これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第6回)議事録

1.日時

平成19年2月9日(金曜日)16時〜18時30分

2.場所

三菱ビル地下M1会議室

3.出席者

(委員)

佐々木秀彦、鷹野光行、高安礼士、中川志郎(主査)名児耶明

(事務局)

中田大臣官房審議官、平林社会教育課長、行松地域学習活動推進室長、宮田社会教育課長補佐、関根美術学芸課美術館・歴史博物館室長、一山美術館・歴史博物館室長補佐 ほか 関係官

4.議事内容

(1)「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」報告書(案)の議題について、事務局より資料2、3について説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。

【委員】

 学芸員の専門性といった場合、管理部門やレジストレーションのことを指すのか、美術館であれば美術の専門性を高めるのか両方の意味があるので、日本の学芸員の場合はこうだというイメージを一致させる必要がある。
 また、現状でも2〜3年経たないと学芸員としての辞令を与えていないところもあるので、実務経験を課すことについての違和感はないし、博物館の理解者を増やすだけでなく、質を高めるという意見には基本的に賛成である。

【委員】

 時代の変化を見越した学芸員制度の見直しが必要。現行では資格を持っていて博物館で働く人を学芸員としているが、公認会計士などのように、国家試験によって、資格を付与するような制度に変えていくのか、その性格をはっきりさせた上で、学芸員の質や力量、学ぶ内容について考えていく必要がある。

【委員】

 本会議の検討にあたり、私自身の中では、平成8年の改正を踏まえ、今回は、前回の改正の不十分だった点について、充実するという考え方を持っている。また、これまで大学ではビギナーを養成するという考え方だったが、今回は即戦力、実践力のある学芸員を養成しようという見解で臨んでいる。

【委員】

 前回は博物館法の枠の中でどう考えるかということだったが、今回は教育基本法が改正されるという節目において、博物館法と一体となって学芸員制度を見直すという点が前回とは違っているところ。

【委員】

 学芸員の資質は規模によっても変わってくると思うが、基礎は今日示している1資料、2コミュニケーション、3マネジメントである。
 試験か審査かということについては、試験が良いと思っている。過去、博物館人の専門性は現場での経験でカバーしてきたが、現代においてはマネージメントやコミュニケーションなどを体系的に考えることが大事。
 また、今回のたたき台には触れられていないが、現場の学芸員は改正後の身分について、不安を感じている人もおり、移行措置を考えておく必要がある。

【委員】

 これまでの議論で学芸員の資格取得について、入口と中身は固まってきたが、出口があいまいになって、誤解を生んでいることもあった。今、委員からも御発言があったように、今回一つの試案として示された「試験・審査・確認」という部分について御意見いただきたい。

【委員】

 大学院で専門性を学問として学ぶよりも、実務がより重要である。試験に変わる講習でもいいのではないか。試験については誰かジャッジするか等試験のやり方による。

【委員】

 学芸員の資格取得の方法が科学的でない。原則論として試験にしてはどうか。きちんと点が出て、白黒はっきりさせるものの方がよいではないか。

【委員】

 いったい何を審査するのか分かっていないと、試験がいいのかどうかは分からない。大学の中の教育で単位を出して認めているところを改めて審査されるのであれば大学の立場がない。その意味で実務経験の部分を審査するということになると思う。大学院における専門課程はほとんどないので、これから作らなければならない。

【委員】

 実務を経験してから、一度頭を整理機会が必要。試験は良いきっかけにもなる。理論と実務がセットになっていないと理解が深まらない。

【委員】

 学芸員の資質の再評価について何を評価すべきなのか。個々のタレントが優れていても学芸員として総合的な実力を身につけているかどうかを出口で再評価するということで委員の意見が一致していると考えてよいか。この委員会としては、一つのステップを踏むということで確認したと御理解いただきたいと思う。また、なるだけ例外はつくらない方向で検討したい。

【委員】

 資料に「在学中の経験を含む」とあるが、これは大学の4年間でもきっちり大学で養成できると考えていいのか。

【事務局】

 実務経験の標準を示して、大学でも対応できるのかどうかによって、大学での実務経験を認めるかどうか変わってくる。また、これまで大学で学芸員資格を取得してきた1万人を対象としているのではなく、博物館で働くことを前提とする者を対象としていく。また、大学の養成課程を再評価するものではない。

【委員】

 次に上級学芸員について、御意見いただきたい。

【委員】

 自分の周りでも実感として自治体を超えた職員の流動化がおきている。指定管理者の導入でこの状況はますます進むと考えられるので、実績の評価は以前よりも必要となってくるのではないか。また、学芸員によっては、異動がない場合もあるので、資格がマイスター的な意味づけを持ってもいいのではないか。

【委員】

 上級学芸員の資質というものの中で、自分の持っている専門性に対しての高度な知識、技術を有しているということと、その専門性を一般市民にいかに博物館という場を通じて伝えていくか。そういう総合的な力と両方あわせ持つことが必要。

【委員】

 公立館が多い博物館では、予算の削減や民間の資金の流用で、マネジメントも含めて、総合的に判断する資質が必要になってきている。学芸員がそれを判断するのは難しいので、それを支える上級学芸員の存在を考えるべきではないか。

【委員】

 私立のように職場を異動することのない学芸員にとっても上級学芸員が必要か。上級でなくても、なんでもやらなければならない状況は変わらない。
 ある分野で専門性を持つから学芸員としても優秀だというのは違うと思われる。美術館・博物館で資料や人とかかわることの能力が認められるのがいいのではないか。

【委員】

 次回までに、大学教育の中で博物館人が担っている時間、科目等について調べていただきたい。また、実習の受け入れ状況についてもお調べいただきたい。

【委員】

 先程、上級学芸員は博物館活動全般にわたる高い資質と専門分野における専門性の両方の要素があるという話でしたが、そこをもう少し整理できないか。

【委員】

 その人のキャリアパスとかスキルアップというところで考えればいいのではないか。

【委員】

 職場でも評価され、対外的にも保証されるのがよい。

【委員】

 次に博物館を支える多様な人材について、御意見いただきたい。学芸員の資格を有していても博物館で働いていない人材を生涯学習社会の中で生かしていく方策について考えるべきかどうか。

【委員】

 実習を博物館も学生もお互いにきちんとやった場合は、例えば、ボランティアとして戻ってきて博物館を支えてくれるので、そういう道は残しておいた方がいい。団塊世代の対策なども考えられるし、大学のカリキュラムを充実する必要はあると思うが、博物館の周辺の人材を減らさないような工夫は必要。

【委員】

 5年ほどの期間をくぎってボランティア制度を動かしてみて、その中でできることとできないことを見極めて、次のステップを進んではどうか

【委員】

 ボランティアとの壁を作っているのは博物館の方、博物館にかかわってくれる人は自ら通信講座で資格を取得したりしている。学芸員制度とセットで考える必要がある。

(2)骨子たたき台について、事務局から説明した後、検討を行った。

【委員】

 資料を持っていないのに、資料を一過性で見せるだけでは博物館と言えないのではないか。また、展示だけをやっている学芸員は学芸員とは言えないのではないか。

【委員】

 資料の保管・収集、調査研究、教育普及の要素は持ちつつ、その力の入れ具合が異なっていてもよいと思われる。
 博物館の定義、あるいは博物館法が何をするかというのは、もう一度考え直す必要があるかもしれない。
 次に別紙になっている「検討のためのたたき台」について御意見いただきたい。

【委員】

 地方の財政状況については、簡単に推定できるわけではないが、この状況は変わらないような気がする。特に地方公共団体の博物館運営については、民間の資金を導入するなど、いろいろな方法を考えるにあたって、本来の趣旨を実現する方策を運営の問題で考えていくべき。

【委員】

 あるべき論と現在の乖離は悩ましい問題だが、基本に立ち返った論議が必要。また、無料化の話も同様で、現状で有料化している博物館が多いからそれにならうということではないので、ここは次回も引き続き検討したい。

【委員】

 博物館が誰のためにあるのか、市民にとってどうなのか、学芸員にとってどうなのかという判断基準はかなり重いものである。、それらを踏まえながら博物館の定義についてもう一度考えてみたい。また、博物館のサポーター的なものをどうするのか考える必要がある。

以上

(生涯学習政策局社会教育課)