夜間中学設置推進・充実協議会(第1回) 議事要旨

1.日時

平成30年12月17日(月曜日)13時00分~14時00分

2.場所

三田共用会議所 4階 第2別会議室

3.議題

  1. 挨拶
  2. 委員紹介
  3. 座長選任
  4. 文部科学省における主な取組等について
  5. 意見交換
  6. その他

4.出席者

委員

(夜間中学設置推進・充実協議会委員)
浅田和義  大阪市立天満中学校長(全国夜間中学校研究会会長) 
江口怜   東北大学高度教養教育・学生支援機構特任助教
榎本博次  NPO法人松戸市に夜間中学をつくる市民の会理事長
岡田敏之  京都教育大学教職キャリア高度化センター教授
尾崎勝彦  奈良市教育委員会教育総務部長
小島祥美  愛知淑徳大学交流文化学部准教授
新矢麻紀子 大阪産業大学国際学部教授
新田智哉  東京都教育庁地域教育支援部義務教育課長
野川義秋  埼玉に夜間中学を作る会代表
牧野英一  東京都世田谷区立三宿中学校長(前全国夜間中学校研究会会長)
桝田千佳  大阪府教育庁市町村教育室小中学校課長

文部科学省

丸山 大臣官房審議官(初等中等教育局担当)
望月 初等中等教育局初等中等教育企画課長
中野 総合教育政策局地域学習推進課長
田中 初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室長
上久保 初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室専門職

5.議事要旨

【丸山審議官挨拶】
本協議会は、平成28年12月に成立した、いわゆる教育機会確保法の附則において、法施行後3年以内に法律の施行状況について検討することとされていることを受け、設置するものであり、夜間中学や自主夜間中学専門の皆さまに、委員に御就任いただいた。
本年6月に閣議決定した第3期教育振興基本計画少なくとも1校の夜間中学が設置されるよう促進されること等が明記されたことも踏まえ、それぞれのお立場から活発な御議論をお願いしたい。


座長選任
 岡田委員の座長就任に異議なし。


文部科学省における主な取組等について
 田中教育制度改革室長が資料1に基づいて説明。


【浅田委員】
・大阪市立天満中学校長および全国夜間中学校研究会会長として、夜間中学の現状を伝えていきたい
・教育機会確保法の成立およびそれを基にした枠組みは、夜間学級における教育を推進するには強力である一方で、教育現場の充実はまだまだこれからであると認識している。
・天満中学校の在籍生徒は全部で53名。中国・日本を中心に8か国、年齢は16歳から90歳にわたる。これだけの多様な生徒及び彼らが持つ多様なニーズに対応するには、相当な指導力と力量が必要である。
・外国人生徒に対して日本語指導をできる教員が少なく、また日本語教育に対する支援体制も弱い。また、いわゆる「中学校形式卒業者」は、なんらかの葛藤を抱えている場合がほとんどであり、単なる教科指導のみならず、心のケアを進めていくことも課題となっている。
・教員数を最も危惧している。定数算定があくまで昼間の中学校の枠にはめられ、そこから夜間学級に配置されるため、どうしても教員が不十分な体制になり、きめ細かな指導ができない。


【江口委員】
・夜間中学の歴史に関して、研究してきた。歴史的にも、ここ数年の文科省の取組、現場の動きは目を見張るものがある。現在は、宮城県教委、仙台市教委の夜間中学設置検討委員会にも入っている。以下、現状について気になっていることを3点ほど申し上げたい。
1.東北地方では、公立の夜間中学がなく、夜間中学がいったいなにか理解されていない。まずそこからではないだろうか。中国帰国者の支援交流センターでさえも、「夜間中学なんてあったんですね」と言っている。学び直しのニーズを持った方が夜間中学で学ぶというニーズを持てない。宮城県教委も仙台市教委がセミナーを公開するなどしているが、こういった取り組みをもっと進めなければいけない。夜間中学をまったく知らない地域もまだ全国にはある。夜間中学勤務経験のある先生の声などを、もっと伝えていく必要がある。
2.ニーズ調査は夜間中学設置に向けた大きな課題の一つだが、一方で形式的なニーズ調査だけをやってもあまり意味がない。一方で、夜間中学で「学びたい」「学び直したい」というニーズがあっても、なかなかそれに対応できていない現状がある。今後夜間中学を設置するということを発信していくことで、夜間中学を知ってもらうことができるのではないだろうか。
3.子どもの貧困対策と夜間中学の関係をもっと議論していくべきではないか。宮城県でも、貧困対策で動いているNPO団体等は少なからずある。彼らの不登校支援等に、夜間中学は役立つのではないだろうか。もっと連携できるのではないだろうか。


【榎本委員】
・松戸では、教育機会確保法の成立後すぐ、翌年の2月に、いち早く教育長が公立夜間中学を開校することを表明した。
・昭和58年から36年間にわたって、松戸市に公立夜間中学を開設するように要望してきた。また、自主夜間中学をずっと続けてきて、明日で3100回目になる。これまで、1850人くらいの生徒が卒業した。
・ただし、市民の会と教育委員会との関係が時おり良くない。市民の会は「なんでもやります」と言っているが、教育委員会はあまり情報を流してくれないこともある。協議会の設置等において、もっと進んだ考えにしてもらえれば、我々も教育委員会と協力していくことができるのではないかと考えている


【尾崎委員】
・田中室長の話の中であった、他市からの受け入れ、負担を配分していることについてはあまりよくわかっていない。
・奈良市には春日中が設置されている。昭和53年に夜間中学になった。
・残留孤児やその家族等、多様なバックグラウンドを持つ人が集まっている。中国、ネパール、フィリピン、日本などの国籍を持った生徒がいる。
・生活の関係もあるだろうが、なかなか卒業しない生徒がいる。18年以上在籍している生徒もいる。行政としては対応を考えなければいけないが、コミュニケーションを取る場として活用されている部分もあり、必ずしも学校教育だけで考えるわけにもいかず、考え方が難しい。
・県外から「来たい」という声を受けることがある。関西圏や岐阜などからも来る。このあたりも課題だと考えている。
・県の定数の中で算定されるため、なかなか丁寧な指導ができる体制が作れない。県独自で講師を配置している。


【小島委員】
・外国人児童生徒や、その不就学について研究してきた。東海地方には夜間中学一つもなく、NPOやボランティア団体が、外国人児童生徒や学齢超過者に対しての支援を行っている。夜間中学がない東海地方の現状について、以下、3点ほど報告したい。
1.学齢超過者(over15)の扱い(≒就学事務手続きにおける対応)が各教育委員会・学校によって大きく異なっている。公立中学校にはほとんど入れてもらえない。特に中3で来日し公立中学に転入した外国人生徒の卒業扱いもバラバラで、卒業証書をもらえる場合ともらえない場合もある。彼らが学びたくても学べないことがこの地域の最大の問題。
2.東海地方では中学校への入学・転入を拒まれた外国人生徒は、中卒認定試験を目指すケースが多いが、日本語の問題があって一発合格はほぼ不可能で、だいたい2~3年かかってしまっている現状がある。試験を目指しNPOやボランティア団体で勉強しているケースが多いが、通うのにも交通費がかさんでしまい、また先が見えずにモチベーションが続かず、結果的に断念してしまう生徒も多い。意欲があるのに経済的な理由から断念した生徒を何人も見てきた。
3.ニーズ調査に対する自治体の回答はいったいどうなっているのか。10月のシンポジウムでも見てもらった通り、可児市にしても20~30人、名古屋市にしても150人前後、豊田市についても、同程度、学び直しのニーズを有する不就学の外国人生徒が存在する。我々がシンポジウムを開いても、教育委員会は来ない。夜間中学設置に向けて教育委員会は全く動いてくれないが、いったい彼らは現状をどう認識しているのか。


【新矢委員】
・留学生の日本語教育、日本語教員の養成、識字教育について研究・活動してきた。
・これからの日本社会全体において、だれがどこで外国人に日本語を教えるのか。夜間中学研修を夏に行ったが、現場の先生方も、ほとんど日本語がゼロに近い生徒を教えるのは極めて困難であるとおっしゃっていた。夜間中学でゼロから日本語を教えることはかなり難しく、負担が大きい。この負担を軽減することによって、先生方はもっと他の支援ができる。特に、入門書レベルについては、日本語学校等の民間組織でできるのではないか?できるとしたらだれになるのか?夜間中学に日本語教育の専門性を持つ教員は必要なのか?これらの点について議論する必要がある。
・現行の教員免許制度では、日本語教育の免許を持っているが教員免許を持っていないという先生はたくさんいるし、逆もある。免許取得はかなりハードルが高く、学生にとっても挑戦しづらい。
・夜間中学に集まってくる外国人生徒は、成人のことも多いが、義務教育機関に就学している。彼らは子どもとして扱うべきなのか?それとも大人として扱うべきなのか?日本語教育について言えば成人への基礎教育保障という文脈で考える必要があるのではないだろうか。
・研修を通じて感じたが、東京と関西で夜間中学のカラーが違うので、お互いに活かしあっていければいいのではないかと感じる。東京は、外国人教育に支援がついていて、日本語教育として行っている印象がある。関西は、どちらかというと在日コリアン等への識字教育として扱っている印象がある。お互いに学び合っていければよいのではないか。
地域日本語教育においても、日本語教育と識字教育は非常に分断されていて、個人的に危惧している。
・なお、昨今の入国管理法改正が成立し、また日本語教育推進法についても成立が間近となっているが、これらと教育機会確保法との関係はどうなっているのか?また、拡充された日本語教育予算は、夜間中学の外国人生徒への日本語教育にも充当されるのか?


【新田委員】
・東京では、戦後の混乱期、現場の先生の努力によって夜間学級が続いてきた。
・8校の夜間中学を設置しているが、外国人生徒の数が増えてきている(8割以上)。現場では外国籍者への対応が課題となっている。
・尾崎委員も指摘されているが、二部授業の一部のため、定数が十分に配置されない。校長、副校長が一人ひとりで夜間学級を見なければいけない。東京都では、都として夜間の副校長が配置されるような制度をつくってはいるが、それでも十分ではないという声をいただいている。
・圏外の生徒の受け入れも行っている一方、都内全市区への設置は現実的には難しく、整理していく必要があると考えている。
・現場は先生方の努力でどうにかなっているが、年齢層が上がってきている。今後どうやって若い先生にノウハウ等を伝えていくのか?
・講師や外部人材に頼っている部分もあるが、教員の配置が最大の課題。


【野川委員】
・昭和58年に埼玉に夜間中学を創る会を立ち上げて、現在34年目。当初は日本人60%でスタートしたが、外国人が増え、現在は70%。スタッフは30人で火曜日と金曜日の授業を行っている。
・松戸と同じく、来年の4月に公立夜間中学が新設される。
・12月11日現在、51名の生徒が入学を希望している。自主夜間中学からも入学者がいる。
・自主夜間中学から公立夜間中学に行く流れが作れればと思っており、小さな案内をつくっている(中国語、英語、トルコ語、ハングル、にも翻訳している)。
・夜間中学を作る会と教育委員会とのかかわり方について、10月21日に説明会を開いたので、その際の資料に沿って説明したい。
(オレンジ冊子の2ページを基に、行政と自主夜間中学の会の役割分担を説明)
・法律に基づく協議会はないが、埼玉県教委内に設置検討協議会があり、「夜間学級関係12市町村連絡協議会」がある(埼玉から東京の公立夜間中学に通っている生徒が延べ1000人以上いるため、彼らについて情報共有している)。
 ・協議会を設置するうえで、参考にしてほしい。
・新設する夜間中学においては、給食の用意や養母教員をどうするかなどの課題があり、今月20日に県と話し合いを持つことになっている。


【牧野委員】
・確保法成立後、夜間中学の設置がなかなか進まない状況に対して一番有効なのは、夜間中学説明会を実施することが最も重要である。国から都道府県に説明すれば、都道府県は必ず市町村におろし、担当者が決まっていく。行政において、担当者がいないとどうしてもトピックが過小評価され、話が前に進まない。
・夜間中学の教員は、公募するべきである。世田谷区は全校コミュニティスクールになっており、本校の教員の多くも公募から採用している。そのほうが役割を明確にして採用ができるし、教員のモチベーションも期待できる。
・東京都では、平成30年9月時点で、350名中約30名が入学希望既卒者になっている。既卒の生徒は、多くの場合、発達障がいを抱えている。精神疾患もいる。
・外国人生徒に対しては、日本語指導と生活指導とをそれぞれやっていかなくてはいけない。
・都内夜間中学では、8校のうち5校で日本語学級を併設している。1年間を上限として、日本語学級で日本語を学んだあとに、通常学級に入ることになる。『大地』というテキストを使い、ある程度ノウハウが確立している。
・ただし、日本語指導が充実しすぎると、日本語習得を目的として入学する生徒が増えてしまう。入級相談会等をしっかりやる必要がある。日本語を学ぶための学校ではないのではないか。
・夜間中学には、養護教諭、発達障害のための支援員、が必ず必要である。
・平成30年9月現在、353名の生徒がいるが、ネパール133名(38%)、中国90名(25%)、日本52名(15%)、フィリピン22名(6%)、(大陸からの)引揚の生徒も6%在籍している。ネパールの生徒が急増しており、対応が必要な状況である。
・養護教諭は必ず必要。都では定数として配置されていない。
・入学希望既卒者を増やす以上、発達障害、精神疾患のための支援員が必要。いないと、せっかく来てくれた生徒が定着しない。
・給食も課題となっている。世田谷区では栄養士も配置されているが、経費がかなりかかる。委託費だけで1000万ほど。道府県では、定時制高校と連携していくことが必要ではないかと考える。


【桝田委員】
・大阪府では7市11校に設置されている。昭和44年に2校、平成13年に現在の工数になっている。最大校で8学級215人、最小校で2学級12人。
・外国籍の生徒の増加に伴い、高齢層から若年層へと、生徒が変わりつつある。平成27年から平成30年までの3年間においても、60歳以上は35%から30.6%にまで下がる一方、逆に30歳未満が18.9%から26.3%に上がってきている。
国籍も、中国籍が33%、韓国・朝鮮籍が15%、日本籍が20%。ネパール等が増えてきている。
・大阪府としても、これまで、就学援助や給食の援助も行ってきたが、前知事の財政再建プログラムによって斬られてしまった。そのうえで、以下の3点の支援を行っている。
17市の情報交換(今年度については府外からの受け入れについて議論。なかなかラインは引けないが、これまでの一律お断りを見直し、府内の各市でも、他県とも連携しながら、話し合っていくことになった。)
2学校訪問 授業参観のときは未設置の市区の職員も府の職員も連れ立って参観し、状況を把握している
3広報 大きいポスターや小さなチラシを作り、府内全域のコンビニ等に貼っている(もちろん大阪府のHPにも載せている)
・教頭や養護教諭は必要であると考え、できるだけ配置するようにしている。
・課題としては、以下の二点を認識している。
1貧困や就学援助と夜間中学への支援の関係はどうなっているのか。学齢超過者は就学援助の対象とはならないはず。
2夜間学級に限定した加配措置が必要ではないか。外国人児童生徒、既卒者、さらには不登校生徒が入ってきた場合、必要な指導が異なってくる。現場の先生の努力によってどうにかなっているが、夜間中学に限定した加配が必要(東京都がうらやましい)。
・外国人生徒が増える中で、昼間の中学校・小学校においても日本語指導は大きな課題となっている。独自で事業を組み、予算を要求しているが、なかなかうまくいかない。家族の子どもだけではなく、技能実習生についても考える必要がある(制度上本来は全員高校卒業程度であるはずだが、実際の現状を聞いてみると義務教育未修了者もいる)。市町村はこうした状況において、彼らの「学びたい」という気持ちを踏まえての対応を迫られている。外国人に対する教育や、日本語教育全体について等、全体の設計の中で考えていく必要があるのではないか。


【岡田委員】
・これから、私が前任していた洛友中学校のように、不登校特例校などとの関係も含めて、今後は検討していければありがたい。


【事務局】
・小島委員、新矢委員からいただいた質問については、次回以降、お答え申し上げたい。

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