教育行政機関と民間教育事業者との連携の促進について(報告) (教育行政機関と民間教育事業との連携方策に関する調査研究協力者会議)

1998年3月
 

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はじめに

1  生涯学習をめぐる動向と連携の実態
(1)人々の学習需要の多様化

(2)民間教育事業の活発化

(3)教育行政機関と民間教育事業者との連携の実態

2  教育行政機関と民間教育事業者との連携についての考え方
(1)連携の意義
    i)  連携の効果
    ii)  行財政改革と連携

(2)教育行政機関と民間教育事業者の役割分担

(3)民間教育事業者との連携に係る誤解の解消

3  具体的な連携方策
(1)連携の形態
    i)  連絡協議
    ii)  学習情報提供
      ア  パンフレット等による学習情報提供
      イ  コンピュータシステム等を利用した学習情報提供
    iii)  民間(企業)の協力を得た事業
      ア  教育行政機関の実施する講座など学習機会提供事業における民間教育事業者との協力
      イ  教育行政機関の実施する生涯学習フェスティバルなど生涯学習に関する普及活動における協力
    iv)  公立生涯学習施設の運営委託等
      ア  講座等の委託
      イ  第3セクターによる事業実施
      ウ  民間教育事業者への公民館の貸出
    v)  その他

(2)連携のための手順・方法等
    i)  教育行政機関の職員の意識改革
    ii)  民間教育事業者との連携窓口の設定
    iii)  情報の収集
    iv)  連携の企画の提案
    v)  連携事業の実施と反省

4  関係者への期待
(1)国へ
    i)  全国の教育行政機関への呼びかけ
    ii)  連携に関する事例集の作成・配布
    iii)  全国レベルでの連携の一層の推進
    iv)  生涯学習を振興する特定地域構想の推進

(2)全国の教育行政機関へ
    i)  民間教育事業者との積極的な連携
    ii)  民間を含めた広域学習サービスの充実
    iii)  連携のコーディネーターとしての役割の重視

(3)幅広い民間教育事業者へ
    i)  民間教育事業者としての自覚
    ii)  連携への積極的な取組
    iii)  事業者団体の結成等


<参考>
○報告の概要(文末に掲載)
○報告の要旨(別掲)




はじめに

  生涯学習行政のキーワードは,「連携」,「情報」,「企画」であると言われる。特に,各地域において生涯学習推進の中核となるべき教育委員会等の教育行政機関にとって様々な民間教育事業者との「連携」は,生涯学習に関する「情報」を幅広く収集・提供し,住民のニーズに応える優れた施策・事業を「企画」していくために不可欠なものとなってきている。
  一方,教育行政機関と民間教育事業者のそれぞれが,お互いの事業や特色についての「情報」を持ち,双方が進んで協力し合える優れた「企画」を立てることなしには,本当の意味での「連携」は成立しない。

  教育行政機関と民間教育事業者との連携については,生涯学習体系への移行を提言した臨時教育審議会の4次にわたる答申以来,中央教育審議会や生涯学習審議会の答申等においても,その必要性が重ねて指摘されてきた。
  実際にも,先進的な地域では,既にそれぞれの特色に応じ,工夫を凝らした連携・協力の実践が進み,大きな成果をあげつつある。しかしながら,生涯学習・社会教育行政担当者が民間教育事業者との連携・協力を進める方法や手順について不慣れであったり,理解が不足していたりということもあって,連携が進まない地域もまたかなり多い。
  今後,住民の多様なニーズに応え得る学習環境を整備するためには,教育行政機関と民間教育事業者との連携を一層密接なものとしていく必要がある。

  本調査研究協力者会議は,このような現状認識の下,今後,教育行政機関と民間教育事業者との相互の連携をより積極的に進めていくため,その連携の在り方及び具体的な連携方策について調査研究することを目的とし,平成8年7月に発足した。
  会議では,教育行政機関と民間教育事業者との連携に係る実態調査に加え関係教育行政機関からのヒアリングも実施しながら,教育行政機関と民間教育事業者との連携の必要性と連携を進める際の具体的な手順,方法等について合計10回の審議を重ね,ここに報告をとりまとめた。

(注1)教育行政機関
  この調査研究報告書において,「教育行政機関」とは,
i)  都道府県及び市町村の教育委員会
ii)  都道府県及び市町村で教育委員会以外の生涯学習担当部局
iii)  生涯学習センター,公民館等それらの設置する施設
  を指している。

(注2)民間教育事業者
  従来,「民間教育事業者」とは,
i)  住民を対象とする学級・講座等を開講するカルチャーセンター,外国語学校,スイミングクラブ,フィットネスクラブや社会通信教育事業者等,教育事業を主たる目的とする事業者の意味で用いられる場合が多かった。
  しかし,この調査研究報告書においては,i)を中心としつつも,
ii)  茶道,華道やピアノなどを教授する個人事業者
iii)  書店,楽器店,CDショップ,スポーツ用品店等の教育・文化・スポーツ等学習活動に関連する業務を主たる目的としている事業者
さらに,
iv)  地域貢献,企業のイメージアップ,その他の理由により,その事業者の主たる業務ではないが,教育・文化・スポーツ等学習に関連する事業・イベント等の取組を行う全ての事業者までを含む幅広いものを対象としている。
  これは,今後の生涯学習の振興において,これらの幅広い事業者との連携が有益かつ必要であると考えるからである。


1  生涯学習をめぐる動向と連携の実態

(1)人々の学習需要の多様化
  総理府の「生涯学習に関する世論調査」(平成4年)によれば,
i)  過去1年程度の間に学習を実施した成人の比率は,昭和63年9月の40.1%から平成4年2月には47.6%と,着実に増加している。
ii)  今後学習してみたい学習内容としては,「趣味的なもの」(58.2%),「健康・スポーツ」(53.7%),「家庭生活に役立つ技能」(22.5%),「教養的なもの」(21.2%),「職業上必要な知識・技能」(19.6%)など,人々の学習需要は多様となっている。
iii)  生涯学習の方法としては,「地域のサークル・グループ活動」(51.5%),「公民館の講座・教室」(33.2%),「本等により自分一人で」(26.1%),「カルチャーセンターなど民間の講座や教室」(21.4%),「職場の研修会等」(16.6%),「先生について学ぶ」(12.1%)など,個人・グループで行うもの,公的な教育行政機関の提供するものに加えて,カルチャーセンターや個人事業者等民間教育事業者による学習の機会を望んでいる者もかなりの割合にのぼっている。

(2)民間教育事業の活発化
  近年,都市部を中心に,民間による教育・文化・スポーツ事業が盛んになってきており,カルチャーセンターや社会通信教育事業者は,民間の柔軟な発想による多様で創意にあふれる学習の機会を提供している。
  平成8年度社会教育調査によれば,カルチャーセンターにおける学級・講座の実施件数及び受講者数は,平成元年度の5万5千件(137万5千人)から,平成7年度には8万6千件(155万9千人)と大きく増加している。
  また,社会通信教育についても,(社)日本通信教育振興協会の加盟団体が開講している講座数は,平成元年の537講座から平成9年には999講座と増加してきている。
  このほか,茶道,華道の教授やピアノの指導などの個人事業者や,書店,楽器店,CDショップ,スポーツ用品店,さらには,地域貢献等の観点から学習に関連する様々な事業を行う企業等まで含めれば,地域による程度の違いはあるものの,民間教育事業者は住民の多様な生涯学習活動を支える上で極めて大きな役割を果たしている。

(3)教育行政機関と民間教育事業者との連携の実態
  教育行政機関と民間教育事業との連携に係る実態調査の結果によれば,「都道府県の生涯学習審議会の答申や生涯学習振興計画等に,民間教育事業者と連携・協力することを明記している」都道府県は9割を超えるが,「生涯学習フェスティバル等の普及・啓発事業等における連携を実施している」都道府県や,「学習情報提供,学習相談活動において民間教育事業に係る情報提供を行っている」都道府県は半数に満たない。
  また,平成8年度社会教育調査によれば,教育委員会及び公民館が実施した学級・講座のうち民間教育事業者に業務委託して実施した件数の学級・講座総数に占める割合は,いずれも1%にも満たない。
  これらから,民間教育事業者との連携の必要性についてはほとんどの教育行政機関が認識しているものの,日常的・具体的な連携はまだまだ不十分であり,特に業務委託等については,先進的な事例が見られる程度であることがわかる。


2  教育行政機関と民間教育事業者との連携についての考え方

(1)連携の意義
i)  連携の効果
  一般に,異質な者同士の連携は,同質な者同士のそれよりもお互いの考え方等を理解することなどの点で困難が伴うが,その分,連携が成功した際の効果は大きいと言われる。
  教育行政機関と民間教育事業者とは正に異質な存在であり,それぞれ互いに相手方にはない特色を有している。したがって,両者が有する施設・設備,人材,情報,ノウハウ等の特色を生かし,補い合いながら組み合わせていくことにより,1足す1が2ではなく,3以上の効果を得ることができる。
  実際,実態調査及び本調査研究協力者会議のヒアリングにおいても,連携事業を実施している都道府県等は,民間教育事業者と連携することにより,
○互いに情報交換を行うことにより,多角的な住民の学習ニーズの把握等ができ,優れた事業の企画に役立つ。
○事業内容が充実し,住民の多様な学習ニーズに応えることができる。
○様々な広報媒体を利用して,広く住民に事業を周知できる。
○行政と民間教育事業者の学習情報を体系的・総合的に収集整理することにより,住民に提供しうる学習情報が豊富になる。
などの多くの効果があることを指摘している。
  なお,これらの連携の効果は,学習者の立場から,学習環境がどれだけ整備されたかという尺度で判定していくことが重要である。

ii)  行財政改革と連携
  近年,行財政改革が推進される中で,行政をスリム化し,「自己責任」を原則とする社会へと変革していくことが求められている。
  これまで,行政,とりわけ社会教育行政は,ともすれば行政主導の意識が強いために,住民に対するサービスを全て行政で行おうとしがちであった。しかし,ますます増大・多様化する住民の学習ニーズの全てに行政のみで応えていくことは到底不可能であるし,また,税金の使い方としても適当ではないと考えられる。
  本当に重要なのは,行政が提供する事業量の確保ではなく,民間教育事業者を含めた学習環境全体の中で,住民の生涯学習を支援するサービスを向上させ,住民の満足度を上げていくことである。
  そのためには,教育行政機関は,まず行政のみが住民サービスを行うといった考え方を改め,様々な生涯学習関係機関のコーディネーターとして,民間教育事業者等との連携を進めていくことこそが生涯学習行政の中心的な役割であることを理解していく必要がある。
  いずれにせよ,行財政改革の中,今までと同じやり方を続けていくのみでは,サービスの向上はおろかその維持すらできないのは明らかである。このような厳しい時代だからこそ,教育行政機関は絶えず民間教育事業者との連携その他の工夫を積極的に模索していく必要がある。

(2)教育行政機関と民間教育事業者の役割分担
  教育行政機関と民間教育事業者の連携を進める前提として,両者の役割を明確にすべきであるとの指摘がある。確かに,両者が同じような内容の教室,講座を行っている例も見られ,教育行政機関の講座は無料又は低廉な場合が多いので,一部では民業の圧迫であるという批判も受けている。
  各地域における住民のニーズや民間教育事業者の実態が異なるため,教育行政機関と民間教育事業者との役割分担を全国一律に明確化することは困難であるが,それぞれの教育行政機関においては,地域の実情を踏まえて,生涯学習を振興するための行政の役割,民間の役割,住民(学習者)の役割を明確にしていく必要がある。
  具体的には,教室,講座の実施等の学習機会の提供については,国,地方ともに行財政改革が大きな課題となっていることをも踏まえれば,「民間でできるものは民間に委ねる」ということが原則となろう。
  教育行政機関自らが企画・運営する学習機会は,学習の内容や対象等に照らして,政策上必要性が高いにもかかわらず,採算性等の面から民間での実施が期待できないようなものに重点をおいていくべきである。例えば,人権問題や環境問題,男女共同参画社会の形成など社会的な観点からも広く学習活動を促していく必要のある現代的課題をテーマにする学習機会や,障害者等特別な配慮が必要な者を対象とする学習機会は,民間に委ねているのみでは十分に提供されないことも考えられる。このような場合には,必要とされる学習機会については,行政が自ら企画・運営していく必要があろう。
  また,住民の側も,教室・講座の受講者という受け身の立場のみでなく,学習団体・グループを組織し,自主的・積極的な学習活動を進めることが望まれる。これらの活動が円滑・適切に実施されるよう助言等を行うことは,教育行政機関の重要な役割として期待される。
  なお,民間教育事業者が単独では実施できない場合にも,公立生涯学習施設の運営委託等に見られるように,行政が民間教育事業者と連携し,その活力を導入することにより,効果的・効率的に事業を実施できる場合もある。
  いずれにしても,具体の学習機会に関して,教育行政機関の提供に適するか,民間教育事業者の提供に適するか,業務委託等の官民連携による提供に適するか,また,行政が関与する場合には,その受講料をどのような水準に設定するか等については,各地方公共団体における個別の判断である。また,その判断は,民間教育事業者によって提供される学習機会の内容・量等を含め,その地域の実情に応じ,住民の意向を十分に踏まえたものとしていかなければならない。
  そのためにも,各地方公共団体においては,教育行政機関と民間教育事業者との情報交換会等を定期的に行い,学習機会提供における相互の役割分担についても意見交換することが重要である。また,行政の実施する施策の範囲等についての考え方を公表し,住民の意見を聴くなど住民の政策形成過程への参画に努めていくことが望まれる。
  なお,住民に対する学習情報提供や学習相談活動は,個々の学習機会の提供とは異なり,ある程度体系的・総合的に行う必要があることから,民間教育事業者の実施する教室・講座等を含めて,教育行政機関が中心となって,民間教育事業者と連携・協力しつつ行うことが適当である。

(3)民間教育事業者との連携に係る誤解の解消
  実態調査において,都道府県等に対し,民間教育事業者と連携を行っていない理由や連携する場合の問題点を聴取したところ,「営利事業の支援につながる」(都道府県の36.2%,市の38.1%),「特定の民間教育事業者を援助することになる」(都道府県の40.4%,市の38.2%)といった点があげられた。
  しかしながら,民間教育事業者が多様な生涯学習活動を支える上で極めて大きな役割を果たしている現在,住民の生涯学習の振興と民間教育事業の発展とはいわば表裏一体のものとなっている。住民の学習環境の向上につながる民間教育事業(=営利事業)の発展は,生涯学習の振興の観点からも望ましいことである。
  したがって,民間教育事業者との連携が結果的に民間教育事業者に一定のメリットを与えることとなっても,それが住民の生涯学習の振興に寄与するものであれば,問題はない。
  なお,特定の事業者のみを特別に優遇することは,行政の在り方として許されないことであり,連携事業の実施に当たっては,公平・適切な手続き等を定めるとともに,必要に応じそれらの情報を公開する等の方法により,行政の信頼を確保することが重要である。
  したがって,「住民の生涯学習の振興にとって有益であること」,「公平・適切な手続き等を経ていること」,の2つの条件さえ満たしているのであれば,教育行政機関は,民間教育事業者との連携を積極的に進めるべきである。
  以上のとおり,これらの問題点はいずれも連携を行うに当たっての行政側の努力と工夫により解消していくべきものであり,これが原因で連携ができないというのはいわば教育行政機関側の誤解である。したがって,これを理由に連携それ自体に対して消極的な姿勢をとることは適切ではない。

  なお,これに関連して,社会教育と民間営利事業との関係についての誤解を解いておきたい。
  社会教育法では,社会教育の実施主体について何ら制限はしていない。したがって,「社会教育」には民間の法人や企業が実施する教育活動も含まれているものであるが,一部に「営利を目的としているものは社会教育ではない。」と主張する意見もある。
  また,社会教育法第23条第1項第1号で,公民館が行ってはならないこととして「もっぱら営利を目的として事業を行い,特定の営利事業に公民館の名称を利用させその他営利事業を援助すること」が規定されていることから,民間教育事業者と関係を有すること自体が法律で禁止されていると理解されている場合もあるようである。
  教育関係者等のこれらの誤解を解くため,文部省は,平成7年9月,生涯学習局長通知「社会教育法における民間営利社会教育事業者に関する解釈について」において,広島県教育委員会教育長からの照会に答えることにより,
  ア  社会教育法第2条の「社会教育」には,民間の事業者の行う組織的な教育活動も含まれること。
  イ  社会教育法第23条第1項第1号で公民館が禁止されている「営利事業を援助すること」については,「特定の営利事業者に対し,公民館の使用について特に便宜を図り,もって当該事業者に利益を与え,その営業を助けること」であるという解釈を示している。
  この「営利事業を援助すること」について更に具体的に述べれば,特定の事業者に対し,公民館の使用回数,使用時間,事業者の選定等に関する優遇,一般に比して社会通念上極めて安い使用料の設定等事業者に対し特に便宜を図り,もって当該事業者に利益を与え,その営業を助けるようなことである。
  つまり,社会教育法の解釈からしても,このような特定事業者に便宜を図るような場合を除き,民間教育事業者への公民館施設の使用許可は可能である。


3  具体的な連携方策

  教育行政機関の関係者から,「連携したいと思うが,具体的なやり方がよくわからない」という話を聞くことがある。ここでは,今後の連携のための参考となるよう,具体的な連携の形態を示すとともに,連携のための手順や民間教育事業者への働きかけの方法等について述べることとする。

(1)連携の形態
i)  連絡協議
  都道府県の生涯学習審議会等の組織に民間教育事業関係者が参加する事例は増加してきており,自治体の作成する生涯学習推進プラン等に民間教育事業者との連携の推進等を盛り込む例も多くなっている。
  さらに,実務レベルにおいて相互の理解を促進していくためには,各地域において教育行政機関の職員と民間教育事業関係者等とによる「連絡協議会」を設けて,定期的に協議や情報交換を行っていくことが必要である。
  また,教育行政機関と民間教育事業者の職員の資質の向上を図るとともに,相互の密接な交流を進めるため,両者の生涯学習関係事業の担当者の合同研修を行うことなども考えられる。
  その際,連絡協議等を,以下に述べるような具体的な連携事業へと結びつけていくためにも,お互いに相手方への要望・意見等を率直に述べ,活発な討論が行われるよう運営方法を工夫していくことが望まれる。

【事例】東京における生涯学習関連機関の交流集会
・東京都及び市区町村の生涯学習行政・施設の担当者,カルチャーセンター等の民間教育事業者の関係者,大学・専修学校・各種学校の生涯学習担当者等の参加を得て,年に1回交流集会を実施。
・主催は関係者により構成される「生涯学習関連機関交流連絡会」であり,世話人会を設けて運営している。
・内容は,講演と3つの分科会,懇親会であり,率直な意見交換等が行われている。

ii)  学習情報提供
ア  パンフレット等による学習情報提供
  施設,指導者,学習機会等の学習情報の提供は,生涯学習センター等教育行政機関の主たる役割として期待されているところである。
  現在,営利的活動に資するという理由から,生涯学習センター,公民館等の情報コーナーに民間教育事業者のパンフレット等を置かない取扱いをしている教育行政機関もある。しかし,住民は官民の区別なく幅広い学習情報を求めているところであり,このような住民のニーズに応えていくためには,民間教育事業者の情報も積極的かつ幅広く公平に収集し,学習希望者からの求めに応じて提供できるようにしていく必要がある。
  また,住民の生活圏の拡大等の状況を踏まえ,近隣の市町村の情報についても,収集・提供していくことが望まれる。

【事例】大阪府立文化情報センター
・大阪市北区中之島の民間オフィスビルの中に開設したセンターであり,財団法人大阪府文化振興財団が管理運営を受託している。
・センターでは,情報誌等の民間情報を積極的に受け入れ,府民に提供しており,提供した学習情報の約60%が民間情報である。

青森県民間教育事業者協会「学遊トピアあおもり」
・15のカルチャーセンター等により構成される青森県民間教育事業者協会が,生涯学習ガイドブック「学遊トピアあおもり」を作成し,販売している。
・ガイドブックは,あおもり県民カレッジに参加している事業を全て掲載しており,民間教育事業者により提供される教室・講座のみでなく,教育委員会・公民館の講座も含まれている。

岐阜県川島町情報誌「こころのプロムナードL&I」
・川島町ほんの家(町立図書館)にて情報誌「こころのプロムナードL&I」(月刊)を発行し,登録者に年500円で頒布。
・内容は,近隣の市町村の公,私立美術館,博物館の展示情報,市民会館のコンサート情報等を,新聞切り抜きやポスター等から収集。

イ  コンピュータシステム等を利用した学習情報提供
  幅広く多様な学習情報を迅速・的確に提供するため,都道府県と市町村等が連携・協力し,コンピュータ等を利用した学習情報提供システムの開発・運用が進められている。
  この中で,民間教育事業者の情報については,i)行政の開発・運用するシステムの中に営利性を持つ民間教育事業者の情報を含めて提供することが不適当である,ii)民間教育事業者の情報に関して問題が生じた場合に行政が責任を問われるのではないか,といった懸念に加えて,iii)システム管理者である教育行政機関自らが多量で広範な民間教育事業者の情報を一元的に収集・整理しデータベースに入力することは困難であるという問題点もあり,実際に民間教育事業者の情報を取り入れている例は少ない。
  しかしながら,これらのコンピュータシステム等の整備の目的は学習者の自主的な学習活動を支援することである。学習者は公共・民間を問わず幅広い学習情報を求めていることから,これらのシステムの開発・運用に当たっては,民間教育事業者の情報も含めて取り扱っていくことが望ましい。
  また,提供した情報に関する責任の所在については,情報提供の際に必ず画面に明記する等,利用者に明らかにしておくことが重要である。
  さらに,今後は,民間教育事業者等が自ら行う情報提供との連携や,民間教育事業者の端末機から直接情報を入力・更新できるような仕組みを設けるなど,運用上の工夫を行うことにより,最新の民間情報がコンピュータシステムにより提供できるようにしていくことが望まれる。

【事例】神奈川県生涯学習情報システム「PLANETかながわ」
・神奈川県生涯学習情報センターが運営しているシステムであり,民間の大学・短期大学,専修学校・各種学校,カルチャーセンターの教室・講座の情報も収集しており,インターネットを通じて検索することができる。
・情報収集については発生源入力を原則としており,カルチャーセンター等の情報については,各事業者からインターネットを通じて直接オンライン入力が可能な他,フロッピーでの提供も受けている。

iii)  民間(企業)の協力を得た事業
  教育行政機関が行う学習機会の提供や生涯学習に関する啓発・普及事業において,民間教育事業者と連携して事業を行うことは,住民に提供する学習機会を充実させ,多様な学習需要に応えるために有効な手段である。
  この連携の形態としては,例えば次のようなものがある。

ア  教育行政機関の実施する講座など学習機会提供事業における民間教育事業者との協力
  ・講師,講演者など人材面での協力を民間教育事業者から受ける
  ・教材や機器の提供を民間教育事業者から受ける
  ・教室・講座を民間教育事業者の施設を借りて実施する

【事例】新潟県新発田市生涯学習センター「もしもピアノが弾けたなら」
・(株)ヤマハとわたじん楽器(楽器店)と連携し,成人の初心者向けのピアノ教室を実施。
・楽器店からはピアノの貸出を受ける(有料)とともに,講師を紹介してもらっている。
・受講料でピアノ借料,講師料等の費用を全て賄っている。

        静岡県教育委員会「ふじのくにゆうゆうクラブ」開設事業
・休業土曜日に実施している児童生徒向けの遊びを通した体験活動等の事業の一部について,(株)エンチョーの協力を得て,「創る楽しさDIY」と題する工作教室を開設。
・企業からは,講師の派遣,ノウハウ・会場の提供等を受けている。

イ  教育行政機関の実施する生涯学習フェスティバルなど生涯学習に関する普及活動における協力
  ・展示会への出展などへの民間教育事業者の参画
  ・事業の企画・運営に係る協力
  ・広報宣伝活動などにおける協力

【事例】北海道生涯学習フェスティバル
・平成7年度全国生涯学習フェスティバル(札幌市で実施)の翌年から,年1回(平成8年度旭川市,平成9年度函館市)「北海道生涯学習フェスティバル」を実施。
・全国生涯学習フェスティバルと同様に,民間企業等からの出展を含む生涯学習見本市を行っている。

iv)  公立生涯学習施設の運営委託等
ア  講座等の委託
  民間教育事業者の教室・講座等の企画・実施能力に着目して,教育行政機関からカルチャーセンター等に対して,教育・講座の実施を委託する取組がいくつか見られるようになってきている。
  公的施設を使用することにより,カルチャーセンター等の民間教育事業者が提供する多様なプログラムが比較的安価で住民に提供できること,住民への広報・情報提供が円滑に行えることなど,民間教育事業者にとっても,住民にとってもメリットが大きい連携方法であり,行政のスリム化にも資するものと考えられる。
  各教育行政機関においては,先行事例等を参考に,受託業者の決定に当たって入札等の公平・公正な方法をとる等委託のルールづくりを進め,積極的にその導入を検討することが望まれる。

【事例】東京都荒川区町屋文化センター
・(株)読売・日本テレビ文化センターに委託して40〜50のカルチャー講座を実施。公共施設を使用する分講習料は廉価になっている。
・講座の企画,チラシ等の作成,受講生の受付その他の講座の運営は同社が行う。
・委託者は,受講料等を徴収した上で,受講料等相当額を委託料として同社に支払う。同社は講座の運営に係る費用を負担するほか,教室使用料等を支払っている。

        東京都千代田区「子ども体験教室」
・小・中学生を対象とする「子ども体験教室」の運営を,野外活動等を専門的に企画・実施する民間企業である(株)ノッツに委託して実施。
・(株)ノッツは,教室の企画,指導者・会場の選定その他の事業運営を担当。
・千代田区は,事業の経費を負担するほか,広報,受付業務を実施。

イ  第3セクターによる事業実施
  行政の100%出資により財団法人等を設立し,生涯学習関連施設の運営や教室・講座を委託して実施していく例は,全国的に多く見られる。これらは,行政が直轄で行うよりも弾力的に事業運営ができる等のメリットがあるが,大抵の場合,職員の多くは行政からの派遣や行政職員のOBが務めるなど,民間の発想,ノウハウを生かした事業実施がなされているとは言い難い。
  そこで,民間の発想,ノウハウを十分に生かしていくためには,まだ稀にしか見られないところであるが,行政と民間との共同出資による第3セクターをつくり,そこで教室・講座等を実施していくことが有益であると考えられる。

【事例】山形県天童市市民プラザ
・天童市市民プラザの管理運営を,第三セクターである(株)スポーツクラブ天童に委託し,同社は様々な文化・スポーツ教室・講座を実施。
・講座の企画,チラシ等の作成,受講生の受付その他の講座の運営は同社が行う。受講料等も同社が徴収し,講師謝金等に充当している。
・天童市は,市民プラザの管理運営に係る人件費,事務費等を委託料として同社に支払っている。

        福岡県宗像市宗像文化サークル
・公共施設である宗像ユリックスを会場に,第三セクターである(株)西日本新聞TNC宗像文化サークルが,様々な文化・スポーツ教室・講座を実施。
・会員制をとっており,宗像市以外の者も入会,受講することができる。

ウ  民間教育事業者への公民館の貸出
  実態調査によると,体育館や文化会館等のスポーツ・文化施設の民間教育事業者への貸出は一般的に行われているものの,公民館の貸出は進んでいない。
  一方で,民間教育事業者の教育行政機関に対する要望の中では,「行政の所管する施設をもっと開放してほしい」とするものが多く見られる。
  前述のとおり,平成7年9月の生涯学習局長通知「社会教育法における民間営利社会教育事業者に関する解釈について」において,公民館の民間教育事業者への貸出が認められることは既に明確になっている。
  民間教育事業者への貸出は,単に事業者の要望に応えるだけでなく,公民館に多様な学習メニューが用意されることにより,住民のニーズに応えられることともなる。また,民間教育事業者の学習プログラムや運営方法等を参考にしていくことは,公民館の活動の活性化につながることも期待される。
  今後,教育行政機関は公民館施設の民間教育事業者への使用許可をより積極的に進めるべきである。

【事例】青森県十和田市東公民館「民間教育事業者による講座」
・公民館が,民間の講師からの講座開設申請を受けて,教室の使用許可を行うことにより,「民間教育事業者による講座」を開設している。
・民間の講師は,受講者の募集,受講料の徴収等講座の運営を行うとともに,公民館の使用料を支払う。
・公民館は,講座一覧を作成し,「生涯学習広報」,「市広報」等で全体的な広報を行っている。

v)  その他
  以上のほか,民間教育事業者の企画・実施する講座に行政が協力するなど,各地域の特色を生かした斬新なアイデアによる連携形態が生まれてくることが望まれる。

【事例】NHK青森文化センター「ふるさと町村めぐり」講座
・NHK青森文化センターの主催により,月1回程度,青森県内の町村をバスで訪問する講座を実施。
・訪問先の町村が町村内の巡回コースを設定するとともに,役場の職員が名勝・施設等を案内・説明する。

(2)連携のための手順・方法等
  これまで民間教育事業者との連携の事例をあげてきたが,連携事業等は直ちにできるわけではなく準備や手順が必要とされる。そこで連携を成功させるための働きかけの方法などその手順について述べることとする。
  なお,教育行政機関が具体的に連携を進めるに当たっては,各地域の実情を踏まえ,学習者である住民のニーズに沿ったものとするよう留意していく必要がある。

i)  教育行政機関の職員の意識改革
  民間教育事業者との連携を成功させる第一歩は,教育行政機関側が民間教育事業者をイコールパートナー,すなわち同等の立場で相談・折衝しあう相手方として考えることである。
  生涯学習事業における行政と民間との関係は,法律に基づく許認可のように行政側に一定の権限があるものではない。しかし,行政職員の中には民間教育事業者に対して,行政が指導するといった意識・態度で接する場合があると指摘される。このような意識が残っている間は連携はうまくいかない。
  当たり前のことであるが,教育行政機関側から依頼する場合には民間教育事業者を訪問して説明する意識を持つことから連携はスタートするのである。

ii)  民間教育事業者との連携窓口の設定
  民間教育事業者が教育行政機関との連携を進めようとする際に,行政のどの窓口に相談したらよいかわからない場合がある。また,いわゆる「たらい回し」をされ,結局相談することすらできなかったといった事例も指摘される。
  このようなことのないよう,教育行政機関においては民間教育事業者との連携窓口を定めて,広く民間教育事業者に広報していく必要がある。連携窓口においては,民間教育事業者からの相談を統一的に受け付け,他に適切な担当部局がある場合にはそちらに紹介するとともに,担当部局が定まらないような場合には自ら詳細に相談に応ずる「スイーパー」としての役割を果たすことが期待される。

iii)  情報の収集
  民間教育事業者の情報,つまり,どのような組織,ノウハウ等を持っているのか,どのような事業を実施しているのか,さらにどのようなものを求めているのかを把握することは,連携を進めるためには不可欠なことである。
  教育行政機関においては,民間教育事業者との連携窓口が中心となって,高くアンテナを掲げて,連携の種となるような情報を収集・整理していく必要がある。
  また,様々な機会を捉えて民間教育事業者と面談し,直接に行政に対するニーズ等を把握するよう努めることが必要である。
  生涯学習フェスティバル等の啓発事業や,[子どもと話そう]全国キャンペーン等,教育行政機関から民間教育事業者に参加・協力を呼びかける場合があるが,これらを情報収集のきっかけとしていくことも有効な方法である。

iv)  連携の企画の提案
  教育行政機関が連携事業等を企画する場合には,まず,その連携が住民の生涯学習の振興に寄与するように工夫していくこととなる。しかし,民間教育事業者には,教育行政機関と連携しなければならない絶対的な理由があるわけではないので,住民や教育行政機関側のメリットを説明するのみでは民間教育事業者を動かすことはできない。
  したがって,連携事業を行政から提案する場合には,住民・行政のメリットのみでなく,民間教育事業者の側にも事業の活性化,広報,イメージアップその他においてメリットがあるような連携事業の企画を立て,それを相手に伝え,理解してもらうことが必要である。
  そのためには,民間教育事業者に関する情報を的確に分析し,従来にない新しい発想・企画をし,企画を民間教育事業者側に説明・表現していく能力・ノウハウが必要となる。

v)  連携事業の実施と反省
  以上のような手続を経て事業を実施した場合には,次の連携への参考とするためにも,常にその成果を評価・反省し,連携に至る手続などまで含めて事業の報告をとりまとめておく必要がある。
  これらの報告・記録により,連携のノウハウ等を蓄積するとともに,新たに生涯学習行政を担当することとなった者に継承し,継続的・安定的に連携事業を実施していくことが重要である。


4  関係者への期待

  本調査研究協力者会議では,以上のとおり教育行政機関と民間教育事業者との連携に関して,その課題や連携を促進するための方策について検討してきた。
  最後に,教育行政機関と民間教育事業者の連携が進み,人々の生涯学習がさらに充実するよう,今後の課題等について関係者への期待を述べて結びとしたい。

(1)国へ
i)  全国の教育行政機関への呼びかけ
  地方分権の時代において,国の役割は補助金等の支出等による援助ではなく,全国的な方針の提示や各地域からの相談に応じ,必要な情報を提供することに重点を移してきている。
  民間教育事業者との「連携」の推進は,まさに今後の生涯学習行政の方向性を示すものである。文部省は,本報告の趣旨を生かして,全国の教育行政機関に対して,民間教育事業者との連携の必要性,効果,具体的方策・手順等について周知徹底するとともに,民間との連携の進め方や問題点等について,全国の都道府県・市町村からの相談に応ずる体制を整備すべきである。

ii)  連携に関する事例集の作成・配布
  民間教育事業者との連携は,一定の制度に基づくものではないことから,全国の教育行政機関の「事例集」に対するニーズは極めて大きい。
  文部省は,様々な連携形態について,さらに具体的かつ詳細な内容や効果に関して調査を実施し,連携の成功例,失敗例,連携の障害となったもの,学習者側の反応などを含む全国的な連携の事例を収集・整理した事例集を作成し,それを広く関係者に提供していくことが必要である。

iii)  全国レベルでの連携の一層の推進
  文部省では,平成6年から民間教育事業者の全国団体等により組織される「民間営利社会教育事業者団体等事務連絡協議会」(民事協)を組織し,定期的に情報交換を行ってきているところであるが,今後,民事協独自の事業を実施するなど,その活動を一層活性化することが望まれる。
  例えば,第10回を迎える全国生涯学習フェスティバルにおいて,民間との連携等をテーマとする企画等の充実を呼びかけていくことなどが考えられる。

iv)  生涯学習を振興する特定地域構想の推進
  生涯学習振興法に基づく地域生涯学習振興基本構想は,都道府県が民間事業者等との連携の下,特定の地区において様々な民間教育事業者の一層の活用を図ることにより,その地区を中心とした広範囲の地域における生涯学習の振興を図ろうとするものであり,平成8年4月に広島県の作成した構想が承認されたところである。
  しかし,この法律に基づく基本構想は規模等の面から大都市以外では取り組みにくい面もある。そこで,より小規模な地域においても,住民の学習活動の振興を通じた地域コミュニティの再構築や地域振興を促進することができるよう,特定の地域において,民間の事業者等と連携した生涯学習関連事業を重点的に実施する場合,当該地域を国が指定して一定の支援措置を行うモデル事業の実施を検討すべきである。

(2)全国の教育行政機関へ
i)  民間教育事業者との積極的な連携
  繰り返しになるが,「連携」は,生涯学習行政の中心的なキーワードである。本会議としては,連携に消極的な教育行政機関は,生涯学習の時代から取り残されていくと指摘したい。
  都道府県・市町村の教育委員会や公民館などの施設をはじめとする教育行政機関においては,民間教育事業者との連携を生涯学習行政の中核に位置づけるとともに,民間教育事業者は多様な学習機会を提供する上でのパートナーであると認識し,本報告の趣旨や報告内で触れた事例等を参考に,連携施策を積極的に進めていただきたい。
  また,町村部等においては,住民の多様なニーズに応えるため民間教育事業者の活動に期待されるものの,現実には民間教育事業者が十分な活動を行っていない場合もある。このような場合には,地域の実情に応じて,民間教育事業者の活動を支援・育成していくことも必要であろう。

ii)  民間を含めた広域学習サービスの充実
  多様化・高度化する住民の学習ニーズに,各市町村が単独で対応していくことは困難となっており,都道府県が中心となって,又は近隣市町村が協力して,市町村の行政区域を超えた広域的な学習サービスを提供していく体制を整備していくことが課題となっている。
  地域の状況によっては,採算性等の面から市町村単独では民間教育事業者との連携を進めにくい場合もあるが,このような広域的な対応の中であれば,連携をより積極的・効果的に進めることが可能となると考えられる。
  各地域において民間教育事業者との連携を含めた広域学習サービスの体制の整備を推進していただきたい。

iii)  連携のコーディネーターとしての役割の重視
  教育行政機関は,民間教育事業者との連携を進めることにとどまらず,行政内の他部局,大学等の高等教育機関,関係団体,NPO等の連携を促進する必要がある。そして,教育行政機関の有する情報や企画力を生かして,例えば民間教育事業者相互や民間教育事業者と大学などの連携の橋渡しをするなど,生涯学習振興のコーディネーターとしての取組を強化してほしい。

(3)幅広い民間教育事業者へ
i)  民間教育事業者としての自覚
  本報告では,「民間教育事業者」という言葉を,カルチャーセンター,民間社会通信教育等の教育事業を主たる目的とする事業者に限定せず,個人事業者や書店,楽器店,CDショップ,スポーツ用品店をはじめとする,教育・文化・スポーツ等生涯学習に関連する取組を行う全ての事業者・企業を含む幅広いものとして使用した。
  これは,これらの幅広い事業者全てが生涯学習振興のための連携の対象だということを明確にしたかったからである。
  民間事業者・企業においては,行政との連携を進める前提として,自らが行政との連携の対象となる「民間教育事業者」として生涯学習振興の一翼を担っているという自覚をもっていただきたい。

ii)  連携への積極的な取組
  行政の敷居は高いという声をよく聞くところであるし,実際に,そのようなケースもままあったところであるが,生涯学習の流れの中で行政の意識も変わりつつあるのも事実である。
  民間教育事業者においても,行政は駄目だと決めつけることなく,行政の側から連携の提案があった場合には検討いただくとともに,教育行政機関への要望・提案等を積極的に行い,それらを連携に向けた協議,さらには具体的な連携の展開につなげていくようにお願いしたい。

iii)  事業者団体の結成等
  民間教育事業の健全な発展を促進する観点から,事業者団体の結成など事業者同士の連携を進め,事業者間での情報交換や,適正な契約等についての自主的なルールづくり等を進めることが望まれる。これは,行政との連携の一層の円滑化やその分野の民間教育事業者の社会的な評価の向上にもつながるものである。


   

教育行政機関と民間教育事業者との連携の促進について(報告)の概要



現状認識


      ○生涯学習行政のキーワードは,「連携」,「情報」,「企画」。
      ○先進的な地域では既に工夫を凝らした連携の実践が進んでいる。
      ○しかし,日常的・具体的な連携はまだまだ不十分である。


報告の内容


       

連携の必要性がわからない


          《連携の必要性について一歩踏み込んだ表現》
・1足す1が2ではなく、3以上になる連携を
・学習機会の提供については、民間でできるものは民間に委ねる
・連携が民間にメリットを与えても、住民の生涯学習に寄与するものであれば問題はない<

       

連携の内容がわからない


          《連携の形態について具体的事例を提示》
・連絡協議
・学習情報提供(パンフレット、コンピュータ)
・民間(企業)の協力を得た講座
・公立生涯学習施設の運営委託等
  (講座等の委託、第3セクターによる事業実施、公民館の貸出)


       

連携の手順がわからない


          《連携に至る手順・方法をわかりやすく提示》

・教育行政機関の職員の意識改革
・民間との連携窓口の設定
・情報の収集
・連携の企画の提案
・連携事業の実施と反省


関係者への提言


   

国  へ


・全国教育行政機関への呼びかけ
・連携事例集の作成・配布
・全国レベルの連携の一層の推進
・生涯学習振興特定地域構想推進


   

教育行政機関へ


・民間教育事業者と積極的に連携
・広域学習サービスの充実
・連携のコーディネータとしての役割の重視


   

民間教育事業者へ


・民間教育事業者としての自覚
・連携への積極的な取組
・事業者団体の結成等
         

-- 登録:平成21年以前 --