これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第4回)議事録

1.日時

平成18年12月13日(水曜日)17時〜19時

2.場所

三菱ビル地下M1会議室

3.出席者

(委員)

佐々木秀彦、鷹野光行、高安礼士、中川志郎(主査)、名児耶明、水嶋英治

(事務局)

中田大臣官房審議官、平林社会教育課長、行松地域学習活動推進室長、宮田社会教育課長補佐 ほか 関係官

4.議事内容

(1)登録制度改善のための法改正の内容について

 事務局より資料2、3、4、5、6について説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。

【委員】

 先日、長崎で行われた博物館大会における登録制度の在り方の議論では、館種、設置者を超えて公益性を証明する仕組みは必要であるが、博物館の多様性を奪うものであってはいけないという意見の一致が得られた。また、今後の在り方を考えた時、利用者にとっても安心を与えるマル適マークのようなものになれば、博物館の発展にもつながる。
 どのような基準にすべきかという点については、館種や設置者を問わずに、博物館としてやらなければならない基礎的な部分を必要最低基準として考えてはどうか。

【委員】

 登録制度のメリットをもう少し検討した方がよい。基準については、どのような活動が保障されるかということも、一つの基準として設けていいのではないか。
 また、審査主体は、第三者機関がいいと考えるが、具体的にどこがいいのかは分からない。

【委員】

 登録制度は課題があるから撤廃するのではなく、改善、改良して良い制度にしていくのが現実的だと思われる。
 登録制度の在り方については、自主的な制度が望ましいかもしれないが、日本人の国民性からして、国が示した基準に沿うべきであると考える。また、審査機関については、第三者機関が現実的であり、その際、国が第三者機関をチェックできる制度設計が必要である。
 向こう10年先の博物館の将来像を示す意味では、ハイヤースタンダードを政策として打ち出せば、質が高くなっていくと考えられるが、そのためには、更新制を取り入れるとか基準の見直しを行うとか時代に合わせた見直しを行っていくことが必要である。

【委員】

 博物館の概念が多様化しているので、それを幅広く拾えるような登録制度でなければならない。また、他の委員の発言にもあったように、質の向上といった登録制度の新しいビジョンを示すことが必要である。
 海外と比較した場合、資料中心の博物館は英国よりの基準になり、プラネタリウムや科学系博物館など多様な形態を扱うのであれば、アメリカの基準に近くなると考えられる。

【委員】

 登録制度については、博物館とは何をするところで、我々にとってどういう必要性があるのかという一番の基本を示して、それを基準に考えるということではないかと思われる。
 博物館がどう発展するかは、館の持つ多様性によって異なるので、あまり高いレベルで締め付けない方がよい。ただ、日本の美術館や博物館が理想とするところは検討する必要があるので、登録の中でも幾つかの段階に分けて、ステップアップできるような仕組みも考えてはどうか。

【委員】

 各委員のご意見を総合すると、これまでになかった指摘が得られた。それは、博物館の持っている共通性と博物館の今後のビジョンが基準の中である程度考えられることが重要だということである。
 その他、2つの重要な御指摘があった。一つは登録基準とは世の中の変化に応じて更新されるべきであるということ。二つ目は博物館の多様性という中で、博物館とは何かということをもう一度考え直す必要があるということである。これらを踏まえ、どのような基準にしていくかを具体的に議論していきたい。

【委員】

 確かに基準は変わっていいところもあると思うが、変えないという判断でいくのであれば、ミニマムスタンダードになるし、時代の変化で変わっていくのだとすれば、達成目標を掲げた基準となるのではないか。

【委員】

 資料6のような、かなり高い基準を先に求めると現場が混乱するので、家で言うと2階建てのような形をとって、2階に上がるためにはハイヤーなスタンダードに根ざしてやってくださいというようなことではないかと思う。従って、ミニマムかハイヤーかということではなく、2階建て方式が現実的ではないかと考える。

【委員】

 ミニマムスタンダードでもハイヤースタンダードでも骨格というのは大事である。その際、骨格となるのが、コレクション、教育、経営の3つであると考える。コレクションとは、博物館が永遠に続かないものだとしても、コレクションは続いていくという考え方で保存すべきもの。教育とは、展示、教育普及、サービスを含むもの。経営とは日本の博物館に今まで欠けていたもので、設置者の責任も含めて考えることである。

【委員】

 ICOMの定義では、スタディー、エデュケーション、エンジョイメントとしていることも考慮すると、ここで3本の骨格を立てるのであれば、慎重に議論したい。

【委員】

 マネジメントはもちろん大事であり否定はしないが、ここ20年くらいはエデュケーションや教育普及といったアウトプットばかり求められ、資料収集費がゼロで手持ちのこまがないのにアウトプットばかりやってきたのは間違いではないかと思う。

【委員】

 今後登録制度をつくっていく上で、骨格は必要になってくる。

【委員】

 ICOMには経営とかマネジメントは入っていないけれども、これはきちんと運営されているという前提に立っている。しかし、日本の場合は経営の仕方が違うのが問題になっているので、どのように経営・マネジメントしているかという視点は、あったほうがいいと思う。

【委員】

 ICOMが3つのベースポイントを持っているのと同じように当会議でも、登録制度を存続させるためには骨格を確立しておくことで考えていきたい。
 今、出ているのはICOMの3つの視点、日本博物館協会の「博物館の望ましい姿」の3つの視点である。アメリカのエクセレンス・アンド・エクイティーも含めて日本の博物館全体に適用するための基本的な骨格を提案していきたい。
 マネジメントについてはどう考えるか。

【委員】

 人それぞれ捉え方が違うので、マネジメントとは何かと言い切れないが、設置者、館長、副館長以下の現場の学芸員の責任を明確にすることであると考える。

【委員】

 今後、骨格をまず決めるという方向で検討を重ねていきたい。
 次に、今後新たな基準ができたとして、その基準をもとにして、認定する機関はどういうところが望ましいかということについてご意見いただきたい。

【委員】

 第三者機関による審査が望ましい。その際、母体を一つ作り、美術館・博物館の人材を活用して、審査側の人間が固定化しないように更新制を導入する。また、公平性を保つために、国が第三者機関をチェックすることが必要。

【委員】

 それでは、日本博物館協会のようなところが、審査委員会を立ち上げるようなイメージになるのか。

【委員】

 そのとおり。

【委員】

 国の関与とはどういうことか。

【委員】

 美術館や博物館の人材を活用する際に国の大義名分があった方がやりやすい。

【委員】

 立ち上げ当初の体制をどう整えるかも検討する必要がある。

【委員】

 第三者機関でいいと思われるが、学位授与評価機構のような国の組織をかりるというのも一つの手ではないか。

【委員】

 今の都道府県の運用状況を見ると、第三者機関が必要で、その第三者機関の認定や支援については、国や地方公共団体が監視を含めて行うという仕組みがいいのではないか。第三者機関については、各協会いろいろあり、専門家もいるので、一種のコンソーシアムのような形で運用していくというのが妥当である。

(2)その他

 事務局より今後の報告書作成の議論に備え、これまでの議論の流れを確認した。
 それに対する各委員からの主な意見については以下のとおり。

【委員】

 ただ今、事務局から御説明があったとおり、今後はたたき台原案を基に本質論に入って、最終的には仕上げていくという形をとりたい。

【委員】

 大学の学芸員養成の課程の担当の方は今回の制度改正について肯定的な反応を示している。ただ、学芸員補という名前をそのまま使うのはやめてほしいという意見はある。

【委員】

 資格はあるけれども博物館活動に全く参画できていないという人々が増えていくのがいいのかという問題もある。過去に当時の文部省が一つのサジェスチョンを出している。それは、資格を持った人達を博物館で活用しようという前向きな検討であった。

【事務局】

 平成8年生涯学習審議会の社会教育分科会の報告に基づき、学芸員有資格者データベース、人材バンクについて説明。

【委員】

 今後、学芸員制度という、登録制度も含めて、コンマ以下の人達と同様、マジョリティーになっている人達のことも一緒に議論した方がいいと思われる。

【委員】

 人材の活用について言えば、学校の郷土資料室、学校博物館の調査結果から、熱心な先生がいなくなると施設が機能しなくなってしまうという現状が明らかになった。そこで、学芸員の資格を持った地域の人達を活用できるのではないかと考えているところである。

【委員】

 他にご意見がないようなので、本日はこれで閉会とする。

以上

(生涯学習政策局社会教育課)