これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議（第7回）議事録

1．日時

平成19年3月8日（木曜日）16時～18時30分

2．場所

商工会館7B・C会議室

3．出席者

（委員）

佐々木秀彦、鷹野光行、高安礼士、中川志郎（主査）名児耶明、水嶋英治

（事務局）

中田大臣官房審議官、平林社会教育課長、行松地域学習活動推進室長、宮田社会教育課長補佐、馬場社会教育実践研究センター所長、関根美術学芸課美術館・歴史博物館室長、一山美術館・歴史博物館室長補佐　ほか　関係官

4．議事内容

（1）「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」報告書（案）の議題について、事務局より資料2、3について説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。

　前回の会議の後、各委員からはメールで御意見をいただいて、資料2、資料3のように考え方をまとめた。
　また、主査と事務局で若干討論したこととして、前回までは出口整理ということで、主に大学を出た人たちをどうするかという検討が中心だった。それは重要ではあるが、大学における養成課程をどう考えるかも検討が必要だということで、海外の博物館あるいは大学のカリキュラム、あるいはICOMでどう考えているかについても、事務局で調査している。
　それらと比較検討すると、日本における博物館養成課程というのは果たして十分なのか、21世紀の博物館や学芸員がいかにあるべきかという基本的な立場に立ち戻って、学芸員を考え直そうという考え方に事務局も我々も立っている。そういう意味で、各委員には御発言いただきたい。
　今回やりとりの中で考えたのは、法律で確実に決めておくこと、養成する側で考えること、採用する側で考えることを整理する必要があるということ。それぞれが考える役割分担もあるので、それをここに全て詰め込むことによって、現状との乖離が生じるのではないかということが危惧される。それから、この場では議論していないが、現場の人や大学の関係者からは、学芸員の専門分化を法律で明示してほしいという声が意外と多い。ただ、できない館もあるので、上級学芸員の中で、専門名称を付与することを提案しておきたい。
　全日本博物館学会とマネジメント学会の関西の支部の研究会でこの会議の説明をしてきたが、大学関係者のいるところでは、大学で資格が出せないと、学芸員養成課程が成り立たなくなるのではないかということを危惧する声があった。
　また一方で、学芸員の養成をしっかりしてやってほしい、特に博物館でも、実習を義務として盛り込めないかという声もある。きちんと考えている意見はそれなりに酌み取る必要があるが、あとは我々の強い方針をしっかりと出せばいいのではないか。
　特に、譲れない部分というのは実務経験だろうと思うので、そこのところをはっきり堅持した方針で、大体私も納得するかなと思う。
　キャリアパスのイメージについては、フランスなどでも同様で、こういう階段形式というのは、賛成。今、グローバリゼーションの世界であるので、日本の学芸員も国際基準に合うようなレベルを育てるということも大事。
　実務経験については、博物館、美術館側が受け入れるのを義務だというところまで強制力を持たせるというのが可能なのかどうか、法律的に義務化するのは、行き過ぎな感じがする。それから、専門分化というのは当然だと思うが、専門性の定義が課題になる。
　私もキャリアパスのイメージには賛成。ただ、外向きに対する資格というイメージでとらえたほうがいい。学芸員資格制度を考えるときに、2つの観点が必要で、博物館の学芸員がどんな資質を持っていなければならないかという問題と、大学のカリキュラムはどうあるべきかというのは別の問題で、大学の養成課程でやるべきことは、基礎基本の修得である。
　それで、実践的なもの、現場で学芸員がどれだけの資質、力量を持ったらいいかということについては、ICOMの教育課程のガイドラインと私が用意した「ミュージアム・マネジメントの学問分野構成」を参考にしてはどうか。これはJMMAで、検討したもので、アドミニストレーション理論、コレクション、コミュニケーションという3つの機能で博物館を理解すればいいということについても、JMMAで同じような検討をしていて、それに基づく理論はどれほどあるかというのが、薄い小さな字で書いてあるほうで、こういうことに関係した論文が幾つ出ているかというのを調べた表である。
　日本の場合には、この学問分野をそのまま大学でやろうとすると、実際は理論として非常に穴があいているという現状だと思われる。
　一方、裏側が、現場サイドから、実践的な構成ということで考えた表で、これでやると、マニュアル的に、すぐ仕事に使えるようなものができるというような構成になっている。JMMAのほうでは、どちらがいいということをいまだに決めていないが、現場に近いもので考えていくのか、学問的な構成で考えるのか、2つの構成があり得る。
　大学での養成に必要なことは、現場で必要なことを学ばせているかどうかである。理論よりも、実践的なところを重視することをどう考えるかが非常に難しい。そうかといって、倫理とか、学芸員、博物館が一体どういうものかということは、学校でないと学べない。カリキュラムを組む際に、何をやるべきかというところをきちんと検討しないといけない。
　その次に出てくるのは、専門性、ここは基本的には共通のものをやるべきだと思うが、美術館の養成する側もすべてをやるということは無理だと思う。
　実務経験の部分は、勤めながら実務経験として認められるという方法もあってもいいと思う。受ける側も実利的で効果のあることを考えつけば可能だと思う。
　各委員からはキャリアパスのイメージと見直しのイメージ（素案）、この2つを中心に御意見をいただいた。特に大きなポイントは、大学を卒業したら即学芸員として働くには、その間にインターン制とか実務経験を挟んで、初めて実効のある行動ができるというイメージである。そこのところは、制度的には実習があるが、うまく機能していないということも一方である。
　ICOMでは、今、議論の出た両方を加味してつくっているので、大学におけるカリキュラムも、もう一度見直す必要は当然あると思う。
　それから、実のある実習をどう考えるかも大きな問題で、実習のありよう、目標も考えなければいけない。それから、実際にそれが働くようになった場合に、博物館における学芸員のありようというのも、もう一度、その3つの段階で考えなければいけないと思う。
　今回、事務局が提示した、キャリアパスと見直しのイメージ（素案）、のフレームワークについて、疑義があればご意見を承りたい。
　大学院の養成について、実務が入ることを確認しておきたい。それを、4年制と同じようにやるのか、違う方法があるのかというと、大学院ではある程度専門性を持って、やった方がいい。いろいろなものを満遍なくやるのであれば、4年制でやって早く現場へ出たほうがいい。
　将来のことを見据えて、絞り込んだカリキュラムの中でやるべきということか。
　館によって事情が違うが、学校で養成した人たちが、現場で必要とする人と合わないことが多い。そういう意味では、これからの21世紀の学芸員の在り方も大事だけれども、こういう人を大学院で養成できるというのははっきりさせる必要がある。
　大学側の要請は、受けるような大学院経営というのが本音。つまり学生の確保ということ。博物館と協定を結んで、現場に出て、そこで撮影とか、資料の取り扱いとか、掛け軸とか、目録のとり方、文書の読み方というのを数カ月やらせているが、館側にもメリットを提供できるようなプログラムを作っている。そのプログラムの最終目標は、大学の経営者としては、学生確保の売りにしようということだが、現場の教員とか大学院生は、ここの分野を専門にやりたいということで、必然的に狭まらざるを得ない。あれもこれもというのは、やはりできない。
　専門職大学院的な雰囲気があると思う。現状の中でこういうものをつくることができる大学は、10校もないのではないか。博物館のことを学んでマスターコースまで行けるという大学がないし、もちろん科目としてあっても、専任の教員がいない。そう考えると、現実に大学の中に大きな博物館的なものがあって、そこも含めて共同で教育のできる体制ができているところを見ると、そんなにないと思う。
　それからもう一つ、大学院はバイパスになるのかなと思った。実務経験を一、二年経ないでも、こちらに行けば取れるということになるのか。
　この前は、一応試験を受けるということで話をしていたが。

　前回もそういう議論があったが、今のところは、大学院を出られればそのままということで考えた。大学単体でこういう方々を養成することになると非常に難しいということは我々も認識している。そうなると、県レベルであれば県立博物館と県内の大学が連携しながら養成をしていくようなイメージを我々としては持っている。

　1館だけでやるというのは現実的に無理なので、JMMAの学会でも、連合大学院でも、地域の大学が集まってルールをつくればできるのではないかという話だったので、ネットワークをつくってやるしかないと思う。
　最近の一つの傾向として、連合大学院もだし、単位の互換性を考えるということは一般的になりつつあるので、そういう制度も、ある意味アプライしながら、大学院のところは考えていくことにしたい。それ以外に、段階的なフローの方向性はこれでよいか。
　付け加えとして、県立級の館では、マスターレベルを求めるところが増えている。美術史、自然史、歴史もそうで、専門分野を細かく限定して採用する場合があるので、マスターで修士を取って、かつ博物館の学芸員の養成に必要な、さらに高度な専門課程を経るというのが養成のイメージになると思う。または、学部レベルで採用して、自館で鍛えていくという、その2通りだと思う。
　最近インターンの実情を調べたところ、国立の館を中心に、この一、二年でインターンが定着しつつある。ほとんど無給で、学芸員とマン・ツー・マンで一つのプロジェクトを仕上げるとか、そういうやり方を国立の美術館中心にやっていて、我々が今議論しているような動きは、まるでない話ではなく、既に現実として動きつつある。
　たしかに形はだんだん変わりつつある。今、国立美術館も、5つの国立美術館が一つの独立行政法人国立美術館となっている。5つの美術館が一つのグループという機能を発揮するようになりつつある。博物館でも、文化財研究所と国立博物館が一緒になって機構をつくるということだし、おそらく社会的はその方向に流れている気がする。それから、資格を付与していく上で、博物館実習を内容のあるものにしていくことを考えた場合に、資格要件として実効性があるかについてご意見いただきたい。

　実習についても、我々のほうである程度モデルみたいなものをつくらないと、博物館で働けるだけのものは身につかないと思っているので、大学のカリキュラムのモデル的なものとあわせて考える必要がある。さらに場の整備も必要であると考えている。

　実習については、実習をしたという実績ではなくて、しなければならない内容がこういうものだという、ある意味、全国的に統一された実習の中身というものもモデルカリキュラムとして提言できるような内容にしたい、というのが事務局の発想ということでいいか。
　現場の立場から言うと、インターンは大歓迎だが、実習については資格だけ取りたくて、とりあえず2週間は我慢するような現状がある。なので、博物館のモチベーションが高まるような何かがない限り、現場の反発が出ると思う。粗製乱造が延長されるような実習についての拒否感は出てしまうと思う。
　基本的には、今の御意見は現状を踏まえていると思うので、博物館をこれからしょって立つ新しい学芸員たちをどう養成していくかというのが議論の中心なので、そういう意味では、大学における養成カリキュラムを検討して、モデルカリキュラムをつくって、大学ではぜひこれだけやってもらいたいということになる。そして、博物館にも、学芸員を育てていくという義務はあると思うので、やはり、大学と博物館が共同して学芸員を育てるということにしなければ、どんな制度をつくっても意味がないと思う。博物館も受け入れやすくて、実効もあるカリキュラムをいかに構成できるかというのが、この委員会の一つの大きな役割だと思う。
　県立博物館でやれるといっても、10日間程度でやれることはたかが知れている。ただ、この会議でやるべきことが、枠組みを決めるということであれば、7日から10日程度で、アドミニストレーション、経営について2日間程度、コレクションについても2日間程度、それからコミュニケーション、教育普及活動についても同様に、この3つの機能については、同じ比率でやっていただきたいという枠組みをつくってはどうか。
　半世紀ぶりに法を改定して、良い方向に向けようということになれば、やはり博物館と大学は共同して、学芸員をいかに育てるかというとろこに行くと思う。
　文部科学省で一つのフレームワークみたいなものの原案があって、我々の議論の結果としてのフレームワークがつくられて、実習や大学のカリキュラムがこういうものだということが明らかに示されれば、そのフレームワークの中で働くという機能は生きると思う。
　都道府県教育委員会あたりが間に立って、大学と博物館の間をつなぐような制度設計をしたらどうか。
　枠組みをつくることは大変いいけれども、そんなことだと受けられないというのが多分出てくると思う。小さいところではなかなか難しいと思う。問題は、両方にメリットがあるということをぜひ考えていただきたい。
　そうですね。
　館種別コンセプトというのは捨てるべきで、例えば、私が担当していた音大生は、音楽に関係ないからといって全部断られる。受け入れられるのは浜松市の楽器博物館だけであった。ところが、教育普及活動だとか、展示だとか、保存というような機能別、職種別、というような考え方に立っていただけると、いろいろな博物館に潜りやすいというような気がする。
　ありがとうございました。
　それでは、事務局からお示したキャリアパスのたたき台と、見直しのイメージ（素案）というものを、大枠そういう中で考えていくということでよろしいか。
　それから、この中で1つ大きな問題は、大学のカリキュラムについては、モデルカリキュラムをつくっていくこと。実習については、今までのように、実習は極めて重要だというふうに規定しながら、内容については極めてプアであったので、博物館側と大学側が、新しい世代の学芸員を両方で協力しながらつくっていくという基本的な理解に基づいて、モデルカリキュラムをつくっていくということで考えてみたいと思う。
　上級学芸員の内容について、最後に事務局のほうから問題点として言われているように、専門性というものに重点を置く、あるいは、階級別というか、ガバナンスの程度に応じて、館長に次ぐ者とか、その下に行く者とか、そういう考え方もあるだろうということだが、御意見があるか。
　イメージとしては、ある種のマイスターというか、7年なり、10年ぐらい実務をやって初めて一人前、ひとり立ちできるというような感覚があるので、ほかでも通用できる能力があるという資格証明と考えている。指導的地位を占めるということを第三者機関が判定するというのは、そぐわないと思うし、人事任用はその施設独自のものがあるので、学芸業務はできても、統率力があるかというと、それはイコールには結びつかないところもある。
　私は全く逆で、スミソニアンのキュレーターのように、いろいろな事業を組めて、専門の分野については当然、教授クラスの知識を持っているというイメージを持っている。従って、機能に基づく上級という感じで、上級学芸員経営、上級学芸員コレクション、上級学芸員エデュケーションか、コミュニケーションか、その下にポツで、自分の専門をもっと細かく書いてもいいけれども、そこから先は、大学の専門やほかの分野の専門でもいいのではないか。
　博物館の専門能力としての評価なので、資料のことしか知りませんよというのは話にならないので、一通りのことはわかっていて、その中で教育普及にすぐれている、というような評価の仕方になるように思う。
　資料の部分については、学位があるので認定、評価はできるので、それを改めてまたここでやる必要があるのかというのを少し思った。
　それから、博士の学位というのは、誤解がないようにいうと、あれは研究者として一人前ではなくて、スタートラインに立ったというレベルだということである。
　基本的に専門分野での学問的な評価というのは、ドクターを取るとか、あるいはそういう場で認められるとか、そういうものがあるだろう。博物館の中で学芸員として上級になるということは、そういうものがベースにあってもいいけれども、それ以外に、今、マネジメント能力とか、コレクション能力とか、あるいはそれを一般に示すための展示能力とか、そういうものの総合力みたいなものが評価されるということになるのではないか。
　教育、例えば展示活動とか、見せ方とか、そっちの問題と、美術コーナーをやるとか、人と接触するところ。それからもう一つは、やっぱり物を管理して保存していくための知識だとか何かにすぐれた、この人に任せておくと大丈夫だというようなこともあると思う。
　学芸員とは何か、その上級とは何かというふうに考えていくと、やはり総合的な、博物館を博物館らしく運営していくための能力というものが極めて求められるという方向で、それは一体、中身としてはどうなんだというのは、もう一つ個々に詰めていく必要があると思うけれども、非常にはっきりしたことは、要するに一つの分野で10年間、あるいは15年間やって、世界的にすぐれているというものに対して上級学芸員という資格を与えるのではなくて、博物館を運営していく、そして社会貢献していくようなプロセスの中で、非常に大きな力を発揮できる能力。非常に難しいけれども、その内容については、ここに詰めていく必要があると思う。それを認定していくとなれば当然、認定するための要件というのが必要になる。
　先程、他の委員から意見があったように、博物館の館長になれるとか、それとはまた違うと思う。
　どこかでやはり専門性というのはあると思う。
　両方な気がする。
　博物館が上級学芸員とする場合には、それだけではなくて、博物館らしさを演出していくというか、博物館の機能をさらに高めるための総合能力的なものを持っている、そういう能力を上級学芸員として付与していこうという形になると思う。
　上級というランクづけをして、意欲を高めていく資格付与のシステムというのは今後重要になるだろうという案があって、平成8年にその具体的な案が出た。それについては、どちらかというと、専門性といっても非常に狭いところで議論していた。しかし、そうではなくて、博物館学芸員という広い視野での上級というランキングをもう一つつくっていこう。その内容については、おそらく議論を尽くせないけれども、もう少し内容を詰めて、再度事務局のほうから提案していただくということでよろしいか。

　了解した。

＜事務局より資料4、5、6について説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。＞

　博物館の定義ということで、前回までの議論を踏まえてここに挙げたが、この原案について、ご意見あるいはご質問等があればいただきたい。
　私の資料については、後で博物館法の中で、定義をちゃんと文言に入れるときに必要なことだと思う。4ページの「現在、博物館法は」と、博物館についての現在の定義が挙がっているが、方向は異論はない。ただ表現が、このまままた同じように博物館法に載るのは困るという趣旨の意見。

　もし、法文にするとこういう形でよろしいのかどうかを念頭に置きながら議論していただければと思う。

　5ページの（3）の大体の意見は集約したが、プラネタリウムとか科学館で収集不可能なもの、星とか天体は、それでも博物館というには、調査研究の蓄積だけだと具体的ではないので、そういうものが資料としてなり得るんだというように、資料という言葉を入れたほうがいい。
　そうしないと、例えば集められる資料があるのに集めていないのと、集められないもので仕方なくこれが資料になっているものと、全然意味が違う。
　星なんかは、天体望遠鏡とか、隕石とか、そういうのは天文博物館があったころはやっていた。
　五島プラネタリウムにいた人の話では、普通のプラネタリウムと天文博物館とは違っていて、プラネタリウムはただソフトを持っていって、それはにせものと一緒だと。教育的なことをやっていても、資料という言葉を入れたほうがいいだろうということだった。
　ただ、全く形がなくても、蓄積があって結果があるというものについては認めようというか、インクルードしようという考え方は新しい考え方だと思う。
　蓄積を継続して、維持しくことが大事。それを売ったりして自分のところに残さないというのではだめで、伝えていくということが博物館の一番の根本だと思う。

　有形・無形を問わずということだが、無形であったとしても、プラネタリウムの星を展示するというものであったとしても、それを記録している媒体、ソフトならソフトをきちんと継続的に収集して保管しているという機能がなければ、博物館として違うのかなと。
　望遠鏡の話でも、星を見せる、その星を見るという行為だけの現象としてとらえるのであれば、それは社会教育施設であると思うが、隕石だとか、何年何月の大星雲の写真をきちんと保管しているとか、その関連する資料の保存が、そういう実物資料が、実物というのは別に本物という意味ではなくて、無体の財産でも記録されたものがあってこその博物館というふうに私は理解していたが、それとまた違う意味でこの意見が集約されつつあるのかどうかとをはっきりさせておきたい。

　個人的には、博物館と図書館と文書館というのはあまり違いがないという意見を持っている。今までの議論を踏まえると、博物館としてのプラスアルファは何かということだと思う。実は議論の原理主義に基づくと、ミッション、コレクション、コミュニケーションということで博物館をとらえようということで、今議論しているが、博物館だという定義をするときには、ミッションの形をちゃんと明記しているというのは当然だが、それを保管する意味では専門職員がいるとか、そういう形で見せるもの、それからコレクションについても、収集で資料があるということ、調査機能があるということ、抽象的なこと、必ず2つがあるので、3つの機能のうち、例えば最低2つは形に落ちているものを持っている機関を博物館とするような、外形審査にひっかかるようなもので、博物館の本質を定義する必要があると思う。
　「提供する機関である」というところに一言、「常設の機関である」と置けば、博物館の定義としては全くいいのではないかと。
　今までの議論の流れは、その3つの機能というものが一応完備されているということをもって博物館の定義にしようかということで考えて来たが、物によっては、3つのうちの1つが欠けても、ある意味、博物館の目標というものに該当するものであれば博物館と考えてもいいではないかというのが、今の新しい意見だと思うが、それについては、いかがか。
　比重のかけ方の大小はあるにしても、やはり3つの機能は備えていなければならないと思う。それから、有形・無形にかなりこだわりがあるようだが、結局その場では無形かもしれないけれども、みんな有形になって残っていくという気がしていたので、あえて書かなくていいかとだんだん思い始めたけれども、今までの議論の中で、これからの博物館には、確かに無形のものも対象にしていくという方向があったと思ったので、あえて入れている。
　コレクション化というか、無形を有形化するところこそ博物館の真骨頂みたいなところがある。コレクション化していくという行為、収集ということの中身に価値づけが出てくる。
　それこそが大事だと思うので、一見これは同じプラネタリウムだけれども、コレクション化しようとしているところと単に投影している場所というのは、外見は同じだけれども機能は違うというあたりの線引きをすることではないか。
　無形文化財でも有形化されて、物として保存されていて、繰り返し再現できれば、発想としては広く持ってもいいのではないか。無形のというのは入っても、おかしくないという気がする。
　それからもう一つ、国立新美術館は、国立美術館が含まれる独立行政法人が所蔵しているものがあった、展示に特化しているというような考え方があったがこのような状況についてどう考えるか。

　一つの博物館で、建物が幾つか分かれていて、この部分にはコレクションはない。全体として一つの博物館だという整理は、組織体として一つであるならば可能かもしれない。

　そこのところは新しい考え方である。見ている人にとっては、要するにだれが持っていようと、問題はないが、ただ、博物館の定義として考えていく場合に、所蔵していることが、単一では所蔵していないけれども、幾つかの集合体の中でそれぞれの機能を分化しているという考え方が今後あり得る。そういう場合にどうするかというのは、新しい問題なので、議論の対象にしなければいけない。
　今、大阪では、府立の博物館を5つ統合しようという考え方がある。同じように資料を融通し合うと言っている。そうなった場合に、一つの博物館でしか考えられないと言っていいのかどうかという問題も同じように起こる。そこを今後議論の対象にしていく必要があると思う。
　それに関連して、営利か非営利ということについて、論理的には非営利団体とすれば、一番簡単だけれども、今のようなお話を伺って、それでもいいかという気になってきた。というのは、例えば公共事業という考え方が随分変わってきて、公共的事業になってきていて、そうすると、今後10年、20年後に、いろいろな事業モデルが出てくる。それをあえて博物館のために、小さく決め込む必要はないのではないか。
　コレクションが一番大事だということを別の観点で評価して、登録なり、博物館と認定することを考えると、非営利、営利も、できるだけ幅広く博物館の主体として考えたほうがいいのではないか。そうすることによって、逆に博物館の定義もいろいろな広がり方が出てくると思う。
　先ほどの、組織体として考えるか、施設として考えるかというのにつながる問題だが、私は今のところ、施設として、公益性、ミュージアムであるかというのを見ていくようになると思う。
　話が、非営利、登録の範囲の問題になるが、営利企業でも公益性が保障されていれば、それは登録になれるし、また、個人についても、この場合は、むしろ登録博物館になってもらうことで公益性をバックアップするというか、例えば登録博物館になれば助成金の対象になれるとかそういう意味で、永続性を下支えするような、機能があると思う。
　個人で危なさそうだからだめというのではなく、個人でも頑張るんだったら、多少でも応援できるよという制度設計が必要ではないかと考えた。
　21世紀の博物館の定義を決めていく場合に、現状認識だけで決めていいのかという考え方が非常にあって、現状の中で、今後10年なり、20年なりを見据えた、博物館とは何かということを考えていく必要があると思う。
　そういう意味では、4ページの「実物性と収集保管について」、この実物性というのもある意味、非常に問題になる。集める資料が実物であること、一次資料、二次資料という、要するに博物館法が50年前に制定されたときに、実物とそれの二次資料としての模型とかそういうものを考えた時代と、今の実物と模型、あるいは類似物、二次資料との距離というのは、想像できないぐらい縮まっている。現に多くの博物館・美術館で実物はしまってあって、展示しているのはコピーというのは結構ある。
　実際に、最新技術でスキャンしたものを、文化財保存のたくみの人が手を加えて、実物そっくりにしてアメリカの博物館から日本に里帰りするという話もある。つまり、26年代に私たちが法律の中で、一次資料、二次資料というふうに分けた50年前と、今の第二次資料と一次資料の距離というのはものすごく近いのではないか。それをどう考えるかというのは、今後、等閑視してはいけないという気がする。美術館ではどう考えているか。
　浮世絵もそうだが、美術館の美術品というのは、唯一のそのものを見て感動したりするものであって、資料は絶対そこから横に行くことはないと思う。テレビで映そうが、バーチャルであろうが、それは次の段階の教育とか普及であって、そのものに感動する、そのものがいい、できたらガラスもなしで見るというのが一番であって、それは変えようがないと思う。
　だから、いつも問題になるが、星を持ってくるというのは無理だが、文化財そのものは、特に美術というような分野のものは、物がなかったら、それが本物じゃなかったら、違うのではないかと。それは守らなければいけないところ。
　その場合、見た目に本物と全く区別がつかないようなものであってもということか。
　基本的にはそうである。
　実物でなければ博物館標本でないといって博物館は設立するかというと、自然史博物館では極めて難しい。日博協でも複製品を製作して、貸し出しをやっていたが、そうすると、そういうこと自体も、博物館活動としてはあるべきではないということになるのか。
　要するに美術館で複製が出たり、浮世絵を持ってくるというのは、どうしてそういう行為があるかといったら、もとに本物があるからであって、本物がなかったらそれは意味ない。

　本物に対して価値を置いているというのは、1つは、本物がなくなってしまったら、代替するものがなくて、それが人類共有の財産なので、代々引き継いでいくという公共的使命が博物館にあるので、そこに本物にこだわるというのはあると思う。コピーを持ってはいけないとか、教育普及や展示に使っちゃいけないとまで言っているわけではなくて、もちろん教育普及の段階で使うものもあるし、本物は長く展示すると劣化するので、代替措置としてコピーを使うこともあると思う。それは否定するものではないというのが1つ。
　それから、模造品であったとしても美術的価値を有するものはあって、今の博物館法の中でも、実物、標本、模写、模型というふうに資料が列挙されていて、博物館で言う実物の資料から除かれているわけではない。
　実物の意味は、月なら月、星なら星と、本物ではなくても、そこに唯一変えがたい物がある場合には、資料として認めるというか、それが含まれるという考え方は、誤解がないようにしておきたい。模写、模造は必ずだめと言っているわけではなくて、認められる場合もあるし、それから、本物でなければいけないとこだわるところというのは、博物館の公共的使命としてあるので、柔軟に考えていただければと思う。

　古美術になると、にせものかどうかというのがまず学問の対象になっているので、にせものだとわかって、そのとき判断して、抹殺したとする。ところが後でよく考えたら、やっぱりよかったではもう遅い。そうすると、そのまま残っていく。だから、芸術作品というか、美術作品というのは違うと思っている。
　これは非常に大きな問題なので、早急に結論は出ないけれども、今、事務局が言ったように、基本的には国民共有の財産を守り伝えていくということは、現実の問題として当然あり得る。しかし守り伝えるということと展示するということの間に、相反する条件が出てくれば、当然ある部分についてはそれをカバーしなければならない手法を講ずる必要があると思う。
　今、1つ問題になるのは、例えば大塚美術館のように、コピーというものを、美術館としては、認めないという方向なのかどうか。
　使命を明示するというのがミュージアムの一つの要素になっているわけだから、その考え方の分け方でいいと思う。それをお互いに、あれはにせものだからだめだというのは、また利用者が判断すればいい話で、そういう使い分けというか、レベルが違う話だと思う。
　主査がおっしゃるように、教育と保存のバランスをかけたときには、やはり資料といえども命があるもので、それは1,000年なのか、20年でいいのか。例えば我々のような理工系の場合だと、大量生産のものなので、一個一個の資料は重要であるけれども、いっぱいあるものもあるわけですね。そうしてくると、資料に対する考えというのは、やっぱりバランスの上で、今までは、どこかで未来永劫保存していくものだということがあったけれども、それは委員がおっしゃるように、館のミッションによって、5年だったり、50年だったり、300年だったり、1,000年、未来というふうなことがあってもいいのではないかと思う。美術館は比較的そういうのは長いレンジで考えているところだというのは十分認識している。
　全く素人目にはわからない、本物かどうか専門家でもわからないというところがあるようだが、今の時代で、これから博物館の定義をするときに、今のような議論をどう整理するかというのは、ここで結論は出ないかもしれないので、懸案としては考えておく必要がある。
　とりあえずは、この前の3つのアイテムをカバーしたところを博物館とするということで考えていくという、一応の合意は得ているが、最近の新しい事例として、グルーピングされたものの中でどう考えるのか、それから、コピーというのが、昔のようなだれが見てもわかるようなコピーでない、サイエンティフィックな部分が非常に急速に進んでいるということ。この辺のところもお考えいただきたい。
　それから、営利法人とか個人を対象にすべきかについては、複数の委員はお考えだったと思うので、これはまた議論を詰めるときに検討したい。
　それからもう一つは、博物館評価の問題について、一応項目立てをして、先ほどご説明があったが、評価も重要であるということを案の中に明記しているが、これでよいか。
　それからもう一つ、地方独立行政法人の問題について、今、博物館の、地方の私立、公立問わず、いろいろ経営主体の話があって、指定管理者制度というのが猛威を振るっているわけだが、第3の選択肢として、地方独立行政法人という設置主体を考えたほうがいいのではないかと。地方独立行政法人については佐々木委員が提言された部分でもあるので、説明いただきたい。
　中川主査からご紹介があったように、今、大阪市が地方独法化に向けてい取り組まれていて、私のところでも似たような課題を持っている。何を選ぶかは設置者の見識に任せるべきであって、そういった選択肢があり得るということは明記していただきたいと思います。
　これについて、やめたほうがいいという博物館関係者は考えられないように思う。
　自助努力ができる団体なのかは疑問。今の国立博物館が独立行政法人化していて、それと同じようなことを県レベルでやるということは、普通、そこに属していた人たちがそのまま活動するということが、当初は大体見込まれる。
　JMMAでもこれについては議論していて、指定管理者の会社の意見として、民間企業は、現行制度にならって学芸員を置いているのに、県や国が設置した博物館は、そういうことを無視してやっている場合が多いと言う方がいる。公立博物館なのに学芸員を置かなくてもいいと、行政だから逃げ道もよく知っていて、逃げている機関も多いのではないかということを言う。
　だから、選択肢があるということで置くのはいいが、必ずしも地方独立行政法人をやったから民間企業的な手法がいっぱい出てくるということも安易に期待できないし、それから、財政的な裏づけが難しい状況で、ひとり立ちしていくというのはそう簡単ではないんじゃないかなと思う。
　設置者の見識だと思う。それは設置者が判断するべきことで、法律で、はなから議論を閉ざすというのは考えにくい。
　それは賛成です。
　第三者的な立場で考えるといかがか。
　仮に大阪市がやった場合は、個人立でも、NPO立でも、博物館登録の中に認める方向で考えているので、当然地方独法も対象の一つになるし、ただ、委員高安がおっしゃる、自助努力が足りないのではないかというのは、確かにそういうことがあるかもしれないので、だからこそ、博物館の評価を2階建ての形で、登録はウエルカムだけれども、評価は外部評価のような形で、制度的にたるんでいたら襟を正すようなことは当然やったほうが、名称独占のことも考えれば、評価制度を導入したほうがはっきりすると思う。
　結局、指定管理者制度では何か問題があるということから、その問題をクリアするほかの方法はないかということで出てきている話だと理解している。指定管理者は問題があるかどうかは別にして、各自治体、各地方で、それぞれでこういう方向を出してきたときに、それを阻害する方向というのは今の政治の流れとは違うと思う。
　評価というのをしっかりしておけば何ら問題なくて、なぜ政令の中に入っていないかという情報はご存じないか。
　要するに地方独法の中に博物館という例示がないのはどうしてか。

　教育委員会制度と地方独立行政法人制度が制度的にうまくマッチしなかったということ。

　教育委員会から離れた形で、例えば市長部局、部長部局に入っているものがこういうものをやるのは構わないという考え方になるのか。

　今回も議論いただいている、登録制度という観点で見たときに、全く区別がなくなるのであれば問題ないということだと思うが、あとは、要するに教育委員会制度と独法という制度をどうマッチさせるのかというのは、また少し違った、大きな教育制度の設計の話になると思う。

　要するに地方独法に、博物館が入るのか入らないかというのは一時議論になった。最終的には、教育委員会制度というのが1つあって、教育委員会の中に入っている博物館というものについては、これになじまないという一応の判断があった。それで、できなくなったという経緯がある。
　国の独法が、継続しなければならない事業であることについて独法にする、ということがあったので、博物館事業というのは、当然のことながら継続性が中心だ。そうなれば、継続というものを前提にしない指定管理者制度では、なかなかこれを守れないのではないかという危機感があったと聞いているただ、それに対して、二者択一というのではなくて、第3の選択肢もあり得るというような形がとれれば、ここの結論としてはよろしいのではないか。
　博物館倫理について、ご説明をいただきたい。
　ここで言いたかったことは、他の関連資格とどのようにレベル合わせをするのかというのが1つ課題になっている。例えばサイエンスコミュニケータとかデジタル・アーキビスト、あるいは検定関係のものもあるので、市民参画ということでは、博物館の中にいろいろな人材が運営協力してくれるなら、非常に喜ばしいことだと思うが、ボランティアを長くやっていると、運営上ふさわしくないような、ボランティアのグループ化や集団ができてくるという、長く継続するに従って、運営上の弊害が出てきている。
　よって、ボランティアだけに限らず、博物館の職員、あるいは関連している技能者、協力者、あるいは先ほど問題になっていた、博物館実習生といったことの行動規範も考えるべきではないかという指摘である。
　これは非常に重要な議題で、実は日博協の検討会の中で、博物館倫理規定をつくろうという考え方があった。ご承知のように、アメリカでもイギリスでもそうですけれども、あるいはICOMもそうですし、カナダもそうですし、博物館倫理規定というのは大体持っていて、勤める人の行動規範になるし、博物館のミッションということを決める上で非常に大きなウエートを占めているという経過がある。
　そういう意味で、先ほどの学芸員の資質というところにも関係してくるし、博物館のミッションにも関係してくるので、今の話を踏まえて、ご意見を賜りたい。
　提案は大いに賛成。博物館にかかわる人たちが急速に増えてきていて、ボランティアでもそうだし、指定管理者制度ということで、民間事業者も参入できるということになると、何を守っていかなければならないのかという、よりどころが大事になってくる。多様化して拡大するということの裏腹に、よりどころが必要になってくると思うので、博物館法というものがあり、登録基準というものができ、そして個々のかかわる人々にとっては行動基準、行動規範、倫理規定があるということは、これからますます求められてくると思われる。
　少し補足だが、これは博物館法で規定するような、いわゆる博物館振興法のような形とは別に、個人の行動を律するものですので、はっきり言うと法律にはなじまない世界。ただ、業界だけの問題ではなくなっているので、生涯学習社会を振興、発展させていくためにも、博物館関係にする行動、職業人のような規範は必要ではないかなと思う。
　確かに法律になじむ問題ではないが、第8条で望ましい基準を定めるものとするという書き方をするように、博物館倫理を定めるものとするとか書き加えることはできる。
　基本的に僕も賛成だけれども、そういうものを持っていない博物館集団というのはだんだん少なくなっている。特に先進国では日本だけだと思う。博物館倫理というのと、博物館の従業員倫理という、2つあると思う。
　過去に密輸入の孔子鳥という化石について問題がおきたとき、文部省はどうするかということで、結果的には、ICOMの倫理規定に基づく通達を出して、一応事をおさめたという記録がある。そういう規定が何一つないので、結局ICOMの規定を引用する以外に方法はなかったというこ。
　そういうことを考えると、今回の改正の中でそういうものが望ましいというような段落が入れば、それをどうするかというのは、それから立ち上げていけばいいと思う。
　それでは、きょうの協力者会議は以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

以上