通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議(第2回)議事録

1.日時

令和2年1月15日(水曜日)16時00分から18時00分

2.場所

文部科学省13階13F1~3会議室

3.議題

  1. 高等学校通信教育の質の確保・向上について((1)学校ヒアリング・所轄庁ヒアリング、(2)意見交換)
  2. その他

4.議事録

【荒瀬座長】 定刻となっておりますので、ただいまから通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議の第2回会議を開催いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。
それでは、まず会議に入ります前に、本日の配付資料につきまして、事務局の坂東専門官から御説明をお願いいたします。
【坂東参事官付専門官】 本日の配付資料は、議事次第にございますように、資料1から4まで、参考資料1から4までを御用意しております。
資料につきましては、審議会等のペーパーレス化の取組を推進するため、お手元のタブレット端末に格納しておりますので、そちらを御参照ください。
なお、本日は、初回のペーパーレス会議となりますので、紙の資料も併せてお手元に御用意しております。もし過不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
【荒瀬座長】 それでは、議事に入りたいと思います。本日の議事は、学校と所轄庁、それぞれのお立場からヒアリングを行い、その後に意見交換を行うことを予定しております。
まずはヒアリングに先立ちまして、前回の議論を踏まえ、事務局に資料を用意していただいておりますので、小川係長から御説明をよろしくお願いいたします。
【小川参事官付高校教育改革係長】 では、資料1に基づきまして、今後の検討事項とその検討の進め方について御説明させていただきます。前回の御議論を踏まえ、資料1「今後の検討事項とその検討の進め方について(案)」という資料を準備しております。
まず、「1.今後の検討事項について」でございますが、前回の議論を踏まえまして、検討課題を大きく以下の2つに分けて進めてはどうかと考えております。
検討事項1といたしまして、「高等学校通信教育の質保証方策」を掲げております。高等学校通信教育の質の確保向上に向けて、これまでも様々な取組を行ってきたところでございますけれども、未だに不適切な学校運営や教育活動を行っているケースというものも少なからず見られるというところでございます。初頭中等教育最後の教育機関として、高等学校における通信制課程の担う役割及び責任というものは極めて大きなものであることも踏まえまして、高等学校通信教育の質保証を図るための方策をどのように考えていくべきか、という問立てでまとめております。
検討事項2といたしまして、「新時代の高等学校通信教育の在り方」を掲げております。近年の情報通信技術の急速な進展に伴いまして、高等学校通信教育の質を飛躍的に向上させ得るような、そうした先端技術を効果的に利活用した新しい学びの形というものも生まれてきておる状況の中で、高等学校通信教育の姿も急速に変わりつつあるといったところでございます。これからの時代に求められる資質・能力の育成に向けて、高等学校通信教育の在り方をどのように考え、それから、初頭中等教育最後の教育機関としての質を担保しつつ、先端技術を効果的に利活用した新しい学びの姿を進める方策をどのように考えていくべきか、といったところを問立てでまとめております。
これらの検討事項につきまして、「2.検討の進め方について」でございますけれども、まずは検討事項1「高等学校通信教育の質保証方策」の方から検討を進めていくことをしてはどうか、という形で提案させていただいております。
事務局からの説明は以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。現状の認識といたしまして、点検調査等の実施を通じても、今もお話がありましたが、いまだに不適切な学校運営や教育活動が行われているケースが少なからず見られるということでございます。
なお、最近、既に皆様御存じのことかと思いますが、学校法人神村学園のサポート施設である淡路島学習センターにおきまして、学習指導が放置されていたといったような報道もあったところでございます。本会議では各学校現場での事案も念頭に置いて、実効性のある対策の検討が必要と思っております。そうした中、誤解があってもいけませんので、事実関係について小川係長の方から改めて御説明をよろしくお願いいたします。
【小川参事官付高校教育改革係長】 事務局から今頂きました点について補足させていただきます。御指摘の件につきましては、神村学園高等部通信制課程のサポート施設である淡路島学習センターにて、適切な学習指導が放置されていた疑いがあること、サッカー練習の指導者にドイツ人監督を招聘するという入学前の約束が異なるものであったこと、寮で提供された食事が育ち盛りの高校生にとって質・量ともに不十分だったこと、等が報道されていたところでございます。
これらに関する事実関係につきまして、所轄庁である鹿児島県から聞き取っている内容を簡潔に御報告させていただきたいと思います。
まず神村学園高等部通信制課程としての添削指導・面接指導・試験といったような通信教育の実施に関する点についてでございますけれども、サポート施設である淡路島学習センターは、昨年の4月に開校されたばかりのものでございまして、その中では学習サポートなどを行うとともに、生徒から提出されたレポートを添削先に送付するような、そうした役割を担っていたとのことでございます。
そうした中で、添削指導については、毎月提出することが決められておりましたものの、4月の開校以降、8月までレポートが淡路島学習センターから提出されることもなく、初めて淡路島学習センターからレポートが提出されたのが9月5日だったということでございまして、当初の計画通りに行うことが出来ていなかったということが確認されております。
次に、淡路島学習センターにおけるサッカー指導や寮の運営等に関する点につきまして、こちらは学校として実施する通信教育とは性質が異なるものとなっており、学校法人神村学園が業務提携している淡路島学習センターの運営会社にて独立に実施されていたものでございますけれども、学校側としても、淡路島学習センターとの情報共有・実態把握・管理体制など、運営上の問題があったとの認識が持たれている、ということが確認されております。
以上のことを踏まえまして、昨年12月27日付けで、淡路島学習センターの体制に変更が行われているとのことでございます。具体的には、淡路島学習センターのセンター長が交代されるとともに、同じく神村学園の京都学習センターのセンター長が相談役としてサポートされることとなっているとのことでございます。
現段階における御報告は以上になります。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
では、今後の議事についてということなんですけれども、先ほど御説明いただきました検討事項1と検討事項2ということで分けて議論をしていく。当面検討事項1について、質保証に関することをしっかりと図っていくことが重要であるということで進めていくということを考えたいと思いますが、そのような進め方でよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【荒瀬座長】 ありがとうございます。前回会議で検討事項2に関わることの御意見がたくさん出まして、これも非常に重要なことかと思いますので、これも改めて更に深めてまいりたいと思います。
では、当面は検討事項1につきまして議論を進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、この方向で検討事項1の質保証の方策から具体の話をまた御説明いただきたいと思います。ヒアリングをきょうは予定しておりますけれども、それに先立ちまして、前もって考えを整理する意味も兼ねて、事務局、小川係長から再び御説明をよろしくお願いします。
【小川参事官付高校教育改革係長】 それでは、御説明させていただきます。お手元に資料2「議論のための論点メモ(検討事項1関係)」を御用意いただけますでしょうか。
検討事項1に関しては、高等学校通信教育の質保証方策ということですが、その中でも大きく4点ほどに事務局の方で整理させていただきましたので、資料に沿って御説明させていただきます。
論点1「教育課程の適切な編成・実施等に向けたガイドラインの在り方について」でございます。未だに不適切な通信教育活動が行われているケースが少なからず見られる中で、教育課程の適切な編成・実施等に向けたガイドラインの在り方をどのように考えるか、といったことを論点としております。御議論いただく際の視点の例といたしましては、例えば添削指導に実施に当たり、1回当たりの添削課題の分量が極端に少なく、十分な添削指導ができていない場合や、面接指導の実施に当たり、添削指導の完了前にもかかわらず添削課題の解答を教えるなど、自学自習による添削指導の意義を損なわせている場合など、未だに不適切な通信教育活動が見受けられるところでございますけれども、関係法令の趣旨を明確化すべき事項、その他更なるガイドラインの内容充実が望ましい事項としてどのようなものが考えられるか。それから、通信制高等学校の中には、ガイドラインの理解が必ずしも十分ではなく、適切な教育課程の編成・実施等に向けて活かしきれていないところもありますけれども、その更なる周知徹底・活用に向けた方策というものをどのように考えるか、といったことを挙げさせていただいております。
論点2「教育の質の確保・向上を図るための学校評価の在り方について」でございます。通信制高等学校が自ら学校運営を改善し、その教育水準の向上を図るとともに、適切に説明責任を果たしていくことがより一層求められる中で、学校評価、その中には自己評価、学校関係者評価、第三者評価というものがございますけれども、そういった在り方についてどのように考えるか、といったことを論点としております。御議論いただく際の視点の例といたしましては、学校評価については、学校教育法及び学校教育法施行規則に基づき、自己評価の実施及び結果公表というものが義務付けられておりますとともに、学校関係者評価の実施及びその結果公表に努めることとされておりますが、必ずしも当該法令を踏まえた取組が十分でない場合も見られるといったところ、そうした点をどのように考えるか。さらには、こうした学校評価全体を充実させていくためには、高等学校通信教育の特性を踏まえ、外部の専門家を中心とした評価者による第三者評価の活用等の方策をどのように考えるか、といったことを挙げさせていただいております。
論点3「所轄庁における指導監督等の充実・強化について」でございます。私立の通信制高等学校の設置を認可する所轄庁として、都道府県等においては、所轄する通信制高等学校において適切な学校運営が行われるよう指導監督を行うことが求められている中で、その指導監督の事務の適切な実施の在り方をどのように考えるか、それから、特に広域通信制高等学校のサテライト施設につきまして、所轄庁以外の都道府県の区域内に所在するものに対する指導監督の在り方、これをどのように考えていくか、といったことを論点としております。御議論いただく際の視点の例といたしましては、所轄庁による指導監督の効率的・効果的な実施に資する観点から、関係法令の趣旨を明確化すべき事項、その他更なるガイドラインの内容充実が望ましい事項として、どのようなものが考えられるか。それから、所轄庁の事務体制として、例えば高等学校通信教育に関する専門的な知識・経験等を有する職員等を置いたりすることを通じて、高等学校学習指導要領等を違反するものでないか把握し、適切な指導監督を行うことができているところもあれば、必ずしもそうではない、十全ではないところもございますけれども、そういった点をどのように考えるか。とりわけ、一部の広域通信制高等学校におきましては、全国に多数のサテライト施設を展開し、設置を認可した都道府県の区域を超えて面接指導等が行われている実態がある中でございますけれども、そういった所轄庁やサテライト施設の所在する都道府県や市町村等において十分にそれらの情報が把握できていない場合もあり、このことは通信制高等学校に対する指導監督を困難なものとしている要因ともなっているが、そうした点をどのように考えるか。また、把握された情報を基に適切な指導監督の実施に資するよう、所轄庁とそのサテライト施設の所在する都道府県や市町村等との連携・協力の在り方をどのように考えるか、といったことを挙げさせていただいております。
論点4「多様な生徒にきめ細かく対応するために必要な教育環境の在り方について」でございます。勤労青年のみならず、多様な入学動機や学習歴を持つ生徒が多く在籍している中で、生徒一人一人に寄り添った指導・支援の在り方というものはどのように考えるか、その上で、各高等学校が一人一人の生徒に応じたきめ細かな対応を図っていくために望ましい国や所轄庁が定める基準をどのように考えていくか、といったことを論点としております。御議論いただく際の視点の例といたしましては、不登校や中途退学経験者、特別な支援を要する生徒、帰国生徒、外国人生徒、経済的な困難を抱える生徒など、様々な困難や課題を抱える生徒に加えて、学習時間や時期、方法などを自ら選択して自分のペースで学ぶことができるという特徴を生かして、特定の職業分野等に関する知識・技能等を重点的に学ぶことを希望する生徒、スポーツや文化活動、芸能活動等に力を入れている生徒等、スタートラインも目指すゴールも異なる多様な生徒を数多く受け入れている中で、生徒一人一人に寄り添ったきめ細かな指導・支援等を図っていくための教職員等の体制の在り方をどのように考えるか。とりわけ、全日制や定時制の課程とは異なり、教師が直接指導する機会も少ない中で、生徒の学習意欲を喚起し、個別に自学自習することを中心とする通信教育を自律的に取り組んでいけるよう、添削指導・面接指導の場面はもちろんこと、それ以外の場面も含めてこうした多様な入学動機や学習歴を持つ生徒に対して学校はどのような形で関わっていくことが求められるか。それから、上記のような様々な困難や課題を抱える生徒も多く入学している実態を踏まえ、通信制高等学校における教育相談体制の充実をどのように考えるか。その際に、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの専門スタッフがどの程度どのような形で関わっていくことが求められるか。その上で、各高等学校がこうした多様な生徒にきめ細かく対応できることとなるよう、国や所轄庁が定める基準をどのように考えていくか、といったことを挙げさせていただいております。
事務局からの説明は以上になります。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。今の論点1から4までにつきまして、視点の例ということで御説明を頂きました。こういったことを踏まえて今からヒアリングをお願いしたいと思います。
大変お待たせいたしましたが、学校のヒアリングといたしまして、東京都立新宿山吹高等学校様から25分程度御発表を頂き、その後に15分程度を目安に質疑を行いたいと思っております。
きょうはお忙しい中お越しいただきましてありがとうございました。では、御発表よろしくお願いいたします。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 ただいまご紹介いただきました東京都立新宿山吹高等学校統括校長の梶山隆と申します。
【松木新宿山吹高校副校長】 副校長の松木富美代と申します。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 本日は、このような機会を頂きまして、どうもありがとうございます。それでは、発表させていただきます。配られた紙資料をご覧ください。
本校は、平成3年度に東京都新宿区に開校した4部制定時制、通信制併置の高等学校です。本日は通信制の取組を中心にお話をさせていただきたいと思います。
まずグラフマル1ですが、これは「問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」をもとに作成したもので、皆さんよく御存知だと思うんですけれども、このグラフを見ますと、高校では平成13年ごろからだんだんと不登校や中途退学の数は減少しつつあるという状況です。大体今は両方とも1.5%ぐらいです。数にしますと大体約5万人、計約10万人ということで、この人数は後の説明で関係してきます。学習指導要領総則解説によると、「不登校や中途退学経験を有する生徒や,高齢者を含む社会人の学習機会として通信教育の果たす役割は大きく,学習ブランクを添削指導で補っていくためには課題についての周到な研究と配慮が必要である。」とされています。
グラフマル2をご覧ください。これは、皆さんも御存知だと思いますが、「平成18年度不登校生徒に関する追跡調査」をもとにしたグラフです。この調査は、平成18年度の全国の中学3年生約120万人のうち、不登校であった生徒約4万人が5年後の二十歳になった時の平成23年度に、卒業した中学校が連絡をとり、任意で約1,600名から回答を得た結果です。このグラフを見て、皆さんどういうふうに思われますでしょうか。いろいろお気付きになられると思うんですけれども、特に中学校1年生、2年生の第2四半期、7月から9月の時に最も多く不登校が始まっています。ほかに何かお気付きでしょうか。いろいろお気付きになられる点もあると思うんですけれども、当たり前ですが、不登校は、あえて言いますけれども、4月だけではなく、1年を通してどの時期からも始まっています。このことは私の後の説明で関連してくるところです。
グラフマル3をご覧ください。これは、「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」をもとにしたグラフです。発達障害の割合は平均値でいうと6.5%というのはよく報道されるんですけれども、この調査をよく読んでみますと、小学校1年生では9.8%で、中3だと3.2%ということなんです。学年が進むに連れて低下することについて、この調査報告では「周囲の教員や児童生徒の理解が深まり、そのことが適切な対応につながり、当該児童生徒が落ち着く。」「学校においての生活経験を積む、友人関係ができる、あるいは、部活動にやりがいを見いだすなどにより、当該児童生徒が学校に適応」した可能性があるというふうに言っています。
私は、これを読んでとてもうれしかったです。学校教育の役割を改めて感じました。皆さんの学校には少なからず発達障害の生徒が在籍していると思いますが、学校が配慮すべき生徒に寄り添い、取り組んできた結果としてこのような説明がなされているんだと思います。高校では何%ぐらいになるか。よく2%台ではないかというようなお話もありますけれども、皆さんの学校は2%台でしょうか。ある本には、大人の発達障害ですけれども、約1割という説もあったりします。
グラフマル4をご覧ください。中学3年の時に不登校だった生徒の中学校卒業後の進路です。この調査では、前回調査に比し就学は65.3%から85.1%と約20ポイント増加しました。高校に入った80.9%と、高校に進学し就職もした者4.2%、合わせると85.1%ということです。報告ではその理由として「中学校における不登校生徒に対する支援体制が整えられてきたこと、進学先の高等学校等においても不登校生徒の受入れ体制が整備されてきたこと」と書かれています。このことは、当時テレビや新聞でも報道されました。
これも、中高で配慮すべき生徒に寄り添い、取り組んできた結果だからではないでしょうか。私はこの報道を聞いてとてもうれしくなりました。
グラフマル5をご覧ください。本校の取組結果についてご説明させていただきます。東京都立高校では、転編入も含め、基本的に年3回入学時期を定め、4月、9月、1月に、生徒が入ってきます。基本は4月ですけれども。1学年では、9月転入で、例えば夜間定時制から全日制への出願もできます。本校では、2学年相当以上でも、これが可能です。例えば令和元年度では、本校通信制は4月に136名合格し、在籍は384名となり、9月に11名入って395名になりました。定員が360名なので、定員を超えており、1月募集はしておりません。学習指導要領総則には「通信制の課程の学習の量と質は全日制・定時制の課程の学習の量と質と同等である」と書いてあります。したがって、前籍校が全定通どの課程であっても、原則として、年度途中に前籍校からの学習を引き継ぐことができるわけです。それは量と質が同じだからです。不登校生徒が多くなる9月とか1月に向けて、前籍校での履修状況、地域の実態などを踏まえて、セーフティーネットとして転入に取り組むべきだというふうに考えるわけです。
グラフマル6をご覧ください。これは本校の単位修得率です。単位修得率の計算方法はいろいろあると思います。これは「国語総合」とか「数学Ⅰ」などの各科目の年度末における単位修得認定者数を年度間に履修登録した全生徒数で割ったものの、全科目の総平均です。分子・分母に転入者が含まれていて、退学者は入れておりません。本校ではこれまで教務や生徒指導の方針をたびたび見直してきました。次にそのことをお話ししたいと思います。
グラフマル7をご覧ください。本校添削課題の提出期限、面接指導の在り方、定期考査の受験要件等です。学習指導要領総則解説には「学期当初や年度末、試験前に添削課題をまとめて提出することを可能とするような運用を行ったり、添削指導や面接指導が完了する前に、当該学期の全ての学習内容を対象とした学期末の試験を実施したりすることがないよう、年間指導計画に基づき、計画的に実施することが必要である」と書かれています。このことをどう解釈したらいいのか。これについて様々な解釈があって、公立や私立の通信制のやり方の違いが出てきているのではないかと思います。例えば短期集中で生徒を学校に集めて添削、面接、定期考査を連続して行って単位認定するのでは1年間を通して計画的に学習指導をしているということではないので、高校教育とは言えません。数日間の短期集中で一定の量と質のある高校教育が身に付くわけではないと思います。また、短期集中で生徒を学校に集め、面接指導、定期考査を行い、後から添削指導をするのも高校教育とは言えないと思います。
では、本校ではどうしているか。本校では、添削課題は、年間指導計画に基づき、レポート課題の表紙に示した締切の1か月前から各回締切日までを提出期間と定め、教員は、面接指導、ホームルーム、面談、電話、通知などで提出を促しています。ただし、1月末の指定日までですが、各回締切日を過ぎた場合でも受付をし、添削をし、減点はありますが、評価をし、単位修得につなげています。
面接指導は、年間を通して各自計画的に出席するよう指導しています。基本的に、面接指導は年間24日間の土曜日で、毎回異なる内容で、添削課題の解説ではなく、教員と生徒、生徒同士のやりとりを大切にした思考力、判断力、表現力を高めるような、なるべくということですけれども、活動を行っています。なお、面接指導は、後期最終回までに規定時数を完了すればよいことにしています。興味・関心のある生徒は、規定時間数を超えて面接指導に出席をしています。
それから、前期定期査までに前期分の添削指導、面接指導が完了していないと考査を受けさせないという対応はしていません。例えば、前期定期考査前に添削課題が1通不合格であったとしても、それだけで考査を受けられないとすると、後期の指導が受けられなくなってしまい、年間の単位認定ができなくなってしまいます。そうすると、セーフティーネットとしてどうなのかということになると思います。
なお、本校では、当該年度末卒業予定者が、前期の定期考査時点での添削課題が不足していると、定期考査が仮に合格であったとしても、卒業見込みにはしていません。ただ、それ以降の時点で添削課題に合格した場合は、随時成績会議を行って、卒業見込みを認定し、進路活動につなげています。今年度も何回も臨時成績会議を後期以降行っております。
グラフマル8をご覧ください。これは全定通の生徒在籍数ですが、ご存知のとおり、通信制は増加しています。大まかに言うと、集団就職で、昭和50年代中盤以降は、中退、不登校、発達障害で増えていると思われますが、ここで増えている生徒をどこが受け入れているのか。
グラフマル9をご覧ください。在籍者数と履修者数のグラフです。令和元年5月1日現在でいいますと、在籍数が、公立は5万6,373人、私立は14万1,323人。履修登録者数は、公立は3万7,702人、私立は13万7,926人となります。不活動生を例えば1科目も履修登録をしていない生徒とした場合、不活動生の比率はどうなるかというと、公立の場合では36%、私立では2%になります。いろいろ議論はあるかも知れませんが、この大きな差はどうしてなのか。
本校では前年度に翌年度のための履修登録を生徒に必ず行わせます。そのために、説明会とかホームルームを行い、個別面談をし、これが重要なんですけれども、再三電話をかけ、手紙を送るなどして、粘り強く行います。
グラフマル10グラフマル11は、時間の関係で省略します。
グラフマル12ですけれども、学校基本調査では、通信制の調査で、5月1日現在の新転編入学者数と前年度間の新転編入学者数の統計をとっています。これをもとに5月2日から3月31日までの新転編入学者数を計算することができます。平成30年度は、公立では1校当たり28名、私立では119名となります。不登校は、当たり前ですけれども、先ほどお話しましたが、4月だけではなく、1年を通してどの時期からも始まるわけで、公立では年度間の不登校生等を対象とした募集にもっと力を入れるべきではないかと思います。初めに中退、不登校は合計約10万人というお話をしましたけれども、この生徒たちをどこが多く受け入れているのかということもあると思います。
グラフマル13をご覧ください。学校基本調査では1単位以上修得した生徒の実数を調べています。単位修得ですから、基本的に年度末の値になります。したがって、分母は5月1日の在籍数に5月2日以降の新転編入の数、それに併修生を加えています。これで見ると、単位修得率は、公立では45.7%、私立では89.2%になります。この計算方法でいうと、本校では単位修得率78%になります。1単位も単位修得できない生徒が本校も含めてこんなに多いのはなぜでしょうか。不活動生が多いからでしょうか。どうすれば単位修得率や卒業生数を増やすことができるのかというのが通信制のセーフティーネットとしての大きな課題だと思います。前回の審議のまとめによりますと、公立については、「単位修得率が4割台、5割台であるとする学校も少なくなく、平成28年度の在籍生徒のうち1科目も履修していない、いわゆる非活動生徒も4割程度に達しているという状況にある。単位修得率が低い状況については、厳格な単位認定が行われていると考えられる面もあり、また、「非活動生徒」が多い状況については、学校に在籍を続けることで、生徒の能動的な活動を待つという教育的配慮であると捉えることができる。一方で、面接指導を受けるために登校すること自体が困難であるような生徒一人一人の困難や課題等に応じたきめ細かな指導や支援を行うことができているかという点については、課題を感じている学校も少なくない」と書かれています。
グラフマル14グラフマル15は、時間の関係で省略します。
グラフマル16は、平成26年度の問題行動調査から作成をしました。不登校で特に効果があった措置を、働きかけの方法、教員からの働きかけか、あるいはチームからの働きかけかで分けて、それぞれ多い順にグラフにしました。ご覧のとおり、方法のところでは「電話、迎え」が最も多いというのが結果です。通信制なので、添削指導では郵便でのやりとりが基本ですけれども、生徒支援では、面談とか電話とかを使ったフェイス・トゥ・フェイスの、温かい、触れ合う寄り添った指導が必要なのだと思います。
グラフマル17をご覧ください。学校基本調査では、職名別の教員数を調査しています。生徒の精神面での支援を専門的に継続的に行っている養護教諭、養護助教諭の本務者の配置率は、この20年で見ると、16.3%から33.6%と倍増しています。本務者以外に兼務者、非常勤等を加えると、40.4%から74.3%に上昇しています。本務者は難しいが、必要があるから兼務者や非常勤等を配置しようとする動きが全国的に起きているのではないでしょうか。この間、不登校や発達障害の生徒が増えており、通信制では養護教諭の必要性が年々高まっているのではないでしょうか。これについては、松木副校長より、養護教諭とかソーシャルワーカーとかカウンセラーのことなども含め説明をさせていただきますので、よろしくお願いします。
【松木新宿山吹高校副校長】 では、説明させていただきます。私の数十年に及ぶ養護教諭としての経験と、全日制高校及び通信制高校での管理職としての経験、それから、全国調査を基に通信制課程における養護教諭の必要性について述べさせていただきます。
先ほど梶山校長より、どうしたら単位修得率、そして卒業生が増えるのでしょうかとの問いかけがありました。私はその答えの1つに養護教諭の活用による生徒のリスタート支援があるのではないかと考えています。
養護教諭の職務は多岐にわたりますが、本日は保健室に来室した生徒の個別指導に絞って説明いたします。(スライド1)
まず、養護教諭の配置に関してですが、学校教育法では高校においては必置としていません。(スライド2)
ですが、教職員定数の標準等に関する法律では、全日制と定時制に関する配置基準が示されています。しかし、通信制に関する記述はありません。(スライド3)
ところが、通信制課程における養護教諭の配置はこのように増加しています。なぜでしょうか。(スライド4)
これは学校別の1日の平均来室者生徒数です。必置の小学校、中学校と高校で差がないことが分かると思います。(スライド5)
そして、これが来室生徒の主訴です。私自身が養護教諭時代に、主訴の陰に隠れたもう一つの主訴があることを念頭に対応してきた項目については赤と黄色で示しております。(スライド6)
こちらは主訴に背景要因があると回答されたケースについて調べた結果です。このように養護教諭は、学校の全体像やそのときの行事、対象となる生徒の学校での人間関係や家族関係を含め、生徒の主訴を受け止め、組織的にどのように対応すればいいのかを判断し、日々対応しているところです。(スライド7)
私自身も養護教諭時代には生徒の「先生」という呼びかけの背景にある悲しみや苦しみを聞いてきました。リストカットする生徒は、いつでも苦しみから自分を解放できるようにその道具をポケットに忍ばせていることも生徒が教えてくれました。
養護教諭の役割は、まず、保健室内での対応、次に無事に教室や保護者のもとに返すこと。同時に、継続的支援の必要性の判断と具体的な支援にあります。支援の連携先として、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーはもちろんのこと、医療機関、児童相談所、警察等も視野に入れて考えます。(スライド9)
これは継続支援があると回答した学校においての月別の継続支援の生徒数です。継続支援があると回答した学校も生徒数も高校で特に多いことがお分かりになるかと思います。水色が高校を示しています。(スライド10)
継続支援を保健室登校で見るとこのようになります。教室復帰までの支援日数は平均で1か月以上を要していることが分かります。私もかつて、中学校に勤務していた際に保健室登校に関わった際に、教室復帰までに1年の期間を要したということがありました。
また、もう一つ注目したいのは、中学校、高校で教室復帰できなかった生徒のその後です。更には、保健室登校にも至らなかった生徒のその後です。その何割かの生徒を通信制高校が受け入れているということが推測できます。(スライド11)
明確な将来の夢の実現のための手段として通信制高校を選択する生徒がいます。一方、多様な課題を抱えながら、高校を卒業したいという希望を胸に通信制高校を選択する生徒もいます。(スライド12)
前段の、どうしたら単位修得率、そして卒業生が増えるのでしょうかとの問いの答えとして、私は学習面の支援とともに、生徒個々の背景に応じた継続的なリスタート支援の実現があると考えています。
現在、本校にはスクールカウンセラーとユースソーシャルワーカーがスクーリングのある土曜日に配置されています。1日の終わりに振り返りの会を開き、情報を交換し、生徒支援に役立てています。(スライド13)
小学校、中学校、全日制高校、定時制高校を対象とした全国調査を基に養護教諭による生徒支援について説明させていただきました。これらの支援が通信制においてはより必要であることは言うまでもありません。従来の役割はもちろんのこと、通信制においては新たな役割として養護教諭がチームとしての学校の中核を担い、スクーリングがない日においても生徒を継続的に支援することが必要です。養護教諭という制度は世界に類を見ないと言われている制度です。心と体から生徒にアプローチするという役割を担っています。養護教諭がチームとしての学校の中核を担いソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等とタッグを組んで生徒支援に当たる。私はその実現こそが生徒の単位修得率や卒業生の向上につながるのではないかと考えております。(スライド14)
ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。梶山校長先生と松木副校長先生から丁寧な説明を頂きました。それでは、少し時間をとりまして、委員の皆様から御質問、御意見頂きたいと思いますが、また札を立てていただくということでよろしくお願いをいたします。いかがでしょうか。
じゃあ、森田委員、お願いいたします。
【森田委員】 失礼します。非常に詳細なデータ、ありがとうございました。やはりこういったデータを基に議論するのは非常に重要だなと思っておりますが、その前にちょっとだけ確認をさせてください。一番最初の梶山校長先生の資料につきましては文科省のものですので、母数が出ているんですけれども、松木先生の分に関しまして、これ、例えばなんですが、スライドの11番にある学校数が全部の母数であるんでしょうか。データの収集の方法とか、それから母数について教えてください。確認だけです。
【松木新宿山吹高校副校長】 スライドに記載していますが、これは財団法人日本学校保健会が定期的に行っている全国調査を基にしたものです。全国の小中高を無作為抽出して、その結果、回答のあった学校数がここ(スライド11)に書いてあるとおりです。
【森田委員】 そうしますと、例えば、6番のスライドのパーセントは分かるんですけれども、多分パーセントですよね、これね。
【松木新宿山吹高校副校長】 はい。
【森田委員】 母数は何人なんですか。何に対して何%と算出をしているのか。
【松木新宿山吹高校副校長】 申し訳ございません。こちらの方は、来室生徒の総数の内訳になっておりますが、総数については今手元に数字がありません。公益財団法人日本学校保健会より保健室利用状況に関する調査報告書が出ております。過去のものはホームページ等で公開されていますので、そこで御確認いただければと思います。
【森田委員】 分かりました。ありがとうございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。では、日永委員、お願いします。
【日永委員】 興味深い御発表ありがとうございました。2点あります。まず先ほど不活動生徒の比率のことについて、御発表の資料の3ページのところにあるんですけれども、公立と私立でこれだけの差が出来てしまう背景・要因というふうなことで何か考えられることはあるでしょうか。この数字については全国の数字ですけれども、御校ではこの数字がどのぐらいになっているのか。その差がもしあるとすれば、どのあたりに要因があるのかというのをまずお聞きしたいと思いました。
それから、あとは、本当に学校現場のことを知らないままなので、こういうふうな恥ずかしい質問をしてしまうんですが、養護教諭の方、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーはスクーリングの日に配置をされているというふうなことなんですが、日常的に養護教諭の方がどのようなことを主に業務として担当されている、通信制高校の養護教諭としての仕事ということには日常的にはどんなことがありそうなのかなというのを、幾つか例示でもいいので、お聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 不活動生についてですけれども、なぜほかの公立通信制に不活動生がいるのか、調べてないので分かりません。本校はゼロです。なぜゼロなのか。先ほどお話ししましたけれども、翌年度履修登録しない生徒に対しては再三電話をかけます。スクーリングの日には、昼休みと夕方に2回ホームルームを行います。そこでも話します。実際の履修登録に際しては生徒と個別面談をします。履修登録しない生徒には担任が電話をかけます。電話をかけてもつながらないことが多々あります。それでも粘り強くかけます。最終的に履修登録しない生徒は、ほとんどいません。履修登録しない生徒は、本人の意思で学校辞めますということになります。新年度になりますと履修登録していない生徒はゼロです。学校からいろいろな話しかけをするけれども、電話をするけれども、そのときに背を向けるのだけはやめてほしいというふうに私は言っています。
【松木新宿山吹高校副校長】 本校は定時制との併置の学校ですので、養護教諭はふだん定時制の生徒のケアもしておりますが、通信制に限って言えば、スライド1で養護教諭の職務ということで説明しておりますが、そちらの方の業務をしております。スクーリングに出席できない生徒が平日に保護者の方と登校する際はその対応をします。
また、生徒が入学時に提出する保健調査で生徒個々の情報が提供されますので、それをもとに生徒情報を集約し教員と情報交換をしながら生徒の支援をどのようにしていくかということについて、私も含めて話し合っているところです。
【日永委員】 分かりました。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ほかにはいかがでしょうか。じゃあ、原口委員、中西委員、内堀委員の順でお願いいたします。
【原口委員】 2点お願いいたします。まずSC、SSWと養護教諭が1日の終わりに振り返りの会を持つとおっしゃったと思うのですが、どの程度の頻度でしょうか。SC、SSWが毎日見えるわけではないですよね。
【松木新宿山吹高校副校長】 スクーリングのある日の終わりに集まって、その日あったことを情報交換しています。生徒のふだんの状況については教員側から情報提供します。本校においては、まず居場所としての相談室という位置づけで、そこに多くの生徒が来て、日常の他愛のない会話ですとか、厳しい相談もしていますので、その内容等も即時その日のうちに情報共有するというような振り返りの会を行っております。
【原口委員】 何分ぐらいやりますか。
【松木新宿山吹高校副校長】 当初は5時以降から6時近くまでやっておりましたが、働き方改革を念頭に、ちょっとコンパクトにしようというところで、記録を読んで理解できるものは除いて、特に必要というケースについて三、四十分程度の振り返りの会を行っております。
【原口委員】 そのデータをまとめたりはされていますか。
【松木新宿山吹高校副校長】 はい。まとめておりますし、学期に一度は全教員と養護教諭も含めての情報の共有の会を定期的に開いています。
【原口委員】 ありがとうございます。もう1件お願いいたします。梶山校長先生が、9月、1月にセーフティーネットとしての役割を果たすために転編入を迎え入れたいということをおっしゃってくださいました。ただ、定員を超えているので、1月の分は今は受け入れていないということだったのですが、1月の分を受け入れるとすると、どのぐらい単位としてはとれると予定されて受け入れるのですか。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 単位といいますと?
【原口委員】 1月に生徒さんを受け入れて、そこからの学習はどのくらい可能なのかということです。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 と言いますか、3学期に受け入れるということは、前籍校が全日制や定時制、通信制の場合もあるかも知れませんが、前籍校において転入時までにある程度の一定の学習量があり、ある程度の出席状況があるということですよね。通常で言えば、前籍校の全日制や定時制や通信制でそのまま続ければ、単位認定ができるようなレベルの生徒達が応募できる形になります。本校では、3学期には通常大体3回程度スクーリング日があり、これまで3学期に受け入れていた生徒についていうと、この他に特別スクーリングも加えて補充をするという形です。1、2学期に、全日制、定時制、通信制で通常の学習活動を履修していたのだから、その単位を引き継ぎ、1月からの分のスクーリング、レポートを行わせるという形になります。
【原口委員】 分かりました。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 それでは、中西委員、お願いします。
【中西委員】 先ほど日永委員から御質問があった中の、山吹のお話は分かったんですけれども、公立と私立で不活動生がこれだけの差があることについて、先生はどうお考えなのか伺いたいと思います。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 不活動生がいることに関してですか。
【中西委員】 いや、公立と私立で随分パーセンテージで差がありますよね。それについてはどう見ていらっしゃるかと。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 先ほどは本校では不活動生はいないというお話をしました。学校教育を行っている以上、高校生である以上、少なくとも1単位でもいいから履修登録をして、学びに向かわせるべきだと思います。履修登録せずに在籍するということであると、それは高校生としての活動をしていないわけなので、本校でもそのまま声をかけなければ、履修登録せず不活動生になる生徒はいます。それじゃだめなんだということで、再三生徒に声かけるということです。そのために一番大切なのは、フェイス・トゥ・フェイスで声をかけるということだと思います。
【中西委員】 いや、質問の趣旨として、公立と私立で数字の差が大きいというのがなぜかという点についてどうお考えか。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 本校はこうだということですけれども、私立において不活動生がいないというのは、私がこれまで私立の先生方からいろいろお話をお聞きしたところによると、私立では単位修得は必ずさせるように努力しているとは聞きますけれども、どうしてこのような違いがあるのかというのは、そこの学校に行ったわけじゃないので分からないです。
【荒瀬座長】 では、内堀委員、お願いします。
【内堀委員】 3点お願いします。1つは、デジタル化についてです。生徒とのやりとり、例えば、課題等の配付・提出とか、どこまで学習が進んでいるかという学習履歴みたいなものの生徒への示し方ですね、あるいは学校からの連絡や保護者への通信、そういった部分についてのデジタル化と言いますか、紙ベース・対面以外で何かやられていることがあるかというのが1点目です。
2点目は、生徒支援のシステムについてです。通信制は1人で勉強することが基本なので、続けることが難しい。で、その支援として、面接日以外のサポートでもいいですし、登校可能日を増やしてもいいんですけれども、そういったサポート体制ですね。例えば遠隔通信で結んであって、質問したい子が、決まった時間に学校に来なくても質問できるとか、質問や活動のために登校できる日を週1日じゃなくて何日か設けているとか、そういった生徒の支援体制について何か工夫されていることがあるかということが2点目です。
3つ目は、課題、いわゆるレポートについて何か工夫されていることがあるかです。高校では通信制に限らず知識・技能の定着に重きを置く傾向がいまだに強いように思うんですけれども、例えばそこに資料などから何かを考えさせるような問題を入れたりとか、あるいは自分の意見を書かせるとか、そういう、知識・技能に加えて思考力・判断力・表現力などを育むという観点から、レポートで何か工夫されていることはありますか。以上3点をお願いします。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 デジタル化については、今東京都ではそれを通信3校で進めるということでシステム設計しているところです。学習状況通知というのを毎月郵送しています。それで、生徒は紙ベースで毎月の進捗を見ることができます。学習状況が、例えばレポートが足りないとか、スクーリングが足りないという場合には、一番大切なことは何かというと、電話をかけて生徒に伝えるということです。フェイス・トゥ・フェイス、学校に来たときに直接面と向かって言うというのもあると思います。学習状況通知は、通知表のようなものです。
サポートについてですけれども、実は水曜日に特別の個別スクーリングというのを行っています。土曜日に集団のスクーリングに参加できない生徒を対象にしています。ただ、スクーリングは個別スクーリング全てだけで単位認定はしていません。個別スクーリングはあくまでも「きっかけ」であって、通信制の生徒達もやがては社会に出ていくので、社会で適応できるように、土曜日のスクーリングに適応できるようにという意味での慣らしということで水曜日に個別スクーリングを行っています。
それから、レポートの工夫ですけれども、こちらの方は基本的には記述式です。生徒の意見を書かせたりというようなこともあります。それに対して添削をするわけですけれども、教員の方は赤ペンを使って添削指導をしています。
【荒瀬座長】 じゃあ、時乗先生、お願いします。
【時乗委員】 詳細な説明ありがとうございました。私、通信制高校の点検調査で多くの学校を回っているのですが、今回、先生の御発表の中で、これは山吹に限ったことなのかも分かりませんけれども、不登校等の生徒に何となくスポットが当たった、そういう御発表だったのかなと思っています。
ただ、一方で、通信制の生徒数が増えているところをもう少し調べてみると、ざっくりで言うと、公立は減って私学は増えているという、そういう状況だと思っています。私学の方から話を聞くと、結構積極的な理由で通信制を選んでいる、そういう生徒さんも最近増えてきたということを聞いています。そこで、1点目として、山吹においてはそういった積極的な理由で通信制を選んでいる生徒さんというのが増えているのか、そもそもそういった生徒さんはいないのかということをお聞かせください。
2点目は、2ページですけれども、要は、前期分の添削指導、面接指導を完了していないと定期考査を受けさせないという対応はしていないという形で書いてありますけれども、実際こういう状況の生徒さんというのはどれぐらいいらっしゃるのかお聞かせください。
3点目は、これは校長先生のお考えだろうと思いますけれども、一応先ほどの御発表の中で、短期集中型というのは、これはだめだというような御趣旨の御発言があったかと思いますが、そのところをもう少し詳しく聞かせていただければありがたいと思います。
以上です。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 積極的な理由というと、例えば、芸能活動をしているとか、数学オリンピックの方ですごく頑張っている生徒だとか、そういった生徒が、通信制の場合だと、自由な時間がとれてやりやすい。大学進学なんかに向けても自由な時間がとれるということで入ってくる生徒たちはおります。ただ、私立が増えているのは、不登校であった、発達障害等であるというような生徒達を、年度途中でも受け入れているからと聞いています。そういう層が非常に多いということだと思います。
レポートを提出させることについては、こちらの方でも前期分は前期の段階で完了するようにかなり徹底して再三電話をかけて指導していくわけですけれども、それでもレポートが完了しない生徒もおります。そういった生徒に、もうこれでだめだよというふうに言うんじゃなくて、とりあえずテストを受けなさいと、点数とりなさいということでやっていって、年間での単位修得につなげるような形にしています。生徒にきちんと最終的にはやらせるような形で年間を通して指導しているという生徒が一定数います。
短期集中型がよくない理由は、例えばある数日間とか一定期間だけで高校教育を学ぶことはできないからです。一定量の教科書の分量があって、それは無理だと思うんですよね。そこを考えてみると、やはり年間での指導が必要だと思います。そういった意味で、例えば添削、面接、定期考査を数日間でやってしまうようなやり方はおかしいんじゃないかと思います。1年分をまとめてという意味ですけど。
【荒瀬座長】 よろしいですか。
【時乗委員】 はい。
【荒瀬座長】 森田先生、御質問どうぞ。
【森田委員】 ありがとうございます。ちょっと確認みたいな形で教えていただきたいなと思います。実際に見に行って、いろいろ活動を見せていただきたいなと思った次第なんですけれども、すごく生徒さんへの指導をやられているなということを感じましたが、僕の質問は、簡単に言えば、先ほど単なる在籍というのはお認めにならないような発言があったかと思うんですけれども、生徒さんの中にはペースがあって、少し時間をかけてやられる方もいらっしゃると思うんですね。留年をさせるとか、留年される方とかというのはいらっしゃらないのかということとか、それについて例えば養護の先生たちがどのようなサポートをされているのか。もし事例がありましたら教えていただきたいんですけれども、お願いいたします。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 本校にも、1年目、2年目、履修登録はしたけれども、出席ままならず、成績がとれず、修得した単位がゼロ、ゼロで、3年目から、本校は6年間在籍できるので、それで単位修得して卒業した生徒がいます。不活動生とはそこのところの違いですけれども、不活動生は、履修登録していないわけですよね。高校には、卒業することを前提として入ってきたわけです。その生徒に対して、来年頑張って1単位でもいいから単位取るように履修登録しようよと、なぜそこまで言えないんでしょうか、ということです。履修登録させて、それでも結果としてやはり来られない、教室に入れない、レポートを出せないという生徒たちはいます。でも、一歩でもいいから前に向かせるという意味で、履修登録はさせているという形です。
【森田委員】 コメントになりますけれども、うちは大学なので、多分事例が違うと思うんですが、単なる在籍って実は認めていまして、というのは、やはり家庭の事情もありますし、病気になることもありますし、様々な理由があるので。何か電話かけるので追い詰められてしまう事例とか、あるんじゃないかとちょっとどきどきしながら聞かせていただきました。ないようであれば大丈夫です。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 それこそが、私たち教員のプロたるゆえんなんです。生徒の顔つきを見て、電話での応対を見て、それでこれでもかという形でやり過ぎると生徒は折れてしまいます。現場の先生たちは、生徒の状況を見ながら、履修登録もそうだし、レポートの提出もそうだし、やり過ぎると折れるということはよく分かっているので、そうならないように気を付ける。そこが我々教員のプロたるゆえんだと思います。もちろん休学もできます。それはそれとしてありますけれども、履修登録はさせて、一歩でもいいから来年度に向けて前進しようよというふうなことを、先生と生徒でお互いに確認し合うということは必要なんじゃないかと思います。
【荒瀬座長】 よろしいですか。森田先生の方から養護教諭の先生からの関わりというお話もありましたけれども、松木先生、いかがですか。
【松木新宿山吹高校副校長】 先ほどもお話しさせていただきましたけれども、やはり保健室は、不登校の生徒を保健室登校という形で受け入れてきた実績がありますので本校においても登校したときのケアをしております。
ただ、先ほども申しましたように、それが現在いろんな職種と手を結びながら、組織的に意図的に計画的に行っている段階かというと、計画的なのかなという疑問は残るところです。養護教諭であった私が今通信制の管理職として本校にいる意味がそこにあるのかなと思っていて、そこをこれから梶山校長と一緒に取り組んでいこうと考えています。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 あと、先ほど留年というお話がありましたけれども、本校は単位制なので、留年という概念は全くありません。6年間いられますということで、生徒も、1年生とか1年次とか言わないで、今年入って何年目という形で対応しています。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。では、大河原委員、お願いします。
【大河原委員】 最後によろしいですか。申し訳ありません。貴重なお話どうもありがとうございました。1点だけお伺いしたいんですけれども、今、教員、職員の方がプロとして履修登録に向けていろいろと御苦労されているというお話あったんですけれども、教職員の方々がそういった通信制の中での難しさを理解した上で教えていく、あるいはフォローしていくノウハウをどういうふうに校内で蓄積していっているのか。ほかの学校と研修等を通じていろいろノウハウを共有しているのか。そういった教職員の方のノウハウ蓄積の仕方というのを教えていただければと思います。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 ノウハウというほどではないんですけれども、例えば、これまで9月や1月に向けて入学をする転入のことに関しては、こんなに今不登校生がいて、応募者がいるのに、これを見捨てていいのかという議論を随分してきました。そういう在るべき姿というものです。それから、単位修得させないで退学させていいのか。何とか粘り強く引っ張っていこうという議論をしてきました。ほかの学校と比較してみたというのでなくて、目の前にいる生徒に対してどういう働きかけをしたらいいのか。私は、ずっと全日制の教員をやっていました。その中で、どれだけ自分のクラスから通信制の学校へ転学したかと考えると、可能な範囲で受入れていくべきだと思います。今、若者などが、例えば就職先がないということでひきこもっているという事例もありますが、通信制で何とかすべきではありませんか。そういうことが私たちの大きな願いなんじゃないでしょうか。
【荒瀬座長】 よろしいですか。
【大河原委員】 ありがとうございます。
【荒瀬座長】 それでは、賀澤先生、どうぞよろしくお願いします。
【賀澤委員】 じゃあ、一言。この間、様々な、特にシマクの一部が学校教育とは思えないような状況を作ったりしてきたわけですけれども、現実に公立、私立の卒業する割合の乖離というのは現実にあるんですね。大きな乖離があると。そういう中で、山吹が様々な対応をしていることは前から知っていますし、実績も上げているんだろうと思います。ただ、この山吹の取組というのは、例えば東京公立の3校のものとなっているのかどうか、ひとつお伺いしたいということが1つ。
2つ目に、養護教諭、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーに関しては、これまでも私は様々な場面で主張してきたわけですけれども、都教委が、18年ぐらい前ですかね、スクールカウンセラーを都立高校にも配置をしました。週に半日カウンセラーを置くと。このことで不登校を抱える子供たちにとっては大きな成功を上げたと考えているわけですけれども、現実に、養護教諭がいない都立高校はないわけですけれども、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを配置することによる具体的な教育効果という意味では何があるのか。特に松木先生の立場から、その2職を置くことによってこういった事例で生徒が学習を進めてきたということがあればお教えいただきたいと思います。
以上です。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 都立3校のことについて、私は、本校が7年目なんですけれども、1年目のときから、3校連絡会で、共有をしてきて、それでいろんな課題に気付きました。特に転編入のことについては、いろいろ議論をして、今は改善しています。それから、単位修得の仕方についても、本校の考え方などもいろいろ話をしながら進めてきているので、それぞれ学校ごとに考え方は違いますけれども、それぞれ学校ごとに改善してきていると認識しています。
【松木新宿山吹高校副校長】 スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーと養護教諭の連携というところがあるかと思うんですけれども、スクールカウンセラーは窓口であるというふうに考えています。1つの窓口であって、教員に対しては専門的なアドバイスを与えてくれる。それをもとに生徒を継続的に支援しながら、学校の中で教員や他の支えになるものつないでいくのが養護教諭だと私の経験から思っています。スクールカウンセラーに生徒が相談しに行ったことを素早く私のところに伝えてくれることによって危機的な状況を救え、その後無事に学校生活を継続したということはあります。そういうふうに両者の持ち味を生かしながら連携していくことが大きな生徒への支援になるのではないかというふうに、今までの体験を感じていますが、いろいろお話ししたいことはありますが、生徒のいろんなことが関わってくるので、控えさせていただきます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。梶山校長先生、松木副校長先生、たくさんの御質問に誠実にお答えいただきまして、本当にありがとうございました。まだまだお尋ねになりたいこともあるかもしれませんが、もう1件ヒアリングを予定しておりますので、新宿山吹高校からの御発表、これで一旦区切りたいと思います。本当にありがとうございました。
【梶山新宿山吹高校統括校長】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 それでは、所轄庁のお話を伺いたいと思います。宮城県の総務部で実際にお勤めになっていらっしゃる佐藤委員から御発表をお願いしたいと思います。
【佐藤委員】 皆様、こんばんは。宮城県総務部副参事の佐藤と申します。宮城県の私立学校を所轄する私学・公益法人課に籍を置いております。昨年度までは県立学校の校長をしておりました。しばらくの間おつき合いいただければと思います。
学校基本調査によると通信制高校が253校あるようですけれども、このうちの70%近くが私立という割合になっている。同じように、全国の通信制に通っている生徒たちの中の70%を超える人数が私立の通信制高校。
こういうことで考えていきますと、通信制高校の質の確保、向上を考えるに当たっては、学校教育法や学習指導要領などの法令は公立、私立、国立全部に適用されるわけですけれども、それ以外に、私立学校法など、私立の学校にのみ適用される各種法令、こちらの方も見ていただく必要があると思っております。
私も今年度、ガイドラインに沿って文部科学省の立入調査に同行させていただきました。ガイドラインを拝見させていただいたときに非常に残念だったのは、そこの中に私立ということは一言も出てきません。これは非常に問題だと思っておりました。ガイドラインなどを刷新される方向になるのであれば、私立学校に関しての向き合い方を是非切り口として持っていただくといいと思っております。
これは文部科学省のホームページに私立学校法について書かれているものになります。こちらには、同法の第1条で、私立学校の特性、自主性を重んじること、それから、公共性を高めることによって私立学校の健全な発展を図ることと書かれております。これは特に第2次世界大戦以降ですが、私立学校がそれまで弾圧されたというような歴史もありましたので、私立学校の独自性を守っていこうという精神に基づいてこの法律が出来上がったと聞いております。
私立学校の特性、これは一体何かというと、私立学校が私人の寄附行為等によって設立・運営されるところに起因するものです。ですから、私立学校において建学の精神ですとか、独自の校風が強調されるというところや、所轄庁による規制ができるだけ制限されるというのもこの特性に根差すものであります。
私立学校法は私立学校の自主性を尊重するために、所轄庁の権限、これを国公立の学校に比べて限定すると、同法第5条に書かれております。
さて私立学校法第5条、学校教育法の特例ということで、私立学校には学校教育法の第14条の規定は適用しません。
学校教育法の第14条とは、当該学校が、設備、授業その他の事項について、法令の規定または都道府県の教育委員会もしくは都道府県知事の定める規程に違反したときは、その変更を命ずることができる、です。この部分が除外されます。
ちなみに、設備、授業その他の事項というのは何かというと、当然設備、施設・設備ですとか、教育課程及び学級編成に関する事項、その他の法律に定める学校が学校として存続できる最低必要な諸条件と解されるようです。
それでは、私立学校の所轄庁の権限とは一体何か。学校教育法と私立学校法でもってカウントしていくと、1番から8番までが主な中身になると思っております。
1番の学校の設置・配置、設置者変更の認可、認可申請です。
2番目としては、学校が法律の規定に故意に違反したとき、法律の規定に基づく所轄庁の命令に違反したとき、6カ月以上授業を行わなかったときの学校の閉鎖命令。
それから、学校法人の設立認可、解散命令。
そして、所轄庁の仕事として一番大きく書かれるのは5番。教育の調査、統計その他に関し必要な報告書の提出を求めること。第6条に書かれている部分がよく所轄庁の権限として引用される部分になります。
6番、7番は、見てもらうと分かるのですけれども、おおむねが学校法人への対応なると思っております。
それから、8番としては、業務・財産状況の報告徴収もしくは立入検査というようなことで書かれています。
万が一、私立学校で問題が見つけられた場合や設置認可申請等があった場合には、私立学校審議会の意見をきいて、所轄庁の権限を行使するかどうかということを考えていくことになります。
これが公立学校と教育委員会の関係性とは決定的に違う部分になるということです。
整理をしてみますと、私立学校の設備、授業その他の事項については、法令違反があっても、変更命令を簡単に発することができませんので、何かそのような事実があれば、所轄庁としては行政指導等により是正を求めるというスタンスになります。
そのような行政指導に従わなかった、または非常に大きな違反行為等、放置できない状況が起これば、権限として私立学校審議会に諮って、この権限を行使するかどうかを改めて考えていくというふうな流れになります。
「所管」と「所轄」という表現です。文部科学省の用例としては、「教育委員会において所管の高等学校には」、これはいわゆる公立学校の設置者が教育委員会です。それに対して「所管の高等学校」というふうに書く。それに対して、私立の場合は、「都道府県知事においては所轄の高等学校」と。これはあえて書き分けをしているように私は思っていましたので、所管と所轄、若干言葉のニュアンス違えているかなというふうな印象はここからも受け取れました。
ただし、これは私のとらえ方ですので、余り大きく違いませんよということであれば、その部分は受け入れたいと思います。
ここから宮城県の所轄庁の様子についてお話をしていきます。所轄する私立学校の数が279校。幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、特別支援学校、専修学校、各種学校です。学校教育法の1条校ではない学校も所轄しています。
それから、学校法人も所轄しているのですが、学校数と若干違います。279に対して、こちらが142となっております。大学設置法人などは文部科学省が所轄することになり、こちらの方には入ってきませんし、複数の学校を設置している法人もあるので、数字が変わってくるということになります。
この二百何十校をどのような体制で対応していくかということで、まず私学助成班があります。私学助成班は文部科学省や県単での私立学校に対する様々な助成金事務を担当しており、人員は6名です。
就学支援金は、通信制高校の生徒も当然対象になります。全日制の高校に比べると、支給するときに複雑な手続きが求められます。宮城県として設置認可した広域通信制高校が宮城県以外に設置したいわゆるサテライトキャンパス、こちらに在籍している生徒への支出業務も担当しています。宮城県の所轄庁として、他県にいる高校生の就学支援金事務を行っているということです。逆もまたしかり、宮城県にある宮城県が所轄していない広域通信制の学校が宮城県にサテライトキャンパスを置いた場合は、そちら側の所轄庁で宮城県の生徒に就学支援金事務が行われている、このような状況があります。
それから、学事班。5名おりまして、このうち1人が、公立高校勤務経験者とありますが、学校事務を経験した方です。この5名の中に私は入っておりません。
こちらの方では、様々な学校の細かい部分に対応します。設置認可、学則変更届の処理であるとか、いろいろあります。そのほかに、いじめ重大事態対応。ここに宮城県公立・私立、両方の学校を担当するとなっています。いじめ防止対策推進法でもって、公立学校で起こった重大事態、私立学校で起こった重大事態があったときに、その調査結果が適当であるかどうかを検証するための対応部署が当課になっています。ですから、公立のいじめも当課で見なければならない場面が起こり得るということです。
所定の業務に加えて、私立学校の生徒、保護者、それから教職員から様々な相談が上がってきます。私立学校法なども関係がありますので、例えば保護者の方、生徒の方からいろんな形で相談が上がってきても、最終的には教育委員会が公立学校に指導するようなわけにはまいりません。しかし、現実として相談事案は多く、担当者の負担は大きく、その対応に非常に時間がかかるという業務になります。
宮城県の教育委員会と私立の所轄庁の比較です。県立学校90校です。県教育委員会の事務職員は260名。ただし、ここには義務教育を担当する事務職員は含みますが、市町村立の小中学校分は含みませんので、市町村の小中学校の各市町村教育委員会の数も含まれていないということで解釈をしてください。
それに対して私学・公益法人課は、私立学校279校に対して、配置職員が助成班と学事班の合計11名、プラス3というのは管理職です。この3の中には私が入っています。
当課の業務として、私立学校運営状況現地調査というのを行っております。これは私立学校の振興助成法第12条、ここには所轄庁の権限というのがはっきりとした項目が書かれておりますので、それを根拠としまして、各学校に私立学校における管理運営及び会計処理の状況について現地調査を行うことでもって私立学校の健全な発達に資する。これを目的として、年間に40校ほど、学校、学校法人を訪問させていただいています。
調査項目に関しては、1番から3番までに入れておきましたけれども、教育課程や評価基準等をそれほど詳細に見る立入調査ではないということになります。
今年度は、私立学校運営状況現地調査とは別に、宮城県が設置認可した私立の通信制高校への学校視察を実施しました。文科省の宮城県の広域通信制高校1校の立入検査がありましたので、そちらの方に同行させていただきまして、私の方も一緒に見せていただきました。さらに県単独でも2校視察し、合計3校の学校視察を実施させていただきました。そのときに感じた成果、課題、これをお話しさせていただきたいと思います。
学校運営の状況を知る非常に良い機会だったと正直感じております。このような機会は是非今後もやっていくべきだと思っておりますが、非常に人員が少ないところで恒常的に定期的にやっていくのには結構な負担があります。
それから、学校側からも、学校視察をしてもらったことで、いい反省の機会を得られたという声もありました。場合によっては、私立学校としても確認してもらいたい部分はあるのかなとも感じたところです。
ここからは課題です。余りいいことは書いていません。まず通信制高校の設置に関する基準が甘いと改めて感じます。自由度が高過ぎると感じます。
高等学校の通信教育規程、これは設置基準等にない細かい部分を書いた規程になるわけですけれども、これ自体が緩い規程になっていると思います。例えば各都道府県で私立通信制の設置に関する審査基準を作るに当たっても、通信教育規程をお手本にして作るのではと思います。例えば第5条として、実施校における通信制の課程に係る副校長から教諭までの数は5人以上とするとあります。5人いれば学校ができるということですね。私は非常に違和感を覚えます。5人で賄えない教科・科目の教員については、非常勤講師ですとか、兼務教員を配置するというような形で対応しなさいということだと思うのですけれども、これが、公立学校のいわゆる教職員定数の標準法であればこういうふうな数字は出てこないわけです。教員数については学校運営がしっかりとできる人数を規定しておいた方がいいのではないかなというのが私自身の感想です。
それから2番目、ガイドラインの記載です。こちらがなかなか抽象的で、内容の徹底が難しいのではないかなという実感がありました。これは学校の側からしても、所轄庁が指導するに当たっても徹底の難しい部分だったと感じております。
徹底させたい内容については、より具体的に書いてもらった方がいいと思います。面接指導施設については、特に詳細に書いてもらいたい。こういうふうな例は望ましくないなというふうなことははっきり書いてもらった方がいいと思っておりました。
スクーリングの時間割を書くに当たっても、国語という教科の枠で書くのは望ましくないから、科目でしっかり書いてくれとしてもらった方が望ましいとガイドラインに記してもらえれば、私学への行政指導としてもやりやすい部分になると思いますし、学校側にとっても改善すべき部分が明確になると思います。
学則には教育課程や評価基準の詳細までは記載されず、例えば学習評価に関しては別に定めるというふうに書いてあって、その別に定めるの部分が学則の方に載らないこともありますので、所轄庁として内容の精査が簡単にいかない部分です。
御承知だと思いますけれども、通信制高校の学則変更は、変更の大小にかかわらず私立学校審議会案件になります。しかし、先ほど言ったように、ここに教育課程の詳細であるとか、評価基準の詳細までは記載されませんので、私立学校審議会でチェックすることはできない。例えばシラバスの提出を強制できないので、教育課程の詳細なチェックができないと思っておりました。
学籍管理や単位修得の認定等、通信制高校にとっては非常に大事な部分ですけれども、適正に運用されているかどうかの確認が難しいと感じました。就学支援金事務の担当と学校とでやりとりをしたらところ、ある学校で在籍管理で微妙な部分があったという話が聞こえてきました。これに関しては立入検査の中で確認をして、しっかり校内体制を整えてほしいと指導しました。学籍管理とか単位の認定の状況なんていうのは非常に大事な部分ですから、強く指導できた部分ではありますが、このような事実が見えてこないと対応できないこともあるのが現状だったということです。
学校の実態を把握するためには膨大な資料が必要でした。今回、例えば現地の方に視察に行くに当たっても、事前に非常に膨大な資料を出してもらいました。ここではガイドライン、指導監督マニュアルに書かれている書類をそのまま出してもらった形になりましたけれども、実際には個人情報を含むものについては提出が難しいものもありますので、教員免許状の確認等は現地で行わなければなりません。
それから、書類上で見えない部分については、現地で学校の担当から直接聞くと、こういうふうな重要性は非常に大事だったと感じました。
特に教員免許状に関しては、皆さん御承知だと思いますが、今年、教員免許更新のいわゆる1サイクルが終わるところです。多分今年度から来年度にかけては、教員免許更新講習をしっかり行わなかった免許失効者が例年より多くなる可能性もあるということで、心配していた部分でした。現地調査によって確認できたのでよかったと思っております。
ガイドラインや指導監督マニュアルにある「点検調査」の根拠が不明瞭なので、学校に調査の実施をお願いするに当たっては、法令の根拠があると、私立学校の所轄庁としてはやりやすいと感じております。
広域通信について踏み込んだ話をしますと、所轄庁として遠方にある面接指導施設、サテライトキャンパスでの現地調査は非常に難しいと感じます。宮城県が設置認可した広域通信の学校もありますけれども、宮城県外にサテライトキャンパスを複数持っておりますので、そこへの立入調査はなかなか容易ではありませんし、実情が見えない部分もあります。
面接指導施設の増設に関する学則変更は、私立学校審議会の諮問事項ではありますが、私立学校審議会の中で基準に逸脱しているような状況でなければ、ここで遠方だけを理由に設置不可とはできない現状があります。
行政指導が必要な箇所の発見は、遠方の面接指導施設に関しては難しいと思いますし、もし遠方でのいろんな事故が発生した場合には、今回の神村学園のようなケースはまさにそれなのかなと思いますけれども、所轄庁としての対応が大変になると思います。問題の発見も難しいですし、問題が起こってしまった場合は、更にその対応が難しいと言える部分です。
それから、他の都道府県が設置認可した学校のサテライトキャンパスが宮城県にある場合もあります。宮城県としてこのような施設への立入調査などを行う権限はありません。宮城県の現状としては、平成29年5月1日現在で、これは文科省のホームページにも出てきていますが、宮城県には23の学校が設置した40の面接指導施設等があります。そのうち、宮城県が設置認可したものとして含まれているのが1つだけ。それ以外の39に関しては、他の都道府県が設置認可したサテライトキャンパスになります。実態は全く分かりません。情報の入ってくるすべがありませんので何とも言えませんし、ごらんのとおり、平成29年5月です。今、令和2年、平成32年ですから、大分前の話になりますので、現段階でどれだけ増えているかも分からないということです。今、生徒たちが非常に減ってきている状況の中で、他の都道府県が設置認可したサテライトキャンパスが県内にどれだけあるかも分からない。県内で高校に入学予定者のうちのどれだけが広域通信に入っているかも県としてはなかなか把握しづらい状況があるということになります。
最後になります。令和2年4月1日、私立学校法が改正になります。私立学校法第5条あたりは変わらないようですけれども、新設された条文として、「学校法人の責務」としてこのような条文が載っております。この条文の精神を是非存分に発揮してほしいなと思っております。
学校法人は、その設置する私立学校の教育の質の向上に努めてほしい。この条文が絵に描いた餅にならないようにしてほしいと思っております。
広域通信に関しては、所轄庁だけでの対応は非常に難しいので、是非しかるべき立場の組織でしっかり統括して管理していくような方策を制度上作っていただきたいというのが所轄庁を担当した者としての実感です。
私からの話は以上になります。どうもありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。それでは、今佐藤委員から御発表いただきましたことにつきまして御質問等を頂きたいと思います。なお、時間があともうわずかになっておりますので、最後に予定しておりました資料2の内容につきましての自由討議といいましょうか、御意見頂くのは次回に回させていただきたいと思いますので、きょうは佐藤委員の御発表につきましての御質問等を受けるということでいきたいと思います。ございましたらどうぞよろしくお願いいたします。では、大河原委員、お願いします。
【大河原委員】 御発表どうもありがとうございました。私からは、現地調査のことでお伺いしたいんですけれども、この現地調査で一定の行政指導をするということになると思うんですが、そのあたり、行政指導をした後のフォローアップをどのようにされているのかということを1点お伺いしたいのと、もう1点、少し瑣末なお話になるかもしれませんが、現地調査の法的根拠が私学助成法となっているんですけれども、私学助成を受けていないところ、ほとんどないとは思うんですが、そういったところへの調査をどういうふうにされているのかということをお伺いできればと思います。
【佐藤委員】 まず後半の方ですけれども、まさにこの法を根拠にしているので、助成が仮になかった場合には該当になっていないということで御承知いただければと思います。
行政指導等に関しては、その場で口頭指導して終わるものと、いわゆる書面としてこちらの方で回答を求めるものをあらかじめ整理をして、現地調査を行ったその当日のうちに向こう側にはこちら側のQを出しておきます。それでしかるべきタイミングのときまでに学校の方からそれに対するAを書面でもって回答してもらうというふうな形式をとっているということです。
それから、場合によっては、なかなか行政指導に従わないような学校法人、学校もありますので、そういうところに関してはより厳しく指導することや、大体は3年から5年の間隔で調査を行うところを、頻繁にお邪魔するところもないわけではないです。大体は3年から5年に一度行っているような形というふうに見ていただくといいと思います。
【大河原委員】 ありがとうございます。
【荒瀬座長】 では、時乗委員、お願いします。
【時乗委員】 御説明ありがとうございました。私は、特に私学の広域通信制の質の保障というやつをきちんとしていくためには、所轄庁がきちんとした形で監督指導をしていただかないと、結果的にはうまくいかないだろうと思っています。
ということを考えると、今の御発表によると、現在我々が持っている法律上の問題だとか、あるいはガイドライン等のレベルだと、やっぱりなかなか所轄庁がきちんとした形で私学の方に指導監督を徹底していくというのは難しいという状況だという理解でいいでしょうか。
【佐藤委員】 徹底していくのは難しいというよりは、宮城県の私立の学校とは、いろんな形で、法人、学校にいろいろと話をさせていただくことを通して、学校と所轄庁との関係性を保つようにしながら、何かの問題が発生すれば、こちらの方のアドバイス、助言をすることでいろんなことをこれまでも是正していただいていた部分はありますので、全く手をこまねいて見ていて何もできないというわけではないと思います。
ただ、やっぱり私立学校法の精神もありますので、先ほどお話をしたように、例えば教員委員会が設置した公立学校との関係性のような指導監督というふうにはならない難しさがあります。
言葉の使い方として、所轄庁の指導監督なんていうふうに相変わらず法制上に残っている部分もあるんですが、監督庁というふうなところに関しては、いろんなものを調べてみると、ちょっと解釈が違っているようですので、指導権限を有している部分もありますけれども、全ての学校運営や法人運営に関して全て指導監督権限を持っているというふうなところでもありません。それから、あと、先ほどの私立学校法の改正にもありましたが、法人の責務として、私立の公の教育、公教育を担うものとしてというふうなところもいろんなところに法制上文章も載っておりますので、学校経営を適切にやっていただいていればいいのかなと思っております。
ですから、私立学校の多くがしっかり学校経営している中で、一部の学校でよくないことが起こっているのが今の状況なのかなと思っておりますので、そういうところまで目が届くような仕組み作りができればいいのでは感じております。
【時乗委員】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 では、中西委員、お願いします。
【中西委員】 前回にもちょっとお話ししたのですが、学校評価の自己評価の実施と公表は法令に定められているわけですよね。そういう法令違反が目立つという話は以前からあるわけですけれども、それは実際にものを言いづらいということとの関係で、学校評価どうなんですかというのは、具体的に指導というのは、どんな形で行われ、現実にされていないところがあるのか、そういうケースを実際に経験していらっしゃるのか、その辺、具体的に教えていただければと思います。
【佐藤委員】 学校評価に関しては、先ほどの振興助成法に基づく現地調査、こちらの方でも項目として入れております。ですから、そこの中で、学校評価の実施に関して確認はしておりますけれども、例えば小中高ですと大体やっていますが、幼稚園の学校評価はなかなか徹底されていない状況もあるようです。
そういうところについては、行政指導等を通して徹底するようにということをお願いしているというようなところはあります。
ただ、学校評価の中身も、例えばいわゆる自己評価ですね、あと、学校関係者評価にとどまっているところが多くて、第三者評価までなかなか展開しているところは少ないのかなというのが現状だと思います。
【中西委員】 通信制高校に関してはいかがですか。
【佐藤委員】 通信制高校についても、自己評価をやっている学校はあります。ただ、全てやっているわけではないので、指導項目として是非やってくださいという指導はさせていただいているところです。
【中西委員】 それは繰り返しそうあっても、やっぱりやってくれないということになるんでしょうか。
【佐藤委員】 やってもらうように言い続けると、行政指導し続けるというふうな形になると思います。
【中西委員】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。では、吾妻委員、お願いします。
【吾妻委員】 佐藤先生、ありがとうございました。2点ちょっと伺いたいんですが、質の保証、公教育としての通信制の高等学校、私立でもそういった役割ということでお話を頂いたんですが、いろんな通信制の私立ですと、いろんな教育システムがあって、そういった中で、質保証といいますか、全日制と同じ学力を付けさせるためのということの観点で見ていった場合に、いろんなシステム、いろんな方式の中でどのような形で十分にされているかどうかというところの判断がどのような形でされているのかということが1点です。
それから、もう1点は、大変これが問題になると思うんですが、他県の認可のサテライト施設、これに対する把握や指導が難しいというお話だったんですが、これこそ本当に今いろんな問題になっている部分の非常に大きな部分なものですから、佐藤先生の方でこういうことを考えるべきだろうということの御意見があったら是非お聞かせいただければと思いますが、いかがでしょうか。
【佐藤委員】 まず後半の方から。うちの県にある、ほかの都道府県がサテライトキャンパスとして学則変更の認可をして、出来上がったサテライトキャンパスで何か起こったときですね、いろいろ確認できない部分もある。また逆も起こり得る。それぞれの所轄庁間で連携がとれるかというと、そんな簡単にはいかない現状があると思います。どこがリーダーシップを持ってやっていくかというふうな話になったときには、是非これは、先ほども責任あるそれなりの仕組みを作ってほしいというふうなことで話をしましたが、こういうのは是非文部科学省の方である程度調整していただく必要はあると思います。実態そのものが全く分からないのに、それをやれと言われてもなかなかやれない部分はあると思いますので、進めてほしい部分と思っております。
それから、質の保証の部分ですよね。これに関しては、先ほども何かしっかりとした根拠があって、こういうふうな立入調査、現地調査が恒常的に行えるような仕組みが作れれば、あとはやっぱり先ほど話したように、現地で見ないと分からないことがたくさんありますので、そこの中で、例えば添削教材の質を確認するような形をとる。その添削教材の確認をするためには、やっぱり教員経験者でないと見えない部分もあると思いますので、そういうポジションの人間が同行して見ていくというのが大事だと思います。
あとは、今回も文部科学省の調査に同行させていただいて、改めて感じたのは、どうしても記述式の添削教材が少ない学校が多いという印象がありましたので、これからの学力の在り方などを考えると、是非添削指導の中でしっかり書くような指導を行うべきと思います。これは添削教材を見れば分かるところだと思いますので、そのクオリティを高めるための方策はあると思います。
面接指導の質を高めるためには、教員の確保も是非必要だと思いますので、できれば本務の数が増えて、例えば数学だったら数学の免許保有者が2名いるとか、学校がチームとして対応できるような形を是非私立の広域通信の中でも作ってもらえればと思っておりました。広域通信の方の学校から言わせると、この基準があるので作っているんだけれども、これよりも例えばハードル上げられると学校運営は厳しいとは言われるんですが、質の保証のためにはこういう考え方も必要ですよねというアドバイスはさせてもらっています。
【吾妻委員】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 じゃあ、時間のこともありますので、内堀委員、賀澤委員で一応おしまいということにしたいと思います。お願いします。
【内堀委員】 今お話を伺っていて、私立高校の指導監督そのものが非常に難しい上に、通信制は広域で更に入りくんでいるので、極めて難しいという状況はよくよく分かりましたし、それに対する方策をどうしていくのかというのは次回以降の議論だというお話がありましたけれども、ちょっと実態をお聞きしたいなと思うのは、私立高校でも全日制とか定時制の場合、その学校に入学すると、生徒は移動を伴いますよね。住所を移動するかどうかは別としてそこの県なり市町村なりの住民になるわけですね。ところが、広域通信のサテライト校の場合は、子どもたちは、保護者もそうですけれども、多くが自分の住んでいるところの近くに行くわけですよね。にもかかわらず、県内に指導監督できるところがないという実態がある。そうすると、サテライトに言ってもらちがあかないような苦情や困ったことがあったとときに、遠くの本校の人に話をすることになるんですよね。でも、実際は、仕組みを知らなければ、保護者や生徒は、とりあえず県のどこかに話をするというようなことが最初は起きるような気がするんですけれども、そこが保護者や生徒の実感と乖離していて問題解決につながらない理由なのではないかということと、実際私立の業務をされていて、そういう意味での、リアルな感じの、保護者や生徒からすればそれはそうだよなみたいな話は今まであったかどうか、お聞かせいただければと思います。
【佐藤委員】 まず、広域通信に限らずですけれども、私立の学校で何か起こったとしても、やっぱり保護者の感覚は、どこかに相談したいとなったときに、まず行政だと教育委員会に連絡をします。教育委員会からはうちが管轄じゃないと言われ、当課に来るというようなことで話を聞きます。それが我々宮城県が所轄している私立の学校であれば、話をまず聞きます。
広域通信で他の所轄庁で設置したキャンパス上で起こったことに関しての相談は、私が今までいた中ではないですね。どういうふうな事情でそうなったか分かりません。学校の方でその辺がどういうふうに指導なされているかも実は分かりません。例えば仙台市内にある幾つかのほかの所轄で置いた複数のサテライトキャンパス、結構ありますけれども、そのようなところが、例えばうちは宮城県じゃなくて○○県だからというふうにもしかしてお話をしていただいているのであれば、そちら側に行っている可能性はあります。
【荒瀬座長】 では、最後に賀澤委員、お願いします。
【賀澤委員】 私の方から少し立ち入った話をしますが、ガイドラインが中身まで書いていないみたいな意見があったわけですが、第1回目のこの会議に参加していた立場から言うと、私、ガイドライン出来たときに、これであこぎな学校が何とかなるというふうに率直に思ったところがあります。もちろん公立、私立、指導権限、それぞれ、行政、教育委員会、違いますけれども、一番ポイントが、ガイドラインの読み方をきちんと教育論的立場から読み解く。これは教育委員会ですよね。その教育委員会との連携がなぜ作れないのかというのが1つと、東京都は高等学校籍の指導主事を必ず私学部に派遣していますね。そこでガイドラインの読み解きの仕方を困ることはほとんどないと思います。もちろん東京なら私学部の方たちが全て存じているわけじゃないでしょうけれども、少なくともガイドラインの読み方等々について、派遣した指導主事が説いて聞かせるようなことは当たり前にできると思うんですね。
だから、ここを抽象的と言われちゃうと、それまでの積み重ねがいかがかという気持ちに今なったもので。感情的に言っているわけじゃありませんので。そういう意味では、私学教育をより理解した人を誰か1人でもいいから置くべきだと思います。ウィッツ青山高校があれほど問題になったことは、市に1人も学校教育を分かる人がいなかった。にもかかわらず、認可して、それが大混乱を招いたというふうに私は思っているんですね。やっぱりそこが行政論的にも、1人配置するか、あるいは、権限を基にしないで、高校教育の在り方、通信制高校の在り方についてお互いに議論するかだと思いますね。
ですから、新宿山吹の先ほどの提起も、私はそのたぐいだと思っていますし、私学もああいった取組、学ぶべきだと思っています。余計なことですが、以上でございます。
【荒瀬座長】 いかがですか。
【佐藤委員】 ガイドラインに関して、より具体的に書いてほしいといった中には、やっぱりガイドラインのとおりやっていますというふうな感じで学校が思っているところが結構あって、そこについて例えばここをこういうふうにした方がいいですよと言うと、逆にどこに書いているんですかというふうなことを向こうから切り返されてしまうところがあった。いわゆる学校教育法とか、学習指導要領とか、それを読み解いていけば、ここはこうなりますよねというところについて、全ての学校に見識を持った方がいるといいのかなと思います。むしろ行政側ももちろん大事なんですけれども、設置した学校側でそういうような人材をちゃんと配置しているかというふうなところは大きな問題だなと思っています。学校としての良識を是非働かせていただきたい部分だと思います。
【賀澤委員】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。おっしゃるとおりて、書いたものが伝わらなければどうにもならないわけですから、伝える努力と受け取ろうとする努力と両方があって初めて生徒の、高校生の教育が成り立つということですよね。ありがとうございました。
きょう、これだけで終わるということなんですが、今までの議論で何か事務局の方からございましたら。よろしいですか。
ありがとうございました。それでは、ちょっと私の進行がまずくてオーバーもしてしまって、更には資料2についての内容についての御議論いただけませんでしたけれども、これは次回以降に回すということでよろしくお願いいたします。
では、あと、今後の予定につきまして、また事務局の方からよろしくお願いいたします。
【坂東参事官付専門官】 次回の日程につきましては、2月21日、金曜日の14時から16時までを予定しております。会場につきましては、決まり次第、また追って御連絡させていただきます。
なお、本日の資料につきましては、机上にそのまま置いておいていただければ、後日郵送させていただきます。
以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
それでは、本日、これで終了したいと思います。
梶山先生、松木先生、それから佐藤先生、本当にありがとうございました。
終了いたします。

―― 了 ――

(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)