新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議(第1回)議事要旨

1.日時

令和元年9月25日(水曜日)10時00分~12時30分

2.場所

中央合同庁舎4号館12階 1208特別会議室

3.議題

  1. 運営規則の決定等について
  2. 特別支援教育に関する現状について
  3. 新しい時代の特別支援教育の在り方に関する検討事項等について
  4. その他

4.出席者

委員

朝日委員,阿部委員(代理久松氏),石橋委員,市川委員,一木委員,大出委員,岡田委員,金森委員,川髙委員,木村委員,滝口委員,竹中委員,田村委員,成澤委員,野口委員,日詰委員,廣瀬委員,佛坂委員,松倉委員,真砂委員,宮﨑委員,山中委員

文部科学省

浅田総合教育政策局長,蝦名大臣官房審議官(初等中等教育局担当),矢野大臣官房審議官(初等中等教育局担当),俵特別支援教育課長,佐々木特別支援教育企画官,青木初等中等教育局視学官,斎藤特別支援教育課課長補佐

オブザーバー

本後オブザーバー,西牧オブザーバー,梅澤オブザーバー

5.議事要旨

(1)宮﨑委員が主査に,岡田委員が主査代理に選任された。
(2)会議の運営規則について,資料2のとおり了承された。
(3)宮﨑主査・蝦名大臣官房審議官からの挨拶の後,事務局から資料の説明が行われた。
(4)新しい時代の特別支援教育の在り方について,意見交換が行われた。



【委員】 全国の特別支援学校の校長会を代表して出席している。事務局の説明を聞いていて,特別支援教育が浸透し,多くの関係者の皆様の御理解により広がってきたことを誇りに思っている。ただ実際,特別支援学校の現実を見ると,例えるならお風呂-表面は熱いけれども,中に入ると下はぬるま湯という現状だと思っている。特別支援学校の校長が,私の学校には東京都内では比較的小規模で80人の教員がいるが,100人,150人という規模の教員を抱え,一人一人の専門性をきちんと維持させるにはどうしたらよいか。聴覚障害について初めて教える教員や,重度の子に対する教科指導の経験が乏しい教員に対してどのように指導するか。学校はこうした教員の養成の場として,また,いろいろな機能が広がったために,対外調整で非常に忙しいというところがある。理念としてすばらしい特別支援教育を発展させていくためには,校長がきちんとお風呂の全部を温めていく必要があり,その役割は大きいと考える。関係の皆様の御意見を伺いたい。最後に,現在所属する学校は幼稚部,小学部であるが,前任校では高等部の卒業後のことを考えてきた。新しい時代においては,特別支援教育の生涯学習化が大きなメッセージであるため,今学んでいることが社会にどのようにつながっていくか,障害のある子供たちが社会で生き生きとし,自分で切り開いていく力を身に付けられるような学校にしていきたいと考えている。そのような方向で議論が進むことを期待している。

【委員】 学校法人武蔵野東学園は,幼稚園から小・中・高等専修学校まで,園児・児童・生徒1,600人のうちの4分の1が発達障害・自閉症。「混合教育」というインクルーシブ教育を55年間進めてきたが,学習指導要領にも「交流及び共同学習」という言葉が出てくるが,単発的な交流をすることでインクルーシブ教育が進むのかという問題がある。障害のない生徒たちに対しての,また,保護者に対しての障害者理解教育も掲げられてはいるが,どこまで進んでいるのか。学校現場にいる者として,他の学校ではどうなのか気になっている。その他にも,社会自立を目指した教育にもう少し焦点を当てていかなければいけないのではないか。共生社会の実現という点からも重要なところ。最後に,通級に関して説明があったが,果たして通級の指導が本人にとって良いものかどうか,保護者だけが望んでいるものではないかなど,様々な観点から考える必要がある。社会自立に向けた通級指導なのかどうかという点も議論が必要。
【委員】 医師として40年ほど発達障害を診てきており,特別支援教育にも30年以上関わっている。事務局の説明において「知的障害が増えている」という話があったが,医学的には発達障害が増えていると考えざるを得ない。どうしてそれが起きるのか。加えて,医療的には,今年6月にICD-11が公表されたが,いずれは国際分類として,発達障害の大きなくくりの中に知的障害も入ってくる。このあたりは難しいし,もう少し細かいことをいうと,医療の方ではもうIQという数字を使わない方向になっている。そうしたことを考えてみると,医療と教育のかい離が若干起きているのかなという気もしている。別の場でもお願いしたが,やはり発達障害を正面から取り上げていただかないと,本当の特別支援教育にならないのではないか。その点をこの会議で論議していただければ有り難い。

【委員】 教員養成大学にいる立場から申し上げたい。先ほど「特別支援教育の教員の専門性」という言葉が紹介され,その中核は自立活動だろうと考えるところであるが,平成11年から養護訓練が自立活動となった際に,個別の指導計画の作成が義務化されたものの,各特別支援学校の個別の指導計画の書式を見ると,自立活動について,それぞれの学校の解釈があると感じる。つまり,本来自立活動の考え方や理念は学習指導要領に示された共通のものであるはずなのに,多様な捉え方がなされているのではないかという危惧がある。そのような中で,自立活動の専門性について今後議論していく際に,各障害に焦点を当てた議論も重要だとは思うが,それらが先行することについては懸念を抱くところ。障害種に共通した,特別支援教育として共通して必要な専門性や,子供の状態をどのようなまなざしから理解し,必要な指導を具体化していくか。これらをしっかりと整理して,通常の学校の先生方にも分かりやすく示していくことが大事な時期と考える。そのためには,自立活動の理念やそれに基づく指導の考え方について,養成段階でしっかりと指導すること,免許を取る方に学んでいただくことが大事。一方で,特別支援学校の教員の免許取得に関わる免許法の中では,自立活動について扱うことが規定されていない。このため,現在,特別支援学校の免許を出す151大学のうち,シラバスをインターネットで確認できる143大学の中で,自立活動に関して独立した科目を設置している大学は13大学。これを除いた130の大学の中で,特別支援教育基礎論と,障害種に分かれる前の共通科目の中で自立活動を扱っている大学,すなわちシラバスに明記されている大学が33大学という現状である。異なる形での扱いはあるかもしれないが,今後,特別支援教員の専門性の中核をなす自立活動について,養成段階でどのように扱っていくか。この場でもまた議論の機会があればと思う。

【委員】 本年5月1日現在,全国に特別支援学校が1,150校近くある中で,私立の特別支援学校は13法人,14校と非常に少ない。本校は平成6年に開校し今年で26年目,その創立から今日まで関わってきた。知的障害の子供たちを受け入れてきたが,近年,特に平成19年少し前頃から,本校に入学する生徒の中でも発達障害の生徒が増加し,現在,在校生徒は少ないが,発達障害の生徒が3分の1以上を占めている。教師の専門性と言われているが,それまで知的障害で関わってきた教師に新しい障害を持つ子供たちへの理解を促そうとしても,なかなかセンター研修等を行うだけでは実際的な専門性の修得までは至っていない。「生徒から学ぶ」とよく言っているが,目の前にいる子供たちは「教師」とも言えるため,子供たちを課題として捉えるのではなく,子供たちの実態から私たちが学ぶということで日々奮闘している。その中で,子供たちの家庭状況が大分変わってきており,二次障害ではと考えられるお子さんも出てきている。学校がどこまで入り込むかという問題はあるが,実際にはこのままではどうにかなってしまうのではないかと心配な御家庭もあるため,子供たちだけではなく,御家庭もお預かりしているつもりでいる。医療や福祉の方とも連携を取りながら進めているところではあるが,現場の声を聞くと非常に厳しい状況にある。私としては,私立の特別支援学校の現状を,盲・ろう・肢体不自由の現場の声を皆さんに届けていきたいと考えている。

【委員】 教育の情報化に関する手引の委員も担当している。10年前に同じ委員をしていた際は,特別支援教育は独立した一項目だったが,今回作成している手引では独立した項目にはならなかった。それは,特別支援教育の扱いが低くなったからではなく,通常の教育の中にも特別支援教育が当然入っていくべきだという位置付けになったからであると捉えている。特別支援教育におけるICTの活用は必要度が高い。ただ,学校の現状を見ると,障害のある子供に対して,彼らの特性に合わせたICTの活用が十分されているかというと,課題が大きい。教員の専門性を高めることも必要だが,教員養成,大学段階でのカリキュラムを持っている大学が非常に少なく,学生に教えていない。同時に,教員だけがそれをやれば良いわけではなく,外部の専門家がサポートするシステムも必要。こうした話ができればと考えている。

【委員】 本校は知肢併置の特別支援学校で,一般企業に就労する生徒から,重度重複,医療的ケアを必要とする生徒まで,生徒数277名,教員230名という比較的大規模な学校である。私の立場では,知的障害の子供達が,能力だけではなく人格をどう形成していくかという点と,学校自体が地域の中でどう育っていくか,地域の中での学校の在り方という点について考えていきたい。本校は宇治平等院の近くの市街地にあるが,地域としては高齢化社会という課題も抱えていると聞いている。本校がどう地域に貢献できるかを考えたところ,本校の生徒たちが,清掃や販売活動など,高齢者の方々にも喜んでいただけるようなことや,地域のサークルの方々に授業に入っていただくことを,特別活動という特別な時間ではなく日常的に行っている。そうした取組により,地域の方々も生き生きとされることに加え,本校の障害のある生徒たちも,今までは支援を受ける立場だったが,地域の方々から「ありがとう」と言われるようになり,支援をする立場,貢献をする立場に回ることで,大きな自信を付けてきている。このように,障害のある子供たちが貢献できる地域社会を,どうやって地域ニーズとともに創っていく学校にしていくかというところを一緒に考えていきたい。

【委員】 全国の盲学校長会の副会長をしております。本会議においては,視覚障害特別支援学校を盲学校としてお話しさせていただきたい。全国には,盲学校長会に所属している盲学校が67校ある。特別支援教育を必要とする子供たちの数が増加しているという説明があったが,盲学校の今年度の在籍数は全校合わせても2,616名と,毎年少なくなっている。本校は95名在籍しており,国内では5番目の規模。それでも,高等部で1学年に6~7名,小・中学部で3~4名しかおらず,特に対話的な学びを保障するのに苦慮している。そこで,北海道では遠隔テレビシステムを活用し,道内盲学校4校を結んで授業を行っているほか,寄宿舎の行事や教職員の会議,研究会・研修会にも活用し,幼児児童生徒の学習を保障するだけではなく,教職員の専門性の向上や会議等の効率化などの働き方改革にも活用している。現在のシステムは,映像や音が鮮明で,視覚に障害がある幼児児童生徒にも十分活用できるものになっているが,回線の関係で,現在は道内でしか利用していない。10年後には,より安価で鮮明なシステムにより,全国の盲学校や国際交流をしている韓国の盲学校とも日常的につながることが可能な時代にしたいと考えている。加えて,インクルーシブ教育システムの構築が進む中,盲学校のセンター的機能が大変心配な状態になっている。本道では4校の盲学校があるが,そのエリアは大変広く,視覚に障害があっても,弱視特別支援学級を開設するなどして,近隣の小中学校を利用するケースも多くなってきている。身近な地域で教育を受けたい気持ちは理解できるし,インクルーシブ教育システムを推進していく場合は当然の方向ではあるが,現状の制度の中では,一人一人を支援するニーズにどれだけ応えられるかが心配。特別支援学級を開設しても,専門性を有した方が担当できるとも限らないし,専門性を有していたとしても,全ての教科や自立活動を一人で担当することは大変難しいと考えられるため,最寄りの盲学校の支援を受けることになる。近隣の学校で支援を求めている方が少なければ問題ないが,多くなると対応が難しくなる。本道では,通常の教育相談の他に「特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業」があり,各学校が市町村教育委員会を経由して申し込み,特別支援学校が支援に向かうシステムを採用している。一つの学校に3回程度の支援を行い,担当者にノウハウを伝えるようにしているが,対応件数が多くなると,予定通りの支援ができなくなる。これは全国の盲学校でも同様に課題となっている。盲学校に関係する件数が多くなるということは,盲学校の在籍者が減っているということ。交流している韓国の盲学校でも,小中学校に通う児童生徒が増える中,単一障害の在籍数が減り,地域支援に日常的に手が取られて困っていると聞いている。日本でも,現在の教職員定数の考え方では,在籍数,学級数が増えなければ,教職員も増えない仕組みになっている。インクルーシブ教育システムを推進するためには,地域支援を行う数を今まで以上に考慮しなければ難しく,教職員定数の在り方についても検討が必要。いずれにしても,特別支援教育に関わる全ての子供たちが生き生きと学び,支援が受けられる環境を考えていけるような会議になればと思う。

【委員】 事務局の説明を聞きながら,平成19年が「特別支援教育元年」と言われたことを懐かしく思い出していた。当時,これできっと何かが大きく変わるに違いないと本当に思っていたが,12年たった今,皆さんの地域はどうか。私自身,情報が浸透したり意識が変わってきたりということを感じながらも,これから話題提供的に四点ほどお話ししたい。一点目,巡回相談員として,幼稚園,保育所,認定こども園あるいは小学校を訪問する中で,支援が必要な子供たちの居場所が確保されているかというと難しいのが現実である。東海・北陸という限られた地域の話ではあるが,例えば,就学前のお子さんの場合だと,特にけがや事故のような場合や,保護者対応の難しさから,特別な支援が必要なお子さんの居場所がなかなか確保できずにいる。二点目として,小学校では成績向上の観点。学力テストを踏まえた教員評価,学校評価,県単位の評価の中で,なかなか支援が行き届かない。そうした現実があることを間近に感じながら,それでもできることはあるだろうと思いながら仕事を続けている。三点目として,小学校には特別支援教育支援員という形で地域の方が入ってくださっているが,本当に理解のある方がいる一方で,支援員が入ることでかえって子供が落ち着かなくなるという難しい課題もある。最後に,私自身も教員養成に関わっているが,特別支援学校教諭の養成は,もちろん最優先で当たるべきことではあるが,そうではない小学校・中学校教員免許を持っている学生こそ,特別支援教育を学ぶ必要があると以前から考えている。最近の免許法改正で彼らを対象とする授業は増えたが,なかなか難しいところがあると実感している。例えば,授業で合理的配慮について扱うが,ICTの活用に関し,必ず2~3割程度の学生が「特別扱いはできないのではないか」と言う。彼らが今後現場へ出て教員になるわけで,その意識をどう砕き,柔らかくして送り出すかという,そうした現場で仕事をしている。以上,四点ほど話題提供として挙げさせていただいた。

【委員】 私自身,現在46歳になるベイビータイプの重症心身障害児の娘を授かり,一人でも多くの人が彼女のような人たちを支えてくれる社会になればという思いから,支えられる立場にいると言われている人の中にも,どれだけ社会の支え手になる人を生み出すことができるかが,私自身とプロップ・ステーションのチャレンジになった。「チャレンジドをタックスペイヤーにできる日本」という,ちょっと過激なスローガンを掲げ,「稼ぐ」「タックスペイヤーになる」ことをテーマに,どのような分野でも超一流の講師から超一流の技術や技能を学ぶことをプロップの活動の中心にしてきた。趣味程度の人に習ったことは趣味以上にはならないのは当たり前だが,案外,障害のある皆さんに対しては親切に教えてあげたら良いとか優しく教えてあげたら良いという方が多く,真の技術を伝授してくださる方はなかなかいなかった。しかし,とりわけコンピューター業界は,私たちが取り組んだ頃はまだ初期だったが,一流のコンピューター技術者の人たちがボランタリーに駆けつけてくださり,惜しげもなくその技術を提供してくださった。そして,プロップ・ステーションから多くのデータベース系やグラフィックス系,アート系などの様々なチャレンジドの働き手の方が生まれてきた。お陰様で,コンピューターを使って働くということも,ここ数年で社会的に非常に認知されるようになり,現在は,地元兵庫県神戸市の全面支援と,厚労省,総務省等々からの御支援を頂いてクラウドを構築中である。全国どこにいても,どのような障害があっても,クラウド上で自分の学びたいことを学んだり,その上で仕事をしたり,また,そこに納品したりすることで,非常にスムーズに,働く場所に行けなくても,体を動かすことができなくても,きちんと稼げる仕組みを構築しつつある。そうしたモデルを生み出すことによって,全国どこにいても,どのような身体の状態であっても,一人でも多くの方が誇りを持ってタックスペイヤーになっていってほしい。そして,最終的には,娘のように,全く働くことが不可能な人たちをも助けていただけるような,そういう人たちを守れる社会にしていくために,これからもプロップ・ステーションの活動を頑張りたい。

【委員】 日本障害フォーラムの議長を務めている。日本障害フォーラムの役員のほとんどが,今,国連の会議に参加しているため,本日は代理で出席した。文部科学省の会議には9年ぶりの出席。宮﨑先生が座長を務めておられ,お世話になった。当時私は二つの意見を出した。一つは,インクルーシブ教育が始まった頃の話で,地域の学校と特別支援学校とどちらも様々な課題があるのではないかということ。また,学校の教育において,地域の学校の先生たちの大変な状況や,特別支援学校の先生たちも大変な状況であるため,中核的なサポートセンターを作る必要があるのではないかという意見を出させていただいた。そして,もう一つは,障害の種別が多様化してきており,障害を持つ子供たちの教育の可能性又は専門性を高め広めていくために,教員養成を4年から6年に延ばすという意見を提示させていただいた。結局,予算がないということで二つの意見は却下されたが,そういう話をさせていただいた。9年前と比べ,現在の課題は,一人一人のサポートが必要ではないかということがたくさんある。実際に,一人一人の子供に合わせた支援がきちんとできているのか。実数については把握していないが,障害を持った子供たちの引きこもりの数が増えているのではないかと感じている。実際に私どもの団体でも,子供の頃に引きこもりの経験をした人が大人になって,私どもの団体に入会する人たちもたくさんいる。そのような状況を見ると,一人一人を対象とする支援が必要ではないかと思う。適切な支援がなされないと子どもは学校の中で孤独になり,結果的に引きこもりが多くなってしまう状況があるため,その問題を分析,整理することが必要ではないかと感じている。今,私自身は日本障害フォーラムの13加盟団体の取りまとめをしているため,様々な障害の現状は,かなり把握している方だと思うが,それでもいろいろな障害の特性を理解し把握することはとても大変だと感じる。精神障害,発達障害,知的障害,視覚障害,聴覚障害,そのような様々な障害や,重複障害など,幅広く障害を理解するということは難しい状況。大学の教員養成で,様々な障害について4年で学び切れるのかというと,とても難しいと考えており,教員養成課程を2年間延長し,6年間ぐらいは最低でも必要ではないか。4年間で障害特性を把握することは困難ではないかと思っている。一人一人の教育,それぞれに対応した教育ということで,また問い直したいし,これらについても議論をお願いしたい。また,集団生活の中で,一人一人に合った教育をするということがどういうことなのか,集団生活の作り方についても余り議論がなかったため、集団生活の在り方についても議論をお願いしたいと考えている。最後に,先ほど他の委員がおっしゃっていたが,私たちの社会は,障害を持っていてもちゃんと税金が払えるような社会の仕組みを作っていくことが必要だということも感じている。障害教育というのは,お金が掛かる部分もあると考えがちだが,障害者自身が税金を払えるような仕組みを作ることで,税金の面の負担を減らすことも可能ではないかと考えている。私は今日だけの出席になるかと思う。言いたいことを少しまとめて話させていただいた。

【委員】 私は,全国の小中学校に設置されている特別支援学級と通級指導教室の全国の会長という立場で今回参加させていただいている。多様性を尊重する共生社会を目指すということはとても重要であり、そのためには小中学校の役割が大変大きい。その中で,特に特別支援学級と通級による指導を受けている子供が,激増と言って良いのではないかというほど,大変な勢いで増えている。それは,障害のある子供が増えているということよりも,それだけ保護者の方,本人も含めて,きちんと支援を受ける,教育を受けるということへの期待の表れだと捉えている。ただ,現実として,特別支援学級や通級による指導を行っている先生方の専門性をどう担保しているかというと,一つは,特別支援学校教諭の免許を持っているということであるが,先ほどの資料の中でもあったように,現状では3割。この3割がずっと変わらない。設置校長会としても,特別支援学校教諭の免許取得について説明しているが,なかなか取得者が増えない現状がある。その背景には,先生方が研修を受けに行きにくい,費用と時間の問題などもあるが,やはり大きい理由の一つは,特別支援学校教諭の免許が,障害種別の5種類の中に発達障害や自閉症がないこと。特別支援学級でも,現在,自閉症,情緒障害の特別支援学級で指導を受けている子供の数の方が,知的障害よりも逆転して増えているし,通級による指導も,多くが発達障害の子供たちである。となると,特別支援学校の免許を取っても,特別支援学級や通級による指導に生かせるのかと,教員の方に躊躇(ちゅうちょ)があり,なかなか取れない状況。校長も,特別支援学校教諭の免許を取りなさいと言えない状況にある。資料3-3の特別支援教室構想は,10年以上前に文科省の検討会で示されたものであり,私も当時これをよく見ていたが,こういう形に進んでいくとしても,誰が指導をするのかと考えると,現行の免許では対応できないのではないか。先ほど発達障害についての意見があったが,今,小中学校では,特別支援教育コーディネーターの配置が大分進んでおり,その先生方も,特別支援学校教諭ではなくて発達障害関係の免許がきちんとあれば,その免許を取って生かしていくこともできるのではないか。免許法を変えるのは難しいと思うが,特別支援学校教諭として5種類の障害種別だけがあるという形ではなく,もう一つ障害種を増やすなりして,免許法を変えることが専門性の向上につながるのではないか。自立活動については,特別支援学級や通級による指導も,もちろん自立活動を参考に指導を行っているが,通級による指導は,通常の学級に在籍していて,一部の時間について通級指導を受けるため,自立活動の在り方も,「通級の自立活動」というものがもう少し確立していかなければならないのではないか。あわせて,障害者理解や多様性の理解に関し,通常の小中学校の子供に対する教育プログラムについても検討する必要がある。交流及び共同学習の延長線上で障害者理解を進めていこうとしても,なかなか進まない現状もあるため,障害者理解という観点でも,小中学校の方で考えていかなければいけないのではないか。

※事務局より資料3-3(特別支援教室構想)について補足説明。

【委員】 弁護士で全国盲ろう者協会の理事長も務めている。事務局から特別支援教室構想の説明があったが,私も,ここへ来る前に17年の答申を読んできたものの,私は現場を持っていないこともあってか,具体的に通級指導とどう違うのかがいまだに理解できない。機会があればもう少し具体的な例を示してほしい。また,様々な資料を見て,特別支援教育を担っている教員がとても忙しいのではないかと思った。専門性も求められるし,ICTの活用,医療との連携,保護者との連絡もある。是非,定員の問題も含め,教員の負担を軽減する方策についても,併せて議論をしていくと良いのではないか。それから,盲ろう者協会の理事長ということで,重複障害について少し話をしたい。先ほどの説明でも,一人一人の教育的ニーズに対応することが特別支援教育の一つのキーワードだと思うが,正に多様なニーズがあるのが重複障害児。盲ろう児の例で言うと,現状では盲学校でもろう学校でも必ずしも対応しきれていない。免許は障害種5領域で作られているが,それをまたがる専門性,重複障害児に対する教育の専門性をどう確保していくのかというのも,是非,この検討会で議論していただきたい。あわせて,盲ろう児もそうだが,どうしても人数が少ないために,これまでのデータベースがなく,現状として先生方の個人芸に頼っているところもある。是非,データベースの収集や教育メソッドのシステム化などについても,議論の対象に加えていただきたい。もう一つ,特別支援教育制度が始まって以来,特別支援学校の統合化が進んできていると伺っているが,ある程度統合が進めば,五つの障害種を超えたところにも対応ができるようになると思われるため,現状と今後の方向性についても,是非,この検討会で議論をしていただきたい。

【委員】 本校は病弱の子供たちを対象とした特別支援学校で,現在,40名弱の児童生徒が学ぶ比較的小規模な学校である。昨年度と今年度,病弱教育の研究推進連盟の事務局をしている。日頃考えていることを3点ほどお伝えしたい。1点目として,子供たちは地元を離れて本校で学んでいるが,居住地の自治会長や町内会長,民生委員の方々とお話しする機会があり,自治会長が,違う場所で学んでいる障害のある子供たちに,町内で声を掛けたいが,見たことがない,会ったことがないと。あるいは,自閉症の人について,マスコミなどでも聞くが,自分自身会ったことがなく,どうすれば良いか。本当は地域で一緒に暮らして,声を掛けたりして暮らしていきたいが…とおっしゃっていた。私に対しても「校長先生,もっと自治会長や町内会長と仲良くなった方が良い」という話をされていた。今後,地域で子供たちが暮らしていく,そんな共生社会を考えるときに,どのような仕組み作りがあるか。2点目として,教員あるいは学校の専門性という点で,例えば,今,小中学校にはカウンセラーの方が入っておられるが,そのような形で,例えば,自立活動の専門家として,理学療法士や作業療法士の方が,教職員の一部として入り込むことはできないか。外部専門家としての活用は日頃から行っているが,本当に入り込んだ形で一緒にやっていくことはできないか。3点目として,現在,ICTの活用による教育が進んでいるが,特別支援教育の中では,例えば,遠隔教育という点では,病弱教育がこれまで取り組んできているところでもあるし,電子教科書という点では,視覚障害の弱視の子にとってはなくてはならないものである。また,特別支援教育は以前から教科横断的に教えるという点で,現在,高校教育でも教科横断的な指導と言われているが,教育全体を考えると,特別支援教育が取り組んでいることには大変先進的な取組と言える部分が多くある。その意識で,これからの特別支援教育を考えていきたい。

【委員】 事業会社として多くの障害のある社員と一緒に働いている。実際には,300名ほどの障害のある社員と一緒に働いていて,うち恐らく3分の1強が知的障害や発達障害がある社員という状況である。実際に,障害のある社員といかに社会で価値を発揮していくのかという観点で日々仕事をしているため,本会議では,少し違う観点から参加させていただけるのかなと思っている。一方で,特別支援教育については,特別支援学校を卒業した生徒さんも当社で多く就業いただいている。多く就業いただくだけではなく,活躍するというところを大切にしている会社であるため,いかに活躍できる状態を作るか,活躍するという考え方にどうやって近づけていくかというところが,実際に受け入れている中での課題である。ICTの活用や組織の作り方によって,活躍できるフィールドはどんどん広がる反面,どうしても学校教育と社会とでは少し距離があるのも事実。その距離をこの会議の中で少しでも埋められると良い。初めてこのような形で会議に参加させていただくため,何分つたないところも多いかと思うが,少しでも頑張って話をしていきたい。

【委員】 特別支援学校の教員をしており,今は行政の方で特別支援教育に関わっている。市町教育委員会などから寄せられる声で一番多いのは教職員定数の問題。特別支援学級が8人で1学級というのがどうにかならないかという声がよく寄せられる。一人一人に応じた教育をしたいが,学年も様々,障害の程度も様々な子供たち8人を一学級でどのように指導していくのかというのが,小中学校ではとても大きな問題になっている。特別支援学校に関しても,重複障害の捉え方として,重度の子供さんは重複障害にはカウントされていないこと,訪問学級の子供さんも,学校の生徒と一緒に一学級とすることなど,複雑なところがあり,教職員の数が足りず,個に応じた指導ができにくいという声がやはり多く寄せられている。また,小中学校などを見学して感じるところでは,先ほども委員から指摘があったように,特別支援教育に関わる先生だけでなく,本当は小中学校の先生がどのように特別支援教育の考え方や力を身に付けていくかという問題が大きい。ここで議論することではないとは思うが,小中学校の先生はとても忙しく,余裕がないため,特別支援教育のことは後回しという状況が生まれているのも事実ではないか。また,体制整備の状況について,高い数値で出ているが,コーディネーターなどの人の配置はできている一方,その中身や実質が本当に伴っているかというところが問題。県としても,各学校の実質の特別支援教育をどのように進めていくかということが課題と捉えて取り組んでいるところ。皆さんのお話を聞かせていただきながら,また今後考えていきたい。

【委員】 前任が厚生労働省の発達障害対策の専門官で,ここ何年か,事あるごとに文部科学省と一緒に議論しながら施策を作ってきたため,今後も基本的にはサポーターとして参加し応援していきたい。今回は,国立重度知的障害の施設の立場として意見を申し上げる。学校とは,生涯にわたる生きていく力を学べる環境だと思っているが,私たちの施設では,例えば,注射を打たれるのが嫌だという知的障害,自閉症の方がたくさんいる中で,一対一で看護師が打とうとすると嫌がるが,学校のような環境で,スタッフが一列に並んで間に入ってもらうと,しょうがないという感じで注射を受ける。正に学校で学んだことの財産が,その後も力になっているということがたくさんある。このように生涯にわたる財産になるものを学校でたくさん教えられている一方で,中には学べていないこともたくさんある。現在,我々の施設の入所者の平均年齢は65歳で,例えば,食事については,自分の口には合わない早食いや,学校で急がされて食べた習慣が残っていて,それが原因で寝ている間に喉に詰めて亡くなってしまうなど,本当は学齢期から学んでおくべきことが学べていなかったことがある。また,我々の施設には高齢者だけではなく,強度行動障害という他の施設で対応が難しい入所者や,矯正施設を退所した後行き場がなくて困っている知的障害,発達障害の方も引き受けており,学校の間にもう少し学んでおけると良かったなということもたくさん入所者から教わっている。そのようなことも是非ここでお伝えできたらと思う。特別支援教育の分野だけではなく,学校保健の分野との連携も是非これから深めてほしい。もう一つ,先ほど引きこもりの話があったが,私は厚労省で引きこもり対策の担当もしていたことがある。引きこもりの方についても,感覚の過敏さがあるのに集団への参加を強制されて,人といるのが怖くなってしまった方もたくさんいる。学校に来ないからではなくて,そのように集団を離れてしまった人に対して,どうアプローチしていくのか。我々の施設では,「今,成人期にサービスを受けていないが,本来は重度の障害を持っている方の把握をどうしているか」の調査を,全国の市町村を対象に行っている。そうした際に,どこにどんな人がいるかという情報は,学校は必ず日本国民である限り皆が通過してきているため,重要な情報を持っている。しかし,その後,市町村の他部局とうまく共有できていないために埋もれてしまい,御家族や本人たちだけが抱えているという例もたくさんあった。そうした地域全体の情報共有という中で,学校が果たせる役割もおそらく大きいだろう。特に特別支援教育の分野の方たちは,その後情報が必要になってくるため,そのような観点からも意見を申し上げていきたい。

【委員】 現在,LITALICOでは,主に発達障害のある子供8,000人が通う児童発達支援事業,放課後等デイサービス,精神障害・発達障害のある成人2,000人程度が通う就労移行支援施設を運営している。私はその中で支援の質を担保するためのスーパーバイズの体制や,ICT活用の仕組み作りを行ってきた。現在は,積極的に学校連携や保育所等訪問支援を活用し,多くの学校へ訪問支援をさせていただいている。これだけたくさんの子供が来ていると,本当に多様な子供が来ていて,非行や家庭環境が難しい子供,二次障害があるような子供たちによく会うが,やはりLITALICOに来ている子供たちはほんの少しであるため,非常に限界を感じている。その意味で,小中学校の教育に関わる委員として,今回お招きいただき大変うれしく思っている。これまで,とても素敵なビジョンの下,素敵な制度を作ってきてくださって本当に有り難い。ただ,もったいないと思うのが,余り現場に浸透していない部分もあるということ。それゆえ,逆に,通常の教育と特別支援教育が分断されてしまうところがあるのかなと思っている。その意味では,より連続性やつながりを作るためにも,特別支援教室構想や,先ほど指摘があった発達障害も含めた特別支援教育全般の免許について検討していきたい。私自身の問題意識は大きく三つ。1点目は,特別支援教育の認知度が上がって,特別支援学校や特別支援学級,通級とそれぞれの対象者が増えたという説明があったが,本当にインクルーシブ教育システムの構築に向かっているのだろうか。その成果を今後どのように評価していくのかというところを是非知りたい。2点目は,通常の学校における教育課程編成と個別の教育支援計画,指導計画の作成と運用に関して,課題を感じている。特に知的障害と発達障害のある子供が多い特別支援学級や通級においては,子供の実態に応じて特別の教育課程が編成できるようになっているにも関わらず,先ほど別の委員がおっしゃったように,自立活動の理解も含めて,教育課程を編成していくためには非常に難易度が高い。そして,免許を持っている人が少なく,免許を持っていても,果たして本当に今の特別支援学校の免許を持っていることが,特別支援学級や通級の指導に生かせるのかといったところも課題。現状,学校訪問などをしていると,前年度と同じ教育課程を引き続き使用し続けている事例が非常によく見られる。本来は,子供に合わせて教育課程を作るべきところを,教育課程に子供を合わせているという実態が見られる。加えて,個別の教育支援計画,指導計画も,とても素敵な施策である一方で,形式的に作って終わってしまうところも多い。本来は,作成・運用に当たって,福祉や関係機関との連携や,自立活動等の理解,教育課程の理解が必要であるが,やはりそこも難易度が非常に高い。3点目は,先ほども委員から指摘があった行動問題への対応について。体罰等のニュースもまだ散見されるが,言葉によるコミュニケーションが難しい子供や,通常の行動様式と異なる行動様式を持つ子供に対して,どうしても押さえ付けるような指導が行われている。それは,先生一人一人が悪いということではなく,押さえ付けるという方法しか知らないからではないか。その意味では,エビデンスに基づいて行動問題に対応していく方法を先生が学ぶ機会を作っていく必要がある。これらを考えると,皆さんがおっしゃるとおり,必要な専門性がとても多く,一人の先生が全てできるようになることはとても難しいと言える。負担軽減の観点からも,私からは,スーパーバイズの体制をどう作っていくか,ICTをどう効果的に活用していくか,福祉などの関係機関と連携し,どうやってチームでその子を見ていくかということなどを提案していきたい。今回の委員をとても楽しみにしている。

【委員】 肢体不自由と病弱のお子さんを受け入れる特別支援学校の校長をしている。病弱のお子さんの中には入院しているお子さんも多数いて,23区南側の10病院ほどに先生を派遣している。この中の何人かと一緒に,中教審の新しい時代の初等中等教育の在り方に関する特別部会の臨時委員として参画している。現職の特別支援学校長が特別部会に入るということは,私は,初等中等教育の中できちんと特別支援教育も併せて考えるということで,大変うれしく思う一方,今日この有識者会議に出て大変うれしいのは,特別支援教育の話を深くできることである。大きな流れとして,初等中等教育の中にしっかりと特別支援教育がウイングを持ちながら,方向性について一緒に考えていくのは大事であるが,私も先日の会議でも述べたとおり,重度心身障害のお子さんや,通学が難しいお子さん,呼吸器を付けたお子さん,他の種別では,全盲の方,ろうの方もいる中で,初等中等教育の流れの中で,十分にそこまで審議できるのかという点については,是非,有識者会議などの専門の場を作って,そこで深く集中的に検討してほしいと発言したところであるため,今日この会が開けたことは大変うれしく思っている。そして,もう一つ,先ほどの説明にもあった医療的ケアの実施の在り方についての委員も行ってきた。医療的ケアの今回の検討では,それまでは肢体不自由を中心とした特別支援学校で行うものとなっていたところが,今回は「特別支援学校」が取れて,小中学校等もあり得るというところが国のまとめとなって,各都道府県に発出された。そうした中で,今,10年間,あるいは,その前を振り返る発言をたくさん頂き,私も同意するところではあるが,この間,非常にグラデーションになっていて,固定の特別支援学級か特別支援学校か通常学級かではなくて,通級にも様々な度合いが出たり,先生が巡回したり,遠隔授業で言えば,病弱のお子さんが元の学校と遠隔授業を行ったり,病室から出ないお子さんが交流したりということに加え,不登校のお子さんにとっても教育の保障として考えられているということで,特別支援教育という制度の枠だけではなく,様々なものがグラデーションでボーダレスになってきている。この有識者会議は,これから10年後がどうなっていくかを考えたときに,これから皆さん方と一緒に深めていくが,様々な進歩の中で,医療も福祉も含めて,多様な課題のあるお子さんが細分化される中で,それに対応することはとても大事であるが,免許を細分化することが本当に大事なのか。そうすると,免許のない方はそこには関わりづらくなってしまうし,免許の充足はまたそれで難しくなってしまう。専門の免許が欲しいという声も十分分かりつつも,ここをどうしていくかというところは慎重に考えなくてはいけないと思っている。歴史的な大きな流れとして,視覚,聴覚,肢体不自由,知的障害,病弱という五つの障害種ごとに独立した学習指導要領が合わさって特別支援学校があるということ,そして,その中に自立活動が,これは障害種別ではなく中身として,心理的な対応,対人的な対応,言語活動,認知に関わる部分などが,どのお子さんにもそれぞれ課題のでこぼこがありながらも,関わる中身としてきちんと押さえられていること,そして,小中学校の通常学級にも頻繁にアドバイスに行くが,通常学級の先生の抱える中にも,そうした課題のあるお子さんがたくさんいるときに,全ての教員にこうしたものが必要になってくることを考えると,来年度から大学で免許を取る方は,特別支援にかかわらず,より充実したカリキュラムに移行していく時期に来ている。そうした点も含めて,私は,自立活動や免許をどう考えていくかの議論をここで十分尽くしたい。これは,中教審の中だけではなかなかできない。そして,もう一つは,様々な対応が必要だという意見が出たが,校長として,教員を代表して述べることは,学力向上である。しっかりと文字,数,言葉,名前を呼ばれたらはっきり分かって,そのお子さんだけではなく,できれば共通語として多くの人とやりとりができるという基礎的な力を付けて,社会の本が読める,理科の本が読めるという中で,自分の意見が言えたり,判断が伝えられたりするという,基礎学力をしっかり付けることが大事。本校のお子さんの多くは知的障害を伴う肢体不自由のお子さんで,この9月に教員を7人追加採用したが,障害の重いお子さんのところに一日二日行って,大学でこのような中身の指導実技を習ったかと聞くと,全員が胸を張って「ない」と首を振っている。障害理論や病理,計画の作り方などについての概要は聞いてきたが,教員はある意味で実務者であり,今回,新学習指導要領では,こうしたところを小中高と接続するために,文字,数,言葉に入る小1の国語の条以前のところが大変充実したが,こうした中身をしっかり教育委員会あるいは校長が連携し,教員にきちんと基礎学力を付けさせる力を付けていくというところも大事にしなくてはいけない。障害の重いお子さん,知的障害があって基礎段階のお子さんについても,きちんと大事なウイングとして捉えていかなければいけないと思う。

【委員】 この多様な時代において求められていることは,自分たちの中に多様性を持つことだと思っている。私自身は四つの立場を持っている。一つ目に,経営という立場である。NPO法人FDAという就労移行支援の事業所の理事長をしながら,大阪でSilent Voiceという聴覚障害者向けの放課後デイサービスをやっている会社の社外取締役と,長野市において通信制サポート校をやっているカシオペアの役員もしている。2点目に,ヒューマン・コメディという,少年院・刑務所出身者の就労支援の会社や,カナリアップという,化学物質過敏症の方々の就労支援をする会社,オトングラスという,視覚障害者やディスレクシアの皆さんの情報保障をするテクノロジーのスタートアップや,そうした働く場所,彼らが学び生きていく上でのサポートをする様々なサービスや事業のコンサルタントをさせてもらっている。3点目に,僕自身は生まれが九州の佐賀で,3歳のときに網膜色素変性症という病気が分かり,現在,光のみが分かる状態になっている。小中高は一般校で育ち,大学は不登校・引きこもりになり,約7年在籍をし,6年前に髄膜炎という病気になり,てんかんという病気を持っている。このような当事者という立場があるのではないかと思っている。そして,4点目に,埼玉県立大学社会福祉学科を,大学開学の中で障害を持つ学生の一例目として入学し,卒業させてもらっている。経営,コンサルティング,当事者,福祉という四つのバックグラウンドを生かしながら,この会に声を掛けていただいているのではないかと思っている。先ほどの説明や皆さんの話を伺いながら,医療,福祉,教育,地域,親などの様々な言葉が飛び交っていたが,一番可能性を感じられるのは,民間というキーワードだと考える。福祉や医療や教育の現場の先生方は一所懸命対応されている。企業はどちらかと言うと,SDGsやESG,CSRやCSVなど,こうした取組に関わっていきたいと考えており,実際にそのような考えを持つ多くの経営者たちを見ている。そして,この領域に何らか関わりたいと考えているサービスや事業を恐らく日本で一番僕は見ているのではないかと思う。少し誇張した表現をすると,僕から見た経営者とは,お金や時間を自由に使うことができる。そして,リスクを取ることができ,何かをやり切ったりすることができる。この民間や経営という立場の人間を,教育のフィールドにおいてどう活用していくか。そして,彼らにどう伝えていのかではなく,どう伝わっていけば彼らはこの領域に参画していくのか。そんな行政や教育の領域と民間や企業との間に関われるような立場で,お役に立てればうれしく思う。

【委員】昨年3月まで流山高等学園の校長をしており,その前は小学校の教員を3年,中学校の教員を8年,特別支援学校の教員を11年,管理職と教育委員会を行ったり来たりという履歴である。特別支援学校の免許状や専門性の話が様々なところで出るが,僕自身が特別支援学校の教員や行政職員として,学校訪問をして指導する際に一番よく言ったのは,教科の専門性をちゃんと担保しなさいということである。教科の専門性を担保することとは,特別支援学校が小学校・中学校・高等学校に伍して(ごして)学校の文化を地域に発信するということ。その中で,子供たちが学習をして,自分たちが人格完成に向けて様々なものを身に付けていくために,教科の専門性をきちんと担保しなさいということをよく言っていた。授業の進め方についても,特別支援学校の先生は,個別的な対応は大変立派であるが,対話的で深く学習をさせていくこと,対話するほどの子供がいないという部分ももちろんあるが,対話的で深い学びをどのように発問によって構成していくのかという意識が不足する例がよくあることも指摘していた。ところが,特別支援学校の免許状や専門性の問題と関係するが,私が人事をやっていた際に,特別支援学校の教員を採用するに当たって,例えば,採用枠が160・170とある中で,ある年の基礎免許状の教科は社会と福祉と体育がおおよそ60~70%だった。要するに,特別支援学校の免許状を発行するところが,多様な基礎免許状を発行するところにない。例えば,数学や,我々が欲しい音楽や美術,工業,商業,農業など,そうした教科をがっちり学習させているところで特別支援学校の免許状を出していない。これは現場の学校としては非常に困る点である。作業学習や専門学科で,人をどうやって連れてくるかというと,人事交流,人事異動,あるいは公募という人事的な手段を工夫し,システム化して,小・中・高等学校の人事の仕組みとかぶせながら,県全体としての仕組みを作っていくことがどうしても必要になる。したがって,そこを勘案しながら,特別支援学校の専門性ももちろんのこと,基礎免許状の専門性をどうやって担保するのか。あるいは,障害のある子供たちが社会で生き抜いていくために,様々な学習をしていかなければならない。専門学科も含め,その学習を担保するための専門性をどう担保するのかということを議論していくべきではないか。もう一つ,通級の仕組みについて,私がいた千葉県では,定数配当が固まる前に,視覚障害の通級による指導,肢体不自由の通級による指導,病弱の通級による指導等を,工夫をしながら始めた経緯がある。各地域にサテライトを置き,そのサテライトに人が集まってくる形で,特別支援学校が小中学校あるいは高等学校も含めて,地域に出ていって障害のある子たちの通級による指導を担当していく。あるいは,各地域で通級による指導の子供の数が一定数いる場合で,担当者がいないからできないという場合には,小中学校と話して特別支援学校の教員を人事異動させて,そこでその能力を発揮させるという取組をやっている。この仕組みを全県的に広げていくためには,どうしても人事交流とのセットで進めていくしかなく,そのことについても議論ができると良い。加えて,小中高等学校の人たちの意識改革が必要だという話があったが,そのためには,小中高等学校の管理職を中心とした人間を特別支援学校と入れ替えていくことがどうしても必要。意識を変えるには人を替えるのが一番早い。そこで育てて,新しいところに行って,特別支援教育の理念をそれらの場所で広げていくことが行われるべきではないか。是非こうした点についても議論ができると良い。最後に,定数的な話で言えば,例えば,特別支援学校の定数では,小学部の定数が非常に少ない。あるいは,知的の学校で,重度の非常に厳しいお子さんと,例えば,私が在籍していたような流山高等学園の非常に軽度のお子さんとで,定数的には同じ定数である。それから,事務職員は,300人の特別支援学校と,70~80人の特別支援学校と,小中高等部があるところであれは同じ人数である。これは非常におかしな話で,こうした点も含めて,定数の話題もしていけると有り難い。

【オブザーバー】前職が国立特別支援教育総合研究所におり,特別支援教育が発展していくプロセスを,初めの頃は教育の立場で,今は障害福祉,医療の方で,発達障害を中心に見てきている。この15~6年の流れを見たときに,「トライアングル」プロジェクトができて,障害福祉と教育が非常に近い関係になったと実感している。ここにオブザーバーとして呼ばれているのもその意味かなと思っている。現在,実際に国リハの発達障害情報・支援センターと特総研で「トライアングル」プロジェクトを推進している立場にある。皆さんの御意見を十分に聞きながら,現実の事業も推進していけたらと考えている。

【委員】あっという間に予定の時間になった。皆様の御意見を伺いながら,非常に忸怩(じくじ)たる思いもしながら聞いていた。前回の検討会議に参加した人間として,理想型に近いものを作ったけれども,余り現場に浸透していないのではないかということや,複数の委員からお話があったように,本当に支援の必要な子に届いていないのではないかということなど,現状が厳しいことを思いながら伺っていた。私どもは,今後,一人一人のニーズに合わせた支援の仕組みを,どのような形であればきちんと行き届くのか,行き届く仕組みを作っていかなければいけない。その点で,皆様のアイデアを是非出していただき,今日も非常に多面的に御意見を頂戴したので,これを整理して,今後検討していきたいと考えている。

― 了 ―

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文部科学省初等中等教育局特別支援教育課企画調査係

(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課企画調査係)