令和6年3月19日(火曜日)15時~17時
Web会議(文部科学省5F4会議室)
※YouTube配信にて公開
令和7年度以降の全国学力・学習状況調査(悉皆調査)のCBT化の方向性について
耳塚座長、大津主査、足羽委員、磯部委員、宇佐美委員、川口委員、斉田委員、貞広委員、佐藤委員、柴山委員、垂見委員、土屋委員、寺尾委員、福沢委員、益川委員、松谷委員、三浦委員
資料1・2・3に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下のとおり。
【委員】 問題のセットをどれくらい用意されるのかについてお聞きしたい。分散実施となるが、同じ非公開問題を使用するのか、異なる問題を使用するのか。同じ問題を使用すると漏洩の可能性もあるので伺いたい。
【事務局】 問題数等、具体的な部分については、令和7年度調査実施に向け、現在調整を進めているところであるが、基本的には問題セットは複数用意することを考えている。
一方、同じ問題を活用し授業改善や指導の振り返りを行うなどの悉皆調査の目的を考えると、一定程度の公開問題も必要と考える。そのため、全ての問題を非公開にするのではなく、共通の公開問題も一定量設定する形を想定している。
委員からご指摘いただいたように、分散実施の中での出題の取扱いに応じて、漏洩の問題については引き続き検討が必要である。他方で、この調査の目的からすると、いわゆる入試問題とは性質が違い、完全なる公平性や漏洩防止よりも、これまで同様の一定程度共通した問題から授業を振り返ることができるような設計にしておくことを優先させる必要があることから、公開、非公開問題を適切に組み合わせながら複数の問題セットを作ることが基本と考えられる。
【委員】 資料1の3ページ目の「悉皆調査においてIRTを活用する意義」や「活用の充実」の部分について、CBTやIRTを導入することにより、これまで以上に子どもたちの成長を促す、あるいは成長につながるための分析ができるということを丁寧に説明されるのがよい。
【委員】 今、委員からお話があったとおり、CBTとIRTを導入することの中で最も注目しているのは、資料1の3ページ目右下の学校でいかに活用していただけるかという部分である。現在、残念ながら学校によってはほとんど活用されていないという実態もある。
今回、IRTとCBTの組み合わせによって、精度の高いデータをこれまでより少ない労力で、解像度を高めて学校に返すことができる余地が高まると理解しているが、学校への結果提供はどのように変わっていくのか。
【事務局】 結果提供については、現在は資料1・2に書いてあるところだけしかお示しできていないが、引き続き検討していく。
また、現在も都道府県に対してはローデータに近い形のものを返却している。CBT化、IRT化した以降も、引き続き教育委員会等で独自に集計・分析できるようなデータは何らか返却することを想定している。全国的な分析は、これまでどおり文科省で行っていくが、このデータを使い、さらに都道府県単位、あるいは教育委員会単位で分析を進めることも可能となる。また、独自で行っている地方の学力調査や、あるいは別のデータと組み合わせて分析をするということも可能になる。
より授業改善に活用できるような結果の提供の示し方については、さらに検討していく。
また、これまでは、出題した1教科当たり約15問の調査問題から分析をしていたが、CBT、IRTを導入することで、多くの生徒が幅広い領域から出題される多くの問題を解くこととなり、それによって今まで以上に分析の幅も広がる。このCBT、IRTのメリットをうまく組み合わせながら、より教育委員会、学校で指導改善につながるような結果提供をしたいと思う。
これは、団体からも非常に多く意見を頂いたところなので、少なくとも令和7年度に向けてはしっかりと対応していきたいと思う。
【委員】 資料1の3ページ目の「IRTを活用する意義」の③に、学力の経時変化を学校でも把握できると書いている。同じ児童生徒の学力の変化ではないという点を丁寧に説明する必要があると思う。
【委員】 鳥取県では、悉皆調査のCBT化が円滑に図れるように昨年度接続調査を2回、実際の過去問を活用したCBTのプレ調査を1回実施した。その結果、見られた懸念点について3つお伝えしたい。
1つ目は、ネットワーク環境についてである。ただ、市町村ごとに適切に分散して実施をすることで、ネットワークのトラブルについてはほぼ回避することができることがわかった。
2つ目は、教職員のサポート体制の構築についてである。各教諭のICT利用に関する能力も様々であるため、確実な実施に向けては、機器等の操作方法、特にトラブルへの対処方法等を学ぶ機会は必要だと考える。
3つ目は、全児童生徒が基本的な入力ができるような学習機会の設定についてである。児童生徒によっては、入力操作に慣れていないこと等により、正しく解答できない事例が多数見られた。有効な分析や児童生徒への適切なフィードバックのためにも、解答に必要な端末操作等の指導・練習の機会を設けることは必要だと考える。
以上のことから、資料1の5ページにも段階的な施行ということが書かれているが、ぜひ現場の実態も考慮しながら進めていただきたい。
【事務局】 今、委員にご指摘いただいた3点は、関係団体からも非常に多く御意見を頂いたところである。また、昨年度の英語「話すこと」調査の実施からも同様の課題が多く見られたところである。
今の3点を簡単に捕捉させていただくと、1点目のネットワークの問題では、現在GIGAスクール構想が進んでいるとはいえ、学校によっては十分でないところもある。令和7年度のオンライン方式での実施に向けては、やはり日程調整を行った上で、分散実施をさせていただきたいと考えている。
2点目についても、多くの関係団体から、トラブルにすぐ対処できるような分かりやすいマニュアルの作成について多くの御意見を頂いた。例えば、シンプルに分かりやすく説明した動画でのマニュアル作成についても検討している。
3点目の児童生徒が端末操作に慣れるということも重要なポイントだと考えている。令和7年度の悉皆調査では、中学校理科からCBTでの実施となるが、これに向け、サンプル問題や操作練習等、然るべきタイミングでMEXCBTに搭載し、生徒が練習できる機会を設けるよう考えている。各県や各市町村においても、様々な事例が蓄積されているので、現場での声を聴きながら、進めていきたいと考えている。
【委員】 CBTで実施する教科を理科から進められることについては賛成である。そう上で、返却のタイミングについての確認である。資料1の5ページに、小学校国語、算数、理科、中学校国語、数学については、筆記方式で実施、中学校理科はCBTでの実施ということであるが、IRTスコアの返却タイミングについて何かお考えがあるか。あまり最初からスピードを求めすぎてもいけないと思うが、今後CBTで実施した教科については、早くフィードバックされる可能性はあるのか。
また、令和7年度の悉皆調査で理科から進められるが、その結果活用についての声を聞き取る仕組みについてお考えかどうか伺いたい。IRTスコアを返すことによって、どれくらいの先生方の見取りと整合するものなのか、あるいはこれまでの結果返却と比べ、どれくらい多く情報が返ってきたと感じているのか等、定性・定量的に把握することも必要だと思うが、どのようにお考えか。
【事務局】 まず、返却の時期については、令和7年度は国語、算数・数学は、これまでと同様に紙の解答用紙を回収し、採点し、結果を示すというサイクルで行いながら、できれば同時にCBTで実施した中学校理科はIRT分析をしたものを返却することを想定している。これまでより返却が遅れることは考えにくいので、可能な限り全ての教科を同じタイミングで返却したいと考えている。
令和8年度以降は、委員ご指摘のように、サイクルが安定し、様々な条件が整ってくれば、返却の時期を早める等、変えることは考えられると思う。
また、2つ目の結果活用の状況を確認すべきというご指摘はそのとおりである。どういう枠組みで状況を確認するかまでは想定できていないが、例えば調査の返却までのプロセス自体に組み込むなどが考えられる。この辺りは研究課題となるが、その必要性については十分理解するところである。
【委員】 2点伺いたい。1点目は、令和7年度以降の悉皆調査において、IRT分析をすることに伴い、非公開となる問題も出てくる。これまでは、問題が公開されることによって、学力だけでなく、問題の質や採点基準なども見ることができた。非公開になった場合、問題自体がどうだったのかという分析は、どのように考えておられるか。例えば、かなり難しい問題があった場合に、どのように取り扱われるのか。
2点目は、IRT、CBT化しても、記述問題や短答式問題は継続し出題するということであるが、教科によって記述式や短答式の採点基準の考え方は、今後どのように検討されるのか伺いたい。
【事務局】 CBT、IRT化しても、悉皆調査の目的を達成するため、一定数の問題については公開し、分析結果の公表も従来通り行う。公開問題であれば、様々な方の御意見やそれぞれの視点からの分析が可能となるので、問題や採点基準等の情報は一定程度残る。
そのうえで、IRT分析を行うことで、問題の識別力についても明らかとなるので、問題の質も何年か継続していく間に高まっていくと考えられる。
一方で、これまでは解答例も含め公開していたものが、一部非公開となることで、その辺りが見えにくくなるのではないかというご指摘はそのとおりであるので、実施報告の時点で、何をどの辺りまで公開できるかについては、今後の検討課題だと考える。
【委員】 問題の質に関して言及された識別力も大事な指標となるが、R5悉皆調査の英語の問題では、非常に難しい問題もあった一方で、識別力は高くなっている。全ての児童生徒の能力を良く測れるような問題づくりをしていただけるとよい。採点基準についてもご検討いただければと思う。
【委員】 CBTやIRTの説明も文科省で行うことになっている。IRTの分析も行い、今後の調査の設計・準備、経年変化分析調査もあるとなると負担がかなり大きいと思われる。どういうふうに体制を整えていくかというところについても記載があると良い。
【事務局】 ご指摘のとおり、全てを学力調査室だけで行うことはできない。令和6年度は経年変化分析調査があるが、こちらは国立教育政策研究所の方で、チームを組み、分析に取り組んでいくことを考えている。もちろん委託事業者に行っていただく作業もあるが、国立教育政策研究所、文科省、委託事業者と役割分担をしながら進めていき、その中に、先生方の専門的な御知見も頂きながら進めたいと考えている。
また、令和3年度と同様に、経年変化分析調査事態の調査結果と、そこからさらに時間をかけて、より専門的に深く分析をすることで出てくる知見もあると思われるので、ここをしっかりと識別する必要もある。
いずれにしても、どれもしっかり実行していかなければならないので、体制等も考えたうえ行っていく。
【座長】 文部科学省におかれては、関係団体から頂いた意見に加えて、本日出された委員の皆様の御意見を踏まえた上で、令和7年度以降の全国学力・学習状況調査(悉皆調査)でのCBTの実施の方向性について決定いただくようにお願いしたい。
その上で、さらに具体的に示さなければならない事柄も多々あるので、その点についてこれからさらに検討を進めていただきたい。
総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室