「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議(第2回) 議事録

1.日時

平成30年10月25日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

経済産業省別館850号会議室

3.議題

  1. 教材「キャリア・パスポート」作成作業について
  2. その他

4.出席者

委員

藤田委員、荒瀬委員、菱沼委員、長田委員、安斎委員、石原委員、戎井委員、神部委員、熊谷委員、小見委員、西田委員、三川委員

文部科学省

鈴木進路指導調査官、迫専門職、ほか

5.議事録

【迫児童生徒課専門職】  皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから、第2回の「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議を開催いたします。委員の皆様には大変お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
 議事に先立ちまして、まずは事務局の方で幾つか進行させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、配付資料につきましてですけれども、お配りしている議事次第に記載しておりますので御確認いただければと思います。
 それでは続きまして、今回初めて御出席される委員の皆様の御紹介をさせていただきたいと思います。配付させていただいている出席者名簿の順に沿って御紹介させていただきます。
 まず、大谷大学文学部教授の荒瀬委員でございます。
【荒瀬委員】  荒瀬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日はまことに申し訳ありませんが、11時半頃に中座させていただきますので、よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  続きまして、全国中小企業団体中央会労働政策副部長の菱沼委員でございます。
【菱沼委員】  菱沼です。どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  続きまして、NPO法人みらいずworks代表理事の小見委員でございます。
【小見委員】  小見まいこと申します。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  追手門学院大学心理学部教授の三川委員でございます。
【三川委員】  三川でございます。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  また、本日、文部科学省事業の調査研究の指定地域である福岡県教育庁教育振興部高校教育課から、お二人御参加をいただいております。
 主任指導主事の古賀様でございます。
【古賀主任指導主事】  福岡県の古賀でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  指導主事の堀様でございます。
【堀指導主事】  同じく堀でございます。よろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  それでは続きまして、前回の議事の要旨につきまして、事務局の児童生徒課鈴木進路指導調査官から御説明いたします。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  前回に引き続きまして、緊密な会議室になってしまいまことに申し訳ございません。
 前回の議論を、議事録で委員の皆様にお配りしております。委員の皆様はもう御了解のこととは思いますけれども、一通りおさらいという形で、少し私から説明したいと思います。8月24日に第1回の協力者会議を実施させていただきました。藤田先生を座長として発足したという形になりまして、キャリア・パスポートを、中教審・学習指導要領を基に作成することになっているということを説明させていただきました。
 この会議において主な意見としては、やはり小・中・高を接続していくときの精査が重要であろう、そして中・高の引き継ぎがその中でも課題であろうという御意見がございましたし、個別の職業でなくて、どういう人になりたいかという目標の持ち方に踏み込めるといいなという御意見がございました。
 それから、入学者選抜についてでございます。中・高・大学と入学者選抜の関わり合いというところでございますが、やはりこのキャリア・パスポートそのものが入試のためのものになってしまうのは、本末転倒ではないかというお話がありましたので、これは自分の振り返り、将来のことを考えると、自分自身を作り上げていくためにどうするかという教材であるというお話が先生方からございました。
 ただ一方で、大学入試でのeポートフォリオとキャリア・パスポートの連動というところがございますので、これに関しましては、別途十分な議論が必要ではないかというお話がございました。
 進学、就職等の接続につきましては、大学でキャリア・パスポートのようなポートフォリオを活用されている例がございますので、積み重ねの接続も可能性として考えられるのではないかというお話がございました。就職した後にその人の指導、それからその人の適性に、今まで作り上げてきたキャリア・パスポートを活用することもありますし、今問題になっています早期離職、特に高校ですと3年以内に3割以上の早期離職があるわけですけれども、そういったものを是正する可能性も持てるようなものになるのではないかというお話がございました。
 このように、第1回は、私たち事務局としても、先生方から闊達な御意見をいただけたと思っております。
 第1回の議事の要旨につきましては以上でございます。
【迫児童生徒課専門職】  それでは、今後の進行につきましては、藤田座長の下で進めていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【藤田座長】  ありがとうございます。それでは、前回に続きまして、今回も座長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は議事が非常にシンプルで、(1)教材「キャリア・パスポート」作成作業についてということなのですが、配付資料を御覧になっていただいてもうお分かりのとおり、今回は福岡県の教育委員会の事例を御紹介いただくために、遠方からお二人の先生にお越しいただいています。まずは先生方の御事例を御紹介いただきまして、その後質疑応答の時間を設け、その後に、先生方の中で作っていただいた原案等につきまして議論を進めてまいりたいと思います。
 それでは、先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  ここでカメラ等の撮影は終了とさせていただきます。
【堀指導主事】  皆さん、おはようございます。本日は貴重なお時間を頂きまして、福岡県のキャリア・パスポートの取組について報告をさせていただきます。私は、福岡県教育庁教育振興部高校教育課の堀と申します。ここからは座って報告させていただきます。
 福岡県では、糸島市を中心とした地域で実施を行っておりますので、キャリア・パスポートのことを「伊都っ子ノート」として取組をしておりますので、そういった表現で紹介させていただきます。
 まず、研究目的になります。時間の関係上省略いたしますが、資料2の2ページのとおりとなっております。
 続いて、研究指定の地域の選定に当たっては、福岡県内でそれぞれの進学時に追跡調査が可能であり、広範囲に進学する傾向の少ない地域として、福岡県西部の糸島市を中心とした地域を選定いたしました。
 実施対象校は糸島市内の小学校4校、中学校1校、高等学校3校を研究指定校として、調査研究を現在実施しております。前原中学校から3つの高等学校への進学率は、平成29年度は40.8%で、本年度は46%となっております。連絡協議会につきましては資料2の5ページの図のとおり組織して、年2回の会議を開催しております。
 続きまして、平成29年度の研究実施状況になります。連絡協議会を2回と担当者会議を2回開催して、各協力校の意見を聴取しながら教材の開発を行ってまいりました。また、12月末には教材を配付し、各学校でキャリア・パスポートの記入とアンケートを実施し、3月に連絡協議会を開催いたしました。
 続きまして、平成30年の研究実施状況と計画になります。本年度は3月末に教材を配付し、5月上旬をめどに各学校で記入とアンケートを実施いたしました。そのアンケート集約を行い、第1回の連絡協議会を開催したところでございます。また、1月末までに伊都っ子ノートの記入を行い、児童生徒の変化や教材の紛失率等の調査を行い、本年の検証を行う連絡協議会を実施する予定としております。
 伊都っ子ノートの作成に当たっては、資料2の8ページのとおりとしております。2の原案作成においては、秋田県と兵庫県のキャリアノートを参考にするとともに、文部科学省から示されたキャリア・パスポート試案を基に、福岡県版キャリア・パスポートの原案を作成しております。4の伊都っ子ノートの素材検討では、最初はクリアファイルを検討いたしましたが、ファイルのインデックスに各学年のタブを付け、1年間の学校行事等のプリントをその間に挟み込み、活用できるものとしました。本日一部見本を持ってきておりますので、後ほど見ていただければと考えております。
 また、伊都っ子ノートの作成に当たって、各学校で使用しているキャリア関係の教材調査を行い、各学校で充実したキャリア教育が実践されていることを確認できたため、既存の教材を活用できるよう、伊都っ子ノートを年度初めと終わりに記入するよう、内容の精選を行いました。
 作成に当たってのポイントは、年間の振り返り、小学校から高等学校までの自分自身の成長の足跡を文字として残すこと、そして中学、高校卒業時の進路決定時に、その時々の将来の目標や就きたい職業を振り返って、自分自身の将来の目標を考える資料とするものとして作成を行いました。
 伊都っ子ノートは、現在福岡県で取り組んでおります「鍛ほめ福岡メソッド」をコンセプトとしまして作成しました。鍛ほめ福岡メソッドは、本スライドのとおり、「鍛えて、ほめて、子どもの可能性を伸ばす!」をコンセプトとした、福岡県独自の指導方法となっております。
 続きまして、伊都っ子ノートを作成する中で、小・中・高等学校を通して、資料2の12ページの3点を共通項目としました。まず1点目は、学校内の授業や学習面に当たる「教科」と、学校行事等の特別活動に当たる「教科外」、そして家庭や地域における活動の「学校外」の3つの領域の目標を設定し、振り返るものとしました。2点目は、伊都っ子ノートの記入を通して、自分自身の成長や変化を知るきっかけとなるものにしました。3点目は、教員や保護者のコメント欄を通じて、児童生徒が周囲の大人たちとのつながりを感じられるものとしました。
 以上の共通項目から、小学校3種類、中学校3種類、高校1種類の計7種類のノートを作成いたしました。
 平成30年度の伊都っ子ノートの実施校、児童生徒数は、資料2の13ページの表のとおりとなります。合計4,800名を超える児童生徒が現在活用しております。
 伊都っ子ノートの活用は資料2の14ページのように、平成29年の末から協力校で実施をしております。記入上の留意点としましては、中学校から要望がありましたが、中学3年生の2月、3月は受験指導で記入を行う時間が取れないことや、入試前の生徒たちの心情を鑑みて、どの校種でも1月に記入することといたしました。
 資料2の15ページは実施アンケートの回収率を示したものとなります。両アンケートともに、各学校に負担を掛けないように依頼したため、保護者アンケートが60から70%の回収率となっております。また教員アンケートに関しては、小学校が低くなっておりますが、担任、副担任の記入が中心となったため、このような回収率となっております。
 ここからはアンケートの結果について報告いたします。皆様のお手元の資料には全ての調査項目を配付しておりますが、時間の関係上、ポイントを絞って報告いたします。
 まず、資料2の16ページ以降の保護者アンケートのイにあります、児童生徒の記入を見て成長を感じられたか、という質問では、成長を感じられたという回答が多くなっております。
 続いて、ウにあります、児童生徒が家庭に持ち帰って伊都っ子ノートを記入することで、将来のことを話すきっかけになったか、という質問では、小学校の保護者において、きっかけとなったという回答の割合が非常に高くなっております。
 エの保護者欄の枠のサイズにつきましては、保護者の負担を考慮し、一言コメントを書ける程度の大きさにしておりますので、各校種とともに80%以上が「ちょうどよい」という結果になっております。
 オの保護者欄で児童生徒へのコメントを記入した感想についての回答は、児童生徒への応援メッセージを記入でき、書きやすかったという保護者が大半でした。しかし一部の保護者からは、何を書いてよいのか分からないという回答もありました。
 続いてキにあります、保護者欄の必要性につきましては、小学校ではどの学年でも「必要」の回答が50%を超えております。しかし、中学校、高校ではいずれも40%を割り込んでおり、「不必要」が20%、「分からない」が約40%と、保護者欄の記入に対しては意見が割れております。
 続いて資料2の23ページ以降にあります教員アンケートの結果になります。まず、アにあります、学齢に応じた内容であるか、という質問では、小・中・高を7段階に分ける記入ノートを作成したため、ほぼよいという結果になりました。しかし高校では3学年を通じて1種類のノートとしたため、小・中に対して評価が低いという結果になりました。
 ウの保護者コメントの必要性につきましては、小学校では肯定的な意見が60%を超えておりますが、中学、高校ではコメント欄の必要性については意見が分かれております。その背景としては、用紙の配付・回収の負担感と、保護者への説明の必要性があると考えられます。
 続いて、エの教員のコメント欄の記入については、小学校では肯定的な意見が多くなっております。しかし中学、高校では、先ほどの保護者欄と同様に意見が分かれる結果となっております。
 続いて、オの記載内容が「教科、教科外、学校外」であることの構成につきましては、それぞれの学校の担当の先生とキャリア・パスポートの構成について検討を重ねた結果、肯定的な意見が多いという結果になっております。
 カの伊都っ子ノートと各学校で使用されている教材との併用については、中学、高校では併用できないという意見が多くなりました。やはり本教材の使用に向けては、各学校でその趣旨や目的をしっかり伝える必要性と、既存の教材との整合性が課題となっております。
 続いて、キの伊都っ子ノートが児童生徒と話すきっかけになるかという質問では、小学校では肯定的な意見が70%を超えております。しかし中学・高校では、進路に向けた面談が定期的に行われているため、意見が分かれてしまったと考えております。
 クの伊都っ子ノートの記入を見て、児童生徒の成長が感じられたか、という質問では、小学校では肯定的意見の割合が高く、中学・高校では意見が分かれております。これも伊都っ子ノートだけでは成長が判断できないという意見が表れているためと考えております。
 続いて、ケの伊都っ子ノートを活用し、学年を振り返る教材としての有効性につきましては意見が分かれておりますが、有効であるという意見が多くなっております。
 続いて、シの伊都っ子ノートの指導上の困難な事例につきましては、教材の回収と保護者アンケートの回収がどの校種でも高くなっております。
 スの学年が上がるときの不安要素につきまして、「紛失」が最も高いという結果になっております。
 続いて、平成29年度から30年度の教材の引き継ぎの調査結果になります。中学への引き継ぎは95%となっておりますが、高等学校への引き継ぎは全体で56.1%となっております。小学校、中学校ともに、卒業式前に児童生徒への説明と、保護者向けに文章を配布いたしましたが、高等学校では担当教員が替わり、教材の確認時期が連休明けになった学校があり、紛失率が高くなっております。
 ここからは、資料2の39ページ以降のとおり、連絡協議会や担当者会議の意見を含めて報告させていただきます。まずアの児童生徒の記入につきまして、目標や振り返りから子供たちの変容が把握しやすいという意見がありましたが、児童生徒に記入の目的を説明することへの不安感や時間確保の必要性があり、また、既存の教材との調整が必要であるという意見が多くありました。
 イの保護者欄への記入につきましては、子供の考えを知るきっかけになったという保護者がいる反面、説明用の文書を配布したり、児童生徒に説明を行ったうえ持ち帰らせても、何を書いていいのか分からないと答える保護者がおられました。記入に当たっては、協力的な保護者とそうではない保護者がおられました。また、年度初めには家庭で記入するアンケートや書類が多く、保護者への負担につながらないのか不安視する意見も頂いております。
 ウの教師コメントの記入では、負担感が大きいことや、記入内容の点検を行ってからコメントを記入するため、時間確保が必要という意見が多くありました。さらに、コメントの記入例を示してもらいたいという意見がありましたが、児童生徒一人一人の記入を見て励ましのコメントを書くという趣旨から、今回はあえてコメントの事例を配付しておりません。
 エの教材の配布と回収では、紛失や汚損・破損の心配や、保護者のコメントの記入後に全員分の教材を回収する負担が大きいという意見が多くありました。
 オの保管につきましては、担任が集めて保管する学校がほとんどでした。保管場所については教室や職員室ですが、保護者のコメントに差があるため、プライバシーに配慮し、児童生徒が自由に他人のファイルを見られないようにする必要があるという意見を頂いております。
 カの学年間の引き継ぎにつきましては、小・中学校では学校内で担任が管理し、進級とともに新担任に引き継ぐという形が多かったようです。
 キの学校間の引き継ぎについては、引き継ぎがスムーズに行われた校種と、担当者が替わったため教材の引き継ぎがスムーズに移行できなかったケースがありました。
 クにありますその他としては、伊都っ子ノートを年度初め、年度末のみ使用するのではなく、ファイルとして学校行事等の記録として活用を検討する学校がありました。また、不登校や特別支援を要する児童生徒への対応や、転出・転入する児童生徒への対応について意見を頂いております。さらに、各学校で使用されている教材との整理を行わないと、キャリア・パスポートが活用しにくいとの意見を多く頂いております。
 ここからは資料2の42ページ以降にあります、管理機関として見えてきた課題について説明いたします。アのファイルとしての素材の活用につきましては、紙媒体なので、その場その場での記入や確認が簡単にできるという利点があります。しかし、小学校から高等学校までの12年間の使用に当たっては、10年で学習指導要領が改訂されるため、記入項目、内容が最新の教育事情に対応できないおそれや、学年や学校間の連携が取れない場合、一貫性のあるポートフォリオにならない恐れがあります。
 イの教材の内容につきましては、小学校低学年は十分に文字を記入できない、また、文字を書くことに時間が掛かることや、キャリア感も発達段階にあるため、中学年からの開始でよいのではないかという意見がありました。また、1年間の記録をファイルとしてとじ込みながら活用を行いますが、1年の終わりにファイルとしてまとめる作業が重要であると考えています。さらに、既存の教材との内容の整理も必要ですが、12年間の記録として必要な項目もあるため、今後も内容の検討が必要であると考えております。
 ウにあります、学校の既存の教材との融合を今後図っていくためには、基盤となる共通の部分と、各学校の裁量で選択できる部分に分けられる内容にすることや、逆に各学校の独自教材を一括してキャリア・パスポートに統一することができれば、重複を避けられるのではないかと考えております。
 エの記入時期につきましては、各学期では回数が多いため、年2回の記入が妥当であるとの意見が多くなりました。また年度途中のワークシート等の記入につきましては、ファイルに取り溜めるように活用し、年度末に自己診断カルテのようにまとめる作業が必要であると考えております。
 オの教員・保護者のコメント記入につきましては、負担感を増す部分はありますが、児童生徒の成長にとって他者評価は重要な意味があると考えております。しかし、保護者のコメント欄については、学校や地域の実態に応じて確認印等の柔軟な対応が必要であるとも考えております。また、学校からはコメントの記入例の提示を求められましたが、一律のコメントだけでは、教員・保護者のコメントの記入の意味自体がなくなってしまうのではないかという心配があります。
 カにありますその他として、ファイルを12年間使用するには、耐久性や紛失等の問題があるため、年度ごとにPDF化するなどの対応が必要だと考えております。さらに、学年や校種が変わることで、教材の引き継ぎが途切れないようにする必要があります。
 資料2の45ページにあります普及活動として、今回の伊都っ子ノートの成果と課題について、研修会等を通じて報告を行っていくことを予定しております。また、成果物につきましても、今後福岡県のホームページに掲載し、学校への活用を促していきたいと考えております。
 課題としては、学校や地域で使用されている教材やeポートフォリオ等の他の教材との連携をどう図っていくか、ということがございます。また、紙媒体の記録では紛失や破損が考えられるため、教材のデジタル化が必要であると考えております。さらに、今回のように糸島市内での限られた地域の実施では効果に限界があるため、大きな枠組みでの実施が、より高い効果を得られるのではないかと考えております。
 以上で福岡県としての報告を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
【藤田座長】  ありがとうございました。大変コンパクトに、また詳細にまとめていただきましたことにお礼申し上げたいと思います。
 それでは、先生方に御質問いただく時間を確保したいと思いますが、本日、資料1・2に加え、参考資料3をお配りいただいており、この参考資料3について1、2分の説明をいただくことは可能ですか。
【堀指導主事】  参考資料3をお配りいただいておりますが、実際に使用しているものはこういう形で配付をしております。小学校は低学年・中学年・高学年、中学校は各学年、高校は3学年通して共通の項目としております。インデックスを付けて、年度初め、年度終わりに記入するというように作成しております。基本的には白い枠が年度初め、少し塗り潰した枠が年度末ということで、表記を統一しております。
 このように記入をしていきますが、ファイル形式でございますので、例えば2学期であれば運動会や、合唱コンクール等が学校で行われましたら、そういったものの感想文等をこの間に挟み込んで、年度末の記入の際に振り返りで、感想文等をまとめたものをこちらへ転記するという構成を考えております。
 特に先ほども触れましたが、1学期、2学期、3学期で記入するのであれば、特に2学期は12月末に記入をして、1月初めにもうすぐ次の3学期の始業式が始まるということで、反省と次の目標立てが非常に期間が短いということになりますので、福岡県としては、この年度初めと終わりで丁度良いのではないかということで、このように各校種とも統一して作成しております。
 これは後程回しますので、また見ていただければと思います。
【藤田座長】  それでは今、資料2に基づきましてプレゼンテーションをしていただきまして、参考資料3で御説明いただいた実物をこれから回していただけるということですが、後半のこともありますので、10分程度ではありますが、御発表いただきましたので、委員の皆様方から、今の御発表につきまして、また、参考資料3につきまして御質問があれば、是非出していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございました。「鍛ほめ福岡メソッド」はかわいい子には旅をさせよという言葉を思い出す、とてもすてきな言葉だと思いました。
 ちょっと幾つか御質問させていただきたいと思いますが、まず資料2について申し上げますと、資料の15ページにおいて、伊都っ子ノート実施アンケートの回収率が、小学校の場合、担任と副担任になったため回収率が低かったということでしたけれども、これはどういうことでしょうか。
【堀指導主事】  伊都っ子ノートを指導した先生ということで考えられたみたいで、直接伊都っ子ノートの指導に携わった先生だけがアンケートにお答えいただいたということになります。
【荒瀬委員】  では、中学や高校はそれ以外の先生もお答えになったということですか。
【堀指導主事】  そうです。
【荒瀬委員】  これは学校の全先生の割合ということですか。
【堀指導主事】  そうです。
【荒瀬委員】  分かりました。ありがとうございます。
 それから17ページについてですが、「伊都っ子ノート」の記入内容を見て、子供の成長を感じましたかという保護者向けの問いに対して、「あまり感じなかった」、あるいは「感じなかった」という回答がありますが、これは何か特徴的な記入等があったのでしょうか。
【堀指導主事】  先生方から頂いた意見では、しっかり書いていない記入や、子供が書いていないものがあったため、そう感じたということです。
【荒瀬委員】  なるほど。
 それから29ページについてですが、これは先生に対するアンケートで、キの部分において、児童生徒と話すきっかけになると思うということに対して、中学と高校が比較的否定的な回答が高かったと思うのですが、私の理解では、キャリア・パスポートというものは、生徒自身が自分で気付くということはもちろんのこと、教員とのコミュニケーションの中で生徒自身が気付けるような場を作っていくということかと思っています。それならば、話すきっかけという点ではこれは非常に重要な材料だと思うのですが、何か余分なものがあったので、これではなく独自教材でなさっていたということであれば理解できるのですが、そういったことなのでしょうか。
【堀指導主事】  そうですね。新聞に関する調査等が各学校で行われており、そちらの方を中心に活用しているということでしたので、そういった教材を活用して日頃面談をしていることから、このキャリア・パスポートが特別こういうきっかけにはならなかったという意見でございました。
【荒瀬委員】  では、参考資料3とも関わってお尋ねしたいのですが、参考資料3で書式を拝見しますと、ここはいわゆる総合的な学習の時間でどんなことを考えてどんなことを学びましたか、といったことや、それを通して自分自身振り返ってみて、どんな力が付いたと思いますか、といったようなことが、質問項目にないように思ったのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。
【堀指導主事】  はい。
【荒瀬委員】  そのことを考えると、キャリア・パスポートの内容は、今後またお考えくださるということですけれども、総合的な学習の時間や、今後実施される高校の総合的な探究の時間においても、そことの関連をどう付けていくのかということが非常に重要な気がするのですが、どうお考えになりますでしょうか。
【堀指導主事】  関連については当然課題はありますが、各学校の裁量で今実施していただいておりますので、統一的な基準が示されれば、もう少し活用の底上げはできるのではないかとは思っています。
【荒瀬委員】  ということは、逆に各学校が自分のところでやっている総合的な学習の時間や、今後実施される高等学校の総合的な探究の時間等と関連を付けていくと考えればよいということですね。
【堀指導主事】  はい。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。
【藤田座長】  ありがとうございます。ほかの先生方いかがでしょうか。せっかくの機会ですので。お願いします。
【小見委員】  では、お願いします。41ページのところに、先ほどから既存の教材との整理が必要であるということが何回か出てきたところですが、具体的に学校の先生から、どのような整理があればと良いという意見が上がってこられたのか、ということをお伺いしたいです。もう1つ、参考資料3の中の最後の高校3年生のときに、「30歳の私を想像しよう」とあるのですが、30歳にしたのは何か意図とかがあるのでしょうか。よく何歳をイメージさせるかということは議論に上がるので、良ければお聞かせいただけるとありがたいです。お願いします。
【堀指導主事】  まず既存の教材の整理ということですが、秋田県における「わか杉っ子ノート」といったような教材を糸島市内でも各学校で作っておられており、高校でも進路の手引ということで、高校1年から3年に向けてどういった進路を目指しているのかということを記入するような、学校で作ってある教材がございます。中学校でも同じように教材があって、それと内容がかなり重なるということを先生方から言われましたので、そういったことの整理をしてまいりたいと考えております。また、今の状態ではこちらは後から入ってきたものになりますので、非常に負担が大きいと言われたところでございます。
 それからもう1つの30歳にした理由につきましては、最初は25歳や60歳ぐらいということを考えたんですが、ちょうど働き始めて、高卒であれば12年、大卒であれば22歳で就職して8年間ということで、約10年間働いた自分を振り返れるようにすれば良いのではないかということで、30歳という時期にしたところでございます。
【小見委員】  ありがとうございます。
【藤田座長】  他にいかがでしょうか。
【荒瀬委員】  御発言の中にeポートフォリオという言葉が何度か出ていましたが、eポートフォリオというのは今実施されていますか。
【堀指導主事】  県としては実施していませんが、各学校で取り組まれているところはございます。
【荒瀬委員】  各学校でeポートフォリオを作っていらっしゃるところがあるということですね。
【古賀主任指導主事】  そうですね。大学入試とは別に考えなければいけないのですが、やはり入試に向けてポートフォリオ的な面も必要ということで、高校の方が逆に先に電子化したeポートフォリオを研究されているところが少しずつ出始めていますので、そことは一線を画して、こちらの場合のeポートフォリオ的なキャリア・パスポートを作っていきましょうということで高校の方にはお願いをしているところです。入試とは別に考えています。
【荒瀬委員】  eポートフォリオという言葉は、JAPAN e-Portfolioというのが今文科省の研究でやっておられるところがありますけれども、そのことでしょうか。
【堀指導主事】 それも含めてですね。
【荒瀬委員】  それも含めてですか。
【堀指導主事】  はい。
【荒瀬委員】  分けないとややこしくなるかと思うのですが、JAPAN e-Portfolioというのはあくまでも研究委託を受けてやっていらっしゃる、まだ成果が出ていないものですので、eポートフォリオというのはポートフォリオの電子化ということで受け止めてよろしいでしょうか。
【古賀主任指導主事】  県としても、例えばJAPAN e-Portfolioを推奨しているというわけではなくて、研究されているところはあるのですが、このキャリア・パスポートに生かす場合に、やはり電子化した方が良いのではないかという意見がありますので、その点でeポートフォリオについても検討していきましょうということになりました。
【藤田座長】  ありがとうございます。eポートフォリオという言葉については若干揺れがあるようで、ある特定の機関に文科省から委託研究という形で現在進行中である特定のeポートフォリオと、日本全体でeポートフォリオの可能性を考えようというものと、2つ同じ言葉が使われているので、若干混乱があるように思います。
 それにつきましても、やはり現実問題として、中学生・高校生が入試を全く考えずにキャリア・パスポートを作るということなど、むしろ現実離れしているので、その入試との兼ね合いというのも、ここでまたじっくり議論してまいりたいと思います。
 時間が限られておりますが、あとお1人お2人、もしあれば。どうぞお願いします。
【西田委員】  23ページについて、教員アンケートで、学齢に応じた内容であったと思うかという質問があり、その中で特に高校が「あまり思わない」の割合が高くなっていますが、どんなところで先生方がそう思ったのか、教えていただければ参考になると思っています。
【堀指導主事】  特に高校が高くなっているんですが、高校は校種が普通高校2校と職業専門高校が1校ということであり、大学進学を支援する学校と、就職を支援する学校がありますので、そこを一律でやるとなかなか合わないという御意見も頂いております。そういった高校のカラーに応じたノートの作成も検討しなければならないという意見もございました。そういった面では余りそぐわないという意見が多かったのではないかと思います。
【西田委員】  中学校は何かありましたか。特に聞いていないですか。
【堀指導主事】  中学校は特に御意見は言われていません。
【戎井委員】  今の話に関連して、24ページの学齢に応じた分量であったと思うかという質問について、「あまり思わない」の割合が特に高校で高いのは、内容項目が合う、合わないという話なのか、分量で言うと量が多過ぎるとか、少な過ぎるという話なのか、そのあたりを教えていただけたらと思います。
【堀指導主事】  高校はやはり見ていただくように3枚構成で、量が小・中に比べて多いということになります。
【戎井委員】  量が全体的に多いということですね。
【堀指導主事】  量は多くしておりますが、県としてはもう少し少なくても良いかと思っています。ただ少な過ぎると、高校であれば、情報が増えなければおかしいということにもなります。ただ、先生方からは時間がなかなか取れないという意見があり、そういった面ではやはり時間に合った量じゃないというのはよく言われる意見でございます。
【戎井委員】  なるほど。ありがとうございます。
【藤田座長】  ありがとうございます。大体時間の配分から言うとこのくらいかなと思いますが、最後に1つだけ私の方からお伺いします。高校の先生方の回収率というか、引き継ぎ率がよくなくて、御説明の中では、5月の連休明けになってから引き継いだケースもあったというお話しがありましたが、その中で担任の先生が替わったためいうお話しがあったところですが、その辺りのいきさつというのは、高校に進学するときにはもう避け得ない課題なのか、それとも連絡を徹底したり認識が深まったりすると、そういった問題というのは解消し得るのか、具体的に何があったのか、差し障りのない範囲で教えていただいてよろしいでしょうか。
【古賀主任指導主事】  先ほど小学校から中学校、高校とお話ししましたが、基本になるのは前原中学校というところなんですけど、そこの校区の小学校が4校あって、90何%がほとんどその中学校に行きます。その引き継ぎはかなりできるんじゃないかということで考えていますが、この中学校から高校3校に行くのか、というところがあります。先ほど御説明があったように、やはり高校入試がございますので、40%とか46%で、半分以上は違うところに行ってしまっていて、そのキャリア・パスポートを1校の中学校からその3校に持っていったということで、高校の方も、それがある生徒とない生徒で差がどうしても出てしまいまして、高校の先生方の認識の中で、前原中学校から来た生徒はそういうのがあったんだな、ということで、5月から引き継いでいただいたというところで、本来ならやはり全てのところで共通のものがあれば、高校の方もかなり引き継ぎやすいのかなということが課題として考えております。
【藤田座長】  なるほど。たまたまその高校への進学率が中学校からは4割ぐらいで、他の学校からいらっしゃる方がむしろ多数派なので、先生方の意識がなかなかそこまでいかなかったということですよね。逆に言えば、仮に全国一律で物事がスタートしていけば、その問題というのはおのずと解消されていくということになりますか。
【古賀主任指導主事】  その問題は分かっていたんですけれども、それでも少しやってみようということで地域の選定をさせていただいたところです。
【藤田座長】  分かりました。それから本当にこれも同じような質問になりますが、先ほど既存の教材という形で御質問が出たと思うのですが、これはいわゆる既存の教材とのこれからの融合化であるとか統合化という道は残されていそうですか。それともやはりそれは永遠の課題として残りそうですか。
【堀指導主事】  学校によってはもう学校の判断でキャリア・パスポートを使って来年度から取組をしたい、小学校であれば6年間通して持ち上がっていきたいという意見も頂いておりますので、このキャリア・パスポートが普及すれば、当然融合化、統合化というのは可能だと考えております。
【藤田座長】  ありがとうございます。先生方いかがでしょうか。よろしいですか。
 それではまだまだ議論を尽くしていきたいところも残っていますが、時間の関係もございますので、先生方に心からお礼を申し上げて、次の議題に移ってまいりたいと思います。
 それでは、前回の会議におきまして、各校種ごとのキャリア・パスポートの例示、資料についての意見の取りまとめをしてくださるようにお願い申し上げました。それぞれの校種で取りまとめていただいた内容につきまして御紹介いただきたいと思います。非常に限られた時間ですので、先生方には緻密な御議論をしていただいてたところ大変恐縮ですが、学校種当たり10分程度で、熊谷先生、安斎先生、それから戎井先生の順で、小・中・高と1御説明いただけたらと思います。
 熊谷先生からお願いします。
【熊谷委員】  よろしくお願いいたします。埼玉県川口市立朝日東小学校の熊谷と申します。よろしくお願いいたします。
 10分ということですが、大きく6点申し上げたいと思います。まず1点目です。小学校はA案とB案がございます。メールのやりとり等で取りまとめていったところでございますが、最初に文科省から示していただいた案を参考に、このA案ができております。
 このA案でどうなのか、ということでB案ができております。A案とB案を見ていただくと分かるのが、1番がレイアウトの違い、それからA案の方は、全て網羅しているわけではないのですが、児童向けと、それを指導するときの教員が、こういうところにポイントを置いて指導してくださいね、という、いわゆる教員版も併せて添付しました。Aでいこう、Bでいこう、ということは別として、指導者がこういう観点で見ていって欲しいというものは、付けなければならないのではないかということです。
 それからもう一つ、A案とB案の大きな違いですが、A案が非常に細かく、B案の方が一見雑駁にできているように見えるところです。B案は文字数を減らしました。それからB案の方は徹底的に自己肯定感を醸成するというところに力を入れました。以上が1点目です。
 2点目に参ります。例えば1学期を振り返ろう、2学期を振り返ろう、3学期を振り返ろうというのは3学期制の学校ですが、2学期制の場合、約半年たってから半年間の生活を振り返ろうということになります。子供は忘れてしまいます。覚えていないです。ですから、短期での振り返りカードのようなものをポートフォリオのような形で蓄積していかなければいけないと思っています。これとは別途に、各学校で工夫して、カードのようなものをどんどんファイルに入れていって、それを見直して、ああ、そうだったなということでこちらに記載していくことはやはり必要であると思っています。
 それからもう一つ大事なことは、年度当初に目標を立てるんですが、それを途中で変更してもいいんだ、修正してもいいんだということです。こういう人になりたいといっても、途中で憧れの人が変わってもいいわけでございますから、途中の変更や修正ができるような、小まめな振り返りが必要になると考えています。
 3点目です。その振り返りなんですが、実は埼玉県内でも既に各学校で同様のキャリアのこういうポートフォリオというか、パスポートのようなものを作って、実践している学校がたくさんございます。どういうふうに使っているか聞いたところ、大抵が通知表を付ける前に子供に自己評価をさせて、教員が逃していた観点がここにあったな、ということがあるため、通知表を付けるときの参考資料にしているという意見がとても多くございました。それでいいのかなとは思うんですが、参考までに。
 4点目です。これ1枚を、又は見開きのものを、小学校は45分でございますので、1単位45分の授業の中で全て書かせるという発想からは離れなければいけないかなと考えています。なぜならば、A案で例えば、3年生「○学級をふりかえりましょう」というのがあって、学習については国語、算数……体育とあるわけですが、これは各教科ごとに年度当初にガイダンスをして、今学期は皆さんにおおむねこういう力を付けてほしいということが教員から指導がなければ、例えば、手を挙げられるようになりたいですとか、漢字をあと100個覚えたいですとか、そういうもので終わってしまう気がしますので、教科で書くものがあるのであれば、それは評価等それぞれで書かなければならないと考えられます。
 1単位の中で学習面も生活面も学校面も学校外のことも全部網羅して、さあ45分で書きなさい、というのは無理でございますので、家庭へ持って帰ってここは書かなければならないというものもあると思います。1単位45分で書くという発想から離れるということであります。これが4点目です。
 5点目です。例えば修学旅行というものがございます。A案でいけば後ろの方、B案も後ろの方になりますが、これは他の行事にもカスタマイズして使えるということなんですが、例えば修学旅行ですと、実際はしおりというものを作って、毎日、1泊2日でしたら初日の夜、自由時間に振り返りをしおりの中に書き込むということは、どの学校でもやっていることでございますので、そういうしおりを作るときの参考資料には大いに活用できるかなと思っております。つまり、行事の特性に合わせてどんどん変えていくということが大事かなと思います。これが5点目。
 それから最後です。特別活動の中で学級活動、内容(3)というものが新設されました。これがキャリア教育を中心としているわけでございますが、前回の会議でも、例えばこれを書くのに、その学級活動、内容(3)を1単位45分で書くのではないというお話をいただいて、非常に心強かったところでございますが、例えば今学期を振り返りましょうというものを書くときに、事前に書かせておいて自己を振り返らせておいて、学級活動の時間にクラスの歩みとして振り返る、そして次の活動ではどういうふうに頑張ろうか、来学期はどうしようかという学級活動につなげる工夫は必要になってくるかと思います。
 つまり年間35時間の学級活動の計画は既に各学校立っているわけでございますから、そこへ1時間使ってこれを書いてください、となると、計画を変更しなければならなくなってしまいますので、事前の活動や事後の活動にフルに活用していただくということが現実的かと考えております。
 まとまりませんが、以上6点でございます。
【藤田座長】  ありがとうございます。時間の短い中で6点まとめていただきました。大変助かりました。後で十分な質疑応答の時間を作りたいと思いますけれども、小・中・高と全体を行ってから、振り返らせていただきたいと思います。
 では、安斎先生、お願いします。
【安斎委員】  中学校例示資料をお渡ししていますが、先ほどこの例示を出す前に、もう一度部会で話し合って変更となった点がありますので、先にお伝えします。
 まず、一番最後のページ、中学校3年生の学年末の振り返りの裏ページの「私の履歴」というところで、小学校1年生から中学校3年までの9年間のとなっていますが、一番最初の扉ページで「学びの軌跡を記録し、積み重ねていきましょう」と表書きしたものですから、ここを「学びの軌跡」と変えたいという話になりました。
 また、これは各学年に共通するもので、学年末の「この1年間を振り返って」で4段階評価をしてもらうところに、基礎的・汎用的能力を書き入れてみたのですが、人間関係形成など、各項目4つの基礎的・汎用的能力をあえて入れない方がやはりいいのではないかということになりましたので、こちらは入れないという形で提案したいと思っております。
 では、以上2点が大きな変更点となりまして、次に、どのような観点で見直していったかについて説明させていただきたいと思います。国が提示するものが、どの程度各自治体等に縛りがあるものか分からないというところも少し不安で、私たちで共通理解できないままではあったのですが、最初に試案として出していただいたものを基に、大きく枠等は変えないというところで作りました。
 ただ作っている間に、先ほど小学校の方でもありましたが、これをまとめるためには、その前段階としてのいろいろな振り返りシートですとか、その学期ごとに書くような資料というものがあってこそ、ここにまとめていくものができるということが挙げられました。
 内容の変更について、まず中学校1年生のところを見ていただきたいのですが、「なりたい自分になるために身につけたいこと」というところで、赤で4つの分野、項目が変更になっています。学習面、生活面、家庭・地域、その他と振り分けましたが、こちらは小学校から高校まで全部同じような項目で振り返ることができるといいかな、ということで、一応それぞれとつながるように、この項目立てを整理してみました。
 ただ、この項目でいいのかというところも、もう一度この研究会議でも整理できればと思います。その他というところでは、最初の例示では部活動などという形になっていたところですが、もう少し範囲を広げた方がいいのではないかということで、このような項目になっています。
 そしてこの例示では、学年を学年初め、学期、学年末という3つの形で提示しているところですが、この3つというのも多過ぎるかもしれません。先ほどの福岡の例示でも、最初と最後だけというお話があったところですが、国として例示するときにも、初めと末でいいのではないかという意見もありました。一方、初めと末だけではやはり少ないという意見もありました。今回は、一応学期の振り返りというものも入れて、あとは各自治体等で検討するということが可能な、あくまでも例示ということで整理してはという御意見をいただき、3つの形で提示しております。
 最後に、各学年末の振り返りについて、どういう観点で振り返りをしたらいいかという話になりました。一応私どもでは、1年生のときには、卒業するときの自分を想像して、つまり15歳の私を想像して、次の見通しを持てるようにしたらいいのではないかと考えました。また、中学校2年生の段階では、将来の自分ということで、先ほど小見先生たちの方からもありましたが、30歳というところをやはり1つの区切りにしました。
 この30歳に設定するところはいろいろ御意見がありましたが、やはり中学校2年生は職業体験を実施することが多い学年ですので、いろいろな仕事をする人たちに触れる機会が多いと考えられます。そこで、30歳というと、ちょうど仕事を始めてからも数年たっていて、中堅等で少し仕事の中でも役割を担っているところと考えると、ちょうど職場体験したことをイメージしたまま、将来の自分につなげられるのではないか、ということで、30歳に設定しました。
 また、最後の中学校3年生での振り返りは、学びの軌跡というところに入っていますが、年齢を限定せずに、将来の自分を想像しようということで、その生徒にとっての将来がイメージできるようにして、3年間をまとめるという形で整理をいたしました。
 もう少しワークシートを増やした方がいいという意見も、もっと減らした方がいいという意見もあり、実は中学校部会の中でも様々な意見があったところですが、一応形として整理して、このようにして提案させていただきます。
 以上です。
【藤田座長】  ありがとうございます。
 では、戎井先生、お願いいたします。
【戎井委員】  資料1-4の高校の資料を御覧ください。基本的には、前回出された試案をベースに変更を行った形ですが、変更を行ったポイントとなるところに吹き出しを入れて、各委員の先生方から頂いたコメントを整理しております。
 まず1枚目からいきますと、「高校生のみなさんへ」という部分については、基礎的・汎用的能力の話が最初に出てきているところで、「キャリア」というものを意識してもらうために、その意味について触れる部分を今回追加しております。
 それから、基礎的・汎用的能力のそれぞれについても、具体的にどういう力なのかということをもう少し例として示した方が良いのではないのかということもあり、『高等学校キャリア教育の手引き』から、「○○できる」、「○○しようとする」という例をそれぞれの力のところで示しております。以上が1枚目の大きな変更点となります。
 それから、2枚目の「学期を見通し、振り返る」という様式ですが、試案では「頑張ったところ」など、「頑張った」という言葉がかなり使われておりましたが、頑張れない、頑張ってもだめだと思っている生徒たちにも取り組みやすくするような表現の工夫ができないかということから、全体的に「特に心がけて取り組もう」であるとか、「自分なりに努力してみよう」という表現に変更しております。
 また、先生からのメッセージの部分ですが、生徒の経験や気付きに対する評価ということではなく、あくまでも生徒の心の動きを生み出す一つのきっかけになるような、そういったメッセージを書いていただきたいと思います。この点については留意事項や手引といったところで、もう少し細かく整理をしていく必要があるのではないかと思います。また今回、高校の方では、先生方がメッセージを書いたところで終わりではなく、先生からのメッセージを受けて、生徒たちがさらに気付いたことや考えたことを整理していくという項目を新たに追加しております。
 それからもう1点、保護者からのメッセージという項目が試案にはありましたが、あえて保護者からのメッセージを入れないということで、中学校段階との違いを打ち出していってはどうかという御意見も頂いており、今回このような様式にさせていただきました。
 それから、3枚目の「一年を見通し、振り返る」という様式ですが、どのような力を伸ばしていきたいかという項目で、基礎的・汎用的能力の4つについて、どうしてその力を伸ばしたいのか、自分自身で理由を書くという項目を追加しております。
 それから、この「一年を見通し、振り返る」の様式ですけれども、次のページを見ていただきますと、案2、案3、案4ということで、こういう内容を入れてることも考えられるのではないかというものをお示ししています。例えば、先ほどの基礎的・汎用的能力の項目について、4つ全てを書くのが時間的に難しいというケースがある場合に、伸ばしたい力を2つぐらいに絞るという方法もあるのではないかということや、あとは、先生からのメッセージだけではなく、例えば友達とか保護者からのメッセージも、1年間の振り返りの場面では入っていてもいいのではないかということ、もう一つは、誰からメッセージをもらうのかを生徒たちに自ら選択してもらって、この人に書いてもらいたいという人に書いてもらう方法があってもいいのではないかということなど、このあたりについては複数案を併記させていただいているところでございます。
 これらの複数案については、この後の他の様式でも同じように考えられると思います。
 次の「小学校から高等学校までを振り返る」という様式については、あまり大きな変更はありません。
さらに次の「就業体験・インターンシップについて」の様式では、事前、事後の後、受入先からもアドバイスを頂けるとやはり非常に有効ではないかということで、項目を追加させていただいております。生徒の成長につなげることができるような、そんなコメントを頂けると良いと考えております。
 それからお示しした様式では最後になりますが、学校行事等についての様式です。試案では修学旅行の様式が出されていたのですが、修学旅行に限らず、文化祭や体育祭、ボランティア活動等、いろいろな学校行事で汎用的に使える様式ができないかということで整理をさせていただきました。この様式についても、最後のメッセージの項目をどのようにするのかについては、いろいろな考え方があろうかと思います。
 最後にもう1点、個人的に今日のお話の中で感じたことです。荒瀬先生から、総合的な探究の時間についてのお話もいただいたところですが、キャリア・パスポートについてはホームルーム活動で整理するということなので、現在、総合的な探求の時間についての様式は作成されておりません。しかし、やはり総合的な探求の時間についても、その学びをどのように振り返るかということを一つの様式として示すことも、方法としては有効ではないかと考えました。
 以上です。
【藤田座長】  ありがとうございます。それでは、3名の先生方から小・中・高と御報告いだたきましたが、本日の協議会は12時で終了となりますので、11時55分くらいをめどにして、先生方から御質疑、御意見等を賜りたいと思います。今日は荒瀬先生が中座されるということですので、先生、口火を切っていただくことは可能ですか。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。これは私の見方ですので、合っているかどうかは別といたしまして、今おっしゃっていただきましたように、総合的な学習の時間が高等学校で現在行われているところですが、必ずしもそんなに普及しているとは言えない状況があります。
 それが総合的な探究の時間となってさらにレベルアップしていこうといいますか、もっと進化していこうという中で、その取組自体が教育課程全体の中で意味がないのであれば、やめればいいのですが、意味があるということをずっとこの間やってきた中で考えてやるわけですから、何も総合的な探究の時間を定着させるためにキャリア・パスポートがあるわけではないわけですが、キャリア・パスポートにおいても総合的な探究の時間でどんなことをしていて、何を学んで、どんなことをこれから考えようとしているのかということを、自分自身で考える、あるいは先生と一緒に話し合う中で自分自身が気付いていくということが、非常に重要だと思っています。
 高校のことだけで申し訳ありませんが、この1枚めくったところの「高校生のみなさんへ」の枠囲み、私はこれはとても素敵だと思っており、このままで全ての高校生がすっと読めるかどうかは別として、2011年のキャリア教育・職業教育特別部会の定義をちゃんと使っておられており、キャリアというのが、必ずしも職業教育の中での言葉だけではないということを明快に書いておられますので、とても良いと思っているのですが、そうなるとなおのこと総合的な探究の時間とのつながり、あれは自分で課題を設定して、自分で計画を立てて、自分で取り組んで、自分で振り返って、また次につなげていくということで、総合的な探究の時間だけではないのですが、そういったことも通して、今回の学習指導要領改訂の教育課程のトップに出てくる、一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識することができるようにするという、あそこのところにつなげていくのが大事ではないかなと思っています。
 学習意欲等、それがどうしたら評価できるのか、といったことが様々言われていますが、少なくとも自己肯定感を持っていない人に学習意欲という言葉はなかなかうまく重ならないと思います。だからそういったことを考えていく中で、総合的な探究の時間も、教科の授業も、それから学校行事も、特別活動もといったようなことを考えていく上で大事な気はしておりますので、この方向で、あとは総合をどう加えていくかということが大事だと思います。
 それと、誰に書いてもらうのか、ということは、私は非常にすてきな発想だなと思います。高校生になりますと、相当教員を評価しているわけですし、親に対しても評価しているわけですし、そういう意味では大人を見て、この人に書いてほしいということが出てくるのも大事なことかなと思います。ただそれをどう、例えば担任の先生が受け止めて指導に当たっていくのかということは、こういうことをやると、逆にしんどくなる面があると思うのですが、そこのところに解説を付けるなりしてやっていくことが大事かと思います。
 それと、全体について1つだけ最後に申し上げたいのは、これはあくまでもモデルとして出すのですよね。それをどう使うかは教育委員会といいますか、基本的には各学校が、地域や子供たちの実態に応じて考えていくわけです。ですからそこのところで、まさにモデルになるようなものをお出しいただければ……。お出しいただければと言うと何か人ごとのようで申し訳ありませんが、出していく必要があるのかなと思います。
【藤田座長】  ありがとうございました。戎井先生、あるいは高校の先生方、いかがでしょうか。
【三川委員】  高等学校で少し意見を申し上げたいところがございます。私は今回このポートフォリオで、自分で目標を立て、しかもその達成を自分で評価して書くということがありましたが、自らの目標を実現していくプロセスをもう一度振り返って言葉にしていくということに、本当に大きな意味があると思います。ただ、自らの体験を振り返って文章にするということは、随分いろんなハードルがあるように思っています。
 まず体験を振り返ることができなければならないと思います。振り返るということ、それからそこに気付くということも次に大事なポイントです。振り返ってもなかなか気付けない。それが書けなかったり、書いていなかったりするということがあるかもしれません。気付いても、それをまた言葉にするのが少し難しい作業かもしれません。言葉にすることができても、それが人に分かるように、つまり聞いて分かるように表現すること、さらには読んで分かるように文章にすること。そのように振り返ること、気付くこと、それから言葉にすること、それを人に分かるように伝えること、読んで分かるように記述すること、随分幾つかのステップがあるように思っております。
 生徒にこれをさせようというのは、なかなか難しい。そこで教師の働き掛けとして、つまり気付きを促したり、書くことを促したり、そんな働き掛けを、是非このキャリア・パスポートの中に取り込んでいただけたらと思った次第でございます。少し補足させていただくとそのようなことになります。
【藤田座長】  三川先生、ありがとうございます。ほかに高校の先生方よろしいですか。
【荒瀬委員】  1点だけ。さっきの逆のようなことを言いますけれども、高校生になってくると、いよいよ本当に職業選択ということも考えなければならなくなってきますね。ところが今の高校生たちの知っている職業というのが、これは実は職業が随分変わったためとも言えると思うのですが、たくさんの高校生が職業について見えない状態があります。
 例えば、それこそ身近な職業という点では、教員とか、あるいは親の職業で分かりやすいものとか、近所の職業とか、非常に幅の狭い範囲でしか職業を捉えられないという面もありますので、キャリア・パスポートの中にどう取り入れるかは別としまして、そういった職業について目を開いていくことのきっかけになるようなものも、何かあればいいのではないかということを思っています。
 ただ、そうなってきたときに職場体験のみがキャリア教育だとなってくると、これはまた困ったことになるわけですが。
【藤田座長】  そうですね。今の荒瀬先生からの御意見は多分小学校、中学校、高等学校との積み重ねの中で、キャリア・パスポートにも仕組みをちょっとずつ設け、またキャリア教育のプログラム全体の中でフォローしていかなければならないですよね。きっと高校だけでうまくいく話ではないと思うので、そういったことも仕掛けの中に含ませていきたいと思います。
 それでは、本日せっかくいらしていただいていますので、菱沼委員からお願いいたします。
【菱沼委員】  前回欠席して、今日初めて出席させていただきました菱沼でございます。1回目にこういった各学校種を出していただいたかと思いますが、それに応じて磨きを掛けられたという認識があり、ある程度見やすくなった部分があるかと思っているところでございます。どちらかというと私が呼ばれたのは事業者団体というか、そういったところでの声があると思うので、中学や高校での職業体験という形で書いていただいたのかなと思っているところでございます。
 中学校の方で、職業体験活動ということで書いていただいているところでございますが、少し感想だけ申し上げると、受け入れる側のメッセージというのがあってよかったなと思っており、できればお世話になった方、高校では受入先という形で書いてあるので、そういうのもあっていいのかなと。ただスペースが全体的に狭いと思います。どっちにしても幅広にというか、そういった部分もやはりあるのかとは思ったところでございます。
 高校においても受入先ということで、当然それぞれ受け入れる側が、こうした方がいいよとか、これはよかったねとかいうことがあれば、生徒にとってすごく励みになるなということは感じているところでございます。
 あと、全体を通しまして思ったところは、こういった制度を作ると、いかに周知するかというのが大事で、私たちも経済団体で、今働き方改革をやっていますけれども、いかに中小企業の方にこういった変わったことを知らせることがすごく大事で、この場合、全体的に申し上げますと、生徒は授業を受ける段階でこう書いてくださいねということを聞けると思うのですが、例えば保護者や教師にいかにこれを、こうやって書くんだよということを教える場が必要なのかと思います。
 先ほど福岡県の方が事例を言っておられましたが、周知のプリントを配ったりという形はあるのですが、実際それを読んでくれるかとか、そういうことを事業者側にお知らせすることにおいても、ただ置いておくのか、実際に行ってもらってやるのは若干違ってくると思うので、そういった部分でのフォローが必要なのかと思っているところです。
 ちょうど福岡県さんでもこうやってやってきて、いい面はプラスして、次に改善しなければならない点は、ということがあるので、少し話は戻ってしまいますが、キャリア・パスポートにおいても、何か目標があって、できなかったね、では次はどうしようという、いわゆるPDCAではないですが、そういう形で作っていった方がいいのではないかということは、全体的に思ったところでございます。
 感想のような形になってしまいましたが、意見として少しお話ししました。
【藤田座長】  ありがとうございました。今、最後に非常に貴重な御意見をたくさん頂いたわけですが、一番最後のコメントは、私は今そのとおりだなと思ってお伺いしました。
 特に子供たちが目標を立てて頑張った結果、うまくいかないことがあって、それが普通なんですよね。そんなうまくいくはずもない。そういう失敗経験やうまくいかなかったものがきちんと書き込めて、それが自分の中で消化されて、失敗経験が実は自分を形作る大きな宝物だったんだなということが振り返りできるようなものにしていかないと、どうもよそ行きのうまくいったストーリー集みたいになってしまうと、結局振り返っても自分のためにならないですよね。
 ですから、やはりそういう失敗経験も含めて書けるもの、そして教師がそこにきちんとコメントができるものが望ましいのかなと考えながら、今最後のコメントをお伺いしたところです。
 それでは、今、小・中・高と先生方に御発表いただいたわけですが、異校種のことも当然含めながら、それぞれ今の資料1-1からずっとございますので、それをごらんになりながら、忌憚のない御質問、それから御意見等をしていただけたらと思っております。
 小・中・高の中で1つ共通項になってきたのは、保護者や誰のコメントをどのように求めるのか、振り返りのタイミングをどうしていくのか、枚数をどうするのか等、そういったところ、あるいは、学級活動、ホームルーム活動の時間とそれ以外の組み合わせをどうしていくのか、そういった問題が小・中・高の共通話題として出てきたように思うのですが、先生方、忌憚のない御意見、御質問等、是非口火を切ってお出しいただけたらと思います。では、西田先生お願いします。
【西田委員】  何点か細かいことではなく、全体的なことで言わせていただきます。まず確かに福岡の発表にもあったと思うのですが、1学年に3枚も4枚も数があったら、小学校だけで24枚になり、中学校を入れると12枚プラスになる、すると、高校では40人分見られないですよね。
 やはり話を聞いていたら学年で2枚ぐらいが限度なのかなということと、もう1つは、これはキャリア・パスポートで、社会とつながったり、社会の一員としてどう生きていくかということだから、、できたら中学校では、職場体験のものを1枚ぐらい入れてもらうとか、高校ではインターンシップの分を入れてもらうといった形で、多くても2枚が原則でプラス1枚ぐらいかなと思います。
 では、他のところはどういうふうにすれば良いか、ということですが、確かに小学校の発表であったと思いますが、振り返りカード等各担任の先生が考えておられるようなものは別にもう一冊作り、キャリア・パスポートではここを抜き取るんですよといった例も国としては示さないといけない。逆に言えば、既存のものがその振り返りカードみたいなものに当たるんですよ、という形で使わなければ厳しいというのがありました。
 それから先ほどもありましたが、教員研修が必要かなと思います。まずキャリア・パスポートについて、福岡のアンケートを見ますと、先生方にはやらされ感が強いと思います。無理やり指定を受けて、急に降って湧いたようにですね。だから何のためにこれをするのか。これは実は、1つの仕事を与えられてこなすのではなく、子供たちの将来を考えて、子供たちのためにやるんだということをきちんと伝える研修をし、そしてそれをどう生かすか理解する必要があります。
 先ほど小学校や高校で出ていましたが、こういうところに気を付けようという、手引きみたいなものがございましたね。そういう手引きがあったらいいのと、もう一点、福岡県の発表でありましたが、やはりエリアが小さければなかなか難しいという話だったかと思います。特に高校に行く場合はいろんなエリアから進学してきますので、県単位ぐらいのエリアは最低でも統一しないといけないかなと思います。
 そうなってくると、県ごとでばらばらだとどうかなと思うものを、第1回の時に藤田先生が発表されていました。オハイオ州の事例でもありましたが、できるかどうかは分からないのですが、できたら国の本気度を見せるためにも予算を取って、カバーは全国統一でやる、中身についてはこの枚数でやる。そして、実際にその部分を作るためには、今までの既存の資料等を積み重ねてまとめるといった、活用するための全体の流れを示さないと難しいかなと感じました。
 以上でございます。
【藤田座長】  ありがとうございます。やはり本日の福岡県の先生方の御発表でもそうですけれども、みんなでやらないと、多分これはうまくいかないと思うんです。特に転校も含め、それから進学を当然含めながら、子供たちが全員持っているということが前提にならないといけないのだろうと思います。
 それから本日の福岡県の先生方の御発表も、それから西田先生の御発表もそうですし、先生方の御意見もそうですが、やはり私はいつもお話を聞いているときに摩擦係数を思い出して聞いていました。止まっているものを動かすのは結構大変じゃないですか。でも動き出すとだんだん動きやすくなってきて、それが軌道に乗るとすっと動くようになるので、止まっているものを動かす苦しさというのを多分、福岡県の先生方はお感じになっていらっしゃるでしょうし、その止まっているものを動かしていく、で、動かしていってよかったなという感覚が先生方にあれば、もっともっと変わっていくのではないかと、そんなことを聞きながら思った次第です。
 今、西田先生のお話の中でもありましたし、熊谷先生のお話の中でもありましたし、それから福岡県の先生方のお話の中にもあったのですが、普段のカード、記録。私は小学校などにお邪魔すると、壁面、ちょうど後ろの黒板に個人のフォルダーがあって、いろんなカードというか記録が、ずっと蓄積されているように思うのですが、ああいったものとの関係性をイメージすると、例えば学期に一度そこから持ってきて、開きながらできるのかなという感じもしたのですが、熊谷先生、あるいは小学校の先生方、その普段の壁面のクリアフォルダーに載っているものは、どんなタイミングで作られることが多いですか。
【熊谷委員】  あれは例えば簡単に言うと、アサガオのつるの観察の日記をどんどん入れていったりとか、もう少し大きくて丈夫なものにしているところは、そこにお習字の作品、書写の作品を入れたりとか、もう自分の活動のものがどんどんそこへ入っていく。入り切らなくなったら出して、後ろの棚にある一人一人のラックの中に、どんどんただただ入れていく。そうすると、学期末か何かにそれを机とかそういうのも関係ない、オープンスペースのところに行って全部広げると、自分がやったことがわーっと広がるんです。子供は喜びますし、壮観ですよね。そんなふうにして使っているところが多いと思います。
【藤田座長】  そういったものが何かの形でそのキャリア・パスポートのファイルに載せるシートに反映できる、そんな仕組みができるといいですよね。
 中学校の先生方、現場でどうですか。その日常的なカードの類ですとか、記録の類ってどのような扱いですか。
【西田委員】  カード等を活用した記録は、やはり生徒会がやる行事や修学旅行のしおり等行事が終わった後に、それについてどうだったかを書く、それを残しています。そういうものを蓄積して、最後にキャリア・パスポートを使うときに資料として活用できるのではないかと思います。
【藤田座長】  なるほど。ありがとうございます。戎井先生はじめ、高校の先生方、どうでしょう。高校では何かそういうカードですとか記録ですとか、そういったものは実践の中にありますか。
【戎井委員】  私自身の経験ではあまりそういうものはないかなと。ちょうど学校行事等の様式のところにもお示ししているのですが、学校行事等の振り返りについても、様式等がすでにある学校もあるだろうし、まだない学校もあるかもしれないということで言うと、そのようなものがない学校については、こういった様式を示すと参考になるのでないかという意見も、他の委員の先生から頂いたところでもあるので、やはり細かな記録や振り返りという点では、小学校に比べると高校では実践がそれほど豊富ではないように思います。
【藤田座長】  ただ、幸いなことに成長、発達していくと記憶力が近づいてくるので、小学生に半年前を思い出させるのはすごく大変ですけど、高校生はある程度記憶していますからね。ですから、そういった意味では、子供の成長、発達等の関係で、これまでの教育活動の中に、もう確実にある振り返りシートですとか振り返りカードというのを活用しながら、これの記入に持っていきましょうということにしていかないと、またその振り返りカードを新しく作って、キャリア・パスポートのために新しいものを付け加えていくと、先生方は疲弊してしまうので、何かそういうごくごく一般的な学校であれば、こういうのはありませんか、というものが出せるといいですよね。そんなことを感じながらきた次第です。
 長くなってしまいましたが、先生方いかがでしょうか。御意見、御質問等お願いいたします。
【神部委員】  少し先になると思うのですが、この例示をされた後に、縛り、ここだけは絶対変えないでねということは、今後示されていくのかということを伺いたいと思っています。
【藤田座長】  これは長田先生の御意見をちょっと。どうでしょう。
【長田委員】  先ほどの既存の資料との重複があるという意見は、やはり学校にある程度裁量を委ねないと、そういうことが起きるんだろうと思います。国が例示したものを一旦設置者、都道府県や市町村が見て、うちの地域では、よりこういうふうにするといいですよ、とまた例示をしていただく。そして最終的には学校でカスタマイズしていただいて、目の前の子供たちに合うシートにしていただくべきだろうと思います。
 その際に、一部に縛りを掛けた方がいいかどうか、これは今後検討していかなければならないと思いますが、特に高等学校は学校の多様性、生徒の多様性が大きいですので、あの少ない、例えば2枚しかないシートの中のこの部分とこの部分が決まりとした段階で、もう恐らくは相当自由度が減ってしまうので、小・中学校は今の議論の中でも出てきたとおり、普段の積み重ねを丁寧にしているので、それを取捨選択、再編集するということで、それぞれオリジナルのものができるのではないかと思いますが、高等学校は、その元になるものがないので、ある程度例を示すと、縛らなくてもそれにぎゅっと近寄ってくるのではないかと、個人的にイメージを持っております。
 ただ、繰り返しになりますが、最終的には学校が、目の前の子供たちの姿を見てシートを作るということをしないと、やはり実態に合わない。ただ記録をすることが目的になってしまうので、委員としても、やはり最後は学校が決めるというふうにしたいなという意見でございます。
【藤田座長】  私も同じように感じました。ただ、全く自由ですよ、ではなく、こういう項目は理念からして大切になりますよね、とか、こういう視点での枠とか欄とか、そういったものが必要ですよね、ということに御理解いただくことは、十分説明しなければいけないと思うんです。ただ、その上で学校が表現を変えたり、あるいは順序を変えたり、省略したり、大きくしたり、小さくしたりとかというのは、あってもいいのかなという気はします。
 神部委員としてはどんなお考えですか。
【神部委員】  おっしゃるとおり、そうだといいなと思います。この小学校のA案、B案を見たときに、このB案がすばらしいと感じました。自己肯定感をということもそうでしたし、これがやはり各学校で違うと思いますので、そうあっていくといいなと感じています。
【藤田座長】  ありがとうございます。ちょうど今神部委員から、小学校A案、B案のお話が出たんですけど、私は熊谷先生のお話を聞いていて、先生は客観的に御説明になりましたが、やはりB案への愛情をすごく強く感じたのですが、その辺りはA案・B案について、代表という立場から離れて、個人の委員としてどのように御覧なっておられるか、教えていただければと思います。
【熊谷委員】  藤田先生のお考えで前回のときに、思春期前期から思春期になると、将来の夢はありません、そんなものはありませんと書いてくる子が、これが黒歴史に残ってはいけない。そうだよねと共感してあげないといけないと。僕はそこがもう結局最終的な、我々現場に立つ教員が持っていなければいけないイズムだと思うんです。
 高校の先生が先ほど、御家庭の方に書いてもらうのではなくて選ぶという発想がありましたが、B案の方は、おうちの人って本当におうちの人が書けない家庭がいっぱいあるんです。それどころじゃないという家庭がたくさんあって、外国籍の方もいるし、御病気を抱えていらっしゃるお父さん、お母さんもいる。だから校長先生に代わって書いてもらおうか、なんていうことを入れましたし。
 だからそういう指導者としての立ち位置みたいな理想、理念がないと、現場の教員は本気で動かないです。「これが将来の進学や就職に役に立つ」と言った時点で、教員は引きます。そんなことのために我々は教育していません。いや、それは大事ですよ。しかしそうじゃないですよと。教員を突き動かすにはやはり理想、理念というものが物すごく大事ですから、この指導版、教員版というものは、どうなろうと付けていかないと、独り歩きしてしまうかと思いました。
 それからどんな仕事に就きたいですかといったって、これからの世の中の子は、仕事に就くというのは組織に属することじゃありませんから。それからダブルワークしていいわけですよね。兼職、兼業大いに歓迎ですよね。だからどんな人になりたいのかなというところをやっぱり指導していくのは。
【荒瀬委員】  失礼します。最後に。とてもいいお話を伺った上で大変申し訳ないことを申し上げますが、高等学校の私が知っている範囲で申しますと、高等学校の進路って12年間の初等中等教育のある種の総和で、全てはその進路を自分で選択できる子供に育てていくということだと思います。
 これは中教審の答申でも進路指導の定義があって、自分で考える、教員が偏差値で決めるのではないとは書いていませんが、自分で考えて自分で決めていく。それで教員は、その姿をしっかりと支えて、次に入った後もまた見ていく、そういう連続的な指導が進路指導なんだということを言っていますので、むしろ高等学校の教員は、即物的に、大学に入るとか就職するとかだけじゃなく、その先も考えて進路を見ていこうという話が入りやすいと思うんです。
 今、評価のワーキングでもどう評価していくかというときに、ポートフォリオという話が出ていますので、これとも相当関連してくると思うのですが、大学入試がどう変わっていくかはまだ見えないところはありますが、例えば担任の教員の文章力によって合否が決まるのではなく、生徒自身がどんなことをやってきて、どんなことを考えたかということが非常に重視されるべきですし、かつまたその中で、例えば総合的な学習の時間や探究の時間でどんなことを研究しましたかとか、どんなものを作りましたかとか、そういったことをそのまま送って大学が見るということは、大いにあり得る話になってくるかと思うんです。
 ですからそういったことを考えると、次につなげていく。単に入り口を探すといいますか、出して、次の入り口ではなくてその後まで考えた、キャリア教育の観点からの進路指導というものを、今後本気でやっていかなければなりませんので、現実には偏差値で受験校を決めるのが進路指導の達人みたいな誤解がありますので、それを払拭するといいますか、変えていくためにも、そこのところは発達段階に応じて少しずつ流れがあるんだなということを思いました。
 熊谷先生がおっしゃったことは、もう全く私も賛成でありますが、高等学校は少しそのような感じがあるのではないかと思うんです。
【藤田座長】  ありがとうございます。今荒瀬先生がおっしゃってくださいましたように、遠い将来には何らかの形で、このキャリア・パスポートと接続する形での大学入試の在り方ということも考えていかなくてはいけないと思うんです。そのときにやはり、ちょっと横文字になりますが、日々子供たちが積み重ねていく自分の成長を振り返るためのいわゆるキャリア・パスポートと、それから提出用の選抜の資料が重なってしまうと、多分ずっと自分にうそをつき続け、将来の仕事が分からなくても何か書かなければいけない、先生もそれらのコメントを書かなければいけない、とみんなでうそをつき続けることになってしまいますので、それは悲しいだろうと思います。
 ただし、例えば高校2年生で取り組んだ総合的な探究の時間の非常に探究的な結果であるとか、プロセスであるとか、レポートであるとか、これは一生懸命頑張ったもので、見てもらいたいなというものは載せられるような、電子的な処理も必要だろうと思います。ですから、そういう子供たちが自分で自分の積み重ねを総括し、この部分は是非見てもらいたいんだ、でもこれは僕のプライベートな記録なんだということがきちんと峻別できないと、子供たちがきちんとした自分の気持ちを書けないと思います。
 やはり思春期のある部分では、今まではプロ野球選手、プロサッカー選手だったんだけれども、それはもうなれない。だから今はもう将来を聞かれても、聞かれること自体が嫌という場合もあって、それが成長なわけですよね。だからそこが書けないキャリア・パスポートは、やっぱり悲しいな、常に公務員とか何か書かなきゃいけないパスポートは悲しいなと思うんです。ですからそういうものがきちんと書けて、その思いを先生が受け止めて、きちんと子供たちと書面の上でもリアルに対話ができるものでなければいけないのかなと思います。
 私ばかり長くなって申し訳ないです。何かありませんか。どうぞ。
【小見委員】  先ほど誰にメッセージを書いていただくかというところがありましたが、先日高校のキャリア教育に関して、保護者と、大学生に聞き取りをするというワークショップを新潟市でやったんです。その際に親御さんが、高校生になるとなかなか子供と対話ができず、そのきっかけもつかめずに、何を考えているか分からないと。
 子供の決めた自己選択を応援したいけれども、どこまで支援していったら良いか分からない。これをやりたいとかと言われて、本当にそれが我が子にあっているのか見極められないという悩みもありました。 加えて、先生が見ている子供の姿と、親が見ている子供の姿にギャップがあり、親御さんは、自分の子供はここがいいところだから伸ばして、こういう大学が良いのではないかと一緒に考えているけれども、先生には、いや、この子はもっと上を目指せますとか、その学部よりこっちがいいですとなかなか賛成してもらえず、先生を説得するのにパワーを使ったという話も数名から聞きました。キャリアパスポートが、客観的に子供がこう思っているとか、こういう過程を経て、その選択をしようとしているんだという進路選択の判断材料になるといいなと思いました。具体的には、三者面談のときに先生と親御さんと子供が一緒にこれを使って進路を考えられると、先生と親御さんの子供に対するギャップも埋められて、スムーズに進むのかなと思います。親御さんは書くことに負担感がある方もいらっしゃるので、親御さんにも読んでもらって、一緒に進路を考えるという活用をもう少し促せるといいのかなと思いました。
【藤田座長】  そうですね。ありがとうございました。先ほどから親御さんのコメントをどうするかということで、福岡県の実践でも、一言ぐらいに抑えておいてよかったということもあったわけですが、確かに一言であってもなかなか書きづらい、これからますます外国にルーツを持つ子供たちなどが増えていけば、それ自体が非常に障壁になってしまうこともあるので、扱いが難しいところですが、例えば三者面談という御意見がありましたが、学校現場ですと、例えば安斎先生、どんなイメージですか。三者面談でこれを使うとすると。
【安斎委員】  中学での経験はないので三者面談での実践イメージは申し上げにくいのですが、今、お話をいろいろ聞いていく中では、やはり保護者の方も実は関わりたいけれども、関わるタイミングだったり、それを知る機会というのは、意外と少なかったりするので、キャリアパスポートが資料になり、媒体となって、保護者と生徒をつなぐことができるものであると思います。
 また、外国籍のお子さんについても、外国語、そのお母さんの母語で構わないので、やはりここに温かい一言が書いてあることが、その子のアイデンティティーにつながるということもあるかと思います。ただ、コメントしていただくためには、普及・啓発が本当に必要になってきます。保護者に意義をしっかり伝えて、子供たちの発達を支援する意義のあるスペースにしていくことが必要だと感じます。
【藤田座長】  ありがとうございます。戎井先生、高校の立場からどうでしょう、三者面談での活用というイメージとしては。
【戎井委員】  可能性としてはあると思いました。先ほど見ていただいた「1年を見通し、振り返る」の様式の案3でお示ししていますが、様式の検討段階でも、やはり保護者からのメッセージの項目があればいいのではないかという意見も出ました。それは保護者からのメッセージを書いてもらうことが重要ではないか、ということではなく、先ほどまさに言っていただいたとおり、このキャリア・パスポートを保護者に見てもらうこと自体に意味があるのではないかという意見でした。そういう意味では、メッセージを書いてくださいという形ではなくて、面談等の機会に見ていただくということも、有効な活用方法ではないかと思います。
【藤田座長】  そうですね。熊谷先生、どうでしょう、小学校の現場から見ると、三者面談はどんなイメージですか。
【熊谷委員】  三者面談というより小学校の場合は二者面談ですよね。夏休みを中心に御家庭の様子を聞いたりとかということなので。これを例えば書いて、1学期、こういうふうにお子さんは思っていましたよというのは大いに参考になると思います。
【藤田座長】  ありがとうございます。そういう方向性もこれから検討する意味は十分あるということでお伺いしましたが、他にいかがでしょう。石原委員、どうぞ。
【石原委員】  私としては教員じゃないので、ちょっと素朴な質問も含めてなんですが、私もそんな真面目な学生じゃなかったものですから、いろんな友達がいる中でいろんな事情があって、こういったものを書かない、書けないという生徒がいると思うんです。そういったときの先生方の指導の仕方だとか、あとは保護者が書き方が分からないとか、そういうことはある程度対応できるかと思っています。一方、家庭環境の問題に対して、戸惑うところはあると思うのですが、それの対応も含めて、どんなことをされながらやっていくのかなというところを、少しお聞きしたいなと思います。
【藤田座長】  ありがとうございます。これは御専門の立場から、三川先生、いかがでしょうか。家庭との関係、複雑な家庭環境や様々な問題を抱える家庭もあるかと思うのですが、そういう場合、こういったポートフォリオとの関係で言うと、どんな知見が今まで出されていらっしゃいますか。
【三川委員】  そうですね。やはり様々な背景があるということを、例えば担当される先生方がよく御理解いただいた上で、生徒に、あるいは子供に合った形でこれを活用していくことの配慮が必要だろうと思います。例えば保護者に書いてもらうということを一律に、また子供に要求するのは、かえって大変厳しい状況に置かれる子供もいるかもしれません。もちろん保護者の方もそうだろうと思います。
 どこまでそれを担当される先生方が配慮し、その上で無理がないように、もっと言えば、それをきっかけに保護者と子供、あるいは保護者と教師の対話が進むような形で提供していただけたらと思いますが、いろいろ配慮や工夫が必要だろうと思います。
 藤田先生にお話しいただいた、まさにこれによって対話を進めるというところに、私は意味があると思います。これはガイダンスとこのカウンセリングという部分が、多分キャリア教育でも、それから新学習指導要領でも強調されていくと思うので、対話することによってそのようなことが改めて見え、そこに配慮や工夫ができる、それによってまた子供たちがみずからの体験を語り、それをさらに成長へとつなげていく、そんな新たな循環が生まれるような期待を持っております。
【藤田座長】  ありがとうございます。西田先生のところはもう経験がありますけれども、こういった保護者との関係で、何か我々に共有させていただけるようなエピソードないし工夫はありますか。
【西田委員】  保護者との関係ですか。
【藤田座長】  はい。保護者欄をどう扱うのか、保護者のコメントをどうするのか、あるいは保護者が見ない、あるいは見ることが難しい家庭をどう先生方とともに子供をサポートしていくのか、などについてです。
【西田委員】  今いろんな複雑な家庭がありますよね。外国の方もおられますし、なかなか家に保護者の方がおられないような家庭もあるので難しいですね。昔の例ですが、僕らはいろんな家庭がある中、トライやる・ウィークをチャンスと捉え、保護者の方との対話をするきっかけとしたことがあります。それは、兵庫県では、トライやる・ウィークをする際、全員に趣旨説明等をするのですが、学校に登校せず、不登校やひきこもり状態の子供たちもいました。その子供はなかなか担任の先生とも会ってくれないような状況だったのですが、家庭訪問をする中で、学校に来なくてもいいんだ、何か一緒に社会でできることをやろうということを話に行き、そこで保護者の方とも話ができるといったことがありました。この例のように、ポートフォリオが、先生と生徒・保護者をうまくつなげるきっかけになっていったらいいのになと思います。
【藤田座長】  そうですね。ますます教員の力量というか、そういった理解というのは絶対的に必要になってきますね。
 安斎先生のところも実践を既にされていますが、保護者との関係はどうですか。
【安斎委員】  やはり理解をしていただくとか意義を伝えるということが大切になってきます。川崎市はキャリア在り方生き方ノートを使っているのですが、例えば、授業参観のときなど、ノートを使った授業を保護者の方に見ていただいて、取組の意義や、なぜこういう取組がこれから必要なのかということを、いろいろな機会を通して学校側もアピールしています。また、どうしても書けない保護者の方については、先ほど三川先生がおっしゃったように、いろいろな対応の仕方があると思うので、各先生方が配慮をして、取り組んでくださっています。
【藤田座長】  なるほど。ということは、我々がこれから作っていくべき冊子にも、そういったことが必要ですね。やはり書き込んでいかないと先生方は迷ってしまいますね。
 福岡県の堀先生のところではそういった保護者との対話で何か具体的な問題事例や、あるいは報告等はありましたか。
【堀指導主事】  特に保護者には、やはりそういう家庭環境が厳しいところもありますので、なかなか書いていただけないのに、先生方がどう説明したらいいのかというのは、非常に苦しい点の一つで、発表でも言いましたが、それを回収して確認するときに、他の生徒が見て、それをからかったりすることがあり、保護者のコメントが熱心な家庭とそうではない家庭があるので、それを対比させない、どうプライバシーに配慮するかということが非常に難しいという意見を、先生方からたくさん頂いたこともございました。
【藤田座長】  ありがとうございます。そういったところはこれから知恵を絞っていかなければいけないところですよね。やはりどうしても子供同士ですから、席が近ければ目に入るわけですし、そういったことがいじめのきっかけにならないよう、家族も含めた多様性をどうクラスの中で認めていくのかという指導力がないと、一律の中で頑張って書いた親御さんはよくて、そうじゃない親御さんはよくない、そうではないはずなので、そういったところがきちんと指導できる力が必要だと思いました。
 あと、いかがでしょうか。個別具体の御質問でも、全体に関する御感想でも結構です。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  福岡県さんの方にちょっとお聞きしたいのですが、今学習評価のワーキングをやっておりまして、観点別評価や評定のことについて議論があります。基本そこに反映してくる指導要録の書き方についても話があり、そこから調査書、それから通信簿の書き方の議論もあるのですが、やはりその中で少しネガティブな要素というか、情報開示請求の話があって、あまり突っ込んだ書き方をしない教員、学校もあるという話が出ています。要は当たり障りのないことしか書かないというところがあるということです。
 このキャリア・パスポートの議論は、やはり先生が書く欄もありますし、今のお話ですと学校と家庭と、そして生徒をつなぐ、大きな太いパイプ、道になるのではないかという前向きな議論もありました。ただ一方で、先生の指導要録のように、それは教員の評価になるわけですから、そういう形になるのかもしれませんが、当たり障りのない書き方しかしてこない教員、学校が出てくるということに関して、何か今回やってみてお感じになったことはありますのでしょうか。
【堀指導主事】  そうですね。基本的には「鍛ほめ」ということで福岡県でやっておりますので、そういった評価、視点で書いてくださいとお願いしております。生徒の目標に対して、年度初めであればもっと頑張ろうということを書いてください、年度末には頑張った児童生徒の評価に対して、よく頑張ったねと褒める内容で書いてくださいということで先生方にはお願いしておりますので、一応そういったネガティブなことを書くというのはちょっと想定してはいないところです。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  ネガティブというわけでなく、当たり障りのない書き方に、要は判を押したような書き方に陥っていることはなかったかどうかです。やはり40人を抱えて、その40人を千差万別、ちゃんと捉えた書き方になっているのかどうかというところの観点ではどうでしょう。
【堀指導主事】  特に先生方からは負担感が大きいので、事例が欲しいという、それが一番多かった意見ではありました。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  事例ということは、要は事例どおり書くということですね。
【堀指導主事】  そうです。そういうことが非常に意見としては多かったのですが、今回それはあえて出していません。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  ということですね。
【古賀主任指導主事】  ちょうど今検証をしているところですので、1回目を去年やって、今年検証委員会をして、2回目でまたそういった御意見等が出てくるのではないかと思っており、それをまた考えていきたいと思います。
【鈴木児童生徒課進路指導調査官】  学校と家庭、特に高校段階など、生徒と親のつながりがだんだん薄くなってくるところに風穴を空ける起爆剤にもなるのではないかという議論があった一方で、学校が当たり障りないことを書いてきたときに、本当になり得るのかな、ちょっとギャップが出てくるのではないかなと。しかも今学習評価のワーキングでそういうエビデンスを出してきたところもあるものですから、そこは少し危惧しています。
【藤田座長】  そうですね。ただ今の御指摘のところはやはり、このキャリア・パスポートの主軸は子供の成長、発達、みずから自分を成長させるようなきっかけになるものであり、自分を自己理解させていくものなので、いわゆる他者評価の選抜のための評価ではない、あるいは最終的な総括的な評価は、あなたはこのレベルですねという、そのレベル感を示すものでもないだろうと。そうなった場合、子供の自己肯定感をどう高めていくのか、言葉掛けをどうするかということなので、恐らくその力量が回り回れば、いわゆる調査書欄の書き方にも反映できるのかなという気がします。
 やはり今調査書欄が定型的になってしまうというのは、子供の一人一人の見取りをあまりする時間もないし、訓練も受けていないし、タイミングもなかったので、どうしても定型になってしまいますけど、このキャリア・パスポートで一人一人のよさをきちんと見取る力、力量を形成して、書く経験も重ねていくと、多分調査書欄も変わってくるのではないか、そういうプラスの評価が効果があるのではないかという気は若干しています。
 先生方、いかがでしょう。あとお一人ぐらいしかもう頂くお時間がないのですが、いかがでしょう。
【三川委員】  やはりこの先生からのメッセージというのは、子供の活動に対する評価ではないと思います。今、藤田先生がおっしゃったように、その言葉掛けをすることによって子供たちの気付きを促したり、もっと将来の目標について考えてみようという心の動きを生み出したり、それを少し記録して自分の糧にしようとか、ある意味で心の動きが促されるような、そんなメッセージであってほしい。保護者からのメッセージも。私もそう感じております。
【藤田座長】  そうですよね。ありがとうございます。子供たちの、次に頑張ろうとするメッセージという、三川先生から力強い御意見を頂いたところですが、最初も少し思ったのですが、特に中学校と高等学校の最初のこの表紙裏のところがありますよね。「中学生のみなさんへ」、「高校生のみなさんへ」。こんなことを申し上げると学校の先生方にまた負担を増やすなと怒られてしまうと思いますが、これはやはり日本全体の中学生の皆さんへ、日本全体の高校生の皆さんへなので、うちの中学校の君たちへというページが、この後に1枚欲しいという気がします。
 日本全体ではこういう目標だけど、うちはこういう目指す子供像があるよね、みんなの付けたい力はこうだよね、うちは君たちにこうなってほしいんだよ、というメッセージがこの次に来ると、特に高校などは学科も違うし、それぞれ普通科でも全然違うので、地域の特質や子供の特質、学科の特質等を踏まえた1枚というのは何かあった方がいいかと思いますが、それをお願いすると負担ですかね。どうでしょう。
【安斎委員】  中学校部会では実はその御意見も出ました。各学校の御負担になってしまうかもしれないということで提案には入れなかったのですが、ページの下に「○○学校の皆さんへ」という欄をつくり、そこはフリースペースで、各学校でメッセージを書いてもらうのはいかがでしょうかという意見は、実は出ておりました。
【藤田座長】  高校の先生方、どうですか。やはり負担感があるものは嫌かなと思うのですが、でも必要なものはあった方がいいと思います。
【戎井委員】  そうですね。各学校がどういう理念で、どういう教育活動を展開していこうとしているのかを示すだけでも、大きな意味があるのではないかと思います。
【藤田座長】  ありがとうございます。小学校の先生はどうでしょうか。
【熊谷委員】  負担というのは、ばーっとたくさんまとめた膨大のものを、一気にこの期間で処理しなきゃいけないというと負担なんです。ですか少しずつ小まめにやっていけば良いのかと。先程申し上げましたように、1単位45分でわっと書いたものを先生が40人分集めて全部見る、これは負担ですけど、少しずつ、これ書いていいよ、今日やったことを入れていけばいいよ、ということであれば、子供との普通のやりとりですから。
【藤田座長】  なるほど。そうですね。そういった先生方の必要なものが結果的に情報としてそこに入るのだけれども、その情報を先生方がどのようなタイミングで、どのような方法で、どういう言葉で入れていくのかということは、丁寧に説明しなければいけないという感じですかね。
 他にいかがでしょうか。大体時間も迫ってきましたが、先生方、是非一言これだけというのがもしございましたら、このタイミングでございますのでお願いいたします。菱沼委員、いかがですか。
【菱沼委員】  特にありません。
【藤田座長】  よろしいですか。石原委員、いかがでしょうか。
【石原委員】  高校のところで議論がありましたが、受入先のコメントで少し話があったのは、事業者の立場として申し上げさせていただいたところですが、やはり受け入れる責任上、この生徒さんたちの成長はすごく重要だと思って私たちも受け入れをしていますので、ここにも書いていただいていますが、辛口のコメントも含めて、本人のためになるような形で必ずコメントすると思いますので、職場体験だったりインターンシップだったりというところについては、遠慮なく事業者からのコメントをもらっていただいた方がいいのかなと私は思っていますので、是非よろしくお願いします。
【藤田座長】  ありがとうございます。神部委員もいかがでしょうか。学校外から学校内を眺めている立場から、何か最後にコメントないし御感想はありますか。
【神部委員】  前回の会議でも申し上げたと思うのですが、やはり先生方の足並みがそろって、目線がそろわないと、このキャリア・パスポートはなかなかうまくいかないのかなと思っています。先ほどから先生方からお話のあるように、負担感という言葉があるのですが、その負担じゃないように、これは負担じゃないんだよ、ということをやはり考えていく必要があると思っています。誰のためのキャリア・パスポートなのかというところを、もう一度整理していく必要があるのかもしれないと思っています。
【藤田座長】  そうですね。やはり日本の先生方は、ここぞと自分たちが本当に理解して納得して、子供たちのためになると思うと、本当に頑張ってくださって、力を発揮してくださる、そういったことが部活動の指導にも結び付くのかなと思います。逆にそれが行き過ぎていて働き方改革が必要になってしまっていますが、日本の先生方はそういう力があるのかなと私も思いました。
 長田先生、最後に何かコメントありますか。
【長田委員】  この後例示すると同時に、指導の手引のようなものを作っていくのですが、本日頂いた意見の中で、例示はあくまでも例示ですが、国として出しますので、こういうことが大事なんですよ、という強いメッセージにはなるということが一つ確認できました。
 もう一つは、小学校のB案や高等学校の案のように、吹き出しの中にある、こういう思いでここは書かせましょうね、こういう活用ができるようにしましょうね、という、我々のいわゆる熱意が現場に伝わるような活用の仕方が大事だということです。
 そしてもう一つは、これは私が熊谷先生から学んだことなのですが、このシートを使って学級活動、ホームルーム活動の(3)の授業を、こんなふうにするとみんなの話し合いが進みますよとか、より自己実現に近づいていきますよとか、例えばこれを使ってクラス全体でクラスの生活を見直す、いわゆる(1)のような授業、こんな授業ができますよという、これを使う場面で、このパスポートをどうやって授業で生かしていくかということも、指導の手引の中に盛り込む必要があると思いました。
 本日も非常に良い意見を聞かせていただきまして勉強になりました。また引き続きよろしくお願いいたします。
【藤田座長】  ありがとうございます。それでは時間も迫っておりますので、この辺りで事務局の方に司会を返したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【迫児童生徒課専門職】  皆様、長時間にわたりありがとうございました。
 また、別途御連絡させていただこうと思いますが、委員の皆様にまた新たな作業をお願いしたいと思っております。次回の日程もございますので、12月の頭ぐらいに向けて、各校種ごとのチームでの作業を進めていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次回の会議につきましては、その作業していただいた内容を踏まえて、12月又は1月あたりで調整させていただこうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本日の資料、議事の概要につきましては、前回同様、文科省のホームページに掲載させていただきます。
 それではこれで第2回「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議を終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

キャリア教育・進路指導担当