、馬場社会教育実践研究センター長、関根美術学芸課美術館・歴史博物館室長 ほか 関係官

4.議事内容

(1)事務局から、配付資料の確認と、資料内容について説明が行なわれた。

(2)委員により、議論が行なわれた。以下、その内容。

<はじめに、第1章>

【委員】

 特に意見公募では、博物館法制度が十分機能し得なかった原因が一体どこにあったのかを指摘しなければいけないという意見が強かったので、その点について触れないといけない。新しい生涯学習社会、改正教育基本法を、博物館の公益性や博物館利用者の拠り所として、今の時代に合った形で再構築していくという姿勢を見せるべき。

【委員】

 「人々の学習要求の多様化・高度化」というのが「生涯学習時代」であり、「社会の進展・変化」として、メディアの変化など情報化時代の進展によって博物館も変わらざるを得ないということ。メディアの変化のところでは、二次資料も実は大事な博物館資料だという認識を表現できるといい。また、登録のところでは、コレクション、コミュニケーション、経営のアドミニストレーションという3つで博物館をとらえ直そうという考えが出てくるので、社会の進展・変化のところに、それらを推定できるような言葉が少しでも出されていると分かりやすい。

【委員】

 確かに、博物館法が、博物館人にとっても、また市民にとっても、一つの拠り所としてあるということは、極めて重要だという感覚はあると思う。

【委員】

 いまなぜ博物館法を改正していくのかということに対しては、博物館法制度をより良く機能するようにしていくためなのだ、というところを強調したい。

<第2章 博物館とは>

【委員】

 「…博物館はどのようにして果たしていくのか。それは資料を中心とした諸活動である。」という部分は、良い判断だと思う。

【委員】

 書きぶりとしては、「博物館は、その多様性の中でも、生涯学習社会の実現という理念に貢献するための教育学習支援という機能を、他の教育機関にはない特色である博物館資料を核とした諸活動により果たしていく。」という記述にした方が流れは良い。

【委員】

 資料を収集して次世代に伝えていくという基盤、土台を基にした色々な活動を、生涯学習社会に対応できるように、展示に限らず様々なかかわり合いを持って、みんなと一緒に進めていこう、という大きな展開はしっかり押さえたうえで、資料を中心とした諸活動であることを基盤にさまざまな展開を図るというところをぐっと押さえて書くと、基礎的な活動の基盤、土台になっていく、というのを押さえて整理すると良いのでは。

【委員】

 博物館の活動は、生涯学習社会において、博物館という器、展示手法、コレクション、収蔵品といった博物館の持っている多様な学習の資材、原資がものすごくたくさんあるというところが、子供にも、大人、老人にも向くし、一般的なエンターテインメントにもなり得るという点で、非常に多様性を持っている。そのことが、資料を中心とした諸活動であると、そこまで広げて受け止められるようにすると良い。

<2 博物館法上の博物館の定義の在り方>

【委員】

 基本的要件は、昭和26年に決められている現行博物館法で定められているので、書きぶりにあまり問題はないと思う。ただ、昭和26年当時から半世紀以上たって、非常に大きな変革があるということを冒頭で言っているので、それに適合した定義に直さなければならない。また、その定義し直した内容が明快でないといけない。

【委員】

 基本定義については、もともとの定義が要素としてはいい。国際的なものと照らし合わせても、さほど違和感がない。
 強いて言うのであれば、何のためにこれらの活動をしているのかが薄い。それこそ、拠り所ではないが、公益に資するために活動を行なっている開放された場だ、というような要素、“何のために”という指定が加われば問題ない。
 具体的に変化したり拡大しているのは、やはり資料だと思うので、資料の原則はこうだということを押さえたうえで、そこから検討しなければいけない新たな要素としてこういう傾向が出てきているので、これはこう考えますという論調がいい。
 今の法制度の中でも資料はかなり幅広く捉えている。もちろん一連の実物資料というのは、歴史的経緯から一つの中心としてあったとしても、二次資料も含めた資料としているので、もともと広く解釈していると。さらに一歩、将来を考えると、町並み等、面として広がっているものを考えられるのではないかと。さらに、それらをネットワークとして、役割分担して捉えていくのもこれからのあり方だ、という流れでいいと思う。

【委員】

 この検討会での前提として、水族館や植物園は博物館として認めるし、いわゆる科学館も博物館として認める方向でよいか。エコミュージアム、野外博物館などは認める方向と思っている。パブリックコメントでは、本当に純粋な博物館だけを博物館と定義せよという意見も大分あったが、全体としてはそういうことではないという整理でよいか。そうすると、エコミュージアムや、観光施設に近いような町並み保存博物館とか、資料を持たない展示会場だけの博物館、研究機能を持っていないところは該当にならないというのは明確だと思うが、そのグレーゾーンはどの辺まで念頭に置いて定義したらよいか。

【委員】

 原則としては、現行博物館法で整理している要件を全て兼ね備えているもの。ただ、ネットワークとして役割分担している機関までは定義の範囲に考えるべき。

【委員】

 本当は資料を持っていないに近いようなプラネタリウム、展示はやったとしても研究とは言えないような、ただ投影だけやっているプラネタリウムは、博物館とは言わないのではないか。

【委員】

 要するに、同じ天文博物館であっても、自らが天文の映し出す仕掛けやプログラムを作製しているとか、そのための資料を持っているとか、研究機関があるものについては、同じプラネタリウムであっても、当然のことながら博物館的要素を備えているといえるだろう。
 現行博物館法の中で、博物館の基本的なスタンスはほぼ述べられている。あの時代によくあそこまでつくったと思われるぐらいに、市民の視点がかなり中心に考えられている。それはスタンスとしていいのではないか。
 ただ、半世紀を過ぎて、生涯学習社会になり、また生涯学習振興法ができて、制定当時とは社会的背景が全く違ってしまった。それで、何をプラスしていくかというのが一つあると思う。もう一つは、制定当時の模型や模写と、IT時代の模型や模写とでは全く違う。それらについて、新しい法律は全く触れなくていいのかという問題があるので、以上のような点を、今度の新しい定義ではどう位置づけるかかが一番大きな点と思う。

【委員】

 その点で提案ですが、現行の博物館も、資料と教育普及活動と経営のことは触れられているけれども、何となく博物館人にとっては資料がトップという意識だった。今回の報告では、それらは対等だという言い方ができないか。

【委員】

 資料、教育普及活動、経営の3つを対等に働かせるのは、博物館の新しい方向として良いが、前提として、“物”があって初めてそれらが出てくるので、やはりここで言い切っているのでいいと思う。
 定義は、広げるといっても、ここの場合の定義としては、資料に対する考え方や、同じ複製でも意味が変わってきているものに対して、ここでは少し広く考えることが必要であるということを言うこと。そうすると、現行法も基本的なスタンスはいいが、そこを少し修正しなければいけない。従って、対象として入ってくる博物館も広がってくるが、条件があると。例えば、同じ動物園でも入るものと入らないものがあるとか、プラネタリウムでも入るものと入らないものがあるということとか、入るべきものとしてどういう資料とか、ここの考え方が少し変わりますよ、ということだろう。

【委員】

 そうすると、昭和26年の基本的な博物館法のスタンスは、かなりよくできていて、それで今までやってきた。それについて、今、生涯学習社会という新しい世代に突入して、しかも技術的なテクノロジーの発達というのは50年前とは比較にならない。そういう時代の中で、新しい博物館像が当然のことながら考えられなければならないだろう。それらについては、一つの大きな枠をつくった上で、個々のものについては、登録基準とか望ましい基準の中で検討していくという形か。
 ICOMの基準を見ても、非常に難しいのは、基本的には3つの条件をクリアしたものが博物館であると言いながらも、世界的な流れを見ると、それだけではどうもおさまらないということで、「みなし博物館」というジャンルをつくって、こういうのも大きなくくりの中では博物館だと言っている。アメリカも同様。最初の規定の中で制約してしまうと、結局、博物館の相互協力を進めようと思っても、入っているものと入っていないものが出てきてしまって、相互協力を阻害する。従って、やはり大きな網で括って、博物館全体の総合力をアップしようというのが基本的な新しいスタンスだと思う。
 ですから、基本的要件では、昭和26年現行法の内容が押さえられていて、しかし、それに対する社会的な背景と世界的な流れという2つの条件の中で、新しい定義はどうあるべきか、ということになるだろうと思う。

【委員】

 博物館の定義について、自ら収蔵品を持たない施設を考慮に入れるとすれば、どういう定義が書けるか考えると、「博物館とは有形、無形を問わず人間の生活、文化、環境云々に関する」であるというのを出し、その中に、資料について「人間の生活と文化、環境に関する資料や、資料に関する情報を」というようなことを入れると、活動面まで広く取り入れられるのではないかと考えている。

【委員】

 アメリカの「エクセレンス・アンド・エクイティー(卓抜と均等)」もそうだ。要するに、科学的に正確な情報と資料は基本になっている。

【委員】

 資料のないところも認めていいという意見ではないが、このような考え方をするともう少し広く捉えられるのではないかと思う。

<第3章 博物館登録制度の在り方について>

【委員】

 登録制度が空洞化していってしまったという部分、メリットが少ないという部分、自治体での部局間の壁に関する部分について、これらによって誰が困るかというところ、登録制度があやふやになると利用者、国民が困る。不利益を被るというか、何に照らして判断していいのかわからない。設置したり改善したりするときの拠り所がわからなくて、不利益があるということに言及しておく必要がある。

<2 博物館登録制度改善の方向性>

【委員】

 イギリスMLAが示す登録制度の意義は極めて示唆的であるという記述は、基準のどの部分を評価しているのかを言ったほうがいい。1から4まで、MLAの認定基準の利点が書いてあるが、これをきちっとここに書くと、相当インパクトが強い内容になる。例えば、博物館を支援する助成金決定機関、スポンサー、寄贈者に指標を与えるとか、それをほんとうに支持していると書けば、かなり斬新な提言になる。「示唆的である」という言葉だと、不明確になると思う。

【委員】

 この辺のところは、例示ができるところはできるだけ例示をして、明快にするという形でいきたい。

【事務局】

 博物館法上の博物館でない施設が4分の3ある。それから登録を受けている公立館が13パーセントであるところで、やはり公立館のメリットが少なく、負担が今回の方が大きくなるという形だと、その辺のところが抜けたままの状態が続くという感じがする。
 そのときに、新しい登録制度の考え方のところに、補助金という制度は確かにないが、例えば文化芸術振興基本法26条に、国は、美術館、博物館、図書館等の充実を図るため、展示等への支援ということがあるが、支援という形で言葉が入ってくると、若干メリットが感じられないか。

【委員】

 基本的には、美術館、あるいは文化財的なものを展示しているところに対しても、具体的支援を受けるための基準の一つに登録制度がなれば、一つの段階としていいのではないか。登録博物館としてメリットになる内容が具体的であるほうがいいだろう。

【委員】

 そのメリット論だが、大前提としては、国民のための拠り所だ、そのための登録制度だ、ということで良いと思う。現実には具体的な支援策があれば良いのはもっともだが。

【委員】

 意見公募では、奨学金返還免除や科研費など、細かい要望がたくさん出てきている。そのような基礎資格になり得るとか、こんなことが考えられるとか取り上げて、その実現に向けて、今後一緒に協力して実績を上げてやっていきましょう、というところは欲しい。

【委員】

 例えば、美術館だと、外国から物を借りてくるときに、国家が何かあったときに補償して欲しいと言われるが。

【委員】

 歴史系や美術館で言うと、文化庁の芸術拠点事業など幾つかありますね。これらは、登録や相当が選定の基準になっているのか。

【事務局】

 登録と相当、それと重要文化財の公開施設という3つを条件としている。今年度、登録になっていないところで、何件かは登録をとって申請してきたというものはある。東西日本で説明会を開いたが、やはり公立館の状況はかなり厳しい。このまま進んでしまうと、公立館が、登録の手続をとってくれないんじゃないかと一番心配しているので、国が支援という言葉を、協力者会議の報告では入れるということもいいのかと。

【委員】

 今、基本的には教育基本法改正で、国は博物館等社会教育施設について支援すべきであるというように言っているわけですから、それは、ここで特別に言うわけではなくて、基本的に従来からの考え方を踏襲しているので、書いてもおかしくないと思う。

<(3)新しい登録制度の範囲>

【委員】

 大学博物館等の「等」は、何を指しているのか。

【事務局】

 大学共同利用機関を念頭に置いている。

【委員】

 私は、大学の創立者の記念館があるが、そのことなのかなと思って見ていた。大学の場合なんかは特にそういうのが多い。

【事務局】

 考えの中に入っていませんでしたが、そこは必ずしも特別に配慮しなくてもいいのではないか。大学の場合、芸大みたいな、要するに学生さんや外部の博物館というものと、特に私立だと創設者の資料だけを展示したものと、両方あると思いますが、資料的な価値であれば、両方とも入るのではないか。

【委員】

 実際の登録の段階になってセレクトできる。あるいは検討もできる。

【委員】

 パブリックコメントでも、質を下げるなという意見があったが、我々は別に、質を下げるという意味で広くするのではなくて、入るべきものが入って、審査して、だめなものはだめとするということ。

<(4)新しい登録基準の骨格>

【委員】

 倫理規定は、現実的に、まだ日本博物館協会でさえも倫理規定を持つことができないのに、各館に求めるというのは、10年ぐらい先の話かなという気がする。

【委員】

 むしろ、各館が持っていてほしいのは、行動基準みたいなもの。それですら難しいか。ただ倫理規定となると、やはり日博協のような組織なりがつくって、それを統一的に守るというのが一般的。スタッフの行動基準は非常に重要で、最近特に博物館資料の密輸とか、盗難に遭った資料の国際機関への報告がある。行動基準については、対応が求められている状況なので、もし入れるとすれば、職員の行動基準みたいなものがあるかどうかと考える。ただ、博物館職員だけにそういうものが必要かどうか、というのは課題だが。

【委員】

 倫理規定については、行動基準という言葉のほうがしっくりくると思うが、やはり入れるべき。というのも、いろいろな人がかかわる博物館となると、やはり館としての拠り所がないといけない。
 あと、パブリックコメントを見て、やはりそうかと思ったのは、設置責任の問題。設置者としての責任、これがどうなのかというところが現場の人を中心にあるようで、設置者の責任を果たさなければ運営責任、経営責任も果たせないと思う。だから、項目として、必要と考える。

【委員】

 ただその場合、登録するのは博物館であって、例えばA市が何個か博物館を持っていても、A市がそこの登録基準の中に入って、審査対象になるということはあり得ないが。

【委員】

 経営責任の中に包含される形になるかもしれない。確かに設置者責任は非常に大きいが、一時期、博物館に限らず箱物がたくさん作られて、経営が成り立たなくなったということがたくさんある。それは設置者責任だが、登録の審査項目の中でそれを問うかどうかというのは、ちょっと次元が違うかもしれない。

【委員】

 例えば指定管理者制度ですと、使命を示すというのは設置者の責任。館の運営責任ではない。館を設立して運営する使命は設置者がつくる。指定管理者は使命はつくらない。

【委員】

 でも、その指定管理者の議論と、ここで言っている登録基準の骨格の考え方というのは、別の議論と思う。

【委員】

 登録基準に設置者責任が入ると、もう申請をやめるという悪循環に陥る可能性もないわけではない。

【委員】

 実際、登録を受けようと思ったときに、ちょっと大変だというのではなくて、なるほどと納得できるものであれば、項目数が増えても別に問題ないのではないか。

【委員】

 最後のほう、第6章博物館評価の中にもあるし、そこのところで政策評価とかやっていますので、その部分で見れば良いのではないかと思う。

【委員】

 それでは、特に倫理規定のところは、とりあえず行動基準という形で入れたらどうかということで、お考えいただきたい。

【委員】

 3番の利用者・地域というのは、具体的にどういうイメージか。

【委員】

 その館として、利用者・地域に対してどういう姿勢を持っているかということ。例えば区や市の博物館であれば区や市に直接貢献するということが、おそらく方針として出てくるであろうし、私立であれば、自分たちはこの地域や利用者をこのように設定しています、このように考えていますという、その取り組み姿勢がはっきりしているかどうかというのが想定される。
 例えば、ある特定の分野に対して高度な研究を行っていて、研究志向の博物館である。それは地元にあまり貢献する必要は、もしかしたらないかもしれなくて、それよりも、世界に散らばっている同じテーマを持っているところに貢献するほうがいいのかもしれないし、それは館の姿勢があるかどうか。

【委員】

 例えば私立美術館だと、地域とはもちろん仲よくしているが、そこに限定しないから、展示とか教育普及の中に入ってくるのかなという。

【委員】

 これは、中身で評価するのではなく、どういう考えを持っているかということか。

【委員】

 そうです。スタンスがあるかということです。

【委員】

 どういうところをチェックするかによって、負担が重くなるか、軽くなるかが変わってくる。

【委員】

 大きな使命がありますよね、それに連なって、地域や利用者に対する姿勢は整合性がとれているかどうかということだと思います。

【委員】

 今度の改正教育基本法の中で、家庭、地域ということにいかに社会教育施設がコミットしているかというのがはっきり謳われている。ですから、家庭と地域というものを非常に強く打ち出しているので、一つの項目としてあることはいいのではないか。内容については、具体的なところでチェックしていく方向でいいと思う。

【委員】

 大学博物館の関係者に聞くと、とにかく外に開くため、ものすごい努力をしており、変わりつつある。おそらくそれは国立大学法人になって、そうしなければ存在意義そのものがなくなってしまう、要するに、大学で研究した研究成果とか研究資料を集めておくのが大学博物館だったけれども、それだけではもうやっていけない現実があるので、大学博物館も地域あるいは家庭とコミットするという時代になったのだろうと思うので、項目としてはあっていいと思う。

<(5)登録審査機関、第6章、博物館に関する全国的な第三者専門機関の必要性>

【委員】

 前提として、登録を受けるのも、評価されるのも、館の発意。どこかが規制的にやるということではないから、質が違う。登録は基礎要件をクリアする。評価は、自分たちがどこまで成果を上げられたかを、どこかに計ってもらうことだから、ちょっと違う。ただ、評価を受ける前提には、基礎要件をクリアするのが自然な考えだから、それは連動するとは思う。

【委員】

 第6章は、第三者機関の必要性を記述すべきで、評価制度は特にここでは必要ない。あるいは、逆に第三者機関がやるのならば、もう少し小回りのきく、あるいは地方分権であるとか、自主的にやりなさいというような政策を打ち出しますよというレベルのことを表現すればいいのではないか。

【委員】

 実際にアメリカの評価システムを見ると、やはり両方ある。登録と、上昇指向に対してサポートするシステムは、全然別個の形であり得る。だから、登録はできないけれども、評価は受けるというのがたくさんある。

【事務局】

 評価については、多分、設置者からの評価を受けると思う。国であれば国の評価委員、地方公共団体は地方公共団体の評価を受ける。企業であれば企業の評価を受けることで、おのおの設置者からの評価を受けるのは、多分あると思う。そういった中において、それとは別に、博物館としての全体の評価を受ける必要はあるでしょうか。

【委員】

 現実に県レベルでは、共通的に教育機関としての評価は、既にスタートしている。目標設定による評価をやっているので、一定限、それはできると思う。ただ、その中に、資料のことなど若干は書いてあるが、博物館の専門家に見せるための基準になっていないので、現状やっているものが6、7割は使えるけれども、それにプラスして博物館独自のものが、こういったところでチェックされる必要がある。

【委員】

 指定管理者に対する評価委員長を受けている中で、私はどちらかというと、博物館寄りに、そんな評価疲れするようなことを、年度単位、また5年間の総括でやるというのは大変じゃないかと発言した。そうしたら、地元のボランティア団体の代表、民間開放型の博物館とかそういう人たちがものすごく反発して、税金を使うんだから説明責任は当然だ、評価するのは当然だ、となった。
 それで、まずお金の使い方を説明するのは当然だろう、博物館を公にするのは当然だろうということで、市民の見方は全然違うということを学んだ。だから、これはもう少し真剣に考えなければと思う。

【委員】

 登録審査機関については、一応そういうものが必要だということと、具体的な内容については、別紙6章にあるような形で今後、登録機関としてやるということで、今のような博物館評価制度と切り離すと。ただ第三者機関が、いろいろなところに出てくるので、やはりこれは、項目は別として設置する必要があるだろう。

<(6)一定期間ごとの確認について>

【委員】

 基本的には更新ごとに審査をするということですけれども、当面は従前どおり、登録要件の重要な部分について変更があれば、速やかに届け出る。そうすると、一定期間ごとに登録要件を充足しているかどうかの判断を教育委員会がして、確認をするという、報告に当分は留めようというのがこの趣旨ですけれども、ただ、一定期間ごとの確認というのは従来になかったことである。

【委員】

 教育委員会が登録審査を行うように読めるが、最初はそれでいこうということか。第三者機関をつくって、そこが審査をするという方向を打ち出すのか。

【事務局】

 第三者機関を前提とした制度設計を初めから打ち出すということは、なかなか困難であるので、このような書き方にしているところ。

<第4章 2 学芸員制度の見直し>

【委員】

 学芸員はこういう能力が必要だというように言いっ放しではなくて、大学側の指導体制とか、それを支える国家的な支援など、国の考え方や、人材養成の政策的な考え方など、博物館側の理解というような、みんなで育てるものという姿勢はどこかに入っているのでしょうか。

【事務局】

 後ろの方で、連携協力という形では書いてありますが、国の方針とかそういう部分は入っていないです。

【委員】

 主に大学と博物館関係の連携が極めて重要だから、やっていきましょうという記述はあるが、国の支援とかそういうところまでは及んでいない。ここでは、主に大学における話を出しているので。

【事務局】

 例えばモデルカリキュラムを開発するとか、実習の基準となるガイドラインを開発するというものを検討していかないといけないことは書いてあります。

<博物館に関する科目の見直し、拡充 3 実務経験の必要性>

【委員】

 前のほうに、現職はどうするかとか、若干全体像がある方がいい。

【委員】

 学芸員制度の現状と養成における問題点で、学芸員制度の見直しという考え方があって、大学における基礎的技術の養成という流れですね。

【委員】

 現職学芸員の問題点とは何でしょうか。今働いている人たちの問題というのは、専門性が不足しているということなどでしょうか。

【委員】

 現職学芸員の段階的な専門的資質、能力の向上とか、上級学芸員の創設はその後に出てくる。大学が終わった後に、現職について、という順序になっているので、問題点の中に現職も含めたものを提示しておいたほうがいいという考え方ですか。

【委員】

 その中で、特に取得のことが一番大事だとして入ってくるならば。

【委員】

 キャリアパスとしての全体的なイメージがあって、その中で特に最初の養成課程が極めて重要という前置きがあって入ったほうがスムーズということですね。

【委員】

 今のは確かにそう思う。現状で、働いている人数が1館当たり0.2人で、そういうことなら学校を出てすぐに、ある程度働けるような人も必要としているといったことを考えると、養成の問題は、そういうふうに話が進んだほうがいい。

【委員】

 あまりにも養成機関の大学を意識し過ぎた書き方になっている。

【委員】

 基本的には、大学の養成ということと、それに対する受け手側の博物館との協働ということが盛んに言われて、今、とにかく大学での養成というのは、前段の分析でも言われているように、非常に不十分だという考え方があって、それを何とかしようというところが、この文の中心になっている。

【委員】

 求められる能力とか資質というのがあって、それは大学と博物館が連携、協力して養成する。大学の学部ではこう、大学院ではこう、実務経験ではこうというような形で、役割分担する方がすっきりする。

【委員】

 そもそも学芸員とは何だ、どこが問題だ。そうして、幾つか問題がある中で、一番大きな問題は養成だという流れなら、分かりやすいのではないか。そもそも学芸員とは何だという記述があちこちに散らばってしまっている。博物館法との関係で、人材は一番肝要だと言って、日本においては欧米とは違うかもしれないけれども、こういう使命があるということを、まず言うことが必要。

【委員】

 基本的な文章構成の中で、前段が少し説明不足で、具体的な大学養成のほうに細かに詳述しているので、それがアンバランスになっているんじゃないかなという指摘だと思うが。

【委員】

 欧米の学芸員と日本の学芸員の現状が違う。日本の学芸員は今、現状としては役割を果たしているとか、そういう性格を話すと、養成と博物館における問題が出てくるのではないか。「高度な」という、確かに高度ということは必要ないような気もするが、美術史をやる人は美術をやって出てくるが。

<(5)学芸員の養成と資格の在り方>

【事務局】

 基礎資格を持った人というのは、実質的には博物館職員としての最初のステップだと。各博物館においては基礎資格を有する者を積極的に採用して、日常的な業務遂行により実務経験を積ませることを通じて、有能な学芸員の育成に参画していくようにすることが望ましいという、大学向けのメッセージというような形を入れている。

【委員】

 1年間職務に就くということが前提だから、希望者を教育的配慮のもとに受け入れられる体制を整備できる博物館は必ずしも多くない可能性もあるということでは、よろしくないと思う。つまり、今学芸員資格を取得した人を、学芸員と呼ばずに基礎資格者だと呼んで、就職、採用させるということが前提。

【委員】

 博物館で実務経験を積むことができない者というのは何を想定するのか。

【事務局】

 博物館に勤められないけれども、学芸員の資格を欲しいということで、資格を取りたいという人を想定している。

【委員】

 実務経験というのは、登録博物館に就職して1年間の実務経験等を積んだ者。それに対して、そうでない者というのは、あり得ると思う。

【委員】

 受け入れ体制を整える努力をすべきという方向で設計するという意味か。

【委員】

 基礎資格でもきちんと採用するということだと思う。基礎資格といっても、今の資格よりも高度なものが身についているはず。

【委員】

 ここの部分は、この後、モデルカリキュラムをつくることとの関連も非常に大きい。したがって、ここは非常に皆さん注目している部分でもあり、でき得れば、この文章全体が、学芸員制度の中で分量的に大きな比重を占めるということはある程度やむを得ないが、もう少しわかりやすく整理したほうがいい。
 養成課程で勉強する人、あるいは養成課程を受け持っている人、それを受け入れる博物館側で、必要としている部分はどこかというように、もう少しすっきりした形にまとめ上げられる内容かと思う。

【委員】

 その点で言うと、「大学における」というのは、どうもひっかかっている。ここは専門的職員としての学芸員の基礎的な資質の中身の話。大きく分けて3つある。一つ目が、専門分野で、美術や自然史、歴史といった知見が必要。二つ目は、博物館という場で生かすための博物館学とミュージアムスタディーズの体系的学習。3つ目が、それを現場で生かし得る、座学ではない実践、経験。その3つの要件をもってして初めて専門職として出発点に立てる、学芸員と名乗っても恥ずかしくないという構成のはずだった。
 2番目の博物館に関する改編の要素が3つあって、「教育」と「交流」と「経営」がこれから大事だというのがあって、さらに今のカリキュラムを変えると見直しがあるというようになっているので、詳しいところに入り過ぎている。
 まず3つの柱があって、3つ兼ね備えている人がスタート台に立てるというので、学部ではこう、大学院を出る人にとってはこう、基礎資格を取って実務経験を積む人はこうというふうに振り分けたら、すっきりするはず。

【委員】

 今の3)の実務経験の必要性を(3)の中に入れてしまうと、ここまで大学で担うのかと同じ誤解を招いてしまう。実務経験は、1年とか2年というもの。だから、これは切り離すか、または「大学における」という言葉を取るのか。

【委員】

 それを、博物館と大学で役割分担して、学部、大学院、現場で、それぞれで役割分担してやっていきましょうという話だと思う。

【委員】

 キャリアパス的な書き方も当然必要だし、一つのプロセスとしてのありようという、我々が考えているステップはこうだというのが明快に示せるようなものが、1つあったほうがいい。

【委員】

 私のイメージでは、こっちの第6章は、第三者機関が上級学芸員等の資格、資質の認定、認証を行うけれども、20ページのところは、実務経験を資格要件とする上では云々ときているので、それが直接、上級だとか専門というふうに結びついていないんじゃないかというイメージを持ってしまったけれども。

【事務局】

 ご指摘の内容について整理をしたい。

<(6)現職学芸員の段階的な専門的資質・能力の向上>

【委員】

 ここで大学とのネットワーク化が出てくるというのが、あんまりぴんとこない。現職学芸員と大学との連携とは何なのか。その専門性をもっと活性化させるみたいな、仕事上で、もちろん展示をつくったり、調査するときに専門分野の研究者と組むことはある。それは日常、仕事としてやって、学芸員ではもちろんカバーできない分野があるから、大学の先生に来てもらって、教えてもらって、お互いに相乗効果みたいなものがあって、当たり前にやっていることだと思うが、ここであえて資質・能力の向上として出てくるのは、違和感がある。

【委員】

 科学系の博物館は、共同研究などが該当する。

【委員】

 一番連携が多いのは動物園ではないか。

【委員】

 共同研究は美術でも歴史でもやっている。

【委員】

 研究的な意味での質を向上していくという考え方の中では、博物館内であるレベルまで行くと、それ以上は大学、研究機関に頼らざるを得ないというところがある。この前、我々がアメリカの博物館へ調査に行ったときに、大学との協定、連携は極めて重要だということがわかった。常に上級学芸員と大学の教授が交流している。そのことによって視野が深まったりするという報告がある。
 今ここに書いてあることでは、相互の情報交換や人材の育成とともに、資料保存の技術など、博物館振興の支援をすることも考えられる。動物園、水族館ではすごく多いが、博物館全体ではあまりない。
 要するに、そういうのがないと、あるレベルに達した上級学芸員というのは、それ以上の資質を求めようとすると、博物館の中ではなかなか難しい。アメリカでは普通に、連携して資質を高めていくということが行われている。だから、動物園あるいは水族館の人が学会のリーダーになるということも結構ある。

【委員】

 分野によっては、大学よりも、逆に現場の人のほうがいいというものもあるだろう。例えば動物に直接接している人のほうが、接していない人より動物に関しては詳しいとか。

【委員】

 具体的なハンドリングは現場の飼育の人がはるかに優れているのは確か。

【委員】

 美術に直接触れている、展示品を集めてきて、物を見て、書いている人のほうが、写真だけでやっている人よりも圧倒的に優れた人たちが多いと思うが。段階によってレベルはいろいろあって、美術館の人たちの知識が大学に還元することはもちろんあるし、その逆もあると思う。

【委員】

 もう日常的にこういうのをやっているという意識があったので、あえて書くのは集って、顔見知りになるということではないか。

【委員】

 研究者に、展示の監修をやってもらったり、図録の論考を執筆してもらったりしていることもある。

【委員】

 最近はその逆で、サイエンスコミュニケーターみたいに、博物館が大学の人にノウハウを教えることもある。

【委員】

 ただ、今我々が博物館法の改正についてやろうとしていることは、現状を追認しようということではない。現状を改善して、より良くしようとするから、それが必要なのであって、現状でやっているからいいということでは決してない。

【委員】

 あるレベルへ行くまでの間が問題。今、ベテランで活躍している人たちは、それなりに時間的にもこなしている。職員が減らされるなどの状況で、いろいろな意味で、博物館に入ったばかりの人が、ある程度キャリアを積むまでが今一番問題である。

【委員】

 もっと風通しをよくしようという感じならばよく分かる。特定の展覧会や、特定の企画だけを組むことは大学も当然あるが、もっと幅広に、養成制度や新たなテーマの発見といったイメージであるなら分かった。

【委員】

 博物館の学芸員たちは、能力があっても、展覧会をやることで一つの成果を上げられるとはいえ、例えば論文を発表したり学会で発表して認められるような機会は確かに少ない。その辺で、展示を担当していれば、それが成果になって反映するようなことが認められれば、また随分違ってくるかもしれない。

【委員】

 それも当然認められるようなシステムになっていかなければいけない。要するに大学と博物館は、上級化を目指し、上級学芸員というのを設置し、レベルを上げていくため、協働していくことが不可欠。協働して、両方が博物館力を高めていくという姿勢がないとだめだろうと思う。

【委員】

 「大学における」と書いてあって、それが前提になっているから読みづらくなっている。

【委員】

 特に博物館学、これからカリキュラムが問題になると思うが、実習という科目は、やはり現場の人が来てやらないといけないと思う。

【委員】

 そうですね。大学における博物館職員の養成となっているから、書きぶりで勘案していただければ、基本的にはこれでいいのではないか。
 むしろ、大学における養成のほうがもうちょっと大変かと思うので、そこらあたりは、全体のバランスの中で少し整理していただきたい。
 最後に、その他というところで、特に重要なのは、博物館有料、無料というところがございますので、ある程度方向づけというのを決めなければいけないところがございます。
 これらについては、事務局のほうではどんなふうに整理を。

【事務局】

 ここは、公立博物館についてということをはっきりさせるということで、そういう意味では、今は現行の規定をある程度踏襲して、ただできるだけ廉価な価格に設定するというように少し書きぶりを変える形になると思う。今回、登録基準を全部撤廃すると、設置者による区別を撤廃するということだが、公立博物館の、特に博物館協議会という枠組みは残さざるを得ないだろうと判断しておりまして、公立博物館に特化した規定というのが幾つか残りますので、その中で位置づけていくことは差し支えないと思う。

【委員】

 素朴な疑問で、独法立は入らないのか。人々から見れば、税金でやっているところで同じではないかという。

【事務局】

 今、博物館法の中で、公立博物館という概念と私立博物館という概念は、2つ、別の概念というか、特別な概念を整理して置いているが、国立博物館というあえてそういう概念を、条文の一固まりのものをつくるかというと、これは非常にテクニカルですけれども、難しいのかなということと、現にいわゆる国立博物館で完全に無料にしているところはないですし、収入というのを前提にした独法という設計にしている以上、なかなか難しいかなと思う。

【委員】

 基本的な考え方だが、博物館法というのは公立博物館というものを前提として構築された法律であるということがあって、そのとおりになって、むしろ私立博物館は、一応条文上はあるけれども、どちらかというと公が指導するような書きぶりで、国立は初めから問題外という形だと思う。
 だけれども、今度の制度改正の中の大くくりの考え方としては、設置者については特別な区分をしない。基本的には、博物館というものをいかに市民に提供するかということが中心だと思う。ですから、あえて無料のところだけ公立というふうに先鋭化して出すのは、非常に違和感がある。
 同じ税金でやって、独法はこうだということになると、指定管理者制度はどうかということになってきて、変な形になってしまう。ですから、あえて公立ではと言う必要はないのではないか。低廉な価格に抑えるというのは、公立であれ、私立であれ、国立であれ、問題ないと思う。
 ここらあたりは、我々の全体の考え方のトーンとしては、博物館という枠組みで全体を仕切ろうという考え方で来ているので、ここだけ公立だけ出すのは、いささか馴染み難い感じはする。

【事務局】

 1つは、登録基準と連動すると、特に私立の場合は、何が低廉なのかというのが非常にわかりにくいというか、提供しているサービスに対価というのが、いいサービスを提供する。それに応じた料金をもらっています。それはもちろん低くやるように抑えていますという話でしょうから、なかなか私立に関しては、実際の基準として機能しない可能性があるということが懸念されます。

【委員】

 それはしかし、公立でも同じじゃないでしょうか。

【事務局】

 ただ一方で、税金で運営されているものがありますので、やはり私立と公立というのは、よって立つものが違うのではないかというご意見もありましたし。

【委員】

 でも、基本的な社会貢献の考え方として、ICOMなんかはもともと、非営利団体をもって博物館とする、それ以外は博物館と思わないという形になっている。そのよって立つところは、私立だからどうのとか公立だからどうのということではなくて、基本的に博物館のサービスは無料であるべきというのが前提としてICOMにもあるし、アメリカの博物館協会にもあるし、イギリスにもある。しかし、有料であるところは存在する。
 それはしかし、定義として考えることと現実とは、やはり違う。しかし法の精神としては、できるだけ低廉であることというのは、僕は当たり前の姿勢ではないかと思うが。要するに、公立のみ安くするべきだというふうに書く必要がないのではないか。

【事務局】

 結局は、どのように法律を変えるのか。原則は今のままですということになるわけですね。実際、国立、私立まで含めて、法律にそういうふうに書くということの拘束力という意味でも、確かに公立に関しても、今時点で、ただし書きがありますから、意味はないといえばそうですけれども、それでも一応、ある程度そういうものだということでは、機能してきたということも評価できると思うんですけれども。

【委員】

 我々とすれば、できるだけ、国立であろうと、県立であろうと、私立であろうと、博物館というステージで市民に相対するということは、基本的なスタンスだと思う。一般の市民は別に、公立、私立ということを全然気にしないで、博物館として来ている。

【事務局】

 私立を入れた場合に、無料ないしという部分がどうしてもひっかかるのではないか。今回も私立の人からは、ここは拒否反応が多く寄せられた部分でもある。私立の場合は、無料は無理としても、できるだけ低廉なというのは、登録博物館になるには当然だという書き方もある。

【委員】

 実態からすると、国公私を問わず、登録博物館はできるだけ低廉な価格に設定することが望ましく、少なくとも児童生徒については無料で入場できる機会を設けることがいいぐらいでしょう。実態で公益性をより精神として持ちましょうというのは、そこぐらいでいいようにも思う。もしくは、無料というのをどこかで残すべきだということであれば、設立と運営について税金を投入しているようなところは、以下は無料ないしできるだけ低廉にというような書き分けもあるのではないか。

【委員】

 現実の対応で、小学生とか中学生を無料にしても、それほど大きな影響はないだろう、教育的配慮でそういうところを無料にするというのは、別に大きな問題はないと思う。
 だけど、水族館とかというのは、入場料というのは一番大きな問題。逆に無料化するといったら運営が成り立たなくなり、博物館法上の博物館に入る意味がなくなることになる。だから、現行法が一番妥当な書き方をしているということですか。でも一般国民からすると、何で国が無料ではないのかというのが普通の考え方だと思う。

【委員】

 法制定当時は、基本的に国は特別であって、公立が非常に貧弱だった。これを振興しない限り日本の博物館はだめになるところは事実あったと思う。それで、公立の博物館を振興するために博物館法ができたので、公立中心になっている。私立も出てくるけれども部分的である。
 今までの博物館法はそれでいいと思うが、今、半世紀たって、博物館法を変えるときに、全く同じことを踏襲するというと、フレームワークを変える意味が、国立は独立法人で別、私立は全く別というところに戻ってしまうと、法を改正する意味があまりない。
 例えば、この前も、国立博物館はたくさんの資料を持っているけれども、あまり貸し出さないという話があった。だけど、資料の少ない博物館は一生懸命交流して、市民にサービスしようとしているし、例えば入場料についても、沢山入っても高い金額を取るところも結構あるので、そういう殻を打ち破らないといけない。

【委員】

 表現の問題で、例えば営利を目的として対価を徴収してはならないというぐらいにすれば問題ないのではないか。お金を取っても営利目的で取るわけではない。大部分は館の運営、園の運営とそこの活動に使っている。そういう意味でいけば、一般の株式会社がやる営利目的活動ではないというふうに考えれば良いのではないか。

【委員】

 そこのところは非常に難しいところ。ただ、ずっと積み上げてきた議論が、公立博物館は無料であることが望ましいというふうにすると、一つに固まろうとしてきたものが崩れる気がどうしてもする。そこのところをどう変えたらよいか。

【事務局】

 国立、公立、私立の役割があって、それぞれ料金という点では分けて考える余地があると思う。それは、私立というのは私人が持っているコレクションをいかにして公開するかということですから、当然に必要な対価を取りましょうということになる。また、生涯学習社会の中で、地域の学習拠点という意味では、公立の持っている意味合いと国立の持っている意味合いとは違うのではないかと考えられないでしょうか。
 そうすると、地域のほうは、まさにそれぞれの市町村に根差した学習の拠点として、できるだけ敷居を低くしないといけないという意味では、無料ないしは低廉にという考え方もあると思う。

【委員】

 それは、逆にナショナルミュージアムとしての役割があって、大英博物館がずっと無料を貫いていて、あれだけ膨大なコレクションとあれだけ膨大な人数を持っていても、それを貫いているのは、やはり博物館の持つ社会性に根差しているから。そういう意味で、設置主体によって違うという基本的な考え方が、国際的な考え方に合わない。
 だから、従来の博物館法を踏襲するのであればよいが、ただ、ここで半世紀ぶりに変えようとしているときに、博物館全体が市民のために何ができるかと考えようとしている、そこのところが崩れてしまう気がしてならない。

【事務局】

 現行法の公立博物館の無料規定を、そのまま原則維持しましょうということであるのですけれども。

【委員】

 そういう考え方を、今回の改正では基本的に考え直してみようというのが根底にあるような気がして、今やっているわけですよね。それではやっぱり、ナショナルミュージアムはナショナルミュージアムとしての役割分担をどう果たすかということを真剣に考えるべきだし、地方の博物館は、県立は県立なりの、市町村立はそれなりの持ち分がある。そういう全体を博物館力と言っているが、そういうものを集約できるようなものでないと、新しい博物館のイメージというのは出てこないのではないか。

【委員】

 今度の第3章は公立で、第4章は私立博物館という、このスタイルは同じですか。

【事務局】

 少なくとも第3章、公立博物館というものは、博物館協議会という枠組みを今回なくすというわけにいかないと思いますので、そこは残さざるを得ないと思う。

【委員】

 博物館、個人立も云々というのは、新しい概念が出てきている、ネットワーク化する博物館とか。そうしますと、入館料というのは今、公立の中の第3章に入っているが、博物館の運営に関する事項というようなことで、第5章か6章か、一括でその中に、入館料は原則として無料とするというようなことに移すことはできないか。

【委員】

 これをもう抜いてしまって、登録基準の中で、国立、公立、私立はこういうふうな配慮が必要という整理が現実的だと思う。

【事務局】

 現実には、無料化の条項を廃止したときの反発ということがもっと大きくあると思う。ですから、あるとしたら、法律ではなく、基準のところで、共通のものを何か設けるということがあり得る。

【委員】

 でも、これまでの議論の中で、国立は別で、もちろん中期計画とかで予算も定めてやっているから、今さら入館料のことについても、現実とは乖離するかもしれませんけれども、少なくともコンセプトというか、博物館の目的としては、いつでも、どこでも、だれにでも教育サービスを提供できる、生涯学習社会における、しかも市民とともにつくる博物館ということを打ち出しているので、今になって、設置主体の違いで区別するようなことは、何かそぐわないんじゃないかなという気がする。

【事務局】

 少し時間を持って、次回に検討を延ばしたほうがいいのかもしれない。

【委員】

 基本的には、我々が目指しているものは何かというものは、あまりぶれないほうがいい。もちろんテクニカルな問題はありで、そこらあたりは考えなければいけない部分であろうかとは思う。

【委員】

 それでは、今日の会議はこれで終了します。ありがとうございました。

以上

(生涯学習政策局社会教育課)