これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第3回)議事録

1.日時

平成18年11月21日(火曜日)15時〜17時

2.場所

三菱ビル地下M6会議室

3.出席者

(委員)

佐々木秀彦、鷹野光行、高安礼士、中川志郎(主査)、名児耶明

(事務局)

中田大臣官房審議官、平林社会教育課長、行松地域学習活動推進室長、関根美術学芸課美術館・歴史博物館室長、一山美術館・歴史博物館室長補佐 ほか 関係官

4.議事内容

(1)学芸員資格制度の見直しに関する法改正の内容について

 事務局より資料2、3、4について説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。

  •  学芸員が何をすべきかということと、それをどうやったら身につけられるかということが整理されないと、今のままでは即戦力にはならないという結論しかでないのではないか。
  •  「3(2)」の利用者から見た場合、1は利用者を学習者とみなし、2は研究者、3は連携者とか共同者とみなすことができる。つまり、これらの役割を果たすのが学芸員となるのではないか。そのほかにも博物館マネジメントの世界では顧客という言葉を使うこともある。
  •  「2の改善の方向性」について言えば、学芸員は少数で対応しているため、研修に参加できないなど、専門職と位置付けられていないことが博物館法の問題である。
  •  利用者の知的要求は高くなっており、それをエンカレッジできないと学芸員の存在価値がなくなる。そのためには自らの能力をスキルアップする必要がある。また、資格の設計でいうと他の専門職の資格は階層性になっている。
  •  制度について考えることは必要だが、学芸員が何であるかをはっきりさせる必要がある。また、現行制度の成り立ちを考えてみると利用者の需要に対応できる必要があり、そのニーズとは「2(2)1から3」のとおりである。
  •  「3(3)2」の専門分野の研究者としての方向性を持つ必要があるとすれば修士レベルが必要。3については、学部のレベルなのか、大学院のレベルなのか、今は判断できない。
  •  英国に調査に行った際に実務経験のない者に資格を与えてはいなかった。実務経験がない人に学芸員の資格を与えるのがいいのかどうか。大学で付与するのであれば、学部卒では学芸員補で十分である。
  •  修士、博士をとっていても経験がなければ通用しない。また、専門性が何を指しているのかが問題。大学における専門性とは、学問や研究分野であって展示や教育普及につながる専門性ではない。
  •  先程、「顧客」という視点を提示していただいた。顧客から見た場合、専門家として認められても、自分たちにどのようなサービスをしてくれるかによって、学芸員に求めるものが変わってくる。
  •  学芸員という言葉には3つの意味が込められている。「学」は資料の保存や研究、「芸」はコミュニケーション、「員」は組織の一員であり、館内外で人と関わったり、マネジメントするということ。
  •  今回の議論はフレームワークを変えるということでもあるが、法を改正するという目的で議論している。
     現在のフレームワークで考えた時、1学芸員の資格を付与するための教育制度が時代にあっているのかどうか。2英国でも米国でも実務経験を重んじているが、これをどのように考えるか。実習とインターンは違うが資格取得、養成のプロセスの中でどう扱うかを考える必要がある。
  •  百何十という大学が学芸員を養成している中で、学芸員が学芸員補になることの不安が先に立つ。大学においては学芸員という資格に対するあこがれであると共に、大学にとっては出しやすい資格になっている。
  •  学芸員資格が誰のものであるかということになる。学芸員の質を高めて供給するのが、筋ではないか。
  •  この会議ではあるべき論という立場、(案の2)で打ち出して、実際には(案の1)に近づいていくのではないか。
  •  現場のトレーニングが必要との意見については、(案の1)でトレーニングを取り入れれば、(案の2)になれるのではないか。
  •  館の事情はそれぞれ違うので、一つのところで実務経験を積んでも新たなところに行けば一から学びなおす必要がある。学芸員の有資格者であっても博物館で働かなければ、学芸員ではない。
  •  大学などは資格を出すことで利益を得ている。ソフトランディングできる方法とドラスティックに新しく構築する方法がある。
  •  建築士のように大学で必要な単位を取得して、実務経験を積むことを学芸員の資格を取得するための要件としてもいいのではないか。

(2)登録制度改善のための法改正の内容

 事務局より資料5、6、7について説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。

  •  登録博物館については、日本博物館協会の会員1,200館のうち、2割が登録博物館である。日本は海外に比べて登録博物館の数が多く、ここ10年くらいの傾向を見ていると、市民に密着しているのは類似博物館ではないかという話もある。海外では小さな博物館を機能させる部局もあると聞く。
  •  博物館は多様性が広がってきたなかで、公益性があることを証明しなければならない。必要最低限の公益性は満たしているという基準は必要
  •  メリットがどうかという議論ではないと思う。
     認定は「まる適マーク」のようなもの。施設・整備だけでいくのか、内容も含めるのかが問題。
  •  利用者からみた場合、博物館であれば何らかの基準を満たしているものとみなされる。多くの博物館が参加できなければ意味がないので、最低基準を示した方が良い。
  •  2割程度しか登録がないのは問題がある。活動も必要ではないかという意見もあったが、歴史的に古い資料を扱っている館ではその資料を保管するだけでも大変であるということは御理解いただきたい。底辺を広げてそこにも入らないものはあると思うが、底辺を広げていくことは大事
  •  恐らく、登録というのは「まる適マーク」のような意味を持つと思われる。ただ、メリットがないというのは税制上の話であるが、博物館のメルクマークとしての意味もあると思われる。
  •  現場ではお客さんにたくさん来て欲しいという市場原理主義になりかねないので、公益性は確保すべき。
  •  都道府県の調査結果について立場によってその意見は異なってくる。どの視点で博物館を考えるかが大事。
  •  博物館の登録制度と学芸員の問題は裏腹である。事務局でまとめで、次回会議において再度、検討することとしたい。

以上

(生涯学習政策局社会教育課)