これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議(第2回)議事録

1.日時

平成18年11月1日(水曜日)17時〜19時

2.場所

三菱ビル地下M1会議室

3.出席者

(委員)

佐々木秀彦、鷹野光行、高安礼士、中川志郎(主査)、名児耶明、水嶋英治

(事務局)

行松地域学習活動推進室長、関根美術学芸課美術館・歴史博物館室長、一山美術館・歴史博物館室長補佐 ほか関係官

4.議事内容

(1)「博物館法が対象にすべき博物館とは」について

 佐々木委員から提出された資料について、佐々木委員より内容についての説明があった。続いて事務局より資料2〜4について説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。

【委員】

 なぜ、今改訂が必要なのかについては3つのポイントがあると考える。一つ目には、この50年の間に博物館の機能が変化したこと。具体的には資料の収集から資料の活用に重心がシフトしている。二つ目には、博物館の主体の拡大。これは佐々木委員から提出のあった資料にもあるように、地方公共団体だけでなく、官から民へというように、主体も若干幅広く考えることが時代の要請ではないか。
 三つ目には、学校教育重視から生涯学習の時代になっていること。

【委員】

 これは非常に重要なポイントだと思われる。また、博物館とは何かという本質論とICOMやイギリス、米国といった条件の違いによるフレームワークの中で考える博物館とを分けた上で、博物館の本質について、しっかり議論する必要があると考える。

【委員】

 美術館のことで言えば、普段教育をしているという意識はない。活動をしながら、果たして教育にあたるのかどうか迷う時はある。ただ、資料があり、専門家がいて文化を伝えるのが役割だと考えている。

【委員】

 博物館が何であるかと説明すると、博物館法では、博物館一般の定義と法律の中における定義の2つの内容になっている。また、ICOMの定義は広すぎるので抵抗はあるが、我々の身の回りにあるものは何でも資料になるという説明をしていくと、ICOMの定義に近づいていくところはある。
 それから、博物館は教育機関であるが、教育を別の言葉に置き換えることはできないか。教育と言ってしまうと、範囲が狭まってしまう。プラネタリウムなど現象も資料になり得るわけで、実物資料にこだわる必要はないのではないか。

【委員】

 教育というも一方向で伝えるのではなく、双方向で学び合うという意味で、双方向性を示す文言が必要ではないか。また、ICOMでもイギリスの定義でenjoymentという要素が入っており、これも必要なキーワードである。

【委員】

 アメリカの博物館の定義では「コレクションや資料についてのドキュメンテーション」とある。イギリスやヨーロッパでは記録することは当たり前なのでわざわざ書いていないが、日本の場合はアメリカと同様にドキュメンテーションを持つことを法律に定義してはどうか。

【委員】

 やはり、博物館の本質論と法で言う博物館を明らかに区分する必要があると思われる。ICOMの定義でも目的についてはSTUDYEDUCATIONENJOYMENTと単純明快に挙げている。資料についても本質論と法律とを分けて考えていくことでいいのではないか。また、教育に変わる言葉についても、博物館らしいものがあれば、ご提案いただきたい。

【委員】

 教育という言葉は一方的に教えるというニュアンスがあり、学習支援という言葉では博物館が持つ専門性という意味合いが薄く感じられる。

【委員】

 楽しみという部分は大事にしたい。博物館の特徴でもある。

【委員】

 楽しくなければ人は来ない。また博物館における楽しみとは内からくるものであり、アミューズメントで得られる楽しさとは異なる。

【委員】

 伝承も定義に含めてもいいのではないかという意見についてはどうか。

【委員】

 無形文化に関する知識や固定化された記録媒体がストックされていれば可能ではないか。

【委員】

 結局、科学館がどうなるかということ。目に見えない物は対象にしないとなると、科学館は定義から外れてしまう。それでは、理科離れとか今の風潮の中で、科学博物館や科学未来館等が重要視されていることと合わなくなってしまう。

【委員】

 この際、日本の博物館は現象を提示できる博物館であると、一歩踏み出してはどうか。登録制度も資料中心の博物館から機能で評価するという制度に見直してはどうか。

【委員】

 検討材料にしていきたい。

【委員】

 ICOM、イギリス、米国の博物館の定義・目的・内容・範囲を比較して方向性を探ってはどうか。
 事務局より資料3、4について説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。

【委員】

 設置主体については、博物館法の議論の中では常に問題になる。法と実際の間に乖離がある。

【委員】

 ICOMの定義でも営利を目的としないとあるので、株式会社がなじむのかどうか。

【委員】

 株式会社でも公益性があるかどうかで考えてはどうか。

【委員】

 株式会社では社会貢献ではなく、事業として経営しているものもある。

【委員】

 株式会社で相当施設になろうとする理由は何であるか。

【委員】

 博物館は多様性を持ってきているので、現状にあわせることが重要。市民のための博物館を考えるべき。株式会社の問題は登録制度の問題と併せて検討していきたい。

(2)学芸員資格制度の見直しに関する法改正の内容について

 事務局より資料5、6について説明。資料6の案の2について佐々木委員から説明の後、審議を行った。各委員からの主な意見については以下のとおり。

【委員】

 そもそも大学というところが、今、学芸員の資格は出しているけれども、学芸員の養成はしていないという現状である。法律の話ではないが、今の養成カリキュラムの見直しは必要であり特に実習を積ませなければならない。

【委員】

 各委員のご意見も分かるが、大学の養成カリキュラムが統一されていないことや誰が評価なり認定するのかという2つの問題がある。

【委員】

 平成8年に単位数を増やしてるがもう一つ効果が上がらなかったのには理由があるのか。

【委員】

 大学に対して周知が徹底されていなかったのではないかと考えられる。

【委員】

 今、我々が議論しているなかで、問題としているのは博物館そのものの問題と学芸員の問題である。その中で、カリキュラムの問題と上級というときにだれが認定するのかということも問題となってくる。実際に学芸員を採用する際に学芸員の質について感じることはあるか。

【委員】

 有資格者でもあっても学芸員ではないので、即戦力にはならない。大学のカリキュラムで、どの博物館にも対応できる水準の学芸員を養成することはできないのではないか。

【委員】

 大学で資格を出すのがいいのかどうか、名称、カリキュラムはどうか。現場職員の質の向上はどうかということにつながる。本日は、二つの議題について博物館の本質と入口の議論をさせていただいた。次回、さらに深い議論を進めていきたい。

 最後に事務局より次回の会議の日程(日時:11月21日(火曜日)15時〜17時、場所三菱ビル地下M6会議室)について確認した後、散会となった。

以上

(生涯学習政策局社会教育課)