主権者教育推進会議(第17回) 議事録

1.日時

令和3年1月25日(月曜日)

2.場所

文部科学省(東館15階) 15F特別会議室

3.議事録

【篠原座長】 定刻となりましたので、ただいまから第17回主権者教育推進会議を開催いたします。
 大分遅くなりましたけれども、改めまして、新年おめでとうございます。本年もまたどうぞよろしくお願いを申し上げます。
本日の会議は、新型コロナウイルス感染症対応の観点から、対面会議とウェブ会議のハイブリッド型で開催することといたします。ウェブ会議での御参加は、清水委員と松川委員というふうに伺っております。また、小原委員、近藤委員、佃委員が御欠席。よって、11人中8人の委員の御出席となります。
 御多忙な中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 なお、本日は、新型コロナウイルス感染症対策のため、傍聴者は会議の様子をウェブで傍聴することとしております。また、本会議につきましては、報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
まずは、本日の議題に入る前に、文科省の方で異動があったということなので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【石田学校教育官】 それでは、御紹介申し上げます。
 総合教育政策局長に義本が着任をしております。
【義本総合教育政策局長】 1月1日付けで総合教育政策局長に着任いたしました義本でございます。
 主権者教育につきましては、学校、家庭、地域が連携してしっかり取り組むことだと思っておりますので、先生の御指導をいただきながら、事務局としてもしっかり進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【石田学校教育官】 以上でございます。
【篠原座長】 どうもありがとうございます。
 それでは、本日の配付資料について、事務局から御説明、確認をお願いいたします。
【石田学校教育官】 よろしくお願いいたします。
 冒頭、座長から御紹介いただきましたように、本日は対面会議とウェブ会議のハイブリッドという形で開催をさせていただきます。また、傍聴の方におかれましては、ウェブで御視聴をいただくという形を取ってございます。
 会場にいらっしゃる委員の皆様方におかれましては、御発表に当たっては、インターネットでも聞き取りやすいようにゆっくりはっきり御発言をいただく、御発言の都度、お名前をおっしゃっていただくよう、よろしくお願い申し上げます。
 また、ウェブで御参加の委員の先生方におかれましては、御発言以外はマイクをお切りいただく、御発言に当たりましては手を挙げるボタンを押していただくよう、お願いを申し上げます。
 それでは、資料の確認を申し上げます。議事次第を御確認いただければと思います。本日は、前回に引き続きまして、政治的中立性の担保の方策、教員研修の在り方についてヒアリングを行い、それを踏まえた御議論を頂戴したいと考えてございます。ついては、それぞれの委員の先生の御提案の資料を、議事次第にございますとおり、資料1、資料2としてお配りしてございます。
 また、机上には、これまでの配付資料のドッチファイルをお配りしますとともに、本日の御発表の関係で2019年に経済同友会政治改革委員会でおまとめになった主権者教育の報告書、当時、中村委員が委員長でいらっしゃるということでございます。並びに、平成27年に私どもの方で発出しました「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」並びに、総務省と文部科学省で作成しました副教材である「私たちが拓く日本の未来」の教師用の資料にございます「政治的中立性の確保等に関する留意事項」の抜粋をお配りしてございます。
 不足等ございましたら、事務局にお申し付けいただければと考えてございます。
 以上でございます。
【篠原座長】 資料の方はよろしいですか。何か抜けているとかありませんか。大丈夫ですよね。
それでは、議事に入りたいと思います。本日は、大きく2つの議題について取り上げます。初めに、事務局からも説明がありましたとおり、政治的中立性の担保の方策、教員研修の在り方について、引き続きヒアリングと意見交換を行います。その後、もう一つの議題として、その他について議論を行うことといたします。
 では、1つ目の議題に入ります。初めに、中村委員から御発表をいただきます。よろしくお願いします。
【中村委員】 皆さん、こんにちは。経済同友会の中村でございます。本日は発表の機会をいただき、ありがとうございます。
 私が委員長を務めました経済同友会2018年度政治改革委員会では、2019年4月に提言「主権者教育の充実で、あるべき民主主義の実現を―健全な社会を次世代に手渡すために―」を発表し、その概要は本会議の第5回会合で発表させていただきました。御参考までに本日机の上に配付させていただいております。繰り返しになりますが、本提言は、今から30年後に社会の中核を担うことになる今の小中学生を念頭に置き、彼らが自ら考え、判断する力を備え、社会の諸課題の解決に向けて主体的に政治参加する主権者となるためにどうすればよいかについて提言したものです。
 本日は、今回のテーマとなっております政治的中立性の担保の方策を中心に、前回の発表で触れなかった内容や、その後経済同友会が検討している内容に関して御説明いたします。政治的中立性の方策について3点、その他の取組について2点お話しさせていただきます。
 次に、3ページを御覧ください。初めに、政策を第三者的に評価し、解説する研究機関等の充実についてです。各政党の政策を取り上げる教育を行うために、文部科学省初等中等教育局長通知「学校における補助教材の適正な取扱いについて」にも記載されておるとおり、特定の見方や考え方に偏った取扱いとならないことが強く求められます。その際、副教材の作成等について教員の負担が大きく、外部の中立的な研究機関等が協力していくことが求められます。データに基づく客観的な政策評価や社会的課題に関する分かりやすい情報の提供を行う中立的な政策研究機関(シンクタンクやNPO)の拡充が必要と考えます。そうしたシンクタンクやNPO等を育成するため、資金や人材が還流する仕組み(寄附税制、官民人材交流)作りも重要と考えております。これらの提言は、経済同友会で繰り返し行ってきましたが、主権者教育を下支えするためにも、政策的な措置をお願いしたいと思います。
 4ページに入ります。参考となる事例として、ドイツの連邦政治教育センターを紹介しています。有名な事例で、本会議でも取り上げられたと思います。同センターは、連邦政府が設立した機関で、政治に関する情報・分析、その普及、政治教育のための教材の編集・発行、政治教育の活動、各地の政治教育機関の支援を行っています。中立的な視点で客観的情報を国民に提供することが期待されており、国会議員により選出される評議員会による監督を受けることで超党派性を確保しているということです。もちろん外国の取組をそのまま輸入することはできませんが、そうした機能・役割は、何らかの形で我が国においても求められるのではないでしょうか。前のスライドで申し上げたシンクタンクやNPOなどの中立的な政策研究機関も一定の役割を果たすことが求められます。是非この点も国で議論されることを期待します。
 5ページを御覧ください。2点目は、政策情報の更なるオープン化です。当たり前のことですが、政策に関するデータや事実は、政治的中立性担保の前提です。各府省の政策、統計、データが国民に分かりやすく提示されることが必要です。しかしながら、現在の行政によるオープンデータの取組や政策評価、発信の仕方等、量・質共に不十分ではないでしょうか。複線的な政策評価の在り方や分析可能なデータのオープン化が求められます。分析・評価を行政以外のアカデミア等が実施できる環境を構築すべきです。こうした取組は、政府が取り組んでいるEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)推進の動きとも一致するものです。EBPMの推進体制の充実も含めて取り組んでいただきたいと思います。
 6ページ目を御覧ください。3点目は、中立性原則の周知・理解です。後ほど紹介する、経済同友会が主催する未来選択会議では、主権者教育に現場で携わっておられる教員の方やNPOの方から、現状の通達や指導資料だけでは現場の教員もどのような教え方をすればいいのか悩むことが多いので、より踏み込んだ形で中立性原則を示すガイドラインが欲しいとの声がありました。事例として紹介しているドイツのボイテルスバッハ・コンセンサスは有名です。また、県レベルでは、神奈川県教育委員会が指導資料に明記する動きもあるそうです。我が国でも、国レベルでももう少し踏み込んだ形で中立性の原則について周知・理解させる努力が必要ではないでしょうか。特に小中学校において改善の余地があるのではないかと考えています。
 7ページ目を御覧ください。政治的中立性の担保の方策に直接的には関わらない2点を挙げています。まず、主権者教育推進組織への支援です。現在、主権者教育に取り組むNPO等の資金的基盤が脆弱で、事業の継続が困難との声も聞かれます。民間活用の視点からも、一定の財政支援を検討してはどうかと考えています。次に、投票以外の社会・政治参加の重要性に関する教育です。投票以外の政治参加の重要性が十分教育されておらず、具体的方法の理解が不足しています。地域の課題解決への参画、生徒会活動、投票以外の政治参加の方法(請願や陳情、健全なデモ活動)なども、政治的有効性感覚を育てるための主権者教育として重視すべきです。
 8ページに入ります。8ページ目以降は、経済同友会が櫻田代表幹事の下で今年度立ち上げた未来選択会議の概要を紹介しています。社会の様々なステークホルダーが自由闊達に議論し、日本の将来に向けた論点・選択肢を提示していくことを目的としています。その重点テーマの1つとして、「未来の選択につながる民主主義(若者の政治参画とインターネット選挙・投票)」を設定しています。昨年の9月には、キックオフ・イベントを、そして、先週19日には、第1回オープン・フォーラムを開催したしました。篠原座長や文部科学省の滝波課長、玉川学園の教員の方、また、労働組合の方にも御出席いただき、先進事例の横展開について議論をいたしました。
 経済同友会では、政治参加プロセスを御覧のように整理し、今後、赤枠で囲った部分を中心に議論を深めていく所存です。その内容につきましても、経済同友会事務局から文部科学省に御報告させていただきたいと思っております。
私からの発表は以上です。ありがとうございます。
【篠原座長】 ありがとうございました。なかなか非常にめり張りの利いた御説明、ありがとうございました。
ここからはと行きたいんですが、もう一方、二方お願いをしております。神津委員から御発表いただき、それで、本日は、清水秀行連合副会長・日本教職員組合中央執行委員長にも御同席をいただいております。それでは、お二人から御発表よろしくお願いいたします。
【神津委員】 私からは一言だけ申し上げて、清水副会長にバトンタッチさせていただきたいと思います。清水副会長は、私ども日本労働組合総連合会、連合三役の中で最も信頼している副会長のお一人であり、そして資料2の表書にあるように、日本教職員組合、日教組の中央執行委員長を務めておられます。今日の与えられたテーマである政治的中立性について、実際に第一線で主権者教育を担っている学校の先生方が、これまで、あるいは日頃どんな苦労をしておられるかということについて、説明をするには最もふさわしい人だと思っております。マイクを清水副会長にお渡ししたいと思います。よろしくお願いします。
【清水連合副会長】 御紹介いただきました日本教職員組合の中央執行委員長で連合の副会長を務めております、清水でございます。生まれ育って就職するまで東京・新宿区立の小学校、そして、新宿区立の中学校、東京都立の高等学校を出て、東京にある私立の大学を出て、千葉県の公立中学校に採用されて以来、ずっと千葉県で中学校の国語の教員を務めておりました。19年勤めた後に、組合専従となり離職をして、今の立場になっているところでございます。
 そのような経験の中で、自分自身がやってきたこと、あるいは学校でやっていることについてお話をさせていただきます。ポイントは3点で、2ページにありますように、(1)が政治的中立の確保、(2)が学校で主権者意識を高める取組、(3)が主権者教育についてと、いうことで書かせていただきました。
 3ページです。まず、私たちは教育基本法に基づいて、政治的教養は尊重されなければならない。改正の前は「尊重しなければならない」で若干の文言の差はありますけれど、基本的に第1項、それから、第2項、政治的中立について書かれている部分は文言の変更はございません。私たちは、この法律にまずのっとって、政治的教養、そして、政治的中立に基づいて学校で展開をしています。
 当然、選挙年齢の18歳への引下げによって2015年にこの間通知が出て、確かにこの通知の中の特に「積極的」にという項目は良いのですが、2項目に、指導に当たっては、教員は個人的な主義主張を述べることは避け、公正かつ中立な立場で生徒を指導するという、この文言のみが独り歩きをしたり、あるいは、この文言の持っている意味が十分に伝わらずに、特に都道府県、市町村の教育委員会から学校長を通じて学校現場で話されるときに、全く触れてはいけないようなイメージになったりしています。
確かに国政選挙のたびに、あるいは統一自治体選挙のたびにこの通知が印刷されて机上に配られ、「政治的な取組をしてはならないですよ」という校長の言葉によって、日本教職員組合の青年部の中で、「委員長、教職員はそもそも選挙に行っていいんですか」と発言する組合員もいて、大変驚いたこともあります。その教員も、20歳から教員になるまでにおそらく選挙に一度も行ってないのか、誘われなかったのか、ということが危惧されるところです。確かにこの通知が別な意味で縛っているのは事実で、このことで非常に学校の中で主権者教育を進めることに一歩引いてしまっている、そういう教職員がいることは事実です。
 しかし、文科省から出していただいている「私たちが拓く日本の未来」を1つの大きなよりどころとして私たちも見ていますが、「何をやったらいけないか」とか、「何をすべきではないか」ということではなく、「何ができるのか」、「どんなことをしていかなければいけないのか」ということで、この教材を捉えています。
 5ページですが、政治的中立の確保に関するQ&Aがあります。その中に「生徒の話合いが一つの観点に終始し議論が深まらない場合などに、教員が他の見解を提示することも考えられます。また、個別の課題に関する現状とその前提となる見解などを教員が提示する場合も考えられます。」ということが書かれています。「どこまで出していいんですか」ということに対するQ&Aを書いていただいているわけですが、私たちは、この文言からいって、教員が何かの考えを一方的に話したり押し付けたりしては当然いけないわけですが、「いろいろな見解があるんだよ」ということは、場合によっては授業の中で、あるいは学級活動の中で伝えていかなければいけないと思っています。一方で、「何も言ってはいけない」という先ほどのイメージが、大きく主権者教育が進んでいない要因になっていると思っています。
 この冊子は高校生と高校の教員向けに作られていますが、中学校でも国の仕組みとか政治の三権分立などは、中学校3年の公民で特にしっかり学びますし、小学校でも扱う部分はあります。また、国政選挙が3年に一度は参議院選挙があること、衆議院も4年の任期が満了になることは余りなく、3年程度で行われることが多いということを考えると、高校に入ってからこの副教材を基に学ぶよりは、やはり中学校3年生、ちょうど中学校2年の職業教育や、現場での職業体験が終わった辺りから、このことをしっかりやっていく必要があるのではないのかと思っています。
 6ページです。主権者教育は当然高校だけでなく、幼小中からの積み重ねであります。この会議でも随分話があったと思いますが、児童会活動、生徒会活動はまさにこのことでずっと私たちはやってきました。最近、残念なことは、いわゆる授業時数を確保する、授業を進めることが優先で、生徒会選挙も、役員が定数どおりに出たらもうそれでよしとして、競争選挙にならないように、逆に立候補したい人がいると押さえたりすることがございます。競争選挙になると、午後の授業をカットして立会演説会を実施して、質問、そして投票となると、午後の授業がカットされてしまうこととなります。そこで、定数内であれば、政見放送のようなものはお昼の給食の時間にマイクを通じて聴いて、帰りの会で投票する。これが5時間目、6時間目をカットせずにできる最先端の方法ということです。
 私が教員のときには、逆に声を掛けて、必ず競争選挙になるように働きかけましたし、「たすきを掛けて、昇降口の前で朝みんなに訴えることは大事だよ」と言ってきました。また、「でも、先生、あめ配っちゃ駄目?」と言うから、「あめ配っちゃ駄目なんだよ、そういうときは」ということを教えたりしました。残念ながら、今そういったことが薄れてしまって、選挙や立会演説、ポスターを貼ること、許可なく自分だけやってはいけないこと、そういったことを学ぶ機会がなくなってしまっています。
 中学校や小学校で、いわゆる委員会があると思いますが、図書委員会や美化委員会といった委員会は、議会の常任委員会に当たるわけで、どうやって図書をみんなが有効に使えるか、どうやって学校内を美化していくのかということを議論する場です。そういったところで主権者教育が行われてきた経過がありますが、残念なことに、今そういったことが薄れてしまっています。教科の中では当然、社会科に限らず、家庭科で家族の在り方から、どうやって社会が出来ているのか、というのを学ぶことも必要ですし、学校や地域の中で学んでいくことも大事かと思っています。
 入学式等で、せっかく小中学校で地域の選出されている議員の方が来賓として座られていますが、その場で紹介されて祝辞を述べることで終わることなく、是非とも、入学してから3か月か4か月たったときに、「我が町の町政はこういうふうに進んでいて、今こんな課題があるんだよ。君たちはどう思う?」など、出身の自治会の議員の皆さんが小中学校に足を運んで、そこで自らの議員活動を通じて主権者教育をしてはいかがでしょうか。そこで議員の先生に質問するという形が良いのではないでしょうか。特に小学校は市町村の議会、市町村の課題を扱うのが良いかと思います。高校生は県議会、大学生は国会というような形かなと思っています。
 また、私たち教職員組合で時々思いが強い人がいて、いきなり自分の学校で原発についての議論をする方もいます。原発の立地県のところであれば立地県の難しさがありますし、原発がないところでは、上滑りの形になることもあります。やはり何のテーマで、どう選んで、どの学校段階で、どうしていくのか、ということを十分に考える必要があると思います。大学生であれば、それぞれ各都道府県から東京の大学などに来ていますから、原発の立地県の県もあるし、そこの出身者もいますし、全くないところもあります。そういったところを大事にしていかないといけません。
 私は千葉県ですので、習志野駐屯地のあるところで、自衛隊のことを授業でやろうとすれば、9割以上の方が自衛隊関係に勤めていらっしゃるわけですから、そういったところを十分に考えて、学校段階、地域に応じた、また、市町村、県政、そして、国会という、レベルに合わせたものをやっていく。よく小学生が国会見学に行っていますが、私は今、大学生ほど国会見学に行くべきではないか。今の国会をどう見るのかということが大事なのではないか。高校生も是非、県立高校の皆さんは県議会の傍聴にカリキュラムとして行ったりすることが大事でないか、と思っています。
 7ページです。主権者教育について、子供たちの声を載せさせていただきました。御覧いただければと思っています。
 8ページです。高校生、大学生の実態はこの推進会議でも話されていることと思います。居住地と住民票が違うことについて、18歳になるときにマイナンバーをしっかり取得いただいた上で選挙をオンライン化して、新しい学生の皆さんにオンラインの投票ができるようにしていくことが必要かなと。当然、大学にも協力を求めて、学内に投票所を設けることが必要です。
 それから、やはり若い人にはインセンティブが必要ですので、国政選挙に18歳以降1回行ったら、免許の更新時期が最初に取ったときに2年延びる、あるいはパスポートは5年、10年ですが、国政選挙に行けば2年延びて、最初から12年のものが取れますよ、というような、お金が直接掛からない何らかのインセンティブを持つことで、是非投票に行くということをするのも良いかと思っています。
 スウェーデンのことはこの間も出ていますので、そこのところはお読み取りいただきたいと思います。学校の校則を自分たちが作るという、そういう意識のスウェーデンと、出来た校則を守りなさいとしか言われない高校生では、やはり政治への参画の仕方が違ってくるということです。
 選挙権が18歳となったときに、高校の教室に選挙に行こうというポスターが貼ってあって、みんなそれを見て、「どこに行く?」とか「政党どうする?」などの話を結構しましたが、最近はポスターが貼っていないということで、是非そういったポスターを貼ることも1つであろうと思っています。また、先ほどお話ししたように、20歳になってから、あるいは18歳になってから、声を掛けられて選挙に行ってない人がいますので、是非、やはり家庭教育というか、家庭の力で選挙に行こうよ、という最初の言葉を掛けることが大事かと思っています。
 9ページについて、日本教職員組合では教育研究全国集会で授業実践例の事例報告をしており、記載のような、水道は市町村によって料金も違いますので、そこが合併するときにはどんな課題があるか、という授業も紹介しておりました。
 10ページの最後のところです。主権者教育として、先ほどお話しした教育研究全国集会等で、いわゆるシチズンシップ教育、あるいは労働教育に関して、労働者として、高校生になってアルバイトに行ったら、交通費が払われる約束だったのに払われなかった、といったときにどうしたら良いのか、という教育もしっかりやっていく。そのことが国の政治への関心を高めたりすることにつながるのではないか、ということです。
 様々申し上げましたが、学校では、私はもっと児童会・生徒会活動を大事にして、そこの発想に基づいて「地域のごみゼロ運動ってどうやったらいいか」など、地域の皆さんと関わっていくことが大切です。私は自分の生徒会のとき、校舎内の美化の清掃担当を美化委員の皆さんで話合いをさせました。そうすると、3年生は、職員玄関などを自然に取っていきます。やはり、表玄関のところは3年生がやるべきだ、とか言ってです。そして、ちゃんとできていないときには、学期に1回反省会がありますから、「おまえのところのクラスと替われ。おまえのところの掃除はみっともない」と、そのようなようなことを子供たちが自分自身でやることで、いろいろなことが伸びてくるのかな、と思います。以上です。
【篠原座長】 非常に分かりやすく御説明いただいて、どうもありがとうございました。
 あと、神津委員何かありますか。よろしいですか。
 ここから、お二人の御発表に対しての御質問、また、御発表を受けての御意見、感想、どうぞ委員の皆さん、御自由に御発言をいただきたいと思います。40分ぐらいの時間を取っておりますので、どうぞ、どなたからでも。
 では、小玉委員、お願いします。
【小玉委員】 どうも御発表ありがとうございました。きょうは政治的中立性の確保についてということで、経済同友会と連合、日本教職員組合の方から御発表いただきました。経済同友会の方では、レジュメの2ページですかね、ドイツの連邦政治教育センターに学んで、日本版の政治教育センターが出来ないかというところが、とても重要で示唆的な御提案だと思います。
 中立的な政策研究機関、シンクタンクやNPOが日本の場合には政治教育センター的な役割を果たすことができるんじゃないかというお話がありました。確かに日本の場合、行政機関とか国の機関として政治教育センター的なものを作ることもあり得るのかもしれませんけれども、政治教育センターは政党や政治家とある程度直接関係を持ったりする場合もあるので、日本の教育行政の立て付けがそれに合っていないようなところもあります。けれども、そこから自立したシンクタンクやNPOみたいなところがそういう役割を果たすということであれば、かなり現実的かと思いました。これについて議論がその後進捗しているかどうかをお知らせいただきたいというのが1つです。
 それから、連合や日教組でも、例えば政治的中立性の確保で先生方が臆することなく主権者教育や政治教育をすることができるようにするための1つの方策として、政治教育センター的なもの、それは日教組直属という形にするのではない形で、何か自立した機関、研究機関みたいなものでそういうことをやることももしかしたら可能かもしれないと今、清水副会長のお話を聴きながら思いました。連合や日教組の方では何かそういう自立した研究機関とかシンクタンクみたいなところで、主権者教育の実践を後押しするみたいな構想というのはないだろうかとお聞きしたいと思います。
【篠原座長】 まず、中村委員。
【中村委員】 今、どちらかというと、ドイツの話とかいろいろなお話は、同友会の勉強会で小玉先生にいろいろ御意見をいただいた範疇から抜粋したようなところもあります。まさにこういうものがあればいいなという感覚はあるんですけれども、中立性って難しくて、現状ですと、右寄りの人、左寄りの人がいて、これが中立ですよと言ったときに、右寄りの人は、この中立性を発信したところは左寄りだと言うだろうし、右寄りの人は左寄りだというような状態になると思うんです。それを解決するためには、やっぱりNPOだとかシンクタンクが、本当にデータと事実を基に積み重ねていくことが大事だと思うんですね。それこそ一、二年ではその問題は解決しないと思いますので、10年プロジェクトぐらいでデータと事実を基に積み上げていった結果、ここは信頼できる情報の発信元だねというようなことを作り上げていく努力を今後していかないと難しいだろうなと思っています。そういう面では、先ほどちょっと御説明した、同友会でも未来選択会議なんかで今後その辺を詰めて発信をさせていただきたいと思っております。
【篠原座長】 ありがとうございます。それでは、連合の方の。
【神津委員】 連合自体で政策提言をしており、それがひとつの大きなものなので、なかなか各政党がどういう政策を出しているか、ということを全部取り上げることは、普段は余りしていません。ただし、例えば国の基本政策に関わるところで、連合としても必ずしも定見として結論付けていない、例えば2年ほど前に憲法について様々な議論が盛んであった時に、政党の考え方を聴こうではないか、ということでそれぞれ来てもらってヒアリングをして、考え方をまとめたことはありましたが、連合本部では、必ずしも、それをもって学校教育にどう役立てるか、という視点にはしていません。清水副会長の方では?
【清水連合副会長】 教職員組合としては、やはり授業実践が一番であろうと思っています。組合ですから、連合と併せて教育政策も含めて要求などもしておりますが、私たちの本分は学校教育の中でどういう授業を展開していくか、ということですので、小学生ならば、中学生ならば、高校生ならば、こういう課題ならばという、実際に授業で行ったものの中からこういう優れた実践があるという、実践報告集のような形で日教組として出していくのが一番であろうと思っています。
 そういったものの中から、研修ということでいえば、文科省も、都道府県も、あるいは市町村でも、6年目や10年目、あるいは初任研修なども実施していますが、そういったところでも主権者教育を是非進めるときには、難しい通知よりも、こういう実践をして子供がこのように生き生きしているというのを、是非初任研や6年目あるいは10年目など悉皆研修で行政も含めてやっていく。できれば、そのときに日本教職員組合でもこんな良い実践があったことを紹介してもらえれば、共に歩んでいけるのかなと思っています。以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。では、ほかの委員、どうですか。
どうぞ、田村委員。
【田村座長代理】 ありがとうございます。小玉先生と同じような趣旨の御質問になってしまうかもしれないんですが、1つは、中立性の問題は難しいなと思うのは、教育委員会が基本的に中立であるという前提ですよね。だから、そことの関わりをどういうふうに考えたらいいのかという問題が常に出てくるような気がするんですね。ドイツの場合は、ですから、そういう意味でいうと、各州の自律みたいなことで、アメリカの教育委員会をまねた日本の教育委員会はドイツにはないわけですから、そのままは導入できないけれども、そこをどうしたらいいかという議論をどういうふうにお考えになっているのか、これが1点です。
 それからもう一つは、中村委員からのお話の中で未来会議というような話が出てきましが、この手の議論の対象は、実際にこの教育に意味があるのは今の小中学校の生徒とすれば、それこそ30年後の社会での話ですよね。ですから、教えることが30年後に役立つのかという視点をどう入れるのか。未来会議ということをおっしゃっていましたが、未来会議の中では、もう既にいろいろなところでいろいろな未来会議が提言をもって議論していますよね。例えばベーシックインカムが出来ると、いわゆる労働という考え方が変わってくるだろうというふうに議論されていますね。そうすると、労働者というような考え方で連合はどうお考えになっていかれるのか。基本的にもう本当に変わってきてしまうというような気がするんですが、そんなような議論をどこでどういうふうにしているのかという質問ですが、そんなものです。
【篠原座長】 では、神津委員か清水副会長。
【神津委員】 2つ目のお話はどういう観点ですか。例えばということでベーシックインカムの話?
【田村座長代理】 つまり、連合として未来会議みたいなものを持っておられるのか。
【清水連合副会長】 教育委員会はまさに政治的に中立ということで、教育行政としてもそのような形となっているところですので、どちらかに偏ってというのはなかなか難しいのかもしれません。
 ただ、教科書の採択なども含めて、どのような教科書を採択するかということも、各自協議会で議論をした上で、具体的なものを持ち寄って最終的に話合いで決めていくということがありますから、主権者教育などの教材は、教育長の下の教育委員会である意味オープンに、「こういった実践集があるけども、こういったものはどうだろう」、あるいは「こういったシンクタンクがこんなものも出しているけれども、どうだろう」と副教材という形だと、教育委員会に届け出て、幾らで購入して云々という話になります。主権者教育は教科ではありませんので、そういった意味では、学校で提示できる資料ということで、「シンクタンクにもこういった、すばらしいものがありますよ」と紹介するにあたって、教育委員会事務局ではなく、教育委員の皆さん方の合議をもって決めることでやっていけるのかなと思います。あくまで選ぶのは市町村あるいは都道府県という単位で、そこに運営主体を設けたものが良いのかな、と。国は、ここにあるような大きな「私たちが拓く日本の未来」のような形を示していくのが良い、と思っております。
【篠原座長】 どうぞ、神津委員。
【神津委員】 経済同友会の方でされた未来選択会議のような、そういう構えを持ったものがあるわけではありませんが、テーマごとにシンポジウム、オープンな形のものは随時行っています。いろいろな政策を考えるにあたっては、やはり将来像、近未来を見せなければいけないということは、共通していると思います。
 一昨年の秋でしたが、連合が結成して30年ということで、それを機に自分たちのビジョンを改めてしっかりと作っていこう、ブラッシュアップしていこう、ということで、そのとき、2035年の段階を見据えて頭を巡らせなければならない、ということは行いました。
例えば雇用の姿が、AIなどの技術革新でもって、かなり劇的に変わっていくことは当然想定していかなければいけない、と。その中で、雇用の姿を流動性ということも含めて、しかし、生活保障と流動性、再就職のマッチングのようなパッケージもしっかりと作っていかなければならない、ということも含めて、やはり包摂的で持続可能な、多様性を尊重する社会に向かっていかねばならないのではないか、というビジョンを策定したところです。
【篠原座長】 ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。では、松川委員、どうぞ。
【松川委員】 少し違う話題ですけれども、御質問させていただきたいと思います。中村委員の御発表の資料の中で、6ページですか、政治的中立性に関する理解が教育現場で十分共有されていないという御指摘があります。その中で、特に小中学校において改善の余地があるのではないかというふうにお書きになっていらっしゃるんですけれども、このことは具体的にはどういう意味なんでしょうか。
【篠原座長】 では、中村委員、お答えいただけますか。
【中村委員】 これについては、中立性というのは、対立する軸が、やっぱりいろいろな見解があるよというようなことを含めて生徒たちに教えていくという。こういう部分がまだまだ、それこそ小学校の先生というのは、昔は訓導と呼ばれたように、わらべを導くという世界がまだ生きているのかなみたいな感じがして。それよりも、やっぱりこれからは、小学生であっても中学生であっても、自ら考える力をどれだけ植えるのかなということからこういう表現をさせていただいております。
【篠原座長】 よろしいですか。
【松川委員】 ありがとうございます。連合の清水副会長の御発表の中にもありましたけれども、国が出しています「私たちが拓く日本の未来」という指導資料の中にQ&Aでかなり事細かく書かれています。この「私たちが拓く日本の未来」を先生方にしっかり読んでいただけばもちろんいいわけで、それぞれのQ&Aを小中高、特別支援向けにはもう少し簡潔にしっかり書いてあります。私、前職のときに教育委員会におりました時に、更にこれを、要するに、簡単にまとめるとどういうことかというのを、教育委員会として書き直して新しい手引のようなものを作って、実践事例と一緒に配布したことがあります。
 やはり今のところ、この国が出している指導資料というのは大変しっかりしたものだと思います。ですから、これをしっかり理解していただくということ、どういうことをしてはいけないのか、あるいはできるのか、こういうことをやる場合はどういう留意事項があるのかということをやはり積み重ねていくことが必要だと思います。これが発表されたのは18歳に選挙権が下りてきたというときでしたので、高校の先生が主にお読みになったのかもしれませんけれども、小中でも対応する単元があるわけでして、そういうところでもここに書かれていることが十分通用すると思います。既に、5年ぐらいたっているわけですけれども、実践事例も含めてそれぞれの都道府県で積み重ねてきたことを更にいかしていくことも必要ではないのかなと思います。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。これはむしろ文科省に答えてもらった方がいいのかもしれませんけれども、その前に清水副会長、何か1つありますか。
【清水連合副会長】 Q&Aから、いわゆる手引のような形でもう少し分かりやすく、というのは、確かに松川委員の御発言のとおりかと思います。
 また、子供たちは、地域や物の言い方にもよりますが、教員の言葉にそう簡単には左右されずに、「先生、どうして?」と必ず返してきます。「先生はどう思っているの?」とか、「先生、5つ見解あるみたいだけど、先生はどれに近いの?」と聞かれたときに、「先生は言っちゃいけないことになっているから言えないんだ」のようなことしか返せない教員は、私は駄目だと思っています。直接的に、「僕はこう思うから、君たちもこう考えろ」ではなくて、必ず「先生はここに近いかな」ぐらいのことは。授業の時間が終わった後に質問に来る子もいますから、そこに「答えられない」と答えてしまうのは、私は教員としてはある意味良くないと思っています。
 子供は今、かなり情報をいろいろ持っていますから、「先生、どうしてそうなのかな」というように必ず返ってくるので、返してくるような形で授業を組み立てて、一方的な押し付けにならないようにすること。テーマの選び方と、授業の、やはり訓練をするしかないと思っています。そのためには、怖がらずに一つ一つのことをやっていく。
 大事なのは、学校できちんと教育の中でやっていくこと。3年生では、どの担任もみんなこれをやろう、と。1人の人が自分の思いだけで主権者教育をすると、大きく外れることがあるので、必ず学校の中で意思一致をしながら、主権者教育年間計画といったことで余り縛ることなく、しかし、校内での研修を大事にしながらやっていく。それに使えるような手引のような形で、より小中学校にも対応したものが出来ると良いのではないか、と思っています。以上でございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。滝波課長、松川委員から、ぼちぼち手直しをこの冊子をした方がいいんじゃないかという提案がありましたが。
【滝波教育課程課長】 大変重要な御指摘をいただいたと思います。ありがとうございます。文部科学省の方では、総務省とも御一緒に「私たちが拓く日本の未来」という副教材を2015年のときに作成をしたわけですけれども、これについては、お話あったとおり、高等学校を主に念頭に置きまして、選挙権年齢が18歳に引下げになるということを念頭に作成をし、高校の現場に配布をしているというところでございます。また、きょう先生方のお手元には、活用のための指導資料ということで、教員向けの指導資料も併せて作っておりますので、その抜粋を御用意してございます。
 これについては、高等学校の方を主に考えて作っていたわけですけれども、小学校、中学校、早いうちからということもお話の中にあったわけでございます。この点については、この会議の中でも前半の議論の中で御議論いただいて、昨年の秋の中間報告の段階で、小学校、中学校段階から主権者意識を育めるような教材作りということが求められるということの御提言も既にいただいているものと承知をしておりますので、私どもとしてはしっかりと最終的な提言もいただいた上で取組を進めてまいりたいと考えているところでございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。
 総務省側から今の話で何か御意見ございますか。この冊子は両方で、文科省と総務省で作ったんだから、何かございましたらどうぞ。
【南雲総務省選挙部管理課選挙管理官】 総務省でございます。文部科学省さんと引き続き連携して取り組んでいきたいと思っております。ありがとうございます。
【篠原座長】 ほかに。どうぞ、清水委員。
【清水委員】 小中の保護者という立場で意見といいますか、感想なんですけれども、先ほど清水副会長がおっしゃったことは本当にそのとおりだなと思うところがたくさんありました。確かに各教員の先生方で主権者教育を教えていく中で、ある程度意思といいますか、方向性を定めた形で、各先生方の思いがばらばらだと、当然それを受ける子供たちも非常にぶれてしまうかなというところがあります。
 とは言うものの、やっぱり当然、学校の先生方だけではなくて、冒頭にありましたように、恐らく主権者教育の中で毎回多分出てくるキーワードだと思いますが、最終的にはやっぱり家庭教育というところ、我々保護者が、学校から例えば子供たちが主権者教育に関わる副教材であったり、いろいろな資料を持ってきた際には、例えばそれを使って家の中で子供とそのことに関していろいろな話題を提供していきながら、家の中でそんな話をしていって子供たちに主権者としての教育の意識を高めていくような仕組みというのは、当然保護者としてはやっていかなければいけないかなというのはやっぱり改めて強く思いました。
 私は、個人的な話ですけれども、今、一番下の子供が今度小学校新6年生になるんですが、いつもこの主権者の会議に出させていただくと、自分が今、一番下の子供に対してこういったことについてどんな仕組みでどういう形で話をできているのかなと思うと、正直なかなかお恥ずかしい状態です。今年はいろいろと選挙もあるというところでありますので、いろいろな題材をしていきながら、身近な話題からいろいろ興味を持たせていかなければいけないなというのを改めて思いましたし、PTAといたしましても、そんなようなことをいろいろと参考にして進めていきたいと思いました。感想でございます。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかにございますか。
では、私から一言。今、清水委員からもお話があったんですけれども、あるいは、連合の資料の中にも、15歳から労働者だと清水副会長の資料にありました。あれは、すごく大事なことで、中学校卒業後、高等学校に進学せず就職なさる方々のこともいろいろ考えると、先ほど来話が出ているように、やっぱり小中学校の頃から社会というものへ関心をいかに持たせていくかを考えることが大切だと思います。
 先日の経済同友会の「未来選択会議」などいろいろフォーラムをやっていただくのも大切ですが、高校生や大学生などの若者を対象にやっている。それはそれで意味があるんだけど、私自身、あの会でも発言しましたけれども、やっぱり子供の頃からどういうふうに養っていくか、それをまた家庭がどうフォローしていくか、そういうところまで全部踏み込んだ会議にしていただくことも重要ではないか。僕はこの間出席していて、少し我々と軸が違うなという感じがいたしました。
 それから、経済同友会の資料の中にあります、小玉委員からも御指摘がありましたけれども、政治教育センター。確かにこういうものが日本にもあると随分いろいろなことがやりやすいなという感じがするので、これ、こういうものもひとつ考えたらどうだと最終報告で投げ掛ける手もあると思います。ただ、そのときに、ここにも書いてあるように、超党派の国会議員による評議員会というのがあって、そこが裏打ちしているわけですよね。そういうものまでセットで出さないと、単に有識者中心の政治教育センターでは、私は実効性がかなり落ちるのではないかなと思っています。だから、そこのところをどこまで踏み込むかというのが最終報告に向けての1つのポイントかなと思います。
 それから、ボイテルスバッハ・コンセンサス的なものは、やっぱり何かちょっと報告に盛り込みたいなと思います。これはいろいろな意見があると思いますけれども、一言で言えば、論争あるものは論争あるものとして扱うということだろうと思うんですね。この辺を最終報告に向けてどういうふうに少し投げ掛けるかは、皆様と議論しながら着地点を作っていきたい。こういう感想を持ちました。以上でございます。
 植草委員、何かありますか。いいですか。
【植草委員】 1つだけ、じゃ。
【篠原座長】 どうぞ。
【植草委員】 すみません、ありがとうございます。植草でございます。まず、清水副会長からお話しいただきました、「私たちが拓く日本の未来」、これの小学校版、中学校版はやっぱりどうしても必要かなと思っています。多分、文科省の方はそれを認識されていて、作る方向で行っていると思うんですが、その際に、どうしても学校種ごとにやってしまうと、多分高校の教員は小中学校がそういうものをやっているというのを知らないというようなことが出てくる可能性が高いんですね。
 ですから、もしそういうものを作るのであれば、やっぱり高校の教員、小学校の教員、中学校の教員って学校種を超えた中で作り上げていく。それと、その後作った後の研修というときに、やっぱり学校種を超えた形で教員を集めて研修をするということが多分、縦軸の主権者教育につながっていくかなと。その際に、多分そこにコミットするには、例えば今議論があるように、学校からちょっと一歩離れた政治教育センター的な、例えばそこまで行かないにしてもNPOがそこにかなり絡むとか、そういうことが可能なんじゃないかなと思いました。今御意見を聴いてそういうふうに思いました。以上です。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかにございますか。このお二人のヒアリングに対する意見あるいは御質問、この辺で区切りとしてよろしいですか。どうもありがとうございました。
 では、そういうことで取りあえずここで打ち切りますけれども、また後で何かこの政治的中立性の問題で御意見ございましたら、後の議論、これからの議論の中で出していただいても結構ですから、では、よろしくお願いします。
(清水連合副会長退席)
【篠原座長】 それでは、きょうの2つ目の議題である、「その他」について議論を行いたいと思います。委員の皆様におかれましては、昨年11月に公表しました中間報告におきまして、今後の検討課題として示されました4つの内容のうち、1、大学段階における主権者教育の在り方、2、教員の養成、研修の在り方、3、教育現場における政治的中立性の担保の方策につきましては、これまで3回にわたりヒアリングを重ね、御審議、御議論をいただいてまいりました。
 本日は、残された検討課題である、4、その他、例えば選挙における選ばれる側の役割などについて御議論をいただきたいと考えております。このうち、選挙における選ばれる側の役割につきましては、選ばれる側というのは政党、政治家、候補者ですが、現職の国会議員が在籍する政党を対象に、子供や若者に向けた政策の周知についてどのような取組を行っているのか、書面にてアンケートを行いたいと考えております。皆さんに御了承いただけましたら、座長である私と事務局とで相談してアンケートを行い、次回の会議で御報告したいと思います。よろしいでしょうか。では、御了解いただいたということで、ありがとうございます。事務局と相談の上、アンケートを行いたいと思います。
 さて、私としては、その他のところで、今お話しした選挙における選ばれる側の役割以外にも、この会議の場で御検討いただければなと思っているのは、1つは、先ほど来出ている家庭教育についてですね。文科省の地域学習推進課で担当されているわけですね。それから、厚労省には子ども家庭局というのがあって、向こうは福祉が中心です。そんなことがいろいろあると、もう少し文科省と厚労省の横串を刺して、家庭教育を推進するようなセクターが政府の中にもう少しぴしっとあった方がいいんじゃないかなという感じがします。だから、そんなことの芽出しもちょっと最終報告でできないかなという、政府側に投げ掛ける感じになりますけれども、と思っていますのが1つ。
 それからもう一つは、経済同友会の資料の中にあった、今日の説明にはなかったか、投票の義務化ですね。主権者教育を充実させて、もうこれ以上方策ないよというところまで行った段階で依然として投票率が高まらない、あるいは投票の質が向上しないというような状況がもし出てきたときは、やっぱり将来的には選挙の投票の義務化というのも将来的な検討課題にしていいのではないかなと。これは諸外国、総務省にまた後で教えてほしいんですけれども、オーストラリアとかイタリアなんかはそれやっていますよね。
 また今度のときでいいですから、文科省を通じてで結構ですから、資料を、各国やっているところの一覧みたいなものを作っておいていただけますか。
【南雲総務省選挙部管理課選挙管理官】 文科省と御相談いたします。
【篠原座長】 そんなことで、今すぐじゃないんだけれども、主権者教育を目一杯やった上で、なおかつやっぱり投票率がこうだという。スウェーデンなんていうのは、これにも出ているけど、80%台の投票率をずっと維持しているわけですね。
 確かスウェーデンは別に投票を義務化してないと思うんです。投票率を上げるためにネット投票を認めたらどうだという意見もある。それも1つの手段だと思うんですけれども、これもさっき言ったように、スウェーデンなんかネット投票なんか認めていなかったと思うんです。それでも83%ぐらいの投票率になっている。だから、やっぱり世の中の動きや政治の動きやそういうものを自分のものとしてどこまで若い人が受け止めてくれるかということが、僕は投票率の一番のポイントだと思うんです。それはやっぱり家庭であり、小中の頃からやっていかなければいけないんじゃないかなという意味で、それでもなかなか難しいということであれば、将来的には投票の義務化というものも私は考えていく必要がひょっとしたら出てくるのかなと思っています。
 ただ、これはやると、憲法の改正の話にもつながるかもしれませんね。今、投票は権利として憲法第15条に書かれていると思うんですけれども、これを義務化するとなると、憲法改正がひょっとしたら要るかもしれません。そこぐらいまでの問題だろうと私は思っています。今の2つ、そういう家庭教育局というか、家庭教育を主とするセクションを政府の中にもう一つきちんと柱を立てるべきであるということが1点と、それから、将来的には投票の義務化ということもいずれ必要になるかもしれないという問題意識、この2つについて私の方から御提案を申し上げさせていただきました。それ以外でも、この2つに対してでも御意見あれば、どうぞお述べいただいて結構です。よろしくお願いします。
【中村委員】 よろしいですか。
【篠原座長】 どうぞ。
【中村委員】 今座長の言われた部分において、家庭教育と言われるんですけれども、今、子供に対する主権者教育を主軸に置いているわけですけれども、それを家庭でという。その家庭における親が、正直言って主権者教育を受けていない世代なんですね。きょうお配りしたこの提言書の2ページ目に、空白世代という呼び方をさせていただいたんですけれども、まさに18歳選挙権から主権者教育というのがクローズアップされたんですけれども、それまでは、ちょうど学園紛争の影響もあって、文科省から政治的教養と活動について少し実際のことに触れないということの通達が出た部分から、ほとんど主権者教育というのはされていない空白世代が生まれてしまった。したがってその世代が保護者としている時に、家庭において子供に教育しろといっても何を教育するのという部分があります。この空白世代に対しても、リカレント教育じゃないですけれども、主権者教育が必要じゃないかなという部分を感じております。
【篠原座長】 これ、かなり昔からよく指摘されることでね。だから、「親学」がまず第一だということを言う人もいる。中村委員のおっしゃることはよく僕も分かるし、だからこそ、こういう主権者教育のうねりをつくることで、社会総がかりのムーブメントにすることで、親にも少し目覚めてもらいたいなという1つのねらいがある。
 それから前に何回もこの場でも申し上げたかもしれませんけれども、子連れ投票。親が投票に行くときに子供を今連れていけるようになっていますから、そういうのをうまく使って、親子で一体となってやる。
 それからもう一つ、やっぱり学校教育と家庭のコラボも僕は大事だと思うんです。学校と家庭と。例えば週末に学校の方である社会的なテーマを出して、これをお父さんやお母さんと、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんとこれを話題にして話してみてくれないかというようなテーマの宿題を出して、それで、月曜日に短いレポートを出してもらうとか、何かそういうようなコラボもできると思うので、その辺はもう中村さんの言うとおりなんだけど、それ言っちゃおしまいよという感じがあるので難しいところで、何か工夫してやるしかないのかなと考えています。どうぞ、小玉委員。
【小玉委員】 この会議でも前に議論になったと思うんですけれども、今の厚労省と文科省の縦割りの話なんですけれども、就学前教育については、保育園と幼稚園の統合が今、事実上かなり進んでおりますので、そこが1つ突破口になるかなと思いました。つまり、子ども省みたいなものを創るというとかなり先のある話になりますけれども、現段階でも就学前教育に関しては、こども園、保育園、それから、幼稚園の事実上のかなり統合的な動きが進んでいますので、そこの枠組みの中にこの主権者教育の議論も入れ込んでいくということは1つの考え方としてあるし、現実的にも可能であると思いました。
【篠原座長】 ありがとうございます。確かに今、幼児教育はそうですよね。
どうぞ、植草委員。
【植草委員】 今の御議論の中で、先ほどの延長みたいな形なんですけれども、「私たちが拓く日本の未来」、これ、例えば小学生版を作るのであれば、その中に例えば家庭の方でどういうふうに一緒にやりますかという項目が入ってもいいかなと。これが文科省だけで作るものじゃなくて、総務省が絡んでいるというところが非常に重要だと思うんです。そうすると、文科省だけの切り口で家庭と踏み込むとなかなか敷居が高いと思うんですが、そこに総務省と一緒になった副教材ということであると、案外、家庭に、小学生版の「私たちが拓く日本の未来」を作ったときに入り込めるのかなと。
 それと、高校生段階になると、親御さんは学校の授業のこととか余り興味ないんですけれども、小学校のうちだと、こういうものが来たときに、教科書とかそういうものを割合よく見ていると思うんですね。そうすると、今言った家庭教育というものとマッチングできるのかなというふうにちょっと思いました。
【篠原座長】 なるほど。1つのアイデアですね。文科省と総務省で修正する予定があるんですか。
【滝波教育課程課長】 手直しということではなくて、まずはこれをしっかり続けていくことと、あと、この会議の中での御議論を踏まえて、より低い年齢の層、小中学校についてどういうふうに対応していくかが別途あるということかと思います。
【篠原座長】 今の植草委員のような、家庭での対応、そういうものも一緒に盛り込むと。小中を含めてね。というようなことで、これも報告に向けての1つの打ち出しになるかなという感じがします。義本局長、どうでしょうか。
【義本総合教育政策局長】 小玉先生がおっしゃっていただきましたように、今、こども園の設置がかなり進んでいます。これは実は文科省と厚労省、それから、内閣府も絡みまして、それぞれ職員が併任しながらいろいろな体制を組んで、本当に情報共有と政策を推進しています。この枠組みも活用するというのは1つあり得るのかなと思っております。
 それから、今お話しいただきましたように、小学校等の家庭教育との連携、あるいは親の方々に対してやっぱり読んでいただいて考えていただくというふうな資料としては、親に直接というよりむしろ小学校を通じての1つのアイデアかなと思いますので、これは文科省内で総合教育政策局と初中局とで連携しながら議論を進めていきたいと思います。ありがとうございます。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかに御意見ございますか。神津委員、何かございますか。どうぞ。
【神津委員】 先ほど篠原座長が取り上げられた2つのテーマに関して感じるところということで申し上げたいと思います。
1点目の家庭教育ですが、テーマとしては、今度アンケートを行うことになっていますが、選ばれる側の役割とも大いに関わるのではないかと思います。先ほど清水副会長からお話があった中で、「入学式のときだけ来るのではなく」という話がありました。確かに私もそうだと思っています。
 要は、そういうときだけ、あるいは選挙のときだけ、ではなくて、特に一番身近なところの市町村の持っている課題との関係について、家庭、あるいは親からみて、市町村が持っている課題に対する問題意識をふだんは持ち得ていないかもしれないけれども、「もっとよくできるはずだよな」という、ふだん余り意識していないようなことをあえて認識させないと議論にならないし、いわゆる主権者教育ということにもならないので、一番身近な市町村、あるいは、県レベル、国レベル、それぞれに対する家庭の関心の持ち方について、段階ごとの課題認識というのもあっていいのでは、と思いました。
 それから、投票の義務化ということについては、一長一短のところがあると思います。ただ、いずれにしろ義務化をしているところは、どういう議論の下にそれをしたのか、ということは押さえておく必要があると思うので、この会議としてやるべき、とはなかなかならないかもしれないが、採用しているところがどうしてそういうことに至ったのか、ということは少なくとも認識を広げていく必要はあるのではないでしょうか。したがって、そういうところのやり方を、まずは我々としてもしっかりと認識していくことは大事である、と思います。
【篠原座長】 ありがとうございます。今、神津委員の最後に御提案いただいたことについて、文科省と総務省の両方で連携して、僕が記憶しているのはオーストラリア、イタリアなんだけど、ほかにどういう国々があるか、それから、罰則は、オーストラリアはたしかお金だと思うけれども、イタリアはお金じゃなかったと思うんですね。そういうペナルティーの問題とか、それから何ゆえにそういう国々は、そういう制度を導入したのか、義務化ということに至ったのかという、その背景、経緯、この辺も次回までに調べて御報告いただけますか。国立国会図書館に聞けば、彼らはかなり詳しく知っていると思います。
【滝波教育課程課長】 今の御示唆も踏まえて、どんなことができるか、総務省とも連携しながら考えていきたいと思います。
【篠原座長】 総務省の方もよろしくお願いします。
【中村委員】 うちの会社はブラジルにも会社がありまして、ブラジルは、投票に行った証明がないと、社会保障が受けられないみたいなインセンティブが付いていたと思うんですね。社会保障と何か一体になっているんですね。そうすると、やっぱり圧倒的に労働者側が強くて、労働党が勝っていくという。一回勝った段階でそういう法律になってしまったらしくて、それでBRICsと呼ばれてばっと成長したのに、最低賃金をばんばん上げ過ぎてしまって、今の状況に至る、といった状態を繰り返しているんですね。1つの事例として御紹介をさせていただきました。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかに何か御意見ございますか。田村委員、どうぞ。
【田村座長代理】 先ほど小玉先生のおっしゃった、こども園、保育園、幼稚園の主権者教育の話なんですけれども、実はこども園と保育園は、いわゆる「配給」なんですね。
【篠原座長】 「配給」?
【田村座長代理】 「配給」なんです。要するに、市町村が選んで保育園とかこども園に割り当てるんです。幼稚園の場合は一応「配給」ということじゃなくて、親が預けたい人は預けるという、こういうことなんですが、こども園の保育部分といわゆる保育園は「配給」というのが、実質的にはそこで決めているんですね。ですから、主権者教育、まさにそこから始まると考えていいと思いますね。中身を議論するとき相当きめ細かく議論しておかないと、そこは非常に省庁間の微妙なあれがあるから、丁寧な議論をされると非常に効果のあるものが出てくるような気がします。
【篠原座長】 子ども家庭省か家庭庁みたいなものを大々的にという考え方もありますが、日本の状況からすると余り現実的ではないと思うので、文科省もやっているし、厚労省も一部やっている。だけど厚労省は福祉ですから家庭教育には直接関係ありません。
【田村座長代理】 確かに窓口になっているのは厚労省なのですが、実は市町村の担当者なんですね。だから、総務省は深く関わっているわけです。
どうぞ。義本局長の方が詳しいから。
【義本総合教育政策局長】 前々職でその関係にちょっと関わったことがありましたので。今、田村先生がおっしゃったとおりでございまして、保育所、それから、保育園型のこども園というのは、基本的には希望する保護者に対して割り当てるというやり方を市町村がやっているということでございます。一方、幼稚園、それから、幼稚園型のこども園については、基本的にはそれぞれ自分が希望するところと契約して結ぶというふうなやり方を取っております。こども園の制度を今回成立する際においていろいろな法律改正をさせていただきまして、行政については、基本的には市町村が窓口になってこども園についても関わっていく立て付けをしております。
 幼稚園になっているところについては県が直接ですけれども、そういうふうな形になって、市町村を中心にしまして、いろいろな形で行政の事務を、情報を伝えるとか、いろいろな形で幼稚園、保育所についても、かなり今、内閣府、文科省、それから、厚労省が連携してやっておりますので、このような仕組みを上手に使いながら、今先生おっしゃったように、隘路がないように情報をしっかり伝えるとか、あるいは関係施設に対してのそういうふうな関わりをしていくということについては、今の仕組みでもかなりできるんじゃないかと思っております。
【篠原座長】 ありがとうございます。私も何々省とか何々庁云々と言っても非現実的なので、やっぱり家庭教育を担う部門、セクション、そういうものをしっかり明確化してほしいという、そういう程度にとどめてもいいかなと思っています。何かそういうことを少し求めていきたいなということ。どうもいろいろなシンポジウムや何や聴いていても、家庭でどうするかという部分が本当に余り触れられないんですね。だから、私はそこが1つの肝じゃないかと考えています。
 そうすると、中村委員のおっしゃるように、それでは親はどうするんだという話になります。僕も大学で教えていて、学生に「この間の選挙、投票行ったか。行かなかった人、手挙げてみなさい」と言うと、ぽつんぽつん、私の授業ですからほとんど行っているんですけれども、一人二人いるんですね、行かないのが。「どうして行かなかったの」と聞くと、「だって、先生、うちは親が投票に行った姿なんか見たことありませんから」と言って平気でそう返してきますよね。そういうふうなことを考えると、やはり家庭への働き掛けも大切だと思います。
 それから、余談ですけれども、今、コロナでこれだけ世の中騒々しいというか大変な状況なので、むしろ子供たちも、世の中のことに今ほど関心持っている時期はないと思うんですね。だって、自分の行動、全部みんな影響を受けるわけですから。こういうときにこそ、やっぱり家庭が子供と一緒に世の中のことをいろいろ話し合うという本当にいいチャンスだと思うので、是非各方面でそういうようなものが、うねりというか、流れができるなといいなと、これは個人的な感想です。ほかにどうぞ、御意見ございましたら。植草委員、どうぞ。
【植草委員】 ちょっとまた別の意見なんですけれども、先ほど連合さんの方からのお話の中で、労働法制の教育ということで切り口みたいな話があったと思うんですが、私が以前定時制の高校に勤めていたときに、やはり労働のところを切り口にしていくと、かなりやっぱり世の中の具体的な話ということに子供たちが乗ってくる。それと、今現在私が勤めている高校というのは、私は今、再任用で教諭で授業をやっているんですけれども、その中でやっぱりアルバイトをしている子供たちがすごく多い。ここからやっぱり切り込んでいくと、結構世の中の仕組みとかそういうものに入っていくことができるかなと思っています。
 そういうところで何か労働法制に関わる事例集があるかというと、なかなかないんです。ですから、いきなりまた文科省と厚労省でコラボしてというのは難しいのかもしれないんですけれども、そういうものを集めていくというのも1つの方法なのかなと思います。特に定時制の子供たちって選挙に行くかといったらなかなか行かないんですね。だから、そういうところをやっぱり刺激するというのはすごく大きいのかなと思いました。
【篠原座長】 貴重な意見ありがとうございます。おっしゃる提案よく分かります。
どうぞ、神津委員。
【神津委員】 非常に大事な視点を植草委員からお話しいただいたと思っています。先ほど清水副会長からお話しさせていただいた中で、15歳あるいは18歳から労働者となる子供にとって必要なことで、関心は強いですね。今、植草委員がおっしゃったように、実際にアルバイトをしている学生もいますから。連合として、労働相談ダイヤルを開設すると、学生さんからの駆け込みというのは結構あります。関心はあるけども、知られていない、というところが多くあります。 
 やはり、主権者教育とも大いに関わるところがあると思います。社会の中でどういう決め事、ルール、法律があるのかということをまず知ることが第一歩で、それとの関わりで、しっかりと言うべきことを言う。あるいは、ルールが、少し違うのではないか、おかしいのではないか、ということであれば、それをどうやってみんなで意見をまとめて、変えていくか、という、民主主義の基本のところの鍵がやっぱり労働教育にはあるのではないか、と思います。
 いろいろ相談が来ますが、例えば引っ越しのアルバイトは大変な仕事ですから、けがすることもあるわけですが、ひどい会社は「おまえの責任だから、自分でちゃんと治してこい」、場合によっては「それで穴が空いたんだから、その分を金払え」と言うところがあったりします。あるいは、これはワークルールということでは必ずしもないのですが、何かの拍子に物を壊してしまった場合、別に悪意があって壊したわけでなくても、「おまえが壊したんだから弁償しろ」といったことを言われる。そもそも会社の方がそういう保険を掛けておかなければならないわけであって、個人の責任に帰すべきものではない。そうしたことを含めて、ルールを知るというのが第一歩だ、という意味では非常に関連が深いと思います。ついでにPRも兼ねて申し上げると、連合のOBの人たちが学識の方と連携して、ワークルール検定協会というNPOを立ち上げまして、年に数回、各地でワークルール検定をやっています。そのための参考書みたいなものも作り始めています。ですから、場合によってはそれそのものを使ってもらっても良いくらいの話かとも思っています。
【篠原座長】 ありがとうございます。ほかに何か御意見ございますか。そろそろよろしいですか。では、少し早めなんですけれども、ここで1つの仕切りとします。本日予定していた議題は一応ここまででございます。
 次回は、引き続き「その他」について御議論をお願いし、同時に、「その他」以外のこれまでずっと議論してきた部分について最終報告のたたき台を用意したいと思います。
 では、次回の予定などについて、事務局から説明をお願いいたします。
【石田学校教育官】 本日も御審議ありがとうございました。次回の日程は、改めて御連絡をさせていただきます。座長からもお話がありましたように、次回は引き続き「その他」について御議論をお願いするとともに、それ以外の検討課題、大学での主権者教育、教員の研修、政治的中立性の担保の方策に関わる御審議の結果を踏まえた最終報告のたたき台をお示しし、御説明したいと考えてございます。本日の御議論に加えて御意見等ございましたら、メール等により事務局までお寄せいただければと考えてございます。
【篠原座長】 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。忙しい中、皆さん、ありがとうございました。
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